JP2018185363A - トナー用バインダー樹脂、トナー、トナー用バインダー樹脂の製造方法およびトナーの製造方法 - Google Patents

トナー用バインダー樹脂、トナー、トナー用バインダー樹脂の製造方法およびトナーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐感光体汚染性に優れるトナーを提供する。【解決手段】本発明のトナー用バインダー樹脂は、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)を含有するトナー用バインダー樹脂であって、上記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)がカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)およびこれらの反応物を含み、上記ワックス(C)が上記トナー用バインダー樹脂中に島状に分散しており、島状の上記ワックス(C)の最大径が0.01μm以上1.0μm以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、トナー用バインダー樹脂、トナー、トナー用バインダー樹脂の製造方法およびトナーの製造方法に関する。
一般的に、感光体上に形成したトナー画像を記録紙に転写するPPC(Plain Paper Copy)複写機やプリンターにおける電子写真法は、以下のような手順で行われる。まず、光感光体上に静電気的潜像を形成する。ついで該潜像をトナーを用いて現像し、紙等の被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールやフィルムで加熱定着する。この方法は、熱ロールやフィルムと被定着シート上のトナーが直接接触した状態で加熱下にて定着が行われるので、迅速でしかも熱効率が極めて良好である。したがって、定着効率が非常によい。
このような電子写真法に使用されるトナーにはバインダー樹脂が使用されている。以下の特許文献1〜3には、こうしたトナーの例が記載されている。
特許文献1には、少なくともカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを含み、スチレン系単量体とアクリル系単量体との質量比(S/A)が4.6以上8.5未満であるバインダー樹脂を含有するトナーが記載されている。
特許文献2には、エポキシ当量が1000〜30000である架橋剤(A)と、特定の要件を満たすスチレン・アクリル系樹脂とから得られ、0.1〜50質量%のゲル分を含み、ガラス転移温度が45〜75℃であるトナー用バインダー樹脂を含有するトナーが記載されている。
特許文献3には、重量平均分子量1〜30万のスチレン系樹脂および該スチレン系樹脂100質量部に対してエチレン系炭化水素および/または共役ジエン系炭化水素の1種以上のブロックとスチレンとのブロック共重合体および/またはその水添物0.1〜20質量部を両樹脂との相溶性に優れた溶剤を選択し、均一状態に混合溶解させた後に150〜250℃で加熱脱溶剤して得た樹脂混合物を主成分とすることを特徴とする電子写真用トナー組成物が記載されている。
国際公開第2008/075463号 国際公開第2004/015498号 特許第3061443号公報
本発明者らの検討によれば、例えば、特許文献1および2等に記載のスチレン・アクリル系共重合体樹脂等のバインダー樹脂を用いたトナーは、トナー中のワックスの分散径が大きくて抜け落ちやすい、すなわちブリードアウトしやすいことが明らかになった。
ここで、印刷速度の高速化に伴い、定着時に与えられるトナーへの熱量が低下するため、より高度な定着性能が求められようになってきている。また、現像する際に感光体から紙への転写効率を改善し、廃トナー量の削減が求められるようになってきている。トナーが真球に近づくと定着性能が向上するため、球形化処理が行われるケースがある。
本発明者らの検討によれば、トナーの球形化処理を行う場合、球形化のための熱処理によってワックスがより一層ブリードアウトしやすくなり、その結果、耐感光体汚染性がより一層悪化してしまう場合があることが明らかになった。特許文献3に記載の電子写真用トナー組成物を用いたトナーも、耐感光体汚染性が十分ではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐感光体汚染性に優れるトナーを提供するものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、スチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体を構成単位とする架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂中に、ワックスを特定の大きさで微分散させたトナー用バインダー樹脂を用いることにより、耐感光体汚染性に優れるトナーが得られることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、以下に示すトナー用バインダー樹脂、トナー、トナー用バインダー樹脂の製造方法およびトナーの製造方法が提供される。
[1]
架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)を含有するトナー用バインダー樹脂であって、
上記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)がカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)およびこれらの反応物を含み、
上記ワックス(C)が上記トナー用バインダー樹脂中に島状に分散しており、島状の上記ワックス(C)の最大径が0.01μm以上1.0μm以下であるトナー用バインダー樹脂。
[2]
上記[1]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
当該トナー用バインダー樹脂中の上記スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の含有量が、当該トナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上3.0質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。
[3]
上記[1]または[2]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
当該トナー用バインダー樹脂中のテトラヒドロフラン不溶成分の含有量が、当該トナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。
[4]
上記[3]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
上記テトラヒドロフラン不溶成分が上記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)由来の不溶成分であるトナー用バインダー樹脂。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を含むトナー。
[6]
電子写真用である上記[5]に記載のトナー。
[7]
球形である上記[5]または[6]に記載のトナー。
[8]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂を製造するための製造方法であって、
上記スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の存在下で、上記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)を重合する工程を含むトナー用バインダー樹脂の製造方法。
[9]
上記[8]に記載のトナー用バインダー樹脂の製造方法において、
上記スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)および上記ワックス(C)の存在下で、上記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)と上記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練することにより、上記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)のカルボキシル基と上記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)のグリシジル基を反応させる架橋工程を含むトナー用バインダー樹脂の製造方法。
[10]
上記[9]に記載のトナー用バインダー樹脂の製造方法において、
上記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)と上記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練する際の温度が、140℃以上230℃以下であるトナー用バインダー樹脂の製造方法。
[11]
上記[5]乃至[7]のいずれか一つに記載のトナーを製造するための製造方法であって、
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を溶融混練し、混合物を得る工程と、
得られた上記混合物を粉砕することにより粒子状のトナーを得る工程と、を含むトナーの製造方法。
[12]
上記[11]に記載のトナーの製造方法において、
得られた上記粒子状のトナーを熱風で加熱処理し、球形化処理する工程をさらに含むトナーの製造方法。
[13]
上記[12]に記載のトナーの製造方法において、
上記粒子状のトナーを熱風で加熱処理する際の温度が200℃以上400℃以下であるトナーの製造方法。
本発明によれば、耐感光体汚染性に優れるトナーを提供することができる。
以下に、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、重合という語を共重合の意味で使うことがあり、重合体という語を共重合体の意味で使うことがある。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)を含有する。そして、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)がカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)およびこれらの反応物を含み、ワックス(C)がトナー用バインダー樹脂中に島状に分散しており、島状のワックス(C)の最大径が0.01μm以上1.0μm以下である。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、島状のワックス(C)の最大径が上記範囲内であることにより、得られるトナーの耐感光体汚染性を良好にすることができる。ワックス(C)の最大径は、好ましくは0.01μm以上0.5μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.2μm以下である。以降、ワックス(C)の最大径のことを分散径とも呼ぶ。
