JP2018173064A - エンジン - Google Patents
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Abstract
Description
当該プレチャンバープラグは、そのプラグカバーに単数又は複数の連通孔を設けて構成され、当該連通孔が点火室と燃焼室とを連通するように構成されている。当該連通孔は、吸気行程において燃焼室に吸気された燃焼用空気と燃料との混合気を、主に圧縮行程において燃焼室から点火室へ流入させると共に、燃焼膨張行程において点火室内で混合気を火花点火することにより形成された燃焼火炎を点火室から燃焼室へ噴出させる。燃焼室では、連通孔から噴出された燃焼火炎により混合気が燃焼することとなる(特許文献1を参照)。
当該レーザー点火型エンジンでは、所望の点火タイミングにおいて、高密度のレーザー光を点火点に集光することで、所望の点火タイミングにて点火室の点火点にて点火するものである。
点火点を覆い点火室を形成する点火点カバー部を有し、シリンダヘッドに点火点カバー部を装着した状態において、ピストンに面する燃焼室と前記点火点カバー部の内部に形成された前記点火室とを連通する連通孔が前記点火点カバー部に設けられるエンジンであって、その特徴構成は、
前記点火点カバー部に設けられるレーザー光透過窓を介して前記点火点にレーザー光を集光して点火するレーザー光照射機構を、前記レーザー光の光軸が前記燃焼室と前記点火室とを通る状態で配設して備え、
前記燃焼室の燃焼状態に基づいて、前記点火点としての前記レーザー光の焦点位置と前記連通孔との距離を、前記光軸に沿う方向で調整する点火点位置調整部を備える点にある。
当該実験は、図3に示すような疑似燃焼室3と疑似点火室14とを有する定容容器に対し、予混合タンクで混合した混合気を送り、疑似点火室14の内部にて火花点火して、疑似燃焼室3の圧力の経時変化を測定すると共に、高速度ビデオカメラを用いて疑似燃焼室3の上方の耐熱ガラス窓から火炎の伝播状態を撮像したものである。疑似燃焼室3と疑似点火室14とは、一の連通孔15にて連通される構成とした。燃焼排ガスは、1度の点火毎にバキュームポンプにより疑似燃焼室3及び疑似点火室14から掃気し、その後、予混合気を疑似燃焼室3及び疑似点火室14へ吸気し、静定したのちに点火した。予混合タンク内は、メタンと圧縮空気とによる均一な定温の予混合気を形成した。定容容器において、疑似燃焼室3は、直径70mm、高さ37mmの円筒型で、容積は142.4cm3とし、疑似点火室14は、疑似燃焼室3の周方向の側脇に設け、直径13mm、高さ9mmの円筒形で、容積は1.2cm3とした。
具体的には、点火点位置を、疑似点火室14の内部において、連通孔15から0mmの位置(図3でP1で示す位置)と、連通孔15から4mmの位置で疑似点火室14の略中央の位置(図3でP2で示す位置)と、連通孔15から9mmの位置で疑似点火室14で連通孔15と対向する壁の近傍の位置(図3でP3で示す位置)とに設定した場合において、圧力の経時変化と、火炎の伝播状態とを計測した。
点火点位置を、連通孔15から0mmの位置(図3でP1で示す位置)に設定した場合、図5上段の撮像画像に示すように、連通孔15から球状火炎伝播のみが発生しており、そのときの圧力の経時変化は図4に示すように、緩慢なものとなっている。即ち、当該点火点位置では、疑似点火室14から疑似燃焼室3への火炎ジェットは形成されない。このような燃焼形態では、希薄混合気を用いた場合には、当該希薄混合気を点火時期近傍で良好に燃やすことができず、希薄限界を拡大することは難しい。
点火点位置を、連通孔15から4mmの位置で疑似点火室14の略中央の位置(図3でP2で示す位置)に設定した場合、図5下段の撮像画像に示すように、連通孔15から球状火炎伝播が発生した後に火炎ジェットが発生しており、2段階の火炎が形成されている。このときの圧力の経時変化は図4に示すように、連通孔15から0mmの位置(図3でP1で示す位置)の場合よりは急峻な変化をしているが、比較的緩慢である。
点火点位置を、連通孔15から9mmの位置で疑似点火室14で連通孔15と対向する壁の近傍の位置(図3でP3で示す位置)に設定した場合、撮像画像は取得していないが、その圧力の経時変化は、図4に示すように、0mm及び4mmの場合に比べて急峻な立ち上がりを示しており、疑似燃焼室3の内部の混合気は、火炎ジェットにより良好に燃焼されていると推察される。結果、希薄限界を拡大するという観点からは、点火点位置は、疑似点火室14の内部において、なるべく、連通孔15から離間した位置に設定することが好ましいという知見を得ている。
