JP2018052803A - 強化ガラス板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】主表面の周縁部に形成される圧縮応力層の一部に破壊が生じた場合に、その破壊が周縁部の全周に亘って伝播することを防止する。
【解決手段】強化ガラス板Gは、端面E及び主表面Sを有するとともに、主表面Sの周縁部S2に圧縮応力層C1,C2を有する。圧縮応力層C1,C2は、第一圧縮応力層C1と、層の深さDOL2が第一圧縮応力層C1より小さな第二圧縮応力層C2とを有する。第一圧縮応力層C1と第二圧縮応力層C2とは、周縁部S2の周方向に沿って交互に形成される。
【選択図】図1
【解決手段】強化ガラス板Gは、端面E及び主表面Sを有するとともに、主表面Sの周縁部S2に圧縮応力層C1,C2を有する。圧縮応力層C1,C2は、第一圧縮応力層C1と、層の深さDOL2が第一圧縮応力層C1より小さな第二圧縮応力層C2とを有する。第一圧縮応力層C1と第二圧縮応力層C2とは、周縁部S2の周方向に沿って交互に形成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、強化ガラス板およびその製造方法に関し、より具体的には、イオン交換法によって化学強化された強化ガラス板およびその製造方法に関する。
従来、スマートフォンやタブレットPCなどの電子機器に搭載されるタッチパネルディスプレイには、カバーガラスとして化学強化された強化ガラス板が用いられている。
このような強化ガラス板は、一般的に、アルカリ金属を組成として含むガラス板を強化液で化学的に処理し、表面に圧縮応力層を形成することによって製造される。このような強化ガラス板は、表面に圧縮応力層を有するために衝撃耐性等が向上している。しかしながら、このような強化ガラス板であっても、主表面における衝撃耐性に比べ、エッジ部や周縁部における衝撃耐性が低く、強化ガラス板の破損の原因となっていた。このような破損を防止するべく強化ガラス板表面の圧縮応力層を全体的に深くした場合、ガラス板内部に形成される引張応力が過大となり、当該引張応力に起因した破損(所謂、自己破壊)が生じやすくなる問題がある。
上記のような問題を解決すべく、強化ガラス板の表面の一部分においてのみ選択的に深く圧縮応力層を形成する技術が開発されている。例えば、特許文献1に開示される方法では、主表面の中央部分のみをマスク材料でシールディングすることによって、シールドされていない周縁部のみをイオン交換して強化処理(第一の強化処理)できる。その後シールディングを除去し、再度、強化処理(第二の強化処理)を行うことで、予め強化処理されたエッジ部において主表面より深く圧縮応力層を形成できる。
上記特許文献1に開示される技術により強化処理されてなる強化ガラス板の一例を図16に示す。強化ガラス板Gは、平面視において長方形状に構成されている。この強化ガラス板Gは、主表面Sの周縁部S2に層の深さが大きな第一圧縮応力層C1を有し、主表面Sの中央部S1に層の深さが小さな第二圧縮応力層C2を有する。第一圧縮応力層C1は、平面視において、主表面Sにおける周縁部S2の全周に亘って環状に構成されている。
上記の構成により、従来の強化ガラス板Gは、主表面Sの周縁部S2が中央部S1よりも強化され、耐衝撃性に非常に優れたものとなる。しかしながら、本発明者らは、さらなる研究を重ねた結果、この強化ガラス板の耐衝撃性に関し、以下のような問題点を見出した。
すなわち、第一圧縮応力層C1は、強化ガラス板Gの周縁部S2の全周に亘って途切れることなく連続的に形成されていることから、その一部に破壊が生じると、この破壊がその一部に留まることなく、他の部分にまで伝播し、第一圧縮応力層C1が全体的に破壊してしまい、周縁部S2の全周に亘って破壊が生じてしまうということが判明した。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、主表面の周縁部に形成される圧縮応力層の一部に破壊が生じた場合に、その破壊が周縁部の全周に亘って伝播することを防止できる強化ガラス板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、端面及び主表面を有するとともに、前記主表面の周縁部に圧縮応力層を有する強化ガラス板において、前記圧縮応力層は、第一圧縮応力層と、層の深さが前記第一圧縮応力層より小さな第二圧縮応力層とを有しており、前記第一圧縮応力層と前記第二圧縮応力層とは、前記周縁部の周方向に沿って交互に形成されてなることを特徴とする。
