以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の空調装置は、車両のインストルメントパネルの内側に搭載される。この空調装置は、車室内または車室外から取り入れた空気の温度および湿度を調整し、その空気を車室内に設けられた複数の吹出口から車室内に吹き出すことにより車室内の空気調和を行うものである。また、この空調装置は、給水を必要とすることなく、車室内に設けられた所定の吹出口から乗員の顔などに向けて加湿風を吹き出すことも可能である。
図1〜図4に示すように、空調装置1は、空調ケース2、送風機3、冷却機器としてのエバポレータ4、加熱機器としてのヒータコア5および吸湿材6などを備えている。
空調ケース2は、空調装置1の外殻を構成している。空調ケース2は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えばポリプロピレン)により成形されている。空調ケース2の内側には、空気が流れる通風路10が形成されている。
空調ケース2の内側には、通風路10を、重力方向上側の上通風路11と、重力方向下側の下通風路12に仕切る仕切板13が設けられている。
空調ケース2は、通風路10の空気流れ方向の最上流側に、車室内空気(すなわち内気)を通風路10に導入するための内気導入口14と、車室外空気(すなわち外気)を通風路10に導入するための外気導入口15を有している。内気導入口14と外気導入口15は、空調ケース2とは別部材として構成された図示していないダクトに接続される。それらのダクトを介して、内気導入口14または外気導入口15から、上通風路11と下通風路12に空気が導入される。
内気導入口14と外気導入口15の近傍には、内外気切替部としての内外気切替ドア16が設けられている。内外気切替ドア16は、内気導入口14と外気導入口15とを開閉するものである。なお、内外気切替ドア16は、内気導入口14を開閉するためのドアと、外気導入口15を開閉するためのドアを別々に設けてもよい。
本実施形態の空調装置1は、内外気切替ドア16を所望の位置に回転させることにより、上通風路11と下通風路12に対して外気または内気を導入するための空調モードを切り替えることが可能である。この空調モードとして、外気モード、内気モード、および内外気2層モードが設定可能である。
外気モードでは、内外気切替ドア16により、外気導入口15を開放し、内気導入口14を閉塞する。このとき、外気導入口15と上通風路11と下通風路12とが連通する。これにより、上通風路11と下通風路12に外気が導入される。
内気モードでは、内外気切替ドア16により、外気導入口15を閉塞し、内気導入口14を開放する。このとき、内気導入口14と上通風路11と下通風路12とが連通する。これにより、上通風路11と下通風路12に内気が導入される。
内外気2層モードでは、内外気切替ドア16により、外気導入口15と内気導入口14の双方を開放する。このとき、外気導入口15と上通風路11とが連通し、内気導入口14と下通風路12とが連通する。これにより、上通風路11に外気が導入され、下通風路12に内気が導入される。なお、図1では、内外気2層モードが選択されたときの内外気切替ドア16の位置を示している。
空調ケース2の内側の通風路10には、送風機3が設けられている。送風機3は、第1遠心ファン31、第2遠心ファン32、および図示していない電動モータなどを有している。電動モータの駆動により、第1遠心ファン31と第2遠心ファン32が回転し、内気導入口14または外気導入口15から上通風路11と下通風路12に空気が導入される。第1遠心ファン31によって送風される空気は上通風路11を流れ、第2遠心ファン32によって送風される空気は下通風路12を流れる。
通風路10を流れる空気は、空調モードに応じて、空気流れ方向の最下流側に設けられたデフロスタ吹出開口部19、フェイス吹出開口部20、フット吹出開口部21、排気通路43または加湿風通路44のいずれかから吹き出される。なお、送風機3が有するファンは、遠心ファンに限らず、例えば、軸流ファンまたはクロスフローファンとしてもよい。
エバポレータ4は、通風路10を流れる空気を冷却する熱交換器である。エバポレータ4は、図示していない圧縮機、凝縮器および膨張弁などと共に蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成している。エバポレータ4は、その冷凍サイクルにおいて、膨張弁の下流側、且つ、圧縮機の上流側に配置されている。エバポレータ4が有する図示していないチューブの中を、膨張弁によって減圧されて気液二層状態となった冷媒が流れる。エバポレータ4のチューブの内側を流れる冷媒と、通風路10を流れる空気との熱交換により、通風路10を流れる空気が冷却される。
ヒータコア5は、エバポレータ4に対し、空気流れ方向の下流側に設けられている。ヒータコア5は、通風路10を流れる空気を加熱する熱交換器である。ヒータコア5が有する図示していないチューブの内側を温水(例えばエンジン冷却水)が流れる。ヒータコア5のチューブの内側を流れる温水と、通風路10を流れる空気との熱交換により、通風路10を流れる空気が加熱される。なお、ヒータコア5と共にPCTヒータなどを併設してもよい。
エバポレータ4とヒータコア5との間の通風路10には、2枚のエアミックスドア17が設けられている。エアミックスドア17はスライド式のフィルムドアであり、ギア18の回転により駆動される。エアミックスドア17は、エバポレータ4を通過した後にヒータコア5を迂回する風量と、エバポレータ4を通過した後にヒータコア5を通過する風量との割合を調整する。
空調ケース2は、通風路10の空気流れ方向の最下流側に、通風路10から車室内に空調風を送風するための複数の吹出開口部を有している。複数の吹出開口部は、デフロスタ吹出開口部19、フェイス吹出開口部20およびフット吹出開口部21などにより構成されている。
