JP2018177964A - キラルポリマーの製造方法、キラル炭素材料の製造方法、及びキラルポリマー - Google Patents

キラルポリマーの製造方法、キラル炭素材料の製造方法、及びキラルポリマー Download PDF

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Abstract

【課題】キラリティーを備えた、新たな材料を提供すること。【解決手段】本発明は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させるゾルゲル法により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、上記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、上記酸処理複合体の存在下、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を上記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、上記樹脂複合体にフッ化水素酸を作用させて、この樹脂複合体から上記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備えたキラルポリマーの製造方法である。【選択図】図11

Description

本発明は、キラルポリマーの製造方法、キラル炭素材料の製造方法、及びキラルポリマーに関する。
近年、分子間相互作用により有機化合物を平衡又は非平衡状態で自己組織化させて得られる、特定の空間形状やナノメートルオーダーの規則的構造等を備えたナノ構造体が盛んに提案されている。これらのナノ構造体は、様々な組成の有機/無機複合ナノ材料を構築するための基盤として用いることができるばかりでなく、各種の材質からなるナノ構造体を形成するための鋳型としても用いることができることから、学際的分野や産業的分野等から関心を寄せられている。
このようなナノ構造物の例として、例えば特許文献1には、特定の化学構造を備えた界面活性剤を溶液中で自己組織化させ、その周囲でシリカ源となる化合物をゾルゲル反応させてメソポーラスシリカ粒子を形成させることが提案されている。また、特許文献2には、互いに相溶しない非水溶性及び水溶性である2種のポリマーからミクロな相分離構造を形成させ、これをもとに平均孔径1〜200nmのシリンダー構造の細孔を備えた多孔質膜を形成させることが提案されている。また、生体高分子であるDNAやタンパク質が自己組織化により独特な立体構造を備えたナノ構造体となることもよく知られている。
また、キラリティーを備えたナノ構造体を鋳型とし、その周囲にシリカ等の金属酸化物の層を成長させることにより、鋳型の持つキラリティーを金属酸化物に転写させることが提案されている。このような例として、特許文献3には、らせん構造等の光学活性なキラル配向構造を備えた重合体を鋳型とし、当該鋳型に金属ソースを作用させてキラルな有機/無機複合体を得ることが提案されている。このような有機/無機複合体では、金属酸化物にキラリティーが転写されているので、例えば触媒活性を備えた金属酸化物を当該有機/無機複合体の無機成分として選択すれば、キラルな反応場を備えた金属酸化物触媒が得られる可能性があると考えられる。このような金属酸化物触媒となる可能性を備えたものとして、本発明者らにより、キラルな金属酸化物ナノ構造体が組み合わさってなる構造体が提案されている(特許文献4を参照)。
さらに、無水メタノール中、有機系酸性キラル界面活性剤と3−アミノフェノールとを混合し、それらを自己組織化させた後、それにホルムアルデヒドを加え、螺旋構造を有するキラル界面活性剤/フェノール樹脂の複合体を合成し、それらを炭化させることによるキラル炭素材料の合成が報告されている(非特許文献1を参照)。本発明者らも、ポリエチレンイミン/キラル酒石酸/キラルシリカで構成された複合体表面でのレゾルシノールとアルデヒドの重合反応を経由し、それを炭化することによるキラル炭素の形成を報告した(非特許文献2を参照)。しかしながら、これらいずれの方法でも、キラルフェノール樹脂そのものを得るには至ってない。
一方、キラリティーを備えた化合物に発光を示す化合物を錯形成等の手段により結合させ、円偏光発光を示す光学機能材料を得ることも提案されている。このような材料の一例として、非特許文献1には、希土類錯体にキラルな化合物を結合させることにより、希土類錯体から発せられる蛍光が非円偏光発光から円偏光発光に変化することが報告されている。また、非特許文献2には、蛍光発光を示す化合物であるチオフェンとキラルな(R)−1−(2−ナフチル)エチルアミンとの超分子固体錯体において、円偏光発光が観察されたことが報告されている。また、特許文献5には、キラルな配位子を備えた7配位型の希土類錯体が円偏光発光を示すことが報告されている。
特開2010−208907号公報 特開2009−256592号公報 特開2005−239863号公報 特許第6004272号公報 特開2013−121921号公報
Hao Chen et al.,RSC Adv.,2015,5,39946−39951 Xin−Ling Liu et al.,J.Mater.Chem.B,4,626−634(2016)
上記のようなキラルな性質を備えた金属化合物や発光性化合物は、キラルな反応場を提供する触媒や円偏光発光材料として有望である。このような背景のもと、本発明は、キラリティーを備えた、新たな材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、以上の課題を解決するために次のような検討を鋭意進めた。まず、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマー及びキラルなジカルボン酸化合物を反応させて得た酸塩基型錯体のキラル超分子結晶を用い、この超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させてシリカ層を形成させて複合体を得た。このシリカ層には、超分子結晶のキラリティーが転写されており、得られた複合体にはシリカ層からなるキラル構造が存在する。その後、酸処理によりこの複合体から上記ジカルボン酸化合物を除いて酸処理複合体に変換してから、この酸処理複合体の存在下でフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させると、これらの化合物の縮重合体が上記複合体の周囲に形成され、縮重合体の吸収波長域において、キラルなシリカ層により誘起された円二色性が観察されるようになる。そして、驚くべきことに、この円二色性は、フッ化水素酸処理により上記シリカ層を除去した後も観察されたことから、単にキラルなシリカ層に誘起されて発現したのでなく、縮重合体自身の構造により発現されたものであることを本発明者らは知見した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、以下のものを提供する。
(1)本発明は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させるゾルゲル法により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、上記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、上記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を上記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、上記樹脂複合体にフッ化水素酸を作用させて、この樹脂複合体から上記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備えたキラルポリマーの製造方法である。
