JP5922254B2 - 機能部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、機能部品の製造方法に係り、微細な凹凸パターンまたは貫通孔をエッチングによりガラス基板に形成する方法を用いたMEMS、マスクブランク、バイオチップなどの機能部品または中間体等の製造に用いて好適な技術に関する。
本願は、2012年11月21日に日本に出願された特願2012−255742号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の分野では、シリコンウェハへ微細なパターン加工が中心であったが、DNA(deoxyribonucleic acid)チップに代表されるようなバイオ関係を中心にガラス基板への微細なパターン加工が要求されるようになってきた。
ガラス基板に微細な凹部を形成するために、ガラス基板上にマスクを形成してエッチングし、所望の凹部を形成する方法としては、特許文献1のように、ガラス基板上に、複数の膜でマスクを形成して、凹部をエッチングする方法が提案されている。
また、DNA、タンパク質等のバイオ分子やこのバイオ分子を有する細胞を内部に固定するための貫通孔が、ガラス基板の厚さ方向に貫通したバイオチップや、半導体デバイスの製造工程において、半導体チップと実装基板とを電気的に接続するために、半導体チップと実装基板との間にインターポーザを配置することが知られている(例えば、特許文献2参照)。ここで、インターポーザには、その厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられており、この貫通孔に金属材料を充填したり、貫通孔内面に金属膜を形成したりしてビアコンタクトが形成され、このビアコンタクトを介して半導体チップと実装基板とが電気的に接続される。この場合、上記従来例では、インターポーザを構成する基板としてガラス基板を用いることが開示されている。
このように、ガラス基板は、特定用途向けまたはデバイスの微細化に対応するために好ましく用いられる。ガラス基板に貫通孔を形成する方法としては、以下のものが知られている。
たとえば、ガラス基板の一方の面にレジストパターンを形成し、ガラス基板の他方の面に保護膜を形成し、レジストパターン越しにガラス基板をその一方の面からウェットエッチングすることによりテーパ状の貫通孔を形成する。あるいは、同様の方法を用いて、ガラス基板の一方の面から略中間位置まで先細りのテーパ状の孔を形成した後、同様にガラス基板の他方の面から略中間位置まで先細りのテーパ状の孔を形成する。このようにガラス基板の両面から形成された孔が連通して貫通孔が形成される。
ガラス基板に対するフッ酸系のエッチャントによるウェットエッチングにおいて金属マスク材料としてクロム(Cr)が用いられる。(特許文献3)
日本国特許第3788800号公報 日本国特開2010−70415号公報 日本国特開2008−307648号公報
しかし、ガラス基板に対するフッ酸系のエッチャントによるウェットエッチングにおいてクロム膜を用いた場合、浅い溝などの短時間のエッチングにおいてはクロム膜はエッチャントに対して十分に耐えうるが、深い溝や貫通孔などを形成する際の長時間のエッチングを行った場合、クロム膜がフッ酸系エッチャントにより腐食して耐性が劣化してピンホールの原因となる。最悪の場合はクロム膜が完全に溶解してしまう。また、クロム膜の微小なピンホールがガラス基板表面における欠陥の原因となる場合は、短時間のエッチングでも腐食によるクロム膜へのダメージがピンホールによる欠陥の発生原因となる。
そこで、従来は特許文献1のように、クロム膜の上に金などにより耐蝕性に優れる金属を重ねて成膜するなどの対策が取られて来た。しかしながら、この方法では、金などの貴金属は高価である上、成膜回数の増加、金属種に合わせたマスク膜のエッチングが必要でプロセスが煩雑になる。そのため、作業工数が増加するとともに作業時間が増大してコストを上げる原因となるため改善したいという要求があった。
さらに、長時間のエッチングにおいて複数層のマスクを用いた場合、500〜5000cm程度の大面積を有するガラス基板に、深さ50μm程度の孔を多数形成する場合など、ガラス基板の面内方向で、各孔の深さ寸法、径寸法などのバラツキが出てしまうという問題があった。この問題は、複数層からなるマスクの膜厚が数μ〜数十μmと大きくなることに起因する処理中の孔の内部におけるエッチャント供給の不均一性と関係すると思われる。この問題は、貫通孔の形成および貫通していない孔の形成処理のいずれにおいても発生しており、これを解決したいという要求があった。
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、長時間処理が可能で歩留まりを向上することができる面内均一性を維持可能なガラス基板のエッチング方法を用いた、機能部品の製造方法を提供する。
