JP2018180535A - レンズ鏡筒、撮像装置、および、レンズ鏡筒の製造方法 - Google Patents

レンズ鏡筒、撮像装置、および、レンズ鏡筒の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラスチックレンズの光学的信頼性をより高めたレンズ鏡筒を提供する。【解決手段】レンズ鏡筒は、樹脂を含むレンズ(L22)と、接着剤(404)を介してレンズを保持するレンズ保持部材(2)とを有し、レンズは、第1の領域と、接着剤が塗布され、レンズ保持部材に固定される第2の領域とを有し、第2の領域は、第1の領域よりも樹脂の酸化物、もしくは分解された変性物を多く含む。【選択図】図5

Description

本発明は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像装置に用いられるレンズ鏡筒に関する。
従来から、ビデオカメラや一眼レフ交換レンズなどの光学機器には、倍率変動や焦点合わせなどを行う光学部材(レンズ)として、無機物であるガラス(SiO)や蛍石(MgF)が使用されている。このようなレンズは、熱可塑性を有するレンズ保持部材に熱かしめで固定する方法や、赤外線や熱で可塑性や接着性が生じる固体状の補助材料を使用して固定する方法が知られている。また、紫外線などで硬化することで保持力を生じる液状接着剤を使用してレンズを固定する方法も広く知られている。特に、レンズの位置をレンズ保持部材に対して微調整した後に固定する場合、液状接着剤を使用して固定する方法が適して用いられる。
近年、光学機器の軽量化やローコスト化を達成するため、光学部材に有機物である熱可塑性樹脂を主成分とする光学部材、所謂プラスチックレンズが使用されるようになってきた。このようなプラスチックレンズは、レンズ保持部材に熱かしめで固定しようとすると、熱により歪みなどが発生するため光学性能を得たまま固定するのは難しい。同様に、赤外線や熱で可塑性や接着性が生じる固体状の補助材料で固定しようとしても、熱による歪みが発生する。
一方、紫外線硬化型の接着剤を使用した固定方法では、プラスチックレンズに対して強個な接着力を発現させることは難しい。特許文献1には、プラスチックレンズの材質を工夫して接着力を向上させる方法が開示されている。
特開2015−001666号公報
しかしながら、特許文献1のようにプラスチックレンズの材質そのものを変更することは、プラスチックレンズの信頼性の低下に繋がる。特許文献1には、光学性能の影響を小さくすることが比較的容易な最も像側のレンズの材料に接着剤と相性または接着性の良い極性基を有する熱可塑性樹脂組成物を選択的に用いることが開示されている。このように特許文献1の構成では、極性を有する材料を採用するため、吸湿による屈折率変化など信頼性が低下する可能性がある。
そこで本発明は、プラスチックレンズの光学的信頼性をより高めたレンズ鏡筒、撮像装置、および、レンズ鏡筒の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面としてのレンズ鏡筒は、樹脂を含むレンズと、接着剤を介して前記レンズを保持するレンズ保持部材とを有し、前記レンズは、第1の領域と、前記接着剤が塗布され、前記レンズ保持部材に固定される第2の領域とを有し、前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記樹脂の酸化物、もしくは分解された変性物を多く含む。
本発明の他の側面としての撮像装置は、前記レンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を介して形成された光学像を光電変換する撮像素子とを有する。
本発明の他の側面としてのレンズ鏡筒の製造方法は、樹脂を含むレンズの一部の領域に対して親水処理を行うステップと、前記レンズと該レンズを保持するレンズ保持部材とを位置決めするステップと、前記親水処理を行った前記領域において、接着剤を介して前記レンズを前記レンズ保持部材に固定するステップとを有する。
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
本発明によれば、プラスチックレンズの光学的信頼性をより高めたレンズ鏡筒、撮像装置、および、レンズ鏡筒の製造方法を提供することができる。