空調装置1が車両に搭載された状態において、デフロスタ吹出開口部19とフェイス吹出開口部20は、空調ケース2のうち、重力方向上側の部位に設けられている。フェイス吹出開口部20は、前座席に着座した乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すものである。フェイス吹出開口部20の近傍には、フェイスドア22が設けられている。フェイスドア22は、フェイス吹出開口部20を開閉する。フェイス吹出開口部20には、図示していないフェイスダクトが接続される。フェイスダクトは、フェイス吹出開口部20と、車室内に設けられた図示していないフェイス吹出口とを接続するダクトである。フェイスドア22がフェイス吹出開口部20を開くと、通風路10を流れる空調風は、フェイス吹出開口部20からフェイスダクトを通り、フェイス吹出口から前座席に着座した乗員の上半身に向けて吹き出される。
デフロスタ吹出開口部19は、車両のフロントウィンドガラスに向けて空調風を吹き出すものである。デフロスタ吹出開口部19の近傍には、デフロスタドア23が設けられている。デフロスタドア23は、デフロスタ吹出開口部19を開閉する。デフロスタドア23がデフロスタ吹出開口部19を開くと、通風路10を流れる空調風は、デフロスタ吹出開口部19から図示していないデフロスタダクトを通り、車両のフロントウィンドガラスに向けて吹き出される。
フット吹出開口部21は、空調装置1が車両に搭載された状態において、車幅方向の左右となる部位にそれぞれ設けられている。フット吹出開口部21は、車両の右前座席および左前座席に着座した乗員の下半身側に向けて空調風を吹き出すものである。通風路10とフット吹出開口部21とが連通する箇所には、フットドア24が設けられている。フットドア24は、通風路10とフット吹出開口部21とを連通または遮断する。フットドア24が通風路10とフット吹出開口部21とを連通すると、通風路10を流れる空調風は、フット吹出開口部21から乗員の下半身側に向けて吹き出される。
さらに、本実施形態の空調装置1は、吸湿材6を収容可能な収容部25を備えている。有している。本実施形態では、空調ケース2と収容部25とは別部材として構成されている。なお、後述する第3実施形態のように、空調ケース2と収容部25とは一体に構成してもよい。
収容部25の内側に形成される収容空間26に、吸湿材6が収容されている。吸湿材6は、空気の湿度に応じて空気中の水分を回収したり、空気中に水分を脱離したりする特性を有する吸湿物質が波板状の部材に担持されたものをロール状または直方体形状にしたものである。また、吸湿材6は、円柱状または直方体形状に形成されたハニカム状の構造体に、上述した吸湿物質が担持されたものであってもよい。上述した吸湿物質として、例えば、有機系材料の高分子吸着材、または、無機系材料のゼオライト、シリカゲルなどを採用することができる。
図3および図4に示すように、吸湿材6は、空気流入面61と空気流出面62とを有している。吸湿材6の空気流入面61から流入した空気は、吸湿材6の内側に形成される構造体の隙間を流れ、空気流出面62から流出する。なお、以下の説明では、収容部25の内側の収容空間26のうち、吸湿材6の空気流入面61が配置される側の空間を流入空間261と呼び、吸湿材6の空気流出面62が配置される側の空間を流出空間262と呼ぶこととする。収容空間26を流入空間261から流出空間262に流れる空気の湿度が高い場合、吸湿材6は、空気中に含まれる水分を回収する。収容空間26を流入空間261から流出空間262に流れる空気の湿度が低い場合、吸湿材6は、空気中に水分を脱離する。
収容部25には、回収風通路41、暖風通路42、排気通路43および加湿風通路44が接続されている。
回収風通路41は、通風路10の側壁200に設けられた回収風取出口40と収容部25の流入空間261とを連通している。回収風取出口40は、エバポレータ4により冷却されて相対湿度が高くなった空気を回収風通路41に導入するために、通風路10の側壁200に設けられた開口部である。回収風通路41は、エバポレータ4により冷却された空気を回収風取出口40から取り出し、収容部25の流入空間261に導入するための通路である。
回収風取出口40は、通風路10の側壁200のうち、エバポレータ4とヒータコア5との間に設けられている。また、回収風取出口40は、エバポレータ4に対して垂直にヒータコア5を投影した高さ範囲(以下、「ヒータコア投影範囲HS」という)を含む位置に設けられている。なお、回収風取出口40は、その少なくとも一部がヒータコア投影範囲HSを含む位置に設けられていればよい。また、ヒータコア投影範囲HSを含む位置とは、エバポレータ4の真横だけでなく、通風路10の側壁200のうち、エバポレータ4とヒータコア5との間の位置も含んでいる。なお、通風路10の側壁200とは、空調装置1を車両に搭載した状態で、重力方向に対して交差する方向の壁であり、車幅方向の壁だけでなく、車両前後方向の壁も含んでいる。
通風路10のうちヒータコア投影範囲HSの空間は、その空間より上方の空間および下方の空間に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さい。そのため、通風路10の側壁200のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置に回収風取出口40を設けることで、エアミックスドア17の開度の影響を低減し、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に安定した風量の回収風を供給することが可能である。これについては、発明者が行ったシミュレーションに基づき、後に詳細に説明する。
また、回収風取出口40は、下通風路12の側壁200に設けられている。下通風路12は、内外気2層モードまたは内気モードが行われるとき、内気が循環する。内気循環の空気は、乗員の発汗などにより、絶対湿度が高くなっている。そのため、内気循環が行われる下通風路12の側壁200に回収風取出口40を設けることで、絶対湿度および相対湿度の高い空気を、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に供給することが可能である。
さらに、図4に示すように、回収風取出口40は、通風路10の一方の側壁200と通風路10の他方の側壁200に設けられている。通風路10の一方の側壁200に設けられた回収風取出口40を第1回収風取出口401と呼び、通風路10の他方の側壁200に設けられた回収風取出口40を第2回収風取出口402と呼ぶこととする。また、第1回収風取出口401と収容部25とを連通する回収風通路41を第1回収風通路411と呼び、第2回収風取出口402と収容部25とを連通する回収風通路41を第2回収風通路412と呼ぶこととする。このように、本実施形態の回収風通路41は、空調ケース2の一方の側壁200の外側に設けられた第1回収風通路411と、空調ケース2の他方の側壁200の外側に設けられた第2回収風通路412を有している。これにより、空調ケース2のうち車幅方向右側に設けられた各吹出開口部から吹き出される空調風と、車幅方向左側に設けられた各吹出開口部から吹き出される空調風との温度および風量のバランスが保たれる。
