JP2018168253A - 熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の製造方法 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的強度および電気絶縁性が高い樹脂硬化物を形成できる熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、グリシジルエーテル化合物(a)と、グリシジルエステル化合物(b)と、潜在性硬化触媒(c)と、無機充填剤(d)と、を含む。前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリシジルエーテル化合物およびグリシジルエステル化合物を用いた熱硬化性樹脂組成物、ならびに熱硬化性樹脂組成物を用いた樹脂硬化物の製造方法に関する。
グリシジルエーテル化合物などを含むエポキシ樹脂は、熱や光の作用により硬化する硬化性樹脂組成物として知られており、様々な用途に利用されている。
エポキシ樹脂の硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤が利用されている(特許文献1など)。また、保存安定性などの観点からは、硬化剤として、潜在性硬化触媒である三塩化ホウ素アミン錯体が使用されている(特許文献2など)。
特表2002−531672号公報 特開2005−042000号公報
エポキシ樹脂は、高い機械的特性および比抵抗を有し、酸無水物系硬化剤を用いて得られる硬化物は、電気絶縁性や機械的特性が高い。そのため、酸無水物系硬化剤を用いたエポキシ樹脂は、電気絶縁性部品などに適している。しかし、国や地域によっては、酸無水物系硬化剤が規制対象となりつつあり、他の硬化剤の開発が望まれている。
本発明の一局面は、グリシジルエーテル化合物(a)と、グリシジルエステル化合物(b)と、潜在性硬化触媒(c)と、無機充填剤(d)と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である、熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明の他の局面は、使用時に混合して使用する第1液と第2液とを組み合わせた二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記第1液は、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)のうち少なくとも一部を含み、
前記第2液は、前記グリシジルエーテル化合物(a)および前記グリシジルエステル化合物(b)の残部と、潜在性硬化触媒(c)と、を含み、
前記第1液および前記第2液の少なくとも一方は、さらに無機充填剤(d)を含み、
前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である、二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明のさらに他の局面は、使用時に混合して使用する第1液と第2液とを組み合わせた二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物であって、
前記第1液は、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)のうち少なくとも一部を含み、
前記第2液は、前記グリシジルエーテル化合物(a)および前記グリシジルエステル化合物(b)の残部と、潜在性硬化触媒(c)と、を含み、
前記熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填剤(d)を含む分散液を含み、
前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である、二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明の別の局面は、上記の熱硬化性樹脂組成物を、140℃以上で加熱処理して硬化させる工程を含む、樹脂硬化物の製造方法に関する。
電気絶縁性および機械的強度に優れる樹脂硬化物を得ることができる熱硬化性樹脂組成物および樹脂硬化物の製造方法を提供できる。
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、グリシジルエーテル化合物(a)と、グリシジルエステル化合物(b)と、潜在性硬化触媒(c)と、無機充填剤(d)と、を含む。グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である。
上記の組成により、潜在性硬化触媒(c)の存在下で、熱の作用により、グリシジルエーテル化合物(a)とグリシジルエステル化合物(b)とが反応し、熱硬化性樹脂組成物の硬化を進行させることができる。この硬化反応では、グリシジルエステル化合物(b)が硬化剤のように作用し、酸無水物系硬化剤を用いた場合と類似の生成物が得られる。また、グリシジルエーテル化合物(a)とグリシジルエステル化合物(b)とを組み合わせることで、無機充填剤(d)の添加量を調節し易くなり、多量の無機充填剤(d)を配合することも可能になる。よって、熱硬化性樹脂組成物の硬化により得られる樹脂硬化物では、高い電気絶縁性を得ることができるとともに、機械的強度が高い樹脂硬化物を得ることができる。
熱硬化性樹脂組成物の構成について、以下により具体的に説明する。
(a)グリシジルエーテル化合物
グリシジルエーテル化合物(a)としては、例えば、脂肪族グリシジルエーテル化合物、脂環族グリシジルエーテル化合物、芳香族グリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらのグリシジルエーテル化合物は、ポリオール骨格(残基)またはモノオール骨格(残基)とこの骨格に導入されたグリシジルエーテル基とを有する。ポリオール骨格を有するグリシジルエーテル化合物において、ポリオールの全てのヒドロキシ基がグリシジルエーテル基に置換されていてもよく、ポリオールの一部のヒドロキシ基がグリシジルエーテル基に置換されていてもよい。
