JP2018157697A - 電動機の油路構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータが回転することによる遠心油圧に起因する潤滑油の供給量のばらつきを抑制する。【解決手段】ロータ軸2の内周面と回転軸5の外周面との間でかつ冷却油路11が開口している箇所を含む所定の範囲に空所9が設けられ、空所9を大気圧の所定箇所に連通させる大気圧導入部12が設けられ、大気圧導入部12は、空所9に開口する開口部12Aを有し、大気圧導入部12の開口部12Aの軸線Cからの半径位置R12が冷却油路11の空所9に対して開口11Aしている位置の軸線Cからの半径位置R11より内周側に設定されている。【選択図】図2

Description

本発明は、電動機の冷却などのための潤滑油(オイル)を流す油路の構造に関し、特にロータの回転中心軸線に沿って挿入してある回転軸の中を通して潤滑油を供給するように構成されている油路の構造に関するものである。
例えば車両の駆動力源として用いられている電動機などの大型の電動機は、供給される電力が大きいことにより温度が高くなり易い。また、その電動機は単独でケーシング内に収容されずに、軸受や歯車機構などの周辺部材と共にケーシング内に収容されることがある。この種の電動機では、冷却と併せて周辺部材の潤滑などのために潤滑油が供給される。特許文献1には電動機に対して潤滑油を供給する構成の一例が記載されている。
特許文献1に記載された構成では、ロータ軸は中空軸として構成され、ケーシングの内部の所定箇所に左右一対の軸受によって支持されている。そのロータ軸の内部に所定の回転軸が挿入されており、その回転軸はロータ軸に対して相対的に回転できるように軸受によって支持されている。回転軸には、その中心軸線に沿って、潤滑油の供給路が形成されており、またロータの軸線方向でのほぼ中央部に相当する位置には、供給路から回転軸の外周面に到る小径の分岐孔が形成されている。ロータ軸の内周部のうち、軸線方向において、分岐孔の開口端に対向する位置を含む所定の範囲の部分は、回転軸の外周面との間に所定の隙間が形成されるように大径に形成されている。その大径の部分からロータに到るように油孔(仮に冷却油路とする)が形成されている。さらに、ロータ軸のうち軸線方向でロータを外れた位置には、前記大径の部分からロータ軸の外周面に到る排出孔が形成されている。そして、前記大径の部分の内部で、冷却油路と排出油路との間の部分に堰が設けられ、供給路および分岐孔を経て前記大径の部分の内部に流れ込んだ潤滑油の量が過剰の場合、余剰の潤滑油を堰を越えて排出路孔側に流し、余剰の潤滑油を排出孔から外部に排出するように構成されている。
特開2014−60857号公報
特許文献1に記載された構成では、ロータ軸の内周側に供給された潤滑油の量が過剰である場合、余剰の潤滑油が排出孔からロータ軸の外周側に排出されるので、ロータの周辺部材である軸受や歯車などに潤滑油が過剰に供給されたり、そのために潤滑油の粘性による抵抗が増大したり、ひいては動力損失が増大したりする不都合を回避もしくは抑制することができる。一方、電動機がモータとして動作し、あるいは発電機として動作すれば、ロータ軸がロータと共に回転し、ロータ軸の内周側に設けられている前記大径の部分の潤滑油に遠心力が作用するので、ロータ軸が回転している場合には、前記大径の部分の潤滑油が半径方向で外側に積極的に排出させられる。そのため、前記大径の部分に前記供給路から潤滑油が吸引され、その吸引量はロータ軸の回転数が増大するほど多くなる。前記供給路は、ロータに対する潤滑油の供給だけでなく、ロータと共にケーシングの内部に設けられている軸受や歯車などに対する潤滑油を供給する油路であるから、前記大径の部分を介してロータならびにその外部に向けて多量の潤滑油が流れると、軸受や歯車などの他の部材に対する潤滑油が不足してしまう可能性がある。
