JP2018168250A - フェノール樹脂組成物、フェノール樹脂成形材料および摩擦材 - Google Patents
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Abstract
Description
朝だけではなく、雨中の長時間駐車後や多湿地帯でも同様のケースが生じる場合があった。
このような問題に対しては、システムでの対応がほとんど不可能なので、低吸湿性および鳴き・ジャダーを吸収または緩和するために高振動吸収性の特性をディスクパッドに用いる樹脂に付与する必要があった。
一方、同じく本発明者らの検討によれば、特定の要件を満たす極性基を有するエチレン系重合体を含むフェノール樹脂組成物では、弾性率には優れるが、耐摩耗性が低めの傾向があることが分かってきた。
市場からブレーキパッドに求められる性能は年々レベルが上がっており、耐湿性だけでなく弾性率と耐摩耗性の両立を実現できる材料が求められている。しかしながら、これら2つの性能は、前述の通り、トレードオフの傾向があることが分かってきた。
(A)フェノール樹脂と、
(B)JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件で測定されるメルトフローレートが、0.1g/10分以下であり、
周期律表の15〜17族元素を0.05〜8重量%含み、
平均粒子径が0.1〜40μmである
超高分子量オレフィン重合体と、
(C)JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件で測定されるメルトフローレートが、0.5g/10分以上、100g/10分以下であり、
周期律表の15〜17族元素を5〜90重量%含み、
平均粒子径が40〜300μmであり、
ショアA硬度が40〜90である
エチレン系重合体骨格を有する重合体と、を含み、
前記(A)フェノール樹脂100重量部に対して前記(B)超高分子量オレフィン重合体と前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体との合計が3〜30重量部であり、
前記(B)超高分子量オレフィン重合体と前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体との重量比が20/80〜80/20であることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
[2]
前記(B)超高分子量オレフィン重合体および前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体の少なくとも一方において、前記周期律表の15〜17族元素が酸素であることを特徴とする上記[1]に記載のフェノール樹脂組成物。
[3]
前記(B)超高分子量オレフィン重合体が、前記周期律表の15〜17族元素を含有する基であるマレイン酸骨格を有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載のフェノール樹脂組成物。
[4]
前記(B)超高分子量オレフィン重合体が、(B')超高分子量エチレン重合体であることを特徴とする上記[1]〜[3]いずれか一つに記載のフェノール樹脂組成物。
[5]
前記(A)フェノール樹脂100重量部に対して、前記(B)超高分子量オレフィン重合体と前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体との合計が5〜20重量部であることを特徴とする上記[1]〜[4]いずれか一つに記載のフェノール樹脂組成物。
[6]
当該フェノール樹脂組成物が、さらに(D)硬化剤を含む、上記[1]〜[5]いずれか一つに記載のフェノール樹脂組成物。
[7]
前記(D)硬化剤の含有量が、前記(A)〜前記(C)の合計を100重量部としたとき、3重量部以上20重量部以下である、上記[6]に記載のフェノール樹脂組成物。
[8]
上記[1]〜[7]いずれか一つに記載のフェノール樹脂組成物100重量部に対して、
繊維、充填材、潤滑材、および研削材からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を80重量部以上95重量部以下含むことを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
[9]
上記[8]に記載のフェノール樹脂成形材料の硬化物である摩擦材。
[10]
ブレーキパッドまたは砥石材料に用いられる、上記[9]に記載の摩擦材。
以下、成分(B)、成分(A)、成分(C)の順に説明する。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体とは、特定の高い分子量を持ち、周期律表の15〜17族元素を含み、特定の平均粒子径を示すオレフィン重合体粒子である。
具体的には、成分(B)は、周期律表の15族元素、16族元素および17族元素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含み、上記オレフィン重合体(B)全体を100重量%としたとき、上記元素の含有率が0.05〜8重量%である。