後述する本発明の機能部品の製造方法は、次のエッチング方法およびマスクを用いる。なお、以下では、エッチング方法のことを第1実施形態、マスクのことを第2実施形態とも呼ぶ。
本発明のエッチング方法は、ガラス基板上に、少なくともクロム及び窒素を含む膜を有するマスクを形成し、フッ酸系エッチャントを用いてエッチングを施す。
本発明のエッチング方法において、前記マスクは主成分としてクロムを含み、前記マスクは15atom%以上、39atom%未満の窒素を含んでいてもよい。
本発明のエッチング方法において、前記膜は、X線回折にてブロードなハローパターンを示し、回折ピークを有さなくてもよい。
本発明のエッチング方法において、前記エッチングによって前記ガラス基板に形成される凹部の深さは10〜500μmに設定されてもよい。
本発明のエッチング方法において、前記マスクの平均厚さは、5〜500nmであってもよい。
本発明のマスクは、フッ酸系エッチャントを用いたエッチングにおいて、前記エッチャントとガラス基板との間に配置され、少なくともクロム及び窒素を含む膜を有する。
本発明のマスクは、主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含んでいてもよい。
後述する本発明の機能部品の製造方法により、以下に述べる機能部品が提供される。なお、以下では、機能部品のことを第3実施形態とも呼ぶ。
本発明の機能部品は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、少なくともクロム及び窒素を含む膜と、を含む。
なお、量産性の観点で安定して本性能を発揮させるために、本発明の機能部品において、前記膜は、主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含んでいてもよい。
本発明の機能部品の製造方法は、少なくとも、クロム及び窒素を含む膜を有するマスクをガラス基板上に形成し、前記ガラス基板表面にフッ酸系エッチャントを用いてエッチングを施し、10〜500μmの深さを有する孔または凹部を前記ガラス基板上に形成する機能部品の製造方法であって、前記膜は、主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む、ことを特徴とする。
本発明の機能部品の製造方法において、前記マスクは主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含んでいてもよい。
本発明の機能部品の製造方法において、前記マスクの平均厚さは、5〜500nmであってもよい。
なお、以下では、機能部品の製造方法のことを第4実施形態とも呼ぶ。


本発明の第一態様に係るエッチング方法によれば、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜を有することにより、クロム膜中に含まれる窒素の組成比を最適化して、クロム膜のフッ酸系エッチャントに対する耐性が向上し、金などの貴金属を用いなくても、ピンホールの発生が少ないガラスのウェットエッチングを可能とする。これにより、窒素を含有するクロム単層のマスクによって、処理中の孔内部へのエッチャント供給に影響を与えない膜厚で充分なエッチャント耐性を持つとともに、大面積のガラス基板に対しても処理の面内均一性を維持することが可能となる。
ここで、前記マスクの含む窒素の含有量が、上記の範囲(15atom%以上39atom%未満)外であると、エッチャントに対する耐性が劣化し、処理時間が長くなるに従ってピンホール(ピット)が発生するため好ましくない。
本発明の第一態様に係るエッチング方法では、湿式エッチング処理により表面に微細凹凸構造または貫通孔が形成されるガラス基板と、該ガラス基板の表面に積層配置される前記湿式エッチング処理のエッチングマスクと、を備えた積層構造体において、前記エッチングマスク(マスク)の主成分がクロムで、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む積層構造体を形成することができる。
本発明の第一態様に係るエッチング方法では、前記マスクが15atom%以上、39atom%未満の窒素を含むことができる。また、前記マスクが15atom%以上、37atom%以下の窒素を含むことができる。
本発明の第一態様に係るエッチング方法では、前記マスクが、上述した主成分がクロムで15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜以外の層を含む複数の層を有することができる。この際、前記マスクは、クロム以外の異種金属やレジストとなる材料から構成される層を有することができる。
