JP2018168030A - 強化ガラス板の製造方法及び強化ガラス板 - Google Patents
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Abstract
【課題】化学強化を行う場合におけるガラス板の変形を抑制するとともに、強化ガラス板を効率良く製造する。
【解決手段】本方法は、第一主表面Saを有する第一の面S1と、第二主表面Sbを有する第二の面S2とが非対称に構成される元ガラス板G1に、イオン交換による化学強化処理を施して強化ガラス板G3を製造する。第二主表面Sbは、第一主表面Saよりも面積が大きく設定される。本方法は、マスク工程とイオン交換工程とを備える。イオン交換工程は、溶融塩TによりマスクMの少なくとも一部を除去する。
【選択図】図2
【解決手段】本方法は、第一主表面Saを有する第一の面S1と、第二主表面Sbを有する第二の面S2とが非対称に構成される元ガラス板G1に、イオン交換による化学強化処理を施して強化ガラス板G3を製造する。第二主表面Sbは、第一主表面Saよりも面積が大きく設定される。本方法は、マスク工程とイオン交換工程とを備える。イオン交換工程は、溶融塩TによりマスクMの少なくとも一部を除去する。
【選択図】図2
Description
本発明は、強化ガラス板及びその製造方法に関し、より具体的には、イオン交換法によってガラス板の化学強化を行う、強化ガラス板の製造方法に関する。
近年、携帯電話、カメラ等の電子機器、大型ディスプレイやパソコン等の表示面、腕時計等のウェアラブル端末のカバーガラスには、化学強化されたガラス板が用いられている。このような強化ガラス板は、リチウム、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を組成として含む元ガラス板を、ナトリウム、カリウムやルビジウムなどのアルカリ金属の硝酸塩を加熱して溶融させた溶融塩に接触させる塩浴で化学的に処理する強化処理によって、表面に圧縮応力層を形成することによって製造される。
例えば特許文献1には、硝酸カリウムを含む無機塩に、ナトリウムを含むガラス板を接触させることによって、ガラス板中のNaと無機塩中のKとをイオン交換する工程を含む化学強化ガラスの製造方法が開示されている。この製造方法では、ガラス板の表面におけるイオン半径が小さなNaイオンをイオン半径がより大きなKイオンに置換し、ガラス板の表面に圧縮応力層を残留させることで、ガラス板を強化する。
強化ガラス板としては、用途に応じて様々な形状、寸法のものが用いられる。通常、強化用の元ガラス板には、その端部に面取り等の加工が施されることが多い。このため、元ガラス板は、表面の形状と裏面の形状とが非対称になる。
本発明者等は、溶融塩に表面と裏面が非対称な元ガラス板を浸漬してイオン交換すなわち強化処理を行うと、強化処理後のガラス板に反りが生じるという問題を見出した。反りが生じたガラス板は、例えば携帯電話のディスプレイカバーガラスとして使用する際に、他のモジュールや筐体に対して貼り合わせ不良になる恐れがあるなど製品としての機能が損なわれてしまうことになる。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、化学強化を行う場合におけるガラス板の変形を抑制するとともに、強化ガラス板を効率良く製造することを技術的課題とする。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、第一主表面を有する第一の面と、第二主表面を有する第二の面とが非対称に構成される元ガラス板に、イオン交換による化学強化処理を施して強化ガラス板を製造する方法において、前記第二主表面は、前記第一主表面よりも面積が大きく設定されており、前記第二主表面にイオンの交換を抑制するマスクを形成するマスク工程と、前記マスク工程後に、前記マスクが形成された前記元ガラス板を、前記イオン交換を行うための溶融塩に浸漬させるイオン交換工程と、を備え、前記イオン交換工程は、前記溶融塩により前記マスクの少なくとも一部を除去することを特徴とする。
本発明者等は、第一の面と第二の面とが非対称である元ガラス板を溶融塩に浸漬させた場合に、第一主表面よりも面積の大きな第二主表面がイオン交換による強化中に大きく変形する事象を見出した。本発明では、第二主表面にイオンの交換を抑制するマスクを形成することにより、第一の面と第二の面との変形の均衡を図り、イオン交換工程における元ガラス板の変形量を可及的に低減することができる。さらに、イオン交換工程中に、溶融塩によってマスクの少なくとも一部を除去することで、イオン交換工程後のマスクの除去作業を容易に行うことができる。これにより、強化ガラス板を効率良く製造することが可能になる。
