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酸化マグネシウム粉末および複合材

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JP6811670B2

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梅津 基宏
基宏 梅津
浩平 小松
浩平 小松
石井 守
守 石井
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Taiheiyo Cement Corp

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2017 JP

Application JP2017071855A events
2021-01-13
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Description

本発明は、複数ピークの粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末および複合材に関する。
酸化マグネシウムは、熱伝導性が高く(45〜60W/(m・K))、電気絶縁性に優れた材料で、工業的には半導体向けの放熱部品用のフィラーとして使用されることがある。例えば、特許文献1には、塩基性硫酸マグネシウムから製造される柱状酸化マグネシウム粒子を熱伝導性フィラーとして用いることが記載されている。また、特許文献2には、集積回路(IC)の封止材あるいは回路基板の材料に用いることができる球形の酸化マグネシウム粒子が記載されている。
特開2014−214222号公報 特開2003−2640号公報
フィラーを用いて、樹脂の熱伝導率や弾性率を高くするためには、樹脂マトリックス中に、フィラーが均一に、かつ、密に充填されていることが重要である。しかし、粒度分布が単一のピークを有するフィラーを用いると充填率が十分でない場合がある。特許文献1、2記載の酸化マグネシウムは、樹脂に添加するときの充填率を高くする粒度分布には注目されていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、フィラーとして用いたときに充填率を高くできる複数ピークの粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末および複合材を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の酸化マグネシウム粉末は、樹脂用フィラー材として用いられ、レーザ回折散乱で少なくとも2つのピークが現れる粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末であって、頻度が最大である第1のピークの極大粒子径が10μm以上30μm以下であり、頻度が2番目である第2のピークの極大粒子径が前記第1のピークの極大粒子径の7分の1以下であり、平均粒子径D50が5μm以上15μm以下であることを特徴としている。
このように、少なくとも大小2つのピークを有し、小粒径の酸化マグネシウム粉末粒子が大粒径の酸化マグネシウム粉末粒子に比べて大きすぎないことから、小粒径の酸化マグネシウム粉末が、大粒径の酸化マグネシウム粉末同士の間に入る。その結果、樹脂に添加したときの充填率を高くすることができ、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度を低下させることなく、樹脂の剛性を高くすると共に、高熱伝導化が可能となる。
(2)また、本発明の酸化マグネシウム粉末は、前記第2のピークの頻度が前記第1のピークの頻度の4分の1以上、4分の3以下であることを特徴としている。これにより、十分な量の小粒径の酸化マグネシウム粉末が、大粒径の酸化マグネシウム粉末同士の間に入り、樹脂に添加するときの充填率を十分に高くすることができる。
(3)また、本発明の複合材は、主に酸化マグネシウム粉末からなるフィラーと樹脂とを含む複合材であって、上記(1)または(2)記載の酸化マグネシウム粉末が、樹脂の体積に対して40vol%以上80vol%以下分散していることを特徴としている。これにより、引っ張り強度や曲げ強度、剛性が高く、高熱伝導化した複合材とすることができる。
(4)また、本発明の複合材は、引っ張り強度200N以上、弾性率2000MPa以上、かつ熱伝導率1.0W/(m・K)以上であることを特徴としている。このように、引っ張り強度、弾性率、および熱伝導率が高いため、半導体製造装置の部品や自動車の部品に用いることができる。
本発明によれば、酸化マグネシウム粉末を樹脂に添加するときの充填率を高くすることができ、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度を低下させることなく、樹脂の剛性を高くすると共に、高熱伝導化が可能となる。
