JP7370533B2 - キラルポリマーの製造方法、及びキラルポリマー - Google Patents
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Description
本発明に係るキラルポリマーの製造方法は、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させる加水分解縮合反応により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るシリカ層形成工程と、上記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、上記酸処理複合体を由来とする被処理粒子の存在下、エチレン性不飽和結合を有する化合物をモノマーとしてラジカル重合させて、当該モノマーを繰り返し単位として含むポリマーを上記被処理粒子の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、上記樹脂複合体から上記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備える。本発明に係るキラルポリマーの製造方法が上記の各工程を備えることにより、まず、キラルなジカルボン酸化合物の持つキラリティーの反映された超分子結晶が鋳型となり、その鋳型をもとにして超分子結晶の表面に形成されたシリカ層に当該キラリティーが転写される。その後、酸処理により超分子結晶の粒子から上記ジカルボン酸化合物を除去した後、その粒子の表面でモノマーをラジカル重合させ、最後にシリカ層を除去することにより、シリカ層のキラリティーの転写されたキラルポリマーが生成する。このキラルポリマーは、シリカ層が持っていたキラリティーが転写されており円二色性を示すので、例えば、円二色性を利用したセキュリティー用途等の用途で用いることができる。
シリカ層形成工程では、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させる。この工程により、上記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体が得られる。
酸処理工程では、シリカ層形成工程で得られた複合体を酸処理する。これにより、複合体に含まれる超分子結晶からジカルボン酸化合物が除去され、上記複合体は酸処理複合体となる。その結果、複合体には、超分子結晶を構成していた直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、シリカ層とが残される。キラル源となるジカルボン酸化合物が複合体から除去されるが、ジカルボン酸化合物のキラリティーはシリカ層へ転写されており、この工程を経た複合体は、依然として構造的なキラリティーを有している。また、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーとジカルボン酸化合物の超分子結晶からジカルボン酸化合物が除去されることにより、塩基触媒を必要とする後述の重合工程にて、ポリエチレンイミン骨格に含まれる二級アミノ基が塩基触媒として機能することになる。
三級化工程は、後述する重合工程にて用いられる被処理粒子を調製する工程である。本工程では、酸処理工程を経た酸処理複合体に、求核試薬に対して脱離基となる置換基を備えたアルキル基がベンゼン環に結合した構造を有する化合物を作用させることで、上記ポリエチレンイミンの窒素原子が三級化した三級化複合体を得る。酸処理複合体には、上記キラル超分子結晶に由来するポリエチレンイミンが含まれており、本工程では、このポリエチレンイミンのイミノ基(二級アミノ基)の求核性を備えた窒素原子と、求核試薬に対して脱離基となる置換基を備えたアルキル基がベンゼン環に結合した構造を有する化合物とを反応させる。これにより、酸処理複合体のポリエチレンイミンの窒素原子が三級化し、アルキルベンゼン骨格が酸処理複合体に導入される。この処理を受けた酸処理複合体を三級化複合体と呼ぶ。
重合工程は、酸処理複合体を由来とする被処理粒子の存在下、エチレン性不飽和結合を有する化合物をモノマーとしてラジカル重合させて、当該モノマーを繰り返し単位として含むポリマーを上記被処理粒子の表面に形成させて樹脂複合体を得る工程である。なお、本実施態様において、酸処理複合体を由来とする被処理粒子とは上記三級化複合体を意味する。
除去工程は、上記樹脂複合体からシリカ層を形成するシリカを除去する工程である。
次に、本発明に係るキラルポリマーの製造方法の第二実施態様について説明する。第二実施態様では、上記第一実施態様で説明したシリカ層形成工程及び酸処理工程を経ることで得た酸処理複合体を焼成する焼成工程、焼成工程で得たキラルなシリカ粒子にシランカップリング剤を作用させて表面処理シリカを得る表面処理工程を備え、この表面処理シリカを被処理粒子として重合工程及び除去工程に付すことを特徴とする。シリカ層形成工程及び酸処理工程、並びに重合工程及び除去工程については、既に説明した第一実施態様におけるものと同様であるので、ここでの説明を省略する。