暖風通路42は、一端が通風路10の中でヒータコア5の下流側に開口し、他端が収容部25に接続されている。暖風通路42は、ヒータコア5により加熱されて相対湿度が低くなった空気を収容部25の流入空間261に導入するための通路である。
排気通路43は、一端が収容部25に接続され、他端が収容部25の外側に開口している。排気通路43は、収容部25の流出空間262から空気を排出するための通路である。
加湿風通路44は、一端が収容部25に接続され、他端が車室内に設けられた図示していないフェイス吹出口に接続されている。なお、加湿風通路44の他端は、フェイス吹出口とは別に車室内に設けられた図示していない加湿風吹出口に接続されていてもよい。加湿風通路44は、収容空間26で加湿された空気を車室内に向けて吹き出すための通路である。
収容部25の流入空間261には、回収風通路41と収容空間26との連通および遮断を行うための回収風ドア51と、暖風通路42と収容空間26との連通および遮断を行うための暖風ドア52が設けられている。また、収容部25の流出空間262には、排気通路43と収容空間26との連通および遮断を行うための排気ドア53と、加湿風通路44と収容空間26との連通および遮断を行うための加湿風ドア54が設けられている。
図3に示すように、回収風ドア51と排気ドア53が開状態で、暖風ドア52と加湿風ドア54が閉状態のとき、回収風通路41と収容空間26とが連通し、排気通路43と収容空間26とが連通する。また、暖風通路42と収容空間26とが遮断され、加湿風通路44と収容空間26とが遮断される。
この状態で、回収風通路41から収容空間26に導入された空気は、吸湿材6の空気流入面61から吸湿材6の中を流れる。これにより、回収風通路41から収容空間26に導入される空気に含まれる水分が、吸湿材6に吸着される。そして、吸湿材6を通過して湿度が低くなった空気は、排気通路43から空調ケース2の外側に排出される。
一方、暖風ドア52と加湿風ドア54が開状態で、回収風ドア51と排気ドア53が閉状態のとき、暖風通路42と収容空間26とが連通し、加湿風通路44と収容空間26とが連通する。また、回収風通路41と収容空間26とが遮断され、排気通路43と収容空間26とが遮断される。
この状態で、暖風通路42から収容空間26に導入された空気は、吸湿材6の空気流入面61から吸湿材6の中を流れる。これにより、暖風通路42から収容空間26に導入される空気に対し、吸湿材6に含まれていた水分が放出される。そして、吸湿材6を通過して湿度が高くなった空気は、加湿風通路44を通り、フェイス吹出口または加湿風吹出口から車室内に吹き出される。これにより、本実施形態の空調装置1は、無給水で車室内の加湿を行うことが可能である。
次に、回収風通路41の回収風取出口40を、下通風路12の側壁200のうちエバポレータ4とヒータコア5との間で、ヒータコア投影範囲HSを含む位置に設けた意義について説明する。
図8は、シミュレーションに基づき、図5〜図7に示すP1〜P4の位置で測定した通風路10の内圧と、エアミックスドア17の開度との関係を表したグラフである。図5〜図7に示すP2およびP3の位置は、通風路10のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置である。図5〜図7に示すP1およびP4の位置は、通風路10のうちヒータコア投影範囲HSを含まない位置である。
図8のグラフでは、P1およびP4の位置で測定した通風路10の内圧とエアミックスドア17の開度との関係を、破線で示している。P2およびP3の位置で測定した通風路10の内圧とエアミックスドア17の開度との関係を、実線で示している。
図8のグラフから、P1〜P4のいずれの位置においても、エアミックスドア17の開度が小さいほど、内圧が低くなることが見て取れる。しかし、P2およびP3の位置は、P1およびP4の位置に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さい。また、エアミックスドア17の開度が0%で内圧が最も低い場合でも、P2およびP3の位置の内圧は、P1およびP4の位置の内圧よりも高い。
上記の理由について説明する。図5は、エアミックスドア17の開度が0%の状態を示している。この状態で、エアミックスドア17は、ヒータコア5の気流流入面の略全面を覆い、ヒータコア5より上側と下側の通路を開放している。そのため、エバポレータ4を通過した空気の殆ど全てがヒータコア5を迂回して流れる。このとき、P2およびP3の位置は、下流側のヒータコア5をエアミックスドア17が閉塞していることにより、P1およびP4の位置に比べて内圧が高くなる。
図6は、エアミックスドア17の開度が50%の状態を示している。この状態で、エアミックスドア17は、ヒータコア5の気流流入面の略半分を開放し、残りの略半分を覆っている。そのため、エバポレータ4を通過した空気は、ヒータコア5を通過する空気と、ヒータコア5を迂回する空気に分かれて流れる。このとき、P2およびP3の位置は、下流側にあるヒータコア5の通気抵抗により、P1およびP4の位置に比べて内圧が高くなる。
図7は、エアミックスドア17の開度が100%の状態を示している。この状態で、エアミックスドア17は、ヒータコア5の気流流入面の略全面を開放し、ヒータコア5より上側と下側の通路を閉塞している。そのため、エバポレータ4を通過した空気の殆ど全てがヒータコア5を通過して流れる。このとき、P2およびP3の位置の下流側では、エアミックスドア17がヒータコア5を開放している。一方、P1およびP4の下流側では、エアミックスドア17が通路を閉塞している。そのため、P1およびP4の位置は、下流側でエアミックスドア17が通路を閉塞していることにより、P2およびP3の位置に比べて、内圧が高くなる。したがって、図5〜図8を参照して説明したように、P2およびP3の位置は、P1およびP4の位置に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さいものとなる。