前記イオン交換工程は、前記溶融塩により前記マスクの全部を除去することが望ましい。このように、イオン交換工程においてマスクを全て除去すれば、イオン交換工程後に、マスクを除去する必要がなくなり、強化ガラス板を一層効率良く製造できる。
本発明に係る強化ガラス板の製造方法において、前記マスクは、SiO2を主成分として含むことが望ましい。また、前記溶融塩は、水に溶解させて20質量%の水溶液としたときのpHが6.5以上であることが望ましい。このように、溶融塩を水溶液としたときのpHを6.5以上とすることで、元ガラス板に対するイオン交換を効果的に行うことができる。また、マスクの主成分をSiO2とすることで、イオンの透過を抑制しつつ、溶融塩によってSi−Oの結合を破壊することで、イオン交換工程中に当該マスクを元ガラスから徐々に剥離させることができる。
本発明に係る強化ガラス板の製造方法において、前記第一主表面および前記第二主表面が何れも平坦面であることが望ましい。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、第一主表面を有する第一の面と、第二主表面を有する第二の面とが非対称に構成される強化ガラス板において、前記第二主表面の面積は、前記第一主表面の面積よりも大きく設定されており、前記第一主表面は、第一圧縮応力層を有し、前記第二主表面は、第二圧縮応力層を有し、前記第二圧縮応力層の層深さが、前記第一圧縮応力層の層深さよりも小さいことを特徴とする。
第二主表面の面積が第一主表面の面積よりも大きく設定されることから、第一主表面及び第二主表面に均一な層深さの圧縮応力層を形成する化学強化を行うと、面積の大きな第二主表面の変形が第一主表面の変形よりも大きくなり、強化ガラス板の変形の原因となる。本発明では、面積の大きな第二主表面における第二圧縮応力層の層深さを、第一主表面における第一圧縮応力層の層深さの層深さよりも小さく設定することで、強化ガラス板の変形量を可及的に低減できる。
上記の強化ガラス板において、前記第一圧縮応力層および前記第二圧縮応力層各々の深さは、100μm以上であることが望ましい。これにより、変形が抑制されるとともに、十分な強度を有する強化ガラス板を実現できる。
本発明によれば、化学強化を行う場合におけるガラス板の変形を抑制するとともに、強化ガラス板を効率良く製造できる。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図4は、本発明に係る強化ガラス板及びその製造方法の第一実施形態を示す。
図1に示すように、強化ガラス板の製造方法は、元ガラス板G1の準備工程と、元ガラス板G1にイオン透過抑制膜によるマスクMを形成して膜付ガラス板G2を得るマスク工程と、膜付ガラス板G2を強化するイオン交換工程と、を備える。以下、各工程について説明する。先ず、図2(a)に示す準備工程の処理を実施する。この準備工程は、所定形状の元ガラス板G1を準備する工程である。
元ガラス板G1は、平面視長方形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。元ガラス板G1は、互いに表裏の関係にある第一の面S1及び第二の面S2を有する。元ガラス板G1は、第一の面S1と第二の面S2とが非対称となる形状を有する。
図2(a)及び図3に示すように、第一の面S1は、中央部に位置する第一主表面Saと、当該第一主表面Saの周囲に位置する面取り面Cとを有する。第一主表面Saは、長方形状の平坦面として構成される。面取り面Cは、第一主表面Saの周囲に設けられる平坦な傾斜面である。面取り面Cは、いわゆるC面取り加工によって形成される。なお、上記形状は一例であり、面取り面Cは、いわゆるR面取り加工によって形成された湾曲面であって良く、複数の曲率半径を有する曲面又は複数の傾斜面の組み合わせにより構成しても良い。本実施形態において、面取り面Cと第二の面S2とが為す角度θ(図2(a)参照)は、約30°に設定されているが、これに限定されない。
第二の面S2は、第一主表面Saの反対側に位置する第二主表面Sbを有する。第二主表面Sbは、長方形状の平坦面として構成される。第二主表面Sbの面積は、第一主表面Saよりも大きく設定される。すなわち、第二主表面Sbの短辺及び長辺の長さは、第一主表面の短辺及び長辺よりも長く設定される。第二主表面Sbは、第一主表面Saと相似形であるが、この構成に限定されない。