実施例1における撮像装置のブロック図である。 実施例1におけるズームレンズ群の斜視図である。 実施例1におけるレンズ保持部材の斜視図である。 実施例1におけるズームレンズの側面図である。 実施例1における親水処理装置の斜視図である。 実施例1における親水処理のメカニズムである。 実施例1におけるズームレンズおよび親水処理装置の蓋部の側面図である。 実施例1における親水処理後のズームレンズおよびレンズ保持部材の側面図である。 実施例1における接着工具の説明図である。 実施例1における効果を示す比較表1である。 実施例1における効果を示す比較表2である。 実施例1における効果を示す比較表3である。 実施例1における効果を示す比較表4である。 実施例2におけるズームレンズの側面図である。 実施例2における親水処理装置の斜視図である。 実施例2におけるズームレンズ群の斜視図である。 実施例3におけるズームレンズ群の斜視図である。 実施例3における親水処理装置の斜視図である。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施例1における撮像装置(光学機器)について説明する。図1は、本実施例における撮像装置100のブロック図である。撮像装置100は、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、または、レンズ交換式カメラなどを含むが、これらに限定されるものではない。また本実施例は、光学機器として撮像装置100について説明するが、これに限定されるものではなく、双眼鏡、望遠鏡、または、フィールドスコープなどの他の光学機器にも適用可能である。これは、他の実施例に関しても同様である。
図1において、L1は変倍時に固定の正の屈折力を有する第1レンズ群である。L2は、図1中の矢印で示される光軸方向に移動することにより変倍動作を行う、変倍レンズ群(ズームレンズ群)としての負の屈折力を有する第2レンズ群である。L3は、固定の正の屈折力を有する第3レンズ群である。L4は、図1中の矢印で示される光軸方向に移動することにより焦点調節を行う、正の屈折力を有するフォーカスレンズ群としての第4レンズ群である。第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、および、第4レンズ群L4は、撮像光学系(レンズ鏡筒)を構成する。
1は第1レンズ群L1を保持する前玉鏡筒である。2は第2レンズ群L2を保持するズームレンズ保持枠(第1移動部材)であり、2本のガイドバー(不図示)により光軸方向に移動可能に支持されている。3は第3レンズ群L3を保持する固定部材である。4は第4レンズ群L4を保持するフォーカスレンズ保持枠(第2移動部材)であり、2本のガイドバー(不図示)により光軸方向に移動可能に支持されている。フォーカスレンズ保持枠4には、略角筒状の空芯のコイル10とコイル10に通電するためのフレキシブルプリント基板(不図示)が固定されている。
8は、第2レンズ群L2を駆動する駆動手段(アクチュエータ)としてのズームモータである。送りネジとしてのリードスクリュー8aには、光軸方向への移動が自在に案内保持されたズームレンズ保持枠2に設置されたラック部材7が噛み合っており、ロータの回転により第1の移動部材2は光軸方向に移動する。リードスクリュー8aは、ズームモータ8を構成するロータと同軸かつ光軸と平行に配置されている。
9は、ズーム初期位置センサであり、フォトインタラプタから構成されている。ズーム初期位置センサ9は、ズームレンズ保持枠2に形成された不図示の遮光部の光軸方向への移動による遮光、透光の切り替わりを電気的に検出し、ズームレンズ保持枠2の光軸方向の原点(基準位置)を検出する。 6は、光学系の開口径を変化させる絞り装置であり、駆動部としての絞り駆動手段6aにより2枚の絞り羽根を互いに逆方向に移動させて開口径を変化させるギロチン式の絞り装置である。34は、絞り装置6の駆動磁石の回転位置をホール素子で検出する絞りセンサである。
撮像手段30は、CCDセンサまたはCMOSセンサなどの撮像素子、ローパスフィルタ、赤外カットフィルタなどを有し、後部鏡筒(不図示)により固定保持されている。撮像手段30は、撮像光学系(レンズ鏡筒)により形成された光学像を光電変換して撮影信号(画像データ)を生成し、信号処理回路31に出力する。後部鏡筒には、ヨーク11、12およびマグネット13が固定されている。ヨーク11は断面U字形状を有して光軸方向に延び、その内側にマグネット13が保持されている。ヨーク11にはコイル10の空芯部分が挿通され、コイル10とヨーク11、マグネット13とは離間している。マグネット13は、光軸に直交する方向に磁化され、光軸方向に延びている。ヨーク11の開放側の先端にはヨーク12が保持されている。コイル10、ヨーク11、12、および、マグネット13は、ボイスコイルモータ(VCMまたはリニアアクチュエータ)を構成する。ボイスコイルモータにより、フォーカスレンズ保持枠4は所定方向(光軸方向)に移動可能に構成されている。