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、ロータおよびその周辺部材に対する潤滑油の供給を過不足なく行うことのできる電動機の油路構造を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明は、回転軸の外周側に前記回転軸と同一の軸線上にロータ軸が回転可能に配置され、前記回転軸の内部に前記回転軸の軸線方向に沿って潤滑油の供給路が形成されるとともに、前記供給路から前記回転軸の外周面に開口する分岐孔が前記回転軸に形成され、前記分岐孔から前記回転軸の外周側に流出した前記潤滑油を前記ロータ軸の外周側に前記ロータ軸と一体に設けられているロータコアに供給する冷却油路が前記ロータ軸の内周面に開口しかつ前記ロータ軸の半径方向に向けて形成されている電動機の油路構造において、前記ロータ軸の内周面と前記回転軸の外周面との間でかつ前記冷却油路が開口している箇所を含む所定の範囲に空所が設けられ、前記空所を大気圧の所定箇所に連通させる大気圧導入部が設けられ、前記大気圧導入部は、前記空所に開口する開口部を有し、前記大気圧導入部の前記開口部の前記軸線からの半径位置が前記冷却油路の前記空所に対して開口している位置の前記軸線からの半径位置より内周側に設定されていることを特徴とするものである。
本発明においては、回転軸に設けられている供給路とロータコアに潤滑油を供給する冷却油路とが空所を介して連通している。ロータ軸が回転した場合、空所の内部の潤滑油が遠心力によってロータコア側に送られ、したがって空所の潤滑油には遠心力による吸引力が作用する。その空所には、大気圧導入部が開口しているが、冷却油路は大気圧導入部の開口部よりも外周側で空所に対して開口しているから、空所の潤滑油は冷却油路が開口している箇所に向けて誘導され、大気圧導入部から大気圧の箇所に排出される潤滑油の量はわずかもしくは皆無であり、また大気圧導入部が潤滑油によって閉塞することが回避もしくは抑制される。そして、空所は大気圧導入部を介して大気圧の箇所に連通していて空所が大気圧より低い負圧になることがなく、その結果、供給油路から潤滑油が空所に積極的に吸引されたり、供給油路を空所以外の箇所に向けて流れる潤滑油の量が減少したりすることが回避もしくは抑制される。結局、本発明によれば、ロータコアに対する潤滑油の供給およびロータ以外の箇所に対する潤滑油の供給が、ロータコアやロータ軸が回転することによる遠心油圧の影響を特には受けずに行われ、ロータおよびロータ以外の箇所のそれぞれに対して潤滑油を過不足なく供給することができる。
本発明の一実施形態を模式的に示す断面図である。 その一部を取り出して記載してある部分図である。 各分岐孔を流れる潤滑油の量を計測した結果を示すグラフである。 本発明の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
本発明の実施形態を図1に模式的に示してある。ここに示す例は、例えば車両の駆動力源として機能する電動機(モータ・ジェネレータ)1に潤滑油を供給するように構成した例であり、中空軸であるロータ軸2の外周側にロータコア3が一体に設けられている。そのロータ軸2は、軸受4によって回転可能に支持されている。また、ロータ軸2の内部には、回転軸5が挿入され、回転軸5とロータ軸2とは同一の軸線C上に配置されかつ相対的に回転できるように構成されている。
回転軸5の中心を通る軸線Cに沿って、潤滑油を供給するための供給油路6が形成されている。この供給油路6は図示しないオイルポンプに連通され、オイルポンプが吐出した潤滑油を流通させて、前記ロータコア3に潤滑油を供給し、また前記軸受4あるいは他の軸受7などのロータコア3以外の他の部材に潤滑油を供給するように構成されている。潤滑油をこのように供給するために、前記供給油路6から回転軸5の外周面に到る複数の分岐孔8a,8b,8cが回転軸5にその半径方向に向けて形成されている。