図2(a)及び図3に示すように、元ガラス板G1の周端部Eは、尖端状に構成されるが、これに限らず、元ガラス板G1の厚さ方向に平行な面により構成されてもよい。この周端部Eは、第一の面S1と第二の面S2との境界部である。
元ガラス板G1は、ガラス組成として質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 1〜30%、Na2O 1〜20%、K2O 0〜20%を含有することが好ましい。上記のようにガラス組成範囲を規制すれば、イオン交換性能と耐失透性を高いレベルで両立し易くなる。
元ガラス板G1の板厚は、例えば、2.0mm以下であり、好ましくは1.5mm以下、1.3mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6 mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、特に0 .1mm以下である。元ガラス板G1の板厚が小さい程、強化ガラス板基板を軽量化することでき、結果として、デバイスの薄型化、軽量化を図ることができる。なお、生産性等を考慮すれば元ガラス板G1の板厚は0.01mm以上であることが好ましい。
元ガラス板G1は、例えば、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形され、スクライブチップを用いて切断され、回転砥石ツールによって面取りおよび端面研磨加工されたものである。なお、元ガラス板G1の成形方法や加工方法は任意に選択して良い。例えば、元ガラス板G1はフロート法を用いて成形されて良いし、レーザー光を用いて切断されて良いし、研磨テープを用いて研磨加工されていても良い。
準備工程が終了すると、マスク工程が実施される。マスク工程は、図2(b)に示すように、元ガラス板G1の第二主表面Sbの少なくとも一部にマスクMを形成して膜付ガラス板G2を得る工程である。マスクMは、後述のイオン交換工程において、元ガラス板G1表層のイオン交換を行う際にイオンの透過を抑制する膜層である。
図2(b)及び図4に示すように、マスクMは、第二主表面Sbの中央部Sb1を被覆し、第二主表面Sbの周縁部Sb2を露出させるように形成される。なお、第二主表面Sbの周縁部Sb2は、膜付ガラス板G2(元ガラス板G1)の周端部Eから数mm〜数十mmの範囲における第二主表面Sbの一部分である。
第二主表面Sbの周縁部Sb2は、中央部Sb1の周囲を囲むように環状に構成される。第二主表面Sbが長方形状である場合には、周縁部Sb2もこの形状に応じて長方形状(矩形の環状)に構成される。
図2(b)及び図4に示すように、マスクMは、第二主表面Sbの面内に位置している。マスクMは、第二主表面Sbの形状に対応するように長方形状に構成される。マスクMの面積は、第二主表面Sbの面積よりも小さく、かつ第一主表面Saの面積よりも小さく設定されるが、これに限らず、第一主表面Saの面積より大きく設定されてもよい。
図4に示すように、マスクMの短辺と第二の面S2の短辺との間隔W1(周縁部Sb2の短辺部分の幅)は、マスクMの長辺と第二の面S2の長辺との間隔W2(周縁部Sb2の長辺部分の幅)と等しい。これに限らず、これらの間隔W1、W2が異なるようにマスクMを構成してもよい。
マスクMの材質としては、イオン交換されるイオンの透過を抑制可能であれば任意の材質を用いて良い。交換されるイオンがアルカリ金属イオンである場合、マスクMは、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、金属炭窒化物膜などであることが好ましい。また耐熱性や化学的耐久性に優れた炭素材料や金属、合金もマスクMとして使用可能である。より詳細には、マスクMの材質としては、例えば、SiO2、Al2O3、SiN、SiC、Al2O3、AlN、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、HfO2、SnO2、カーボンナノチューブ、グラフィン、ダイヤモンドライクカーボン、ステンレスの中から一種類以上を含む膜とすることができる。
特にSiO2をマスクMの主成分とすれば、安価且つ容易にマスクMを形成できる。マスクMは、SiO2のみから成る膜として良い。具体的には、マスクMは質量%でSiO2を99%以上含有する組成を有するものとして良い。
マスクMの厚さは、イオン透過の抑制が可能であれば任意の厚さであって良い。ただし、マスクMの厚さが過大であると、成膜時間や材料コスト等が増大するため、イオン透過の抑制が可能な範囲で薄く形成することが好ましい。具体的には、マスクMの膜厚は、例えば1〜5000nmが好ましく、より好ましくは40〜1000nmである。