信号処理回路31は、撮像手段30の出力に対して所定の増幅やガンマ補正などの信号処理を施す。信号処理回路31で処理された信号は、マイコン(マイクロコンピュータ)32に出力される。 マイコン32は、多数の信号を取り入れ、その信号処理を行う。また、入力信号に応じて多数の信号を出力し、光学機器の制御等を施す。例えば、マイコン32は、信号処理回路31からの入力信号と絞りセンサ34からの絞り駆動部の回転量などの入力信号に応じて、絞り駆動手段に絞り駆動の信号出力を出し、光量調整を行う。 33はマイコン32で信号処理された画像信号や、その他、記録条件などを記録する記録手段である。
50は変倍動作を指示するズームスイッチ、51は撮影者が意識的にマニュアルフォーカス動作(合焦動作)を指示するフォーカススイッチ、52は電源スイッチである。 電源スイッチ52が入れられるとズームモータ8は、マイコン32からの信号によりズーム駆動回路35から駆動信号を受ける。そして、ズーム初期位置センサ9にて初期位置を検出し、ズームレンズ保持枠2は、予め決められた任意の位置に移動し待機する。ズームモータ8は、初期位置からのステップ数でズームスイッチ50の操作に対応した位置制御が行われる。ズームスイッチ50が操作されると、移動方向がどちらに操作されているかをマイコン32が判定し、ズーム動作が行われる。フォーカス駆動回路36よりコイル10に通電すると、ヨーク11、12およびマグネット13により構成される磁気回路の作用により、フォーカスレンズ保持枠4が光軸方向に駆動する。
次に、図2乃至図4を参照して、第2レンズ群L2の構成について説明する。図2は、第2レンズ群L2(ズームレンズ群)の斜視図である。第2レンズ群L2は、ズームレンズ保持枠2(レンズ保持部材)と樹脂を主成分とするズームレンズL22(光学部品)とを備えて構成される。ズームレンズL22は、シクロオレフィンポリマー(COP)などの樹脂を主成分とするレンズ(光学部品)であり、位置決め部としての凸形状部L221を有する。ズームレンズL22は、接着剤404を介して、ズームレンズ保持枠2に固定(接着)されて一体となっている。なお樹脂を主成分とするレンズとは、例えば樹脂を90%(90重量%)以上含んでいるレンズである。
図3は、第2レンズ群L2を構成するズームレンズ保持枠2の斜視図である。図2および図3に示されるように、ズームレンズ保持枠2は、ズームレンズL22の外形よりも大きく略同一形状に形成された内周枠203、および、ズームレンズL22を支持するための胴付き部204が設けられている。またズームレンズ保持枠2には、内周枠203の一部を切り欠いて、接着剤404を保持するための接着剤保持部(接着部)としての接着溝201が3箇所形成されている。また、接着溝201と同様に、内周枠203の一部を切り欠いて、ズームレンズL22の位置決め部(凸形状部L221)を受けることが可能な受け部としての凹形状部208が形成されている。
図4は、ズームレンズL22の側面図である。図4において、OXはズームレンズL22の光軸方向である。ズームレンズL22の光学面L222および光学面L222の反対側の光学面L223のそれぞれに光学反射防止膜が成膜されており、撮像装置100における意図しない反射を抑制することができる。光学反射防止膜は、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、および、アルミナをベースとした多層膜で構成され、その最表面にはフッ化マグネシウムが露出している。一方、ズームレンズL22の外周部L225には、光学反射防止膜が成膜されることなく、ズームレンズL22の基材であるシクロオレフィンポリマー(COP)が露出している。これは、ズームレンズL22の外周部L225には光学反射防止膜を設ける必要性が小さいことや、ズームレンズL22に光学反射防止膜の成膜(膜付け)を行う際にズームレンズL22を支持するために側面を保持していることが主な理由である。また、光学面L222、L223の両面および外周部L225(側面部)の全てに膜付けを行うことによりエッジ部L226の膜厚が不安定となって膜剥がれが生じる可能性を防止することも主な理由である。