即ち、発明者らは、点火室を有する火花点火エンジンにおいては、点火室の内部での点火点位置と連通孔との位置関係が、希薄限界を拡大する上で、非常に重要なファクターであるという知見を得た。
特に、エンジンの起動時や、希薄領域での燃焼変動の発生時等の不安定燃焼時において、失火が発生する場合がある。このように、点火室を備えるエンジンにおいて失火が発生した場合、点火室の内部に残留ガスが滞留すること等が原因で、燃焼条件を変動しないままでは、再度、点火することが困難であるため、従来は、燃料をリッチ側とする等の制御が実行されていた。しかしながら、不安定燃焼が発生する毎に燃料濃度を高くする制御を行う場合、効率の悪化につながるため、改善が望まれていた。
さらに、通常燃焼時においては、例えば、焦点位置を連通孔から離間する位置に調整することで、火炎ジェットの効果を最大限に発揮して希薄限界を広げ得るエンジンを実現できる。
前記燃焼状態が不安定燃焼状態にあることを検知する不安定燃焼状態検知手段を備え、
前記点火点位置調整部は、前記不安定燃焼状態検知手段が前記不安定燃焼状態を検知した場合、前記光軸に沿う方向で前記焦点位置を前記連通孔に近接する側へ調整する形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する点にある。
上記特徴構成によれば、点火点位置調整部は、不安定燃焼状態検知手段が不安定燃焼状態を検知した場合、光軸に沿う方向で焦点位置を連通孔に近接する側へ調整する形態で、焦点位置と連通孔との距離を調整するから、例えば、点火点を周囲雰囲気が新気となる領域に位置させることができ、点火を確実に実行し、失火の発生を防止し、燃焼を安定化することができる。
前記点火点カバー部に覆われる前記点火室は、前記シリンダヘッドから前記燃焼室へ向かう延設方向に沿って延設され、
前記連通孔は、前記点火点カバー部のうち前記延設方向で前記燃焼室の側に設けられ、
前記レーザー光照射機構が、前記光軸を前記延設方向に沿わせて設けられ、
前記点火点位置調整部は、前記不安定燃焼状態検知手段が前記不安定燃焼状態を検知した場合、前記延設方向に沿う方向で前記焦点位置を前記燃焼室側へ調整する形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する点にある。
上記特徴構成によれば、光軸を延設方向に沿わせることで、点火点位置を、残留ガスと新気との境界の移動方向に沿って移動させることができる。特に、上記特徴構成によれば、延設方向に沿う方向で焦点位置を燃焼室側へ調整する、即ち、焦点位置を点火室内で調整するときには焦点位置と連通孔との距離を低減することができ、これにより、点火点位置を新気の存在する領域へ適切に移動させることができる。
先の排気行程において前記点火室の内部に残留している残留ガスと、吸気行程において新たに前記点火室の内部に流入する新気とは、点火タイミングにおいて前記延設方向で前記シリンダヘッド側から記載の順に存在するものであり、
前記点火タイミングにおいて、前記不安定燃焼状態における前記延設方向での前記残留ガスと前記新気との境界領域を記憶する記憶部を備え、
前記点火点位置調整部は、前記記憶部に記憶される境界領域に基づいて、前記延設方向に沿う方向で前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する点にある。
上記特徴構成によれば、点火点位置調整部は、不安点燃焼状態における延設方向での残留ガスと新気との境界領域に基づいて、延設方向に沿う方向で焦点位置と連通孔との距離を調整するから、新気と残留ガスの境界領域の予測に基づいて、焦点位置を調整でき、より適切に焦点位置が新気領域に位置するように調整できる。
前記点火点位置調整部は、前記点火タイミングにおいて、前記不安定燃焼状態における前記延設方向に沿う方向で前記境界領域よりも前記新気側に前記点火点を位置させる形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する点にある。
前記点火点位置調整部は、前記点火タイミングにおいて、前記不安定燃焼状態における前記延設方向に沿う方向で前記境界領域よりも前記新気側の前記燃焼室内に前記点火点を位置させる形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する点にある。
排気路を通流する燃焼排ガスの温度を計測する温度センサを備え、
前記不安定燃焼状態検知手段は、前記温度センサの計測結果に基づいて前記不安定燃焼状態としての起動状態又は失火状態であることを検知するものである点にある。
前記燃焼室での圧力を計測する圧力センサを備え、