グリシジルエーテル化合物(a)としては、少なくともポリオールポリグリシジルエーテルを用いることが好ましく、ポリオールポリグリシジルエーテルと、モノオールモノグリシジルエーテルおよび/またはポリオールモノグリシジルエーテルと、を組み合わせてもよい。グリシジルエーテル化合物(a)に占めるポリオールポリグリシジルエーテルの割合は、例えば、80〜100質量%であり、90〜100質量%または80〜95質量%であってもよい。
脂肪族グリシジルエーテルとしては、脂肪族ポリオール骨格を有するものが好ましく、例えば、ポリヒドロキシアルカングリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルなどが例示できる。ポリヒドロキシアルカングリシジルエーテルとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。ポリアルキレングリコールグリシジルエーテルとしては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンジグリシジルエーテルなどのポリC2−4アルキレングリコールグリシジルエーテルなどが例示できる。
脂環族グリシジルエーテル化合物としては、脂環族ポリオール骨格を有するものが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどのポリヒドロキシシクロアルカングリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどのポリシクロアルカンポリアルキルアルコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。
芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、芳香族モノオール骨格や芳香族ポリオール骨格を有するものが挙げられる。芳香族グリシジルエーテル化合物としては、芳香族ポリオールのグリシジルエーテルの他、ビスフェノール型エポキシ化合物(いわゆるビスフェノール型エポキシ樹脂)、およびフェノールノボラック型エポキシ化合物(いわゆるフェノールノボラック型エポキシ樹脂)などが例示される。芳香族ポリオールとしては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレンなどのポリヒドロキシアレーン;ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールFなどのビスフェノールなどが挙げられる。
グリシジルエーテル化合物(a)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂硬化物の強度をさらに高める観点からは、グリシジルエーテル化合物(a)は、少なくとも芳香族グリシジルエーテル化合物を含むことが好ましい。中でも、芳香族グリシジルエーテル化合物として、ビスフェノール型エポキシ化合物、およびフェノールノボラック型エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
グリシジルエーテル化合物(a)は、室温(25〜30℃)で固形のものでもよいが、室温で液状のものを少なくとも用いることが好ましい。また、室温で固形のグリシジルエーテル化合物を用いると、硬化時の発熱を抑制することができるため、室温で液状のグリシジルエーテル化合物と室温で固形のグリシジルエーテル化合物とを組み合わせてもよい。室温で液状のグリシジルエーテル化合物の重量平均分子量は、例えば、600未満であり、340〜500であることが好ましい。室温で固形のグリシジルエーテル化合物の重量平均分子量は、例えば、600以上であり、700〜5000であることが好ましい。
なお、本明細書中、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン基準の重量平均分子量を言うものとする。
グリシジルエーテル化合物(a)のエポキシ当量は、例えば、150mmol/kg〜600mmol/kgであり、150mmol/kg〜500mmol/kgであることが好ましい。
(b)グリシジルエステル化合物
グリシジルエステル化合物(b)としては、例えば、脂肪族グリシジルエステル化合物、脂環族グリシジルエステル化合物、芳香族グリシジルエステル化合物などが挙げられる。これらのグリシジルエステル化合物は、モノカルボン酸またはポリカルボン酸骨格(残基)とこの骨格に導入されたグリシジルエステル基とを有する。ポリカルボン酸骨格を有するグリシジルエステル化合物において、ポリカルボン酸の全てのカルボキシ基がグリシジルエステル基に置換されていてもよく、ポリカルボン酸の一部のカルボキシ基がグリシジルエステル基に置換されていてもよい。
グリシジルエーテル化合物(a)との硬化反応を効率よく進行させる観点からは、グリシジルエステル化合物(b)として、少なくともポリカルボン酸グリシジルエステルを用いることが好ましく、中でも、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステルを用いることが好ましい。グリシジルエステル化合物(b)としては、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステルと、モノカルボン酸グリシジルエステルおよび/またはポリカルボン酸モノグリシジルエステルとを組み合わせてもよい。グリシジルエステル化合物(b)に占めるポリカルボン酸ポリグリシジルエステルの割合は、例えば、80〜100質量%であり、90〜100質量%または80〜95質量%であってもよい。