また、成分(B)は粒子状であり、その平均粒子径が0.1〜40μmである。
また、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件で測定される成分(B)のメルトフローレート(MFR)が、0.1g/10分以下である。
このような超高分子量オレフィン重合体は、例えば、超高分子量オレフィン重合体を無水マレイン酸等の極性基を有する化合物を用いて変性して得ることができる。
また、成分(B)は、好ましくは周期律表の15〜17族元素を含有する基であるマレイン酸骨格を有する。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体の粒子の原料に該当する超高分子量オレフィン重合体粒子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのホモポリマーからなる重合体粒子が挙げられる。また、エチレンと少量の他のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテンなどとの共重合体からなる重合体粒子であってもよい。これらの中でも、(B)超高分子量オレフィン重合体が(B')超高分子量エチレン重合体であることが好ましい。すなわち、成分(B)の原料のオレフィン重合体粒子としては、エチレンをモノマーとして用いた重合体からなる重合体粒子が好ましく、さらにはエチレンホモ重合体が特に好ましい。エチレンは、極めて高い分子量の重合体を得やすい傾向があることが知られている。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体の原料であるオレフィン重合体粒子は、135℃、デカリン中での測定による極限粘度ηが、好ましくは4〜50dl/gの範囲であり、より好ましくは5〜40dl/gの範囲であり、特に好ましくは8〜30dl/gの範囲である。極限粘度ηが4以上であると、耐摩耗性の向上効果を十分に得ることができる。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体の原料であるオレフィン重合体粒子は、高温GPC測定による重量平均分子量が、好ましくは5.0×105以上である。更に好ましくは1.0×106以上である。
高温GPC測定による重量平均分子量が上記の範囲を満たすと、耐熱性が向上するため、耐摩耗性の向上効果を十分に得ることができる。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体の原料であるオレフィン重合体粒子のコールターカウンター法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、0.1〜40μmであり、好ましくは1〜35μmである。
成形時の平均粒子径が40μm以下であると、機械的強度および成形外観をより向上させることができる。なお、上記平均粒子径の下限値は0.1μmである。取り扱い性、入手の容易さなどの観点からは、上記平均粒子径が1μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体の粒子の原料であるオレフィン重合体粒子は、特許文献1などに記載の公知の方法で製造することができる。一例を挙げると、マグネシウム含有微粒子に遷移金属化合物または液状チタン化合物が担持された固体触媒成分と、有機金属化合物と、さらに所望により非イオン性界面活性剤とから構成される重合触媒成分の存在下で、エチレン単独またはエチレンと他のα−オレフィンを共重合させる方法で製造することができる。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体粒子は、周期律表15〜17族元素を含んでいる。そのような元素として具体的には17族元素であるハロゲン、より具体的には塩素を挙げることができる。16族元素としては酸素、硫黄を代表例として挙げることができ、好ましくは酸素である。15族元素として、代表例は窒素である。これらの中でも酸素であることが特に好ましい。
例えば、成分(B)が15〜17族元素として酸素を必須成分として含むとき、酸素を必須成分として含む部分の構造の具体例としては、カルボニル基および水酸基などの酸素含有基、および/またはエチレン性不飽和基を含有するカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種のカルボン酸誘導体を重合して得られるポリマー構造である。これらの酸素を含有する構造は、単独であっても2種以上であってもよい。
また、成分(B)が15〜17族元素として他の元素を含むとき、他の元素を含む置換基としては、アミノ基、アミド基、イミド基、カルバメート基、ウレタン基、ハロゲン基、ハロアルキル基などを挙げることができる。
前述の酸素を含む構造は、成分(B)の原料のオレフィン重合体粒子のポリマー主鎖、側鎖、末端のいずれかに結合している。このような構造のオレフィン重合体粒子を得る方法としては、例えば、エチレン性不飽和基を含有するカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種のカルボン酸誘導体を用いる場合、公知のグラフト重合反応により得ることができる。得られるポリマー構造は、原料のオレフィン重合体粒子のポリマー主鎖、側鎖、末端のいずれかにグラフト鎖として結合していることが知られている。