図1に示す例においては、ロータ軸2の内周面と回転軸5の外周面との間に空所9が形成されている。この空所9は、ロータ軸2の内径を回転軸5の外径より大きくすることにより両者の間に生じる空間部分であり、ロータ軸2の軸線方向での両端部でロータ軸2と回転軸5との間にシール材(もしくは軸受)10を介在させることにより、軸線方向には封止されている。前記分岐孔8a,8b,8cのうち、軸線方向で両側の分岐孔8a,8cは、空所9を外れた箇所すなわちロータ軸2を軸線方向に外れた箇所に設けられており、これに対して軸線方向で中央部の分岐孔8bは、空所9の内部に開口するように形成されている。さらに、空所9の内径は、軸線方向での中央部が両端部側より大きくなっている。以下、空所9のうち内径の大きい箇所を大径部9Aとし、軸線方向での両端部側の内径が大径部9Aと比較して小さい箇所を小径部9Bとする。なお、これら大径部9Aと小径部9Bとの境界の部分は、内径が次第に変化するテーパー形状(傾斜面)とされている。
空所9内の潤滑油をロータコア3に冷却のために供給する冷却油路11が設けられている。図1に示す例では、冷却油路11は、ロータ軸2およびロータコア3の軸線方向でのほぼ中央部に半径方向に貫通して形成されている。したがって、冷却油路11の空所9側の開口部11Aは、大径部9A内に位置している。言い換えれば、冷却油路11の開口部11Aを含む所定の範囲が大径部9Aもしくは空所9とされている。
さらに、ロータ軸2には、空所9を大気圧の箇所に連通させる本発明の実施形態における大気圧導入部に相当する大気圧導入孔12が形成されている。大気圧の箇所は、例えばロータ軸2の外周側の箇所のうちロータコア3を軸線方向に外れた箇所であり、あるいは電動機1を収容しているケーシング(図示せず)の内部の空間部分である。したがって、図1に示す例における大気圧導入孔12は、ロータ軸2の一方の端部側に半径方向に貫通して形成されている。その空所9側の開口部12Aは、一方の小径部9B内に位置している。
ここで、これらの開口部11A,12Aの相対的な位置について説明すると、図2に一部を取り出して示すように、冷却油路11の開口部11Aは大径部9Aに開口しており、これに対して大気圧導入孔12の開口部12Aは小径部9Bに開口しているから、前者の開口部11Aの前記軸線Cからの半径位置(距離)R11が、後者の開口部12Aの前記軸線Cからの半径位置(距離)R12より大きくなっている。言い換えれば、大径部9Aと小径部9Bとの間の段差部Tを挟んで、冷却油路11の開口部11Aが内径の大きい側に位置し、大気圧導入孔12の開口部12Aが内径の小さい側に位置している。
上述した油路構造では、潤滑油は図示しないオイルポンプで加圧されて供給油路6に送られ、その内部を流れて例えば前述した分岐孔8a,8b,8cからロータコア3や軸受4などに向けて流出する。分岐孔8bから空所9に流出した潤滑油は、回転軸5やロータ軸2が回転している場合、それらの軸5,2と連れ回って遠心力を受け、半径方向で外側に押しやられる。すなわち、遠心油圧を受ける。遠心油圧を受けた潤滑油は、ロータ軸2の内周面(空所9の半径方向で外側の面)に押し付けられる。その場合、空所9の内径は大径部9Aで大きくなっているから、小径部9Bの潤滑油は遠心油圧によって大径部9A側に向けて流れる。
このようにして大径部9A側に集まった潤滑油は、冷却油路11を通ってロータコア3の外周側に流れ、その過程でロータコア3の熱を奪い、ロータコア3が潤滑油によって冷却される。また、小径部9Bの潤滑油は、上述したように、大径部9A側に流れるので、大気圧導入孔12から外部に排出される潤滑油の量は少なく、あるいは皆無に近い。また、大気圧導入孔12の開口部12Aが潤滑油によって閉塞することが回避もしくは抑制される。むしろ、大径部9Aから冷却油路11を通ってロータコア3の外周側に向けて潤滑油が積極的に流出するので、潤滑油のこのような流出に伴う吸引作用によって、大気圧導入孔12からは外部の大気が吸引される。そのため、空所9の内部の圧力はほぼ大気圧に維持される。したがって、空所9から遠心油圧によって潤滑油が積極的に流出するとしても、分岐孔8bを介して供給油路6の潤滑油を空所9に吸引する作用は生じず、あるいはそのような作用は極めてわずかになる。そのため、供給油路6から他の分岐孔8a,8cなどを介してロータコア3以外の箇所もしくは部材に供給される潤滑油の量が減少もしくは不足する事態が回避もしくは抑制される。
