しかしながら、長尺のライニング材の場合や周長の大きなライニング材の場合には、一度に注入される硬化性樹脂液が大量であるため、注入作業と含浸作業に広い作業スペースが必要であった。また、大重量の硬化性樹脂液をピンチローラーで絞ることが困難であった。
本発明は、ライニング材への硬化性樹脂液の注入作業と含浸作業を、比較的コンパクトなスペースで容易に行うことができるライニング材を提供することを目的とする。
第1の発明の管路のライニング材は、内外面を反転させて管路に内張りされるライニング材であって、筒状の繊維層および前記繊維層の外周面を覆う樹脂層からなる第1ライニング部材と、前記第1ライニング部材の内側に配置され、少なくともその周方向に配した高強度繊維を含む筒状の第2ライニング部材とを備え、前記第2ライニング部材は、前記第1ライニング部材よりも周長が長く、前記第1ライニング部材をその周長の半分の幅となるように扁平状に配置した状態において、周方向の一部分にオーバーラップ部を有するか、弛んだ部分である弛み部または折り返された部分である折り返し部を有し、前記第1ライニング部材は、前記第2ライニング部材の内側に硬化性樹脂液を注入するための注入ノズルが挿入される直線状または曲線状の少なくとも1つの第1スリットを有し、前記第2ライニング部材は、前記少なくとも1つの第1スリットにそれぞれ挿入された前記注入ノズルを挿入可能な位置にそれぞれ形成された、直線状または曲線状の少なくとも1つの第2スリットを有し、前記少なくとも1つの第2スリットが、前記第2ライニング部材の周方向に沿って形成されていることを特徴とする。
このライニング材で管路の内張りをする際には、まず、第1ライニング部材の第1スリットおよび第2ライニング部材の第2スリットに注入ノズルを挿入して、この注入ノズルから第2ライニング部材の内側に硬化性樹脂液を注入する。硬化性樹脂液の注入後、第1ライニング部材の第1スリットを気密性の高い樹脂膜で覆う。また、硬化性樹脂液の注入後、ピンチローラー等によって、第2ライニング部材および第1ライニング部材の繊維層に硬化性樹脂液を含浸させる。ライニング材の全長にわたって硬化性樹脂液を含浸後、例えば空気圧等によってライニング材の内外面を反転させる。ライニング材が反転すると、第2ライニング部材の内側に第1ライニング部材が配置される。反転時または反転後に、反転した状態第1ライニング部材に内圧が作用すると、膨張した第1ライニング部材によって、第2ライニング部材が内圧を受ける。第2ライニング部材がオーバーラップ部を有する場合、反転された第2ライニング部材に内圧がかかると、オーバーラップ部を構成する端部同士がスライドして、反転した状態の第2ライニング部材は拡径する。一方、第2ライニング部材が弛み部または折り返し部を有する場合、反転された第2ライニング部材に内圧がかかると、弛み部または折り返し部が延びて、第2ライニング部材は弛み無く膨張する。いずれの場合も、反転されたライニング材が管路の内面に密着した状態で、硬化性樹脂液を硬化させる。
第1スリットおよび第2スリットの数が、それぞれ複数の場合には、ライニング材の全長に含浸させるのに必要な量の硬化性樹脂液を、複数に分割して、複数のスリット(第1スリットおよび第2スリット)からそれぞれ注入できる。そのため、ライニング材の一端から全量注入する場合に比べて、一度に注入する硬化性樹脂液の量を低減できる。一方、第1スリットおよび第2スリットの数が、それぞれ1つの場合には、スリット(第1スリットおよび第2スリット)の筒軸方向の両側に、それぞれ硬化性樹脂液を注入することで、ライニング材の一端から全量注入する場合に比べて、一度に注入される硬化性樹脂液の量を低減できる。どちらの場合も、一度に注入された硬化性樹脂液は、ライニング材の全長の筒軸方向の一部分にのみ含浸させればよい。したがって、注入作業と含浸作業を、比較的コンパクトなスペースで容易に行うことができる。
また、注入ノズルは、硬化性樹脂液をライニング材の筒軸方向に放出できるように、注入ノズルの筒軸方向がライニング材の筒軸方向にできるだけ近い方向に配置することを特徴とする。第2スリットが第2ライニング部材の周方向に沿って形成されていることにより、第2スリットが第2ライニング部材の筒軸方向に沿って形成されている場合に比べて、注入ノズルの筒軸方向が第2ライニング材の筒軸方向となるように注入ノズルを挿入しやすい。よって、注入作業をより容易に行うことができる。
第2ライニング部材の第2スリットは、第2ライニング部材の周方向に沿って形成されている。そのため、第2ライニング部材の周方向に配した高強度繊維を分断することを回避しつつ、前記注入作業を実施することが可能となる。つまり、第2ライニング部材の周方向の強度低下を防止できる。また、ライニング材の反転後または反転時に、第2ライニング部材を拡径または膨張させる力(周方向の引張力)を、オーバーラップ部、弛み部、および折り返し部のいずれかに確実に作用させることができる。加えて、第2スリットが開く方向の力を受けることを防止できる。よって、硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材の厚みが局所的に薄くなることを防止でき、内張りされた状態のライニング材の局所的な強度低下を防止できる。
なお、第2スリットが曲線状の場合、「第2スリットが第2ライニング部材の周方向に沿って形成されている」とは、第2スリットの両端を結ぶ直線または第2スリットの中央部の接線が、第2ライニング部材の周方向に沿って形成されていることをいう。