レーザ回折散乱で測定された2粒度分布を示すグラフの例である。 本発明の酸化マグネシウム粉末の製造方法を示すフローチャートである。 実施例および比較例の製造条件、構成および特性を示す表である。 (a)、(b)それぞれ原料および実施例の酸化マグネシウム粉末の粒度分布を示すグラフである。 (a)〜(c)それぞれ原料、中間躯体および製造物のXRD測定結果を示すグラフである。 (a)、(b)それぞれ原料および実施例の酸化マグネシウム粉末を示すSEM写真である。 実施例の酸化マグネシウム粉末を示すSEM写真である。 原料および製造物の組成を示す表である。 実施例および比較例の酸化マグネシウム粉末を用いた複合材の構成および特性を示す表である。 実施例および比較例の複合材の酸化マグネシウム粉末の添加量および特性を示す表である。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[酸化マグネシウム粉末の構成]
本発明の酸化マグネシウム粉末は、MgOと微量の不純物とから構成され、レーザ回折散乱で少なくとも2つのピークが現れる粒度分布を有する。レーザ回折散乱の粒度分布における平均粒子径D50は、5μm以上15μm以下である。図1は、レーザ回折散乱で測定された2つのピークが現れる粒度分布(2粒度分布)を示すグラフの例である。
また、頻度が最大である第1のピークの極大粒子径が10μm以上30μm以下であり、頻度が2番目である第2のピークの極大粒子径が第1のピークの極大粒子径の7分の1以下である。このように、少なくとも大小2つのピークを有することから、樹脂に添加するときの充填率を高くすることができ、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度、剛性を低下させることなく、樹脂の高熱伝導化が可能となる。
また、第2のピークの頻度は、第1のピークの頻度の4分の1以上、4分の3以下であることが好ましい。これにより、十分な量の小粒径の酸化マグネシウム粉末が、大粒径の酸化マグネシウム粉末同士の間に入り、樹脂に添加したときの充填率を十分に高くすることができる。第2のピークの頻度が第1のピークの頻度の4分の1より小さいと第1のピークの粒子の隙間(空間)への充填が不十分となり、充填率が低下する。また、第2のピークの頻度が第1のピークの頻度の4分の3より大きいと第2のピークの粒子が第1のピークの粒子の隙間(空間)以上の量となり、充填率が低下する。
酸化マグネシウム粉末は、球状の酸化マグネシウム粒子が連結して形成された多孔質構造を有することが好ましい。このように、表面積が大きい構造を有するため、樹脂のフィラーとして利用したときに樹脂との密着性が向上し、樹脂の引っ張り強度や曲げ強度、剛性が高くなる。
酸化マグネシウム粉末は、MgOの含有率が、90wt%以上であることが好ましい。このように、高純度のため、半導体製造装置の部品に用いられる樹脂のフィラーとして利用したときに、樹脂から脱粒し装置を汚染する虞が小さくなる。
[複合材の構成]
上記のような酸化マグネシウム粉末をフィラーとして樹脂に混合した複合材を説明する。複合材は、樹脂にフィラーが分散して形成されている。また、複合材に用いられる樹脂には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エポキシ等が用いられる。これらの樹脂に、少なくとも2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を分散させることで、小粒径の酸化マグネシウム粉末が、大粒径の酸化マグネシウム粉末同士の間に入り、充填率を高くする。
複合材に含まれる酸化マグネシウム粉末は、樹脂の体積に対して40vol%以上80vol%以下である。40vol%より小さいと充填率が低いため熱伝導率があまり高くならず、80vol%より大きいと引っ張り強度や曲げ強度が低くなることがあるからである。
[酸化マグネシウム粉末の製造方法]
図2は、酸化マグネシウム粉末の製造方法を示すフローチャートである。図2に沿って、酸化マグネシウム粉末の製造方法を説明する。まず、酸化マグネシウム(MgO)原料粉末を準備する。原料粉末として、鉱物系の酸化マグネシウムを用いることができる。例えば、炭酸マグネシウムまたは水酸化マグネシウムを主成分とする鉱物を550〜1400℃で焼成して得た軽焼マグネシアの一部を水和したものを用いることができる。炭酸マグネシウムを主成分とする鉱物の例としては、マグネサイト、ドロマイト等が挙げられる。
次に、酸化マグネシウム原料粉末を水と混合し、スラリーを生成する(工程P1)。混合する水は、蒸留水を用いることができる。酸化マグネシウム原料粉末は、平均粒径(D50)が20μm以上30μm以下の粒子からなる粉末を用いることが好ましい。そうすることで、酸化マグネシウム原料粉末を十分に水熱合成でき、少なくとも2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を容易に生成できる。また、スラリーは、2wt%以上40wt%以下の濃度で生成することが好ましい。スラリー濃度を2wt%以上にすることで、溶解せずに粉末の生成物が得られ、40wt%以下にすることで粒子全体が十分に反応し、少なくとも2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を容易に生成できる。
得られたスラリーは高温高圧化し、スラリー中で酸化マグネシウム原料粉末と水とを水熱合成させて水酸化マグネシウム(Mg(OH))を生成する(工程P2)。高温高圧化の工程では、スラリーを150℃以上に加熱しつつ、0.80MPa以上で加圧した状態を1時間以上保持することが好ましい。これにより、原料粉末の水熱合成を十分に進行させることができる。
