JP2018172243A - 酸化マグネシウム粉末、その製造方法および複合材 - Google Patents

酸化マグネシウム粉末、その製造方法および複合材 Download PDF

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【課題】各粒子が大きい表面積を有し、低コストで製造できる酸化マグネシウム粉末、その製造方法および複合材を提供する。【解決手段】酸化マグネシウム粉末は、球状のサブミクロン粒子が連結して多孔質構造を形成する粒子からなる。このように、酸化マグネシウム粉末を構成する各粒子は1μm以下の球状粒子が隙間を残しながら結合して多孔質構造を形成しており表面積が大きい。その結果、酸化マグネシウム粒子を樹脂に添加した際に、粒子表面の多孔部に樹脂が含浸することで樹脂との密着性が向上し、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度を低下させることなく、剛性や熱伝導性を高くすることができる。また、このような酸化マグネシウム粉末は、鉱物原料から簡易に製造でき製造コストを低くできる。【選択図】図5

Description

本発明は、各粒子が多孔質構造を有する酸化マグネシウム粉末、その製造方法および複合材に関する。
酸化マグネシウムは、熱伝導性が高く(45〜60W/(m・K))、電気絶縁性に優れた材料で、工業的には半導体向けの放熱部品用のフィラーとして使用されることがある。例えば、特許文献1には、管状構造を有するマグネシア質粒子を樹脂、塗料、紙などのフィラーとして用いることが記載されている。また、特許文献2には、集積回路(IC)の封止材あるいは回路基板の材料に用いることができる球形の酸化マグネシウム粒子が記載されている。
特開2004−175644号公報 特開2003−2640号公報
上記のように酸化マグネシウム粒子は樹脂と混合するフィラーとして用いられることが知られている。しかし、酸化マグネシウム粒子と樹脂との密着性は必ずしも高くないため、複合材の特性は十分とはいえない。
また、例えば、特許文献1記載のようなマグネシア質粒子は、硫酸マグネシウム水塩水溶液を用い3つのステップを経て製造しなければならない。また、特許文献2記載の酸化マグネシウム粒子は、酸素ガスを含む気体中で浮遊状態の液体微粒子を焼成しなければならず、いずれも安価には製造できない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各粒子が大きい表面積を有し、低コストで製造できる酸化マグネシウム粉末、その製造方法および複合材を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の酸化マグネシウム粉末は、球状のサブミクロン粒子が連結して多孔質構造を形成する粒子からなることを特徴としている。このように、酸化マグネシウム粉末を構成する各粒子は1μm以下の球状粒子が隙間を残しながら結合して多孔質構造を形成しており表面積が大きい。その結果、酸化マグネシウム粒子を樹脂に添加した際に、粒子表面の多孔部に樹脂が含浸することで樹脂との密着性が向上し、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度を低下させることなく、剛性や熱伝導性を高くすることができる。また、このような酸化マグネシウム粉末は、鉱物原料から簡易に製造でき製造コストを低くできる。
(2)また、本発明の酸化マグネシウム粉末は、比表面積が、40m/g以上であることを特徴としている。このように比表面積が大きいため、例えば樹脂のフィラーとして用いたときに樹脂との接触面積を大きくでき、高い特性が得られる。
(3)また、本発明の複合材は、主に酸化マグネシウム粉末からなるフィラーと樹脂とを含む複合材であって、上記(1)または(2)記載の酸化マグネシウム粉末が、樹脂に対して40vol%以上80vol%以下分散していることを特徴としている。このように樹脂に対して酸化マグネシウム粉末が、40vol%以上80vol%以下分散していることで、樹脂中に酸化マグネシウム粒子が適度に充填され、樹脂の特性を維持しつつ機械的特性や熱伝導特性を向上できる。
(4)また、本発明の複合材は、引張り強度200N以上、弾性率2000MPa以上かつ熱伝導率1.0W/(m・K)以上であることを特徴としている。これにより、高い特性を有する部材として半導体製造装置や自動車部品等の様々な分野に応用できる。
