JP2018174934A - 高濃度イヌリン含有飲料 - Google Patents
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(1)容器詰飲料であって、 (a)イヌリンの含有量が1.0〜6.0g/100mL;(b)低級脂肪族アルコールの含有量が0.01〜1.0重量%;(c)波長660nmにおける吸光度が0.06以下;(d)純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下;を満たす、加熱殺菌された前記飲料。
(2)低級脂肪族アルコールがエタノール及び/又はプロピレングリコールである、(1)に記載の飲料。
(3)pHが4.5〜7.0である、(1)または(2)に記載の飲料。
(4)イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)が2.0以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料。
本発明の一態様は、(a)イヌリンの含有量が1.0〜6.0g/100mLであり、(b)低級脂肪族アルコールの含有量が0.01〜1.0重量%であり、加熱殺菌された無色透明な容器詰飲料である。
イヌリンは、種々の植物に含まれる多糖類の一群であり、グルコースにフルクトースが複数個結合した重合体である。本発明に係る飲料に使用可能なイヌリンは、フラクトシル単位が主にβ−2,1結合によって結合され、フラクタンの鎖長が2〜100の範囲であり、好ましくは2〜60の範囲である。イヌリン中の結合の少なくとも90%がβ−2,1型である。例えば、チコリ由来のイヌリンとして、Frutafit(商標)またはRaftiline(商標)がある。また、多数の植物種から当業者に周知の方法により得ることができる。
フレーバードウォーターのような無色透明飲料では、一般に、水以外の配合成分の種類や量が比較的少ないことが特徴とされている。そのため、別の成分を添加すると飲料の香味のバランスが崩れやすくなり、すっきりした味わいや爽やかな風味といった飲料の美味しさを維持しながらイヌリンの雑味を抑制することは困難である。本発明の飲料は、特定のアルコール類をごく少量の濃度範囲で含有させることにより、すっきりした味わいや爽やかな風味といった飲料の美味しさを維持しながら、イヌリンに由来する雑味を感じにくくする。
本発明は、加熱殺菌された無色透明飲料で目立つイヌリンの雑味を特定量の低級脂肪族アルコールを配合することで低減し、水のように飲みやすい飲料とするものである。無色透明飲料の中でも、pHが4を超える弱酸性飲料又は中性のpHである飲料は、pH4以下の飲料と比較して、イヌリンの雑味が目立ちやすい傾向にある。これは、pH4以下の飲料では、酸味成分がイヌリンの雑味のマスキングに作用するのに対し、pH4を超える飲料では、酸味成分が少ない又はないためと考えられる。したがって、低級脂肪族アルコールを配合することによる効果の顕著さから、本発明の飲料のpHの範囲は、pH4.5〜7.0が好ましく、pH5.0〜7.0がより好ましい。
酸味成分だけでなく、その他の可能性固形分が低い飲料は、イヌリンの雑味が目立ちやすい。具体的には、イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)が2.0以下のような低Brixの飲料は、効果の大きさから、本発明の好適な一態様である。より好ましくはイヌリンを除く飲料の可溶性固形分が0〜1.5であり、さらに好ましくは0〜1.0であり、特に好ましくは0〜0.5である。
上記可溶性固形分として、酸化防止剤、乳化剤、保存量、香料、調味料、エキス類、甘味料、品質安定剤等の添加剤を単独、或いは併用して用いることができる。本発明者らは、特定量のナトリウムを含有させることにより、本発明の効果をさらに向上させることができることを見出している。本発明の飲料におけるナトリウムの含有量は、0.1mg/100mL以上が好ましく、0.3mg/100mL以上がより好ましく、1.0mg/100mL以上がさらに好ましい。ナトリウムに起因する塩味がフレーバードウォーターのような無色透明飲料のすっきりした味わいや爽やかな風味といった飲料の美味しさを損なうことがあることから、ナトリウムの含有量の上限は、150mg/100mLが好ましく、100mg/100mLがより好ましく、50mg/100mLがさらに好ましい。
本発明の飲料は、常温で長期保存可能な加熱殺菌済みの飲料で発現するイヌリンの雑味を抑制するものであり、容器詰め飲料の形態で提供される。加熱殺菌の条件は、容器の形態に応じて適宜選択することができる。例えば、ペットボトルや紙パック、瓶飲料、パウチ飲料などの容器詰飲料とする場合には、例えば90〜130℃で1〜60秒保持するFP又はUHT殺菌を挙げることができる。
本発明は、別の側面では容器詰め飲料の製造方法である。具体的には、容器詰め飲料の製造方法であって、(a)飲料中のイヌリンの含有量を1.0〜6.0g/100mLに調整する工程;(b)飲料中の低級脂肪族アルコールの含有量を0.01〜1.0重量%に調整する工程;(c)波長660nmにおける吸光度を0.06以下に調整する工程;及び(d)純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下に調整する工程;を含む、前記製造方法である。さらに、適宜加熱殺菌する工程も含む。また、適宜飲料のpHを4.5〜7.0に調整する工程;イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)を2.0以下に調整する工程を含む。ここで、上記の低級脂肪族アルコールは、好ましくはエタノール及び/又はプロピレングリコールである。