また、本発明において「第1ライニング部材よりも周長が長く、前記第1ライニング部材をその周長の半分の幅となるように扁平状に配置した状態」とは、扁平状の第1ライニング材の幅が、周長の半分と厳密に同じ場合に限らず、第1ライニング部材の可撓性によっては、扁平状の第1ライニング材の幅が、周長の半分より若干短い場合を含む。
また、本発明において、第2ライニング部材のオーバーラップ部とは、第2ライニング部材がシートの両端部同士を重ねて筒状に形成されている場合に、この重ね合された部分をいう。
第2の発明の管路のライニング材は、第1の発明において、前記少なくとも1つの第2スリットは、前記第2ライニング部材において、前記オーバーラップ部、前記弛み部、および前記折り返し部のいずれでもない部分に形成されていることを特徴とする。
オーバーラップ部、弛み部、および折り返し部は、他の部分よりも厚みが厚い。そのため、第2スリットが切込みの場合には、オーバーラップ部、弛み部、および折り返し部の何れでもない部分に第2スリットを形成することで、第2スリットを形成しやすい。
第3の発明の管路のライニング材は、第2の発明において、前記第1ライニング部材の前記第1スリットの周辺部と前記第2ライニング部材の前記第2スリットの周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、当該第1スリットと当該第2スリットが交差するか、もしくは、離れていることを特徴とする。
ライニング材に硬化性樹脂液を含浸させた状態では、第1ライニング部材の内周面(繊維層の内周面)と第2ライニング部材の外周面は、硬化性樹脂液を介して密着する。第1ライニング部材の第1スリットの周辺部と第2ライニング部材の第2スリットの周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、当該第1スリットと当該第2スリットは、交差するか、もしくは、離れている。したがって、ライニング材に硬化性樹脂液を含浸させた状態では、第1ライニング部材の第1スリットの周辺部は、硬化性樹脂液を介して第2ライニング部材に密着し、且つ、第1スリットのほぼ全域が、第2ライニング部材の開口していない部分に覆われている。また、第2ライニング部材の第2スリットの周辺部は、硬化性樹脂液を介して第1ライニング部材に密着し、且つ、第2スリットのほぼ全域が、第1ライニング部材の開口していない部分に覆われている。硬化性樹脂液は、ライニング材への含浸状態を維持できるように比較的高い粘性のものが用いられる。そのため、ライニング材の反転時、ライニング材に力がかかっても、硬化性樹脂液を介した第1スリットの周辺部と第2ライニング部材との密着状態、および、硬化性樹脂液を介した第2スリットの周辺部と第1ライニング部材との密着状態を維持できる。よって、第1スリットおよび第2スリットに開く方向の力が掛かることを抑制でき、第1スリットおよび第2スリットが開きにくい。
硬化性樹脂液が熱硬化性のものである場合には、硬化性樹脂液の硬化時間短縮のために、反転した状態のライニング材に内圧を作用させつつ加熱する。このとき、上述したように、第1スリットおよび第2スリットが開きにくいので、たとえ、第1スリットを覆う樹脂膜が熱により軟化しても、樹脂膜が第1スリットの内側に入り込むように膨張することを防止できる。よって、硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材の厚みが局所的に薄くなることを防止でき、内張りされた状態のライニング材の局所的な強度低下を防止できる。
また、硬化性樹脂液を常温硬化させた場合には、硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材の厚みが局所的に薄くなることはない。上述したように、第1スリットおよび第2スリットが開きにくいので、内張りされた状態のライニング材の局所的な強度低下を防止できる。
第4の発明の管路のライニング材は、第3の発明において、前記少なくとも1つの第1スリットが、前記第1ライニング部材の筒軸方向に対して傾斜していることを特徴とする。
この構成によると、第1スリットが第1ライニング部材の筒軸方向に沿って形成されている場合に比べて、ライニング材の反転時または反転後に、第1スリットに作用する第1スリットを開く方向の力を低減できる。よって、硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材の厚みが局所的に薄くなることをより確実に防止でき、内張りされた状態のライニング材の局所的な強度低下をより確実に防止できる。
なお、第1スリットが曲線状の場合、「第1スリットが第1ライニング部材の筒軸方向に対して傾斜している」とは、第1スリットの両端を結ぶ直線または第1スリットの中央部の接線が、第1ライニング部材の筒軸方向に対して傾斜していることをいう。
第5の発明の管路のライニング材は、第1〜第4の発明のいずれかにおいて、前記第2ライニング部材は、前記高強度繊維が少なくとも前記第2ライニング部材の周方向に配された織物を含むことを特徴とする。
この構成によると、第2ライニング部材が織物であるため、第2ライニング部材を構成する繊維の配向方向が一方向ではない。そのため、第2ライニング部材は、周方向だけでなく、筒軸方向にも強度を確保できる。
また、第2ライニング部材が織物であるため、第2ライニング部材を構成する繊維は短繊維ではなく連続している。つまり、第2ライニング部材は、周方向に連続した高強度繊維を含む。そのため、周方向に沿って形成される第2スリットが筒軸方向に伝播することを防止できる。
第6の発明の管路のライニング材は、第1〜第5の発明のいずれかにおいて、前記第2ライニング部材は、前記オーバーラップ部を有し、前記オーバーラップ部は、ホットメルト接着剤によって仮接合されていることを特徴とする。