前記不安定燃焼状態検知手段は、前記圧力センサの計測結果に基づいて前記不安定燃焼状態としての燃焼変動状態であることを検知するものであることが好ましい。
前記点火点位置調整部は、前記レーザー光を集光する光学素子と、当該光学素子を前記光軸に沿う方向で移動させるアクチュエータとを備えている点にある。
前記連通孔は複数設けられ、複数の前記連通孔は、前記光軸を対称軸として線対称に設けられていることが好ましい。
以下、図面に基づいて説明する。
即ち、吸気路42において、ミキサ64で燃料ガスFと空気Aとを混合して生成された混合気Mは、スロットル弁44を介して所定の流量に調整されて、エンジン本体の燃焼室3に導入される。
ここで、出力制御部C1によりエンジン本体の出力が目標出力に制御されている場合、混合気圧が決まれば、燃焼室3に供給される混合気Mの空燃比が一意に決定される。
つまり、エンジンコントロールユニットCは、例えば、目標出力毎に、混合気圧と空燃比との関係を示すマップを保持しており、所定の目標出力において、目標空燃比となるように、上述の圧力センサSにて計測される混合気圧を、目標空燃比に対応する目標混合気圧に近づけるべく、燃料制御弁63とスロットル弁44との少なくとも何れか一方の開度を制御する。
尚、当該実施形態にあっては、ガスエンジン100は、高い効率で運転するべく、燃焼室3での混合気Mの当量比が1より小さいリーンバーン燃焼(例えば、当量比が0.6以上0.8以下程度)を実行し続けるように、目標空燃比及びそれに対応する目標混合気圧が設定される。
更に、点火点カバー部20に覆われる点火室14は、シリンダヘッド6から燃焼室3へ向かう延設方向に沿って延設され、当該実施形態にあっては、延設方向に沿う軸(点火室14の中心軸)は、燃焼室3の中心軸αに一致した状態で設けられている。
具体的には、連通孔15は、点火点カバー部20と点火室14の中心軸αとが交わる部位であって、点火点カバー頭部23の頭頂部に設けられると共に、点火室14の中心軸αを対称軸として、点火点カバー頭部23に複数(当該実施形態では、4つ:図1には、2つを図示)設けられている。
即ち、点火室14は、点火点カバー頭部23と、点火点カバー基端部22と、透過部材34とに外囲されて形成されている。
当該実施形態にあっては、点火点カバー部20の点火点カバー基端部22の内部空間(点火点カバー部20を貫通して設けられるレーザー光透過窓の一例)を介して高出力のパルスレーザー光を点火室14の内部に集光するレーザー光照射機構30を、レーザー光の光軸が燃焼室3と点火室14とを通る状態で備えている。より詳細には、レーザー光照射機構30は、光軸を延設方向に沿わせる状態、即ち、点火室14の中心軸αに沿わせる状態で配設されている。
レーザー光照射機構30は、詳細な図示は省略するが、エンジン100に対して組み付けられており、エンジン100と共に一体振動するように配設されている。
当該構成により、アクチュエータ36が高温の燃焼排ガスEに晒されることを防止できる。
そこで、点火点位置調整部は、燃焼室3の燃焼状態が安定している安定燃焼状態においては、光軸に沿う方向(延設方向に沿う方向)で、焦点位置(点火点P)を連通孔15から離間する側へ調整する形態で、焦点位置と連通孔との距離を調整する。
そこで、当該実施形態に係るエンジン100にあっては、燃焼状態が不安定燃焼状態にあることを検知する不安定燃焼状態検知手段を備えている。当該不安定燃焼状態検知手段は、燃焼室3での圧力を計測する圧力センサSの計測結果に基づいて不安定燃焼状態としての燃焼変動状態であることを検知するものであり、例えば、当該不安定燃焼状態検知手段は、図示平均有効圧の変動率COV(IMEP)が、5%を超えたときに、燃焼変動状態であると検知する。
そして、点火点位置調整部は、不安定燃焼状態検知手段が不安定燃焼状態であると検知した場合、光軸に沿う方向(延設方向に沿う方向)で、焦点位置を連通孔15に近接する側に調整する形態で、さらに言えば、焦点位置を点火室14の内部において燃焼室3の側に調整する形態で、焦点位置と連通孔15との距離を調整する。
新気と残留ガスとの境界領域Kとの関係でいえば、点火点位置調整部は、境界領域Kよりも新気の側(図2で下方側)に点火位置を位置させる形態で、焦点位置と連通孔15との距離を調整する。
ここで、図2に示すように、連通孔15として点火点カバー頭部23の頭頂部に設けられる連通孔を採用する場合、安定燃焼状態の場合の点火点P3aと連通孔15との距離L3a(図2左に図示)は、不安定燃焼状態の場合の点火点P3bと連通孔15との距離L3b(図2中央に図示)よりも短く設定されることになる。
(1)上記実施形態では、燃料ガスFは、吸気路42に供給され、点火室14へは、連通孔15を介して燃料ガスFと燃焼用空気Aとの混合気Mが供給される構成を示した。