図9は、P1〜P4それぞれの位置に対応した通風路10の側壁200に回収風取出口40を設けた場合、回収風通路41を流れる回収風の風量とエアミックスドア17の開度との関係を表したグラフである。図9のグラフでは、P1またはP4の位置に対応した通風路10の側壁200に回収風取出口40を設けた場合において、回収風通路41を流れる回収風の風量とエアミックスドア17の開度との関係を破線で示している。また、図9のグラフでは、P2またはP3の位置に対応した通風路10の側壁200に回収風取出口40を設けた場合において、回収風通路41を流れる回収風の風量とエアミックスドア17の開度との関係を実線で示している。
図9に示したように、回収風通路41を流れる回収風の風量は、図8で示した通風路10の内圧に対応したものとなっている。すなわち、P1およびP4の位置に対応した通風路10の側壁200に回収風取出口40を設けた場合に比べて、P2およびP3の位置に対応した通風路10の側壁200に回収風取出口40を設けた場合の方が、エアミックスドア17の開度に応じた回収風の風量の変化が小さい。したがって、通風路10の側壁200のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置に回収風取出口40を設けることで、エアミックスドア17の開度の影響を低減し、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に安定した風量の回収風を供給することが可能である。
また、図8および図9に示したように、エアミックスドア17の開度が0%のときは、P1〜P4のいずれの位置に回収風取出口40を設けた場合でも、内圧が低く、回収風の風量が最も低くなる。しかし、その場合でも、P2およびP3の位置に回収風取出口40を設けた場合の回収風の風量は、P1およびP4の位置に回収風取出口40を設けた場合の回収風の風量よりも大きいものとなっている。したがって、通風路10の側壁200のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置に回収風取出口40を設けることで、最低の回収風風量を比較的大きい風量で確保することが可能である。
なお、図8および図9に矢印で示した作動域は、加湿器が乗員に使用されることが一般的に想定される領域を示したものである。加湿器は、晩秋〜冬〜春先にかけてよく使用されると考えられる。その場合、エアミックスドア17は、図8および図9に示した作動域の範囲で作動することが想定される。
以上説明した本実施形態の空調装置1は、次の作用効果を奏する。
(1)本実施形態では、回収風通路41の回収風取出口40は、下通風路12の側壁200のうち、エバポレータ4とヒータコア5との間で、ヒータコア投影範囲HSを含む位置に設けられている。
これによれば、通風路10のうちヒータコア投影範囲HSの空間は、その空間より上方の空間および下方の空間に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さい。そのため、エアミックスドア17の開度の影響を低減し、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に安定した風量の回収風を供給することが可能である。したがって、この空調装置1は、吸湿材6に水分を安定して保持させることが可能となり、加湿器から乗員に対して加湿風を安定して吹き出すことができる。
また、エアミックスドア17の開度が0%の場合でも、ヒータコア投影範囲HSの空間の内圧は、その空間より上方の空間および下側の空間の内圧よりも高い。そのため、通風路10の側壁200のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置に回収風取出口40を設けることで、最低の回収風風量を比較的大きい風量で確保することが可能である。したがって、回収風取出口40および回収風通路41の流路断面積を小さくし、空調装置1の体格を小型化することができる。
(2)本実施形態では、回収風取出口40は、空調ケース2の一方の側壁200に設けられた第1回収風取出口401と、空調ケース2の他方の側壁200に設けられた第2回収風取出口402とを有している。
これによれば、空調ケース2のうち車幅方向右側に設けられた各吹出開口部から吹き出される空調風と、車幅方向左側に設けられた各吹出開口部から吹き出される空調風との温度および風量のバランスを保つことができる。
(3)本実施形態では、空調ケース2内の通風路10は、仕切板13によって、重力方向上側の上通風路11と、重力方向下側の下通風路12に分けられている。ここで、回収風取出口40は、下通風路12側の側壁200に設けられている。
下通風路12は、内外気2層モードまたは内気モードが行われるとき、内気が循環する。内気循環の空気は、乗員の発汗などにより、絶対湿度が高くなっている。そのため、内気循環が行われる下通風路12の側壁200に回収風取出口40を設けることで、絶対湿度および相対湿度の高い空気を、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に供給することが可能である。
(4)本実施形態では、空調装置1は、暖風通路42、排気通路43および加湿風通路44をさらに備える。
これによれば、収容部25では、回収風通路41から導入される回収風から吸湿材6に水分を吸着させた後、その空気を排気通路43を通じて排出することが可能である。また、暖風通路42から収容部25に導入される空気に対し、吸湿材6から水分を脱離させることが可能である。その加湿された空気は、収容部25から加湿風通路44を通じて車室内に向けて吹き出される。これにより、空調ケース2は、無給水で作動可能な無給水加湿器の機能を備えることが可能である。
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対してヒータコア5の位置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図10に示すように、第2実施形態では、ヒータコア5が空調ケース2の底壁201に接するか、または、底壁201近くに設けられている。なお、第2実施形態では、仕切板13が設けられておらず、通風路10は上通風路11と下通風路12に仕切られていない。すなわち、空調装置1は、内外気2層モードの設定を行わないものである。また、エバポレータ4とヒータコア5との間の通風路10には、1枚のエアミックスドア17が設けられている。