上記分散径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、10000倍〜60000倍の倍率で観察することにより確認できる。ここで、観察面積は、10000倍では、25.5μm×16μm程度、60000倍では4.6μm×2.9μm程度である。トリミング・面出し後、RuOで染色し、超薄切片を作製して観察を行う。
上記手法により観察することで、ワックス(C)の最大径を確認することができる。
具体的には、島状のワックス(C)の最も長い部分の長さを測定し、観察視野中で最も大きい値を「最大径」とする。その際、最大径が0.1μm以上の場合は倍率10000倍で視野25.5μm×16μm程度で観察し、最大径が0.1μm未満の場合は60000倍で視野4.6μm×2.9μmで観察する。
なお、本実施形態では、例えばバインダー樹脂中に含まれる各樹脂成分の種類や配合量、バインダー樹脂の調製方法等を適切に選択することにより、上記ワックス(C)の最大径を上記範囲内に制御することが可能である。これらの中でも、例えばスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の種類や含有量、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)とスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)との混合条件等が、ワックス(C)の最大径を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
例えば、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中のスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の含有量を増加させると、ワックス(C)の最大径を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るワックス(C)の含有量を増加させると、ワックス(C)の最大径を大きくすることができる。
また、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の存在下において、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)を重合することにより、ワックス(C)の最大径を小さくすることができる。
スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)は、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)中に島状に存在し得るが、ワックス(C)は島状のスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)中に含まれることが好ましい。この構造によって、最大径が0.01μm以上1.0μm以下と非常に小さい径のワックス(C)を分散することがより一層容易にできる。ただし、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)は、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)中に島状に存在している形態に限定されず、混合している状態であってもよい。また、島状のスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)中にワックス(C)が含まれなくてもよく、ワックス(C)もスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)中ではなく、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)中に存在してもよい。
[バインダー樹脂]
以下、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂について詳細に説明する。
<架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)>
架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)は構成単量体としてスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体を含む樹脂であり、少なくとも1種のスチレン系単量体と少なくとも1種の(メタ)アクリル系単量体とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。
ここで、本実施形態において使用されるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
本実施形態において使用される(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N置換アクリルアミド、N置換メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルであり、より好ましくはアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチルである。
本実施形態において上記単量体の他に、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル等の不飽和二塩基酸のジエステル類も単量体として使用することができる。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中の架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)の含有量は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは70質量%以上98質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上97質量%以下である。これにより、定着性、耐オフセット性、および保存性のバランスにより一層優れたトナーが得られる。
本実施形態に係る架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)は、トナーに要求される定着性、耐オフセット性、耐感光体汚染性、および保存性をバランスよく向上させる観点から、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含有する。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを反応させる方法としては、少なくとも1種のカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)と少なくとも1種のグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融状態で混合することにより反応させる方法が好ましい。このような方法は、従来公知の方法を用いることができる。
また、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)を、下記一般式(1)で表される脂肪酸金属塩(M)の存在下で反応させてもよい。
Figure 2018185363
〔上記一般式(1)において、nは11から22の整数であり、mは2であり、MはZnおよびCaから選択される金属原子である〕
脂肪酸金属塩(M)が、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応において触媒として機能することにより、バインダー樹脂を適切な粘度に調整することができる。
本実施形態に係る架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)において、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の比率(D/E)は、質量比で85/15〜99/1が好ましく、87/13〜97/3がより好ましい。これにより、耐オフセット性に優れたトナーが得られる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の比率を上記上限値以下にすることで、耐オフセット性により優れたトナーにすることができる。また、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の比率を上記下限値以上にすることで、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の反応により適量の架橋成分が生成するため、耐オフセット性により優れたトナーにすることができる。
なお、本実施形態に係る架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)を含有しており、さらにカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)由来のカルボキシル基とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)由来のグリシジル基の反応により生成する架橋成分を含んでいる。
(カルボキシル基含有ビニル樹脂(D))