この構成によると、オーバーラップ部がホットメルト接着剤によって仮接合されているため、ライニング材の反転時に、オーバーラップ部を構成する端部同士がスライドしてしまうことを防止できる。また、反転後にライニング材に内圧を作用させつつライニング材を加熱することで、ホットメルト接着剤が軟化して、オーバーラップ部の接合が解除される。それにより、第2ライニング部材は拡径できる。
第7の発明の管路のライニング材は、第1〜第6の発明のいずれかにおいて、前記少なくとも1つの第1スリットおよび前記少なくとも1つの第2スリットが、切り込みであることを特徴とする。
この構成によると、第1スリットおよび第2スリットを容易に形成できる。
本発明によれば、ライニング材への硬化性樹脂液の注入作業と含浸作業を、比較的コンパクトなスペースで容易に行うことができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るライニング材1の断面斜視図である。本実施形態のライニング材1は、例えば上下水道管等の既設管路の補修に用いられる。ライニング材1は、内外面を反転させて管路に内張りされる。
まず、ライニング材1の構造について説明する。ライニング材1は、筒状の第1ライニング部材10と、第1ライニング部材10の内側に配置された筒状の第2ライニング部材20とを有する。
第1ライニング部材10は、筒状の繊維層11と、繊維層11の外周面全体を覆う樹脂層12とで構成される。繊維層11は、例えばポリエステル繊維等で製織された織布である。繊維層11は、筒軸方向に沿った縫製部を有さない、シームレスの筒状織物であってもよく、軸方向に沿った縫製部を有する筒状織布であってもよい。また、繊維層11は、例えばポリエステル繊維等の不織布であってもよい。樹脂層12は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂から選択される。樹脂層12は、繊維層11に密着しており、気体および液体が通過しない気密性(不透過性)を有する。
第1ライニング部材10は、複数の直線状の第1スリット13を有する。複数の第1スリット13は、第1ライニング部材10の筒軸方向に並んでいる。複数の第1スリット13は、等間隔に形成することが好ましく、その間隔は後述する硬化性樹脂液の注入量によって決められる。第1スリット13は、第1ライニング部材10の筒軸方向に対して傾斜している。第1スリット13の第1ライニング部材10の筒軸方向に対する傾斜角度は、内張り時に圧力によって作用する応力が0°と90°方向に働くので、25°以上65°以下が好ましく、45°がより好ましい。なお、第1スリット13の第1ライニング部材10の筒軸方向に対する傾斜角度とは、第1スリット13に沿った直線と筒軸方向に平行な直線とがなす角度のうち小さい方の角度をいう。本実施形態では、この傾斜角度は45°である。第1ライニング部材10の周方向における第1スリット13の長さは、後述する注入ノズル30が挿入できればよく、第1ライニング部材10の周長の半分よりも短い。第1スリット13は、切り込みである。つまり、第1スリット13は、第1ライニング部材10を部分的に切断することで形成されている。よって、第1スリット13を形成しやすい。
第2ライニング部材20は、矩形状の繊維シート21からなる。第2ライニング部材20は、繊維シート21の両端部を重ね合わせて筒状にしたものである。繊維シート21の両端部を重ね合わせた部分を、オーバーラップ部22という。つまり、オーバーラップ部22は、第2ライニング部材20の周方向の一部に形成されている。オーバーラップ部22は、第2ライニング部材20の筒軸方向の全長にわたって、筒軸方向に沿って形成されている。
図2に示すように、オーバーラップ部22は、例えばホットメルト接着剤23によって仮接合されている。つまり、繊維シート21の重ね合わされた両端部同士は、ホットメルト接着剤23によって仮接合されている。より具体的には、繊維シート21の一端部にホットメルト接着剤23を塗布して、この一端部と他端部と重ね合わせることで両者を接合している。ホットメルト接着剤23は、オーバーラップ部22の全域に塗布されるのではなく、筒軸方向に平行な複数(図2では2本)のライン状の領域にのみ塗布される。オーバーラップ部22の接合強度は、ライニング材1を管路P内で反転させる際にずれないように仮止めする程度の接合強度で十分である。そして、後で説明するが、管路P内にライニング材1を設置した後の樹脂硬化工程における加熱によって、ホットメルト接着剤23は軟化し、オーバーラップ部22の接合は解除される。
第2ライニング部材20の筒状形態での周長は、第1ライニング部材10の周長よりも短い。図1に示すように、第1ライニング部材10をその周長の半分の幅となるように扁平状に配置した状態において、第2ライニング部材20は、弛みや折り返しの無い状態で、第1ライニング部材10の内側に配置できる。
第2ライニング部材20を構成する繊維シート21は、ガラス繊維(高強度繊維)を含む。繊維シート21は、第2ライニング部材20の周方向に沿って配置されるガラス繊維を含む。また、繊維シート21は、第2ライニング部材20の筒軸方向に沿って配置されるガラス繊維を含むことが好ましい。図3に示すように、第2ライニング部材20(繊維シート21)は、ポリエステル等の有機繊維の不織布24(例えば、スパンボンド不織布)と、ガラスロービングで織られたガラスロービングクロス25とが交互に積層されてニードルパンチによって接合された構造となっている。ガラスロービングは、ガラス繊維を引き揃えたもので、筒状にした第2ライニング部材20の周方向に沿って配置され、内張り後の外圧に対する主の強度メンバーとなる。繊維シート21の両面は、不織布24で構成されている。なお、繊維シート21は、少なくとも一方の面が、ガラスロービングクロス25で構成されてもよい。