次に、水熱合成させて得られたスラリーを吸引ろ過し、ろ過の残留物を乾燥させる(工程P3)。乾燥させた残留物として中間躯体の水酸化マグネシウムが得られる(工程P4)。そして、乾燥させた残留物を焼成し、水酸化マグネシウムを熱分解させ、加熱脱水する(工程P5)。
焼成工程では、残留物を700℃以上1200℃以下の温度に加熱することが好ましい。これにより、中間躯体である水酸化マグネシウムの脱水反応を進行させて酸化マグネシウム粒子を形成するとともに、その融解を抑止し、多孔質の酸化マグネシウム粉末を生成できる。
このようにして、少なくとも2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を生成できる(工程P6)。酸化マグネシウム原料粉末を水熱合成し、得られた水酸化マグネシウムを熱分解させることで、低コストかつ短時間で平均粒径(D50)が5μm以上15μm以下で、少なくとも2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を生成できる。
また、上記の工程では、ボールミル等による粉砕を行なわないため、不純物の混入を回避でき、出発原料からの純度低下を0.05%以下に抑えることができる。工程で純度がほとんど低下しないため、例えば純度90wt%以上の酸化マグネシウム原料粉末を用いれば、純度90wt%以上の酸化マグネシウム粉末の小径粒子を生成できる。
[実施例、比較例]
鉱物系の酸化マグネシウム粉末原料を使用して、上記の製造方法により酸化マグネシウム粉末を作製した。図3は、実施例および比較例の製造条件、構成および特性を示す表である。実施例、比較例のいずれにも、純度97.08%、平均粒径23μmの酸化マグネシウム原料粉末を出発原料とした。それぞれの実施例、比較例は、図3に示すように、スラリー濃度、水熱合成の温度、圧力、保持時間、焼成時間を変えて作製した。
得られた酸化マグネシウム粉末の試料について、それぞれ以下の通り物性を測定した。まず、粒度分布測定には、レーザ回折・散乱法により、マイクロトラック粒度分析計(日機装社製)を用いた。成分分析には、蛍光エックス線分析装置(リガク社製)を用いた。また、粒子形態測定には、走査電子顕微鏡(日本電子社製)を用いた。また、生成物の同定には、粉末X線回折装置(Bruker社製)を用いた。比表面積の測定には、流動式比表面積自動測定装置(島津製作所社製)を用いた。
(粒度分布測定)
実施例3の原料および生成物について、粒度分布を測定した。図4(a)、(b)は、それぞれ原料および生成物の粒度分布を示すグラフである。酸化マグネシウム原料粉末の粒度分布では、図4(a)に示すように、30μm付近に頻度4.5%以上の最も大きなピークが現れた。一方、1.5μm付近には、頻度1%に満たないわずかなピークが現れた。酸化マグネシウム原料粉末の平均粒径は、22.8μmであった。
一方、生成物の酸化マグネシウム粉末の粒度分布では、図4(b)に示すように、20μm付近に頻度3.5%以上の最も大きなピークが現れ、2.5μm付近に頻度2%以上の次に大きなピークが現れた。生成物の酸化マグネシウム粉末は、2粒度分布で構成されていることを確認できた。酸化マグネシウム粉末の平均粒径は、9.6μmであった。
その他の実施例および比較例についても、粒度分布を測定した。結果は、図3のようになった。
(XRD測定)
実施例3を作製する際に、原料、中間躯体および生成物に対してX線回折(XRD)測定を行なった。図5(a)〜(c)は、それぞれ原料、中間躯体および生成物のXRD測定結果を示すグラフである。図5(a)および(c)に示すように、原料および生成物のX線回折プロファイル上にはいずれも酸化マグネシウムに特有のピークが現れた。また、図5(b)に示すように、中間躯体のX線回折プロファイル上には、水酸化マグネシウムに特有のピークが現れた。
(SEM観察)
実施例3の原料および生成物について、SEM観察を行なった。図6(a)、(b)は、それぞれ原料および実施例の酸化マグネシウム粉末を示すSEM写真である。また、図7は、実施例の酸化マグネシウム粉末を示すSEM写真である。図6(a)、(b)は、1000倍、図7は、10000倍の倍率で撮影されたSEM写真を示している。
酸化マグネシウム原料粉末は、図6(a)に示すように、大きさが20μm以上の緻密な粒子で粉末が構成されていた。実施例の酸化マグネシウム粉末は、図6(b)および図7に示すように、大きさが1μmに満たない粒子が結合して枝を形成し、多孔質粒子を構成していることを確認できた。また、多孔質粒子は、大きさ10μm程度であった。
(蛍光X線測定)
実施例3の原料および製造物の組成を蛍光X線(XRF)で確認した。図8は、原料および製造物の組成を示す表である。図8に示すように、酸化マグネシウム原料粉末の純度は97.08%、生成物の酸化マグネシウム粉末の純度は97.05%であり、本発明の製造工程では原料の純度がほぼ一定に維持されることを確認できた。
(比表面積の測定)
実施例1〜5、比較例1〜7について、比表面積を測定した。多孔質粒子として得られた実施例1〜5の比表面積は、40m/g以上60m/g以下であった。比較例1は、多孔質粒子であったが、比表面積は35m/g以下であった。比較例3〜7は、緻密粒子であり、比表面積はいずれも35m/g以下であった。