(5)また、本発明の酸化マグネシウム粉末の製造方法は、上記(1)または(2)記載の酸化マグネシウム粉末の製造方法であって、酸化マグネシウム原料粉末を水と混合し、2wt%以上40wt%以下の濃度のスラリーを生成する工程と、前記スラリーを150℃以上に加熱しつつ、0.80MPa以上で加圧した状態を1時間以上保持することで高温高圧化し、前記スラリー中で前記酸化マグネシウム原料粉末と水とを水熱合成させて水酸化マグネシウムを生成する工程と、前記水熱合成させて得られたスラリーを吸引ろ過し、前記ろ過の残留物を乾燥させる工程と、前記乾燥させた残留物を700℃以上850℃以下の温度に加熱することで焼成し、前記水酸化マグネシウムを熱分解させて酸化マグネシウム粉末を生成する工程と、を含むことを特徴としている。これにより、低コストで多孔質構造を有し比表面積の大きい酸化マグネシウム粉末が得られる。
本発明によれば、酸化マグネシウム粉末の各粒子が大きい表面積を有し、低コストで製造できる。その結果、樹脂にフィラーとして混合したときに複合材の特性を向上できる。
本発明の酸化マグネシウム粉末の製造方法を示すフローチャートである。 それぞれ原料および生成物の粒度分布を示すグラフである。 (a)〜(c)それぞれ原料、中間躯体および製造物のXRD測定結果を示すグラフである。 (a)、(b)それぞれ原料および実施例を示すSEM写真である。 実施例の酸化マグネシウム粉末を示すSEM写真である。 原料および製造物の組成を示す表である。 実施例および比較例の製造条件および製造結果を示す表である。 実施例および比較例の構成および複合材の特性を示す表である。 実施例および比較例の酸化マグネシウム粉末の添加量および複合材の特性を示す表である。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[酸化マグネシウム粉末の構成]
本発明の酸化マグネシウム粉末は、酸化マグネシウム(MgO)と微量の不純物とから構成され、球状のサブミクロン粒子が連結して多孔質構造を形成する粒子からなる。サブミクロン粒子とは、粒子径1μm以下の粒子をいう。多孔質構造が形成されていることで粒子の表面積は大きくなる。その結果、酸化マグネシウム粒子を樹脂に添加した際に、粒子表面の多孔部に樹脂が含浸して樹脂との密着性が向上し、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度を低下させることなく、剛性や熱伝導性を高くすることができる。なお、酸化マグネシウム粉末の比表面積は、40m/g以上200m/g以下であることが好ましい。また、レーザ回折散乱の粒度分布における平均粒子径(D50)は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。
[複合材の構成]
上記のような酸化マグネシウム粉末をフィラーとして樹脂に混合した複合材を説明する。複合材は、樹脂にフィラーが分散して形成されている。また、複合材に用いられる樹脂には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エポキシ等が挙げられる。これらの樹脂に、少なくとも多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末を分散させることで、粒子表面の多孔部に樹脂が含浸し樹脂との密着性が向上する。
複合材に、酸化マグネシウム粉末が樹脂に対して40vol%以上80vol%以下含まれることで特性が向上する。含有率が40vol%以上なので充填率が高くなり、熱伝導率が向上し、80vol%以下なので引っ張り強度や曲げ強度を高く維持できる。その結果、複合材は、引張り強度200N以上、弾性率2000MPa以上かつ熱伝導率1.0W/(m・K)以上の特性を有する。このような複合材は、半導体製造装置や自動車部品等の様々な分野に応用できる。
[酸化マグネシウム粉末の製造方法]
図1は、本発明の酸化マグネシウム粉末の製造方法を示すフローチャートである。図1に沿って、酸化マグネシウム粉末の製造方法を説明する。まず、鉱物系の酸化マグネシウム(MgO)原料粉末を準備する。鉱物系の酸化マグネシウム原料粉末には、例えば炭酸マグネシウムまたは水酸化マグネシウムを主成分とする鉱物を550〜1400℃で焼成して得た軽焼マグネシアの一部を水和したものを用いることができる。炭酸マグネシウムを主成分とする鉱物の例としては、マグネサイト、ドロマイト等が挙げられる。
次に、酸化マグネシウム原料粉末を水と混合し、スラリーを生成する(工程P1)。混合する水は、蒸留水を用いることができる。酸化マグネシウム原料粉末は、平均粒径(D50)が20μm以上30μm以下の粒子からなる粉末を用いることが好ましい。そうすることで、酸化マグネシウム原料粉末を十分に水熱合成でき、中間躯体を容易に生成できる。また、スラリーは、2wt%以上40wt%以下の濃度で生成することが好ましい。スラリー濃度を2wt%以上にすることで、溶解せずに粉末の生成物が得られ、40wt%以下にすることで原料粉末粒子の残留を抑止できる。なお、スラリー濃度を20wt%以上にすると平均粒径10μmより大きい酸化マグネシウムが得られやすい。