第2ライニング部材20は、複数の直線状の第2スリット26を有する。複数の第2スリット26は、第2ライニング部材20の筒軸方向に並んでいる。複数の第2スリット26は、第1ライニング部材10の複数の第1スリット13の近傍にそれぞれ設けられている。第2スリット26は、第2ライニング部材20の周方向に沿って形成されている。第2ライニング部材20の周方向における第2スリット26の長さは、後述する注入ノズル30が挿入できればよく、第2ライニング部材20の周長の半分よりも短い。第2スリット26は、切り込みである。つまり、第2スリット26は、第2ライニング部材20を部分的に切断することで形成されている。よって、第2スリット26を形成しやすい。第2スリット26は、オーバーラップ部22以外の部分に形成されている。それにより、第2スリット26をより形成しやすい。
第1ライニング部材10の第1スリット13および第2ライニング部材20の第2スリット26は、第2ライニング部材20の内側に熱硬化性樹脂液を注入するための注入ノズル30(図4参照)を挿入可能に形成されている。つまり、第2ライニング部材20の第2スリット26は、第1スリット13に挿入された注入ノズル30を挿入可能な位置に形成されている。図1に示すように、第1ライニング部材10の第1スリット13の周辺部と第2ライニング部材20の第2スリット26の周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、第1スリット13と第2スリット26は交差する。
次に、上述したライニング材1を用いて既設管路Pを補修する方法について説明する。
まず、ライニング材1の内側に熱硬化性樹脂液を注入して、注入された熱硬化性樹脂液を第1ライニング部材10の繊維層11と第2ライニング部材20に含浸させる(樹脂注入・含浸工程)。その後、熱硬化性樹脂液が含浸されたライニング材1に、圧縮空気を作用させてその内外面を反転させながら、管路内に設置する(反転設置工程)。次に、反転した状態のライニング材1を加熱するとともに内側から加圧することで、第2ライニング部材20を拡径させると共に、ライニング材1に含浸された熱硬化性樹脂液を硬化させる(樹脂硬化工程)。以下、各工程について詳細に説明する。
(樹脂注入・含浸工程)
図4に示すように、第1スリット13および第2スリット26に注入ノズル30を挿入して、第2ライニング部材20の内側に熱硬化性樹脂液を注入する。注入ノズル30は、ライニング材1の筒軸方向に熱硬化性樹脂液を放出できるように、注入ノズル30の筒軸方向がライニング材1の筒軸方向と略平行となるように配置する。熱硬化性樹脂液は、1つの第1スリット13に対して1回注入する。このときの熱硬化性樹脂液の注入量は、注入と含浸の作業スペースとなる作業台にライニング材1を延ばせる長さに相当することが好ましい。なお、熱硬化性樹脂液は、1つの第1スリット13に対して、注入ノズル30の挿入方向を変えて、2回注入してもよい。つまり、1回目は、第1スリット13のライニング材1の筒軸方向の一方側に注入し、2回目は、同じ第1スリット13のライニング材1の筒軸方向の他方側に注入してもよい。
熱硬化性樹脂液の注入後、図5に示すように、第1スリット13を縫合糸14で縫い合わせる。縫合は、連続縫いとする。より詳細には、縫合糸14が、ライニング材1の周方向よりも筒軸方向に近い方向と、ライニング材1の筒軸方向よりも周方向に近い方向に、交互に連続して配置されるように、第1スリット13を縫合する。
縫合後、図6に示すように、第1スリット13および縫合糸14を覆うように、スリット被覆樹脂膜15を第1ライニング部材10の樹脂層12に接着する。スリット被覆樹脂膜15は、熱可塑性樹脂からなる。スリット被覆樹脂膜15は、例えば、第1スリット13および縫合糸14の上に溶融した熱可塑性樹脂を線状に載せた後、この熱可塑性樹脂をローラーで押圧することで形成される。スリット被覆樹脂膜15を形成する熱可塑性樹脂は、第1ライニング部材10の樹脂層12と同じ樹脂であることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂液の注入後、第1ライニング部材10の繊維層11および第2ライニング部材20の注入量に応じた領域に熱硬化性樹脂液を含浸させる。樹脂液の含浸方法としては、内側に熱硬化性樹脂液が注入されたライニング材1をピンチローラーなどで挟んで絞るという、一般的な方法でもよい。また、ライニング材1により均一に樹脂を含浸させるという観点から、以下の方法を採用することが好ましい。即ち、熱硬化性樹脂液を注入後、含浸させたい領域を、その筒軸方向が略上下方向となるように配置して、余分な樹脂液を重力で落としつつ含浸させたい領域に均一に樹脂液を含浸させる。
同様に、他の第1スリット13および第2スリット26からも熱硬化性樹脂液を注入して、ライニング材1に含浸させる。この動作を繰り返して、全ての第1スリット13および第2スリット26から熱硬化性樹脂液を注入して、ライニング材1の全域に熱硬化性樹脂液を含浸させる。この樹脂注入・含浸工程は、ライニング材1をリール等に巻き取りながら連続的に行うことができる。そのため、長尺のライニング材1への硬化性樹脂液の注入と含浸を容易に行うことが可能である。また、一定長さのライニング材1に対して注入口(第1スリット13および第2スリット26)の数を増やせば、つまり何度も熱硬化性樹脂液を注入すれば、ライニング材1を仮置きする作業スペースをコンパクトにすることができる。なお、ライニング材1をリール等に巻き取りながら、第1スリット13と第2スリット26を形成する工程と、樹脂注入・含浸工程とを連続的に行ってもよい。また、従来のようにライニング材1の一端から硬化性樹脂液を一定量注入すると共に、ライニング材1の複数の注入口(第1スリット13および第2スリット26)から硬化性樹脂液を注入してもよい。