しかしながら、点火室14に燃料ガスFを直噴するインジェクタを備える構成を採用しても構わない。
また、点火室14の中心軸と光軸も、一致していなくても構わない。
3 :燃焼室
6 :シリンダヘッド
14 :点火室
15 :連通孔
20 :点火点カバー部
30 :レーザー光照射機構
35 :光学レンズ
36 :アクチュエータ
100 :エンジン
C :エンジンコントロールユニット
C2 :点火点位置制御部
C3 :記憶部
K :境界領域
P :点火点
S :圧力センサ
α :中心軸
Claims (10)
- 点火点を覆い点火室を形成する点火点カバー部を有し、シリンダヘッドに点火点カバー部を装着した状態において、ピストンに面する燃焼室と前記点火点カバー部の内部に形成された前記点火室とを連通する連通孔が前記点火点カバー部に設けられるエンジンであって、
前記点火点カバー部に設けられるレーザー光透過窓を介して前記点火点にレーザー光を集光して点火するレーザー光照射機構を、前記レーザー光の光軸が前記燃焼室と前記点火室とを通る状態で配設して備え、
前記燃焼室の燃焼状態に基づいて、前記点火点としての前記レーザー光の焦点位置と前記連通孔との距離を、前記光軸に沿う方向で調整する点火点位置調整部を備えるエンジン。 - 前記燃焼状態が不安定燃焼状態にあることを検知する不安定燃焼状態検知手段を備え、
前記点火点位置調整部は、前記不安定燃焼状態検知手段が前記不安定燃焼状態を検知した場合、前記光軸に沿う方向で前記焦点位置を前記連通孔に近接する側へ調整する形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する請求項1に記載のエンジン。 - 前記点火点カバー部に覆われる前記点火室は、前記シリンダヘッドから前記燃焼室へ向かう延設方向に沿って延設され、
前記連通孔は、前記点火点カバー部のうち前記延設方向で前記燃焼室の側に設けられ、
前記レーザー光照射機構が、前記光軸を前記延設方向に沿わせて設けられ、
前記点火点位置調整部は、前記不安定燃焼状態検知手段が前記不安定燃焼状態を検知した場合、前記延設方向に沿う方向で前記焦点位置を前記燃焼室側へ調整する形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する請求項2に記載のエンジン。 - 先の排気行程において前記点火室の内部に残留している残留ガスと、吸気行程において新たに前記点火室の内部に流入する新気とは、点火タイミングにおいて前記延設方向で前記シリンダヘッド側から記載の順に存在するものであり、
前記点火タイミングにおいて、前記不安定燃焼状態における前記延設方向での前記残留ガスと前記新気との境界領域を記憶する記憶部を備え、
前記点火点位置調整部は、前記記憶部に記憶される境界領域に基づいて、前記延設方向に沿う方向で前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する請求項3に記載のエンジン。 - 前記点火点位置調整部は、前記点火タイミングにおいて、前記不安定燃焼状態における前記延設方向に沿う方向で前記境界領域よりも前記新気側に前記点火点を位置させる形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する請求項4に記載のエンジン。
- 前記点火点位置調整部は、前記点火タイミングにおいて、前記不安定燃焼状態における前記延設方向に沿う方向で前記境界領域よりも前記新気側の前記燃焼室内に前記点火点を位置させる形態で、前記焦点位置と前記連通孔との距離を調整する請求項4に記載のエンジン。
- 排気路を通流する燃焼排ガスの温度を計測する温度センサを備え、
前記不安定燃焼状態検知手段は、前記温度センサの計測結果に基づいて前記不安定燃焼状態としての起動状態又は失火状態であることを検知するものである請求項2〜6の何れか一項に記載のエンジン。 - 前記燃焼室での圧力を計測する圧力センサを備え、
前記不安定燃焼状態検知手段は、前記圧力センサの計測結果に基づいて前記不安定燃焼状態としての燃焼変動状態であることを検知するものである請求項2〜7の何れか一項に記載のエンジン。 - 前記点火点位置調整部は、前記レーザー光を集光する光学素子と、当該光学素子を前記光軸に沿う方向で移動させるアクチュエータとを備えている請求項1〜8の何れか一項に記載のエンジン。
- 前記連通孔は複数設けられ、
複数の前記連通孔は、前記光軸を対称軸として線対称に設けられている請求項1〜9の何れか一項に記載のエンジン。
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