さらに前記マスクは、クロム膜から構成される複数の層を有することができる。この際、クロム膜から構成される密着層、主層、反射防止層により構成され、主層が上述した主成分がクロムで15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜であってもよい。
本発明の第一態様に係るエッチング方法において、前記ガラスに形成される凹部の深さが10〜500μmに設定される手段や、前記マスクの平均厚さは、5 〜 500nmである手段を採用することもできる。従来では面内均一性や処理の確実性が保証できない面広さ条件あるいは処理深さ条件の処理においても、本発明の第一態様に係るエッチング方法によれば、ピンホールの発生を防止しつつエッチャントへの耐性を処理の終了時間まで保持して、処理寸法の正確性を確保することができる。
なお、本発明の第一態様に係るエッチング方法において、マスクが有する膜は、窒素以外に、微量の炭素、微量の酸素も含有させることができ、耐フッ酸性においては微量であれば、大きな影響なく添加することが可能である。
また、本発明の第一態様に係るエッチング方法において、前記マスクは、X線回折にてブロードなハローパターンを有し鋭い回折ピークを有さない主成分がクロムである膜を有することにより上述したエッチング耐性を有する。
本発明の第二態様に係るマスクは、フッ酸系エッチャントを用いたエッチングにおいて、前記エッチャントとガラス基板との間に配置され、少なくとも主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜を有することが可能である。
本発明の第三態様に係る機能部品は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、少なくとも主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜を含むことで必要なエッチャント耐性を有することができる。
本発明の第四態様に係る機能部品の製造方法は、少なくとも、主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜を有するマスクをガラス基板上に形成し、前記ガラス基板表面にフッ酸系エッチャントを用いてエッチングを施し、10〜500μmの深さを有する孔または凹部を形成することにより処理寸法の正確性とピンホールの発生を防止することが可能となる。
上記本発明の各態様によれば、クロム膜中に含まれる窒素の組成比を最適化しクロム膜のフッ酸系エッチャントに対する耐性向上を図って、金などの貴金属を用いなくても、ピンホールの発生が少ないガラスのウェットエッチングが可能となるという効果を奏することができる。
本発明の第1実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第1実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第1実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第1実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第1実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第1実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を示す断面工程図である。 本発明の第2実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第2実施形態に係るエッチング方法を示す断面工程図である。 本発明の第3実施形態に係るエッチング方法におけるガラス基板表面を示す上面図である。 本発明に係るエッチング方法の実験例を示す写真である。 本発明に係るエッチング方法の実験例におけるXRDを示すグラフである。 本発明に係るエッチング方法の実験例におけるXRDとCr,CrNの回折ピークとを示すグラフである。
以下、本発明に係るエッチング方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1Aから図1Fは、本実施形態におけるエッチング方法を示す断面工程図であり、図において、符号10はガラス基板である。
本実施形態におけるエッチング方法においては、微細凹凸構造が形成されるガラス基板10の被加工面10Aを研磨して、研磨後のガラス基板10を洗浄する前処理工程と、ガラス基板10上にエッチングマスク11となるマスク材膜11Aを形成するマスク材膜形成工程と、マスク材膜11A上にレジストパターン12をパターン形成し、マスクとしてのレジストパターン12を介してマスク材膜11Aを部分的に除去してエッチングマスク11を得るエッチングマスク形成工程と、レジストパターン12およびエッチングマスク11をマスクとして用いた湿式エッチング処理によりガラス基板10に凹部10bを形成するガラスエッチング工程と、ガラス基板10上のエッチングマスク11を除去する除去工程と、を有している。