ここでは、複数の注入口(第1スリット13および第2スリット26)を全て形成した後で、樹脂注入・含浸工程を行う場合について説明したが、注入口(第1スリット13および第2スリット26)を形成するタイミングは、これに限らない。1つの注入口(第1スリット13および第2スリット26)を形成してここから樹脂液を注入して、スリット被覆樹脂膜15で第1スリット13を覆った後、別の注入口を形成して、樹脂液を注入してもよい。また、1つの注入口から樹脂液を注入した後、スリット被覆樹脂膜15を形成する前に、次の(隣りの)注入口を形成して、樹脂液を注入してもよい。その場合、1つの注入口以外の注入口(詳細には第1スリット13)は目張りして減圧可能としておくことが望ましい。注入口(第1スリット13および第2スリット26)は、任意に追加可能である。ニップ等で注入口(第1スリット13および第2スリット26)を形成したい箇所の手前側で樹脂液を一時的に止めることで、注入口を形成できる。
なお、注入口(第1スリット13および第2スリット26)の形成されている領域への樹脂液の含浸は、以下の3つの方法のどちらを採用してもよい。以下の3つの方法では、ライニング材1の一部を筒軸方向が上下方向となるように配置してから含浸させる。いずれの方法も、予め、対象となる注入口(以下、対象注入口と称する)の上方の注入口から下方に樹脂液が注入されて、対象注入口の上方の領域に樹脂液が含浸されている。
第1の方法では、対象注入口から上方に注入した樹脂液を、対象注入口の上方近傍に溜めておく。その前またはその後に、対象注入口から下方に樹脂液を注入して、対象注入口の下方の領域に樹脂液を含浸させる。対象注入口のスリット被覆工程および空気吸入孔被覆工程を終えた後、対象注入口の上方近傍に溜めた樹脂液を下方に移動させて、対象注入口が形成されている領域に樹脂液を含浸させる。
第2の方法では、対象注入口の上方の注入口から注入された樹脂液を、対象注入口の上方の領域に含浸させると共に、一部を対象注入口の手前(上方の近傍)に溜めておく。そして、対象注入口から下方に樹脂液を注入して、対象注入口の下方の領域に樹脂液を含浸させる。対象注入口のスリット被覆工程および空気吸入孔被覆工程を終えた後、対象注入口の上方近傍に溜めた樹脂液を下方に移動させて、対象注入口が形成されている領域に樹脂液を含浸させる。
第3の方法では、対象注入口から下方に樹脂液を注入して、対象注入口の下方の領域に樹脂液を含浸させると共に、一部を対象注入口の下方近傍に溜めておく。対象注入口のスリット被覆工程および空気吸入孔被覆工程を終えた後、対象注入口の下方近傍に溜めた樹脂液を上方に移動させて、対象注入口が形成されている領域に樹脂液を含浸させる。
(反転設置工程)
図7に示すように、管路Pは、地上に開口している立坑Qに連続しており、ライニング材1は、立坑Qから管路P内に設置される。図8(a)に示すように、熱硬化性樹脂液が含浸されたライニング材1は、地上のトラック40(図7参照)に設けられた反転機41のリール42に巻き取られている。また、ライニング材1の先端は、反転機41の口金43に環状に固定されている。
図8(b)に示すように、反転機41内に圧縮空気を導入すると、口金43に固定されたライニング材1の折り返し部分に空気圧が作用する。第1ライニング部材10の樹脂層12は気密性を有するため、空気圧が作用することで、ライニング材1の折り返し部分は、進行方向(図中の右方向)へと前進し、ライニング材1が反転し始める。このとき、ライニング材1は、リール42から引き出されながら前進する。図9は、反転中のライニング材1の進行方向先端部を、進行方向前方から見た図である。図8(c)に示すように、ライニング材1は、さらに進行方向に前進しながら連続して反転し続ける。そして、図7に示すように、反転した状態のライニング材1が管路P内に配置される。最終的には、ライニング材1は、その全長にわたって内外面が反転されて管路P内に設置される。第2ライニング部材20のオーバーラップ部22がホットメルト接着剤23によって仮接合されていることで、ライニング材1の反転時に、繊維シート21の両端部同士がスライドしてしまうことを防止できる。反転した状態において、第2ライニング部材20よりも周長の短い第1ライニング部材10が、第2ライニング部材20の内側に配置される。よって、第1ライニング部材10は、内側に空気圧が作用しても弛んだ状態となっている。この方法は特に管路P内に曲管が配置されている場合に、曲管部分に生じるライニング材の皺を抑えるのに有用である。
(樹脂硬化工程)
管路P内に反転した状態で設置されたライニング材1の内側に、加熱空気や蒸気等の加熱媒体を供給して、ライニング材1を熱硬化性樹脂液の硬化温度(例えば、80〜100℃)以上に加熱しつつ、ライニング材1を内側から加圧する。
加熱媒体の熱により、オーバーラップ部22を仮接合しているホットメルト接着剤23が軟化し、接合が解除される。また、反転設置工程後の状態では、気密性を有する第1ライニング部材10が、第2ライニング部材20の内側に配置されるため、第1ライニング部材10の内側に加熱媒体を供給することで、第1ライニング部材10が弛んだ状態から膨張して、第2ライニング部材20を内側から加圧する。それにより、オーバーラップ部22を構成する端部同士(つまり、繊維シート21の両端部)が周方向にスライドして、第2ライニング部材20が拡径する(即ち、周長が長くなる)。そして、図10に示すように、ライニング材1が管路Pの内面に押し付けられて密着し、その状態で熱硬化性樹脂液が熱硬化する。以上により、ライニング材1が管路Pに内張りされる。図10には、繊維シート21の両端部の重なり部分を、拡大して表示している。なお、樹脂硬化工程において、第1ライニング部材10の周長の数%〜10%増大する。
