以下、本発明に係る非接触駆動伝達装置の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であるが、これらの実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
(実施の形態1)
非接触駆動伝達装置は、周方向に異なる極性の磁極が着磁された円筒状の駆動部材と、板状の磁石ユニットが搭載された支持部材とを備える。非接触駆動伝達装置の例として、駆動部材の回転軸の方向と支持部材の移動方向が直交する直交型の非接触駆動伝達装置と、駆動部材の回転軸の方向と支持部材の移動方向が平行である平行型の非接触駆動伝達装置がある。本発明の一実施の形態に係る非接触駆動伝達装置について、直交型の非接触駆動伝達装置を例に、図1から図4を参照して説明する。
図1から図4において、駆動部材と磁石ユニットに着磁されたN極とS極は、線により区切られて示されているが、物理的に分割されているのではなく、着磁された領域を示す線である。また、図3、図4において、駆動部材の磁極が着磁された部分を斜線により示す。また、図1〜図4に示す直交型の非接触駆動伝達装置は、移動の原理を示す図であり、後述するように種々の直交型の非接触駆動伝達装置がある。
図1は、直交型の非接触駆動伝達装置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。非接触駆動伝達装置10は、モータ110により回転駆動される駆動部材100と、駆動部材100が回転することで一定の方向に移動される支持部材121と、支持部材121に搭載された第1の磁石ユニット122と、を備える。
駆動部材100は、軸101を中心に回転する円筒状の回転部材である。軸101は、モータ110の回転軸111に連結され、モータ110の回転軸111が回転することで、駆動部材100は、軸101を中心に回転される。
駆動部材100の周面には、周方向に、異なる極性の磁極が交互に着磁されている。具体的には、駆動部材100の周方向に、軸101と平行な方向に伸びたN極とS極が、同一幅m1で交互に着磁されている。また、N極の磁極中心とS極の磁極中心との距離m11は、駆動部材100の周方向に同一であり、周方向に均一の距離ピッチを形成している。尚、本願において、「磁極」という文言を使用するときは、N極とS極の双方を含む概念であり、説明に応じて、磁極、N極、S極の文言を適宜使用する。
第1の磁石ユニット122は、図2に示すように、一対の主面122a、122bを有する矩形状の板状の磁石である。第1の磁石ユニット122は、例えば、61×22×3mmの大きさで形成された磁石である。第1の磁石ユニット122は、一対の主面122a、122bの双方に、異なる極性の磁極が複数着磁された両面多極着磁磁石である。一対の主面122a、122bには、N極とS極が、同一の幅m2で、交互に着磁されている。また、N極の磁極中心とS極の磁極中心との距離m22は、第1の磁石ユニット122の長さ方向に同一であり、長さ方向に均一の距離ピッチを形成している。第1の磁石ユニット122の着磁の幅m2は、駆動部材100の着磁の幅m1と同一である。
第1の磁石ユニット122は、一対の主面122a、122bと垂直で、長手方向に対向する一対の端部である短辺と、短手方向に対向する一対の端部である長辺と、を備える。N極とS極は、第1の磁石ユニット122の短辺と平行に伸び、長手方向の一方の端部から他方の端部に向かって、交互に並べられて配置される。一対の短辺に配置される磁極は、異なる磁極が配置される。図2では、主面122aには、磁極が、紙面の左から右に向けてN、S、N、S・・Sの順で並べられ、主面122bには、磁極がS、N、S、N・・Nの順で並べられている。
第1の磁石ユニット122は、複数連結して並べられて、1つの磁石連結体を形成する。具体的には、1つの第1の磁石ユニット122の長手方向に対向する一対の端部の一方の端部が、隣り合う第1の磁石ユニット122の一方の端部と当接されて配置される。例えば、図1又は図4に示すように、2つの第1の磁石ユニット122は、互いに対向する端部が当接されて配置され、2つの第1の磁石ユニット122で、ひとつの磁石連結体を形成する。また、2つの第1の磁石ユニット122は、互いに対向する端部の磁極が異なる磁極となるように配置される。2つの第1の磁石ユニット122は、このように配置されることで、異なる極性の磁極が連続して交互に配置された、磁石連結体を形成する。また、第1の磁石ユニット122の互いに対向する端部は、異なる極性が対向するので、第1の磁石ユニット122同士は連結しやすくなる。
支持部材121は、図1(c)に示すように支持面121aを備える板状の部材である。支持面121aに第1の磁石ユニット122が取り付けられる。支持部材121は、磁性材料、例えば、ステンレスで形成される。第1の磁石ユニット122は、主面122bにも着磁処理が施された両面多極着磁磁石であるので、主面122bが支持面121aに対向することで、支持部材121に吸着されて支持部材121に固定される。第1の磁石ユニット122として、主面122bに着磁処理が施されていない片面多極着磁磁石を使用する場合は、第1の磁石ユニット122は、接着材により支持部材121に固定される。片面多極着磁磁石を使用する場合には、支持部材121は、磁性材料で形成する必要はなく、樹脂材料やアルミニウム材料を使用して形成することができる。したがって、装置の軽量化を図ることができる。両面多極着磁磁石を使用する場合であっても、ステンレス等の磁性材料を使用できない環境では、第1の磁石ユニット122を接着剤により固定すればよい。
駆動部材100と第1の磁石ユニット122とは、図1及び図3に示す配置関係にある。複数の第1の磁石ユニット122のうち、いずれか1つの第1の磁石ユニット122の一方の主面122aが、駆動部材100の周面に対向して配置される。駆動部材100の磁極の伸びる方向と、第1の磁石ユニット122の磁極の伸びる方向は、平行となるように配置される。駆動部材100の磁極は、軸101に平行に伸びるので、第1の磁石ユニット122の磁極が伸びる方向は、軸101と平行となる。