本実施形態に係る(B)オレフィン重合体粒子の15〜17族元素の含有率は、(B)オレフィン重合体粒子全体を100重量%としたとき、0.05〜8重量%の範囲であり、好ましくは0.1〜7重量%の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。
15〜17族元素の含有率が0.05重量%以上であると、(B)オレフィン重合体粒子と後述する(A)フェノール樹脂との相溶性や粒子の分散性が向上するため、接着強度を向上させることができる。その結果、(B)オレフィン重合体粒子と(A)フェノール樹脂との界面が分離するのを抑制することができ、耐吸湿性、振動吸収性、および耐摩耗性を向上させることができる。また、15〜17族元素の含有率が8重量%以下であることにより、高い耐吸湿性を保持することができる。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体は、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件で測定されるMFRが、0.1g/10分以下である。MFRは、好ましくは0.001g/10分以上0.1g/10分未満であり、より好ましくは0.001g/10分以上0.08g/10分以下であり、さらに好ましくは0.001g/10分以上0.06g/10分以下であり、とくに好ましくは0.001g/10分以上0.05g/10分未満である。MFRが0.1g/10分以下であると、耐熱性や耐摩耗性を向上させることができる。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体のコールターカウンター法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、40μm以下である。上記平均粒子径d50は、好ましくは38μm以下であり、より好ましくは37μm以下であり、さらに好ましくは36μm以下であり、特に好ましくは35μm以下である。
成形時の平均粒子径が40μm以下であると、機械的強度および成形外観、粒子分散性をより向上させることができる。なお、上記平均粒子径d50の下限値は、取り扱い性、入手の容易さなどの観点から、0.1μm以上である。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体の製造方法は特に限定されないが、例えば、(i)オレフィンと極性モノマーを共重合する方法、(ii)前述した原料のオレフィン重合体粒子に、後から官能基を導入する方法、(iii)前述した原料のオレフィン重合体粒子に、後から極性モノマーをグラフトする方法などが挙げられる。これらの中でも、製造上の容易さの点から、上記(ii)オレフィン重合体粒子に、後から官能基を導入する方法、または上記(iii)オレフィン重合体粒子に、後から極性モノマーをグラフトする方法が好ましい。
以下、上記(i)〜(iii)の順にさらに具体的に説明する。
共重合反応により(B)超高分子量オレフィン重合体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、特開2005−120171号公報に記載されているような方法が挙げられる。一例を挙げると、極性モノマーの存在下で、エチレン単独またはエチレンと他のα−オレフィンとを共重合させる方法、または、ラジカル開始剤存在下で、同様に極性モノマーと、エチレン単独またはエチレンおよび他のα−オレフィンとを共重合させる方法で製造することができる。ただし、この方法では、分子量の高い重合体を得るのは難しい場合がある。
(ii)前述したオレフィン重合体粒子に、後から官能基を導入する方法としては、例えば、オレフィン重合体粒子に発生させたラジカルと、例えば酸素含有基としてカルボニル基および水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを反応させることにより、オレフィン重合体粒子に対応する構造を導入する。こうすることにより、少なくとも1種の酸素含有基を導入した超高分子量オレフィン重合体を得ることができる。この態様で最も好ましい官能基を含む化合物としては無水マレイン酸を挙げることができる。
(iii)前述したオレフィン重合体粒子に、後から極性モノマーをグラフトする方法としては、例えば、オレフィン重合体粒子に発生させたラジカルを開始点として、例えば酸素含有化合物の場合、エチレン性不飽和基を含有するカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、およびカルボン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種のカルボン酸誘導体をグラフト重合させる方法などが挙げられる。こうすることにより、カルボン酸誘導体で変性された、(B)超高分子量オレフィン重合体を得ることができる。グラフト重合方法としては、公知の方法を制限なく使用できるが、例えば、(iii−1)ラジカル開始剤の存在下、懸濁液の状態で反応させる懸濁グラフト法、(iii−2)電子線やγ線などを利用する放射線グラフト法などを代表例として挙げることができる。以下、カルボニル基やカルボン酸基を代表例とする酸素含有基を導入する方法を代表例として幾つかの方法を紹介する。
