JP2021172535A - 球状窒化アルミニウム粉末の製造方法および球状窒化アルミニウム粉末 - Google Patents

球状窒化アルミニウム粉末の製造方法および球状窒化アルミニウム粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】放熱シリコーンゴム、放熱シリコーングリス、放熱シリコーン接着剤などのフィラー用途に最適な大きさを有し、真球度が高い球状窒化アルミニウム粉末を効率よく製造する方法を提供することにある。【解決手段】体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状アルミナ粉末、球状アルミナ水和物粉末、又はその両方と、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであるカーボン粉末とを混合し、窒素雰囲気下で1,750〜2,050℃の温度で還元窒化を行うことを特徴とする球状窒化アルミニウム粉末の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は放熱シリコーンゴム、放熱シリコーングリス、放熱シリコーン接着剤などのフィラーとして好適な特性を有する球状窒化アルミニウム粉末の製造方法および球状窒化アルミニウム粉末に関する。
シリコーンゴム、シリコーングリス、シリコーン接着剤にアルミナや窒化ホウ素などのフィラーが充填されている放熱材料は、例えば、放熱シートや放熱グリスとして各種電子機器に広く使用されている。窒化アルミニウムは、電気絶縁性に優れており且つ高熱伝導性を有していることから、このような放熱材料のフィラーとして注目されている。
放熱材料の熱伝導率を向上させるためには、高熱伝導性を有したフィラーを高充填することが重要である。そのため、放熱材料のフィラーとして窒化アルミニウム粉末を用いる場合には、粉末を形成している粒子が球状であることおよび数10μm〜数100μm程度の幅広い粒径を有していることが好ましい。成形性を損なわずにフィラーを樹脂等に高充填するためには、比較的大きな粒径の球状の粒子と比較的小さな粒径の球状の粒子とを含む粉末を使用し、大きな球状粒子の間に小さな球状粒子が分布しているような充填構造が形成されていることが最も好ましい。
窒化アルミニウム粉末の製法としては、還元窒化法、直接窒化法、気相法等が知られている。還元窒化法は、アルミナまたはアルミナ水和物とカーボンとの混合物を窒素中で加熱することにより、アルミナまたはアルミナ水和物を還元し、さらに窒化させて窒化アルミニウム粉末を得るという方法である。直接窒化法は、アルミニウムに窒素を反応させることにより、アルミニウムから直接窒化アルミニウム粉末を得るという方法である。気相法は、アルキルアルミニウムとアンモニアを反応させた後、加熱することにより窒化アルミニウム粉末を得るという方法である。
しかし、このような窒化アルミニウム粉末の製造方法では、樹脂等に高充填するために有利な窒化アルミニウム粉末を得ることが困難であった。例えば、還元窒化法および気相法では、得られる窒化アルミニウム粉末は、粒子形状は破砕状であり、その粒径はサブミクロンオーダーのものがほとんどである。また、直接窒化法では、窒化アルミニウム粉末は塊状で得られ、これを粉砕・分級することにより所定の粒度に調製でき、粒径の制御は比較的容易であるが、その粒子形状は角張った形をしており、球状からはかけ離れている。
そこで、種々の形状及び粒径を有した粒子からなる窒化アルミニウム粉末を製造する方法が提案されているが、何れも一長一短があり、未だ、前述した粒子特性を有し、樹脂等に高充填し得る窒化アルミニウム粉末は得られていない。
例えば、特許文献1には、単一粒子の平均粒子径が3μm以上で、丸みをおびた形状を有した単一粒子径の揃った窒化アルミニウム粉末が開示されている。しかしながら、この窒化アルミニウム粉末の粒子は、10μm以上の大きな粒径を有するものではない。
また、特許文献2及び3には、球状のアルミナ又はアルミナ水和物をカーボンの存在下に窒素ガスまたはアンモニアガスによって還元窒化することにより窒化アルミニウム粉末を製造する方法が開示されている。この方法によれば、粒子形状が真球形状に近く、また、粒径が比較的大きな窒化アルミニウム粉末を得ることができ、更に、粒径が小さな窒化アルミニウム粉末も得ることができる。しかしながら、これらの特許文献に記載された方法では得られる球状の窒化アルミニウム粉末は中空になりやすいため粒子強度が低く、その粒径を安定に保持することができないという欠点を有している。樹脂等に配合したとき、粒子が崩壊して微粉化してしまい、この結果、樹脂等の成形性(流動性)が低下してしまうという問題がある。
特許文献4には、不定形状の粒子からなる窒化アルミニウム粉末を、アルカリ土類元素、希土類元素などの化合物よりなるフラックス中で熟成(熱処理)することにより球状化させた後、フラックスを溶解して単離した結晶質窒化アルミニウム粉体を得る方法が開示されている。この方法では、高充填に適した形状及び粒径の窒化アルミニウム粉末を得ることができるが、一旦製造された窒化アルミニウム粉末を更に特殊な処理に付さなければならず、従って、生産コストの点で問題がある。また、この方法で得られる窒化アルミニウム粉末は、フラックスの使用により不純物含量が多くなってしまうという欠点もある。