駆動部材100の1つの磁極と、第1の磁石ユニット122の1つの磁極は対向して配置される。具体的には、駆動部材100の幅m1の1つ磁極と、第1の磁石ユニット122の幅m1と同一の幅m2の1つ磁極が、一対一で異極同士が対向するように配置される。駆動部材100が回転すると、第1の磁石ユニット122と対向していた駆動部材100の磁極は移動して、隣の異なる極性の磁極が、第1の磁石ユニット122の磁極と対向し、第1の磁石ユニット122の磁極との間で引力と斥力が生じる。生じた引力と斥力により第1の磁石ユニット122の磁極は移動して、隣の磁極が、移動した駆動部材100の磁極と対向する。このような磁極の移動が、駆動部材100の回転に伴い連続して起こる。
駆動部材100と第1の磁石ユニット122がこのような配置関係にあるので、図1及び図3に示すように、駆動部材100が軸101を中心に矢印A方向に回転すると、駆動部材100の磁極と、第1の磁石ユニット122の一方の主面122aの磁極との間で斥力が働き、第1の磁石ユニット122は、駆動部材100の軸101と直交する方向である矢印B方向に移動する。駆動部材100が矢印Aとは逆の方向に回転すると、第1の磁石ユニット122は、矢印Bとは反対の方向に移動する。
支持部材121の支持面121aと反対の面には、係合部材123が取り付けられる。係合部材123は、一定の方向に伸びるレール部材124と係合する。レール部材124は基台125に固定される。
このような構成を備える非接触駆動伝達装置10において、駆動部材100が、モータ110により回転されることで、第1の磁石ユニット122との間で磁力を発生させ、第1の磁石ユニット122が搭載された支持部材121は、係合部材123を介して、レール部材124に沿って移動する。
本実施の形態において、駆動部材100を1つ使用した非接触駆動伝達装置10を説明したが、図4に示すように、駆動部材100を、2つの第1の磁石ユニット122のそれぞれに対応させて使用することもできる。駆動部材100を2つ使用することで、トルクを増強することができる。
本実施の形態において、複数の第1の磁石ユニット122は、一対の対向する端部である短辺同士が連結された磁石連結体を形成する。連結される第1の磁石ユニット122の枚数を変化させることで、様々な機械要素として、非接触駆動伝達装置10を使用することができる。例えば、駆動部材100をピニオンとし、複数の第1の磁石ユニット122を連結した磁石連結体をラックとして使用すれば、非接触のラックとピニオンを形成できる。また、磁石連結体を、搬送物を搭載するキャリアに取り付けることで、非接触の搬送装置を形成できる。
本実施の形態によれば、円筒状の駆動部材100の周面に、駆動部材100の軸101と平行な方向に異なる極性である磁極を交互に着磁した。また、複数の第1の磁石ユニット122に、異なる極性の磁極を短辺に平行に交互に着磁した。そして、駆動部材100の磁極の幅と、第1の磁石ユニット122の磁極の幅を同一にし、磁極と磁極を一対一で対応させて配置した。したがって、駆動部材100が軸101を中心に回転することで、複数の第1の磁石ユニット122が取り付けられた支持部材121を、駆動部材100の軸101と直交する方向に非接触で移動させることができる。
複数の第1の磁石ユニット122が取り付けられた支持部材121を、駆動部材100の軸101と直交する方向に非接触で移動させることができるので、支持部材121の移動距離を長くしたいレイアウトを希望する場合に有効である。
本実施の形態によれば、非接触駆動伝達装置10の用途に応じて、支持部材121に取り付けられる第1の磁石ユニット122の数を設定できる。したがって、同じ第1の磁石ユニット122を複数用意すれば、あらゆる用途に対応することができる。
本実施の形態によれば、第1の磁石ユニット122の主面に異なる磁極を交互に着磁したので、支持部材121に使用される第1の磁石ユニット122の個数は、棒磁石を使用した場合と比較して少なくできる。少ない数の第1の磁石ユニット122で、駆動伝達装置を製造できるので、駆動伝達装置の製造工期を短縮することができる。また、棒磁石を使用する場合のように、支持部材121に溝加工を施す必要もなく、非接触駆動伝達装置10を簡単に製造することができる。
本実施の形態によれば、第1の磁石ユニット122を支持部材121に必要な数を貼り付けることで駆動伝達装置を形成することができる。したがって、支持部材121希望するレイアウトに設置し、そのレイアウトに沿って第1の磁石ユニット122を貼り付ければ、駆動伝達装置を容易に形成することができる。
本実施の形態によれば、第1の磁石ユニット122として、両面多極着磁磁石を使用し、支持部材121を磁性材料で形成すれば、第1の磁石ユニット122を支持部材121に対して、容易に着脱することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、直交型の非接触駆動伝達装置を説明したが、本発明はこれに限定されない。駆動部材の回転軸と、支持部材の移動方向が平行である平行型の非接触駆動伝達装置であってもよい。本実施の形態について、図5から図8を参照して説明する。
図5から図8に平行型の非接触駆動伝達装置20を示す。駆動部材と磁石ユニットに着磁されたN極とS極は、線により区切られて示されているが、実施の形態1と同様に、着磁された領域を示す線である。また、図5から図8に示す平行型の非接触駆動伝達装置20は、移動の原理を示す図であり、後述するように種々の平行型の非接触駆動伝達装置がある。
図5は、平行型の非接触駆動伝達装置を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。平行型の非接触駆動伝達装置20は、モータ210により回転駆動される駆動部材200と、駆動部材200が回転することで一定の方向に移動される支持部材221と、支持部材221に搭載された第2の磁石ユニット222と、を備える。
駆動部材200は、軸201を中心に回転する円筒状の回転部材である。軸201は、モータ210の回転軸211に連結され、モータ210の回転軸211が回転することで、駆動部材200は、軸201を中心に回転される。
駆動部材200の周面には、周方向に、異なる極性の磁極が交互に着磁されている。具体的には、駆動部材200の周方向に、軸201と交差する方向に伸びたN極とS極が、同一幅n1で交互に着磁されている。磁極は、軸201に対して45度傾斜して配置されている。また、N極の磁極中心とS極の磁極中心との距離n11は、駆動部材200の周方向に同一であり、周方向に均一の距離ピッチを形成している。