(上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
(2)また本発明は、上記重合工程にて、上記フェノール類化合物を含む溶液中に上記酸処理複合体を10分以上浸漬させた後に、当該溶液中へホルムアルデヒドを投入することを特徴とする(1)項記載のキラルポリマーの製造方法である。
(3)また本発明は、上記珪素化合物がアルコキシシランである(1)項又は(2)項記載のキラルポリマーの製造方法である。
(4)また本発明は、上記ジカルボン酸化合物が酒石酸である(1)〜(3)項のいずれか1項記載のキラルポリマーの製造方法である。
(5)また本発明は、上記フェノール類化合物がレゾルシノールである(1)項〜(4)項のいずれか1項記載のキラルポリマーの製造方法である。
(6)本発明は、上記(1)項〜(5)項のいずれか1項記載のキラルポリマーの製造方法で得たキラルポリマーを焼成する工程を備えたキラル炭素材料の製造方法でもある。
(7)本発明は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に有機シラン化合物を作用させるゾルゲル法により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、上記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、上記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を上記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、上記樹脂複合体を焼成させて得た焼成体にフッ化水素酸を作用させて、この焼成体から上記シリカ層を形成するシリカを除去する焼成除去工程と、を備えたキラル炭素材料の製造方法でもある。
(上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
(8)また本発明は、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体であって、円二色性スペクトル測定において正又は負のコットン効果が観察されることを特徴とするキラルポリマーでもある。
(上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
(9)また本発明は、熱重量分析により求められた、水を除く無機成分の含有量が10質量%未満であることを特徴とする(8)項記載のキラルポリマーである。
本発明によれば、キラリティーを備えた、新たな材料が提供される。
図1は、得られた複合体(PEI/Tart@SiO)についてのFT−IRスペクトルである。 図2は、得られた複合体(PEI/Tart@SiO)についてのSEM画像である。 図3は、得られたD−/L−複合体(D−及びL−PEI/Tart@SiO)についての円二色性スペクトルであり、(a)は円二色性スペクトルであり、(b)はそれに対応する吸収スペクトルである。 図4は、得られた酸処理複合体(PEI@SiO)と複合体(PEI/Tart@SiO)との対比を示すFT−IRスペクトルである。 図5は、得られた酸処理複合体(PEI@SiO)についてのSEM画像である。 図6は、得られたD−/L−酸処理複合体(D−及びL−PEI@SiO)と複合体(D−及びL−PEI/Tart@SiO)との対比を示す円二色性スペクトルであり、(a)は円二色性スペクトルであり、(b)はそれに対応する吸収スペクトルである。 図7は、樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のFT−IRチャートである。 図8は、各温度で反応させて得られた樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のそれぞれについてのSEM画像であり、(a)は室温で反応させたものであり、(b)は40℃で反応させたものであり、(c)は60℃で反応させたものであり、(d)は100℃で反応させたものである。 図9は、各温度で反応させて得られた樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のそれぞれについての固体円二色性スペクトルである。 図10は、得られたキラルポリマーについてのSEM画像である。 図11は、得られたD−及びL−キラルポリマーの円二色性スペクトルである。 図12は、得られたキラル炭素材料(第一実施態様)についてのSEM画像である。 図13は、得られたD−及びL−キラル炭素材料(第一実施態様)の円二色性スペクトルである。 図14は、得られたキラル炭素材料(第二実施態様)についてのSEM画像である。 図15は、得られたD−及びL−キラル炭素材料(第二実施態様)の円二色性スペクトルである。
以下、本発明に係るキラルポリマーの製造方法の一実施態様、キラル炭素材料の製造方法の一実施態様、及びキラルポリマーの一実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施態様及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
<キラルポリマーの製造方法>
本発明に係るキラルポリマーの製造方法は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させるゾルゲル法により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、上記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、上記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を上記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、上記樹脂複合体にフッ化水素酸を作用させて、この樹脂複合体から上記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備える。本発明に係るキラルポリマーの製造方法が上記の各工程を備えることにより、まず、キラルなジカルボン酸化合物の持つキラリティーの反映された超分子結晶が鋳型となり、その鋳型をもとにして超分子結晶の表面に形成されたシリカ層に当該キラリティーが転写される。その後、酸処理により上記ジカルボン酸化合物を除去した後、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させると、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーが塩基触媒となって、上記シリカ層の周囲に縮重合体が形成される。次いで、フッ化水素酸を作用させてこの縮重合体からシリカ層やポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーを除去すると、キラルポリマーが得られる。このキラルポリマーは、シリカ層が持っていたキラリティーが転写されており円二色性を示すので、例えば、円二色性を利用したセキュリティー用途等の用途で用いることができる。以下、各工程について説明する。