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態のライニング材1は以下の効果が得られる。
ライニング材1を反転させると、第2ライニング部材20の内側に第1ライニング部材10が配置される。反転時または反転後に、反転した状態第1ライニング部材10に内圧が作用すると、膨張した第1ライニング部材10によって、第2ライニング部材20が内圧を受ける。反転された第2ライニング部材20に内圧がかかると、オーバーラップ部22を構成する端部同士がスライドして、反転した状態の第2ライニング部材20は拡径する。
ライニング材1に複数の第1スリット13と複数の第2スリット26が設けられる。したがって、ライニング材1の全長に含浸させるのに必要な量の熱硬化性樹脂液を、複数に分割して、複数のスリット(第1スリット13および第2スリット26)からそれぞれ注入すればよい。そのため、ライニング材1の一端から全量注入する場合に比べて、一度に注入する熱硬化性樹脂液の量を低減できる。一度に注入された熱硬化性樹脂液は、ライニング材1の全長の筒軸方向の一部分にのみ含浸させればよい。したがって、注入作業と含浸作業を、比較的コンパクトなスペースで容易に行うことができる。
また、注入ノズル30は、熱硬化性樹脂液をライニング材1の筒軸方向に放出できるように、注入ノズル30の筒軸方向がライニング材1の筒軸方向にできるだけ近い方向に配置することが好ましい。第2スリット26が第2ライニング部材20の周方向に沿って形成されていることにより、第2スリット26が第2ライニング部材20の筒軸方向に沿って形成されている場合に比べて、注入ノズル30の筒軸方向が第2ライニング材1の筒軸方向となるように注入ノズル30を挿入しやすい。よって、注入作業をより容易に行うことができる。
第2ライニング部材20の第2スリット26は、第2ライニング部材20の周方向に沿って形成されている。そのため、第2ライニング部材20の周方向に配した高強度繊維(ガラス繊維)を切断することを回避しつつ、前記注入作業を実施することが可能となる。つまり、第2ライニング部材20の周方向の強度低下を防止できる。また、ライニング材1の反転後または反転時に、第2ライニング部材20を拡径または膨張させる力(周方向の引張力)を、オーバーラップ部22に確実に作用させることができる。加えて、第2スリット26が開く方向の力を受けることを防止できる。よって、熱硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材1の厚みが局所的に薄くなることを防止でき、内張りされた状態のライニング材1の局所的な強度低下を防止できる。
ライニング材1に熱硬化性樹脂液を含浸させた状態では、第1ライニング部材10の内周面(繊維層11の内周面)と第2ライニング部材20の外周面は、熱硬化性樹脂液を介して密着する。第1ライニング部材10の第1スリット13の周辺部と第2ライニング部材20の第2スリット26の周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、第1スリット13と第2スリット26は、交差する。したがって、ライニング材1に熱硬化性樹脂液を含浸させた状態では、第1ライニング部材10の第1スリット13の周辺部は、熱硬化性樹脂液を介して第2ライニング部材20に密着し、且つ、第1スリット13のほぼ全域が、第2ライニング部材20の開口していない部分に覆われている。また、第2ライニング部材20の第2スリット26の周辺部は、熱硬化性樹脂液を介して第1ライニング部材10に密着し、且つ、第2スリット26のほぼ全域が、第1ライニング部材10の開口していない部分に覆われている。熱硬化性樹脂液は、ライニング材1への含浸状態を維持できるように比較的高い粘性(500〜15000cps)のものが用いられる。そのため、ライニング材1の反転時に、ライニング材1に力がかかっても、熱硬化性樹脂液を介した第1スリット13の周辺部と第2ライニング部材20との密着状態、および、熱硬化性樹脂液を介した第2スリット26の周辺部と第1ライニング部材10との密着状態を維持できる。よって、第1スリット13および第2スリット26に開く方向の力が掛かることを抑制でき、第1スリット13および第2スリット26が開きにくい。
熱硬化性樹脂液の硬化時間短縮のために、反転した状態のライニング材1に内圧を作用させつつ加熱している。このとき、上述したように、第1スリット13および第2スリット26が開きにくいので、たとえ、第1スリット13を覆う樹脂膜15が熱により軟化しても、樹脂膜15が第1スリット13の内側に入り込むように膨張することを防止できる。よって、熱硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材1の厚みが局所的に薄くなることを防止でき、内張りされた状態のライニング材1の局所的な強度低下を防止できる。