第2の磁石ユニット222は、図6に示すように、一対の主面222a、222bを有する矩形状の板状の磁石である。第2の磁石ユニット222は、一対の主面222a、222bの双方に、異なる極性の磁極が複数着磁された両面多極着磁磁石である。一対の主面222a、222bには、N極とS極が、同一の幅n2で、交互に着磁されている。第2の磁石ユニット222の磁極の幅n2は、駆動部材200の磁極の幅n1と同一である。また、N極の磁極中心とS極の磁極中心との距離n22は、第1の磁石ユニット122の長さ方向に同一であり、長さ方向に均一の距離ピッチを形成している。
第2の磁石ユニット222は、一対の主面222a、222bと垂直で、長手方向に対向する一対の端部である短辺と、短手方向に対向する一対の端部である長辺と、を備える。N極とS極は、第2の磁石ユニット222の短辺に対して傾斜して配置され、長手方向に対向する一対の端部の一方の端部から他方の端部に向けて並べられて配置される。傾斜の角度は、45度である。一対の短辺に配置された磁極は、図6(a)に示すように、主面222aでは、図示の上端から下端に向けてN、S、N、Sの順で並べられている。主面222bでは、主面222aとは逆に、S、N、S、Nの順で並べられている。
第2の磁石ユニット222は、複数連結されて並べられ、1つの磁石連結体を形成する。具体的には、1つの第2の磁石ユニット222の長手方向に対向する一対の端部の一方の端部が、隣り合う第2の磁石ユニット222の一方の端部と当接されて配置される。例えば、図5(c)に示すように、2つの第2の磁石ユニット222の互いに対向する端部が対向して配置され、2つの第2の磁石ユニット222で、1つの磁石連結体を形成する。2つの第2の磁石ユニット222は、図8(a)に示すように、互いに対向する端部の個々の磁極の極性が同一となるように連結される。2つの第2の磁石ユニット222は、支持部材221の支持面221aに磁力又は接着剤により取り付けられる。
支持部材221は、図5(c)に示すように支持面221aを備え、磁性材料で形成された板状の部材である。支持面221aに第2の磁石ユニット222が取り付けられる。第2の磁石ユニット222は、両面多極着磁磁石であり、主面222bが支持面221aに対向することで、支持部材221に吸着されて支持部材221に固定される。第2の磁石ユニット222が片面多極着磁磁石である場合には、第2の磁石ユニット222は、接着材により支持部材221に固定される。
第2の磁石ユニット222を連結して磁石連結体を形成する場合、隣り合う第2の磁石ユニット222の互いに対向する端部の磁極は、同極の磁極が対向して配置されている。同極の磁極が対向して配置することで発生する斥力の影響を緩和するために、第2の磁石ユニット222の短手及び長手方向に対向する端部に当接する壁を設けてもよい。
駆動部材200と第2の磁石ユニット222とは、図5及び図7に示す配置関係にある。複数の第2の磁石ユニット222のうち、いずれか1つの第2の磁石ユニット222の一方の主面222aは、駆動部材200の周面に対向して配置される。駆動部材200の磁極は、駆動部材200の回転軸211に対して、上面視で時計回りの方向に45度傾くように配置される。第2の磁石ユニット222の磁極は、第2の磁石ユニット222が、駆動部材200の周面に対向して配置されたときに、駆動部材200の回転軸211に対して、上面視で反時計回りの方向に45度傾くように配置されている。駆動部材200の磁極と、第2の磁石ユニット222の磁極とは、対向して配置されたときに、90度の角度で交差するように配置される。
駆動部材200の1つの磁極と、第2の磁石ユニット222の1つの磁極は対向して配置される。具体的には、駆動部材200の幅n1の1つ磁極と、第2の磁石ユニット222の幅n1と同一の幅n2の1つ磁極が、一対一で異極同士が対向して配置される。
駆動部材200と第2の磁石ユニット222がこのような配置関係にあるので、図5に示すように、駆動部材200が軸201を中心に矢印C方向に回転すると、駆動部材200の磁極と、第2の磁石ユニット222の一方の主面222aに着磁された磁極との間で、引力と斥力が働き、第2の磁石ユニット222は、駆動部材200の軸201と平行な方向である矢印D方向に移動する。駆動部材200の軸201が矢印Cと反対方向に回転すれば、第2の磁石ユニット222は矢印Dと反対方向に移動する。
支持部材221の支持面221aと反対の面には、係合部材223が取り付けられる。係合部材223は、一定の方向に伸びるレール部材224と係合する。レール部材224は基台225に固定される。
このような構成を備える非接触駆動伝達装置20において、駆動部材200が、モータ210により回転されることで、第2の磁石ユニット222との間で磁力を発生させ、第2の磁石ユニット222が搭載された支持部材221は、係合部材223を介して、レール部材224に沿って移動する。
本実施の形態において、駆動部材200を1つ使用した非接触駆動伝達装置20を説明したが、図8に示すように、駆動部材200を、第2の磁石ユニット222のそれぞれに対応させて使用することもできる。駆動部材200を2つ使用することで、トルクを増強させることができる。
本実施の形態によれば、円筒状の駆動部材200の周面に、駆動部材200の軸201に傾斜して異なる極性である磁極を交互に着磁し、複数の第2の磁石ユニット222に一定方向に異なる極性である磁極を駆動部材200と反対方向に傾斜させて、交互に着磁した。そして、駆動部材200の磁極の幅と、第2の磁石ユニット222の磁極の幅を同一にし、一対一で対応させて配置した。したがって、駆動部材200が軸201を中心に回転することで、複数の第2の磁石ユニット222を取り付けた支持部材221動部材200の軸201と平行な方向に非接触で移動させることができる。
本実施の形態によれば、複数の第2の磁石ユニット222を備える支持部材221駆動部材200の軸201と平行な方向に非接触で移動させることができる。したがって、モータ210を、駆動部材200の回転軸と直交する方向に配置できないようなレイアウトの際に、平行型の非接触駆動伝達装置20を使用することで、製造ラインにおけるスペースを有効に活用することができる。
(実施の形態3)
実施の形態1及び2では、非接触駆動伝達装置の基本的な構成を説明した。直交型の非接触駆動伝達装置10の移動原理を利用して、種々のシステムに利用することができる。本実施の形態では、直交型の非接触駆動伝達装置を用いた搬送システムについて、説明する。
図9は、搬送システムの全体構成を示す図、図10は、搬送システムに使用される搬送ユニットを示す図である。搬送システムは、液晶パネル製造ライン、プリント基板製造ライン、各種電子部品製造ライン、真空チャンバを搭載した搬送ライン、食品の製造ライン、医薬品の製造ラインなどで使用される。