本実施形態に係るカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)は、スチレン系単量体の少なくとも1種と、(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種と、カルボキシル基含有単量体の少なくとも1種とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)に使用されるスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体としては、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)の説明で例示した単量体を用いることができる。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)に使用されるカルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイヒ酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル類等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチルであり、特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
本実施形態におけるカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)は、単量体として、必要に応じて2個以上の2重結合を有する架橋性モノマーを使用してもよい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、等のジアクリレート化合物およびそれらのメタクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等の多官能架橋性モノマーおよびそれらのメタクリレート化合物等が挙げられる。
これら多官能架橋性モノマーを使用する場合は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)の他のモノマー100質量部に対して0.5質量部以下であることが好ましい。上記上限値以下にすることで、後述するカルボキシル基とグリシジル基の反応により生成する架橋体が、トナー製造の際に切断されにくくなる。
本実施形態に係るカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)の酸価は、0.5〜30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜30mgKOH/gである。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)の酸価が上記下限値以上であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応が良好に進行し、耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。
一方、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)の酸価が上記上限値以下であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との過剰な架橋反応が抑制され、その結果、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の反応によって得られる架橋成分が、非架橋成分と相分離し過ぎることに起因すると考えられる耐オフセット性の低下を抑制できる。
なお、本実施形態において、酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)は、トナーの定着性、耐オフセット性、耐久性等の総合バランスの観点から、GPCにより測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布において分子量5.0×10以上5.0×10以下の領域にピークを有する高分子量ビニル樹脂(H)と、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において分子量1.0×10以上5.0×10未満の領域にピークを有する低分子量ビニル樹脂(L)とを含むことが好ましい。ここで言うピークとはメインピーク(ピークの中で最も強度の大きいピーク)のことを指す。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)が高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)から構成される場合、その比率(H/L)は、トナーの定着性、耐オフセット性、耐久性等の総合バランスの観点から、10/90〜90/10であることが好ましく、10/90〜65/35であることが好ましく、10/90〜50/50であることがより好ましい。
高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記下限値以上とすることで、耐久性や耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーを得ることができる。
(高分子量ビニル樹脂(H))
本実施形態において高分子量ビニル樹脂(H)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量5.0×10以上5.0×10以下の領域にメインピークを有することが好ましく、より好ましくは1.0×10以上3.5×10以下にピークを有することが、優れた定着性、耐オフセット性、耐久性のバランスを実現する上で好ましい。
高分子量ビニル樹脂(H)のメインピークの分子量(以下、ピーク分子量という)を上記下限値以上とすることで、樹脂の強度が向上し、耐久性により優れたトナーを得ることができる。また、後述するグリシジル基との反応による架橋体形成において、架橋形成が良好に進行するため、耐オフセット性に優れたトナーを得ることができる。また、ピーク分子量を上記上限値以下にすることで、高分子量ビニル樹脂が未反応の状態で残っても、定着時のトナーの粘度が上がりにくくなり、定着性により優れたトナーが得られる。また、樹脂の強度も適度になり、生産性にもより優れたトナーとすることができる。
高分子量ビニル樹脂(H)は、酸価(AVH)が3〜35mgKOH/g、より好ましくは5〜27mgKOH/gであることがトナーの定着性、耐オフセット性の面で好ましい。酸価が上記下限値以上であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)と反応しやすく、耐オフセット性により優れたトナーとすることができる。酸価が上記上限値以下であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との過剰な架橋反応が抑制され、その結果、トナーの定着温度域での損失弾性率が適度になり、定着性により優れたトナーとすることができる。
高分子量ビニル樹脂(H)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上の高分子量ビニル樹脂を使用してもよい。その場合、高分子量ビニル樹脂(H)全体として上記特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、カルボキシル基含有単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
(低分子量ビニル樹脂(L))
本実施形態において低分子量ビニル樹脂(L)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量1.0×10以上5.0×10未満にメインピークを有することが好ましく、定着性、耐久性およびトナーの生産性の観点から、分子量2.0×10以上3.0×10以下にメインピークを有することがより好ましい。ピーク分子量を上記下限値以上にすることで、耐久性により優れたトナーとすることができる。ピーク分子量が上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーとすることができる。
低分子量ビニル樹脂(L)は、酸価(AVL)が1〜20mgKOH/gであることが好ましく、2〜18mgKOH/gであることが優れた定着性能と耐オフセット性能を発揮する上でより好ましい。酸価(AVL)を上記下限値以上にすることで、高分子量ビニル樹脂(H)との相溶性が良好になり、耐久性および耐オフセット性により優れたトナーとなる。上記上限値以下にすることで、低分子量ビニル樹脂(L)によるグリシジル基含有ビニル樹脂(E)と高分子量ビニル樹脂(H)との反応阻害を抑制でき、かつ、低分子量ビニル樹脂(L)自体の高分子量化を抑制できるため、耐オフセット性、および、定着性のバランスに、より優れたトナーを得ることができる。
低分子量ビニル樹脂(L)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上の低分子量ビニル樹脂を使用しても構わない。そのときには、低分子量ビニル樹脂(L)全体として、上述の特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、カルボキシル基含有単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
本実施形態において、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)の製造方法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法およびそれらの組み合わせが採用できる。分子量分布の調整や、高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)の混合性、カルボキシル基やグリシジル基の分布調整の簡便さから溶液重合が好適に採用される。
本実施形態に係るカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)は、高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)を、それぞれあらかじめ単独で重合し、それらを溶融状態もしくは溶液状態で混合して得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)もしくは低分子量ビニル樹脂(L)の一方を単独で重合した後、そのビニル樹脂の存在下に他方のビニル樹脂を重合して得ることもできる。
また、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の存在下でカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)を重合することが好ましく、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の存在下で高分子量ビニル樹脂(H)を重合することがより好ましい。