焼成工程は、酸処理工程で得た酸処理複合体を焼成することでキラルなシリカ粒子を得る工程である。酸処理複合体には、キラル超分子結晶からキラリティーの転写されたシリカ層とキラル超分子結晶に由来するポリエチレンイミンとが含まれ、これらのうち有機物であるポリエチレンイミンを焼成により取り除き、酸処理複合体に含まれていたキラルなシリカ層をシリカ粒子として得るのが本工程である。
表面処理工程は、焼成工程にて得たシリカ粒子にシランカップリング剤を作用させて表面処理シリカを得る工程である。この工程で得た表面処理シリカは、被処理粒子として重合工程に付されることになる。
上記のキラルポリマーの製造方法で得られるキラルポリマーもまた本発明の一つである。このキラルポリマーは、エチレン性不飽和結合を有する化合物をモノマーとした繰り返し単位を含み、円二色性スペクトル測定において正又は負のコットン効果が観察されることを特徴とする。このキラルポリマーは、粒子状であり、キラルシリカを由来とするキラリティーを維持している。このため、円二色性スペクトル測定においてコットン効果を示す。なお、既に説明した通り、上記モノマーとしてはジビニルベンゼン又はN,N’-メチレンビスアクリルアミドが好ましく挙げられる。
市販のポリエチルオキサゾリン(質量平均分子量50,000、平均重合度約500、Aldrich社製)30gを5mol/Lの塩酸水溶液(150mL)に溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加温し、その温度で10時間撹拌した。反応溶液にアセトン(500mL)を加えてポリマーを完全に沈殿させ、それを濾別し、メタノールで3回洗浄して白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。得られた粉末を1H-NMR(重水)にて分析したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖のエチル基に由来した1.2ppmのピーク(CH3)と2.3ppmのピーク(CH2)とが完全に消失していることが確認された。したがって、得られたポリマーでは、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
200mLビーカーにD-酒石酸0.60g(4.0mmol)及び蒸留水200mLを加え、100℃で加熱溶解させて酒石酸溶液とした。500mLビーカーにLPEI0.63g(繰り返し単位換算で8.0mmol)及び蒸留水200mLを加えて100℃で加熱溶解させ、上記酒石酸溶液の全量を加えて100℃で3分間撹拌した。反応溶液を水浴中で室温まで急冷した後、アンモニア水を加えてpH4.0に調整した。得られた溶液を冷蔵庫内で20時間静置後、得られた懸濁液から白色固体を遠心分離で回収し、蒸留水で2回洗浄してキラル超分子結晶を得た。テトラメトキシシラン(TMOS)12mL及び蒸留水80mLの混合溶液に、上記手順で得たキラル超分子結晶を加え、室温で2時間撹拌した。遠心分離で固体を回収し、蒸留水で1回、アセトンで2回洗浄した後、室温で減圧乾燥し、白色固体のD-複合体(D-PEI/Tart@SiO2とも呼ぶ。)を得た。D-複合体は、D-酒石酸を含むキラル超分子結晶の表面に加水分解縮合反応によりシリカ層を形成させたものである。また、D-酒石酸に代えてL-酒石酸を用いたこと以外は同様の手順にて、L-複合体(L-PEI/Tart@SiO2とも呼ぶ。)を得た。
スクリュー管にD-複合体(D-PEI/Tart@SiO2)を1.0g入れ、2.5M塩酸水溶液を50mL加え室温で1時間撹拌し、遠心分離で白色固体を回収した。この操作を5回繰り返した後、蒸留水で1回、アセトンで1回洗浄し、室温で乾燥させた白色粉末0.5mgと0.1wt%アンモニア水0.1mLをスクリュー管に加え、室温で30分間撹拌した。遠心分離により固体を回収し、蒸留水で1回、アセトンで2回洗浄した後、減圧乾燥させてD-酸処理複合体(D-PEI@SiO2とも呼ぶ。)を得た。また、D-複合体に代えてL-複合体(L-PEI/Tart@SiO2)を用いたこと以外は同様の手順で、L-酸処理複合体(L-PEI@SiO2とも呼ぶ。)を得た。
上記手順で得た酸処理複合体をもとに、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル(bp)の処理による三級化工程、ジビニルベンゼン(DVB)をモノマーとした重合工程、及び水酸化ナトリウム水溶液を用いた除去工程を経て実施例1のキラルポリマーを得た。その手順は、次の通りである。