得られたスラリーは高温高圧化し、スラリー中で酸化マグネシウム原料粉末と水とを水熱合成させて水酸化マグネシウム(Mg(OH))を生成する(工程P2)。高温高圧化の工程では、スラリーを150℃以上に加熱しつつ、0.80MPa以上で加圧した状態を1時間以上保持することが好ましい。これにより、原料粉末の水熱合成を十分に進行させることができる。
次に、水熱合成させて得られたスラリーを吸引ろ過し、ろ過の残留物を乾燥させる(工程P3)。乾燥させた残留物として中間躯体の水酸化マグネシウムが得られる(工程P4)。そして、乾燥させた残留物を焼成し、水酸化マグネシウムを熱分解させ、加熱脱水する(工程P5)。
焼成工程では、残留物を700℃以上850℃以下の温度に加熱することが好ましい。これにより、中間躯体である水酸化マグネシウムの脱水反応を進行させて酸化マグネシウム粒子を形成するとともに、その融解を抑止して酸化マグネシウム粉末を生成できる。
このようにして、酸化マグネシウム粉末を生成できる(工程P6)。鉱物系の酸化マグネシウム原料粉末を水熱合成し、得られた水酸化マグネシウムを熱分解させることで、低コストかつ短時間で多孔質構造を有する粒子からなる酸化マグネシウム粉末を生成できる。
また、上記の工程では、ボールミル等による粉砕を行なわないため、不純物の混入を回避でき、出発原料からの純度低下を0.05%以下に抑えることができる。工程で純度がほとんど低下しないため、例えば純度90wt%以上の酸化マグネシウム原料粉末を用いれば、純度90wt%以上の多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末を生成できる。また、このような酸化マグネシウム粉末は、鉱物原料から簡易に製造でき製造コストを低くできる。
[実施例、比較例]
鉱物系の酸化マグネシウム粉末原料を使用して酸化マグネシウム粉末を作製した。図5は、実施例および比較例の製造条件を示す表である。実施例、比較例のいずれにも、純度97.08%、平均粒径23μm、表面積2m/gの緻密粒子からなる酸化マグネシウム原料粉末を出発原料とした。それぞれの実施例、比較例は、図5に示すように、スラリー濃度、水熱合成の温度、圧力、保持時間、焼成時間を変えて作製した。
得られた酸化マグネシウム粉末の試料について、それぞれ以下の通り物性を測定した。まず、粒度分布測定には、レーザ回折・散乱法により、マイクロトラック粒度分析計(日機装社製)を用いた。生成物の同定には、粉末X線回折装置(Bruker社製)を用いた。粒子形態測定には、走査電子顕微鏡(日本電子社製)を用いた。また、成分分析には、蛍光エックス線分析装置(リガク社製)を用いた。比表面積の測定には、流動式比表面積自動測定装置(島津製作所社製)を用いた。
(粒度分布測定)
実施例3の原料および生成物について、粒度分布を測定した。図2(a)、(b)は、それぞれ原料および生成物の粒度分布を示すグラフである。酸化マグネシウム原料粉末の粒度分布では、図2(a)に示すように、30μm付近に頻度4.5%以上の最も大きなピークが現れた。一方、1.5μm付近には、頻度1%に満たないわずかなピークが現れた。酸化マグネシウム原料粉末の平均粒径は、22.8μmであった。
一方、生成物の酸化マグネシウム粉末の粒度分布では、図2(b)に示すように、20μm付近に頻度3.5%以上の最も大きなピークが現れ、2.5μm付近に頻度2%以上の次に大きなピークが現れた。生成物の酸化マグネシウム粉末は、2粒度分布で構成されていることを確認できた。酸化マグネシウム粉末の平均粒径は、9.6μmであった。
(XRD測定)
実施例3を作製する際に、原料、中間躯体および生成物に対してX線回折(XRD)測定を行なった。図3(a)〜(c)は、それぞれ原料、中間躯体および生成物のXRD測定結果を示すグラフである。図3(a)および(c)に示すように、原料および生成物のX線回折プロファイル上にはいずれも酸化マグネシウムに特有のピークが現れた。また、図3(b)に示すように、中間躯体のX線回折プロファイル上には、水酸化マグネシウムに特有のピークが現れた。これにより、酸化マグネシウム原料粉末から水酸化マグネシウムの中間躯体が生成され、さらに水酸化マグネシウムから酸化マグネシウムが生成されることを確認できた。
(SEM観察)
実施例3の原料および生成物について、SEM観察を行なった。図4(a)、(b)は、それぞれ原料および生成物を示すSEM写真、図5は、生成物を示すSEM写真である。図4(a)、(b)は、1000倍、図5は、10000倍の倍率で撮影されたSEM写真を示している。
酸化マグネシウム原料粉末は、図4(a)に示すように、大きさが20μm以上の緻密な粒子で粉末が構成されていた。生成物の酸化マグネシウム粉末は、図4(b)および図5に示すように、大きさが1μmに満たない粒子が結合して多孔質粒子を構成していることを確認できた。また、多孔質粒子は、大きさ10μm程度であった。
(蛍光X線測定)