グリシジルエステル化合物(b)としては、脂肪族ポリカルボン酸のグリシジルエステルなどの脂肪族グリシジルエステル化合物を用いてもよい。安定性や強度をさらに高める観点からは、グリシジルエステル化合物(b)が、芳香族グリシジルエステル化合物および脂環族グリシジルエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。またグリシジルエステル化合物(b)として、芳香族グリシジルエステル化合物および/または脂環族グリシジルエステル化合物のみを用いてもよい。
芳香族グリシジルエステル化合物としては、芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステルが好ましい。芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、メチルフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどのビス(カルボキシフェニル)アルカンなどが挙げられる。なお、フタル酸(メチルフタル酸のフタル酸部分も含む)は、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸のいずれであってもよい。
脂環族グリシジルエステル化合物としては、脂環族ポリカルボン酸のグリシジルエステルが好ましい。脂環族ポリカルボン酸としては、上記の芳香族ポリカルボン酸の水素添加物が好ましく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ビス(カルボキシフェニル)アルカンの水素添加物などが例示できる。
芳香族ポリカルボン酸のグリシジルエステルおよび脂環族ポリカルボン酸のグリシジルエステルは、それぞれ、モノグリシジルエステルでもよいが、少なくともポリグリシジルエステルを用いることが好ましい。特に、グリシジルエステル化合物(b)は、フタル酸、メチルフタル酸、およびこれらの水添物からなる郡より選択される少なくとも一種のジグリシジルエステルを含むことが好ましい。これらのジグリシジルエステルを用いると、酸無水物系硬化剤を用いた場合と類似の構造を有する生成物が得られ易く、高い電気絶縁性をより確保し易い。
グリシジルエステル化合物(b)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
グリシジルエステル化合物(b)の量は、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、30〜150質量部である。グリシジルエステル化合物(b)の量が、30質量部未満では、絶縁破壊強度が低下する傾向があることに加え、引張強度が低下するため、十分な機械的強度を確保できない。グリシジルエステル化合物(b)の量が150質量部を超えると、曲げ強度が低下するため、十分な機械的強度を確保できないことに加え、ガラス転移点(Tg)の低下が顕著になる。Tg以上では絶縁破壊強度が大きく低下するため、Tgが低下すると、高い電気絶縁性を確保し難くなる。絶縁破壊強度をさらに高める観点からは、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対するグリシジルエステル化合物(b)の量は、50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。高い曲げ強度が得られ易い観点からは、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対するグリシジルエステル化合物(b)の量は、150質量部以下であり、120質量部以下であることが好ましく、110質量部以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
グリシジルエステル化合物(b)の重量平均分子量は、例えば、300〜5000であり、300〜1000であることが好ましく、300〜600であってもよい。
グリシジルエステル化合物(b)のエポキシ当量は、例えば、150mmol/kg〜600mmol/kgであり、155mmol/kg〜200mmol/kgであることが好ましく、160mmol/kg〜180mmol/kgであってもよい。
(c)潜在性硬化触媒
潜在性硬化触媒(c)とグリシジルエステル化合物(b)とを組み合わせることで、低温や常温での反応が抑制されるため、熱硬化性樹脂組成物のポットライフを長くすることができるとともに、保存安定性も向上できる。また、高温では、熱可塑性樹脂組成物を硬化させる際に硬化反応の反応速度が非常に早くなる。よって、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、短時間での硬化が求められる加圧ゲル(APG)成形に適している。
潜在性硬化触媒(c)としては、例えば、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ジシアンジアミド、酸ヒドラジド、オクチル酸塩(亜鉛塩、スズ塩など)などが挙げられる。三ハロゲン化ホウ素アミン錯体としては、三塩化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素アミン錯体などが例示できる。潜在性硬化触媒(c)は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、高温短時間成型および長期貯蔵安定性を両立する観点から、三塩化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素アミン錯体、およびオクチル酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。また、これらの触媒は、液状で均一分散することができるため、熱硬化性樹脂組成物の接着性能を向上することができる。そのため、このような触媒を用いた熱硬化性樹脂組成物は、コイルを接着させる場合などの狭いギャップに充填して接着させるような用途にも有用である。