本実施形態のエッチング方法における前処理工程は、図1Aに示すように、微細凹凸構造が形成されるガラス基板10の被加工面10Aを研磨して、研磨後のガラス基板10を洗浄する。
この前処理工程において用意するガラス基板10の構成材料は、特に限定されない。例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、結晶性ガラス(例えば、ネオセラム等)、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウ珪酸ガラス(Schott製のテンパックスフロート)合成石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、低温陽極接合用ガラス(旭硝子株式会社製のSWシリーズ)、白板等、また純粋なSiOに近いガラスからSiO以外の不純物(添加物)を多く含むガラスまで、種々のガラスが挙げられる。
次いで、図1Aに示すように、例えば、研磨パッド50と、酸化セリウムを主成分とする研磨液とを用いてガラス基板10の被加工面10Aを研磨する。この研磨工程は0回から任意の複数回行うことができる。研磨処理後のガラス基板10を公知の洗浄方法を用いて洗浄し、基板面に付着した研磨液などを除去する。ガラス基板10の洗浄方法としては、洗剤を用いて洗浄した後、純水洗浄を施すのが一般的である。
マスク材膜形成工程においては、図1Bに示すように、ガラス基板10上にエッチングマスク11となるマスク材膜(マスク)11Aを形成する。このようにガラス基板10とマスク材膜11Aとで積層構造体30を構成する。
マスク材膜11Aは、主成分がクロムで、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む膜を主層として有する。マスク材膜11Aのクロム膜の平均厚さは、5 〜 500nm、例えば100〜300nmと設定することができる。
マスク材膜11Aとしてのクロム膜の成膜方法としては、量産性等を考慮して、スパッタリング法を用いることが好ましい。この場合、スパッタガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス及び二酸化炭素ガスの混合ガスを用いることが好ましく、所望の応力、反射率が得られるように、流量比を設定できる。特に膜中の窒素濃度が上記の範囲(15atom%以上、39atom%未満)となるように窒素ガス流量等の条件を設定する。なお、スッパッタリング装置としては、公知の構造を有する装置を用いることができる。成膜条件や装置構成についての詳細な説明は後述する。
エッチングマスク形成工程では、マスク材膜11A上にレジストパターン12をパターン形成し、マスクとしてのレジストパターン12を介してマスク材膜11Aを部分的に除去してエッチングマスク11を得る。
ここではまず、積層構造体30のマスク材膜11Aにレジストを塗布し、これを露光、現像処理することで、図1Cに示すように、開口部12aを有するレジストパターン12を形成する。次いで、図1Dに示すように、レジストパターン12をマスクとする湿式エッチング処理によりマスク材膜11Aを部分的に除去することで、レジストパターン12の開口部12aに通じる開口部11aをマスク材膜11Aに形成する。これにより、所定形状の平面パターンを有するエッチングマスク11を得る。
ガラスエッチング工程では、ガラス基板10上に形成されたエッチングマスク11およびレジストパターン12をマスクとし、フッ酸系のエッチャントを用いた湿式エッチング処理を行う。エッチング液としては、例えば、フッ酸を含むエッチング液(フッ酸系エッチング液)を用いることができる。フッ酸を含むエッチング液としては、特に限定されないが、目的とする処理速度が速い場合はフッ酸濃度を高く、処理速度が遅い場合はフッ酸濃度を低くすることが出来る。
この湿式エッチング処理では、レジストパターン12の開口部12aに連続するエッチングマスク11の開口部11aから等方的にガラス基板10のエッチングを進行させ、図1Eに示すように、開口部11aに対応する位置に断面半円型の凹部10bを形成する。ガラス基板10のエッチング処理にはフッ酸系のエッチャントを用いるのが一般的である。フッ酸系のエッチャントとしては、フッ酸、フッ酸と無機酸の混合液、フッ酸にフッ化アンモニウムを加えたBFH、を用いることができる。
除去工程では、図1Fに示すように、ガラス基板10上のエッチングマスク11およびレジストパターン12を、公知の剥離方法を用いて剥離すれば、第一の面に微細凹凸構造を構成する凹部10bが形成されたガラス基板を得ることができる。このガラス基板を、特定の機能部品(例えば、MEMS,DNAチップ等)として用いることもできる。