本実施例において、ズームレンズL22の外周部L225の一部は親水処理をされ、外周部L225のうち親水処理がされていない領域(第1の領域)よりも高い親水性を有する変性シクロオレフィンポリマーL227(第2の領域)が露出している。すなわちズームレンズL22は、第1の領域と、該第1の領域よりも高い親水性を有する第2の領域とを有し、第2の領域において接着剤404を介してズームレンズ保持枠2に固定されている。
第2の領域の親水性が第1の領域よりも高いということは、第2の領域は、少なくとも第1の領域よりも樹脂の酸化物、もしくは分解された変性物を多く含むことを意味する。ここでいう樹脂の酸化物、もしくは分解された変性物は、本実施例では、上記の変性シクロオレフィンポリマーL227である。
好ましくは、ズームレンズL22の第2の領域は、ズームレンズL22の光軸を含む光学面とは異なる領域(有効光束が通過しない領域)である。より好ましくは、ズームレンズL22の光学面とは異なる領域は、第1の領域と、第1の領域と連続的に設けられた第2の領域とを含む。また好ましくは、ズームレンズL22の第2の領域は、ズームレンズL22の側面の少なくとも一部(全てまたは一部)を含む。また、ズームレンズL22は球面レンズであっても非球面レンズであってもよい。
次に、図5乃至図8を参照して、ズームレンズL22に対する親水処理について説明する。図5は、本実施例における親水処理装置300(親水工具)の斜視図である。親水処理装置300は、ズームレンズL22のズームレンズ保持枠2に設けられた接着溝201(接着部)と向かい合う位置(第2の領域)がズームレンズL22の他の部位(第1の領域)よりも高い親水性を有するように親水処理を行う。図5に示されるように、親水処理は、ズームレンズL22の外周部L225の一部のみを露出する親水処理装置300に取り付け行われる。
親水処理装置300は、受け部301、蓋部302(カバー)、および、低圧水銀ランプ303を備えて構成されている。蓋部302を開けてズームレンズL22を受け部301に載置することにより、ズームレンズL22を親水処理装置300にセットすることができる。ズームレンズL22の凸形状部L221(位置決め部)を受けるため、蓋部302には凹形状部305(位置決め部)が形成されている。また蓋部302は、ズームレンズL22の外周部L225の一部を露出させるための窓304を有する。親水処理装置300の凹形状部305にズームレンズL22の凸形状部L221を合わせて蓋部302を閉じることにより、ズームレンズL22の外周部L225の一部を低圧水銀ランプ303に対して露出させることが可能となる。
図6は、低圧水銀ランプ303を用いた親水処理のメカニズムである。親水処理は、親水処理装置300に設けられた低圧水銀ランプ303を用いて行われる。低圧水銀ランプ303が点灯すると、少なくとも185nmと254nmの紫外線を発光する。低圧水銀ランプ303から発光した185nmの紫外線により、親水処理装置300の内部の酸素の一部は分解して、酸素原子を生成する(図6中の化学式(1))。生成した酸素原子は、別の酸素分子と反応してオゾンを生成する(図6中の化学式(2))。生成したオゾンは、低圧水銀ランプ303から照射される254nmの紫外線により分解し、より強い酸化性を有する酸素原子と励起状態の酸素分子とを生成する(化学式(3))。この反応過程において、親水処理装置中の水分なども活性化され、ヒドロキシラジカルなどが生成される。低圧水銀ランプ303により活性化されたこれらの物質を活性酸素と呼ぶ。活性酸素は酸化力が強いため、接触した物を酸化し、活性酸素自体は安定な物質へと化学反応する。このため、一般環境中において、活性酸素の寿命は非常に短く、前述の2種類の波長を有する紫外線が照射されている表面における酸化処理の効果は極めて高い。また、ズームレンズL22の主成分であるシクロオレフィンポリマーなどの有機物は酸化分解され、表面の不安定性が上昇して変性シクロオレフィンポリマーとなることにより、極性が上がり親水性を有するようになる。本実施例において、親水処理は、例えば、オゾン処理、コロナ放電処理、コロナ放電を利用したラジカル処理、プラズマ処理、または、UV光照射処理を用いて行われるが、これらに限定されるものではない。また、これらの処理のうち複数の処理を用いて親水処理を行っても良い。