(上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
[ゾルゲル工程]
ゾルゲル工程では、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させる。この工程により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体が得られる。
本発明で用いられる直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーは、下記化学式で表される構造を分子内に備える。下記化学式で表される構造には二級のアミノ基が含まれ、このアミノ基の窒素原子が後述するキラルなジカルボン酸化合物に含まれるカルボキシル基と相互作用して酸塩基型の錯体を形成する。上記キラルなジカルボン酸化合物は、二個のカルボキシル基を備えた二塩基酸であり、二分子のポリマーに含まれるアミノ基のそれぞれと錯体を形成することができるので、ポリマーは、キラルなジカルボン酸化合物によって架橋される。その結果、複数のポリマーと複数のキラルなジカルボン酸化合物とが自己組織化した構造を備えた酸塩基型錯体型の超分子結晶が形成される。この超分子結晶は、上記キラルなジカルボン酸化合物に誘起された、構造的なキラリティーを備える。
(上記化学式中、nは1以上の整数である。)
直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーは、分子内に上記化学式で示す直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えていれば足り、その他の部分の構造は特に問わないので、線状構造はもちろん、星状、櫛状の構造であってもよく、上記化学式からなるホモポリマーであってもよいし、他の繰り返し単位も備えた共重合体であってもよい。直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーが共重合体である場合、当該ポリマー中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格部分のモル比が20%以上であれば安定な結晶を形成できるとの観点から好ましく、直鎖状ポリエチレンイミン骨格の繰り返し単位数が10以上となるブロック共重合体であることがより好ましい。直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーは、上記化学式からなるホモポリマーであることが最も好ましい。
また、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーとしては、後述するキラルなジカルボン酸化合物との間で結晶性の会合体を形成させる能力が高いほど好ましい。したがって、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーは、ホモポリマーであっても共重合体であっても、上記化学式で示される直鎖状ポリエチレンイミン骨格部分に相当する部分の分子量が500〜1,000,000程度の範囲であることが好ましい。これら直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーは、市販品を用いてもよいし、本発明者らが特開2009−30017号公報等に開示した合成法によって得ることもできる。
本発明で用いられるキラルなジカルボン酸化合物は、4以上の炭素原子を備える。既に述べたように、このジカルボン酸化合物の備える2個のカルボキシル基が上記のポリマーを架橋して超分子結晶を形成させるとともに、このジカルボン酸に由来する構造的なキラリティーが、形成される超分子結晶に誘起される。ジカルボン酸化合物はD−体であってもL−体であってもよい。なお、ジカルボン酸化合物の光学純度は、必ずしも100%eeである必要はなく、90%ee以上であることが好ましく、95%ee以上であることがより好ましく、98%ee以上であることがさらに好ましい。
ジカルボン酸化合物としては、4以上の炭素原子と2個のカルボキシル基と不斉炭素とを備えるものであればよく、直鎖状であるか分枝状であるかを問わない。このようなジカルボン酸化合物としては、酒石酸、アルトラル酸、グルカル酸、マンナル酸、グルロン酸、イダル酸、ガラクタル酸、タルロン酸等が例示され、酒石酸が好ましく例示される。
本発明で用いられる加水分解性の珪素化合物は、水と反応することにより加水分解され、ゾルゲル反応を生じさせるものであればよい。このような化合物としては、テトラメトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、ジプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、ジイソプロポキシシラン等のアルコキシシラン、ジクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化シラン、オルトケイ酸テトラエチル等を挙げることができる。これらの中でも、アルコキシシランが好ましく挙げられ、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が特に好ましく挙げられる。これらの珪素化合物は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本工程では、まず、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーとキラルなジカルボン酸とを水中で作用させて、これらと水分子とからなる超分子結晶を形成させる。次に、このような超分子結晶を形成させるための一態様について説明する。この態様では、ポリマー水溶液調製小工程と、ジカルボン酸水溶液調製小工程と、混合小工程と、析出小工程と、を順次行う。以下、これらの工程について説明する。
ポリマー水溶液調製小工程では、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーの水溶液が調製される。このとき、水溶液を調製するのに用いる水は、加温されることにより、80℃以上の熱水となっていることが好ましい。また、このとき用いられる直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーについては、既に述べた通りである。
ポリマーの水溶液を調製する手順の一例としては、ポリマーの粉末を蒸留水に加え、それを80℃以上まで加熱することによってポリマーを溶解させることを挙げることができる。このとき、水溶液におけるポリマーの濃度は、0.5〜8質量%の範囲であることが好ましい。
調製されたポリマーの水溶液は、加温された状態のままで、後述の混合小工程に付される。
ジカルボン酸水溶液調製小工程は、特に限定されないが、上記のポリマー水溶液調製小工程と並行して行われることが好ましい。この小工程では、上述のジカルボン酸化合物の水溶液を調製する。ここで用いられるジカルボン酸化合物はキラル(光学活性体)である。なお、水溶液を調製するのに用いる水は、加温されることにより、80℃以上の熱水となっていることが好ましい。
ジカルボン酸化合物の水溶液を調製する手順の一例としては、当該ジカルボン酸化合物の粉末を蒸留水に加え、それを80℃以上まで加熱することによってジカルボン酸化合物を溶解させることを挙げることができる。このとき、水溶液におけるジカルボン酸化合物の濃度は、0.5〜15質量%の範囲であることが好ましい。