周縁部の周方向に第一圧縮応力層と第二圧縮応力層とを交互に形成すれば、第一圧縮応力層は、周縁部に対して不連続状に形成されることになる。したがって、一部の第一圧縮応力層に破壊が生じたとしても、この破壊が他の第一圧縮応力層に伝播することを防止できる。これにより、第一圧縮応力層に破壊が生じた場合に、その破壊が周縁部の全周に亘って伝播することを防止し、その破壊を最小限度に抑制することが可能になる。
また、本発明に係る強化ガラス板は、隅部を有する長方形状に構成されており、前記第一圧縮応力層は、前記隅部に対応する前記周縁部の一部に形成されてなることが望ましい。これにより、他の部位と比較して破壊を生じ易い隅部を保護することが可能になる。また、各隅部に対応する周縁部の一部に形成される第一圧縮応力層は、互いに繋がることなく不連続状に形成されているため、一部の第一圧縮応力層に破壊が生じた場合に、この破壊が他の第一圧縮応力層に伝播することを防止でき、強化ガラス板の破壊の範囲を最小限度に抑制できる。
また、本発明に係る強化ガラス板は、短辺部及び長辺部を有する長方形状に構成されており、前記第一圧縮応力層は、前記短辺部に対応する前記周縁部の一部に形成されてなることが望ましい。このように、短辺部に対応する周縁部の一部に第一圧縮応力層を形成することにより、この短辺部を強化できる。また、周縁部の一部の第一圧縮応力層に破壊が生じたとしても、その破壊が他の第一圧縮応力層に伝播することを防止できる。同様に、第一圧縮応力層は、強化ガラス板の長辺部に対応する周縁部の一部に形成されてもよい。
前記第一圧縮応力層の幅は、2mm以上20mm以下に設定されてなることが望ましい。かかる構成により、強化ガラス板に求められる耐衝撃性を十分に確保しつつ、第一圧縮応力層に破壊が生じた場合であっても、その破壊が周縁部の全周に及ぶことを防止できる。
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、端面及び主表面を有するとともに、前記主表面の周縁部に圧縮応力層を有する強化ガラス板を製造する方法において、前記圧縮応力層は、第一圧縮応力層と、層の深さが前記第一圧縮応力層より小さな第二圧縮応力層とを有しており、前記第一圧縮応力層と前記第二圧縮応力層とを、前記周縁部の周方向に沿って交互に形成することを特徴とする。
この方法によれば、周縁部の周方向に第一圧縮応力層と第二圧縮応力層とを交互に形成することで、第一圧縮応力層を、周縁部に対して不連続状に形成することができる。したがって、一部の第一圧縮応力層に破壊が生じたとしても、この破壊が他の第一圧縮応力層に伝播することを防止できる。これにより、第一圧縮応力層に破壊が生じた場合に、その破壊が周縁部の全周に亘って伝播することを防止し、その破壊を最小限度に抑制することが可能になる。
本発明によれば、主表面の周縁部に形成される圧縮応力層の一部に破壊が生じた場合に、その破壊が周縁部の全周に亘って伝播することを防止できる。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至図6は、本発明に係る強化ガラス板及びその製造方法の第一実施形態を示す。図1に示すように、強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されており、直線状の長辺部L1及び短辺部L2、並びに円弧状の隅部L3を有する。また、強化ガラス板Gは、表裏二面の主表面Sと、端面Eとを有する。主表面Sの周縁部S2には、化学強化処理による圧縮応力層C1,C2が形成されている。ここで、主表面Sの周縁部S2は、この主表面Sと端面Eとの境界部B1(図2参照)と、この境界部B1の近傍の主表面Sの一部を含む部分である。主表面Sは、強化ガラス板Gの形状に対応して長方形状に構成されており、これに応じて周縁部S2も長方形状に構成される。
強化ガラス板Gの板厚は、1.5mm以下であり、好ましくは1.3mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、特に0.1mm以下である。
圧縮応力層C1,C2は、第一圧縮応力層C1と、層の深さが第一圧縮応力層C1より小さな第二圧縮応力層C2とを含む。第一圧縮応力層C1と第二圧縮応力層C2とは、強化ガラス板Gの主表面Sの周縁部S2における周方向に沿って交互に形成されている。これにより、第一圧縮応力層C1は、周縁部S2の周方向に沿って不連続に形成される。