これにより、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)が十分に分散した状態で樹脂中に存在することができ、その後添加されるワックス(C)を高度に分散させることが可能となる。
溶液重合に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、キュメン等の芳香族炭化水素が挙げられ、これら単独またはこれらの混合物が使用され、好ましくはキシレンが好適である。
重合は、重合開始剤を用いて行ってもよいし、重合開始剤を用いずに、いわゆる熱重合を行ってもよい。重合開始剤としては通常、ラジカル重合開始剤として使用可能なものを使用することができる。例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカーボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチル−プロパン)等のアゾ系開始剤;メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド等のスルホニルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、クミルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソブロピルカーボネート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル類等が例示できる。これらの開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の種類や量は反応温度、単量体濃度等により適宜選んで使用でき、通常、用いる単量体100質量部に対して0.01〜10質量部使用される。
(グリシジル基含有ビニル樹脂(E))
本実施形態に係るグリシジル基含有ビニル樹脂(E)は、スチレン系単量体の少なくとも1種と、(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種と、グリシジル基含有単量体の少なくとも1種とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)に使用されるスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体としては、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)の説明で例示した単量体を用いることができる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)に使用されるグリシジル基含有単量体としては、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−β−メチルグリシジル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−β−メチルグリシジル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−β−メチルグリシジルである。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において、好ましくは分子量1.0×10以上1.0×10以下、より好ましくは2.0×10以上8.0×10以下にピークを有する。また、エポキシ価は、0.003〜0.100Eq/100gが好ましく、0.003〜0.080Eq/100gがより好ましい。グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の、ピーク分子量およびエポキシ価が上記下限値以上であると、トナーにした際の耐久性が良好となり、長期連続印刷においてトナー破壊により画像の劣化が起きない、いわゆる現像維持特性がより向上する。また、それと同時に、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応により、高分子量成分の分子量がより増大し、バインダー樹脂に適度な弾性を付与するため、耐オフセット性能がより良好となる。ピーク分子量を上記下限値以上としエポキシ価を上記下限値以上にすることで、バインダー樹脂に適度な弾性を付与し、耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、ピーク分子量を上記上限値以下としエポキシ価を上記上限値以下にすることで、バインダー樹脂の過剰な弾性を抑制でき、定着性により優れたトナーを得ることができる。
なお、本実施形態においてエポキシ価は、樹脂100g中に存在するエポキシ基のモル数であり、その測定はJIS K−7236に準じて行うことができる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上のグリシジル基含有ビニル樹脂を使用してもよい。その場合、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)全体として上記特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、グリシジル基含有単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)不溶成分を含むことが好ましい。
THF不溶成分の含有量は、良好な定着性、耐オフセット性、耐久性、トナー生産性のバランスの観点から、本実施形態に係るバインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは4質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下である。
THF不溶成分を上記下限値以上にすることで、耐オフセット性により優れたトナーとすることができ、さらには、ワックス(C)を混練する際に、十分な混練シェアがかかり、ワックス(C)の分散が良好になり、耐感光体汚染性をより良好にすることができる。また、荷電調整剤、着色剤、磁性体等のトナー部材と本実施形態のバインダー樹脂を混練・粉砕してトナーにする際に、十分な混練シェアがかかり、トナー部材の分散が良好になり、耐感光体汚染性をより良好にすることができる。THF不溶成分を上記上限値以下にすることで、定着性能により優れたトナーとなり、過剰に分離したゲルによる部材の分散不良を防ぎ、耐感光体汚染性がより一層向上する。
ここで、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中のTHF不溶成分は、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)由来の不溶成分であることが好ましく、前述した架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)におけるカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)由来のカルボキシル基とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)由来のグリシジル基との反応により生成する架橋成分由来であることがより好ましい。
<スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)>
本実施形態に係るスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)は、例えば、エチレン系炭化水素および/または共役ジエン系炭化水素由来の構成単位の連鎖からなるブロックと、スチレン由来の連鎖からなるブロックとからなるブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物である水素添加ブロック共重合体から選択される少なくとも一種を含む。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中のスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の含有量は、本実施形態に係るバインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上2質量%以下である。スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるトナーの耐感光体汚染性をより一層良好にすることができる。また、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるトナーの保存性をより一層良好にすることができる。
本実施形態に係るスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)を得るために、一般に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン等のエチレン系炭化水素、およびブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系炭化水素から選択される1種以上を使用してよい。これらを用いて公知のリビングアニオン重合やリビングカチオン重合により生成させたブロック共重合体の反応性基を利用し、さらにこれにスチレンをブロックさせる等の方法で本実施形態に係るスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)は製造される。上記のブロック共重合体の中には不飽和二重結合を有する場合には、公知の方法により不飽和二重結合と水素とを反応させ、水素添加物として使用してもよい。しかしながら、製造方法に制限を受けるものではなく、従来公知のその他の製造方法により製造されたものを使用してもよい。
本実施形態に係るスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)としては、市販のものとして、クレイトンポリマー社のクレイトン(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン系ブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系ブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン系ブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン系ブロック共重合体)、株式会社クラレ製セプトン(スチレン−エチレン/プロピレン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体の水添物)等が挙げられる。