図9に示すように、搬送システム30は、複数の搬送ユニット300と、搬送ユニット300を移動させる駆動部材310と、を備える。複数の搬送ユニット300は、矩形状の搬送路に沿って、駆動部材310により移動される。図9に示す搬送システム30は、搬送ユニット300を背面から見た図である。搬送システム30は、紙面の左右方向と上下方向で位置を特定される。なお、磁極のN極とS極は、図9、11では記載されておらず、領域のみ記載している。
搬送ユニット300は、本実施の形態では14個を使用する。14個の搬送ユニット300に1〜14の番号を付与して、説明する。番号を付与した搬送ユニット300を説明する際には、「搬送ユニット300(番号)」の形式で特定する。例えば、番号1の搬送ユニット300を説明する場合には、「搬送ユニット300(1)」と表記する。
搬送システム30に使用される1つの搬送ユニット300は、図10及び図11に示すように、矩形状に形成された板状の支持部材301と、支持部材301に取り付けられた第1の磁石ユニット122と、を備える。支持部材301は、図11(b)に示すように表面301aと、裏面301bを備える。表面301aには、搬送される搬送物が搭載され、裏面301bには、複数の第1の磁石ユニット122が取り付けられる。
図10は、搬送ユニット300を裏面301bから見た図である。支持部材301の裏面301bには、各辺に複数の第1の磁石ユニット122が並べて配置される。具体的には、各辺に4つずつの第1の磁石ユニット122が取り付けられる。各第1の磁石ユニット122は、互いに対向する端部が異なる極性の磁極が対向して当接され、4つの第1の磁石ユニット122で、1つの磁石連結体を形成する。第1の磁石ユニット122の数は、使用する搬送ユニット300の大きさに応じて、適宜変更される。
搬送ユニット300の一例として、図11(a)〜(c)に、搬送ユニット300(14)を示す。図11(a)は、搬送ユニット300(14)の背面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。駆動部材310は、搬送ユニット300(14)の、上下方向に伸びる一辺に沿って配置された第1の磁石ユニット122と、対向して配置される。本実施の形態では、一辺につき2つ駆動部材310が、第1の磁石ユニット122と対向して配置される。
駆動部材310は、実施の形態1で示した駆動部材100と同一であり、円筒の周面に、周方向に沿って、回転軸311と平行に異なる極性の磁極が交互に着磁されている。駆動部材310の回転軸311と、第1の磁石ユニット122に着磁された磁極の伸びる方向は平行であり、駆動部材310が回転軸311を中心に回転すると、第1の磁石ユニット122は、回転軸311と直交する方向に移動する。第1の磁石ユニット122が移動することで、搬送ユニット300も同一の方向に移動する。なお、回転軸311は、図示の矢印方向に配置されたモータに接続され、モータにより回転される。
また、図11(b)、(c)に示すように、搬送ユニット300の裏面301bに当接して、ローラ320が配置される。ローラ320は、駆動部材310の回転軸311に平行に配置された車軸320aと、車軸320aにより回転される2つの車輪320bと、を備える。搬送ユニット300は、支持部材301の裏面301bと接触するローラ320により、所定の方向に案内される。
このような構成を備える搬送ユニット300は、搬送物が搬送される搬送路に沿って、並べられる。例えば、図9に示すように、14個の搬送ユニット300が、矩形状に並べて配置されることにより、1つの搬送システム30を形成する。
駆動部材310は、搬送路の角部である搬送ユニット300(1)、搬送ユニット300(5)、搬送ユニット300(8)、搬送ユニット300(12)の位置では、搬送ユニット300の隣り合う2辺に当接するように配置される。その他の搬送路の位置では、搬送ユニット300の搬送方向と平行な一辺と当接するように配置される。
搬送路の左右方向に沿って並べられる駆動部材310を第1の駆動部材310aとし、上下方向に沿って並べられる駆動部材310を第2の駆動部材310bとする。搬送路の四隅では、搬送された搬送ユニット300に対しては、搬送ユニット300の隣り合う2辺に沿って、第1の駆動部材310aと第2の駆動部材310bが配置される。
第1の駆動部材310aと第2の駆動部材310bとは、搬送ユニット300が搬送路の四隅の位置まで移動したときに、搬送ユニット300を左右方向から上下方向への移動、あるいは上下方向から左右方向への移動、ができるように、搬送ユニット300の移動方向を変換するために用いられる。
第1の駆動部材310aと第2の駆動部材310bには、前進または後退するための図示しない移動部材が接続されている。例えば、左右方向から上下方向に移動方向を変更する場合には、第1の駆動部材310aと第1の磁石ユニット122との係合を解除し、第2の駆動部材310bと第1の磁石ユニット122とを係合させる。
具体的には、図12に示すように、左右方向に配置された第1の駆動部材310aと第1の磁石ユニット122とが対向した状態(図12(a)の状態)から、第1の駆動部材310aを移動部材により後退させて、第1の駆動部材310aと第1の磁石ユニット122の係合を解除する(図12(b)の状態)。そして、上下方向に配置された第2の駆動部材310bと第1の磁石ユニット122を対向させる(図12(c)の状態)。第2の駆動部材310bが回転することで、第1の磁石ユニット122は上下方向に移動する。
このような構成を備える搬送システムを、食品を搬送しながら加工する方法を例にして、図9を参照して説明する。
搬送ユニット300(1)の位置は、食品を搭載した搬送ユニット300(1)が、処理室に搬入・搬出される位置を示し、搬送ユニット(5)の位置は、食品の洗浄処理がされる位置であり、搬送ユニット(2)、(3)、(4)の位置は、搬入位置と洗浄位置を結ぶ搬送路の位置である。搬送ユニット(8)の位置は、食品の加熱処理がされる位置であり、搬送ユニット(6)、(7)の位置は、洗浄処理位置と加熱処置位置を結ぶ搬送路の位置である。搬送ユニット(12)の位置は、加工された食品を梱包する位置であり、搬送ユニット(9)、(10)、(11)の位置は、加熱処理位置と梱包位置とを結ぶ搬送路の位置である。搬送ユニット(13)、(14)の位置は、梱包位置と搬出位置を結ぶ搬送路の位置である。