図1及び図2に示すように、第一圧縮応力層C1は、長方形状の強化ガラス板Gにおける各隅部L3に対応する四箇所に形成されている。第一圧縮応力層C1は、強化板ガラスの長辺部L1の端部に対応する第一直線部C1a、短辺部L2の端部に対応する第二直線部C1b、そして隅部L3に対応する湾曲部C1cを有する。第一直線部C1aと第二直線部C1bとは、同じ長さを有しており、湾曲部C1cを介して約90°の角度で交差する。湾曲部C1cは、第一直線部C1aと第二直線部C1bとの間でこれらを接続する。
第二圧縮応力層C2は、強化ガラス板Gの短辺部L2の中途部、及び長辺部L1の中途部に対応するように、主表面Sの周縁部S2に形成されている。また、第二圧縮応力層C2は、主表面Sの周縁部S2だけでなく、その中央部S1にも一体的に形成されている。
第一圧縮応力層C1の深さDOL1は、強化ガラス板Gの板厚の1/4以下とされることが望ましい。強化ガラス板Gの板厚が0.5mm以下である場合、第一圧縮応力層C1の深さDOL1は、好ましくは50μm以下、45μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、特に10μm以下である。一方、板厚が0.5mmより大きい場合、主表面の応力深さの上限範囲は、好ましくは100μm以下、80μm、60μm、50μm以下、45μm以下、特に35μm以下であり、下限範囲は、好ましくは5μm以上、10μm以上、15μm、以上、20μm以上、25μm以上、特に30μm以上である。
第二圧縮応力層C2の深さDOL2は、第一圧縮応力層C1の深さDOL1よりも小さく設定される(DOL2<DOL1)。また、第一圧縮応力層C1の深さDOL1と、第二圧縮応力層C2の深さDOL2との差は、30μm以上200μm以下(30≦DOL1−DOL2≦200)に設定されることが望ましいが、この範囲に限定されるものではない。第二圧縮応力層C2の深さDOL2は、強化ガラス板Gの板厚の1/8以下とされることが望ましい。
第一圧縮応力層C1の圧縮応力値(CS1)は好ましくは50MPa以上、100MPa以上、200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、特に500MPa以上である。第一圧縮応力層C1の圧縮応力値が大きい程、強化ガラス板による基板の機械的強度が高くなる。なお、第一圧縮応力層C1の圧縮応力値の上限は、好ましくは1000MPa未満、特に900MPa以下である。このようにすれば、内部引張応力が不当に上昇する事態を回避し易くなる。
第二圧縮応力層C2の圧縮応力値(CS2)は、200MPa以上1500MPaに設定され得る。
強化ガラス板Gにおいて、第一圧縮応力層C1よりも内側の部分における引張応力値(CT1)は、70MPa以上300MPa以下に設定され得る。強化ガラス板Gにおいて、第二圧縮応力層C2よりも内側の部分における引張応力値(CT2)は70MPa未満に設定され得る。なお、本発明において引張応力値CTは、圧縮応力値をCS、圧縮応力層の深さをDOL、ガラス板の厚みをtとした場合、下式(1)により求められる値である。
CT=(CS×DOL)/(t-2DOL) …(1)
CT=(CS×DOL)/(t-2DOL) …(1)
第一圧縮応力層C1は、一定の幅W1〜W3を有する帯状に形成される。ここで、「第一圧縮応力層の幅」は、強化ガラス板Gの表面方向において、端面Eから、第一圧縮応力層C1と中央部S1における第二圧縮応力層C2との境界部B2までの距離をいう。第一圧縮応力層C1は、第一直線部C1aの幅W1と、第二直線部C1bの幅W2と、湾曲部C1cの幅W3とが等しくなるように構成される。第一圧縮応力層C1の幅W1〜W3は、例えば2mm以上20mm以下とされるが、これに限定されず、強化ガラス板Gの寸法、板厚等の条件に応じて適宜設定され得る。また、各幅W1〜W3を異なる値に設定してもよい。
図1に示すように、隅部L3に対応するように形成される各第一圧縮応力層C1は、長辺部L1の側において、距離D1にて離間されている。また、各第一圧縮応力層C1は、短辺部L2の側において、距離D2にて離間されている。各距離D1,D2は、2mm以上、好ましくは20mm以上に形成されることが望ましいが、これに限定されず、強化ガラス板Gの寸法等に応じて適宜設定され得る。
以下、上記構成の強化ガラス板Gを製造する方法について図3乃至図6を参照しながら説明する。この製造方法は、元ガラスの準備工程と、元ガラス板の一部を選択的に強化する選択強化工程と、この選択強化工程後に、そのガラス板を全体的に強化する全体強化工程とを備える。