調製されたジカルボン酸化合物の水溶液は、加温された状態のままで、後述の混合小工程に付される。
混合小工程では、上記のポリマーの水溶液とジカルボン酸化合物の水溶液とを混合させて混合水溶液を得る。このとき、混合される2つの水溶液は、いずれも80℃以上程度の温度に加温されていることが好ましい。
ポリマーの水溶液とジカルボン酸化合物の水溶液とを混合させる際、ポリマーの直鎖状ポリエチレンイミン骨格に含まれる二級アミノ基1当量に対して、ジカルボン酸化合物に含まれるカルボキシル基が、0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.9〜1.1当量であることがより好ましく、1当量であることがさらに好ましい
この小工程で調製された混合水溶液は、析出小工程に付される。
析出小工程では、混合小工程で得られた混合水溶液中にポリマーとジカルボン酸化合物との酸塩基型錯体を析出させる。この酸塩基型錯体は、既に述べたように、キラルな超分子結晶(キラル超分子結晶)である。なお、以下の記載では、キラル超分子結晶のことを単に超分子結晶とも呼ぶ。
この小工程を行うにあたり、加温された状態である混合水溶液を冷却する。このときの冷却方法については、特に限定されるものでないが、一例として空気雰囲気下で自然冷却して室温まで水温を下げる方法を挙げることができる。この過程で水溶液中に白い固体が析出するが、この粉末は、ナノサイズである酸塩基型錯体の結晶(超分子結晶)が凝集してできた多孔質の複合体である。なお、上記のように自然冷却を行うに際して、混合された水溶液を静置したまま放置してもよいし、当該水溶液に撹拌や振動を与えることによって固体の析出を促進してもよい。得られた白色の析出物は、濾別等の手段により単離される。単離された後の析出物を蒸留水やエタノール、アセトン等の有機溶媒で適宜洗浄し、乾燥させてもよい。
上記のようにして得られた超分子結晶は、上述の加水分解性の珪素化合物との反応に付される。この反応は、水中に分散させたキラル超分子結晶に、加水分解性の珪素化合物、又は加水分解性の珪素化合物と水との混合物を加えて撹拌することにより行われる。この過程で加水分解性の珪素化合物は、ゾルゲル反応を生じ、キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させる。この層には、珪素原子(Si)と酸素原子(O)とからなるポリマー[(−Si−O−)]や、珪素の水酸化物等が含まれるが、本発明ではこれらもシリカとして扱う。
キラル超分子結晶と加水分解性の珪素化合物との混合比は、特に限定されず、キラル超分子結晶のほぼ全体にシリカ層が形成されるように適宜調節すればよい。このような混合比の一例として、加水分解性の珪素化合物としてテトラメトキシシランを用いた場合には、1.2g程度のキラル超分子結晶に対して、80mLの水と12mLのテトラメトキシシランとを加えることを挙げられるが、特に限定されない。また、この反応を行うにあたり、室温で2時間程度撹拌することを反応条件として挙げることができるが、特に限定されない。
ゾルゲル工程を経て、キラル超分子結晶の表面にシリカ層が形成された複合体は、酸処理工程に付される。
[酸処理工程]
酸処理工程では、ゾルゲル工程で得られた複合体を酸処理する。これにより、複合体に含まれる超分子結晶からジカルボン酸化合物が除去され、上記複合体は酸処理複合体となる。その結果、複合体には、超分子結晶を構成していた直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、シリカ層とが残される。キラル源となるジカルボン酸化合物が複合体から除去されるが、ジカルボン酸化合物のキラリティーはシリカ層へ転写されており、この工程を経た複合体は、依然として構造的なキラリティーを有している。また、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーとジカルボン酸化合物の超分子結晶からジカルボン酸化合物が除去されることにより、塩基触媒を必要とする後述の重合工程にて、ポリエチレンイミン骨格に含まれる二級アミノ基が塩基触媒として機能することになる。
酸処理のために用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の酸を例示できる。酸として例えば塩酸を用いる場合、2.5mol/L程度の塩酸水溶液に上記複合体を加え、室温で1時間程度撹拌すればよい。塩酸水溶液の量としては、複合体1gに対して50mL程度を例示できるが、特に限定されず、複合体の分散の程度を観察しながら適宜増減すればよい。
上記酸処理の後、複合体の分散された酸水溶液から遠心分離等の手段により複合体を分取し、希アンモニア水、次いで蒸留水で洗浄する。洗浄後に複合体を分離し、これを乾燥させることにより酸処理複合体が得られる。
酸処理工程で調製された酸処理複合体は、重合工程に付される。
[重合工程]
重合工程では、上記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、これらの縮合体からなるポリマーを上記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る。このポリマーは、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物であり、フェノール樹脂の一種である。
上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基である。このような基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。なお、Rが複数存在する場合、各Rはそれぞれ独立に選択される。
上記一般式(I)中、m+nが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。mは2以上3以下であることが好ましく、nは0以上2以下であることが好ましい。
このようなフェノール類化合物として、レゾルシノールが特に好ましく挙げられる。レゾルシノールは、上記一般式(I)において、m=2、n=0となる化合物で、2つの水酸基が互いにメタ位となる位置に存在する化合物である。
既に説明したように、酸処理複合体には、キラルなジカルボン酸化合物のキラリティーが転写されたシリカ層が存在する。そして、そのような酸処理複合体の存在下でフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを縮重合させると、キラルなシリカ層をテンプレートとして、その表面に縮重合体であるポリマーが形成される。すると、キラルなシリカ層のキラリティーがそのポリマーに転写され、得られるポリマーはキラリティーを示すようになる。キラルなシリカ層をテンプレートにすれば、どのようなポリマーであってもそのシリカ層に誘起されたキラリティーを示し得るが、ポリアクリレート等のリニアなポリマーでは、後述の除去工程にてシリカ層を除去することに伴ってポリマーがテンプレートの束縛を離れてキラリティーを失うと考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、酸処理複合体のポリエチレンイミン骨格に含まれる二級のアミノ基を塩基触媒として、上記フェノール類化合物とホルムアルデヒドとを縮重合させて得られたポリマーは、意外なことに、後述の除去工程にてシリカ層を除去した後もキラリティーが失われないことがわかった。このような現象を生じる理由は必ずしも明らかでないが、上記フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮重合体を形成させる場合、カリックスアレーンのような環状構造をとるほうが熱的に有利であり、そのようなバルキーな環状構造が形成されるとともにその環状構造同士もホルムアルデヒドによって架橋される結果、シリカ層をテンプレートとした構造に完全に固定されたポリマーが形成されることによるものと考えられる。このようにして得られたポリマーをNMR測定すると、ポリマーとしてはシャープで帰属可能なピークが観察されるが、そのことは上記の仮定の裏付けになると考えられる。