このような搬送システム30において、各搬送ユニット300は、駆動部材310が回転駆動されることにより、矢印に沿って時計回りに移動する。そして、各処理位置で処理が施される。搬送ユニット330(1)が、搬送ユニット300(5)の位置まで搬送されると、移動方向を左方向から上方向に変更するために、駆動部材310aが後退し、第2の駆動部材310bが搬送ユニット300の裏面301bに入り込む。第2の駆動部材310bが、上下方向に伸びて配置された第1の磁石ユニット122と対向して回転することで、搬送ユニット300を、上方に移動させる。このような移動を継続して、搬送ユニット300を搬送ユニット300(1)があった位置まで移動させる。
本実施の形態によれば、第1の磁石ユニット122を搬送方向に沿った搬送ユニット300の辺に、複数個取り付けた。搬送ユニット300の辺の長さに応じて、第1の磁石ユニット122の個数を決定して、簡単に非接触駆動伝達装置を製造することができる。
本実施の形態によれば、第1の磁石ユニット122を搬送ユニット300の隣り合う辺に取り付け、第1の磁石ユニット122と対向する位置に第1の駆動部材310a、第2の駆動部材310bを配置した。したがって、搬送方向を変更する場合には、第1の駆動部材310a、第2の駆動部材310bの何れか一方の係合を解除して、他方と係合するように、第1の駆動部材310a、第2の駆動部材310bを移動させることで、簡単に搬送ユニット300の搬送方向を変換させることができる。
本実施の形態では、第1の駆動部材310aと第2の駆動部材310bの何れか一方の係合を解除するが、係合は解除せず搬送することもできる。例えば第1の駆動部材310aが回転することで搬送ユニット300が左右方向に移動する場合、第2の駆動部材310bと第2の駆動部材310bに対面する第1の磁石ユニット122は、各磁極の伸びる方向に移動するため、搬送ユニット300の左右方向移動の妨げにならない。第2の駆動部材310bが回転することで搬送ユニット300が上下方向に移動する場合も同様に、第1の駆動部材310aが搬送ユニット300の上下方向移動を妨げることはない。
本実施の形態によれば、搬送ユニット300の四辺全てに、第1の磁石ユニット122を取り付けた。したがって、搬送方法にバリエーションをもたせることができる。例えば、搬送ユニット300(4)と搬送ユニット300(5)は、互いに対向する辺に取り付けた第1の磁石ユニット122は対向する。互いに対向する辺の第1の磁石ユニット122の、対向する磁極が異なる磁極となるように配置すれば、搬送ユニット300(4)と搬送ユニット300(5)は、互いに吸着し一体として移動させることが可能である。
本実施の形態によれば、搬送ユニット300を磁力により搬送することができるので、機械部品を用いた搬送装置と比べて機械部品からオイルが排出されることもなく、衛生的に搬送することができる。したがって、搬送システム30は、特に、食品や医薬品の製造工程に使用される搬送システムに適している。
(実施の形態4)
実施の形態3では、直交型の非接触駆動伝達装置を用いた搬送システムについて説明した。本実施の形態では、平行型の非接触駆動伝達装置を用いた搬送システムについて説明する。
本実施の形態における搬送システム40は、図13(a)、(b)に示すように、駆動部材410と、駆動部材410により移動される支持部材421と、支持部材421に取り付けられた第2の磁石ユニット222と、搬送する基板に取り付けられた車輪423と、車輪423を案内するレール部材424と、を備える。本実施の形態で使用される磁石ユニットは、実施の形態2で使用された第2の磁石ユニット222と同一である。
駆動部材410は、円筒状の駆動部材であり、回転軸410aを中心に回転する。回転軸410aは、一定の方向に伸びる軸であり、回転軸410aには、所定の間隔を空けて、複数の駆動部材410が取り付けられる。駆動部材410の円筒の周面には、異なる極性の磁極が交互に、同一の幅で着磁されている。磁極は、回転軸410aに対して傾斜をもって着磁されている。本実施の形態では、傾斜の角度は45度である。また、駆動部材410は図示しないモータによって回転駆動される。
支持部材421は、駆動部材410の上方に配置された、矩形状の板状の部材である。支持部材421は、長手方向が回転軸410aと平行に、第2の磁石ユニット222を搭載する面を下にして配置される。
第2の磁石ユニット222は、図13(c)に示すように、矩形形状の板状部材であり、支持部材421と対向する面の反対面に、長手方向に沿って、異なる極性の磁極が交互に着磁されている。磁極の幅は、それぞれ同一の幅であり、駆動部材410の磁極の幅と同一である。また、第2の磁石ユニット222の磁極は、第2の磁石ユニット222の長手方向に対して傾斜をもって、着磁されている。本実施の形態では、傾斜の角度は、駆動部材410と同一の45度であり、駆動部材410とは反対方向に傾斜する。
第2の磁石ユニット222は、長手方向に対向する端部に他の第2の磁石ユニット222が取り付けられて一体となった磁石連結体を形成する。本実施の形態において、磁石連結体は、3つの第2の磁石ユニット222を結合して形成される。そして、磁石連結体は、支持部材421の下面に磁力または接着剤で取り付けられる。
第2の磁石ユニット222を連結した磁石連結体は、第2の磁石ユニット222が並べられた方向が、回転軸410aの伸びる方向と平行となるように配置される。そして、駆動部材410の1つの磁極と、第2の磁石ユニット222の1つの磁極とは、対向して配置される。
支持部材421の、第2の磁石ユニット222が取り付けられた面と反対の面に、搬送される基板425が搭載される。基板425には、支持部材421と当接した端部から上方に向けて、車輪423の車軸423aを受け入れる切欠部425aが形成される。切欠部425aは、取り付ける車輪423の車軸423aの数だけ形成される。本実施の形態では、切欠部425aは、4つ形成される。切欠部でなく、車軸を通す貫通孔であってもよい。
車輪423は、車軸423aの両端部に2つ取り付けられる。基板425の切欠部425aに、車軸423aが入り、車輪423は、基板425とともに移動する。
レール部材424は、駆動部材410の回転軸410aと平行に伸びる、一対のレール体を備える。一対のレール体の上面に車輪423が当接して配置される。