図3の(a)に示す準備工程は、元ガラス板G1を準備する工程である。元ガラス板G1は、イオン交換法を用いて強化可能な板状のガラス板である。元ガラス板G1は、ガラス板組成として質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 1〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜20%を含有することが好ましい。上記のようにガラス板組成範囲を規制すれば、イオン交換性能と耐失透性を高いレベルで両立し易くなる。
この元ガラス板G1の板厚は、例えば、1.5mm以下であり、好ましくは1.3mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6 mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、特に0 .1mm以下である。元ガラス板G1の板厚が小さい程、強化ガラス板Gを軽量化することでき、結果として、デバイスの薄型化、軽量化を図ることができる。なお、生産性等を考慮すれば元ガラス板G1の板厚は0.01mm以上であることが好ましい。元ガラス板G1の主表面Sの寸法は任意に設定可能であるが、例えば、480×320mm〜3350×3950mmである。元ガラス板G1の板厚及び主表面Sの寸法は、後の工程を考慮して、完成品である強化ガラス板Gの板厚及び主表面Sの寸法よりも大きく設定されることが望ましい。
元ガラス板G1は、例えば、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形されたものである。なお、元ガラス板G1の成形方法や加工状態は任意に選択しても良い。例えば、元ガラス板G1はフロート法を用いて成形され、主表面Sおよび端面Eは研磨加工されたものであっても良い。
次いで、上記準備工程の後、図3の(b)、(c)の選択強化工程の処理を実施する。選択強化工程は、元ガラス板G1の一部に設定した選択領域において、第一圧縮応力層C1を形成する処理を行う工程である。選択強化工程は、成膜工程、選択イオン交換工程、および膜除去工程を含む。
選択強化工程では、先ず、図3の(b)に示す成膜工程の処理を実施する。成膜工程は、元ガラス板G1の表面の少なくとも一部に設定された非選択領域にイオン透過防止膜Mを形成して膜付ガラス板G2を得る工程である。本実施形態では、元ガラス板G1の表裏主表面Sの中央部S1及び周縁部S2の一部S21を非選択領域とした場合を一例として説明する。また、この選択強化工程では、図4に示すように、元ガラス板G1の主表面Sのうち、周縁部S2の一部S22および端面Eを選択領域としており、これらをイオン透過防止膜Mによって被覆することなく、露出した状態とする。なお、図3の(b)では強調のために、イオン透過防止膜Mにクロスハッチングを付している(図3の(c)において同じ)。
イオン透過防止膜Mは、後述の選択イオン交換工程において、元ガラス板G1表層のイオン交換を行う際にイオンの透過を抑制または遮断する膜層である。イオン透過防止膜Mの材質としては、イオン交換されるイオンの透過を抑制または遮断可能であれば任意の材質を用いて良い。交換されるイオンがアルカリ金属イオンである場合、イオン透過防止膜Mは、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、金属炭窒化物膜などであることが好ましい。また耐熱性や化学的耐久性に優れた炭素材料や金属、合金もイオン透過防止膜Mとして使用可能である。より詳細には、イオン透過防止膜Mの材質としては、例えば、SiO2、Al2O3、SiN、SiC、Al2O3、AlN、ZrO2、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、HfO2、SnO2、カーボンナノチューブ、グラフィン、ダイヤモンドライクカーボン、ステンレスの中から1種類以上を含む膜とすることができる。
特にSiO2をイオン透過防止膜Mの主成分とすれば、安価且つ容易にイオン透過防止膜Mを形成可能であり、反射防止膜としても機能し得るため、好ましい。イオン透過防止膜Mは、SiO2のみから成る膜として良い。具体的には、イオン透過防止膜Mは質量%でSiO2を99%以上含有する組成を有するものとして良い。