懸濁グラフト法において、懸濁液を形成する反応溶媒は、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トルエン、キシレン、ベンゾニトリルなどの芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエチレンなどの塩素化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの中でも、ベンゼン、ビフェニル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ベンゾニトリルが好ましい。また、これらの溶媒は単独あるいは混合して使用してもよい。
重合終了後の混合物を、濾別、洗浄、乾燥することにより、(B)超高分子量オレフィン重合体が得られる。
放射線グラフト法には、予め(B)超高分子量オレフィン重合体の原料であるオレフィン重合体粒子に放射線を照射した後に、生成したラジカルを開始点として、エチレン性不飽和基を含有するカルボン酸誘導体をグラフト重合させる、いわゆる前照射法と、エチレン性不飽和基を含有するカルボン酸誘導体を含む溶液中あるいは雰囲気下で放射線を照射する、いわゆる同時照射法がある。本実施形態においては特に限定されず、どちらを使用してもよい。工業的には後者が有利な場合が多い傾向がある。
本実施形態に係る(B)超高分子量オレフィン重合体は、得られた粒子をそのまま用いてもよいし、分級して用いてもよい。また、粒子以外の形状に賦形した物を機械粉砕、冷凍粉砕、化学粉砕などの公知の方法によって粉砕し、得られた粒子をそのまま用いてもよいし、分級して用いてもよい。
(A)フェノール樹脂は、フェノール化合物と2価の連結基を有する化合物との重合体である。
(A)フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック樹脂類、ノボラック類からビスフェノール体を除いた残渣物、レゾール型フェノール樹脂類、フェノール−ジシクロペンタジエン樹脂類、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類、ナフトールアラルキル樹脂類、アニリンアラルキル樹脂類などが挙げられ、これらを単独ないし併用して使用することができる。これらの中でも、入手し易く価格が安い点から、フェノールノボラック樹脂が好ましい。
本実施形態に係る(A)フェノール樹脂は特に限定されないが、例えば、フェノール化合物とアルデヒド類とを酸触媒存在下で反応させて得ることができる。
フェノール化合物とアルデヒド類とを反応する際の触媒としては、酢酸亜鉛などの金属塩類;蓚酸、塩酸、硫酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸などの酸類が挙げられる。これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用してもよい。触媒の使用量は、フェノール化合物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部である。
本実施形態に係る(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体(以下、「(C)重合体」と称することがある。)は、以下の要件を満たす。
(C)重合体は、周期律表の15〜17族元素を5〜90重量%含む。
JIS K7215に準拠して測定される(C)重合体のショアA硬度が40以上90以下の範囲内である。
また、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における(C)重合体の平均粒子径d50が40μm以上300μm以下の範囲内である。
また、190℃、2.16kgfにおける(C)重合体のメルトフローレート(JIS K7210に準拠)が、0.5g/10分以上100g/10分以下である。
また、(C)重合体は、具体的には、極性基を有する共重合体である。
15〜17族元素における他の元素としては、窒素、塩素、臭素を挙げることができる。また、他の元素を含む置換基としては、アミノ基、アミド基、イミド基、カルバメート基、ウレタン基、ハロゲン基、ハロアルキル基などを挙げることができる。
上記ショアA硬度は、例えば(C)重合体中のエチレンに由来する構成単位の含有量を制御することにより、調整することができる。
また、本実施形態に係る(C)重合体は、上記平均粒子径d50が300μm以下であり、好ましく250μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。上記平均粒子径d50が上記上限値以下であると、フェノール樹脂組成物中での(C)重合体だけでなく、前述した(B)超高分子量オレフィン重合体の分散性を向上させられると考えられる。これにより、得られるフェノール樹脂組成物の柔軟性、耐摩耗性バランスをより一層向上させることができる。