潜在性硬化触媒(c)の量は、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、例えば、0.01〜10質量部であり、1〜7質量部であることが好ましい。潜在性硬化触媒(c)の量をこのような範囲とすることで、高いTgを確保でき、絶縁破壊強度をさらに高めることができる。また、潜在性硬化触媒(c)の量が1〜5質量部と比較的少なくても硬化反応を速やかに進行させることができる。特に、潜在性硬化触媒(c)の量がグリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して7質量部以下(好ましくは6質量部以下)である場合には、絶縁破壊強度の向上効果をさらに高めることができる。硬化速度を向上する観点からは、潜在性硬化触媒(c)の量は、2質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
(d)無機充填剤
無機充填剤(d)としては、金属酸化物、金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウムなど)、金属塩(例えば、炭酸カルシウム、ドロマイトなどの無機酸塩(炭酸塩など))、その他の鉱物系充填剤(タルク、ウォラストナイトなど)などが挙げられる。金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニアなどが例示される。これらの無機充填剤(d)は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、シリカ、アルミナなどの金属酸化物、ドロマイトなどが好ましい。これらの無機充填剤を用いる場合、硬化物の機械的強度を高め易く、膨張係数を小さくし易いことに加え、熱硬化性樹脂を硬化させる際の発熱および硬化収縮を抑えることができる。シリカは、結晶性シリカおよび溶融シリカのいずれであってもよい。
無機充填剤(d)は、通常、熱硬化性樹脂組成物中に分散または混合された状態である。そのため、無機充填剤(d)は、熱硬化性樹脂組成物中に分散または混合可能な形態で使用される。無機充填剤(d)の形態は、例えば、粒子状や短繊維状であることが好ましい。
無機充填剤(d)の量は、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、例えば、0.1〜700質量部であり、10〜700質量部であることが好ましい。また、無機充填剤(d)を、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、100〜700質量部や150〜700質量部と多く配合することもできる。無機充填剤(d)の量がこのような範囲である場合、樹脂硬化物の膨張収縮がさらに抑制されるとともに、機械的強度をさらに高めることができる。
(e)撥水性付与剤
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、撥水性付与剤(e)を含んでもよい。熱硬化性樹脂組成物が撥水性付与剤(e)を含む場合には、樹脂硬化物の撥水性を高めることができるため、例えば、湿気に晒される環境下や屋外で用いる用途に適している。
撥水性付与剤(e)としては、例えば、変性ポリシロキサンが使用できる。変性ポリシロキサンは、熱硬化性樹脂組成物中に分散または相溶するものであれば、変性の種類は特に制限なく使用できる。変性ポリシロキサンのポリシロキサン骨格としては、特に制限されないが、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)などが挙げられる。
変性ポリシロキサンとしては、グリシジル変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサンなどの反応性ポリシロキサンの他、アルキル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性シロキサンなどの非反応性ポリシロキサンなどが挙げられる。アルキル変性ポリシロキサンにおいて、変性基であるアルキル基としては、例えば、炭素数が2以上のアルキル基、特に、炭素数が8以上のアルキル基(長鎖アルキル基など)などが挙げられる。ポリエーテル変性シロキサンにおいて、変性基であるポリエーテル基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシトリメチレン基、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン−ポリオキシトリメチレン基などのポリ(オキシC2−4アルキレン)基などが挙げられる。撥水性付与剤(e)は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物中に相溶させ易く、安定した撥水効果を確保し易い観点からは、グリシジル変性ポリシロキサンを用いることが好ましい。硬化後に高い撥水性が得られ易い観点からは、アルキル変性ポリシロキサンやポリエーテル変性ポリシロキサンを用いることが好ましい。
撥水性付与剤(e)の量は、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部であり、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがさらに好ましい。撥水性付与剤(e)の量がこのような範囲である場合、撥水性を確保することができるとともに、撥水性付与剤(e)を熱硬化性樹脂組成物中により均一に分散または相溶させ易い。
(f)分散剤
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、分散剤(f)を含んでもよい。