また、イオンの透過を確実に遮断する場合には、SiO2を主成分とし、Al2O3を含む膜をイオン透過防止膜Mとして用いることが好適である。この場合、イオン透過防止膜Mは、質量%でSiO2 20〜99%、Al2O3 1〜80%を含有する組成を有することが好ましい。
イオン透過防止膜Mの厚さは、イオン透過の遮断および抑制が可能であれば任意の厚さであって良い。ただし、イオン透過防止膜Mの厚さが過大であると、成膜時間や材料コスト等が増大するため、イオン透過の遮断および抑制が可能な範囲で薄く形成することが好ましい。具体的には、イオン透過防止膜Mの膜厚は、例えば1〜5000nmが好ましく、より好ましくは50〜4000nmである。
イオン透過防止膜Mは、元ガラス板G1の主表面Sのうち、隅部L3に対応する周縁部S2の一部S22を露出させるように形成される。すなわち、図4に示すように、イオン透過防止膜Mは、元ガラス板G1の中央部S1を被覆する第一マスク部M1と、元ガラス板G1の長辺部L1に対応する周縁部S2の一部S21を被覆する第二マスク部M2と、元ガラス板G1の短辺部L2に対応する周縁部S2の一部S21を被覆する第三マスク部M3とを有する。元ガラス板G1の主表面Sにおける露出部分S22には、後述する選択イオン工程において第一圧縮応力層C1が形成される。
イオン透過防止膜Mの成膜方法は、スパッタ法や真空蒸着法などのPVD法(物理気相成長法)、熱CVD法やプラズマCVD法などのCVD法(化学気相成長法)、ディップコート法やスリットコート法などのウェットコート法を用いることができる。特にスパッタ法、ディップコート法が好ましい。スパッタ法を用いた場合、イオン透過防止膜Mを容易に均一に形成できる。イオン透過防止膜Mの成膜箇所は任意の手法で設定して良い。例えば、選択領域(周縁部S2の一部S22及び端面E)をマスクした状態で成膜を行うことができる。また、予めシート状に成形したイオン透過防止膜Mを元ガラス板G1の主表面Sに接合して成膜しても良い。
なお、本実施形態では、SiO2およびAl2O3を含有し、膜厚が100nm以上であり、アルカリ金属イオンの透過を遮断可能なイオン透過防止膜Mを形成した場合を一例として説明する。
次いで、上記成膜工程の後、図3の(c)に示す選択イオン交換工程の処理を実施する。選択イオン交換工程は、膜付ガラス板G2をイオン交換法により化学強化して膜付強化ガラス板G3を得る工程である。具体的には、アルカリ金属イオンを含む溶融塩T1に膜付ガラス板G2を浸漬してイオン交換する。本実施形態における溶融塩T1は、例えば、硝酸カリウム溶融塩である。
選択イオン交換工程における溶融塩T1の温度は任意に定めて良いが、例えば、350〜500℃、好ましくは370〜480℃、より好ましくは380〜450℃、さらに好ましくは380〜400℃である。また、膜付ガラス板G2を溶融塩T1中に浸漬する時間は任意に定めて良いが、例えば、0.1〜150時間、好ましくは0.3〜100時間、より好ましくは0.5〜50時間である。
上記選択イオン交換工程では、膜付ガラス板G2の表面のうち、イオン透過防止膜Mが設けられていない非成膜領域、すなわち選択領域(周縁部S2の一部S22および端面E)においてガラス板中のナトリウムイオンと溶融塩T1中のカリウムイオンとが交換され、初期の第一圧縮応力層C1が形成される。一方、膜付ガラス板G2の表面のうち、イオン透過防止膜Mが設けられた周縁部S2の一部S21及び中央部S1では、イオンが遮断されるため、イオン交換が行われず、イオン透過防止膜Mに被覆されている部分には圧縮応力層が形成されない(図5参照)。以上により、イオン透過防止膜Mを有するとともに選択領域に第一圧縮応力層C1が形成されてなる膜付強化ガラス板G3を得る。
次いで、上記選択イオン交換工程の後、図3の(d)に示す膜除去工程の処理を実施する。膜除去工程は、膜付強化ガラス板G3からイオン透過防止膜Mを除去する工程である。具体的には、イオン透過防止膜Mを研磨によって除去する。研磨装置としては、周知の研磨装置を用いることができ、両面研磨装置を用いることが好ましい。
なお、研磨に限らず他の手法を用いてイオン透過防止膜Mを除去しても良い。例えば、エッチング液を付着させてイオン透過防止膜Mを除去しても良い。イオン透過防止膜MがSiO2を含有する膜である場合、例えば、フッ素、TMAH、EDP、KOH、NAOH等を含む溶液をエッチング液として用いることができ、特にフッ酸溶液をエッチング液として用いることが好ましい。なお、フッ酸溶液を用い、ガラスの寸法を変更することなくイオン透過防止膜Mのみを除去する場合には、当該フッ酸溶液におけるHFの濃度を10%以下とすることが好ましい。