100mLの反応容器に、D-又はL-酸処理複合体(PEI@SiO2)0.4g、メタノール80mL、炭酸カリウム0.27g及び4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル(bp)0.12gを加え、70℃で24時間撹拌した。吸引濾過により固体を回収し、脱イオン水、メタノール、及びアセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させ三級化複合体(bp処理物)の白色固体を得た。得られたD-/L-三級化複合体のそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図5に示す。図5は、得られたD-/L-三級化複合体(D-及びL-bp@SiO2)の円二色性スペクトルである。図5に示すように、220~310nmに正と負のコットン効果がそれぞれ観察された。また、TGAによる質量分析を行ったところ、酸処理複合体よりも有機物が増加していることが確認され、三級化によりbpが導入されていることが示唆された。
5mLのスクリュー管に、D-又はL-三級化複合体(bp処理物)0.3g及びジビニルベンゼン(DVB)3mLを加え、室温で2時間撹拌した。吸引濾過で固体を回収し、白色固体を得た。次いで、10mLの反応容器に、この白色固体0.3g、脱イオン水5mL及び2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(AAPH、ラジカル重合開始剤)0.03gを加え、容器内部を窒素置換してから80℃で20時間撹拌した。遠心分離で固体を回収し、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、アセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させ樹脂複合体を得た。得られたD-/L-樹脂複合体のそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図6に示す。図6は、得られたD-/L-樹脂複合体(D-及びL-bp@SiO2@PDVB)の円二色性スペクトルである。図6に示すように、300~340nmに正と負のコットン効果がそれぞれ観察された。また、得られた樹脂複合体では、IRスペクトルにて2927cm-1のC-H伸縮振動が観察され、TGAによる質量分析にて三級化複合体よりも有機物が増加していることが確認されたことから、DVBのラジカル重合によりポリマーの形成が確認された。
5mLのスクリュー管に、樹脂複合体0.1g及び5wt%NaOH水溶液(15mL)を加え、室温で4時間撹拌した。遠心分離により固体を回収し、脱イオン水、及びアセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させて実施例1のキラルポリマーを得た。得られたD-/L-キラルポリマーのそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図7に示す。図7は、実施例1のD-/L-キラルポリマー(D/L-PDVB)の円二色性スペクトルである。図7に示すように、270~320nmに正と負のコットン効果がそれぞれ確認された。また、得られたキラルポリマーでは、IRスペクトルにて1085cm-1におけるO-Si-Oの吸収の減少が観察され、TGAによる質量分析によりシリカ含有量が2.60%となったことが確認された。これらの結果から、実施例1のキラルポリマーには、上記D-/L-複合体におけるシリカ層のキラリティーが転写され、そのキラリティーが当該シリカの除去後も維持されていることがわかる。
上記手順で得た酸処理複合体をもとに、クロロメチルスチレン(CMS)の処理による三級化工程、N,N’-メチレンビスアクリルアミドをモノマーとした重合工程、及び水酸化ナトリウム水溶液を用いた除去工程を経て実施例2のキラルポリマーを得た。その手順は、次の通りである。
50mLの反応容器に、D-又はL-酸処理複合体(PEI@SiO2)1g及び炭酸カリウム0.3gを加え、さらに脱水メタノール40mLに分散させたクロロメチルスチレン0.3gを加えて、70℃で24時間撹拌した。遠心分離により固体を回収し、THF、脱イオン水、及びアセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させ三級化複合体(CMS処理物)の白色固体を得た。得られたD-/L-三級化複合体のそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図8に示す。図8は、得られたD-/L-三級化複合体(D-及びL-CMS@SiO2)の円二色性スペクトルである。図8に示すように、250~300nmに正と負のコットン効果がそれぞれ観察された。このCD活性は、キラルシリカによって誘起されたビニル残基の有機CDと考えられる。また、TGAによる質量分析を行ったところ、酸処理複合体よりも有機物が増加していることが確認されたことから、三級化によりCMSが導入されていることが示唆された。