上記平均粒子径d50は、例えば(C)重合体のペレットを粉砕し、必要に応じて分級することにより、調整することができる。なお、(C)重合体の上記平均粒子径d50は、(A)フェノール樹脂および後述する(D)硬化剤と(C)重合体とを粉体混合する前の値である。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は一般的に公知の方法により製造することができる。例えば、高温、高圧下で、エチレンと酢酸ビニルをラジカル共重合する高圧ラジカル重合法によってエチレン−酢酸ビニル共重合体を製造することができる。
具体的には、エチレンと酢酸ビニルを高圧ポンプによって、管型反応器または槽型反応器に圧送し、この反応器内で高温、高圧の条件下で、有機過酸化物等を重合開始剤として用い、また必要に応じて連鎖移動剤を用いて、共重合させる。その後、高圧分離器内で、共重合体と未反応モノマーを分離する。
また、(C)重合体の他の例であるアクリル酸(エステル)系重合体、メタクリル酸(エステル)系重合体なども公知の方法で製造されたものを用いることができる。
本実施形態に係るフェノール樹脂組成物は、上記(B)超高分子量オレフィン重合体と上記(A)フェノール樹脂、上記(C)重合体を含んでいる。フェノール樹脂組成物がさらに後述する硬化剤(D)をも含む態様とすると、後述する摩擦材とするような場合に特に好ましい。
本実施形態において(B)超高分子量オレフィン重合体と(C)重合体との重量比((B)/(C))は、80/20〜20/80である。上記重量比は、好ましくは75/25〜25/75、更に好ましくは70/30〜30/70である。
本発明者らの検討によれば、(A)フェノール樹脂と(B)超高分子量オレフィン重合体とを含む態様は、耐湿性に加え、耐摩耗性に優れるが、柔軟性が十分とは言えない傾向があった。一方(A)フェノール樹脂と(C)重合体とを含む態様は、柔軟性に優れるが耐摩耗性が十分とは言えない傾向が有った。
これに対し前述の量比の範囲で(B)超高分子量オレフィン重合体と(C)重合体とを組み合わせて使用すると、驚くべきことに(A)フェノール樹脂と(B)超高分子量オレフィン重合体を含む態様が示す耐摩耗性と同等かそれ以上の性能を示す一方で、(A)フェノール樹脂と(C)重合体とを含む態様が示す柔軟性と同等かそれ以上の性能を示すことが見出された。即ち、両者の性能が高いレベルで両立する結果が得られたことになる。
このような結果が得られた原因は定かではないが、本発明者らは次の様に推測している。
即ち、特定の小さな粒径範囲を有する(B)超高分子量オレフィン重合体はその高分子量の為、溶融凝集が起こり難いので、比較的優れた分散状態となり易いが、(B)超高分子量オレフィン重合体の粒子同士の凝集は起こる場合がある。これに(C)重合体を組み合わせると、(C)重合体がその溶融流動性と高い極性によって、(A)フェノール樹脂中での(B)超高分子量オレフィン重合体の粒子凝集を改善し、分散性を向上させる。これによって、(B)超高分子量オレフィン重合体は、少ない含有率となっても高い耐摩耗性を示すことができるのであろう。
逆に言えば、(B)超高分子量オレフィン重合体が周期律表の15〜17族元素を有する、さらに具体的には極性基を持つ粒子であることから、(C)重合体の分散性も改善しているのではないかと考えられる。即ち、成分(B)および(C)が相互に分散助剤としての効果を示しているのではないかと考えられる。
(B)超高分子量オレフィン重合体粒子、(C)重合体、(A)フェノール樹脂および好ましく使用される(D)硬化剤から組成物を調製する方法としては、公知の方法を制限なく用いることができる。例えば、粉砕して粉体状で混合する方法や、(B)超高分子量オレフィン重合体と(C)重合体と(A)フェノール樹脂とを120〜200℃の温度で数分間〜数時間加熱して溶融混合した後、粉砕して粉体状で混合した後、適宜、硬化剤(D)との共存下、粉砕して粉体状としたのち、周知の方法で混合する方法などを挙げることができる。
フェノール樹脂組成物中の添加剤の配合量(複数種添加するときは、その合計量)、具体的には、繊維、充填材、潤滑材、および研削材からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤の上記配合量は、フェノール樹脂組成物全体を100重量部としたとき、80重量部以上95重量部以下が好ましく、85重量部以上92重量部以下がより好ましい。また、フェノール樹脂成形材料は、フェノール樹脂組成物100重量部に対して、繊維、充填材、潤滑材、および研削材からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤をたとえば80重量部以上95重量部以下含んでもよい。
本実施形態に係る硬化物は、具体的にはフェノール樹脂組成物の硬化物であり、さらに具体的には上記フェノール樹脂成形材料を硬化することにより得られる。
例えば、本実施形態に係るフェノール樹脂成形材料(硬化剤(D)を含むことが好ましい。)を、熱により硬化させて硬化物を得ることができる。フェノール樹脂成形材料を加熱することにより、各成分間、特に(A)フェノール樹脂において架橋反応が起こり、3次元架橋構造が形成されると考えられる。よって、本実施形態に係るフェノール樹脂成形材料を用いると、各成分間の密着性が優れた硬化物を得ることができ、その結果、機械強度に優れた成形品を得ることができる。