ここで、上記の大気圧導入孔12の有無による各分岐孔8a,8b,8cを通る潤滑油の量の変化を示す。図3は大気圧導入孔12を設けた場合の各分岐孔8a,8b,8cの潤滑油の流量(図3の(a))と、大気圧導入孔12を設けていない場合の各分岐孔8a,8b,8cの潤滑油の流量(図3の(b))とを測定した結果を示している。大気圧導入孔12を設けた場合、図3の(a)に示すように、空所9に開口している分岐孔8bを流れる潤滑油の量が最も多く、潤滑油の流れ方向で上流側の分岐孔8aを流れる潤滑油の量が最も少なく、下流側の分岐孔8cを流れる潤滑油の量が中程度の量となっている。これに対して、大気圧導入孔12を設けていない場合には、図3の(b)に示すように、空所9に開口している分岐孔8bを流れる潤滑油の量が、大気圧導入孔12を設けている場合に比較して大幅に増大し、これに対して、上流側および下流側の分岐孔8a,8cを流れる潤滑油の量が減少している。これらの測定結果から知られるように、空所9の圧力を大気圧もしくはそれに近い圧力に維持することにより、空所9による潤滑油の吸引が防止もしくは抑制され、その結果、直接、大気圧の箇所もしくは当該箇所に連通している箇所に開口している分岐孔8a,8cに配分される潤滑油の量の減少を回避もしくは抑制でき、ロータコア3およびそれ以外の箇所に対する潤滑油の供給を過不足なく行うことができる。
なお、本発明における大気圧導入部は、図1に示すようにロータ軸2に半径方向に貫通させて形成した大気圧導入孔12でなくてもよく、要は、冷却油路の空所に対する開口部よりも半径方向で内側で空所に開口している連通部であればよい。例えば図4に示すように、ロータ軸2の軸線方向での一方の端部側にはシール材10を設けずに、当該端部側の内周面と回転軸5の外周面との間に隙間13をあけ、この隙間の部分を大気圧導入部としてもよい。
1…電動機、 2…ロータ軸、 3…ロータコア、 4…軸受、 5…回転軸、 6…供給油路、 7…軸受、 8a,8b,8c…分岐孔、 9…空所、 9A…大径部、 9B…小径部、 10…シール材(もしくは軸受)、 11…冷却油路、 11A…開口部、 12…大気圧導入孔、 12A…開口部、 13…隙間、 C…軸線、 R11…半径位置、 R12…半径位置、 T…段差部。

Claims (1)

  1. 回転軸の外周側に前記回転軸と同一の軸線上にロータ軸が回転可能に配置され、前記回転軸の内部に前記回転軸の軸線方向に沿って潤滑油の供給路が形成されるとともに、前記供給路から前記回転軸の外周面に開口する分岐孔が前記回転軸に形成され、前記分岐孔から前記回転軸の外周側に流出した前記潤滑油を前記ロータ軸の外周側に前記ロータ軸と一体に設けられているロータコアに供給する冷却油路が前記ロータ軸の内周面に開口しかつ前記ロータ軸の半径方向に向けて形成されている電動機の油路構造において、
    前記ロータ軸の内周面と前記回転軸の外周面との間でかつ前記冷却油路が開口している箇所を含む所定の範囲に空所が設けられ、
    前記空所を大気圧の所定箇所に連通させる大気圧導入部が設けられ、
    前記大気圧導入部は、前記空所に開口する開口部を有し、
    前記大気圧導入部の前記開口部の前記軸線からの半径位置が前記冷却油路の前記空所に対して開口している位置の前記軸線からの半径位置より内周側に設定されている
    ことを特徴とする電動機の油路構造。
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