ここで、マスク材膜11Aの膜組成は主成分がクロムで、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含むように調整されて成膜されている。マスク材膜11Aのエッチャント耐性を調整するために、マスク材膜11Aに窒素を含有させる必要があるため、反応性スパッタリング法により成膜することが好ましい。この場合、マスク材膜11Aを成膜する際には、所定の組成(クロム)のターゲットを用い、スパッタリングガスとしてアルゴンなどの不活性ガスに窒素を添加すればよい。さらに、各種酸化窒素、各種酸化炭素などの酸素、窒素若しくは炭素などを含むガスを適宜添加することもできる。また、マスク材膜11Aの窒素濃度は、スパッタガス割合およびスパッタパワーを制御することで調整する。
また、本実施形態において、マスク材膜11Aは、X線回折にてブロードなハローパターンを示し回折ピークを有さない膜である。
クロムに窒素を含有させることで、耐フッ酸性能を一般に高くすることが可能である。
また、窒素含有雰囲気にてクロムをスパッタリングした場合、窒素含有量を制御することで、X線回折にてブロードなハローパターンを示し回折ピークを有さない状態(アモルファス状態)とさせることができる。この状態とさせることにより、結晶粒界を無くすことができるために、結晶粒界からの液のしみ込みがなくなり、耐フッ酸性能をより向上させることが可能となる。窒素を含有したアモルファス状態のクロム膜であれば、上記性能を発揮し、微量の炭素、酸素を含有しても十分な耐フッ酸性能の効果を有する。
本実施形態によれば、湿式エッチング処理により被加工面10Aに微細凹凸構造(凹部10b)が形成されるガラス基板10と、ガラス基板10の被加工面10Aに積層配置され、湿式エッチング処理のエッチングマスク11が形成されるマスク材膜11Aと、を備えた積層構造体30において、マスク材膜11Aを、窒素の添加されたクロムの単層膜で構成した。
このように構成したため、湿式エッチングによりガラス基板10に凹部10bを形成する際に、湿式エッチングが進行してもマスク材膜11A(エッチングマスク11)にピンホールが発生することがなくなる。したがって、ガラス基板10の被加工面10Aに形成される凹部10bのエッジ部に欠けなどの欠陥部が生じることなく所望の凹部10bを形成することができる。つまり、ガラス基板10に窒素含有クロム単層膜のマスク材膜11A(エッチングマスク11)を形成するだけで実現することができるため、構造を単純にすることができる。また、ガラス基板10の被加工面10Aに確実に凹部10bを形成することができるため、歩留まりを向上することができる。
また、マスク材膜11A(エッチングマスク11)を、クロムを主成分とする窒化膜で構成した。
このように、マスク材膜11Aを、クロムを主成分とすることで、ガラス基板10への密着性を高めることができる。また、マスク材膜11Aを窒化膜とすることでエッチャント耐性を向上し、凹部10bに対応する開口部11aを形成し易くすることができる。したがって、ガラス基板10の被加工面10Aにピンホールに起因する欠陥を形成することなく確実に凹部10bを形成することができ、歩留まりを向上することができる。
さらに、エッチングマスク11上に形成されているレジストパターン12を残置した状態で湿式エッチング処理を行った。
このように構成したため、エッチングマスク11にピンホールまたはピンホールになる異物などの欠陥があった場合にも、それらに起因するガラス基板10の凹部10bへの欠陥の発生をレジストパターン12により防止することができる。
本実施形態ではマスク材膜11Aを窒素含有クロム単層膜としたが、このクロム単層膜の表面に、さらにクロムを主成分とする酸化膜、窒化膜もしくは炭化膜、またはそれらの複合化合物のいずれかを有することができる。なお、この追加の積層膜としては、例えば、Ni,Mo,Ti,Al,Cu,Au,Ptなどの金属または合金を主成分とする酸化膜、窒化膜または酸窒化膜が積層されることもできる。特に、反射率を所望の範囲とするために、酸化膜を積層することができる。
本実施形態ではクロム膜のフッ酸系エッチャントに対する耐性向上に窒素ガスの添加が効果的であることを見いだし、クロム膜中に含まれる窒素の組成比を最適化した。これにより金などの貴金属を用いなくても、ピンホールの発生が少ないガラスのウェットエッチングが可能になる。被処理物としては、基板のように平坦な表面形状でないものでも適応することが可能である。
以下、本発明に係るエッチング方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図2Aから図2Cは、本実施形態におけるエッチング方法を示す断面工程図であり、図において、符号10はガラス基板である。
本実施形態のエッチング方法においては、ガラス基板の一方の面を上面とし、この上面に金属マスクを形成し、この金属マスク越しにガラス基板をその上面からウェットエッチングして貫通孔を形成する場合を例に説明する。