(好適な製造条件)
(1)スラリー濃度
実施例1では、スラリー濃度40wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径15μmの2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末が得られた。これに対し、比較例3では、スラリー濃度45wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末は得られず、平均粒子径23μmの1粒度分布を有する緻密粒子からなる粉末が生成された。スラリー濃度が高いと酸化マグネシウム原料粉末が水と反応しきれないと考えられる。
実施例2では、スラリー濃度2wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径5μmの2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末が得られた。これに対し、比較例2では、スラリー濃度1wt%で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、中間躯体生成の段階で水に溶解し、粉末が得られなかった。したがって、スラリー濃度は2wt%以上40wt%の範囲にあることが好ましいと分かる。
(2)水熱合成の温度
また、実施例1では、スラリーを150℃で水熱合成し、2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末が得られたのに対し、比較例4では、140℃で水熱合成したところ、平均粒子径23μmの1粒度分布を有する緻密粒子からなる粉末が生成された。したがって、水熱合成の温度は150℃以上が好ましいことが分かる。
(3)水熱合成の圧力
実施例1では、0.8MPaの圧力で水熱合成し、2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末が得られた。これに対し、比較例5では、0.7MPaの圧力で水熱合成したところ、平均粒子径20μmの2粒度分布を有する緻密粒子からなる粉末が生成されたが、第2粒子の頻度が第1粒子の頻度の6分の1となり、十分な量が得られなかった。したがって、水熱合成の圧力は0.8MPa以上が好ましいことが分かる。比較例4、5から水熱合成の温度か圧力のどちらかが低い場合には、反応が進行しないと考えられる。
(4)水熱合成の維持時間
実施例2では、水熱合成時の温度と圧力を1.0h保持したところ、2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末が得られた。これに対し、比較例6では、水熱合成時の温度と圧力を0.5h保持したところ、平均粒子径18μmの2粒度分布を有する緻密粒子からなる粉末が生成されたが、第2粒子の頻度が第1粒子の頻度の5分の1となり、十分な量が得られなかった。したがって、水熱合成の維持時間は1.0h以上が好ましいことが分かる。それにより、反応が充分に進み、小径粒子からなる酸化マグネシウム粉末が得られる。
(5)焼成温度
実施例1では、焼成温度700℃で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径15μmの2粒度分布を有する多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末が得られた。これに対し、比較例1では、焼成温度650℃で酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径16μmの多孔質粒子からなる粉末が生成され、生成物は酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの混合物であった。比較例1では、水酸化マグネシウムの脱水反応が十分に終了しない温度で焼成したため、生成物が酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの混合物になったと考えられる。
実施例3では、850℃で焼成して酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径10μmの2粒度分布を有する多孔質粒子からなる粉末が得られた。これに対し、比較例7では、1250℃で焼成して酸化マグネシウム粉末を作製したところ、平均粒子径4μmの1粒度分布を有する緻密粒子からなる粉末が生成された。したがって、焼成温度は700℃以上1200℃以下の範囲にあることが好ましいと分かる。
(6)結論
以上より、濃度2wt%以上40wt%以下に調整したスラリーを、温度150℃以上、圧力0.80MPa以上で1時間以上保持し、得られた中間躯体を乾燥して700℃〜1200℃で焼成することで、純度低下が0.05%以下かつ、平均粒子径が15μm以下の2粒度分布を有する多孔質粒子からなる酸化マグネシウム粉末を安定的に得られることが実証された。
(複合材の特性)