第1ライニング部材10の第1スリット13は、第1ライニング部材10の筒軸方向に対して傾斜している。そのため、第1スリット13が第1ライニング部材10の筒軸方向に沿って形成されている場合に比べて、ライニング材1の反転時または反転後に、第1スリット13に作用する第1スリット13を開く方向の力を低減できる。より具体的には、内圧が加わったライニング材1に作用する力は筒軸方向を1とした場合に周方向には2の力が加わる(薄肉円筒の式)。そのため、作用が大きい周方向の力に対して傾斜させることによって、第1スリット13が開きにくい。よって、熱硬化性樹脂液を硬化させた後のライニング材1の厚みが局所的に薄くなることをより確実に防止でき、内張りされた状態のライニング材1の局所的な強度低下をより確実に防止できる。
第2ライニング部材20は織物であるため、第2ライニング部材20を構成する繊維の配向方向が一方向ではない。そのため、第2ライニング部材20は、周方向だけでなく、筒軸方向にも強度を確保できる。
また、第2ライニング部材20が織物であるため、第2ライニング部材20を構成する繊維は短繊維ではなく連続している。つまり、第2ライニング部材20は、周方向に連続した高強度繊維(ガラス繊維)を含む。そのため、周方向に沿って形成される第2スリット26が筒軸方向に伝播することを防止できる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。後述する変更例は適宜組み合わせて実施してもよい。
1]本発明の第2ライニング部材の構造は、図3に示す構造に限らない。また、ガラスロービングクロス25と不織布24が交互に積層されていなくてもよい。例えば、複数枚のガラスロービングクロス25の両側にのみ不織布24が積層されていてもよい。また、不織布24が全く設けられていなくてもよい。また、ガラスロービングクロス25の代わりに、ガラス繊維を撚り合わせたガラスヤーンで織られたガラスクロスを用いてもよい。
本発明の第2ライニング部材は、ガラス繊維以外の高強度繊維(例えば、アラミド繊維、高強力ポリエチレン繊維、高強力ポリアリレート繊維等)を含んでいてもよい。本発明の第2ライニング部材は、熱硬化性樹脂にガラス繊維等の高強度繊維の短繊維を分散させたSMC(シートモールディングコンパウンド)であってもよい。
本発明の第2ライニング部材は、高強度繊維を含む織布を含むことが好ましい。また、第2ライニング部材は、少なくとも第2ライニング部材の周方向に沿って配置されたガラス繊維を含むことが好ましい。第2ライニング部材は、第2ライニング部材の筒軸方向に沿って配置されたガラス繊維を含んでいてもよい。
2]上記実施形態では、第1ライニング部材10の第1スリット13の周辺部と第2ライニング部材20の第2スリット26の周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、第1スリット13と第2スリット26が交差するように、第1スリット13および第2スリット26は形成されている(図1参照)。しかし、例えば図11(a)に示すライニング材101のように、第1ライニング部材10の第1スリット13の周辺部と第2ライニング部材20の第2スリット126の周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、第1スリット13と第2スリット126が離れるように、第1スリット13および第2スリット126は形成されていてもよい。この場合、ライニング材1に熱硬化性樹脂液を含浸させた状態では、第1ライニング部材10の第1スリット13の周辺部は、熱硬化性樹脂液を介して第2ライニング部材20に密着し、且つ、第1スリット13の全域が、第2ライニング部材20の開口していない部分に覆われている。また、第2ライニング部材20の第2スリット126の周辺部は、熱硬化性樹脂液を介して第1ライニング部材10に密着し、且つ、第2スリット126の全域が、第1ライニング部材10の開口していない部分に覆われている。そのため、ライニング材1の反転時に、ライニング材1に力がかかっても、熱硬化性樹脂液を介した第1スリット13の周辺部と第2ライニング部材20との密着状態、および、熱硬化性樹脂液を介した第2スリット126の周辺部と第1ライニング部材10との密着状態を上記実施形態よりも強固に維持できる。よって、第1スリット13および第2スリット126に開く方向の力が掛かることを抑制でき、第1スリット13および第2スリット126が開きにくい。但し、注入ノズル30を挿入しやすいという点では、第1スリット13と第2スリット126が交差することが好ましい。
3]上記実施形態の第1スリット13は、第1ライニング部材10の筒軸方向に対して傾斜している。しかし、本発明の第1スリットは、第1ライニング部材の筒軸方向に沿って形成されていてもよく、第1ライニング部材の周方向に沿って形成されていてもよい。但し、第1ライニング部材の第1スリットの周辺部と第2ライニング部材の第2スリットの周辺部を弛みなく平坦状に重ねた状態において、第1スリットと第2スリットが交差するか、または、離れるように、第1スリットおよび第2スリットは形成されることが好ましい。第1スリットと第2スリットが完全に重なる位置に形成されていてもよい。
4]上記実施形態の第1スリット13および第2スリット26は、それぞれ複数設けられている。しかし、本発明の第1スリットおよび第2スリットの数は、それぞれ、1つであってもよい。この場合、スリット(第1スリットおよび第2スリット)の筒軸方向の片側または両側に、熱硬化性樹脂液を注入する。それにより、ライニング材の一端から全量注入する場合に比べて、ライニング材のスリット周辺に溜まる熱硬化性樹脂液の量を減らすことができ、注入作業と含浸作業が容易になり比較的コンパクトなスペースで容易に行うことができる。
5]上記実施形態の第1スリット13および第2スリット26は、直線状である。しかし、本発明の第1スリットは曲線状であってもよい。また、本発明の第2スリットは曲線状であってもよい。