実施例3の原料および製造物の組成を蛍光X線(XRF)で確認した。図6は、原料および生成物の組成を示す表である。図6に示すように、酸化マグネシウム原料粉末の純度が97.08%であるのに対し、生成物の酸化マグネシウム粉末の純度は97.05%であり、ほとんど純度の低下がなく、本発明の製造工程では原料の純度をほぼ一定に維持できることを確認できた。
実施例1〜5、比較例1〜7について、比表面積を測定した。多孔質粒子として得られた実施例1〜5の比表面積は、40m/g以上60m/g以下であった。比較例1は、多孔質粒子であったが、比表面積は35m/g以下であった。比較例3〜7は、緻密粒子であり、比表面積はいずれも35m/g以下であった。
(好適な製造条件)
(1)スラリー濃度
図7は、実施例および比較例の製造条件および製造結果を示す表である。実施例1では、スラリー濃度40wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径15μm、比表面積40m/gの多孔質粒子からなる粉末が得られた。これに対し、比較例3では、スラリー濃度45wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径23μm、比表面積2m/gの緻密質粒子からなる粉末が生成された。スラリー濃度が高いと酸化マグネシウム原料粉末が水と反応しきれないため、緻密な粒子からなる酸化マグネシウム原料粉末が残留してしまうと考えられる。
実施例2では、スラリー濃度2wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径5μm、比表面積60m/gの多孔質粒子からなる粉末が生成された。これに対し、比較例2では、スラリー濃度1wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、中間躯体生成の段階で水に溶解し、酸化マグネシウム粉末を生成できなかった。したがって、スラリー濃度は2wt%以上40wt%の範囲にあることが好ましいと分かる。
(2)水熱合成の温度
また、実施例1では、スラリーを150℃で水熱合成し、多孔質粒子からなる粉末が生成されたのに対し、比較例4では、140℃で水熱合成したところ、平均粒子径23μm、比表面積2m/gの緻密質粒子からなる粉末が生成された。したがって、水熱合成の温度は150℃以上が好ましいことが分かる。
(3)水熱合成の圧力
実施例1では、0.8MPaの圧力で水熱合成し、多孔質粒子からなる粉末が生成されたのに対し、比較例5では、0.7MPaの圧力で水熱合成したところ、平均粒子径20μm、比表面積25m/gの緻密質粒子からなる粉末が生成された。したがって、水熱合成の圧力は0.8MPa以上が好ましいことが分かる。また、比較例4、5から水熱合成の温度か圧力のどちらかが低い場合には、反応が進行しないと考えられる。
(4)水熱合成の維持時間
実施例2では、水熱合成時の温度と圧力を1.0h保持したところ、多孔質粒子からなる粉末が生成されたのに対し、比較例6では、水熱合成時の温度と圧力を0.5h保持したところ、平均粒子径18μm、比表面積30m/gの緻密質粒子からなる粉末が生成された。高温高圧状態を保持する時間が短い場合、反応が十分に進まず、酸化マグネシウム原料粉末が残留してしまうと考えられる。したがって、水熱合成の維持時間は1.0h以上が好ましいことが分かる。それにより、反応が十分に進み、多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末が生成される。
(5)焼成温度
実施例1では、焼成温度700℃で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末が生成された。これに対し、比較例1では、焼成温度650℃で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、多孔質粒子からなるものの水酸化マグネシウムが混在する粉末が生成された。比較例1では、水酸化マグネシウムの脱水反応が十分に終了しない温度で焼成したため、生成物が酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの混合物になったと考えられる。
実施例3では、850℃で焼成して酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径10μm、比表面積48m/gの多孔質粒子からなる粉末が生成された。これに対し、比較例7では、900℃で焼成して酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径4μm、比表面積35m/gの緻密質粒子からなる粉末が生成された。焼成温度が高い場合、粒子同士のネッキングが進行し、緻密な粒子が形成されると考えられる。したがって、焼成温度は700℃以上850℃以下の範囲にあることが好ましいと分かる。