マスクMの成膜方法は、スパッタ法や真空蒸着法などのPVD法(物理気相成長法)、熱CVD法やプラズマCVD法などのCVD法(化学気相成長法)、ディップコート法やスリットコート法などのウェットコート法を用いることができる。特にスパッタ法、ディップコート法が好ましい。スパッタ法を用いた場合、厚さが均一なマスクMを容易に形成できる。マスクMの成膜箇所は任意の手法で設定して良い。また、予めシート状に成形したマスクMを元ガラス板G1の第二主表面Sbに接合して成膜しても良い。
なお、本実施形態においてマスクMはイオン交換されるイオンの透過をある程度許容し得るものであるが、別の実施形態においてマスクMはイオンの透過(イオン交換)を完全に遮断するものとしても良い。
上記マスク工程の後、図2(c)(d)に示すイオン交換工程の処理を実施する。イオン交換工程は、膜付ガラス板G2をイオン交換法により化学強化して強化ガラス板G3を得る工程である。具体的には、アルカリ金属イオンを含む溶融塩Tに膜付ガラス板G2を浸漬してイオン交換を行う(図2(c)参照)。本実施形態における溶融塩Tは、例えば、硝酸カリウム溶融塩であるが、ガラスのイオン交換に用いられる周知の溶融塩を用いて良い。この溶融塩Tは、水と混合して濃度を20質量%の水溶液とした場合のpHが6.5以上10以下とされることが好ましい。水溶時pHは、例えば、溶融塩を一旦冷却固化し、粉砕し、計量して、上記水溶液とすることにより測定できる。
イオン交換工程における溶融塩Tの温度は任意に定めて良いが、例えば、350〜500℃、好ましくは370〜480℃、より好ましくは380〜450℃、さらに好ましくは380〜400℃である。また、膜付ガラス板G2を溶融塩T中に浸漬する時間は任意に定めて良いが、例えば、0.1〜150時間、好ましくは0.3〜100時間、より好ましくは0.5〜50時間である。また、溶融塩は強化処理を行うガラス中に含まれる代表的なアルカリ金属よりもイオン半径が大きいアルカリ金属からなる硝酸塩を含んだ溶融塩が好ましく、例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウムのいずれかあるいはその両方を含んでも良い。また、強化処理は一回または複数回行われても良く、例えば異なる組成を持つ溶融塩で多段階の強化処理を行うことによって、ガラス板肉厚方向の任意の位置において選択的に圧縮応力の大きさを制御しても良い。
イオン交換工程では、膜付ガラス板G2の表面のナトリウムイオンと溶融塩T中のカリウムイオンとが交換される。これにより、表面に圧縮応力層CP1,CP2を有する強化ガラス板G3が得られる。ここで、膜付ガラス板G2のうち、マスクMが設けられた第二主表面Sbの中央部Sb1は、元ガラス板G1の表面が露出した部位(第一の面S1及び第二の面における周縁部Sb2)に比べてイオン交換が抑制される
また、イオン交換工程では、時間の経過とともにマスクMが溶融塩T中で徐々に除去される(図2(d)参照)。例えばマスクMがSiO2を主成分とするものである場合、溶融塩T中の水酸化物イオンが、SiO2膜におけるSi−Oの共有結合を破壊することで、マスクMは、時間の経過とともにその膜厚が徐々に減少する。所定時間経過後に、イオン交換工程が終了し、強化ガラス板G3が溶融塩Tから取り出される。このとき、マスクMは、強化ガラス板G3の第二主表面Sbに残存しておらず、溶融塩T中で全て除去されている(図2(e)参照)。すなわち、マスクMは溶融塩T中に溶解する材質で構成されることが好ましい。このような構成によれば、イオン交換工程後にマスクMを除去する工程を省略できる。また、マスクMの成膜時に不要な箇所へマスクMが意図せず付着した場合であっても、当該不要なマスクMを良好に除去できる。
図2(e)に示すように、強化ガラス板G3は、第一の面S1、及び第二の面S2(第二主表面Sb)の周縁部Sb2に、層深さ(符号DOL1で示す)が大きな第一圧縮応力層CP1を有する。また、強化ガラス板G3は、マスクMが形成されていた第二主表面Sbの中央部Sb1に、層深さ(符号DOL2で示す)が小さな第二圧縮応力層CP2を有する。各圧縮応力層CP1,CP2の層深さDOL1,DOL2は、100μm以上に設定されることが好ましい。
以上のように、本実施形態に係る強化ガラス板G3の製造方法では、第一の面S1と第二の面S2とが非対称に構成される元ガラス板G1に対し、第一主表面Saよりも面積の大きな第二主表面SbにマスクMを形成することで、イオン交換法による強化を行った場合における強化ガラス板G3(膜付ガラス板G2)の変形を可及的に小さくすることが可能になる。