本発明は、別の側面では、高濃度イヌリン含有飲料におけるイヌリン特有の雑味を抑制する方法である。具体的には、高濃度にイヌリンを含有する容器詰飲料におけるイヌリン特有の雑味を抑制する方法であって、(a)飲料中のイヌリンの含有量を1.0〜6.0g/100mLに調整する工程;(b)飲料中の低級脂肪族アルコールの含有量を0.01〜1.0重量%に調整する工程;(c)波長660nmにおける吸光度を0.06以下に調整する工程;及び(d)純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下に調整する工程;を含む、前記方法である。さらに、適宜加熱殺菌する工程も含む。また、適宜飲料のpHを4.5〜7.0に調整する工程;、Brixを2.0以下に調整する工程を含む。ここで、上記の低級脂肪族アルコールは、好ましくはエタノール及び/又はプロピレングリコールである。
(実験1:イヌリン含有飲料の評価)
水溶液中のイヌリン濃度が、表1に記載の濃度となるように、イヌリンを水(イオン交換水)に溶解してUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填し、容器詰飲料(pH7)とした。この容器詰飲料を25℃にした後、3名のパネルによりイヌリンの雑味の有無を評価した。また、飲料の波長660nmにおける吸光度及び色差(ΔE)を測定した。
結果を表1に示す。表1中の評価結果は、雑味があると感じたパネルの人数を示す。イヌリンを1.0g/100mL以上含有する飲料は、過半数が加熱殺菌処理に伴い雑味が発生すると感じた。
表2の配合に従って、イヌリン、エタノール又はプロピレングリコールを混合し、試料2−17及び2−18はクエン酸三ナトリウムおよびクエン酸を用いてpHを調整した。飲料をUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填して、サンプル飲料1〜23を調製した。いずれのサンプルも波長660nmにおける吸光度は0.01以下であり、純粋を基準とした場合のΔEは0.0であった。
5点:イヌリンの雑味が大きく緩和されており、エタノール又はプロピレングリコー
ルの苦味とのバランスが良く大変飲みやすい
4点:イヌリンの雑味が緩和されており、エタノール又はプロピレングリコールの苦
味とのバランスが良く飲みやすい
3点:イヌリンの雑味がやや緩和されており、エタノール又はプロピレングリコール
の苦味とのバランスがありやや飲みやすい
2点:イヌリンの雑味が緩和されているが、エタノール又はプロピレングリコールの
苦味が強く飲みにくい
1点:イヌリンの雑味が緩和されておらず飲みにくい。
実験2のイヌリン1.2g/100mLを含有する飲料(試料2−1、2−2)について、さらに詳細にエタノールの効果を検証した。表3の配合に従って、エタノールを混合しUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填して、容器詰飲料(pH7)とした。この容器詰飲料を25℃にした後、3名のパネルによりイヌリンの雑味の有無を評価した。評価は、エタノール無添加の飲料(試料3−1)の雑味の強さを基準として、以下の基準で評価した。
(±) イヌリンの雑味が変わらない
(+) イヌリンの雑味が緩和されている
(++) イヌリンの雑味が大きく緩和されているが、僅かに雑味を感じる
(+++)イヌリンの雑味が大きく緩和されており、雑味を感じない
イヌリンの濃度を1.6g/100mLにする以外は実験3と同様にして、エタノールによるイヌリンを含有する加熱殺菌飲料(pH7)におけるイヌリンの雑味の緩和効果を評価した。結果を表4に示す。イヌリン含量が1.6g/100mLの場合も、微量のエタノール添加によって加熱殺菌によって発生するイヌリン含有飲料の雑味が緩和できた。エタノールを0.5重量%混合した飲料(試料4−4)では、イヌリンの雑味は感じられないがエタノールの風味を僅かに感じると評価したパネル(1名)が存在した。
イヌリンの濃度を1.8g/100mLにする以外は実験3と同様にして、エタノールによるイヌリンを含有する加熱殺菌飲料(pH7)におけるイヌリンの雑味の緩和効果を評価した。結果を表5に示す。イヌリン含量が1.8g/100mLの場合も、微量のエタノール添加によって加熱殺菌によって発生するイヌリン含有飲料の雑味が効果的に緩和できた。
イヌリンの濃度を2.0g/100mL、4.0g/100mL、6.0g/100mL又は8.0g/100mLにする以外は実験3と同様にして、エタノールによるイヌリンを含有する加熱殺菌飲料(pH7)におけるイヌリンの雑味の緩和効果を、それぞれエタノール無添加の飲料(試料6−1、試料6−4、試料6−7、試料6−10)の雑味の強さを基準として評価した。結果を表6に示す。イヌリン含量が2.0g/100mLの場合も、微量のエタノール添加によって加熱殺菌によって発生するイヌリン含有飲料の雑味が効果的に緩和できた。イヌリン含量が、より一層高濃度(4.0g/100mL以上)になると、完全に感じられない対照(Cont.)と同程度のレベルまでエタノールのみで雑味を緩和することは難しく、イヌリン含量が8.0g/100mLの場合には比較的多量のエタノールを用いてもエタノールによるイヌリンの雑味の緩和効果は確認できなかった。