酸処理複合体の存在下で上記フェノール類化合物とホルムアルデヒドとを縮重合させるには、まず、フェノール類化合物を含む溶液中に酸処理複合体を10分以上浸漬し、酸処理複合体にフェノール類化合物を十分に吸着させてから、ホルムアルデヒドをその溶液に添加して縮重合反応させることが好ましい。上記浸漬は、室温にて撹拌しながら行うことが好ましい。また、浸漬時間としては、10分〜2時間程度を挙げることができるが、30分〜2時間程度がより好ましく挙げられ、30分〜1時間程度がさらに好ましく挙げられる。
フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの混合比としては、フェノール類化合物とホルムアルデヒドとのモル比で2:3〜2:8程度を挙げることができる。ホルムアルデヒドは、37質量%ホルムアルデヒド水溶液がホルマリンとして市販されているので、それを用いればよい。
フェノール類化合物とホルムアルデヒドとを縮重合させる際、その反応温度としては室温から60℃程度を好ましく挙げられ、反応時間としては24時間程度を挙げることができる。縮重合反応は、水溶液中で撹拌しながら行うことが好ましい。
本工程を経ることにより、酸処理複合体の表面にフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮重合体が形成された樹脂複合体が得られる。この工程で調製された樹脂複合体は、除去工程に付される。
[除去工程]
除去工程では、上記樹脂複合体にフッ化水素酸を作用させて、この樹脂複合体からシリカ層を形成するシリカを除去する。これにより、キラルポリマーが得られる。すでに説明したように、本発明の製造方法で調製されるポリマーは、テンプレートであるキラルなシリカ層を除去しても、シリカ層から転写されたキラリティーを失わない。また、このポリマーは、加工性を備えるものである。このため、本発明の製造方法で調製されたポリマーは、例えば、円偏光を利用したセキュリティー用途や、円偏光発生用フィルター等、各種の光学用途に用いることが可能である。
樹脂複合体にフッ化水素酸を作用させるには、樹脂複合体にフッ化水素酸の水溶液を加えて撹拌すればよい。フッ化水素酸の濃度としては、10質量%程度を挙げることができ、反応条件としては室温で4時間程度撹拌することを挙げることができる。反応後、遠心分離を行って固体を回収し、その固体を蒸留水で洗浄することでキラルポリマーが得られる。反応の終了は、FT−IRにて、1079cm−1付近のO−Si−O結合の振動の減少により確認することができる。
本工程を経ることにより、キラルポリマーが調製される。
<キラルポリマー>
次に、本発明のキラルポリマーの一実施形態について説明する。本発明のキラルポリマーは、例えば、上記キラルポリマーの製造方法により調製され、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体であって、円二色性スペクトル測定において正又は負のコットン効果が観察されることを特徴とする。
(上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
上記フェノール類化合物については、上記キラルポリマーの製造方法で既に述べた通りであるので、ここでの説明を省略する。
本発明のキラルポリマーは、らせん構造に代表されるような構造的なキラリティーを備える。このため、円二色性スペクトル測定において正又は負のコットン効果が観察される。円二色性スペクトル測定は、透過光を測定する方法のものでも、反射光を測定する方法のものでもよく、その測定に際しては、キラルポリマーをフィルム状に成型して測定したり、キラルポリマーを適切な溶媒に溶解させて測定したりするのでもよい。円二色性スペクトル測定を行う波長域としては、上記フェノール類化合物の吸収波長域を含む領域を用いるのが感度も良く良好である。この場合、300nm〜600nm程度の波長域を用いることになる。
特に本発明のキラルポリマーの製造方法で得たキラルポリマーは、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した際に、全体的なねじれ構造が観察され、円二色性スペクトルを測定した際に、300nm〜600nmの波長域で強いコットン効果が観察される。このような結果から、本発明のキラルポリマーの製造方法で得たキラルポリマーが示す円二色性シグナルは、キラルなシリカ層から誘起されたポリマーの円二色性シグナルではなく、キラルなシリカ層からキラル転写が行われることにより、ポリマー自体がキラリティーを有することで発現したものと考えられる。
このように、本発明のキラルポリマーは、テンプレートであるキラルなシリカ層からキラリティーが誘起されたものでなく、ポリマーそれ自体が構造的なキラリティーを備えたものなので、テンプレートであるキラルなシリカ層が除去されてもなおキラリティーを示す。このため、本発明のキラルポリマーは、熱重量分析(TGA)により求められた、水を除く無機成分の含有量が10質量%未満、好ましくは6質量%未満であることを特徴とする。
本発明のキラルポリマーは、それ自身が構造的なキラリティーを備え、ポリマーであることに由来する加工性を併せて備える。このため、例えば、光線に円偏光を与えるフィルターや円偏光を用いたセキュリティー用途等、各種の光学用途として用いることが可能である。
<キラル炭素材料の製造方法(第一実施態様)>
上記キラルポリマーの製造方法により調製されたキラルポリマーを焼成する工程を備えたキラル炭素材料の製造方法も本発明の一つである。次に、本発明のキラル炭素材料の製造方法の第一実施態様について説明する。本実施態様では、上記キラルポリマーの製造方法により調製されたキラルポリマーを焼成することでキラルな炭素材料を得る。
焼成は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、例えば500℃程度に加熱することで行われる。500℃で焼成した場合、焼成に要する時間としては1時間程度を挙げることができるが、特に限定されない。
上記キラルポリマーを焼成して得られたキラル炭素材料は、焼成前のキラルポリマーのキラリティーを保持しており、円二色性スペクトル測定においてコットン効果を示す。
<キラル炭素材料の製造方法(第二実施態様)>
次に、本発明のキラル炭素材料の製造方法の第二実施態様について説明する。本実施態様では、上記キラルポリマーの製造方法における重合工程まで完了して得た樹脂複合体を焼成して焼成体とした後に、その焼成体にフッ化水素酸を作用させて焼成体に含まれるシリカを除去する。すなわち、本実施態様の製造方法は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に有機シラン化合物を作用させるゾルゲル法により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、上記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、上記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を上記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、上記樹脂複合体を焼成させて得た焼成体にフッ化水素酸を作用させて、この焼成体から上記シリカ層を形成するシリカを除去する焼成除去工程と、を備える。以下、本実施態様のキラル炭素材料の製造方法について説明する。