また、本実施形態に係るスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)中のスチレン比率は10〜80質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましい。スチレン比率が上記下限値以上であると、トナーの流動性や保存性がより一層良好になる。また、スチレン比率が上記上限値以下であると、ワックスの分散性がより一層良好になる。
<ワックス(C)>
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、より良好な定着性能や耐オフセット性能を発現させるためにワックス(C)を含有する。
ワックス(C)の種類は限定されないが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスが好ましい。特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスから選択される一種または二種以上が好ましい。ワックス(C)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
上記以外のワックス(C)としては、例えば、酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうのような植物系ワックス;蜜蝋、ラノリン、鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステル、カスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部または全部を脱酸化したワックス;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、またはさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類のような飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、またはさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールのような飽和アルコール;ソルビトールのような多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレン系単量体や(メタ)アクリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、グリシジル基含有単量体のようなビニル系単量体を用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪族と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することにより得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;メタロセン触媒によって合成されたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリヘプテン、ポリオクテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体や、長鎖アルキルカルボン酸と多価アルコールを縮合したり長鎖アルキルカルボン酸のハロゲン化物と多価アルコールを反応したりして得られるエステル基含有ワックス等が挙げられる。さらには、水酸基やエステル基やカルボキシル基等の官能基を有するワックスが挙げられる。
本実施形態において、ワックス(C)の含有量は、耐オフセット性、保存性のバランスの観点から、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下がより好ましい。ワックス(C)の含有量を上記下限値以上にすることで耐オフセット性により優れたトナーとすることができ、上記上限値以下にすることでトナーの保存性の悪化を抑制することができる。
[バインダー樹脂の製造方法]
次に、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るバインダー樹脂の製造方法の一例としては、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)を溶融混練する方法がある。
また、他の例としては、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)の存在下で、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練することによってカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを架橋反応させ、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)を得る工程を含む製造方法がある。
ワックス(C)の最大径をより小さくするには、後者の方法すなわちスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)の存在下で、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練することで架橋する工程を含む方法が好ましい。
このような方法は、例えば攪拌機付きの反応容器等にスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)、ワックス(C)、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、およびグリシジル基含有ビニル樹脂(E)を仕込み、加熱して溶融状態で反応させる方法を採用でき、特に2軸混練機を用いる方法が好ましい。
スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)の存在下で、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練して架橋反応させることで、ワックス(C)をより一層微分散させることができる。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との架橋反応時の増粘による撹拌シェアの増大等によりワックス(C)がより一層微分散すると考えられる。
溶融混練時の温度は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)やグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の官能基量や分子量によって異なるため特に限定されないが、140℃以上230℃以下が好ましく、170℃以上220℃以下がより好ましい。溶融混練時の温度を上記下限値以上にすることで、架橋体形成が良好となり、かつ混練のシェアが適度になり、ワックス(C)をより一層微分散させることができる。
溶融混練時の温度を上記上限値以下にすることで、架橋反応が過剰に進行するのを防ぎ、架橋成分と非架橋成分との相分離を抑制して、耐オフセット性により一層優れたトナーを得ることができる。また、解重合を抑制し、バインダー樹脂中の残存揮発分によるトナーの現像維持特性や臭気等の問題が発生する懸念を低減することができる。
2軸混練機を用いて溶融混練する方法においては、2軸混練機に水を注入口から注入し、注入口より出口側に設置した減圧口から減圧することで水および揮発成分を除去する方法もある。この方法によって、十分に水が樹脂に混合され、減圧した際に樹脂中に残存していたモノマーや溶剤等の揮発成分が除去されやすくなる。
このようにして得られた樹脂を冷却・粉砕してトナー用バインダー樹脂とする。冷却・粉砕する方法は従来公知のいかなる方法も採用できる。また、冷却方法として、スチールベルトクーラー等を使用して急冷することも可能である。
[トナー]
次に、本実施形態に係るトナーについて説明する。
本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂以外のトナー部材として、着色剤を含む。さらに、荷電調整剤、磁性体、本実施形態に係るバインダー樹脂以外の樹脂、および表面処理剤等から選択される一種または二種以上をさらに含んでもよい。
以下、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材を説明する。
着色剤としては、従来公知の顔料および染料を使用することができる。
顔料としては、例えば、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、16、17、C.I.アシッドブルー6、C.I.アシッドブルー45またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。黒色顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162等が挙げられる。
これらの着色剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
着色剤のトナーへの含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部である。
着色剤の代わりとして磁性体を使用することもできる。磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素等の元素を含む金属酸化物等が挙げられ、具体的には四三酸化鉄、三二酸化鉄、酸化鉄亜鉛、酸化鉄イットリウム、酸化鉄カドミウム、酸化鉄ガドリニウム、酸化鉄銅、酸化鉄鉛、酸化鉄ニッケル、酸化鉄ネオジム、酸化鉄バリウム、酸化鉄マグネシウム、酸化鉄マンガン、酸化鉄ランタン、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉等が挙げられる。これらの磁性体は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、その形状としては、球形、八面体、六面体のものを使用することが好ましく、さらには球形のものを使用することが磁性体をトナー中に均一に分散させる点で好ましい。
磁性体の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して4〜200質量部が好ましく、より好ましくは10〜170質量部、さらに好ましくは20〜150質量部である。