5mLのスクリュー管に、D-又はL-三級化複合体(CMS処理物)0.3g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)0.5g及びメタノール2mLを加え、室温で2時間撹拌した。吸引濾過で固体を回収し、白色固体を得た。次いで、10mLの反応容器に、この白色固体0.3g、トルエン5mL及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、ラジカル重合開始剤)0.03gを加え、容器内部を窒素置換してから80℃で20時間撹拌した。遠心分離で固体を回収し、脱イオン水、メタノール、アセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させ樹脂複合体を得た。得られたD-/L-樹脂複合体のそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図9に示す。図9は、得られたD-/L-樹脂複合体(D-及びL-CMS@SiO2@PMBA)の円二色性スペクトルである。図9に示すように、240~300nmに正と負のコットン効果がそれぞれ観察された。また、得られた樹脂複合体では、IRスペクトルにて1700cm-1にC=Cに起因する吸収の増加が観察され、TGAによる質量分析にて三級化複合体よりも有機物が増加していることが確認されたことから、MBAのラジカル重合によりポリマーの形成が確認された。
5mLのスクリュー管に、樹脂複合体0.1g及び5wt%NaOH水溶液(15mL)を加え、室温で4時間撹拌した。遠心分離により固体を回収し、脱イオン水、及びアセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させて実施例2のキラルポリマーを得た。得られたD-/L-キラルポリマーのそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図10に示す。図10は、実施例2のD-/L-キラルポリマー(D/L-PMBA)の円二色性スペクトルである。図10に示すように、260~310nmに正と負のコットン効果がそれぞれ確認された。また、得られたキラルポリマーでは、IRスペクトルにて1085cm-1におけるO-Si-Oの吸収の減少が観察され、TGAによる質量分析によりシリカ含有量が2.80%となったことが確認された。これらの結果から、実施例2のキラルポリマーには、上記D-/L-複合体におけるシリカ層のキラリティーが転写され、そのキラリティーが当該シリカの除去後も維持されていることがわかる。
上記手順で得た酸処理複合体をもとに、焼成により有機物を分解してシリカ粒子とする焼成工程、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TPM)の処理による表面処理工程、ジビニルベンゼン(DVB)をモノマーとした重合工程、及び水酸化ナトリウム水溶液を用いた除去工程を経て実施例3のキラルポリマーを得た。その手順は、次の通りである。
D-又はL-酸処理複合体を600℃で3時間焼成し、シリカ粒子とした。10mLの反応容器にこのシリカ粒子0.3gを入れた後、窒素下で脱水トルエン8mL及び3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(TPM)2mLを加え、40℃で24時間撹拌した。吸引濾過により固体を回収し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥させ表面処理シリカ(TPM処理物)の白色固体を得た。得られたD-/L-表面処理シリカのそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図11に示す。図11は、得られたD-/L-表面処理シリカ(D-及びL-SiO2@TPM)の円二色性スペクトルである。図11に示すように、210~300nmに正と負のコットン効果がそれぞれ観察された。また、得られた表面処理シリカでは、IRスペクトルにて1700cm-1にC=Cに起因する吸収が観察され、TGAによる質量分析にて有機物の存在が確認された。
5mLのスクリュー管に、D-又はL-表面処理シリカ(TPM処理物)0.3g及びジビニルベンゼン(DVB)3mLを加え、室温で2時間撹拌した。吸引濾過で固体を回収し、白色固体を得た。次いで、10mLの反応容器に、この白色固体0.3g、脱イオン水5mL及び2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(AAPH、ラジカル重合開始剤)0.03gを加え、容器内部を窒素置換してから80℃で20時間撹拌した。遠心分離で固体を回収し、THF、メタノール、アセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させ樹脂複合体を得た。得られたD-/L-樹脂複合体のそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図12に示す。図12は、得られたD-/L-樹脂複合体(D-及びL-SiO2@TPM@PDVB)の円二色性スペクトルである。図12に示すように、250~320nmに正と負のコットン効果がそれぞれ観察された。また、得られた樹脂複合体のTGAによる質量分析にて表面処理シリカよりも有機物が増加していることが確認されたことから、DVBのラジカル重合によりポリマーの形成が確認された。