特許文献5には30〜500m/gのBET比表面積を有する、アルミナ粉末又はアルミナ水和物粉末の球状造粒物を出発原料として使用し、該球状造粒物を、還元窒化工程に供給し、還元剤が存在する窒素雰囲気下で還元窒化を行うことを特徴とする球状窒化アルミニウム粉末を得る方法が開示されている。この方法では、高充填に適した形状及び粒径の窒化アルミニウム粉末を得ることができるが、還元窒化処理温度が低いためにAlN転化率が低く、また還元窒化処理時に粒子同士が凝集、結合して変形し易いという欠点がある。
特開平3−23206号公報 特開平4−74705号公報 特開2005−162555号公報 特許第3911554号公報 特許第5686748号公報
従って、本発明の目的は、フィラー用途に最適な大きさを有し、真球度が高い球状窒化アルミニウム粉末を効率よく製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、
体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状アルミナ粉末、球状アルミナ水和物粉末、又はその両方と、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであるカーボン粉末とを混合し、窒素雰囲気下で1,750〜2,050℃の温度で還元窒化を行う球状窒化アルミニウム粉末の製造方法を提供する。
このようにすれば、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
また、本発明では、球状窒化アルミニウム粉末であって、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状窒化アルミニウム粉末を提供する。
このような球状窒化アルミニウム粉末は、樹脂等に高充填するために十分な大きさを持つ。
また、本発明では、上記の球状窒化アルミニウム粉末からなるものである放熱材料用フィラーを提供する。
本発明の球状窒化アルミニウム粉末は、放熱材料用フィラーとして好適に使用される。
本発明の球状窒化アルミニウム粉末の製造方法であれば、フィラー用途等に最適な比較的大きい粒径を有する球状窒化アルミニウム粉末を高い転化率でかつ簡単な工程で効率良く製造することができる。
また、本発明の球状窒化アルミニウム粉末の製造方法により得られる球状窒化アルミニウム粉末は、フィラーとして、成形性(流動性)を損なうことなく、種々の樹脂等に高充填可能であり、更に、フラックス剤等の金属添加剤を使用しなくてもよいため、この窒化アルミニウム粉末の純度は極めて高い。
実施例1で得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 実施例2で得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 実施例3で得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 実施例4で得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 比較例1で得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。 比較例2で得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真である。
上述のように、フィラー用途に最適な大きさを有し、真球度が高い球状窒化アルミニウム粉末を効率よく製造する方法が求められていた。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、後述する製造方法であれば、目的とする性状の球状粒子からなる窒化アルミニウム粉末を生産性良く製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状アルミナ粉末、球状アルミナ水和物粉末、又はその両方と、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであるカーボン粉末とを混合し、窒素雰囲気下で1,750〜2,050℃の温度で還元窒化を行う球状窒化アルミニウム粉末の製造方法である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書において、球状窒化アルミニウム粉末の平均粒径、真球度は、それぞれ、後述する実施例に示す方法によって測定した値である。
<球状窒化アルミニウム粉末の製造>
本発明の球状窒化アルミニウム粉末の製造方法においては、出発原料として体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmで、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状アルミナ、球状アルミナ水和物粉末、又はその両方と、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであるカーボン粉末と混合し、窒素雰囲気下で1,750〜2,050℃の温度で還元窒化を行うことにより、目的とする球状窒化アルミニウム粉末が製造される。
1.原料;
本発明の球状窒化アルミニウム粉末の製造方法において、出発原料として用いる球状アルミナ又は球状アルミナ水和物はアルミナの種類としては、特に限定はされないがα、γ、θ、η、δ等の結晶構造を持つものが好ましく使用される。また、球状アルミナ水和物は、熱処理することによって、γ、θ、η、δなどの遷移アルミナ、さらにα−アルミナに変わるものであり、このようなアルミナ水和物としては、ベーマイト、ダイアスポア、水酸化アルミニウムなどを挙げることができる。