また、本実施形態に係るトナーは、必要に応じて本実施形態の効果を阻害しない範囲において、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ロジン、重合ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、芳香族石油樹脂、塩ビ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、クロマン−インデン樹脂、メラミン樹脂等の樹脂を一部添加して使用してもよい。
また、着色剤の分散向上を目的として、着色剤をバインダー樹脂もしくはそれら原料樹脂に予め分散して、いわゆるマスターバッチを製造しておき、それをトナーに添加する方法を行ってもよい。具体的には着色剤20〜60質量%、樹脂成分80〜40質量%を粉体状態で混合し、得られた混合物を二軸混練機、オープンロール混練機や、加圧ニーダー等のバッチ式混練機等で混練し、それを粉砕したものをトナー製造時に使用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、正帯電性または負帯電性を保持させるために荷電調整剤を含有してもよい。荷電調整剤としては従来公知のものを使用できる。
正帯電性の荷電調整剤としては、例えば、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジシクロヘキシル錫オキサイドのようなジオルガノ錫オキサイド;ジブチル錫ボレート、ジオクチル錫ボレート、ジシクロヘキシル錫ボレートのようなジオルガノ錫ボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;イミダゾリウム塩類;さらにはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとスチレン系単量体と必要により(メタ)アクリル系単量体を共重合した後にパラトルエンスルホン酸アルキルエステルで四級化する等の手法によって得られる四級アンモニウム塩基含有共重合体が挙げられる。
負帯電性の荷電調整剤としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸金属錯体、芳香族ジカルボン酸金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族モノカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸およびその金属塩や無水物やエステル類、ビスフェノールのようなビスフェノール誘導体があり、さらには配位中心金属がSc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mn、Feから選択され、かつ、カチオンが水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンから選択されるアゾ系金属化合物や、配位中心金属がCr、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、Zn、Si、B、Alから選択され、かつ、カチオンが水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムから選択される芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体や芳香族ポリカルボン酸誘導体の金属化合物(芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体および芳香族ポリカルボン酸は置換基としてアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、カルバモイル基を有していてもよい)、スルホン酸基含有アクリルアミド系単量体とスチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体の共重合体のようなスルホン酸基含有単量体を構成成分とする重合体等が挙げられる。これらの荷電調整剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
荷電調整剤のトナーへの含有量は、帯電量とトナーの流動性のバランスから、バインダー樹脂100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。また、添加方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法やそれらを組み合わせたものが適用できる。
本実施形態に係るトナーは、トナーの表面に対して表面処理剤を添加することによって、トナーとキャリア、あるいはトナー相互の間に該表面処理剤を存在させることが好ましい。表面処理剤を添加することにより、粉体流動性、保存性、帯電安定性、および環境安定性が向上され、かつさらに現像剤の寿命をも向上させることができる。
表面処理剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、およびそれらの疎水化物等が挙げられる。シリカ微粉体は、湿式シリカ、乾式シリカ、乾式シリカと金属酸化物の複合体等が使用でき、さらに、これらを有機ケイ素化合物等で疎水化処理されたものが使用できる。疎水化処理は、例えば、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、有機ケイ素化合物で処理する方法等が挙げられる。疎水化処理に用いられるシラン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α―クロルエチルトリクロルシラン、β―クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1、3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。疎水化処理に用いられる有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル類が挙げられる。また、酸化チタン微粉末にオイル処理したものや、0.03μm〜1μmのビニル樹脂の微粒子等も使用してもよい。
これら以外の表面処理剤として、ポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、磁性粉、アルミナ等の研磨剤、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫等の導電性付与剤等も使用してもよい。さらには、表面処理剤の形状として、粒径が100nm以下の小粒径の粒子、粒径が100nm以上の大粒径の粒子、八面体状、六面体状、針状、繊維状等様々な形状のものを使用してもよい。表面処理剤は単独または2種以上を組み合わせて使用してよい。
該表面処理剤の添加量は、トナー100質量部中、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
本実施形態に係るトナーを二成分現像剤として使用する場合、キャリアとして従来公知のものを使用できる。例えば、表面酸化または未酸化の鉄、コバルト、マンガン、クロム、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、リチウム、希土類のような金属およびそれらの合金または酸化物からなる個数平均粒径15〜300μmの粒子が使用できる。これらのキャリアはスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂等により表面コートされているものを使用してもよい。さらには、樹脂に磁性微粒子が分散されてなる磁性微粒子分散型コアと該磁性微粒子分散型コアの表面を被覆する被覆樹脂を含有する被覆層を有する磁性キャリアを使用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、公知の種々の現像プロセスに用いることができる。例えば、特に限定されないが、カスケード現像法、磁気ブラシ法、パウダー・クラウド法、タッチダウン現像法、キャリアとして粉砕法によって製造された磁性トナーを用いる所謂マイクロトーニング法、磁性トナー同士の摩擦帯電によって必要なトナー電荷を得る所謂バイポーラー・マグネチックトナー法等が挙げられる。また、本実施形態に係るトナーは、従来公知のファーブラシ法、ブレード法等の種々のクリーニング方法にも用いることができる。また、本実施形態に係るトナーは、従来公知の種々の定着方法に用いることができる。具体的には、オイルレスヒートロール法、オイル塗布ヒートロール法、熱ベルト定着法、フラッシュ法、オーブン法、圧力定着法等が例示される。また、電磁誘導加熱方式を採用した定着装置に使用してもよい。さらには中間転写工程を有する画像形成方法に用いてもよい。
[トナーの製造方法]
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂と着色剤とを混合する工程を含む。トナー用バインダー樹脂と着色剤とを混合する工程において、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材も混合してもよい。
本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を用いて、トナー用バインダー樹脂と着色剤を混合して製造される。混合する方法は、従来公知の方法でよい。例えば、バインダー樹脂、着色剤と、必要に応じて荷電調整剤等のトナー部材とをヘンシェルミキサー等の粉体混合機により充分に混合した後、2軸混練機、オープンロール混練機等の混練機を用いて溶融混練して各構成成分を充分に混合する。これを冷却後、粉砕、分級を行って、通常4〜15μmの範囲の粒子を集め、粉体混合法により表面処理剤をまぶしてトナーを得る方法が挙げられる。
また、表面処理装置等により、トナーを球形化処理してもよい。表面処理の方法としては、例えば、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法や機械的な衝撃によりトナーの角を取る方法が挙げられる。画質の向上等を目的として、これらの表面処理を行って、フロー式粒子像測定装置(例えばシスメックス社製 FIPA−3000)によって測定される平均円形度を0.960以上に調整してもよい。
また、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法では、粒子状のトナーを熱風で加熱処理する。このときの温度は200℃以上400℃以下であることが好ましい。