このような構成を備える搬送システム40は、モータによって駆動部材410が回転することにより、駆動部材410の磁極と、第2に磁石ユニット222の磁極との間で磁力が発生し、第2の磁石ユニット222が移動する。第2の磁石ユニット222が取り付けられた支持部材421は、駆動部材410の回転方向に応じて、図示の矢印の方向に移動する。それに伴い、支持部材421に搭載された基板425は、車輪423とレール部材424に案内されて、矢印方向に搬送される。搬送された基板425は、所定の位置で停止し、停止した位置において成膜処理等の基板処理が行われる。また、基板425を停止させず、搬送したまま通過成膜処理をしてもよい。
本実施の形態において、搬送システム40は、駆動部材410が、第2の磁石ユニット222を含む支持部材421の下方に位置する例を説明したが、位置関係は、逆でもよい。駆動部材410が、第2の磁石ユニット222を含む支持部材の上方に位置する例を、図14に示す。
図14に示す搬送システム50は、図13に示す搬送システム40と同様に、駆動部材510と、駆動部材510により移動される支持部材521と、支持部材521に取り付けられた第2の磁石ユニット222と、搬送する基板に取り付けられた車輪523と、車輪523を案内するレール部材524とを備える。
駆動部材510、支持部材521、第2の磁石ユニット222、車輪523、レール部材524の構造は、搬送システム40の、駆動部材410、支持部材421、第2の磁石ユニット222、車輪423、レール部材424の構造と同一である。
支持部材521は、駆動部材510の下方に、長手方向が回転軸510aと平行となるように配置される。支持部材521は、第2の磁石ユニット222を搭載する面を上にして配置される。
第2の磁石ユニット222は、図14(a)に示すように、矩形状の板状部材であり、支持部材521と対向する面の反対面に、長手方向に沿って、異なる極性の磁極が交互に着磁されている。
支持部材521の、第2の磁石ユニット222が取り付けられた面と反対の面には、搬送される基板525が、搭載される。基板525には、支持部材521と当接した端部から下方に向けて、車輪523の車軸523aを受け入れる切欠部525aが、形成される。
レール部材524は、駆動部材510の回転軸510aと平行に伸びる、一対のレール体を備える。一対のレール体の上面に車輪523が当接して配置される。
このような構成を備える搬送システム50は、モータによって駆動部材510が回転することにより、駆動部材510の磁極と、第2の磁石ユニット222の磁極との間で発生する磁力により、第2の磁石ユニット222は移動する。第2の磁石ユニット222が取り付けられた支持部材521は、駆動部材510の回転方向に応じて、図示の矢印の方向に移動する。それに伴い、支持部材521に搭載された基板525は、車輪523とレール部材524に案内されて、矢印方向に搬送される。搬送された基板525は、所定の位置で停止し、停止した位置において成膜処理等の基板処理が行われる。
本実施の形態によれば、搬送される基板425、525の大きさに応じて第2の磁石ユニット222を複数連結することで、搬送システム40、50形成することができる。したがって、搬送システム毎に磁極を着磁した非接触駆動伝達装置を製造する必要がないとともに、第2の磁石ユニット222を容易に脱着して、再利用することが可能である。
搬送システム40は、駆動部材410の上方に第2の磁石ユニット222を配置することで、駆動部材410の上方に搬送される基板425を配置できる。したがって、搬送路において、下方空間が限定されているときに、搬送空間を有効に使用することができる。
搬送システム50は、駆動部材510の下方に第2の磁石ユニット222を配置することで、駆動部材510の下方に搬送される基板525を配置できる。したがって、搬送路において、上方空間が限定されているときに、搬送空間を有効に使用することができる。また、レール部材524により、車輪523を介して基板525を支持することができるので、重量の重い基板525を搬送することができる。
(実施の形態5)
実施の形態1〜4において、第1の磁石ユニット122と第2の磁石ユニット222は、一定の方向にN極とS極が複数並べて配置された磁石であると説明した。第1の磁石ユニット122と第2の磁石ユニット222は、N極とS極を1つずつ並べられた磁石であってもよい。この磁石を第3の磁石ユニットとして説明する。
第3の磁石ユニット622は、図15に示すように、一対の主面622a、622bを有する矩形形状の板状の微小な磁石である。第3の磁石ユニット622は、例えば、12×22×3mmの大きさで形成された磁石である。一対の主面622a、622bの双方に磁極が着磁された両面着磁磁石である。一対の主面622a、622bには、N極とS極が同一の幅m3で、着磁されている。N極とS極は、第3の磁石ユニット622の長辺に沿って平行に着磁されている。
第3の磁石ユニット622は、N極とS極が、一対の主面622a、622bに一つずつ着磁された微小磁石であり、第1の磁石ユニット122との組み合わせ、あるいは、第3の磁石ユニット622を複数連結することで、様々な長さの磁石連結体を形成することができる。
図16(a)、(b)に、第3の磁石ユニット622を使用した搬送システムを示す。図16(a)、(b)に示すように、搬送システム60、61は、複数の駆動部材610と、支持部材621と、支持部材621に取り付けられた第3の磁石ユニット622を含む磁石連結体と、を備える。図16(a)、(b)では、支持部材621は、1つのみ図示されているが、各駆動部材610に対応する数ある。
搬送システム60、61は、高低差のある搬送路に使用される搬送システムであり、食品等の搬送物を搬送するシステムである。図16(a)(b)に示す搬送システム60、61は、矢印で示すように、左から右へ搬送物が搬送される。搬送システム60は、水平な搬送領域L1、L3、L5と、水平な搬送領域同士を繋ぐ傾斜した搬送領域L2、L4とを含む。搬送システム60は、低い搬送領域から高い搬送領域を経て再び低い搬送領域に戻る搬送システムである。搬送システム61は、水平な搬送領域L10、L30、L50と、水平な搬送領域を繋ぐ傾斜した搬送領域L20、L40とを含む。搬送システム61は、高い搬送領域から低い搬送領域を経て再び高い搬送領域に戻る搬送システムである。本実施の形態における搬送システムは、高低差のある搬送路であれば、どのような高低差のパターンにも適用することができる。
駆動部材610は、実施の形態1で示した駆動部材100と同一であり、円筒の周面に、周方向に沿って、回転軸と平行に異なる極性の磁極が交互に着磁されている。