次に、実施例1〜5、比較例3〜7の酸化マグネシウム粉末の試料を、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ノバテック)(以下、PPと略す)に対して50vol%の割合で添加、分散させた複合材試料を作製した。これらの複合材試料、および比較例8として酸化マグネシウムを添加しないPPを準備し、引っ張り強度、弾性率、熱伝導率を測定した。引っ張り強度および弾性率の測定には、インストロン社製の万能材料試験機を用いた。熱伝導率の測定には、NETZSCH社製のLFAを用いてフラッシュ法により測定した。
また、実施例3の酸化マグネシウム粉末の試料を、PPに対して35vol%〜85vol%の割合で添加、分散させた複合材試料を作製した。これらについても、上記と同様に、引っ張り強度、弾性率、熱伝導率を測定した。
図9は、実施例および比較例の酸化マグネシウム粉末を用いた複合材の構成および特性を示す表である。なお、図9の実施例1〜5および比較例3〜7は、それぞれ、図3の実施例1〜5および比較例3〜7の酸化マグネシウム粉末の試料を用いた複合材を表している。実施例1〜5を用いた複合材は、いずれも2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を分散させた試料であり、PP単体(PPのみからなる試料)の比較例8と比べて、弾性率および熱伝導率が向上し、引っ張り強度の低下が低く抑えられた。これに対し、比較例3、4および7を用いた複合材は、いずれも1粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を分散させた試料であったため、PP単体の比較例8と比べて、弾性率は向上したが、引っ張り強度は低下し、熱伝導率はあまり向上しなかった。また、弾性率は向上したものの、実施例1〜5を用いた複合材に比べると低い値であった。
比較例5を用いた複合材は、2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を分散させた試料であったが、分散させた酸化マグネシウム粉末の粒度分布において、2番目に頻度の大きいピークの極大粒子径が、最大頻度のピークの極大粒子径の7分の1より大きく、2番目に頻度の大きいピークの粒子の頻度が第1粒子の頻度の4分の1より小さかったため、PP単体の比較例8と比べて、その弾性率は向上したが、引っ張り強度は低下し、熱伝導率はあまり向上しなかった。
比較例6を用いた複合材は、2粒度分布を有する酸化マグネシウム粉末を分散させた試料であったが、2番目に頻度の大きいピークの粒子の頻度が第1粒子の頻度の4分の1より小さかったため、PP単体の比較例8と比べて、その弾性率は向上したが、引っ張り強度は低下し、熱伝導率はあまり向上しなかった。
図10は、実施例および比較例の複合材の酸化マグネシウム粉末の添加量および特性を示す表である。比較例12、実施例6、7および比較例13は、実施例3の酸化マグネシウム粉末をPPに対してそれぞれ35vol%、40vol%、80vol%、85vol%混合した複合材である。実施例6は、PP単体の比較例8と比べて、引っ張り強度を低下させることなく、その弾性率および熱伝導率が向上している。実施例7は、PP単体の比較例8と比べて、その弾性率および熱伝導率が大きく向上し、引っ張り強度の低下が低く抑えられた。
比較例12は、PP単体の比較例8と比べて、その引っ張り強度は低下している。また、その弾性率および熱伝導率は向上しているものの、基準は満たさない。比較例13は、その弾性率および熱伝導率は大きく向上しているものの、引っ張り強度は低下している。これは、PP量が少なすぎて、主のマトリックスであるPPと酸化マグネシウム粉末の結合(密着性)が担保されないためと考えられる。
以上より、少なくとも2粒度分布を有し、頻度が最大である第1のピークの極大粒子径が10μm以上30μm以下であり、頻度が2番目である第2のピークの極大粒子径が第1のピークの極大粒子径の7分の1以下であり、平均粒子径D50が5μm以上15μm以下である酸化マグネシウム粉末は、樹脂に分散させるフィラー材として好適である。このような酸化マグネシウム粉末を樹脂に分散させた複合材は、弾性率および熱伝導率が向上し、引っ張り強度の低下が低く抑えられる。また、樹脂に分散させる酸化マグネシウム粉末は、樹脂の体積に対して40vol%以上80vol%以下であることが好ましい。

Claims (3)
Hide Dependent

  1. 主に酸化マグネシウム粉末からなるフィラーと樹脂とを含む複合材であって、
    樹脂用フィラー材として用いられ、レーザ回折散乱で少なくとも2つのピークが現れる粒度分布を有
    体積基準による頻度が最大である第1のピークの極大粒子径が10μm以上30μm以下であり、
    体積基準による頻度が2番目である第2のピークの極大粒子径が前記第1のピークの極大粒子径の7分の1以下であり、
    平均粒子径D50が5μm以上15μm以下である酸化マグネシウム粉末が、樹脂の体積に対して50vol%以上80vol%以下分散していることを特徴とする複合材
  2. 前記第2のピークの頻度が前記第1のピークの頻度の4分の1以上、4分の3以下であることを特徴とする請求項1記載の複合材
  3. 引っ張り強度200N以上、弾性率2000MPa以上、かつ熱伝導率1.0W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の複合材。