図7は、ズームレンズL22および親水処理装置300の蓋部302の側面図であり、ズームレンズL22の外周部L225(凸形状部L221)と親水処理装置300の蓋部302の凹形状部305および窓304の位相との関係を示す展開図である。図7に示されるように、親水処理装置300の凹形状部305にズームレンズL22の凸形状部L221(位置決め部)を合わせて蓋部302を閉じることにより、所望の位相(角度位置)で親水処理を部分的に行うことができる。このように本実施例において、親水処理は、蓋部302を用いてズームレンズL22の所定の領域(第1の領域)を覆った状態で、蓋部302から露出したズームレンズL22の一部の領域(第2の領域)に対して親水処理を行う。
図8は、親水処理後のズームレンズL22およびズームレンズ保持枠2の側面図であり、親水処理後のズームレンズL22の外周部L225およびズームレンズ保持枠2の展開図を示している。図8に示されるように、ズームレンズL22の凸形状部L221(位置決め部)をズームレンズ保持枠2に設けられた凹形状部208(位置決め部)と合わせる。これにより、ズームレンズL22の外周部L225に対して親水性を有する変性シクロオレフィンポリマーL227とズームレンズ保持枠2に設けられた接着溝201との位相とを合わせることができる。
次に、図9を参照して、親水処理後のズームレンズL22をズームレンズ保持枠2に接着する接着工具400について説明する。図9は、接着工具400の説明図であり、親水処理を行った後のズームレンズL22をズームレンズ保持枠2に紫外線硬化型接着剤などの接着剤404を用いて接着する接着工具400を示している。接着工具400は、ズームレンズ保持枠2を受ける受け部401、接着剤404を滴下するためのシリンジ402、おおび、紫外線照射装置403を備えて構成されている。接着工具400の受け部401にズームレンズ保持枠2を装着した状態で、シリンジ402からズームレンズL22の接着溝201に接着剤404を滴下する。そして紫外線照射装置403は、シリンジ402から滴下された接着剤404へ向けて紫外線を照射することにより、接着剤404を硬化させる。これにより、ズームレンズL22をズームレンズ保持枠2に接着固定する。
次に、図10乃至図13を参照して、本実施例における効果について説明する。図10は本実施例の効果を示す比較表1であり、親水処理後(親水処理有り)と親水処理前(親水処理無し)のズームレンズL22をズームレンズ保持枠2に接着した状態で熱衝撃を加えた後の接着保持力(抜去力)の強さを示している。図10に示されるように、親水処理を行ったズームレンズL22に関しては5kg以上の接着保持力が残っているが、親水処理を行っていないズームレンズL22に関しては0.1kgのように実質的に接着保持力を失っていることが分かる。
図11は、本実施例の効果を示す比較表2であり、接着剤404の種類を変更して同じ検討を行った結果を示している。図11でも同様の効果が得られていることが分かる。本実施例において、接着剤404は、スリーボンド社製のTB3055やTB3114、協立化学社製の8120T3などの紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましいが、これらに限定されるものではない。また接着剤404は、紫外線硬化型接着剤(一液常温速硬化形接着剤)に限定されるものではなく、セメイダイン社製のスーパーXなどの湿気硬化型接着剤などの他の種類の接着剤を用いても、本実施例の効果が得られる。
図12は、本実施例の効果を示す比較表3であり、波長ごとのズームレンズL22の透過特性(透過率)を示している。図12において、処理前透過率は親水処理されていないズームレンズL22aに関する透過率を示している。部分親水処理透過率は、外周部L225の一部のみを親水処理した本実施例のズームレンズL22に関する透過率を示している。全面親水処理透過率は、外周部L225の全てを親水処理したズームレンズL22bに関する透過率を示している。
図12に示されるように、外周部L225の全てを低圧水銀ランプ303を用いて親水処理したズームレンズL22bの波長に関する透過率は、親水処理前のズームレンズL22aの透過率から変動している。一方、外周部L225の一部のみを親水処理した本実施例のズームレンズL22は、親水処理前のズームレンズL22と略同等の透過率を示している。このように本実施例の親水処理を行うことにより、光学特性を維持しつつ接着力を得ることができる。