分散剤(f)としては、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、および/またはエーテル基を有するポリマーなどが好ましい。カルボキシ基を有するポリマーには、カルボキシ基を有するポリマーの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩など)も含まれるものとする。カルボキシ基を有するポリマーとしては、ポリアクリル酸またはその塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなど)、ポリメタクリル酸またはその塩(例えば、ポリメタクリル酸ナトリウムなど)などが例示される。アルコキシカルボニル基を有するポリマーとしては、ポリアクリル酸メチルなどのポリアクリル酸アルキル(好ましくはポリアクリル酸C1−4アルキル)、ポリメタクリル酸メチルなどのポリメタクリル酸アルキル(好ましくはポリメタクリル酸C1−4アルキル)などが例示される。エーテル基を有するポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基などのポリオキシC2−4アルキレン基を有するポリマーが挙げられる。エーテル基を有するポリマーの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。分散剤(f)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。高い分散性が得られ易い観点からは、これらの分散剤(f)のうち、カルボキシ基を有するポリマー、およびポリエチレングリコールが好ましい。
分散剤(f)の量は、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部であり、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。分散剤(f)の量がこのような範囲である場合、熱硬化性樹脂組成物において、構成成分をより均一に分散させることができるため、樹脂硬化物の強度を高め易い。
(その他)
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)以外のエポキシ化合物を含んでもよい。このようなエポキシ化合物としては、例えば、脂環族エポキシ化合物などが好ましい。脂環族エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキサンなどのエポキシシクロアルカンの他、(株)ダイセル製のセロキサイドシリーズ(セロキサイド2100、セロキサイド2000、セロキサイド8000など)などが挙げられる。エポキシ化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
熱硬化性樹脂組成物では、樹脂硬化物の曲げ強度や引張強度が高く、高い機械的強度が得られる。
熱硬化性樹脂組成物を、120℃で1時間加熱処理し、180℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の曲げ強度は、例えば、130MPa以上であり、好ましくは131MPa以上である。硬化物の曲げ強度の上限は特に制限されないが、例えば、150MPa以下である。硬化物の曲げ強度は、例えば、JIS K7171:2008に準拠して測定できる。
熱硬化性樹脂組成物を、120℃で1時間加熱処理し、180℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の引張強度は、例えば、70MPa以上である。硬化物の引張強度は、71MPa以上であることが好ましく、72MPa以上であることがさらに好ましい。硬化物の引張強度の上限は特に制限されないが、例えば、80MPa以下である。硬化物の引張強度は、例えば、JIS K 7113:1995に準拠して測定できる。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物では、樹脂硬化物の線膨張係数を小さくすることができる。屋外で使用されるような用途では、樹脂硬化物が温度変化の影響を受け易いため、特に膨張収縮が小さいことが求められる。本実施形態では、線膨張係数を小さくすることができるため、温度変化に伴う樹脂硬化物の膨張収縮を低減できる。よって、例えば、樹脂硬化物と、金属端子、異種材料、または外装ケースなどとが接合している場合でも、剥離が抑制されるため、これに伴う短絡やクラック発生を抑制できる。また、グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)を用いることで、硬化時の発熱を低く抑えることができるため、硬化時の収縮も抑制できる。
熱硬化性樹脂組成物を、150℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の線膨張係数は、30ppm/℃以下であり、28ppm/℃以下であることが好ましく、27ppm/℃以下であることがさらに好ましい。硬化物の線膨張係数の下限は特に制限されないが、線膨張係数は、例えば、16ppm/℃以上である。
硬化物の線膨張係数は、例えば、JIS K 7197:1991に準拠して熱機械分析(TMA)により測定できる。
上記の線膨張係数は、例えば、無機充填剤の種類、無機充填剤の量などを調節することにより調節することができる。本実施形態では、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)を組み合わせることで無機充填剤の量を調節し易くなるため、線膨張係数を調節し易い。
熱硬化性樹脂組成物は、グリシジルエーテル化合物(a)、グリシジルエステル化合物(b)および無機充填剤(d)を含むため、樹脂硬化物の絶縁破壊強度にも優れており、電気絶縁性が求められる用途に特に適している。グリシジルエーテル化合物(a)とグリシジルエステル化合物(b)とを組み合わせることで、高いTgを確保しながらも、強靭性を向上することができる。また、グリシジルエーテル化合物(a)が少なくとも芳香族グリシジルエーテル化合物を含む場合には、特に、芳香族骨格により、高い絶縁破壊強度が得られる。熱硬化性樹脂組成物を、150℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の絶縁破壊強度は、例えば、20kV/mm以上であり、好ましくは21kV/mm以上である。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物では、特定の組成により、22kV/mm以上の高い絶縁破壊強度を得ることもできる。絶縁破壊強度の上限は特に制限されないが、例えば、25kV/mm以下である。