本実施形態に係るフェノール樹脂成形材料は、上記の他にもディスクパッドやドラムブレーキ用ライニングなどの摩擦材用バインダー、半導体封止材や積層板などの電気電子部品用バインダーとして使用することができる。また、本実施形態に係るフェノール樹脂成形材料の硬化物は、とくにブレーキパッドや砥石材料などの摩擦材に好適に使用することができる。
酸素共存下で、超高分子量ポリエチレン粒子(商品名:ミペロンXM220、三井化学社製、平均分子量2.0×106、平均粒子径30μm、MFR0.01g/10分未満、極限粘度η14dl/g)50gに、200kGyの電子線を照射した。照射後の粒子のIR分析によりカルボニル基の導入が認められた。この超高分子量ポリエチレン粒子の酸素含有率は元素分析装置(varioELIII型:エレメンタール社製)にて測定した結果、0.3重量%であった。また、カルボニル変性超高分子量ポリエチレン粒子のMFRは0.01g/10分未満であった。なお、超高分子量ポリエチレン粒子の平均分子量は、極限粘度ηより算出した。また、超高分子量ポリエチレン粒子のMFRの測定は、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件でおこなった。
(製造例2:エチレン/酢酸ビニル共重合体の製造)
三井デュポンポリケミカル社製の「EV150」[酢酸ビニル含有量:33質量%、メルトフローレート(JIS K7210);30g/10分]を、液化窒素中に24時間浸漬後、バッチミルにて、10分間粉砕処理することで、平均粒子径d50が130μmの粉末状のエチレン−酢酸ビニル共重合体(E1)を得た。
なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E1)の平均粒子径d50は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法のメタノール溶媒による湿式法により体積基準粒度分布測定し、その粒度分布から算出した。
また、ショアA硬度は以下の手順により測定した。はじめに、エチレン−酢酸ビニル共重合体(E1)を温度100℃の熱プレスで加圧することにより6mm厚のシートを得た。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(E1)のショアA硬度は、JIS K7215に準拠してデュロメータA(スプリング式ゴム硬度計)を用い、得られたシートの表面に圧子(押針)を押し込み変形させた。下記の実験に用いたエチレン−酢酸ビニル共重合体(E1)のショアA硬度は68であった。
フェノールノボラック樹脂(商品名:PS−6367、群栄化学社製)100g、製造例1で得られた超高分子量オレフィン重合体粒子5g、製造例2で得られたエチレン/酢酸ビニル共重合体5g、および、ヘキサメチレンテトラミン12gをコーヒーミル粉砕機にて1分間、粉砕混合し、フェノール樹脂成形材料の組成物を得た。得られたフェノール樹脂成形材料について後述する評価をおこなった。配合および評価の結果を表1に示す。
超高分子量オレフィン重合体を用いず、エチレン/酢酸ビニル共重合体を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を得て、評価を行った。結果を表1に示した。
エチレン/酢酸ビニル共重合体を用いず、超高分子量オレフィン重合体を10重量部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を得て、評価を行った。結果を表1に示した。
実施例1および比較例1〜2で得られたフェノール樹脂成形材料を150℃で10分間加熱して成形品(直径50mm、高さ3.5mmの円筒)を作製した後、180℃で5時間アフターキュアした。得られたサンプルを測定用サンプルとした。
下記組成のフェノール樹脂成形材料を粉砕機で5分間粉砕混合し、金型に入れて、室温、30MPa、1分間の条件で予備成形した。次に、この予備成形体を予め150℃に加温した別の金型に移し、発生するガスを除去しながら、40MPa、150℃で10分間熱プレスを行った。つづいて、180℃で6時間アフターキュアを行った。得られた成形品(パッド)を磨耗量の測定用サンプルとした。
銅繊維(補強繊維) 15.0重量%
硫酸バリウム(無機充填材) 27.0重量%
消石灰(無機充填材) 2.0重量%
カシューダスト(有機充填材) 8.0重量%
黒鉛(潤滑材) 5.0重量%
酸化鉄(研削材) 7.0重量%
バインダー*1) 8.5重量%
*1)実施例1および比較例1〜2で得られたフェノール樹脂組成物
以下の方法で各物性を測定した。その結果を表1に示す。
各例の測定サンプルについて、温度30℃、80%湿度雰囲気下、120時間放置しての重量を測定して、吸湿率を以下の式に基づいて算出した。
吸湿率[重量%]=100×(W2−W1)/W1
W1:温度30℃、80%湿度雰囲気下の放置前のサンプル重量
W2:温度30℃、80%湿度雰囲気下、120時間放置した後のサンプル重量
(評価基準)
○: 吸湿率≦0.55%
△:0.55%<吸湿率≦0.60%
×:0.60%<吸湿率