球状アルミナ及び球状アルミナ水和物の製造方法としては、例えば、アルコキシド法、バイヤー法、アンモニウム明ばん熱分解法、アンモニウムドーソナイト熱分解法によって得ることができる。特に、アルコキシド法では、高純度で均一な粒度分布を有するアルミナ、アルミナ水和物を得ることができる。
本発明では、アルコキシド法によって得られたアルミニウムアルコキシドを精製し、これを加水分解して得られる水酸化アルミニウムや、該水酸化アルミニウムを熱処理して得られるベーマイト、遷移アルミナ、α−アルミナが原料として好適に使用される。特に、α−アルミナ、γ−アルミナ、ベーマイトを原料として用いた時には、還元窒化反応を制御し易く、また、窒化が進行し易いという利点がある。
本発明で用いられる出発原料は、上記の球状アルミナ粉末又は球状アルミナ水和物粉末の造粒物であり、これを還元窒化することにより、造粒物の内部まで窒素ガスが浸透して還元窒化が進行する。この結果、この造粒物とほぼ同等の真球形状を有し、更に、中実な粒子からなる球状窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
本発明において、上記球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末は、造粒条件等の調整により、D50が10〜150μmであるものが用いられ、特に20〜100μmであるものが好ましい。
なお、本発明において、D50は、レーザー回折・散乱法を用いて得られる体積基準の粒度分布におけるメジアン径である。
また、本発明で用いられる球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末は、平均して0.7以上の真球度を有するものであり、特に0.8以上のものが好適に使用される。
なお、真球度は、顕微鏡で粉末を観察した際の短径(S)と長径(L)との比(S/L)で表される。
上記球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末は種々の方法で得ることができるが、造粒物の粒径のコントロールのし易さ、経済性、及び容易に真球度の高い造粒物を得ることができるという観点から、スプレードライ方式が好適である。かかる方法では、前述したアルミナ又は水和アルミナの微細な粉末を所定の溶媒(例えばアルコールや水)に分散させた液を噴霧することにより乾燥(造粒)が行われるが、この噴霧液の固形分濃度の調製により得られる造粒物の粒径を調整することができる。
また、上記球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末には、必要に応じて分散剤やバインダー樹脂、滑剤等を配合しても良い。
2.還元窒化工程;
本発明の製造方法では、カーボンや窒化アルミニウム焼結体等によって形成された反応容器内において、上記球状アルミナ粉末、球状アルミナ水和物粉末、又はその両方と、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであるカーボン粉末とを混合し、窒素雰囲気下で1,750〜2,050℃の温度で還元窒化を行うことにより、目的とする球状窒化アルミニウム粉末を得ることができる。
カーボン粉末としては、カーボンブラック、黒鉛、および、高温においてカーボン源となり得るカーボン前駆体が使用できる。
カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャンネル法等で得られるカーボンブラック及びアセチレンブラックが使用できる。
カーボン前駆体としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フランフェノール樹脂等の合成樹脂縮合物;ピッチ、タール等の炭化水素化合物;セルロース、ショ糖、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレン等の有機化合物が挙げられるが、固相のままないしは気相を経由して炭素化する化合物が好ましい。特に、フェノール樹脂等の合成樹脂、セルロース、ポリフェニレンが好ましい。
本発明で用いられるカーボン粉末は、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであり、0.03〜0.05g/mlであることが好ましい。嵩密度が0.08g/mlを超えると、還元窒化処理時に球状アルミナ粉末または球状アルミナ水和物粉末の粒子同士が凝集、結合して変形し易く、球状ではなくなってしまう。嵩密度が0.01より低いと、十分な還元窒化処理ができない。
カーボン粉末の使用量は、(球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末の合計質量:カーボン粉末の質量)比として、1:0.3〜1:0.6の範囲が好適である。また、球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末とカーボン粉末との混合は、ブレンダー、ミキサー等を用いた乾式混合により行うことができる。