硬化物の絶縁破壊強度は、例えば、JIS C 2110−1:2010に準拠して、絶縁性シリコーンオイルに硬化物を浸漬させた状態で、2kV/sの昇圧条件下にて測定することができる。電極としては、 同径電極(すなわち、縁端部に半径3mm±0.2mmの丸みを付けた2つの金属円柱)が使用される。電極の直径は、25mm±1mmであり、高さは、約25mmである。使用する硬化物のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み2mmである。
高い電気絶縁性や機械的強度が求められる用途では、熱硬化性樹脂組成物には、従来、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの無水物系硬化剤が利用されている。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物では、グリシジルエステル化合物(b)を用いることで、酸無水物系硬化剤を用いなくても硬化反応を進行させることができ、酸無水物系硬化剤を用いた場合に匹敵する電気絶縁性や機械的強度などの特性を有する熱硬化性樹脂組成物や樹脂硬化物が得られる。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物において、酸無水物系硬化剤の量は0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましい。特に、熱硬化性樹脂組成物が酸無水物系硬化剤を実質的に含有しないことが好ましい。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)を用いるため、長いポットライフや高い保存安定性が得られる。そのため、熱硬化性樹脂組成物は、一液硬化型の熱硬化性樹脂組成物として用いてもよい。一液硬化型の熱硬化性樹脂組成物は、構成成分を混合することにより調製できる。グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)以外の成分を予め混合し、混合物に、グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)を添加し、混合してもよい。グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)は、どちらを先に上記混合物に添加してもよい。また、グリシジルエステル化合物(b)の一部を、グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)以外の成分とともに先に混合してもよい。さらには、構成成分の全てを混合することで熱硬化性樹脂組成物を調製してもよい。熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤および/または溶剤などを添加してもよい。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物として用いてもよい。二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物は、第1液と第2液との組み合わせであり、第1液と第2液とは使用時に混合される。ここで、第1液は、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)のうち少なくとも一部を含むことが好ましく、第2液は、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)の残部と、潜在性硬化触媒(c)と、を含むことが好ましい。第1液および第2液の少なくとも一方には、さらに無機充填剤(d)が含まれていてもよい。また、無機充填剤(d)を含む分散液を、第1液および第2液と組み合わせて二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物としてもよい。第1液および第2液はそれぞれ構成成分を混合することにより調製できる。第1液および第2液における各成分の量は、熱硬化性樹脂組成物全体における量が前述の範囲となるように適宜調節される。第1液および第2液のそれぞれには、必要に応じて、公知の添加剤および/または溶剤などを添加してもよい。無機充填剤(d)を含む分散液は、無機充填剤(d)を分散媒に分散させることにより得ることができる。分散媒としては、例えば、水および/または有機媒体が使用される。分散液には、必要に応じて、公知の添加剤を添加してもよい。
例えば、グリシジルエーテル化合物(a)の全てを含む第1液と、グリシジルエステル化合物(b)および潜在性硬化触媒(c)を含む第2液とを組み合わせてもよい。また、グリシジルエーテル化合物(a)の全ておよびグリシジルエステル化合物(b)の一部を含む第1液と、グリシジルエステル化合物(b)の残部および潜在性硬化触媒(c)を含む第2液とを組み合わせてもよい。グリシジルエーテル化合物(a)の一部とグリシジルエステル化合物(b)の全てを含む第1液と、グリシジルエーテル化合物(a)の残部および潜在性硬化触媒(c)を含む第2液とを組み合わせてもよい。グリシジルエステル化合物(b)の全てを含む第1液と、グリシジルエーテル化合物(a)の全ておよび潜在性硬化触媒(c)を含む第2液とを組み合わせてもよい。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物では、硬化反応を速やかに進行させることができるため、短時間での硬化が求められるAPG成形に用いるのに適している。また、固形のグリシジルエーテル化合物を用いる場合には、硬化時の発熱を抑制することができる点でも、APG成形に適している。
また、熱硬化性樹脂組成物は、高い電気絶縁性および機械的強度を有するため、特に、ガイシ、トランス、ブッシング、スイッチング部材などの製造に適している。
[樹脂硬化物の製造方法]