図13は、本実施例の効果を示す比較表4である。図13において、部分親水処理品は外周部L225の一部のみを親水処理した本実施例のズームレンズL22に関する吸水量、全面親水処理品は外周部L225の全面を親水処理したズームレンズL22bに関する吸水量の割合を示している。図13に示されるように、ズームレンズL22、L22bをそれぞれ比較すると、ズームレンズL22bの吸水量を1とするとズームレンズL22の吸水量は0.02と低く抑えられていることが分かる。ズームレンズL22の吸水率を低く抑えることができるため、加水分解などによる樹脂の劣化が起こりにくくなる。その結果、本実施例の親水処理により、光学部材(レンズ)としての信頼性が向上する。
次に、図14乃至図16を参照して、本発明の実施例2について説明する。図14は、親水処理を行う前のズームレンズL22Gの側面図である。ズームレンズL22Gは、熱可塑性樹脂を主成分とする光学部品(レンズ)であり、射出成型により成型される。またズームレンズL22には、射出成型の際のゲート残り形状としての凸形状部L221Gが設けられている。凸形状部L221Gは、ズームレンズL22をズームレンズ保持枠2と位置合わせを行うための位置決め部として機能する。すなわちズームレンズL22Gの位置決め部は、射出成型用のゲート部に相当する。なお本実施例において、位置決め部としての凸形状部L221Gに代えて、凹形状部を設けてもよい。
図15は、ズームレンズL22Gのゲート残り形状である凸形状部L221Gを位置決め部として用いる場合の親水処理装置300の斜視図である。図16は、本実施例の第2レンズ群L2G(ズームレンズ群)の斜視図であり、ズームレンズL22Gをズームレンズ保持枠2に接着固定した状態を示している。図15および図16に示されるように、ゲート残り形状である凸形状部L221Gを位置決め部として用いることにより、位置決め部を専用に設ける実施例1の構成よりもコストや工程数を低減することができる。
次に、図17および図18を参照して、本発明の実施例3について説明する。図17は、本実施例における第2レンズ群L2H(ズームレンズ群)の斜視図であり、親水処理を行ったズームレンズL22Hをズームレンズ保持枠2に接着剤404を介して固定した状態を示している。
ズームレンズL22Hの外周部には、実施例1および実施例2と同様に、位置決めとしての凸形状部L221Hが設けられている。本実施例において、位置決め部としての凸形状部L221Hにも親水処理が行われ、ズームレンズ保持枠2と接着剤404を介して一体となっている。
図18は、本実施例における親水処理装置300Hの斜視図である。図18に示されるように、親水処理装置300Hは、凸形状部L221Hで位置決めを行い、かつ凸形状部L221Hが親水処理装置300Hの蓋部302Hに設けられた窓3041を介して開口し親水処理が行われるような構造を有する。図17および図18に示されるように、ズームレンズL22Hの外周部に設けられた位置決めのための凸形状部L221Hを接着部として用いることで、ズームレンズL22Hの外周部をより効果的に利用することができ、接着面積を増やすことが可能となる。
このように各実施例のレンズ鏡筒は、親水処理工程、位置決め工程、および、固定工程を順に実行することにより製造される。親水処理工程では、樹脂を主成分とするズームレンズL22の一部の領域(第2の領域)に対して親水処理を行う。位置決め工程では、ズームレンズL22とズームレンズL22を保持するズームレンズ保持枠2とを位置決めする。固定工程では、親水処理を行った領域において、接着剤404を介してズームレンズL22をズームレンズ保持枠2に固定する。
各実施例によれば、プラスチックレンズの光学的信頼性をより高めたレンズ鏡筒およびそれを備えた撮像装置を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、各実施例ではズームレンズに対して親水処理を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の光学部品(レンズ)に対して親水処理を行ってもよい。また各実施例では、ズームレンズの位置決め部として凸形状部を設け、ズームレンズ保持枠の位置決め部として凹形状部を設けているが、これに限定されるものではない。ズームレンズL22の位置決め部として凹形状部を設け、ズームレンズ保持枠2の位置決め部として凸形状部を設けてもよい。
2 ズームレンズ保持枠(レンズ保持部材)
404 接着剤
L22 ズームレンズ(レンズ)

Claims (16)

  1. 樹脂を含むレンズと、
    接着剤を介して前記レンズを保持するレンズ保持部材と、を有し、
    前記レンズは、
    第1の領域と、前記接着剤が塗布され、前記レンズ保持部材に固定される第2の領域と、を有し、