反応容器内の窒素雰囲気は、原料として使用される球状アルミナ粉末及び球状アルミナ水和物粉末の球状造粒物の窒化反応が十分に進行するだけの量の窒素ガスを、連続的又は間欠的に供給することによって形成される。
上述した窒素雰囲気中で行われる還元窒化(焼成)温度は、1,750〜2,050℃であり、好ましくは1,900〜2,000℃の温度である。上記範囲よりも温度が低い場合には、窒化反応が十分進行せず目的の窒化アルミニウム粉末が得られない場合がある。また、焼成温度が前記の上限を越える場合は、窒化反応は十分進行するが、窒化アルミニウムウイスカーの生成や粒子の凝集が起こり易くなり、目的とする粒度の窒化アルミニウム粉末を得ることが困難になるおそれがある。
また、焼成時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは、2〜10時間程度である。
3.表面酸化処理;
本発明の製造方法において、還元窒化(焼成)後、得られた窒化アルミニウム粉末に対し、必要に応じて酸化処理やオルガノシラン等による表面処理を行ってもよい。
例えば、オルガノシラン又はその部分加水分解縮合物を用いて窒化アルミニウム粉末の表面を処理し、その耐水性を向上させることにより、水分を含む環境下に窒化アルミニウム粉末を保持せしめた場合においても、アンモニアの発生等を有効に防止することができる。
このようなオルガノシランとしては、一般式R Si(OR4−a−bで表されるオルガノシラン(式中、R は、炭素数10〜15のアルキル基であり、Rは炭素数1〜8の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R は炭素数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、a+bは1〜3の整数である)が好適である。
<球状窒化アルミニウム粉末>
本発明の球状窒化アルミニウム粉末の製造方法により、成形性を損なわずに樹脂等のバインダーに高充填するために適した粒子特性、即ち、D50が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状窒化アルミニウム粉末が得られる。
本発明の球状窒化アルミニウム粉末は、窒化度が高く、その熱伝導性が極めて高い。なお、窒化度は、X線回折における窒化アルミニウム、アルミナ、酸窒化アルミニウムなどのピーク面積比から求めることができる。
更に、本発明の球状窒化アルミニウム粉末は、フラックス剤等を用いずに製造することができるため、陽イオン含量は極めて少なく、0.3質量%以下、特に0.2質量%以下とすることができる。
本発明の球状窒化アルミニウム粉末は、窒化アルミニウムの性質を生かした種々の用途、特に放熱シリコーンシート、放熱シリコーングリス、放熱シリコーン接着剤などの放熱材料用フィラーとして広く用いることができる。
放熱材料のマトリックスとしては、シリコーンゴム、EPR、SBR等のゴム類、シリコーンオイル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらのマトリックス100質量部に対し、本発明の球状窒化アルミニウム粉末150〜1000質量部を添加するのが好ましい。
また、上記放熱材料には、本発明の球状窒化アルミニウム粉末以外に、アルミナ、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭化珪素、グラファイトなどのフィラーを一種、または二種以上を充填しても良い。これらのフィラーは、例えばシランカップリング剤やリン酸又はリン酸塩などで表面処理したものを用いても良い。放熱材料の特性や用途に応じて、本発明の球状窒化アルミニウム粉末とそれ以外のフィラーの形状、粒径を選択すれば良い。
さらに、放熱材料には、可塑剤、加硫剤、硬化促進剤、離形剤等の添加剤を添加しても良い。
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、D50、真球度は、後述の方法により測定し、嵩密度は、嵩密度測定装置(セイシン企業ロボットバルクデンサー)で測定した。
[実施例1]
球状水酸化アルミニウム粉末(日本軽金属社製SB93、D50:100μm、真球度:0.92、BET比表面積:0.07m/g)120gとカーボン粉末(デンカ社製デンカブラック粉状、嵩密度:0.04g/ml)40gとを混合した。次いで、混合粉末をカーボン製容器に充填し、窒素流通下2,000℃で3時間還元窒化させた後、空気流通下700℃で3時間酸化処理を行って球状窒化アルミニウム粉末を得た。得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を図1に示す。
[実施例2]
還元窒化条件を1,950℃、10時間とした以外は、実施例1と同様にして球状窒化アルミニウム粉末を得た。得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を図2に示す。
[実施例3]
窒化条件を1,900℃、10時間とした以外は、実施例1と同様にして球状窒化アルミニウム粉末を得た。得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を図3に示す。
[実施例4]
球状水酸化アルミニウム粉末を、球状α−アルミナ粉末(デンカ社製DAW−70、D50:70μm、真球度:0.95、BET比表面積:0.2m/g)に変更した以外は、実施例1と同様に球状窒化アルミニウム粉末を得た。得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を図4に示す。