図5は、マスクMを形成しない元ガラス板G1を溶融塩Tに浸漬させた場合の変形の状態を示す。この場合、元ガラス板G1は、時間の経過とともに、実線で示す状態から二点鎖線で示す状態へと変形する。この変形は、第二の面S2の第二主表面Sbの面積が第一の面S1の第一主表面Saの面積よりも大きいため、イオン交換時における第二主表面Sbの圧縮応力層に因る変形が第一主表面Saの変形よりも大きくなるためであると推察される。本実施形態では、相対的に面積の大きな第二主表面Sbにイオン交換抑制膜によるマスクMを形成することで、第二主表面Sbにおけるイオン交換が第一主表面Saよりも抑制される。これにより、第一主表面Saと第二主表面Sbとの変形を均衡させることができ、膜付ガラス板G2の全体としての変形を可及的に低減できる。これにより、変形量が極めて小さく寸法精度の高い強化ガラス板G3を製造できる。
なお、本実施形態の場合、第一主表面Saの面取り面Cや第二主表面Sbの周縁部Sb2に比べ、第一主表面Sa及び第二主表面Sbの面積が大きいため、イオン交換時において面取り面C及び周縁部Sb2に形成される第一圧縮応力層CP1が膜付ガラス板G2の変形(反り)に与える影響は、第一主表面Sa及び第二主表面Sbに形成される圧縮応力層のそれに比べて極めて小さいものと考えられる。したがって、本実施形態では、各主表面Sa,Sbのうち、第二主表面Sbの中央部Sb1にマスクMを形成するのみで、膜付ガラス板G2の変形を効果的に抑制できる。
さらに、本方法では、イオン交換工程において溶融塩TによってマスクMが全て除去される。したがって、イオン交換工程後にマスクMを除去する作業を要しない。これにより、強化ガラス板G3を効率良く製造できる。
なお、強化ガラス板の変形量(反り量)は、400μm以下とされ、より好ましくは350μm以下、最も好ましくは250μm以下とされる。
図6及び図7は、強化ガラス板の製造方法の第二実施形態を示す。図6に示すように、本実施形態に係る強化ガラス板G3の製造方法は、準備工程、マスク工程、イオン交換工程に加え、マスク除去工程を備える。
上記の第一実施形態では、イオン交換工程においてマスクMを溶融塩T中で全て除去していたが、本実施形態では、イオン交換工程(図7(c)参照)後にマスクMが残存した状態の強化ガラス板G3を溶融塩Tから取出し、マスク除去工程を実施する。図7(d)に示すように、マスクMは砥石等の研磨具Pによって除去されるが、これに限らず、エッチングその他の手段により除去され得る。マスクMは、イオン交換工程において徐々に取り除かれ、イオン交換工程後には、その膜厚が減少している。したがって、マスク除去工程では、このマスクMを迅速かつ容易に除去できる。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、長方形状の元ガラス板G1及び強化ガラス板G3を例示したが、これに限らず、楕円状、円形、多角形状その他の各種形状の強化ガラス板を採用できる。元ガラス板G1及び強化ガラス板G3は、上記の構成に限定されず、例えば第一主表面Saから第二主表面Sbに貫通する孔を有する構成であっても良い。
マスクMは、長方形状に限らず、元ガラス板G1に応じて各種形状に構成され得る。また、上記の実施形態において、マスクMは第二主表面Sbの周縁部Sb2を露出させるように構成されていたが、これに限らず第二主表面Sbの全面をマスクMによって被覆しても良い。
上記の実施形態では、第二の面S2を第二主表面Sbのみにより構成した元ガラス板G1を示したが、これに限定されない。元ガラス板G1の第二の面S2は、第二主表面Sbの他、この第二主表面Sbにおける中央部の周囲を囲むように形成される面取り面を備えてもよい。この面取り面は、第一の面S1における面取り面Cと同様に各種形状により構成される。
以下、本発明に係る実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。本発明者等は、本発明の効果を確認するための試験を行った。試験では、本方法により製造した実施例1〜5及び比較例1〜4について、その変形量(反り)を測定した。
実施例1〜5、比較例1〜4として、縦130mm、横65mm、厚さ0.75mmの長方形状の元ガラス板を用いた。実施例1〜5では、元ガラス板に異なる膜厚のイオン透過抑制膜(マスク)を形成して膜付ガラス板を形成した。イオン透過抑制膜として、SiO2を主成分として99.5質量%以上含有するものを使用した。実施例1〜5では、膜付ガラス板を、水と混合して濃度を20質量%の水溶液とした場合のpH値を一定(pH6.8,7.1,8.9)に調整した溶融塩(硝酸カリウム)に一定時間(四十八時間)浸漬して、強化ガラス板を製造した。実施例1〜5に係る強化ガラス板では、溶融塩中でイオン透過抑制膜を全て除去した。また、同じ構成の溶融塩に、イオン透過抑制膜を有しない比較例1〜4に係る元ガラス板を一定時間(四十八時間)浸漬して強化ガラス板を製造した。