本実施態様の製造方法では、上記のように、ゾルゲル工程、酸処理工程、重合工程、及び焼成除去工程がこの順で実行される。これらのうち、ゾルゲル工程、酸処理工程、及び重合工程については、上記本発明のキラルポリマーの製造方法におけるものと同じであるのでここでの説明を省略する。
[焼成除去工程]
本工程は、上記本発明のキラルポリマーの製造方法におけるゾルゲル工程、酸処理工程、及び重合工程を経て調製された樹脂複合体を焼成して得た焼成体にフッ化水素酸を作用させて、この焼成体からシリカ層を形成するシリカを除去する工程である。この工程を経ることで、キラル炭素材料が調製される。焼成除去工程は、焼成小工程と除去小工程とを備える。まずは焼成小工程から説明する。
焼成小工程は、上記樹脂複合体を焼成して焼成体とする工程である。本実施態様では、上記キラル炭素材料の第一実施態様とは異なり、シリカを含んだ状態で焼成を行う。焼成を行う条件は、上記第一実施態様で述べたものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
焼成小工程を経ることで得られた焼成体は、除去小工程に付される。
除去小工程は、焼成小工程により調製された焼成体からシリカを除去する工程である。この除去小工程は、既に説明した、上記キラルポリマーの製造方法における除去工程に準じて行えばよい。すなわち、焼成小工程で得られた焼成体にフッ化水素酸を作用させて、この焼成体からシリカ層を形成するシリカを除去すればよい。
焼成体にフッ化水素酸を作用させるには、焼成体にフッ化水素酸の水溶液を加えて撹拌すればよい。フッ化水素酸の濃度としては、10質量%程度を挙げることができ、反応条件としては室温で4時間程度撹拌することを挙げることができる。反応後、遠心分離を行って固体を回収し、その固体を蒸留水で洗浄することで、シリカの除去されたキラル炭素材料が得られる。反応の終了は、FT−IRにて、1079cm−1付近のO−Si−O結合の振動の減少により確認することができる。
このようにして調製されたキラル炭素材料は、上記第一実施態様で得られたキラルな炭素材料と同様に、焼成前のキラルポリマーのキラリティーを保持しており、円二色性スペクトル測定においてコットン効果を示す。
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)の合成]
市販のポリエチルオキサゾリン(質量平均分子量50,000、平均重合度約500、Aldrich社製)30gを5mol/Lの塩酸水溶液(150mL)に溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加温し、その温度で10時間撹拌した。反応溶液にアセトン(500mL)を加えてポリマーを完全に沈殿させ、それを濾別し、メタノールで3回洗浄して白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。得られた粉末をH−NMR(重水)にて分析したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖のエチル基に由来した1.2ppmのピーク(CH)と2.3ppmのピーク(CH)とが完全に消失していることが確認された。したがって、得られたポリマーでは、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
[D−及びL−複合体(D−及びL−PEI/Tart@SiO)の調製]
200mLビーカーにD−酒石酸0.60g(4.0mmol)及び蒸留水200mLを加え、100℃で加熱溶解させて酒石酸溶液とした。500mLビーカーにLPEI0.63g(繰り返し単位換算で8.0mmol)及び蒸留水200mLを加えて100℃で加熱溶解させ、上記酒石酸溶液の全量を加えて100℃で3分間撹拌した。反応溶液を水浴中で室温まで急冷した後、アンモニア水を加えてpH4.0に調整した。得られた溶液を冷蔵庫内で20時間静置後、得られた懸濁液から白色固体を遠心分離で回収し、蒸留水で2回洗浄してキラル超分子結晶を得た。テトラメトキシシラン(TMOS)12mL及び蒸留水80mLの混合溶液に、上記手順で得たキラル超分子結晶を加え、室温で2時間撹拌した。遠心分離で固体を回収し、蒸留水で1回、アセトンで2回洗浄した後、室温で減圧乾燥し、白色固体のD−複合体(D−PEI/Tart@SiOとも呼ぶ。)を得た。D−複合体は、D−酒石酸を含むキラル超分子結晶の表面にゾルゲル法によりシリカ層を形成させたものである。また、D−酒石酸に代えてL−酒石酸を用いたこと以外は同様の手順にて、L−複合体(L−PEI/Tart@SiOとも呼ぶ。)を得た。
得られた複合体(PEI/Tart@SiO)について、固体状態でKBr法によりFT−IRを測定した。その結果を図1に示す。図1は、得られた複合体(PEI/Tart@SiO)についてのFT−IRスペクトルである。図1に示すように、3323cm−1にN−H結合、1606cm−1にC=O基の振動がそれぞれ観察され、LPEIと酒石酸との超分子錯体の存在が確認された。また、1076cm−1にO−Si−O結合の伸縮振動が観察されたことから、シリカ層の析出した複合体(すなわちPEI/Tart@SiO)の存在が確認された。
得られた複合体(PEI/Tart@SiO)について、SEMによる観察を行った。その結果を図2に示す。図2は、得られた複合体(PEI/Tart@SiO)についてのSEM画像である。図2に示すように、得られた複合体(PEI/Tart@SiO)の全体構造はねじれた形状であり、細部構造は規則的な形状を持つファイバー状の集合体であることがわかる。
得られたD−/L−複合体のそれぞれについて、円二色性(CD)測定を行った。その結果を図3に示す。図3は、得られたD−/L−複合体(D−及びL−PEI/Tart@SiO)についての円二色性スペクトルであり、(a)は円二色性スペクトルであり、(b)はそれに対応する吸収スペクトルである。図3に示すように、D−PEI/Tart@SiOは、220nmに負のコットン効果を示し、L−PEI/Tart@SiOは、これとは逆に、正のコットン効果を示した。これらは、酒石酸自体のコットン効果とは逆の符号のコットン効果となるため、酒石酸のキラリティーが複合体へ転写されているものと考えられる。
[D及びL−酸処理複合体(D及びL−PEI@SiO)の調製]
スクリュー管にD−複合体(D−PEI/Tart@SiO)を1.0g入れ、2.5M塩酸水溶液を50mL加え室温で1時間撹拌し、遠心分離で白色固体を回収した。この操作を5回繰り返した後、蒸留水で1回、アセトンで1回洗浄し、室温で乾燥させた白色粉末0.5mgと0.1wt%アンモニア水0.1mLをスクリュー管に加え、室温で30分間撹拌した。遠心分離により固体を回収し、蒸留水で1回、アセトンで2回洗浄した後、減圧乾燥させてD−酸処理複合体(D−PEI@SiOとも呼ぶ。)を得た。また、D−複合体に代えてL−複合体(L−PEI/Tart@SiO)を用いたこと以外は同様の手順で、L−酸処理複合体(L−PEI@SiOとも呼ぶ。)を得た。