[実施例5]
カーボン粉末を、デンカ社製デンカブラックプレス品(嵩密度:0.08g/ml)に変更した以外は、実施例1と同様に球状窒化アルミニウム粉末を得た。
[比較例1]
球状水酸化アルミニウム粉末を、球状α−アルミナ粉末(デンカ社製DAW−03、D50:5μm、真球度:0.65、BET比表面積:0.5m/g)に変更した以外は、実施例1と同様に球状窒化アルミニウム粉末を得た。得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を図5に示す。
[比較例2]
カーボン粉末を、デンカ社製デンカブラック50%プレス品(嵩密度:0.15g/ml)に変更した以外は、実施例1と同様に球状窒化アルミニウム粉末を得た。得られた球状窒化アルミニウム粉末のSEM写真を図6に示す。
実施例1〜5及び比較例1、2で得られた球状窒化アルミニウム粉末の物性を下記の方法により測定した結果を表1に示した。
(1)粒径(D50)
試料をホモジナイザーにてイオン交換水中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装製MICROTRAC MT3300EXII)を用いて、体積積算50%となる粒径(D50)を測定した。
(2)窒化度
X線回折チャート(CuKα、20〜80°)における、窒化アルミニウム、アルミナ、及び酸窒化アルミニウムのピークの有無から判断した。
(3)真球度
走査電子顕微鏡(SEM)像から、任意の粒子50個を抽出し、スケールを用いて粒子の長径(L)と短径(S)とを測定し、その比(S/L)の平均値を真球度とした。
(4)陽イオン不純物含有量
陽イオン不純物含有量(Si、Na、Fe金属元素濃度)は、窒化アルミニウム粉末をアルカリ溶融後、酸で中和し、島津製作所製ICP−1000を使用して溶液のICP発光分析により定量した。
Figure 2021172535
表1に示されるように、実施例1〜5で得られた球状窒化アルミニウム粉末は、成形性を損なわずに樹脂等のバインダーに高充填するために適した粒子特性、即ち、D50が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する。
また、実施例1〜5の製造方法によれば、窒化度(AlN転化率)が高く、X線回折チャートにおいて、アルミナ及び酸窒化アルミニウム由来のピークは検出されなかった。
一方、原料アルミナ粉末のD50が本発明の範囲の下限に満たない比較例1では、得られる球状窒化アルミニウム粉末のD50が所望の範囲とはならず、更に、X線回折チャートにおいてAlON層が検出されたことから、AlN転化率が低いことが明らかとなった。また、カーボン嵩密度が本発明の範囲の上限を超える比較例2では、得られた球状窒化アルミニウム粉末の凝集によりD50が増大する結果となった。
<シリコーンゴムシートの製造>
付加硬化型シリコーンゴム(信越化学工業製KE−106/CAT−RG)100質量に対し、実施例1〜5及び比較例1、2で得られた球状窒化アルミニウム粉末1,000質量部を自転・公転ミキサーにて混練した。次いで、150℃で20分間加圧プレスして、縦10cm、横6cm、厚さ2mmのシートを得た。
得られたシートについて、下記方法で熱伝導率、硬さ、引張強度を測定した結果を表2に示す。
(6)熱伝導率
熱伝導率計(京都電子工業製QTM−500)を用いて上記シートの熱伝導率を測定した。
(7)硬さ
JIS K6253−3:2012に準拠し、デュロメータA硬度計を用いて硬さを測定した。
(8)引張強度
JIS K6251:2017に準拠して引張試験を行い、破断時の引張強度を測定した。
Figure 2021172535
表2に示されるように、実施例1〜5で得られた球状窒化アルミニウム粉末を用いたシリコーンゴムシートは、熱伝導率、機械的特性に優れることが明らかとなった。
一方、比較例1で得られた粉末は粒径が小さく、真球度が低く、更にAlN転化率が低いため、該粉末を用いたシリコーンゴムシートは熱伝導率及び硬度に劣り、比較例2で得られた粉末を用いた場合は、粗粒であるため、引張強度が劣る結果となった。
以上のように、本発明の製造方法により得られる球状窒化アルミニウム粉末は、放熱材料用フィラーとして好適に使用することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (3)

  1. 体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有する球状アルミナ粉末、球状アルミナ水和物粉末、又はその両方と、嵩密度が0.01〜0.08g/mlであるカーボン粉末とを混合し、窒素雰囲気下で1,750〜2,050℃の温度で還元窒化を行うことを特徴とする球状窒化アルミニウム粉末の製造方法。
  2. 球状窒化アルミニウム粉末であって、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)が10〜150μmであり、かつ平均して0.7以上の真球度を有するものであることを特徴とする球状窒化アルミニウム粉末。
  3. 請求項2に記載の球状窒化アルミニウム粉末からなるものであることを特徴とする放熱材料用フィラー。
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