強化後に実施例1〜5、比較例1〜4に係る強化ガラス板を溶融塩から取出し、その反り量を測定した。反り量は、強化ガラス板における第二の面を定盤に載置した後、定盤と第二の面との間に生じる隙間に隙間ゲージを差し込むことにより測定した。各例とも五枚の強化ガラス板を用意し、一枚の強化ガラスに対して八点(四点の角部、四点の辺中央部)の隙間を測定し、八点の測定値中の最大値を一枚の強化ガラス板の反り値として採用する。これにより得られた五枚の反り値の平均値を表1に示す反り値として表記している。
また、得られた強化ガラス板の第一主表面の圧縮応力層(CP1)の深さDOL1および、該圧縮応力層における最大の圧縮応力値CS1を測定した。同様に、第二主表面の圧縮応力層(CP2)の深さDOL2および、該圧縮応力層における最大の圧縮応力値CS2を測定した。CS1、CS2、DOL1、およびDOL2は、応力計(折原製作所製のFSM−6000LEおよびFsmXP)で測定した。各測定値を表1に示す。
表1に示すように、比較例1,2に係る強化ガラス板は、変形量(反り量)が650μmに達し、比較例4に係る強化ガラス板は、変形量が467μmに達したのに対し、実施例1〜5の変形量はいずれも400μm以下であり、イオン透過抑制膜がイオン交換工程中に元ガラス板の変形(反り)を効果的に抑制することを確認した。また、比較例3に示す通り、浸漬時間が短い場合にはイオン透過抑制膜を設けずとも反りを小さく抑制可能であるが、十分な深さの圧縮応力層を得られない。これに対し、本発明の実施例は何れも、十分な深さ(100μm以上)の圧縮応力層を得つつ、反りの低減を両立できる。
G1 元ガラス板
G2 膜付ガラス板
G3 強化ガラス板
M マスク
S1 第一の面
S2 第二の面
Sa 第一主表面
Sb 第二主表面
T 溶融塩
G2 膜付ガラス板
G3 強化ガラス板
M マスク
S1 第一の面
S2 第二の面
Sa 第一主表面
Sb 第二主表面
T 溶融塩
Claims (7)
- 第一主表面を有する第一の面と、第二主表面を有する第二の面とが非対称に構成される元ガラス板に、イオン交換による化学強化処理を施して強化ガラス板を製造する方法において、
前記第二主表面は、前記第一主表面よりも面積が大きく設定されており、
前記第二主表面にイオンの交換を抑制するマスクを形成するマスク工程と、前記マスク工程後に、前記マスクが形成された前記元ガラス板を、前記イオン交換を行うための溶融塩に浸漬させるイオン交換工程と、を備え、
前記イオン交換工程は、前記溶融塩により前記マスクの少なくとも一部を除去することを特徴とする、強化ガラス板の製造方法。 - 前記イオン交換工程は、前記溶融塩により前記マスクの全部を除去する、請求項1に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記マスクは、SiO2を主成分として含む、請求項1又は2に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記溶融塩は、水に溶解させて20質量%の水溶液としたときのpHが6.5以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記第一主表面および前記第二主表面が何れも平坦面である、請求項1から4のいずれか一項に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 第一主表面を有する第一の面と、第二主表面を有する第二の面とが非対称に構成される強化ガラス板において、
前記第二主表面の面積は、前記第一主表面の面積よりも大きく設定されており、
前記第一主表面は、第一圧縮応力層を有し、
前記第二主表面は、第二圧縮応力層を有し、
前記第二圧縮応力層の層深さが、前記第一圧縮応力層の層深さよりも小さいことを特徴とする、強化ガラス板。 - 前記第一圧縮応力層および前記第二圧縮応力層各々の深さが100μm以上であることを特徴とする、請求項6に記載の強化ガラス板。
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- 2017-03-30 JP JP2017067814A patent/JP2018168030A/ja active Pending
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