上記膜除去工程の処理によりイオン透過防止膜Mを除去すると、平坦な主表面Sを有し、且つ、周縁部S2の一部S22および端面Eにおいて第一圧縮応力層C1を有する強化ガラス板G4を得る(図6参照)。上述の選択イオン交換工程においてイオン透過防止膜Mによりイオンの透過が完全に遮断されていた場合には、強化ガラス板G4の主表面Sにおける中央部S1及び周縁部S2の一部(図4において第二マスク部M2及び第三マスク部M3により被覆されていた部分S21)には化学強化処理が施されていない状態である。この場合、以下の全体強化工程を上記膜除去工程に次いで行うことによって、これらの部分に第二圧縮応力層C2を形成し、かつ第一圧縮応力層C1の深さをさらに大きくする。
全体強化工程は、図3の(e)に示すように、強化ガラス板G4の表面全体に溶融塩を接触させて表層のイオンを交換する工程である。具体的には、アルカリ金属イオンを含む溶融塩T2に強化ガラス板G4を浸漬してイオン交換し、その中央部S1及び周縁部S2においてイオン透過防止膜Mに被覆されていた部分S21において、第二圧縮応力層C2が形成される。さらに、第一圧縮応力層C1においてもイオン交換が行われ、その深さが大きくなる。なお、溶融塩T2は、例えば、硝酸カリウム溶融塩である。
全体強化工程における溶融塩T2の温度は任意に定めて良いが、例えば、350〜500℃、好ましくは370〜480℃、より好ましくは380〜450℃である。また、強化ガラス板G4を溶融塩T2中に浸漬する時間は任意に定めて良いが、例えば、0.1〜72時間、好ましくは0.3〜50時間、より好ましくは0.5〜24時間である。
溶融塩T2は、上述の溶融塩T1と同様のものであっても良い。すなわち、選択強化工程において用いた塩浴に強化ガラス板G4を再度浸漬して良い。この場合、単一の塩浴で複数工程の処理を行うことができるため、製造設備のコストを抑制できる。
また、溶融塩T2は、溶融塩T1とは異なるものであって良いし、全体強化工程における処理温度および処理時間は、選択イオン交換工程の処理温度および処理時間と異なっていて良い。例えば、全体強化工程におけるイオン交換の処理時間は、選択イオン交換工程における処理時間より短いことが好ましい。このような処理によれば、中央部S1及び周縁部S2の一部S21における第二圧縮応力層C2の深さが過剰になることがなく、引張応力の増加を抑制できる。
以上の全体強化工程により、主表面Sに、第一圧縮応力層C1と、層深さ(DOL2)が第一圧縮応力層C1より小さな第二圧縮応力層C2とを有する強化ガラス板Gを得る(図1参照)。
なお、全体強化工程の後、さらに仕上げ加工工程の処理を実施しても良い(図示せず)。仕上げ加工工程では、強化ガラス板Gの表面、例えば主表面Sおよび端面Eの少なくとも何れかを研磨加工する。全体強化工程の処理によって強化ガラス板Gの寸法や表面状態が製品規格等の所望の状態でない場合、このような仕上げ加工工程の処理を実施することによって所望の状態にすることができる。以上により、高い平坦性を有し且つ端面Eからの破損の少ない強化ガラス板Gを安定して効率良く製造できる。
以上説明した本実施形態に係る強化ガラス板G及びその製造方法によれば、第一圧縮応力層C1と第二圧縮応力層C2とを周縁部S2の周方向に交互に形成することにより、第一圧縮応力層C1を周縁部S2の周方向に不連続状に形成することが可能になる。これにより、一部の第一圧縮応力層C1に破壊が生じたとしても、この破壊が他の第一圧縮応力層C1に伝播することがなく、周縁部S2全体に破壊が及ぶことを確実に防止できる。
図7は、強化ガラス板の第二実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、その短辺部L2の全長に亘って第一圧縮応力層C1が形成されてなる。具体的には、第一圧縮応力層C1は、長辺部L1の端部、隅部L3、及び短辺部L2の全長に対応するように、周縁部S2に形成される。また、長辺部L1の中途部に対応するように、周縁部S2の一部に第二圧縮応力層C2が形成されている。これにより、周縁部S2には、短辺部L2に対応する部分と、長辺部L1に対応する部分とに、第一圧縮応力層C1と第二圧縮応力層C2とが、その周方向に交互に形成される。