    前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記樹脂の酸化物、もしくは分解された変性物を多く含むことを特徴とするレンズ鏡筒。
  2. 前記第2の領域は、前記樹脂及び前記第1の領域よりも親水性が高いことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
  3. 前記第2の領域は、オゾン処理、コロナ放電処理、コロナ放電を利用したラジカル処理、プラズマ処理、または、UV光照射処理の少なくともひとつの処理により親水処理された領域であることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
  4. 前記レンズは、位置決め部を有し、
    前記レンズ保持部材は、前記位置決め部を受ける受け部と、前記接着剤と接触する接着部と、を有し、
    前記レンズの前記第2の領域は、前記レンズ保持部材の前記接着部と向かい合う位置を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
  5. 前記レンズの前記第2の領域は、前記位置決め部の少なくとも一部を含み、
    前記レンズは、前記位置決め部において、接着剤を介して前記レンズ保持部材の前記受け部に固定されていることを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡筒。
  6. 前記レンズの前記樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
    前記レンズの前記位置決め部は、射出成型用のゲート部に相当することを特徴とする請求項4または5に記載のレンズ鏡筒。
  7. 前記レンズの前記第2の領域は、該レンズの光軸を含む光学面とは異なる領域であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
  8. 前記レンズの前記光学面とは異なる前記領域は、前記第1の領域と、該第1の領域と連続的に設けられた前記第2の領域と、を含むことを特徴とする請求項7に記載のレンズ鏡筒。
  9. 前記レンズの前記第2の領域は、該レンズの側面の少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
  10. 前記レンズは、前記樹脂を90重量%以上含んでいることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
  11. 前記レンズは、非球面レンズであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
    前記レンズ鏡筒を介して形成された光学像を光電変換する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
  13. 樹脂を含むレンズの一部の領域に対して親水処理を行うステップと、
    前記レンズと該レンズを保持するレンズ保持部材とを位置決めするステップと、
    前記親水処理を行った前記領域において、接着剤を介して前記レンズを前記レンズ保持部材に固定するステップと、を有することを特徴とするレンズ鏡筒の製造方法。
  14. 前記親水処理を行うステップは、カバーを用いて前記レンズの所定の領域を覆った状態で、該カバーから露出した該レンズの前記一部の領域に対して前記親水処理を行うステップを含むことを特徴とする請求項13に記載のレンズ鏡筒の製造方法。
  15. 前記親水処理を行うステップは、オゾン処理、コロナ放電処理、コロナ放電を利用したラジカル処理、プラズマ処理、または、UV光照射処理を行うステップを含むことを特徴とする請求項13または14に記載のレンズ鏡筒の製造方法。
  16. 樹脂を含むレンズと、
    接着剤を介して前記レンズを保持するレンズ保持部材と、を有し、
    前記レンズは、第1の領域と、該第1の領域よりも高い親水性を有する第2の領域と、を有し、前記第2の領域において前記接着剤を介して前記レンズ保持部材に固定されており、
    前記レンズは、位置決め部をさらに有し、
    前記レンズ保持部材は、前記位置決め部を受ける受け部と、前記接着剤を接触する接着部と、を有し、
    前記レンズの前記第2の領域は、前記レンズ保持部材の前記接着部と向かい合う位置を含むことを特徴とするレンズ鏡筒。
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