本実施形態に係るトナーは、電子写真、静電記録、静電印刷等における、静電荷像を現像するための電子写真用トナーに好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。また、データの測定法および判定法は次の通りである。さらに、表中、Stはスチレン、Macはメタクリル酸、BAはアクリル酸n−ブチル、GMAはメタクリル酸グリシジルを表す。
<酸価>
本実施例における酸価(AV)は、以下の通り算出した。キシレン:n―ブタノール=1:1質量比の混合溶媒に精秤した試料を溶解した。予め標定された0.1mol/L水酸化カリウムのアルコール(特級水酸化カリウム7gにイオン交換水5g添加し、1級エチルアルコールで1L(リットル)とし、0.1mol/L塩酸と1%フェノールフタレイン溶液にて力価=Fを標定したもの)で滴定し、その中和量から次式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(0.1mol/L KOH滴定量(ml)×F×5.61)/(試料g×0.01)
<ピーク分子量>
本実施例におけるピーク分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めたものであり、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。測定条件は下記の通りである。
GPC装置:SHODEX(登録商標) GPC−101(昭和電工株式会社製)
検出器:RI検出器
カラム:SHODEX(登録商標) GPC KF−Gを1本、 GPC KF−807Lを3本、およびGPC KF−800Dを1本(昭和電工株式会社製)、をこの順番に直列に連結して用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.2ml/分
サンプル濃度:0.002g−resin/ml−THF
注入量:100μL
サンプル溶液は、測定直前にフィルターを用い、THFに不溶な成分を除去した。
<融点>
ワックス(C)の融点は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、Q1000(TAインスツルメント社製)によって測定した。試料約10mgを−20℃から200℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブの吸熱ピークより融点を求めた。
<エポキシ価>
エポキシ価は以下の手順で計算した。樹脂試料0.2〜5gを精秤し、200mlの三角フラスコに入れた。その後、ジオキサン25mlを加えて溶解させた。1/5規定の塩酸溶液(ジオキサン溶媒)25mlを加え、密栓して十分に混合した。その後、30分間静置した。次に、トルエン‐エタノール混合溶液(1:1容量比)50mlを加えた後、クレゾールレッドを指示薬として1/10規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。滴定結果に基づいて、下記式にしたがってエポキシ価(Eq/100g)を計算した。
エポキシ価(Eq/100g)=[(B−S)×N×F]/(10×W)
ここで、Wは試料採取量(g)、Bは空試験に要した水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)、Sは試料の試験に要した水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)、Nは水酸化ナトリウム水溶液の規定度、およびFは水酸化ナトリウム水溶液の力価である。
<THF不溶分>
本実施例におけるバインダー樹脂のTHF不溶分は以下の通り求めた。
樹脂0.4g、THF39.5gを50ml蓋付ガラス製サンプル管に投入し、このサンプル管を回転数50rpm、22℃の条件で48時間攪拌した後、22℃で48時間静置した。その後、サンプル管の上澄み液5gを150℃で1時間乾燥させた後の質量を測定し、その質量をXgとして以下の式にてTHF不溶分率(質量%)を計算した。
Figure 2018185363
<ワックス(C)の最大径の測定>
透過型電子顕微鏡H−7000(日立社製)を用いて、10000倍および60000倍の倍率でワックス(C)の分散状態を確認した。観察面積は、10000倍では25.5μm×16μm、60000倍では4.6μm×2.9μmとした。
得られた画像から、ワックス(C)の最も長い部分の長さをそれぞれ測定し、それらの内、最も大きい値を最大径とした。
<トナーの評価>
次に、以下に本実施例で行ったトナーの評価方法を記載する。
1.定着評価
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を190mm/秒とし、それぞれ130℃、150℃の温度で定着させた。得られた定着画像を砂消しゴム(株式会社トンボ鉛筆製)により、1.0kgfの荷重をかけ、6回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。摩擦後の画像濃度÷摩擦前の画像濃度×100を変化率とした。画像の濃度を変えて同様に変化率を測定し、変化率の最も低い数値を各温度での最低変化率とした。130℃、150℃でのそれぞれの最低変化率の平均値を定着率として算出し、下記評価基準で判定した。なお、ここで用いた熱ローラー定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものであった。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃、相対湿度55%)とした。
(評価基準)
○ : 65%≦定着率
△ : 60%<定着率<65%
× : 定着率≦60%
2.耐オフセット性
上記定着評価の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した。その後、上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、非画像部分にトナー汚れが生ずるか否かを観察した。上記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を100℃から5℃ずつ順次250℃まで上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じない設定温度の幅をもって耐オフセット温度幅とした。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
○ : 100℃≦耐オフセット温度幅
△ : 80℃≦耐オフセット温度幅<100℃
× : 耐オフセット温度幅<80℃
3.保存性
温度50℃、相対湿度60%の環境条件下、トナー5gを24時間放置した。これを150メッシュのふるいにのせ、パウダーテスター(細川粉体工学研究所社製)の加減抵抗機の目盛りを3にして、1分間振動を加えた。振動後の150メッシュのふるいの上に残った質量を測定し、残存質量比を求めた。
(評価基準)
○ : 残存質量比<25%
△ : 25%≦残存質量比<30%
× : 30%≦残存質量比
4.耐感光体汚染性
非磁性1成分現像方式のレーザービームプリンターにて、温度22℃、相対湿度55%でA4用紙に印字率5%のチャートを用いて連続印刷を行った。1000枚ごとにベタ画像を印刷し、白抜けの有無を目視にて確認し、間接的に感光体の汚染性を評価した。
(評価基準)
◎ : 15000枚を超えても白抜けの発生なし
○ : 10001〜15000枚で白抜けが発生
△ : 5001〜10000枚で白抜けが発生
× : 5000枚以下で白抜けが発生
[グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の製造例]
(製造例E−1)
キシレン50質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表1記載の単量体100質量部にジ−t−ブチルパーオキサイド0.5質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温130℃に保ち、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、重合液を得た。これを160℃、1.33kPaの容器中にフラッシュして溶剤等を留去し、樹脂E−1を得た。その物性値を表1に示す。
(製造例E−2、E−3)
表1に示す組成で、製造例E−1と同様にして、樹脂E−2、E−3を得た。それらの物性値を表1に示す。
Figure 2018185363
[低分子量ビニル樹脂(L)の製造例]
(製造例L−1)
キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表2記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温98℃に保ち、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−1の重合液を得た。物性値を表2に示す。
(製造例L−2)
キシレン75質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表2記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温98℃に保ち、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3質量部を加えて1時間反応を継続し、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−2の重合液を得た。物性値を表2に示す。
Figure 2018185363
[高分子量ビニル樹脂(H)の製造例]
(製造例H−1)
表3記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を3時間行った。次いで、キシレン30質量部を加え、ジビニルベンゼン0.2質量部を加えた後、130℃に昇温した。予め混合溶解しておいたジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部、キシレン70質量部を130℃に保ちながら5.5時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続した。その後、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え10時間反応を継続して重合を完結し、H−1の重合液を得た。物性値を表3に示す。
(製造例H−2)
表3に示す仕込み組成で、製造例H−1と同様の方法で、H−2の重合液を得た。物性値を表3に示す。
(製造例H−3)