支持部材621は、一対の主面を備える板状部材であり、一方の主面に搬送物を載置し、他方の主面に第3の磁石ユニット622を含む磁石連結体が取り付けられる。
磁石連結体を図17(a)、(b)に示す。図17(a)に示す磁石連結体は、第1の磁石ユニット122に、第3の磁石ユニット622を連結したもの、図17(b)に示す磁石連結体は、第3の磁石ユニット622を複数連結したものである。搬送対象の大きさに応じて、第1の磁石ユニット122と第3の磁石ユニット622を組み合わせる。例えば、搬送物の搬送方向の長さが、第1の磁石ユニット122を2つ組み合わせた場合の長さより短く、第1の磁石ユニット122が1つのみの長さより長い場合、1つの第1の磁石ユニット122に、第3の磁石ユニット622を1つ又は複数組み合わせて連結することで、所望の長さを有する磁石連結体を得る。
本実施の形態で使用される磁石連結体は、高低差のある搬送路を移動する支持部材621に取り付けられる。高低差のある搬送路において、支持部材621は、搬送方向の長さを短くして斜面を移動させる必要がある。本実施の形態のように、第1の磁石ユニット122に、第3の磁石ユニット622を連結したもの、あるいは、第3の磁石ユニット622を複数組合せて連結することで、搬送方向の長さが短い支持部材621に対応することができる。
各駆動部材610は、それぞれの磁石連結体と対向する。駆動部材610の回転軸と、磁石連結体に着磁された磁極の伸びる方向は平行であり、駆動部材610が回転軸を中心に回転すると、磁石連結体は、回転軸と直交する方向に移動する。磁石連結体が移動することで、支持部材621も同一の方向に移動する。
本実施の形態によれば、N極とS極を1つずつ並べた微少磁石である第3の磁石ユニット622を使用した。したがって、第1の磁石ユニット122では長さが足りない支持部材621又は、第1の磁石ユニット122では長すぎる支持部材621に磁石連結体を取り付けるとき、第3の磁石ユニット622は、磁石連結体の長さを調整する部材として利用することができる。
(実施の形態6)
実施の形態1〜4では、第1の磁石ユニット122と、第2の磁石ユニット222は、板状の支持部材に取り付けられると説明したが、支持部材は、板状部材でなくてもよい。図18、19に示すように、円筒状の支持部材であってもよい。
図18に、非接触駆動伝達装置70を示す。非接触駆動伝達装置70は、駆動部材700と、円筒状の支持部材721と、支持部材721に取り付けられた磁石連結体を備える。駆動部材700は、仮想線で示す。
駆動部材700は、実施の形態1で使用された駆動部材100と同様の構造を備える。円筒状の周方向にそって、回転軸700aと平行に伸び、同一のピッチで異なる極性の磁極が交互に着磁されている。
支持部材721は、円筒状の部材であり、円筒状の外周面の周方向に沿って、複数の第3の磁石ユニット622が貼付されている。図では、第3の磁石ユニット622は、駆動部材700の対向する面にのみに貼付されているが、実際は、円筒状の外周面全体に、貼付されている。
第3の磁石ユニット622は、隣り合う第3の磁石ユニット622とは、異なる磁極が対向するように配置される。そして、複数の第3の磁石ユニット622は、隙間なく並べられて、磁石連結体を形成する。
駆動部材700の回転軸700aと、支持部材721の回転軸は平行に配置され、駆動部材700の周面と、支持部材721の外周面に取り付けられた磁極とは対向して配置される。また、駆動部材700の何れか1つの磁極と、支持部材721に取り付けられた磁石連結体の何れかひとつの磁極は一対一で対向して配置される。本実施の形態では、異極同士が対向して配置される。
支持部材721は磁性材料で形成され、第3の磁石ユニット622は、磁力により支持部材721に固定される。第3の磁石ユニット622が、片面着磁磁石である場合には、第3の磁石ユニット622は、支持部材721に、接着剤により貼付されて固定される。
このような構成を備える非接触駆動伝達装置70において、駆動部材700が図示の矢印方向である時計回りに回転すると、駆動部材700の磁極と支持部材721に取り付けられた複数の第3の磁石ユニット622の磁極との間で、磁力が発生し、支持部材721は、図示の矢印方向である反時計回りに回転する。支持部材721の内周面に搬送物を取り付けることで、搬送物を反時計回りに搬送又は移動させることができる。
また、非接触駆動伝達装置70は、実施の形態5で示した搬送システム60に利用することができる。例えば、図18(a)で、仮想線で示す第3の磁石ユニット622を搭載する支持部材621を、駆動部材700と、支持部材721を挟んで反対側に配置することで、実施の形態5で示した搬送システム60の駆動装置として利用することができる。
図18(a)では、第3の磁石ユニット622は、円筒状の支持部材721の外周面に沿って貼付されているが、支持部材721の内周面に沿って貼付してもよい。
図19に、第3の磁石ユニット622が、円筒状の支持部材721の内周面に沿って貼付された非接触駆動伝達装置71を示す。非接触駆動伝達装置71は、駆動部材700と、円筒状の支持部材721とを備える。駆動部材700は、仮想線で示す。駆動部材700は、非接触駆動伝達装置70の駆動部材700と同一の構成である。
支持部材721は、円筒状の部材であり、円筒状の内周面に周方向に沿って、複数の第3の磁石ユニット622が貼付されている。図では、第3の磁石ユニット622は、駆動部材700の対向する面にのみに貼付されているが、実際は、円筒状の内周面全体に、貼付されている。
第3の磁石ユニット622は、隣り合う第3の磁石ユニット622とは、異なる磁極が対向するように配置される。そして、複数の第3の磁石ユニット622は、隙間なく並べられて、磁石連結体を形成する。また、駆動部材700の回転軸700aと、支持部材721の回転軸は平行に配置され、駆動部材700の周面の磁極と、支持部材721の内周面に取り付けられた磁極とは対向して配置される。また、駆動部材700の何れか1つの磁極と、支持部材721に取り付けられた磁石連結体の何れか1つの磁極は一対一で対向して配置される。
このような構成を備える非接触駆動伝達装置70において、駆動部材700が図示の矢印方向である時計回りに回転すると、駆動部材700の磁極と支持部材721に取り付けられた複数の第3の磁石ユニット622の磁極との間で、磁力が発生し、支持部材721は、図示の矢印方向である時計回りに回転する。支持部材721の外周面に搬送物を取り付けることで、搬送物を時計回りに搬送又は移動させることができる。