実験2のプロピレングリコールを含有する飲料(試料2−19〜2−23)について、さらに詳細に検討した。実験3と同様にして、プロピレングリコールによるイヌリンを含有する加熱殺菌飲料(pH7)におけるイヌリンの雑味の緩和効果を、それぞれプロピレングリコール無添加の飲料(試料7−1、試料7−4、試料7−7)の雑味の強さを基準として評価した。結果を表7に示す。プロピレングリコールの場合もエタノールと同様の効果が確認できた。
実験4のイヌリン1.6g/100mLを含有する飲料(試料4−3)について、さらに詳細に検討した。まず、予備検討として、イヌリンの雑味に及ぼすpHの影響を検討した。イヌリン1.6g/100mLを含有する水溶液に、pH3.3〜pH5.6となるようにクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを混合した。クエン酸及びクエン酸三ナトリウムが無添加(pH7)のものと合わせて、計4種類のpHが異なるイヌリン含有溶液を調製し、これをUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填して容器詰飲料とした。この容器詰飲料を25℃にした後、3名のパネルによりイヌリンの雑味の有無を評価した。結果を表8に示す。表中のpHは加熱殺菌飲料のpHを示し、評価結果は雑味があると感じたパネルの人数を示す。pHが4.6以上の飲料では、パネルの過半数が加熱殺菌処理に伴う雑味を感じた。一方、pHが低くなるほど、加熱殺菌されたイヌリン含有飲料の雑味が感じ難くなった。酸味料によるマスキング効果があると考えられる。
イヌリンの濃度を2.0g/100mL又は4.0g/100mLにする以外は、実験8と同様にして、エタノールによるイヌリンを含有する加熱殺菌飲料におけるイヌリンの雑味の緩和効果を評価した。結果を表10に示す。実験8と同様に、pHが異なる場合も、エタノールによるイヌリンの雑味緩和効果が確認できた。試料9−5と9−6をそれぞれ比較した場合、pH4以下の酸性飲料(試料9−6)の方が、pHが高い飲料(試料9−5)と比べて、よりイヌリンの雑味を感じにくく、評価点は(+++)にほど近かった。
イヌリン2.0g/100mL及びエタノール0.05重量%を混合し、さらに表11のナトリウム濃度となるように塩化ナトリウムを混合して、計4種類のナトリウム濃度が異なるイヌリン含有溶液を調製した。これをUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填して容器詰飲料(pH7)とし、実験2と同様にして、評価した。結果を表11に示す。ナトリウム濃度が異なる場合も、エタノールによるイヌリンの雑味緩和効果が確認できた。
イヌリン4.0g/100mL及びエタノール0.05重量%を混合し、さらに表12のナトリウム濃度となるように塩化ナトリウムを混合して、ナトリウム濃度が異なるイヌリン含有溶液を調製した。比較として、エタノール無添加のものも調製した。これらをUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填して容器詰飲料(pH7)とし、実験3と同様にして、エタノールによるイヌリンを含有する加熱殺菌飲料におけるイヌリンの雑味の緩和効果を、エタノール無添加の飲料(試料11−1)の雑味の強さを基準として評価した。結果を表12に示す。ナトリウムを添加した場合、相乗的にイヌリンの雑味を緩和できた。
実験6のイヌリン2.0g/100mLを含有する飲料(試料6−2)について、さらに詳細に検討した。まず、予備検討として、イヌリンの雑味に及ぼす可溶性固形分(Brix)の影響を検討した。イヌリン2.0g/100mLを含有する水溶液に、果糖を2又は5g/100mLとなるように混合した。果糖無添加のものと合わせて、計3種類のBrixが異なるイヌリン含有溶液を調製し、これをUHT殺菌処理した後、500mLのPET容器に充填して容器詰飲料(pH7)とした。この容器詰飲料を25℃にした後、3名のパネルによりイヌリンの雑味の有無を評価した。結果を表13に示す。表中のBrixは加熱殺菌後の飲料のBrix値からイヌリンの含有量(=2.0)を減じた値を示す。また、表中の評価結果は雑味があると感じたパネルの人数を示す。Brixが2以下の飲料では、パネル全員が加熱殺菌処理に伴うイヌリンの雑味を感じた。一方、Brixが高いと、雑味が感じ難くなる傾向であった。
Claims (4)
- 容器詰飲料であって、
(a)イヌリンの含有量が1.0〜6.0g/100mL;
(b)低級脂肪族アルコールの含有量が0.01〜1.0重量%;
(c)波長660nmにおける吸光度が0.06以下;
(d)純水を基準とした場合のΔE値(色差)が3.5以下;
を満たす、加熱殺菌された前記飲料。 - 低級脂肪族アルコールがエタノール及び/又はプロピレングリコールである、請求項1に記載の飲料。
- pHが4.5〜7.0である、請求項1または2に記載の飲料。
- イヌリンを除く飲料の可溶性固形分(Brix)が2.0以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
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