図8は、強化ガラス板の第三実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、その長辺部L1、短辺部L2、及び隅部L3に対応する各所に第一圧縮応力層C1が不連続状に形成されている。本実施形態では、隅部L3側に形成される第一圧縮応力層C1の形状と、長辺部L1側及び短辺部L2側に形成される第一圧縮応力層C1の形状とが異なる。具体的には、隅部L3側に形成される第一圧縮応力層C1は、第二圧縮応力層C2との境界部B2が円弧状に形成されてなる。一方、長辺部L1側及び短辺部L2側に形成される第一圧縮応力層C1は、各辺部L1,L2に沿う長方形状に構成されてなる。
図9は、強化ガラス板の第四実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、その長辺部L1の全長に対応するように、周縁部S2の一部に第一圧縮応力層C1が形成されてなる。具体的には、強化ガラス板Gは、長辺部L1の全長、短辺部L2の端部及び隅部L3に対応して形成される第一圧縮応力層C1と、短辺部L2の中途部に別個に形成される長方形状の第一圧縮応力層C1とを有する。周縁部S2における各第一圧縮応力層C1の間には、第二圧縮応力層C2が形成されている。
図10は、強化ガラス板の第五実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、その長辺部L1、短辺部L2、及び隅部L3に対応する各所に第一圧縮応力層C1が不連続状に形成されている。本実施形態では、強化ガラス板G1の長辺部L1及び短辺部L2において、第二圧縮応力層C2との境界線が円弧状に構成される複数の第一圧縮応力層C1が第二圧縮応力層S2と交互に形成される。円弧状の境界を有する第一圧縮応力層C1は、隅部L3にも形成される。さらに、第一圧縮応力層C1は、主表面Sの周縁部S2だけでなく、中央部S1にも形成される。中央部S1に形成される第一圧縮層C1は、第二圧縮応力層C2との境界が円形に構成される。
図11は、強化ガラス板の第六実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、長辺部L1の周縁部S2、短辺部L2の隅部L3、及び中央部S1に、第二圧縮応力層C2との境界が四角形状に構成される第一圧縮応力層C1が第二圧縮応力層C2と交互に形成される。
図12は、強化ガラス板の第七実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、第一圧縮応力層C1との境界が直線状の第二圧縮層C2が中央部S1から周縁部S2に向かって放射状に形成される。これにより、強化ガラス板Gの周縁部S2では、第一圧縮応力層C1と第二圧縮応力層C2とが周方向に交互に形成されている。
図13は、強化ガラス板の第八実施形態を示す。本実施形態に係る強化ガラス板Gは、平面視長方形状に構成されるとともに、第一圧縮応力層C1との境界が円弧状又は円形状の複数の第二圧縮応力層C2が第一圧縮応力層C1と交互に形成される。円弧状又は円形状の第二圧縮応力層C2は、同心状に形成される。
本発明者は、本発明の効果を確認するための試験を実施した。この試験において、本発明者は、第一実施形態において例示した強化ガラス板を作製し、第一圧縮応力層を破壊した場合において、その破壊が当該強化ガラス板の周縁部の全周にわたって伝播するか否かを確認した。図14は、第一圧縮応力層に破壊を生じさせる前の強化ガラス板の応力分布を示す画像である。この画像は、強化ガラス板の一部を示し、長辺部L1の一部と、短辺部L2の一部と、隅部L3とを含む。図14に示すように、短辺部L及び隅部L3には、第一圧縮応力層C1が形成される。長辺部L1には、第一圧縮応力層C1と、第二圧縮応力層C2とが交互に形成されている。
試験では、強化ガラス板の短辺部L2に衝撃を加え、第一圧縮応力層C1を破壊した。その後、強化ガラス板をカメラにより撮影した。図15は、取得された強化ガラス板の画像を示す。図15に示すように、短辺部L2における第一圧縮応力層C1の破壊が長辺部L1に伝播していないことを確認した。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、平面視長方形状の強化ガラス板Gを例示したが、これに限定されず、正方形、多角形、円形その他の各種形状の強化ガラス板に本発明を適用できる。
上記の実施形態では、強化ガラス板Gを製造する場合に、選択強化工程及び全体強化工程により、ガラス板(G2、G4)を溶融塩T1と溶融塩T2とに二度浸漬させる例を示したが、これに限定されない。イオン透過防止膜Mとして、イオン透過を抑制するものを使用し、ガラス板(G2)を溶融塩T1に一度浸漬することによっても、本発明に係る強化板ガラスGを製造することが可能である。