また、非接触駆動伝達装置71は、実施の形態5で示した搬送システム60に利用することができる。例えば、図19(a)に示すように、仮想線で示す第3の磁石ユニット622を搭載する支持部材621を、支持部材721の外周面と対向して配置する。支持部材721の外周面にも、第3の磁石ユニット622を貼付し、支持部材621の対向する面に取り付けられる磁石ユニットとの間で磁力を発生させ、実施の形態5で示した搬送システム60の駆動装置として利用することができる。
図18、図19に示す非接触駆動伝達装置70、71では、第3の磁石ユニット622は、隣り合う磁石ユニットと隙間なく並べて配置する例を説明したが、第3の磁石ユニット622は、間隔を空けて配置してもよい。
例えば、図20に示すように、非接触駆動伝達装置72は、駆動部材700と、支持部材721と、支持部材721に取り付けられた第3の磁石ユニット622とを備える。第3の磁石ユニット622は、隣合う第3の磁石ユニット622とは隙間を空けて配置されている。
本実施の形態によれば、円筒状の支持部材721に第3の磁石ユニット622を取り付けたので、非接触駆動伝達装置70〜72は、支持部材721の回転する方向へ移動対象物を移動させる駆動伝達装置として利用することができる。
本実施の形態において、非接触駆動伝達装置72を使用した場合には、第3の磁石ユニット622を、支持部材721の周面に間隔を空けて配置するので、第3の磁石ユニット622の個数を削減することができる。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態によって限定されるものではなく、種々の変形例も含む。
(変形例)
実施の形態1〜4において、複数の磁石ユニットは、異なる極性が着磁された方向と同一方向に沿って、連結又は配置されると説明したが、本発明は、このような連結又は配置方法に限定されない。非接触駆動伝達装置により移動される対象に応じて、種々の連結方法の変形が可能である。
図21に示すように、直交型の非接触駆動伝達装置に使用される第1の磁石ユニット122は、短手方向に対向する端部同士を連結させてもよい。2つの第1の磁石ユニット122は、対向する短手方向の端部が、互いに対向して配置される。互いに対向する端部では、同極同士が対向されて連結される。
図22に示すように、平行型の非接触駆動伝達装置に使用される第2の磁石ユニット222も、短手方向に対向する端部同士を連結させてもよい。2つの第2の磁石ユニット222は、対向する短手方向の端部が、互いに対向して配置される。互いに対向する端部では、同極同士が対向されて、同極の磁極の傾斜が連続するように配置される。
図21、22に示す連結方法を利用することにより、移動方向に直交する方向に大きな面積を有する磁石連結体を提供することができる。例えば、底面積の大きい移動対象物を搬送する場合、底面積の大きさに応じて磁石ユニットを並べて連結させることで、搬送物に応じた非接触駆動伝達装置を提供することができる。このような非接触駆動伝達装置を利用することで、磁石連結体が取り付けられた支持部材に大きな搬送物を乗せることができる。
本変形例で示した磁石ユニットの連結方法は一例であり、種々の組み合せが可能である。同一の磁石ユニットを、装置の用途、装置のレイアウトに応じてタイルのように組み合わせることができる。
(着磁器の説明)
第1の磁石ユニット122、第2の磁石ユニット222は、それぞれ着磁される磁極の方向が異なる。磁石ユニットを製造する際には、磁極のパターンに応じた着磁器が使用される。ここでは、ひとつの着磁器により着磁のパターンの異なる着磁が可能である着磁器について説明する。
図23には、異なる着磁パターンを備える磁石ユニットを製造することができる着磁ヨーク800を示す。具体的には、着磁ヨーク800は、異なる極性の磁極を、交互に幅m4で着磁することができる第1の領域801、異なる極性の磁極を、着磁ヨーク800の一辺に対して45度傾斜して、交互に幅m4と同一の幅である幅m5で着磁可能である第2の領域802、異なる極性の磁極を、着磁ヨーク800の一辺に対して、第2の領域802の磁極とは反対方向に45度傾斜して、交互に幅m4と同一の幅である幅m6で着磁可能である第3の領域803を有する。
第2の領域802により第2の磁石ユニット222を、第3の領域803により第2の磁石ユニット222とは異なる傾斜角度の磁石ユニットを形成できる。ひとつの着磁器で、+45度と−45度の着磁が可能となる。
実施の形態1から4では、第1の磁石ユニット122と第2の磁石ユニット222は、矩形形状であると説明したが、矩形形状に限定されない。平行四辺形、三角形であってもよい。
実施の形態1から4では、第1の磁石ユニット122と第2の磁石ユニット222は、短辺と平行または短辺に対して45度傾斜した磁極が着磁されていると説明したが、この角度に限定されない。短辺に対して0度以上360度未満の範囲で、任意に傾斜角度を設定することができる。
実施の形態1から4では、第1の磁石ユニット122又は第2の磁石ユニット222は、連結されて磁石連結体を形成すると説明したが、隣り合う磁石ユニットの間に間隔を空けて配置してもよい。隣り合う磁石ユニットの間に間隔を空けて配置することで、磁石ユニットの個数を減少させることができる。
実施の形態1及び2では、支持部材121、221が磁性材料で形成されると説明したが、支持部材121、221の、第1の磁石ユニット122、第2の磁石ユニット222の対向する面に、磁性材料を塗布してもよい。
実施の形態3では、表面301aに搬送物を搭載し、裏面301bに磁石ユニット302を取り付けると説明したが、裏面301bに搬送物を搭載してもよい。
実施の形態4では、基板を搬送物として説明したが、トレイ、キャリアを搬送してもよい。
実施の形態6では、第3の磁石ユニット622の磁極は、短辺に平行に着磁されていると説明したが、短辺と所定の角度をもって傾斜して磁極を着磁させてもよい。このような第3の磁石ユニット622を利用する場合には、第2の磁石ユニット222を組み合わせて使用してもよい。
実施の形態6では、駆動部材700は、円筒状の周方向に沿って異なる磁極が交互に着磁されていると説明したが、円筒の周面に、第3の磁石ユニット622を貼り付けてもよい。
実施の形態6では、支持部材721は磁性材料で形成されていると説明したが、樹脂材料で形成してもよい。樹脂材料で形成することで、駆動伝達装置の軽量化を図ることができるとともに、第3の磁石ユニット622の密着度を高めることができる。