本実施形態におけるエッチング方法も、第1実施形態と同様に、前処理工程と、マスク材膜形成工程と、エッチングマスク形成工程と、ガラスエッチング工程と、除去工程と、を有している。
本実施形態のエッチング方法においては、第1実施形態と同様の範囲で窒素を含有するクロム膜(マスク材膜)11,13を、例えば100〜300nmの厚さでガラス基板10の上面10A及び下面10Bに、夫々成膜する(マスク材膜形成工程)。ガラス基板10の材料としては、第1実施形態と同様のものが挙げられる。クロム膜11,13の成膜方法としては、第1実施形態と同様、スパッタリング法を用いることが好ましい。
ところで、スパッタリング法によるクロム膜13の成膜速度はそれほど高くなく、クロム膜13の厚さを厚くすると生産性を低下させる。このことを考慮して、クロム膜13の厚さは上記範囲内で設定される。
次いで、クロム膜11の表面にレジストパターン12を形成する(マスク材膜形成工程)。レジストは例えば1〜3μmの厚さでスピンコート法により塗布される。この塗布したレジストに貫通孔形成用のパターンを露光し、現像液で現像することでレジストパターン12を形成する。そして、このレジストパターン12越しにクロム膜11をウェットエッチングしてパターニングすることにより、図2Aに示すように、クロムマスク11を形成する(エッチングマスク形成工程)。クロム膜11のエッチング液としては、例えば、硝酸セリウムアンモニウムを含むエッチング液を用いることができ、硝酸や過塩素酸等の酸を添加してもよい。
次いで、図2Bに示すように、クロムマスク11越しにガラス基板10をウェットエッチングする(ガラスエッチング工程)。エッチング液としては、フッ酸系のエッチング液を用いることができる。また、ガラス基板10の材料や所望するエッチングレートに合わせて、希釈したフッ酸、バッファードフッ酸(BHF)及び無機酸の混合液を用いることができる。ウェットエッチングを所定時間行うと、図2Cに示すように、ガラス基板10の厚さ方向に貫通する貫通孔10cが形成される。エッチング時間を調整することにより、ガラス基板下面10Bでの貫通孔10cの孔径dを制御できる。たとえば、ホウ珪酸ガラスなどの堅いガラス基板10をエッチングする場合には、処理速度0.3μm/minで処理時間5時間の条件において、100μmの深さを有する貫通孔10cを形成する。あるいは、ソーダガラスなどの柔らかいガラス基板をエッチングする場合には、処理速度1μm/minで処理時間5時間の条件において、300μmの深さを有する貫通孔10cを形成する。貫通孔10cが形成されると、その下部にクロム膜13が露出する。
この際、窒素含有クロム膜13はガラス基板10に対する密着性がよいため、上記露出したクロム膜13とガラス基板10との間にエッチング液が浸入し難く、ガラス基板10の下面10Bはその面方向(図中の横方向)にエッチングされない。このため、貫通孔10cはガラス基板1の上面10Aから下面10Bに向かって先細りのテーパ状の周壁部10dを有し、この周壁部10dをなす線が変曲点を持つことなく下面10Bに達する。即ち、ガラス基板1の貫通孔10の断面の途中に庇部が生じることを防止できる。
その後、レジストパターン12を剥離し、クロムマスク11及びクロム膜13をエッチング液に溶解させて除去する(除去工程)。これにより、貫通孔10c付きガラス基板10を製造できる。レジスト剥離液としては、公知のアルカリ系のレジスト剥離液を用いることができ、エッチング液としては、上記硝酸セリウムアンモニウムを用いることができる。
また、ガラス基板下面10Bでの貫通孔10cの孔径dが例えば、3mm以上に設定された場合には、ガラス基板10のエッチングが進行して貫通孔10cの底部に露出したクロム膜13がガラス基板下面10Bから剥がれて隙間が生じ、この隙間にエッチング液が染み込み、ガラス基板下面10Bが面方向にエッチングされ、貫通孔10の周壁に庇部が形成されることを防止するために、ガラス基板10のウェットエッチングに先立ち、ガラス基板10下のクロム膜13を保護する保護部材(保護膜)を設けることもできる。
この場合、保護部材は、レジスト12と同様の膜や、樹脂製の粘着保護フィルムでもよい。
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、貫通孔10cというより処理深さの深い構造を形成する処理、つまり、処理時間が長い処理においては、より一層のエッチャント耐性が求められるが、この場合であっても、良好な処理を行うことが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、金属膜11,13としては、エッチング耐性のよい窒素含有クロム膜を含んでいれば、ガラス基板10に対する密着性が高い膜又は少なくとも2種の金属膜を積層した積層膜を有することができる。例えば、Cr膜,Si膜,Ni膜から選択された1種の膜とAu膜との積層膜や、Cr膜とNi膜とAu膜との積層膜を用いることができる。また、貫通孔10c付きガラス基板10は、バイオチップやインターポーザ、またはそれ以外の用途にも当然に使用することができる。