上記の実施形態では、ナトリウムイオンとカリウムイオンとをイオン交換して化学強化する場合を例示したが、これに限らず、任意のイオンを交換することが可能である。例えば、リチウムイオンとナトリウムイオンのイオン交換、或いはリチウムイオンとカリウムイオンのイオン交換により強化ガラス板Gを製造してもよい。この場合、強化ガラス板Gは、組成として質量%でLiO2を0.5〜7.5%含有することが望ましく、より好ましくは3.0%、或いは4.5%のLiO2を含有する。
強化ガラス板の応力特性は、例えば折原製作所製FSM−6000を用いて測定することができる。アルミノシリケート系ガラスの圧縮応力層の深さが100μmを超える場合や、リチウムイオンとナトリウムイオンのイオン交換、或いはリチウムイオンとカリウムイオンのイオン交換を行った場合は、強化ガラス板の応力特性は、例えば折原製作所製SLP−1000を用いて測定することができる。強化ガラス板を切断する等して断面試料を作製できる場合は、例えばフォトニックラティス社製WPA−microや東京インスツルメンツ社製Abrioを用いて内部応力分布を観測し、応力深さを確認することが望ましい。
C1 第一圧縮応力層
C2 第二圧縮応力層
E 端面
G 強化ガラス板
L1 長辺部
L2 短辺部
L3 隅部
S 主表面
S1 中央部
S2 周縁部
M イオン透過防止膜
C2 第二圧縮応力層
E 端面
G 強化ガラス板
L1 長辺部
L2 短辺部
L3 隅部
S 主表面
S1 中央部
S2 周縁部
M イオン透過防止膜
Claims (6)
- 端面及び主表面を有するとともに、前記主表面の周縁部に圧縮応力層を有する強化ガラス板において、
前記圧縮応力層は、第一圧縮応力層と、層の深さが前記第一圧縮応力層より小さな第二圧縮応力層とを有しており、
前記第一圧縮応力層と前記第二圧縮応力層とは、前記周縁部の周方向に沿って交互に形成されてなることを特徴とする、強化ガラス板。 - 隅部を有する長方形状に構成されており、
前記第一圧縮応力層は、前記隅部に対応する前記周縁部の一部に形成されてなる、請求項1に記載の強化ガラス板。 - 短辺部及び長辺部を有する長方形状に構成されており、
前記第一圧縮応力層は、前記短辺部に対応する前記周縁部の一部に形成されてなる、請求項1又は2に記載の強化ガラス板。 - 短辺部及び長辺部を有する長方形状に構成されており、
前記第一圧縮応力層は、前記長辺部に対応する前記周縁部の一部に形成されてなる、請求項1から3の何れか一項に記載の強化ガラス板。 - 前記第一圧縮応力層の幅は、2mm以上20mm以下に設定されてなる、請求項1から4の何れか一項に記載の強化ガラス板。
- 端面及び主表面を有するとともに、前記主表面の周縁部に圧縮応力層を有する強化ガラス板を製造する方法において、
前記圧縮応力層は、第一圧縮応力層と、層の深さが前記第一圧縮応力層より小さな第二圧縮応力層とを有しており、
前記第一圧縮応力層と前記第二圧縮応力層とを、前記周縁部の周方向に沿って交互に形成することを特徴とする、強化ガラス板の製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016185541 | 2016-09-23 | ||
JP2016185541 | 2016-09-23 |
Publications (1)
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Family
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Family Applications (1)
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JP2017173958A Pending JP2018052803A (ja) | 2016-09-23 | 2017-09-11 | 強化ガラス板およびその製造方法 |
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JP (1) | JP2018052803A (ja) |
-
2017
- 2017-09-11 JP JP2017173958A patent/JP2018052803A/ja active Pending
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