サンプルを切出した後、そのサンプルを用いて、ブレーキ試験機(曙ブレーキ工業社製、1/10スケールテスター)により、自動車規格JASO C 406試験方法に準拠して試験をおこなった。試験前後のサンプルの厚みを計測し、以下の式で定義される磨耗量を算出した。
磨耗量[mm]=T1−T2
T1:JASO C 406試験前のサンプル厚み
T2:JASO C 406試験後のサンプル厚み
図1は、実施例および比較例における組成(EVA量)と耐摩耗性(摩耗量)との関係を示す図である。
振動吸収性の代用評価として粘弾性の測定を行った。乳酸エチル10gに各例で得られたフェノール樹脂成形材料の組成物6gを溶解させ、標準鉄片上にスクリーン塗布した後、硬化させることにより、長さ20mm×幅2mm×0.1mm厚の硬化物のフィルムを作成し動的粘弾性の評価に供した。動的粘弾性は、レオバイブロンDDV−2−EP(東洋ボールドウィン社製)を用いて貯蔵弾性率E'を測定した。E'は40℃での値を読み取った。なお、昇温速度は2.0℃/min、測定温度範囲は50〜350℃とした。測定周波数は110Hzである。
図2は、実施例および比較例における組成(EVA量)と粘弾性(弾性率E')との関係を示す図である。
Claims (10)
- (A)フェノール樹脂と、
(B)JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件で測定されるメルトフローレートが、0.1g/10分以下であり、
周期律表の15〜17族元素を0.05〜8重量%含み、
平均粒子径が0.1〜40μmである
超高分子量オレフィン重合体と、
(C)JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgfの条件で測定されるメルトフローレートが、0.5g/10分以上、100g/10分以下であり、
周期律表の15〜17族元素を5〜90重量%含み、
平均粒子径が40〜300μmであり、
ショアA硬度が40〜90である
エチレン系重合体骨格を有する重合体と、を含み、
前記(A)フェノール樹脂100重量部に対して前記(B)超高分子量オレフィン重合体と前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体との合計が3〜30重量部であり、
前記(B)超高分子量オレフィン重合体と前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体との重量比が20/80〜80/20であることを特徴とするフェノール樹脂組成物。 - 前記(B)超高分子量オレフィン重合体および前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体の少なくとも一方において、前記周期律表の15〜17族元素が酸素であることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂組成物。
- 前記(B)超高分子量オレフィン重合体が、前記周期律表の15〜17族元素を含有する基であるマレイン酸骨格を有することを特徴とする請求項1または2に記載のフェノール樹脂組成物。
- 前記(B)超高分子量オレフィン重合体が、(B')超高分子量エチレン重合体であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物。
- 前記(A)フェノール樹脂100重量部に対して、前記(B)超高分子量オレフィン重合体と前記(C)エチレン系重合体骨格を有する重合体との合計が5〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物。
- 当該フェノール樹脂組成物が、さらに(D)硬化剤を含む、請求項1〜5いずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物。
- 前記(D)硬化剤の含有量が、前記(A)〜前記(C)の合計を100重量部としたとき、3重量部以上20重量部以下である、請求項6に記載のフェノール樹脂組成物。
- 請求項1〜7いずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物100重量部に対して、
繊維、充填材、潤滑材、および研削材からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を80重量部以上95重量部以下含むことを特徴とするフェノール樹脂成形材料。 - 請求項8に記載のフェノール樹脂成形材料の硬化物である摩擦材。
- ブレーキパッドまたは砥石材料に用いられる、請求項9に記載の摩擦材。
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JP2017065519A JP2018168250A (ja) | 2017-03-29 | 2017-03-29 | フェノール樹脂組成物、フェノール樹脂成形材料および摩擦材 |
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WO2020050388A1 (ja) | 2018-09-07 | 2020-03-12 | マックス株式会社 | 結束機 |
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