第2実施形態でも、回収風通路41の回収風取出口40は、通風路10の側壁200のうち、エバポレータ4とヒータコア5との間で、ヒータコア投影範囲HSを含む位置に設けられている。通風路10のうちヒータコア投影範囲HSの空間は、その空間より上方の空間に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さい。そのため、通風路10の側壁200のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置に回収風取出口40を設けることで、エアミックスドア17の開度の影響を低減し、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に安定した風量の回収風を供給することが可能である。
また、エアミックスドア17の開度が0%の場合でも、ヒータコア投影範囲HSの空間の内圧は、その空間より上方の空間の内圧よりも高い。そのため、通風路10の側壁200のうちヒータコア投影範囲HSを含む位置に回収風取出口40を設けることで、最低の回収風風量を比較的大きい風量で確保することが可能である。したがって、回収風取出口40および回収風通路41の流路断面積を小さくし、空調装置1の体格を小型化することができる。したがって、第2実施形態も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態に対して収容部25の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
図11および図12に示すように、収容部25は、空調ケース2と一体に構成されている。収容部25は、筒状に形成された筒部27、その筒部27の軸方向の一方に設けられた第1円錐部28、および、筒部27の軸方向の他方に設けられた第2円錐部29などにより構成されている。収容部25は、空調装置1が車両に搭載された状態で、第1円錐部28の頂点281が第2円錐部29の頂点291より低い位置となるように設けられている。また、収容部25は、第1円錐部28の頂点281とエバポレータ4との距離L1が第2円錐部29の頂点291とエバポレータ4との距離L2より近くなるように、エバポレータ4に対して傾斜して設けられている。
図11および図12に示すように、本実施形態では、回収風通路41と暖風通路42は、第1円錐部28に接続されている。排気通路43と加湿風通路44は、第2円錐部29に接続されている。図12に示すように、第1円錐部28には、回収風通路41の開口部410と、暖風通路42の開口部420とが設けられている。第2円錐部29には、排気通路43の開口部430と、加湿風通路44の開口部440とが設けられている。
収容部25の第1円錐部28の内側には第1円錐ドア55が設けられている。収容部25の第2円錐部29の内側には、第2円錐ドア56が設けられている。図13〜図15に示すように、第1円錐ドア55は、円錐の傘状に形成されており、周方向の一部に開口550を有している。第1円錐ドア55は、第1円錐部28の軸周りに回転可能に設けられている。図12に示すように、第1円錐部28に設けられた回収風通路41の開口部410と、第1円錐ドア55の有する開口550とが重なるとき、回収風通路41と収容空間26とが連通し、暖風通路42と収容空間26とが遮断される。これに対し、第1円錐部28に設けられた暖風通路42の開口部420と、第1円錐ドア55の有する開口550とが重なるとき、暖風通路42と収容空間26とが連通し、回収風通路41と収容空間26とが遮断される。
第2円錐ドア56も、第1円錐ドア55と同様、円錐の傘状に形成されており、周方向の一部に開口560を有している。第2円錐ドア56は、第2円錐部29の軸周りに回転可能に設けられている。第2円錐部29に設けられた加湿風通路44の開口部440と、第2円錐ドア56の有する開口560とが重なるとき、収容空間26と加湿風通路44とが連通し、収容空間26と排気通路43とが遮断される。これに対し、第2円錐部29に設けられた排気通路43の開口部430と、第2円錐ドア56の有する開口560とが重なるとき、収容空間26と排気通路43とが連通し、収容空間26と加湿風通路44とが遮断される。
吸湿材6の空気流入面61は、回収風通路41から収容空間26に導入される風の方向に対して傾斜しており、且つ、暖風通路42から収容空間26に導入される風の方向に対して傾斜した状態で、収容空間26に収容されている。
なお、第1円錐ドア55と第2円錐ドア56とは、図示していない連結部材により接続され、同期して回転する。そのため、第1円錐ドア55と第2円錐ドア56の回転により、回収風通路41と収容空間26とが連通し、且つ、排気通路43と収容空間26とが連通する。このとき、暖風通路42と収容空間26とが遮断され、加湿風通路44と収容空間26とが遮断される。この状態で、回収風通路41から収容空間26に導入された空気は、吸湿材6の空気流入面61に沿って広がり、吸湿材6の中に広範囲に流れる。これにより、回収風通路41から収容空間26に導入される空気に含まれる水分が、吸湿材6の全体に亘り吸着される。そして、吸湿材6を通過して湿度が低くなった空気は、排気通路43から空調ケース2の外側に排出される。
一方、第1円錐ドア55と第2円錐ドア56の回転により、暖風通路42と収容空間26とが連通するとき、加湿風通路44と収容空間26とが連通する。このとき、回収風通路41と収容空間26とが遮断され、排気通路43と収容空間26とが遮断される。この状態で、暖風通路42から収容空間26に導入された空気は、吸湿材6の空気流入面61に沿って広がり、吸湿材6の中に広範囲に流れる。これにより、暖風通路42から収容空間26に導入される空気に対し、吸湿材6に含まれていた水分が放出される。そして、吸湿材6を通過して湿度が高くなった空気は、加湿風通路44を通り、フェイス吹出口または加湿風吹出口から車室内に吹き出される。これにより、本実施形態の空調装置1は、無給水で車室内の加湿を行うことが可能である。