表3記載の単量体およびスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)(表4に示すスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B−1))100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を3時間行った。次いで、キシレン30質量部を加え、ジビニルベンゼン0.2質量部を加えた後、130℃に昇温した。予め混合溶解しておいたジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部、キシレン70質量部を130℃に保ちながら5.5時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続した。その後、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え10時間反応を継続して重合を完結し、H−3の重合液を得た。高分子量ビニル樹脂(H)の物性値を表3に示す。
(製造例H−4)
表3に示す仕込み組成で、製造例H−3と同様の方法で、H−4の重合液を得た。高分子量ビニル樹脂(H)の物性値を表3に示す。
Figure 2018185363
[カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)とワックス(C)の混合物(F)の製造例]
(製造例F−1)
高分子量ビニル樹脂(H)、低分子量ビニル樹脂(L)、表4に記載のスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)、および表5に記載のワックス(C)を固形分として表6に示す仕込み組成となるように混合した。その後、キシレン還流下において30分間混合し、これを190℃、1.33kPaのベッセル(容器)中にフラッシュして溶剤等を留去し、樹脂F−1を得た。
(製造例F−2〜F−15)
表6に示す仕込み組成で、製造例F−1と同様の方法で、F−2〜F−15の樹脂を得た。
ここで、F5〜F10は、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)を含むH−3またはH−4を用いているため、表6には示していないが、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)を含んでいる。
Figure 2018185363
Figure 2018185363
Figure 2018185363
[バインダー樹脂(G)の製造例]
(製造例G−1〜G−15)
カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)とスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)とワックス(C)の混合物(F)と、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との質量比が表7に記載の比率となるように各樹脂を混合した。その後、表7に記載の混練温度に温度設定した2軸混練機(KEXN S−40型、栗本鐵工所社製)にて、25kg/hr、モーター回転数1400rpmで混練反応した。この混練物をスチールベルトクーラー(NR3−Hiダブルクーラ、日本ベルティング株式会社製)を使用して冷却水温10℃、冷却水量90L/分、ベルトスピード6m/分の条件で急冷した後、粉砕し、バインダー樹脂G−1〜G−15を得た。THF不溶分、ワックス(C)の最大径を表7に示す。
なお、ワックス(C)の最大径の測定での透過型電子顕微鏡観察で、バインダー樹脂G−1〜G−11、G−13〜G−15は、ワックス(C)が島状のスチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)中に含まれているものも観察された。
Figure 2018185363
[電子写真トナー(T)の製造例]
(製造例T−1〜T−15)
表7に記載のバインダー樹脂(G)、カーボンブラック(Regal 330R;キャボット社製)、および荷電調整剤(T−77;保土谷化学工業社製)を表8に記載の組成となるようにヘンシェルミキサーにて混合した。その後、2軸混練機(PCM−30型、池貝機械社製)にて、2軸混練機吐出部樹脂温度120℃、滞留時間30秒で混練させた。次いで、この溶融混練物を冷却後、ジェット式粉砕機(IDS―2UR型、日本ニューマチック工業社製)で体積中位径D50が7.6μmに粉砕した。続いて、上記粉砕物を分級機(DSX−2型、日本ニューマチック工業社製)で微粉をカットし、体積中位径D50が7.9μmのトナー粒子を得た。次に上記トナー粒子100質量部に対し、外添剤として疎水性シリカ(R−812、日本アエロジル社製)を0.7質量部添加してヘンシェルミキサーで混合した後、表面改質機(MR−10型、日本ニューマチック工業社製)でトナーのフィード量2kg/hr、熱風風量800L/分、熱風温度300℃で球形化処理を行った。最後に、トナー粒子100質量部に対して疎水性シリカ(R−812、日本アエロジル株式会社製)0.5質量部、疎水性酸化チタン(NKT−90、日本アエロジル株式会社製)0.2質量部添加し、平均円形度が0.967、体積中位径D50が約8.4μmのトナーT−1〜T−15を得た。物性値を表8に示す。
Figure 2018185363
(実施例1〜14および比較例1)
表8に記載のトナーで保存性と耐感光体汚染性の評価を行った。また表8に記載のトナー3質量%に対し、キャリア(パウダーテック株式会社製、F−150)97質量%を混合して現像剤とし、定着性と耐オフセット性の評価を行った。
Figure 2018185363
表9の結果から明らかなように、本実施例により製造されたトナーはいずれも耐感光体汚染性に優れたものであった。

Claims (13)

  1. 架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)、スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)およびワックス(C)を含有するトナー用バインダー樹脂であって、
    前記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)がカルボキシル基含有ビニル樹脂(D)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)およびこれらの反応物を含み、
    前記ワックス(C)が前記トナー用バインダー樹脂中に島状に分散しており、島状の前記ワックス(C)の最大径が0.01μm以上1.0μm以下であるトナー用バインダー樹脂。
  2. 請求項1に記載のトナー用バインダー樹脂において、
    当該トナー用バインダー樹脂中の前記スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の含有量が、当該トナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、0.1質量%以上3.0質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。
  3. 請求項1または2に記載のトナー用バインダー樹脂において、
    当該トナー用バインダー樹脂中のテトラヒドロフラン不溶成分の含有量が、当該トナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。
  4. 請求項3に記載のトナー用バインダー樹脂において、
    前記テトラヒドロフラン不溶成分が前記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂(A)由来の不溶成分であるトナー用バインダー樹脂。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を含むトナー。
  6. 電子写真用である請求項5に記載のトナー。
  7. 球形である請求項5または6に記載のトナー。
  8. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂を製造するための製造方法であって、
    前記スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)の存在下で、前記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)を重合する工程を含むトナー用バインダー樹脂の製造方法。
  9. 請求項8に記載のトナー用バインダー樹脂の製造方法において、
    前記スチレン・オレフィン系ブロック共重合体(B)および前記ワックス(C)の存在下で、前記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)と前記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練することにより、前記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)のカルボキシル基と前記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)のグリシジル基を反応させる架橋工程を含むトナー用バインダー樹脂の製造方法。
  10. 請求項9に記載のトナー用バインダー樹脂の製造方法において、
    前記カルボキシル基含有ビニル樹脂(D)と前記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練する際の温度が、140℃以上230℃以下であるトナー用バインダー樹脂の製造方法。
  11. 請求項5乃至7のいずれか一項に記載のトナーを製造するための製造方法であって、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を溶融混練し、混合物を得る工程と、
    得られた前記混合物を粉砕することにより粒子状のトナーを得る工程と、を含むトナーの製造方法。
  12. 請求項11に記載のトナーの製造方法において、
    得られた前記粒子状のトナーを熱風で加熱処理し、球形化処理する工程をさらに含むトナーの製造方法。
  13. 請求項12に記載のトナーの製造方法において、
    前記粒子状のトナーを熱風で加熱処理する際の温度が200℃以上400℃以下であるトナーの製造方法。
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