上記の熱硬化性樹脂組成物を加熱処理して硬化させる工程(硬化工程)を経ることにより樹脂硬化物を製造することができる。
加熱処理は、硬化反応が進行する温度以上の温度で行えばよい。加熱処理は、例えば、110℃以上の温度で行われ、120℃以上の温度で行なうことが好ましく、140℃以上の温度で行なってもよい。加熱処理温度の上限は、例えば、180℃である。
加熱処理の時間は、特に制限されないが、0.1〜6時間であることが好ましく、0.2〜2時間であることがさらに好ましい。
加熱処理は、1段階で行ってもよく、必要に応じて2段階以上の多段階で行なってもよい。各段階において加熱温度などの加熱処理の条件を変更してもよい。また、必要に応じて、硬化工程の加熱処理や各段階の加熱処理を、昇温下や降温下で行なってもよい。多段階で加熱処理を行う場合には、少なくとも1つの段階において140℃以上の温度で加熱処理を行うことが好ましい。
一液硬化型の熱硬化性樹脂組成物の場合には、調製した熱硬化性樹脂組成物を硬化工程に供すればよい。二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物の場合には、硬化工程に先立って、第1液と第2液とを混合する工程(混合工程)が行われる。無機充填剤(d)を含む分散液は、第1液と第2液を混合する際に添加混合してもよく、別途添加し、混合してもよい。混合工程は、通常、硬化反応が進行する温度よりも低い温度で行われる。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜6および比較例1〜6
(1)熱硬化性樹脂組成物の調製および硬化
表1に示す成分を表1に示す質量比で混合することにより、熱硬化性樹脂組成物を調製した。熱硬化性樹脂組成物を金型に注入し、150℃にて180分間加熱処理することにより硬化させて、樹脂硬化物を得た。
実施例および比較例で使用した成分は以下の通りである。
(a)グリシジルエーテル化合物:液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(重量平均分子量:380、エポキシ当量:185mmol/kg〜195mmol/kg)
(a)グリシジルエーテル化合物:固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製、CT200、重量平均分子量:760、エポキシ当量:350mmol/kg〜400mmol/kg)
(b)グリシジルエステル化合物:ナガセケムテックス(株)製、デナタイトCY184J(重量平均分子量:340、エポキシ当量165mmol/kg〜175mmol/kg)
(c)潜在性硬化触媒:三塩化ホウ素モノオクチルアミン(NSB)
(d)無機充填剤:結晶シリカ
(g)エポキシ化合物:エポキシシクロヘキサン
(h)酸無水物系硬化剤:ヘキサヒドロメチル無水フタル酸、日立化成(株)製、HN−5500
(2)評価
実施例および比較例で調製した熱硬化性樹脂組成物を用いて、下記(i)〜(vi)の評価を行った。
(i)線膨張係数
熱硬化性樹脂組成物を、150℃で3時間加熱処理することにより樹脂硬化物を形成した。樹脂硬化物の線膨張係数を、JIS K 7197:1991に準拠して測定した。
(ii)絶縁破壊強度
熱硬化性樹脂組成物を、150℃で3時間加熱処理することにより樹脂硬化物(縦100mm×横100mm×厚み2mm)を形成した。樹脂硬化物の絶縁破壊強度を、JIS C 2110−1:2010に準拠して測定した。
(iii)ゲルタイム
熱硬化性樹脂組成物を用いて、160℃で硬化させる際のゲルタイムを、市販のゲルタイム測定装置((株)安田精機製作所、ゲルタイムテスター)を用いて測定した。
(iv)引張強度
熱硬化性樹脂組成物を、120℃で1時間加熱処理し、180℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の引張強度を、JIS K 7113:1995に準拠して測定した。
(v)曲げ強度
熱硬化性樹脂組成物を、120℃で1時間加熱処理し、180℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の曲げ強度を、JIS K 7171:2008に準拠して測定した。
(vi)ガラス転位温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC)(メトラートレド(株)製、DSC822e)を用いて、熱硬化性樹脂組成物のTgを測定した。
実施例および比較例の熱硬化性樹脂組成物の組成とともに、(i)〜(vi)の評価結果を表1に示す。
Figure 2018168253
表1に示すように、実施例では、酸無水物系硬化剤を用いた比較例1に比べて、高い機械的強度(つまり、引張強度および曲げ強度)が確保されていることに加え、絶縁破壊強度が高い樹脂硬化物が得られており、線膨張係数も格段に小さくなっている。また、実施例では、グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対するグリシジルエステル化合物(b)の量が30質量部未満である比較例2、4および5に比べて、高い引張強度が得られている。グリシジルエステル化合物(b)の量が150質量部を超える比較例3および6に比べて、実施例では、曲げ強度が大きく向上しており、高いTgも得られている。
実施例1、2、5および6では、酸無水物系硬化剤を用いた比較例1のゲルタイムに近い値が得られており、酸無水物系硬化剤を用いなくても、硬化反応が速やかに進行することが分かる。
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、機械的強度および電気絶縁性に優れる樹脂硬化物を形成するのに適している。また、熱硬化性樹脂組成物は、ポットライフや保存性にも優れており、線膨張係数も小さい。よって、電気絶縁性が求められる用途の他、様々な用途に利用することができる。さらに比較的短時間で硬化させることもできるため、APG成型に使用するのにも適している。

Claims (17)