以上説明した第3実施形態も、第1および第2実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。さらに、第3実施形態では、空調ケース2と収容部25とが、一体に構成されている。そのため、空調装置1の体格を小型化することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第2実施形態に対してヒータコア5の位置および角度を変更したものである。
図16に示すように、第4実施形態では、ヒータコア5が、エバポレータ4に対して傾いた状態で設けられている。具体的には、ヒータコア5は、上側の端部が下側の端部よりもエバポレータ4に近い位置となるように設置されている。また、ヒータコア5は、空調ケース2の底壁201に接するか、または、底壁201の近くに設けられている。
第4実施形態では、第2実施形態と同様に、空調ケース2内に仕切板13が設けられておらず、通風路10は上通風路と下通風路に仕切られていない。すなわち、第4実施形態の空調装置1は、内外気2層モードの設定を行わないものである。
通風路10には、エアミックスドア17の下流側において、冷風を案内するための案内壁70が設けられている。案内壁70は、エアミックスドア17の下流側において、通風路10の略中央の位置からヒータコア5の上側の端部に亘り設けられている。そのため、エバポレータ4を通過した冷風は、案内壁70と空調ケース2の底壁201との間の通路を流れ、ヒータコア5に導かれる。第4実施形態では、仮にエアミックスドア17を無くした場合に、エバポレータ4からヒータコア5に向けて冷風が流れる通路を冷風通路100と呼ぶ。図16では、冷風通路100のうち、エアミックスドア17より上流の冷風通路100の範囲を、符号100aで示した一点鎖線の範囲で示している。エアミックスドア17より上流の冷風通路100の上縁(すなわち、一点鎖線の上縁)は、案内壁70のエバポレータ4側の端部に対応した位置となっている。
第4実施形態では、回収風通路41の回収風取出口40は、符号100aで示した一点鎖線の範囲内に設けられている。すなわち、回収風取出口40は、エバポレータ4からヒータコア5に向けて冷風が流れる冷風通路100のうち、エアミックスドア17より上流側に設けられている。
次に、回収風通路41の回収風取出口40を、冷風通路100に設けた意義について説明する。図17〜図19は、第4実施形態の空調装置1の模式図である。図17は、エアミックスドア17の開度が0%の状態を示している。図18は、エアミックスドア17の開度が50%の状態を示している。図19は、エアミックスドア17の開度が100%の状態を示している。
図20は、シミュレーションに基づき、図17〜図19に示すP5、P6の位置で測定した通風路10の内圧と、エアミックスドア17の開度との関係を表したグラフである。なお、図17〜図19のP5は冷風通路100より上方の位置であり、P6は冷風通路100の位置である。
図20のグラフでは、P5の位置で測定した冷風通路100より上方の空間の内圧とエアミックスドア17の開度との関係を破線で示し、P6の位置で測定した冷風通路100の内圧とエアミックスドア17の開度との関係を実線で示している。
図20のグラフから、P6の位置は、P5の位置に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さいことが見て取れる。また、P6の位置における内圧は、エアミックスドア17の開度が100%の場合に最低値となる。一方、P5の位置における内圧は、エアミックスドア17の開度が0%の場合に最低値となる。その際、P6の位置における内圧の最低値は、P5の位置における内圧の最低値よりも高い値となっている。
上記の理由について説明する。図17に示すように、エアミックスドア17の開度が0%の場合、エバポレータ4を通過した空気はヒータコア5を通過することなく下流側の吹出口へ流れる。このとき、エアミックスドア17が冷風通路100をヒータコア5の上流側で閉塞していることにより、P6の位置の内圧は、P5の位置の内圧に比べて高くなる。
図18に示すように、エアミックスドア17の開度が50%の場合、エバポレータ4を通過した空気は、ヒータコア5を通過する空気と、ヒータコア5を通過しない空気に分かれて下流側の吹出口へ流れる。このとき、ヒータコア5の通気抵抗により、P6の位置の内圧は、P5の位置の内圧に比べて高くなる。
図19に示すように、エアミックスドア17の開度が100%の場合、エバポレータ4を通過した空気の殆ど全てがヒータコア5を通過して下流側の吹出口へ流れる。このとき、エアミックスドア17が冷風通路100より上方の空間を閉塞していることにより、P5の位置の内圧は、P6の位置の内圧に比べて高くなる。
図17〜図20を参照して説明したように、P6の位置は、P5の位置に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さいものとなる。すなわち、冷風通路100は、その冷風通路100より上方の空間に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さい。ここで、回収風通路41を流れる回収風の風量は、通風路10の内圧に対応したものとなる。そのため、P5の位置に回収風取出口40を設けた場合に比べて、P6の位置に対応した位置に回収風取出口40を設けた場合の方が、エアミックスドア17の開度に応じた回収風の風量の変化が小さくなる。したがって、冷風通路100のうちエアミックスドア17より上流側に回収風取出口40を設けることで、エアミックスドア17の開度の影響を低減し、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に安定した風量の回収風を供給することが可能である。
また、エアミックスドア17の開度を0〜100%の範囲全体で見たとき、冷風通路100における内圧の最低値は、その冷風通路100より上方の空間における内圧の最低値よりも高い値となる。そのため、その冷風通路100に回収風取出口40を設けることで、最低の回収風風量を比較的大きい風量で確保することが可能である。したがって、第4実施形態も、第1〜第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1実施形態に対してヒータコア5の位置および角度を変更したものである。