得られた酸処理複合体(PEI@SiO)について、固体状態でKBr法によりFT−IRを測定した。その結果を図4に示す。図4は、得られた酸処理複合体(PEI@SiO)と複合体(PEI/Tart@SiO)との対比を示すFT−IRスペクトルである。図4に示すように、1079cm−1にシリカのO−Si−O結合の伸縮振動が観察され、シリカの存在が確認された。一方で、酒石酸に由来するC=O基の伸縮振動が減少していることから、塩酸水溶液により酒石酸が除去されたことがわかる。
得られた酸処理複合体(PEI@SiO)について、SEMによる観察を行った。その結果を図5に示す。図5は、得られた酸処理複合体(PEI@SiO)についてのSEM画像である。図5に示すように、得られた酸処理複合体(PEI@SiO2)は、酒石酸除去後もファイバー構造を維持しており、酒石酸の除去操作による構造の変化は認められなかった。
得られたD−/L−酸処理複合体のそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図6に示す。図6は、得られたD−/L−酸処理複合体(D−及びL−PEI@SiO)と複合体(D−及びL−PEI/Tart@SiO)との対比を示す円二色性スペクトルであり、(a)は円二色性スペクトルであり、(b)はそれに対応する吸収スペクトルである。図6に示すように、円二色性スペクトルでは220nmの酒石酸のコットン効果が減少し、吸収スペクトルにおいても200nm付近の吸収が減少していることがわかる。
[D−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)の調製]
スクリュー管にD−酸処理複合体(D−PEI@SiO)0.1g、レゾルシノール0.22g(2.0mmol)及び蒸留水10mLを加え、室温で30分間撹拌した。その後、37wt%ホルムアルデヒド水溶液0.32mL(3.2mmol)を加え、各回異なる反応温度(室温、40℃、60℃、100℃)で24時間撹拌し反応させた。反応終了後、吸引濾過により固体を回収し、蒸留水で2回、アセトンで2回洗浄し、減圧乾燥させてD−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RFとも呼ぶ。)を得た。
得られたD−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)について、固体状態でKBr法によりFT−IRを測定した。その結果を図7に示す。図7は、樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のFT−IRチャートである。図7に示すように、1079cm−1にO−Si−O結合、1475cm−1及び1619cm−1に芳香族C=Cの伸縮振動がそれぞれ観察されたことから、酸処理複合体(D−PEI@SiO)上でレゾルシノールとホルムアルデヒドとの縮合反応が進行し、フェノール樹脂が生成したと考えられる。
各温度で得られた樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のそれぞれについて、SEMによる観察を行った。その結果を図8に示す。図8は、各温度で反応させて得られた樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のそれぞれについてのSEM画像であり、(a)は室温で反応させたものであり、(b)は40℃で反応させたものであり、(c)は60℃で反応させたものであり、(d)は100℃で反応させたものである。図8に示すように、室温から60℃までの反応温度で調製したD−PEI@SiO@RFはファイバー構造を維持しているのに対して、100℃の反応温度で調製したD−PEI@SiO@RFは、フェノールがシリカ表面で過剰に生成している様子が観察された。
各温度で得られたD−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のそれぞれについて、固体試料15wt%、KBr85wt%となるようによく混合し、固体円二色性(CD)測定を行った。その結果を図9に示す。図9は、各温度で反応させて得られた樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)のそれぞれについての固体円二色性スペクトルである。図9に示すように、300〜400nmにて負のコットン効果が観察され、反応温度が100℃未満(好ましくは60℃以下)の各サンプルでは強いCD信号が得られた一方で、反応温度が100℃のサンプルでは良好なCD信号が観察されなかった。このことから、ポリマーの良好なキラリティーを得るためには60℃で反応させるのが最適であることが理解される。そこで、この後の実施例では、60℃で反応させて得たD−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)を用いることにした。
[L−樹脂複合体(L−PEI@SiO@RF)の調製]
D−酸処理複合体(D−PEI/Tart@SiO)に代えてL−酸処理複合体(L−PEI/Tart@SiO)を用い、また反応温度を60℃のみとしたこと以外は、上記D−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)の調製と同様の手順にてL−樹脂複合体(L−PEI@SiO@RF)を得た。
[D−及びL−キラルポリマーの調製]
D−樹脂複合体(D−PEI@SiO@RF)100mgをプラスチック管に入れ、そこに蒸留水10mL及び10wt%フッ化水素酸水溶液5mLを加え、室温で4時間撹拌した後、遠心分離により固体を回収した。得られた固体を蒸留水で1回、アセトンで2回洗浄し、室温で乾燥させて茶色固体のD−キラルポリマーを得た。また、D−樹脂複合体に代えてL−樹脂複合体(L−PEI@SiO@RF)を用いたこと以外は同様の手順で、L−キラルポリマーを得た。
得られたキラルポリマーについて、固体状態でKBr法によりFT−IRを測定したところ、1079cm−1におけるO−Si−O結合の伸縮振動が著しく減少しており、シリカが除去されたことが確認された。また、得られたキラルポリマーについて固体13C−NMR測定を行ったところ、28ppmにメチレン基に由来するピーク、151ppmにフェノール性水酸基に結合する炭素原子に由来するピーク、103〜130ppmにベンゼン環のピークがそれぞれ観察され、フェノール樹脂の存在が確認された。また、得られたキラルポリマーの熱重量分析(TGA)を行ったところ、シリカ含有率が約5%だったことから、フッ化水素酸による処理でシリカがほぼ除去されたことが確認された。
また、得られたキラルポリマーについて、SEMによる観察を行った。その結果を図10に示す。図10は、得られたキラルポリマーについてのSEM画像である。図10に示すように、得られたキラルポリマーは、全体的なねじれ構造をしており、部分的にファイバー構造を有することが確認された。さらに、得られたD−/L−キラルポリマーのそれぞれについて、固体円二色性測定(キラルポリマー:KBrの質量比=15:85)を行った。その結果を図11に示す。図11は、得られたD−及びL−キラルポリマーの円二色性スペクトルである。図11に示すように、得られたキラルポリマーでは、300〜600nmの波長範囲で強いコットン効果が観察された。これらの結果から、キラルポリマーが示した円二色性シグナルは、キラルシリカから誘起されたフェノール樹脂の円二色性シグナルではなく、キラルシリカからキラル転写が行われ、フェノール樹脂自体がキラリティーを備えるようになったことで発現した円二色性シグナルであると考えられる。