以下、本発明に係るエッチング方法の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態におけるガラス基板を示す表面図であり、図において、符号10はガラス基板である。
本実施形態において上記の第1、第2実施形態と異なるのはガラス基板10の大きさおよび、形成される凹部10bの箇所のみであり、それ以外の対応する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態においては、ガラス基板10が、表面の大きさが1500cm以上、例えば、370mm×470mmの寸法であり、この表面10Aに、深さ50μmで径寸法10μmの凹部12bが多数設けられている。隣り合う凹部10bどうしの距離は1mm程度である。
本実施形態のマスク11は上記の第1、第2実施形態と同様のマスクである。
本実施形態においては、エッチャントが侵入してその内部を処理することが必要な凹部10bの形成においても、マスク11の厚さ寸法を薄くすることで、その深さ寸法のバラツキを1%以内とすることが可能である。
特に、長時間のエッチングにおいて、500〜5000cm程度の大面積を有するガラス基板に、マスク厚さ寸法の50〜500倍程度の深さ寸法を有する孔を多数形成する場合など、ガラス基板の面内方向で、各孔の深さ寸法、径寸法などのバラツキが出てしまうことを防止できる。
以下、本発明の実施例について説明する。
<実験例1>
ガラス基板としては硼珪酸ガラス(テンパックス:Schott社製)を使用した。ガラス基板を洗剤、純水を用いて洗浄後、DCスパッタリング法を用いて次の条件でクロム膜を成膜した。
スパッタガス:Ar/N = 86(sccm)/8(sccm)CDパワー:1.6kW
成膜されたクロム膜は膜厚が150.0nmでAESによる分析の結果、含まれるガス成分はO/C/N = 10atom%/6atom%/15atom%であった。
成膜されたクロム膜の上にポジ型感光性レジストを1μmの膜厚でスピンコーターで塗布した。次いで、感光性レジストを露光し、現像処理し、硝酸セリウムアンモニウムを主成分とするクロム用エッチング液でクロム膜をエッチングし、ガラスエッチング用マスクパターンを得た。前記ガラス基板をフッ酸を主成分とするガラスエッチング液に浸漬してその表面を1時間ごとに観察するとともに、5時間浸漬させた後の表面を観察した。
その結果を表1および図4の写真1に示す。
この結果から、5時間後でもピット(ピンホール)が発生しておらず、ガラスエッチング用マスク膜としてクロム膜は高い耐ガラスエッチャント耐性を示すことがわかる。
<実験例2>
ガラス基板としては硼珪酸ガラス(テンパックス:Schott社製)を使用した。同様に、基板洗浄後、DCスパッタリング法を用いて次の条件でクロム膜を成膜した。
スパッタガス:Ar/N = 71(sccm)/34(sccm)CDパワー:1.6kW
成膜されたクロム膜は膜厚が150.0nmでAESによる分析の結果、含まれるガス成分はO/C/N = 8atom%/7atom%/37atom%であった。成膜されたクロム膜の上にポジ型感光性レジストを1μmの膜厚でスピンコーターで塗布した。次いで、感光性レジストを露光し、現像処理し、硝酸セリウムアンモニウムを主成分とするクロム用エッチング液でクロム膜をエッチングし、ガラスエッチング用マスクパターンを得た。前記基板をフッ酸を主成分とするガラスエッチング液に浸漬してその表面を1時間ごとに観察するとともに、5時間浸漬させた後の表面を観察した。
その結果を表1および図4の写真2に示す。
この結果から、5時間後でもピット(ピンホール)が発生しておらず、ガラスエッチング用マスク膜としてクロム膜は高い耐ガラスエッチャント耐性を示すことがわかる。
<実験例3>
ガラス基板としては硼珪酸ガラス(テンパックス:Schott社製)を使用した。同様に、基板洗浄後、DCスパッタリング法を用いて次の条件でクロム膜を成膜した。
スパッタガス:Ar/N = 80(sccm)/0(sccm)CDパワー:1.6kW
成膜されたクロム膜は膜厚が150.0nmでAESによる分析の結果、含まれるガス成分はO/C/N = 20atom%/2atom%/2atom%であった。成膜されたクロム膜の上にポジ型感光性レジストを1μmの膜厚でスピンコーターで塗布した。次いで、感光性レジストを露光し、現像処理し、硝酸セリウムアンモニウムを主成分とするクロム用エッチング液でクロム膜をエッチングし、ガラスエッチング用マスクパターンを得た。前記基板をフッ酸を主成分とするガラスエッチング液に浸漬してその表面を1時間ごとに観察するとともに、5時間浸漬させた後の表面を観察した。