図21に示すように、第5実施形態でも、ヒータコア5は、エバポレータ4に対して傾いた状態で設けられている。具体的には、ヒータコア5は、上側の端部が下側の端部よりもエバポレータ4に近い位置となるように設置されている。また、ヒータコア5は、空調ケース2の通風路10の中で底壁201と上壁202との中間位置に設けられている。
第5実施形態では、第1実施形態と同様に、通風路10は、仕切板13により上通風路11と下通風路12に仕切られている。すなわち、空調装置1は、外気モード、内気モードに加え、内外気2層モードの設定が可能なものである。
通風路10には、エアミックスドア17の上流側において、エバポレータ4の下流側の所定位置からヒータコア5の上側の端部に対応する位置に亘り、冷風を案内するための上案内壁71が設けられている。また、通風路10には、エアミックスドア17の上流側において、エバポレータ4の下流側の所定位置からヒータコア5の下側の端部に対応する位置に亘り、冷風を案内するための下案内壁72が設けられている。エバポレータ4とヒータコア5との間には、その上案内壁71と下案内壁72との間に、エバポレータ4からヒータコア5に向けて冷風が流れる冷風通路100が形成される。この冷風通路100により、エバポレータ4を通過した風のうち所定の風量をヒータコア5に流すことが可能である。図21では、冷風通路100のうち、エアミックスドア17より上流の冷風通路100の範囲を、符号100aで示した一点鎖線で示している。
第5実施形態でも、回収風通路41の回収風取出口40は、符号100aで示した一点鎖線の範囲内に設けられている。すなわち、回収風取出口40は、エバポレータ4からヒータコア5に向けて冷風が流れる冷風通路100のうち、エアミックスドア17より上流側に設けられている。なお、詳細には、回収風取出口40は、冷風通路100のうち、仕切板13より重力方向下側に設けられることが好ましい。
次に、回収風通路41の回収風取出口40を、冷風通路100に設けた意義について説明する。図22〜図24は、第5実施形態の空調装置1の模式図である。図22は、エアミックスドア17の開度が0%の状態を示している。図23は、エアミックスドア17の開度が50%の状態を示している。図24は、エアミックスドア17の開度が100%の状態を示している。
図25は、シミュレーションに基づき、図22〜図24に示すP7〜P10の位置で測定した通風路10の内圧と、エアミックスドア17の開度との関係を表したグラフである。なお、図22〜図24のP7は冷風通路100より上方の位置であり、P8、P9は冷風通路100の位置であり、P10は冷風通路100より下方の位置である。
図25のグラフでは、P8、P9の位置で測定した冷風通路100の内圧とエアミックスドア17の開度との関係を実線で示している。また、P7、P10の位置で測定した冷風通路100より上方または下方の空間の内圧とエアミックスドア17の開度との関係を破線で示している。
図25のグラフから、P8、P9の位置は、P7、P10の位置に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さいことが見て取れる。また、P8、P9の位置における内圧は、エアミックスドア17の開度が100%の場合に最低値となる。一方、P7、P10の位置における内圧は、エアミックスドア17の開度が0%の場合に最低値となる。その際、P8、P9の位置における内圧の最低値は、P7、P10の位置における内圧の最低値よりも高い値となっている。
上記の理由について説明する。図22に示すように、エアミックスドア17の開度が0%の場合、冷風通路100の空気は、エアミックスドア17によって止められる。一方、冷風通路100より上方および下方の空間の空気は、ヒータコア5を通過することなく流れる。このとき、エアミックスドア17が冷風通路100を閉塞していることにより、P8、P9の位置の内圧は、P7、P10の位置の内圧に比べて高くなる。
図23に示すように、エアミックスドア17の開度が50%の場合、冷風通路100を流れる空気は、ヒータコア5を通過して流れる。一方、冷風通路100より上方および下方の空間の空気は、ヒータコア5を通過することなく流れる。このとき、ヒータコア5の通気抵抗により、P8、P9の位置の内圧は、P7、P10の位置の内圧に比べて高くなる。
図24に示すように、エアミックスドア17の開度が100%の場合、冷風通路100を流れる空気は、ヒータコア5を通過して流れる。一方、冷風通路100より上方および下方の空間の空気は、エアミックスドア17によって止められる。このとき、エアミックスドア17が冷風通路100より上方および下方の空間を閉塞していることにより、P7、P10の位置の内圧は、P8、P9の位置の内圧に比べて高くなる。
図22〜図25を参照して説明したように、P8、P9の位置は、P7、P10の位置に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さいものとなる。すなわち、冷風通路100は、その冷風通路100より上方および下方の空間に比べて、エアミックスドア17の開度に応じた内圧の変化が小さい。ここで、回収風通路41を流れる回収風の風量は、通風路10の内圧に対応したものとなる。そのため、P7、P10の位置に回収風取出口40を設けた場合に比べて、P8、P9の位置に対応した位置に回収風取出口40を設けた場合の方が、エアミックスドア17の開度に応じた回収風の風量の変化が小さくなる。したがって、冷風通路100のうちエアミックスドア17より上流側に回収風取出口40を設けることで、エアミックスドア17の開度の影響を低減し、回収風取出口40から回収風通路41を通じて収容部25に安定した風量の回収風を供給することが可能である。
また、エアミックスドア17の開度を0〜100%の範囲全体で見たとき、冷風通路100における内圧の最低値は、その冷風通路100より上方および下方の空間における内圧の最低値よりも高い値となる。そのため、その冷風通路100に回収風取出口40を設けることで、最低の回収風風量を比較的大きい風量で確保することが可能である。したがって、第5実施形態も、第1〜第4実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態は、第1〜第5実施形態に対して回収風通路41の構成の一部を変更したものである。