[キラル炭素材料の調製(1)]
上記手順で得たD−キラルポリマー100mgを坩堝に入れ、アルゴン雰囲気下、500℃にて1時間保持することで、黒色固体のD−キラル炭素材料を得た。また、D−キラルポリマーに代えてL−キラルポリマーを用いたこと以外は同様の手順で、L−キラル炭素材料を得た。なお、この実施例は、本発明のキラル炭素材料の製造方法の第一実施態様に相当する。
得られたキラル炭素材料について、SEMによる観察を行った。その結果を図12に示す。図12は、得られたキラル炭素材料についてのSEM画像である。図12に示すように、得られたキラル炭素材料は、炭化前と代わらず、ねじれたファイバー構造を維持していることがわかる。また、得られたD−/L−キラル炭素材料のそれぞれについて、固体円二色性測定(キラルポリマー:KBrの質量比=15:85)を行った。その結果を図13に示す。図13は、得られたD−及びL−キラル炭素材料の円二色性スペクトルである。図13に示すように、キラル炭素材料は、明確な円二色性シグナルを示し、キラリティーを有することがわかった。これらの結果から、キラルポリマーを炭化して得られたキラル炭素材料もキラル構造が存在することが示された。
[キラル炭素材料の調製(2)]
上記手順で得たD−樹脂複合体100mgを坩堝に入れ、アルゴン雰囲気下、500℃にて1時間保持することで、黒色固体を得た。得られた黒色固体100mgをプラスチック管に入れ、蒸留水10mL及び10wt%フッ化水素撒水溶液5mLを加え、室温で4時間撹拌した後、遠心分離により固体を回収した。得られた固体を蒸留水で1回、アセトンで2回洗浄し、室温で乾燥させて黒色のD−キラル炭素材料を得た。また、D−樹脂複合体に代えてL−樹脂複合体を用いたこと以外は同様の手順で、L−キラル炭素材料を得た。なお、この実施例は、本発明のキラル炭素材料の製造方法の第二実施態様に相当する。
得られたキラル炭素材料について、固体13C−NMR測定を行ったところ、125ppmにベンゼン環のピーク、及び149〜153ppmにピリミジンに由来するピークが観察され、このキラル炭素材料がベンゼン環及びピリミジン骨格からなる炭素材料であることが示唆された。また、得られたキラル炭素材料について、固体状態でKBr法によりFT−IRを測定したところ、1079cm−1のO−Si−O結合の伸縮振動が著しく減少しており、シリカが除去できたことを確認した。また、得られたキラル炭素材料の熱重量分析(TGA)を行ったところ、シリカ含有率が3.4%だったことから、フッ化水素酸による処理でシリカがほぼ除去されていることが確認された。
また、得られたキラル炭素材料について、SEMによる観察を行った。その結果を図14に示す。図14は、得られたキラル炭素材料についてのSEM画像である。図14に示すように、得られたキラル炭素材料は、螺旋状にねじれた全体構造を備えていることが確認された。さらに、得られたD−/L−キラル炭素材料のそれぞれについて、固体円二色性測定(キラル炭素材料:KBrの質量比=15:85)を行った。その結果を図15に示す。図15は、得られたD−及びL−キラル炭素材料の円二色性スペクトルである。図15に示すように、得られたキラル炭素材料は、長波長側で炭素に由来する強い円二色性シグナルが観察された。これらの結果から、炭化されて炭素材料となっても、転写されたキラル情報が維持されることが理解できる。

Claims (9)

  1. 直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させるゾルゲル法により、前記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、
    前記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、
    前記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を前記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、
    前記樹脂複合体にフッ化水素酸を作用させて、この樹脂複合体から前記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備えたキラルポリマーの製造方法。
    (上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
  2. 前記重合工程にて、前記フェノール類化合物を含む溶液中に前記酸処理複合体を10分以上浸漬させた後に、当該溶液中へホルムアルデヒドを投入することを特徴とする請求項1記載のキラルポリマーの製造方法。
  3. 前記珪素化合物がアルコキシシランである請求項1又は2記載のキラルポリマーの製造方法。
  4. 前記ジカルボン酸化合物が酒石酸である請求項1〜3のいずれか1項記載のキラルポリマーの製造方法。
  5. 前記フェノール類化合物がレゾルシノールである請求項1〜4のいずれか1項記載のキラルポリマーの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載のキラルポリマーの製造方法で得たキラルポリマーを焼成する工程を備えたキラル炭素材料の製造方法。
  7. 直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に有機シラン化合物を作用させるゾルゲル法により、前記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るゾルゲル工程と、
    前記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、
    前記酸処理複合体の存在下、下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとを作用させて、当該フェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体からなる樹脂を前記酸処理複合体の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、
    前記樹脂複合体を焼成させて得た焼成体にフッ化水素酸を作用させて、この焼成体から前記シリカ層を形成するシリカを除去する焼成除去工程と、を備えたキラル炭素材料の製造方法。
    (上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
  8. 下記一般式(I)で示すフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合体であって、円二色性スペクトル測定において正又は負のコットン効果が観察されることを特徴とするキラルポリマー。
    (上記一般式(I)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、m+mが1以上6以下の整数であることを条件に、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。)
  9. 熱重量分析により求められた、水を除く無機成分の含有量が10質量%未満であることを特徴とする請求項8記載のキラルポリマー。

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