5mLのスクリュー管に、樹脂複合体0.1g及び5wt%NaOH水溶液(15mL)を加え、室温で4時間撹拌した。遠心分離により固体を回収し、脱イオン水、及びアセトンによりそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥させて実施例3のキラルポリマーを得た。得られたD-/L-キラルポリマーのそれぞれについて、円二色性測定を行った。その結果を図13に示す。図13は、実施例3のD-/L-キラルポリマー(D/L-PDVB)の円二色性スペクトルである。図13に示すように、250~320nmに正と負のコットン効果がそれぞれ確認された。また、得られたキラルポリマーでは、IRスペクトルにて1085cm-1におけるO-Si-Oの吸収の減少が観察され、TGAによる質量分析によりシリカ含有量が4.90%となったことが確認された。これらの結果から、実施例3のキラルポリマーには、上記D-/L-複合体におけるシリカ層のキラリティーが転写され、そのキラリティーが当該シリカの除去後も維持されていることがわかる。
Claims (6)
- 直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させる加水分解縮合反応により、前記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るシリカ層形成工程と、
前記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、
前記酸処理複合体を由来とする被処理粒子の存在下、ジビニルベンゼン、エチレンビスメタクリレート又はN,N’-メチレンビスアクリルアミドをモノマーとしてラジカル重合させて、当該モノマーを繰り返し単位として含むポリマーを前記被処理粒子の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、
前記樹脂複合体から前記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備え、
前記酸処理複合体に、求核試薬に対して脱離基となる置換基を備えたアルキル基がベンゼン環に結合した構造を有する化合物を作用させることで、前記ポリエチレンイミンの窒素原子が三級化した三級化複合体を得る三級化工程をさらに含み、この工程で得た三級化複合体を前記被処理粒子として重合工程に付すことを特徴とするキラルポリマーの製造方法。 - 前記重合工程において、前記被処理粒子に前記モノマーを接触させた後、前記モノマーが非水溶性であれば水溶性溶媒中で、前記モノマーが水溶性であれば非水溶性溶媒中で、前記ラジカル重合を行うことを特徴とする、請求項1記載のキラルポリマーの製造方法。
- 直鎖状ポリエチレンイミン骨格を備えたポリマーと、2つのカルボキシル基を備え、4以上の炭素原子を備えたキラルなジカルボン酸化合物と、を含んでなる酸塩基型錯体のキラル超分子結晶に加水分解性の珪素化合物を作用させる加水分解縮合反応により、前記キラル超分子結晶の表面にシリカ層を形成させた複合体を得るシリカ層形成工程と、
前記複合体を酸処理して酸処理複合体を得る酸処理工程と、
前記酸処理複合体を由来とする被処理粒子の存在下、ジビニルベンゼン、エチレンビスメタクリレート又はN,N’-メチレンビスアクリルアミドをモノマーとしてラジカル重合させて、当該モノマーを繰り返し単位として含むポリマーを前記被処理粒子の表面に形成させて樹脂複合体を得る重合工程と、
前記樹脂複合体から前記シリカ層を形成するシリカを除去する除去工程と、を備え、
前記酸処理複合体を焼成することでキラルなシリカ粒子を得た後、そのシリカ粒子にラジカル重合性残基を有するシランカップリング剤を作用させて表面処理シリカを得る表面処理工程をさらに含み、この工程で得た表面処理シリカを前記被処理粒子として重合工程に付すことを特徴とするキラルポリマーの製造方法。 - 前記重合工程において、前記被処理粒子に前記モノマーを接触させた後、前記モノマーが非水溶性であれば水溶性溶媒中で、前記モノマーが水溶性であれば非水溶性溶媒中で、前記ラジカル重合を行うことを特徴とする、請求項5記載のキラルポリマーの製造方法。
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