図26に示すように、第6実施形態では、回収風通路41は、空調ケース2の底壁201から空調ケース2の内側に差し込まれている。第6実施形態でも、回収風通路41の回収風取出口40は、符号100aで示した一点鎖線の範囲内に設けられている。すなわち、回収風通路41の回収風取出口40は、通風路10の側壁200に限らず、冷風通路100のうちエアミックスドア17より上流側に設けられていればよい。なお、詳細には、回収風取出口40は、冷風通路100のうち、仕切板13より重力方向下側に設けられることが好ましい。この第6実施形態の構成は、空調ケース2の下に搭載スペースがある場合に有効である。第6実施形態も、第1〜第5実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。第7実施形態も、第1〜第6実施形態に対して回収風通路41の構成の一部を変更したものである。
図27に示すように、第7実施形態では、回収風通路41は、空調ケース2の側壁200から空調ケース2の内側に差し込まれている。第7実施形態でも、回収風通路41の回収風取出口40は、符号100aで示した一点鎖線の範囲内に設けられている。すなわち、回収風取出口40は、エバポレータ4からヒータコア5に向けて冷風が流れる冷風通路100のうち、エアミックスドア17より上流側に設けられている。第7実施形態の構成は、空調ケース2の横幅よりヒータコア5の横幅が小さい場合に有効である。第7実施形態も、第1〜第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
(1)上記実施形態では、空調ケース2の通風路10を流れる空気を冷却する冷却機器として、エバポレータ4を用いる例について説明した。これに対し、他の実施形態では、冷却機器は、例えば、外気等の低温の空気を利用して空気を冷却する気−気熱交換器、または、ペルチェモジュールなどを用いてもよい。
(2)上記実施形態では、空調ケース2の通風路10を流れる空気を加熱する加熱機器として、ヒータコア5を用いる例について説明した。これに対し、他の実施形態では、加熱機器は、例えば、電気ヒータ、または、ペルチェモジュールなどを用いてもよい。
(3)上述した第6、第7実施形態では、回収風通路41は、空調ケース2の底壁201または側壁200から空調ケース2の内側に差し込む構成とした。これに対し、他の実施形態では、回収風通路41は、例えば、空調ケース2の上壁202などから空調ケース2の内側に差し込む構成としてもよい。
(4)空調ケース2の底壁201、側壁200または上壁202などから空調ケース2の内側に回収風通路41を差し込む構成とした場合、回収風取出口40は、冷却機器4に対して垂直に加熱機器5を投影した高さ範囲HSを含む位置、または、冷風通路100のうちエアミックスドア17より上流側に設けられる。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、車室内の空気調和を行う空調装置は、空調ケース、冷却機器、加熱機器、エアミックスドア、収容部および回収風通路を備える。空調ケースは、空気が流れる通風路を形成する。冷却機器は、通風路を流れる空気を冷却する。加熱機器は、冷却機器の下流側に配置され、通風路を流れる空気を加熱する。エアミックスドアは、冷却機器と加熱機器との間に設けられ、冷却機器を通過した後に加熱機器を迂回する風量と加熱機器を通過する風量との割合を調整する。収容部は、空気に含まれる水分を吸着および脱離可能な吸湿材を収容する。回収風通路は、通風路の側壁のうち冷却機器と加熱機器との間に設けられた回収風取出口と収容部とを連通する。ここで、回収風取出口は、通風路の側壁のうち、冷却機器に対して垂直に加熱機器を投影した高さ範囲を含む位置に設けられている。
第2の観点によれば、回収風取出口は、通風路の一方の側壁に設けられた第1回収風取出口と、通風路の他方の側壁に設けられた第2回収風取出口とを有する。
これによれば、空調ケースのうち車幅方向右側に設けられた吹出開口部から吹き出される空調風と、車幅方向左側に設けられた吹出開口部から吹き出される空調風との温度および風量のバランスを保つことができる。
第3の観点によれば、空調装置は、仕切板および内外気切替部をさらに備える。仕切板は、空調ケース内の通風路を重力方向上側の上通風路と、重力方向下側の下通風路に仕切るものである。内外気切替部は、上通風路に外気を導入し下通風路に内気を導入する内外気2層モードを実施可能である。ここで、回収風取出口は、下通風路の側壁に設けられている。
これによれば、内気循環の空気は、乗員の発汗などにより、絶対湿度が高くなっている。そのため、内気循環が行われる下通風路の側壁に回収風取出口を設けることで、絶対湿度および相対湿度の高い空気を、回収風取出口から回収風通路を通じて収容部に供給することが可能である。
第4の観点によれば、空調装置は、暖風通路、排気通路および加湿風通路をさらに備える。暖風通路は、加熱機器の下流側と収容部とを連通し、加熱機器により加熱された空気を収容部に導入する。排気通路は、収容部から空気を排出する。加湿風通路は、収容部で加湿された空気を車室内に向けて吹き出す。
これによれば、収容部では、回収風通路から導入される回収風から吸湿材に水分を吸着させた後、その空気を排気通路を通じて排出することが可能である。また、暖風通路から収容部に導入される空気に対し、吸湿材から水分を脱離させることが可能である。その加湿された空気は、収容部から加湿風通路を通じて車室内に向けて吹き出される。これにより、空調ケースは、無給水で作動可能な無給水加湿器の機能を備えることが可能である。
第5の観点によれば、空調ケースと収容部とは、一体に構成されている。
これにより、空調装置の体格を小型化することができる。
第6の観点によれば、車室内の空気調和を行う空調装置は、空調ケース、冷却機器、加熱機器、エアミックスドア、収容部および回収風通路を備える。空調ケースは、空気が流れる通風路を形成する。冷却機器は、通風路を流れる空気を冷却する。加熱機器は、冷却機器の下流側に配置され、通風路を流れる空気を加熱する。エアミックスドアは、冷却機器と加熱機器との間に設けられ、冷却機器を通過した後に加熱機器を通過しない風量と加熱機器を通過する風量との割合を調整する。収容部は、空気に含まれる水分を吸着および脱離可能な吸湿材を収容する。回収風通路は、冷却機器から加熱機器に向けて冷風が流れる冷風通路のうちエアミックスドアより上流側に設けられた回収風取出口と、収容部とを連通する。