6]上記実施形態では、第1スリット13を縫合糸14によって縫合してから、スリット被覆樹脂膜15で覆っている。しかし、縫合せずに、第1スリット13をスリット被覆樹脂膜15で覆ってもよい。また、縫合以外の方法で、第1スリット13を接合してもよい。
7]前記実施形態では、第2ライニング部材20のオーバーラップ部22が、ホットメルト接着剤23で接合されていたが、これ以外の方法、例えば、縫製で接合されてもよい。但し、縫製で接合する場合は、樹脂硬化工程で第2ライニング部材20に内圧が作用したときに縫製部が破断するように、比較的弱い接合にする必要がある。また、オーバーラップ部22を構成する繊維シート21の端部同士の間に作用する摩擦力が大きい等の理由から、ライニング材1の管路内への設置時に、第2ライニング部材20が大きく広がる虞がない場合には、オーバーラップ部22を接合しなくてもよい。
8]オーバーラップ部22が接合されていない場合または接合強度が弱い場合、上述の反転設置工程で、ライニング材1の反転と同時に、繊維シート21の両端部がスライドして第2ライニング部材20が拡径し、ライニング材1が管路の内面に密着してもよい。この場合、熱硬化性樹脂が加熱不足となり未硬化の原因となる、管路Pとライニング材1との間への水の浸入を遮断できると共に、管路P内部の滞留水をライニング材の進行方向の前方へ押し出すことができる。
9]上記実施形態の第2ライニング部材20は、オーバーラップ部を有しており、第1ライニング部材10よりも周長が短いが、この構成に限定されない。
例えば図12(a)に示すライニング材301のように、第2ライニング部材320の周長が第1ライニング部材10の周長よりも長く、第1ライニング部材10をその周長の半分の幅となるように扁平状に配置した状態において、第2ライニング部材320は、弛んだ部分である弛み部327を有してもよい。弛み部327は、第2ライニング部材320の周方向の一部分にのみ形成される。弛み部327は、第2ライニング部材320の筒軸方向に沿って形成される。第2スリット26は、第2ライニング部材320における弛み部327以外の部分に形成される。それにより、第2スリット26を形成しやすい。なお、図12(a)では、弛み部327は、第2スリット26と対向しているが、対向しなくてもよい。第2スリットが、弛み部と斜向かいの位置に形成されていてもよく、弛み部と第2スリットが同一平面上に形成されていてもよい。
また、例えば図12(b)および図12(c)に示すライニング材401、501のように、第2ライニング部材420、520の周長が第1ライニング部材10の周長よりも長く、第1ライニング部材10をその周長の半分の幅となるように扁平状に配置した状態において、第2ライニング部材420、520は、折り返された部分である折り返し部427、527、528を有してもよい。折り返し部427、527、528は、第2ライニング部材20の筒軸方向に沿って形成される。図12(b)に示す第2ライニング部材420は、その幅方向の片側に折り返し部427を有する。図12(c)に示す第2ライニング部材520は、その幅方向の両側に折り返し部527、528を有する。図12(b)および図12(c)では、折り返し部427、527、528は、図中の上側に折り返されているが、下側に折り返されていてもよい。第2スリット26は、第2ライニング部材420、520における折り返し部427、527、528以外の部分に形成される。それにより、第2スリット26を形成しやすい。さらに、第2スリット26は、第2ライニング部材420、520において折り返し部427、527、528と重なる部分以外の部分に形成されることが好ましい。
このような弛み部327または折り返し部427、527、528を有する第2ライニング部材320、420、520の周長は、高強度繊維を周方向に配置した場合は伸びしろを期待できないので、管路の内面に密着できる周長に設定される。また、第1ライニング部材10の周長は、第2ライニング部材320、420、520の内周面に密着できる周長に設定される。このライニング材301、401、501を反転させる際、反転された第2ライニング部材20に内圧がかかると、弛み部327または折り返し部427、527、528が解消されて、第2ライニング部材20は弛み無く膨張する。そして、図13に示すように、反転した状態のライニング材301、401、501は、管路Pの内面に密着する。その後、樹脂硬化工程において、反転したライニング材301、401、501の内側に加熱媒体を供給して内側から加圧しつつ加熱すると、ライニング材301、401、501が管路の内面に密着した状態で熱硬化性樹脂液が硬化する。このように、弛み部327または折り返し部427、527、528を有する第2ライニング部材320、420、520は、樹脂硬化工程においてほとんど拡径しない。
10]上記実施形態では、ライニング材1の内側に注入される硬化性樹脂液として、熱硬化性樹脂液を用いている。しかし、本発明のライニング材の内側に注入される硬化性樹脂液は、例えば、光硬化性、さらには、常温硬化性のものを使用することもできる。但し、上記実施形態のように、第2ライニング部材20が、ホットメルト接着剤23によって仮接合されたオーバーラップ部22を有する場合には、硬化性樹脂液の硬化とホットメルト接着剤23の軟化(接合解除)を一度に行うことができるように、熱硬化性の樹脂液を採用することが好ましい。
11]上記実施形態では、空気圧によってライニング材1を反転させている。しかし、本発明のライニング材は、空気圧以外の流体圧(例えば水圧)によって反転させてもよい。