その結果を表1および図4の写真3に示す。
この結果から、1時間経過した状態でピット(ピンホール)が発生しており、2時間経過した状態でマスクとしての機能を果たさなくなっていた。さらに、5時間後にはクロム膜自体がほとんど剥離されてしまう程度に、このクロム膜はガラスエッチング液により著しい腐食が発生しており、耐ガラスエッチャント性は非常に劣っていたことがわかる。
<実験例4>
ガラス基板としては硼珪酸ガラス(テンパックス:Schott社製)を使用した。同様に、基板洗浄後、DCスパッタリング法を用いて次の条件でクロム膜を成膜した。
スパッタガス:Ar/N = 61(sccm)/51(sccm)CDパワー:1.7kW
成膜されたクロム膜は膜厚が150.0nmでAESによる分析の結果、含まれるガス成分はO/C/N = 8atom%/8atom%/39atom%であった。成膜されたクロム膜の上にポジ型感光性レジストを1μmの膜厚でスピンコーターで塗布した。次いで、感光性レジストを露光し、現像処理し、硝酸セリウムアンモニウムを主成分とするクロム用エッチング液でクロム膜をエッチングし、ガラスエッチング用マスクパターンを得た。前記基板をフッ酸を主成分とするガラスエッチング液に浸漬してその表面を1時間ごとに観察するとともに、5時間浸漬させた後の表面を観察した。
その結果を表1および図4の写真4に示す。
この結果から、2時間後にはピット(ピンホール)が発生していないが、3時間経過した状態でピットが発生しており、クロム膜が腐食され多数のピンホールが発生し、耐ガラスエッチャント性は劣っていたことがわかる。
上記の結果から、本願発明の主成分がクロムで15atom%以上、39atom%未満の範囲の窒素を含むスパッタ膜は、ガラス基板におけるエッチング処理において、エッチャント耐性がきわめて好ましいことがわかる。
また、上記の結果から、O/Cの含まれる割合がクロム膜のエッチャント耐性に影響を与えないことがわかる。
また、上記の実験例1〜4において、2θが20〜80°の範囲としたX線回折(XRD)をおこない、その結果を図5,6に示す。なお、図5において、実験例1〜4の強度は見やすいようにずらして表記してあるがピーク以外はほぼ同じ強度範囲となっている。
この結果から、本願発明の主成分がクロムの膜において、実験例1および2のピンホールの発生しなかった膜、つまり、耐HF性の高い窒素範囲では、XRDにおいてハローパターンが確認された。一方、実験例3および4のピンホールの発生した膜、つまり耐久性の劣る窒素範囲(15atom%以上、39atom%未満)外においては、以下のように、ピークが観測されていることがわかる。
特に、実験例3に示す窒素下限値(15atom%)未満では、Crの(1,1,0)面のピークが観測され、また、実験例4に示す窒素上限(39atom%)ではCrNの(1,1,0),(0,1,1)面が重なったピークが観測されていることがわかる。これらのCrの(1,1,0)面のピーク、および、CrNの(1,1,0),(0,1,1)面のピークを図6として実験例1〜4の下に示している。
なお、このように、本発明の耐HF性の高い窒素を含むクロム膜に対するXRDの結果として低角側でブロードなハローパターンが観測され、回折ピークを有さないことにより、本願発明者は、このクロム膜がアモルファスだと見なせると考えている。もちろん、厳密に定義するとなるとXRDだけでは難しいが、簡易的にはCr,あるいは、CrNの結晶に基づくピークを示さないことからこのクロム膜が充分アモルファスと見なせると考える。
10…ガラス基板 10A…表面 10b…凹部(微細凹凸構造) 10c…貫通孔 11、13…エッチングマスク 11A…マスク材膜 12…レジストパターン(レジスト膜) 30…積層構造体

Claims (3)

  1. 少なくとも、クロム及び窒素を含む膜を有するマスクをガラス基板上に形成し、
    前記ガラス基板表面にフッ酸系エッチャントを用いてエッチングを施し、
    10〜500μmの深さを有する孔または凹部を前記ガラス基板上に形成する機能部品の製造方法であって、
    前記膜は、主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む、ことを特徴とする機能部品の製造方法。
  2. 前記マスクは、主成分としてクロムを含み、15atom%以上、39atom%未満の窒素を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の機能部品の製造方法。
  3. 前記マスクの平均厚さは、5〜500nmである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の機能部品の製造方法。
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