  1. グリシジルエーテル化合物(a)と、グリシジルエステル化合物(b)と、潜在性硬化触媒(c)と、無機充填剤(d)と、を含む熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である、熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記熱硬化性樹脂組成物を、150℃で3時間加熱処理して得られる硬化物の線膨張係数が30ppm/℃以下である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記硬化物の絶縁破壊強度が22kV/mm以上である、請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 加圧ゲル成型に使用される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記グリシジルエーテル化合物(a)は、少なくとも芳香族グリシジルエーテル化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記芳香族グリシジルエーテル化合物は、ビスフェノール型エポキシ化合物、およびフェノールノボラック型エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 前記グリシジルエステル化合物(b)は、ポリカルボン酸のグリシジルエステルを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 前記グリシジルエステル化合物(b)は、芳香族グリシジルエステル化合物および脂環族グリシジルエステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 前記グリシジルエステル化合物(b)は、フタル酸、メチルフタル酸、およびこれらの水添物からなる郡より選択される少なくとも一種のジグリシジルエステルを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. 前記潜在性硬化触媒(c)は、三塩化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素アミン錯体、およびオクチル酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. 前記潜在性硬化触媒(c)の量は、前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、1〜7質量部である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. 前記無機充填剤(d)の量は、前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、0.1〜500質量部である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. 前記無機充電剤(d)は、シリカ、アルミナ、およびドロマイトからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. 使用時に混合して使用する第1液と第2液とを組み合わせた二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記第1液は、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)のうち少なくとも一部を含み、
    前記第2液は、前記グリシジルエーテル化合物(a)および前記グリシジルエステル化合物(b)の残部と、潜在性硬化触媒(c)と、を含み、
    前記第1液および前記第2液の少なくとも一方は、さらに無機充填剤(d)を含み、
    前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である、二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物。
  15. 使用時に混合して使用する第1液と第2液とを組み合わせた二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物であって、
    前記第1液は、グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)のうち少なくとも一部を含み、
    前記第2液は、前記グリシジルエーテル化合物(a)および前記グリシジルエステル化合物(b)の残部と、潜在性硬化触媒(c)と、を含み、
    前記熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填剤(d)を含む分散液を含み、
    前記グリシジルエーテル化合物(a)100質量部に対して、前記グリシジルエステル化合物(b)の量は、30〜150質量部であり、前記潜在性硬化触媒(c)の量は、0.01〜10質量部である、二液硬化型の熱硬化性樹脂組成物。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に熱硬化性樹脂組成物を、140℃以上で加熱処理して硬化させる工程を含む、樹脂硬化物の製造方法。
  17. 前記硬化させる工程に先立って、
    グリシジルエーテル化合物(a)およびグリシジルエステル化合物(b)のうち少なくとも一部と、前記グリシジルエーテル化合物(a)および前記グリシジルエステル化合物の残部、ならびに潜在性硬化触媒(c)と、を混合する工程を含む、請求項16に記載の樹脂硬化物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023132360A1 (ja) * 2022-01-07 2023-07-13 ナガセケムテックス株式会社 熱硬化性樹脂組成物

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