(6)結論
以上より、濃度2wt%以上40wt%以下に調整したスラリーを、温度150℃以上、圧力0.80MPa以上で1時間以上保持し、得られた中間躯体を乾燥して700℃〜850℃で焼成することで、球状のサブミクロン粒子が連結して多孔質構造を形成され、比表面積が10m/g以上40m/g以下である粒子からなる酸化マグネシウム粉末を安定的に生成できることが実証された。
(複合材の特性)
次に、実施例1〜5、比較例3〜7の酸化マグネシウム粉末の試料を、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ノバテック)(以下、PPと略す)に対して40vol%の割合で添加、分散させた複合材試料を作製した。これらの複合材試料、および比較例8として酸化マグネシウムを添加しないPPを準備し、引っ張り強度、弾性率、熱伝導率を測定した。引っ張り強度および弾性率の測定にはインストロン社製の万能材料試験機を用いた。熱伝導率の測定には、NETZSCH社製のLFAを用いてフラッシュ法により測定した。
図8は、実施例および比較例の構成および複合材の特性を示す表である。実施例1〜5の酸化マグネシウム粉末を用いた複合材は、PP単体(PPのみからなる試料)の比較例8と比べて、弾性率および熱伝導率が向上し、引っ張り強度の低下を抑制できた。これに対し、比較例3〜7の酸化マグネシウム粉末を分散させた試料は、PP単体の比較例8と比べて、弾性率は向上したが、引っ張り強度は低下し、熱伝導率はあまり向上しなかった。また、弾性率は向上したものの、実施例1〜5に比べると低い値であった。
図9は、実施例および比較例の酸化マグネシウム粉末の添加量および複合材の特性を示す表である。実施例6、7は、実施例3の酸化マグネシウム粉末をPPに対してそれぞれ50vol%、80vol%混合した複合材である。実施例6では、PP単体の比較例8と比べて、その引っ張り強度が低下せず、弾性率および熱伝導率が向上している。実施例7は、添加量を80vol%とした複合材である。実施例7は、PP単体の比較例8と比べて、その弾性率および熱伝導率が大きく向上し、引っ張り強度の低下が低く抑えられた。
比較例9は、PP単体の比較例8と比べて、その引っ張り強度は低下している。また、その弾性率および熱伝導率は向上しているものの、基準は満たさない。比較例10は、その弾性率および熱伝導率は大きく向上しているものの、引っ張り強度は低下している。これは、PP量が少なすぎて、主のマトリックスであるPPと酸化マグネシウム粉末の結合(密着性)が担保されないためと考えられる。
以上より、平均粒子径5μm以上15μm以下で、比表面積40m/g以上の多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末は、樹脂に分散させるフィラー材として好適である。このような酸化マグネシウム粉末を樹脂に分散させた複合材は、弾性率および熱伝導率が向上し、引っ張り強度の低下が低く抑えられる。また、樹脂に分散させる酸化マグネシウム粉末の混合比は、樹脂の体積に対して40vol%以上80vol%以下であることが好ましい。

Claims (5)

  1. 球状のサブミクロン粒子が連結して多孔質構造を形成する粒子からなることを特徴とする酸化マグネシウム粉末。
  2. 比表面積は、40m/g以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化マグネシウム粉末。
  3. 主に酸化マグネシウム粉末からなるフィラーと樹脂とを含む複合材であって、
    請求項1または請求項2記載の酸化マグネシウム粉末が、樹脂に対して40vol%以上80vol%以下分散していることを特徴とする複合材。
  4. 引張り強度200N以上、弾性率2000MPa以上かつ熱伝導率1.0W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項3記載の複合材。
  5. 請求項1または請求項2記載の酸化マグネシウム粉末の製造方法であって、
    酸化マグネシウム原料粉末を水と混合し、2wt%以上40wt%以下の濃度のスラリーを生成する工程と、
    前記スラリーを150℃以上に加熱しつつ、0.80MPa以上で加圧した状態を1時間以上保持することで高温高圧化し、前記スラリー中で前記酸化マグネシウム原料粉末と水とを水熱合成させて水酸化マグネシウムを生成する工程と、
    前記水熱合成させて得られたスラリーを吸引ろ過し、前記ろ過の残留物を乾燥させる工程と、
    前記乾燥させた残留物を700℃以上850℃以下の温度に加熱することで焼成し、前記水酸化マグネシウムを熱分解させて酸化マグネシウム粉末を生成する工程と、含むことを特徴とする酸化マグネシウム粉末の製造方法。
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