JP2018154714A - 塩素系薬剤包装用水溶性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】塩素系薬剤の包装材料として使用する場合でも、高い安全性、取扱性が得られるとともに、長期間に渡って優れた溶解性を維持することが可能な塩素系薬剤包装用水溶性フィルムを提供する。【解決手段】塩素系薬剤を包装するための塩素系薬剤包装用水溶性フィルムであって、水溶性樹脂を含有し、塩素系ガスを捕捉することが可能な塩素系ガス捕捉物質をフィルム表面に有する塩素系薬剤包装用水溶性フィルムである。【選択図】なし

Description

本発明は、塩素系薬剤の包装材料として使用する場合でも、高い安全性、取扱性が得られるとともに、長期間に渡って優れた溶解性を維持することが可能な塩素系薬剤包装用水溶性フィルムに関する。
近年、農薬、洗浄剤、殺菌剤等の各種薬品を水溶性フィルムに密封包装して、使用時にその包装形態のまま水中に投入し、内容物を包装フィルムごと水に溶解または分散して使用する方法が多く用いられてきている。このような包装方法の利点は、使用時に危険な薬剤に直接触れることなく使用できること、一定量が包装されているために使用時に計量することがいらないこと、薬剤を包装、輸送した容器または袋などの使用後の処理が不要または簡単であること等である。
このような包装用水溶性フィルムの原料としては、部分けん化PVAやカルボン酸変性PVA製フィルムが用いられていた。これらの水溶性フィルムは冷水に易溶性でしかも機械的強度が優れており良好な性能を有している。
一方で、包装用水溶性フィルムの使用が望まれる農薬、洗浄剤、殺菌剤等の薬剤には、塩素が含まれるものが多い。しかしながら、塩素を含有する薬剤を包装した場合、包装中にフィルムの溶解性が経時的に低下して、長期保存中に不溶性または難溶性となることで、この分野での使用が困難になるという問題が生じていた。また、塩素を含有する薬剤は、素手で触ると危険な薬剤であるため、通常はハンドリング性改善を目的としてタブレット化等が行なわれているが、上記長期保管中に不溶性または難溶性となった場合には、最終的には、使用時に袋から取り出す等の作業が必要になっていた。
これに対して、特許文献1には、ハロゲン含有の薬剤を封入する包装材料として、ポリビニルアルコール樹脂、ハイドロタルサイト類化合物及び酸化亜鉛を所定量含む包装素材が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、無機化合物をフィルム素材中に添加した場合、無機化合物にハロゲン類が達する以前にフィルム素材を透過する為、先にフィルム素材の劣化が生じる。また、無機物質とフィルム素材の界面接着力が十分でない場合は、界面を伝わってハロゲン類がフィルム内部により深く、より早く浸透するため劣化が深部まで早期に達するという問題があった。
特許第5143845号公報
本発明は、塩素系薬剤の包装材料として使用する場合でも、高い安全性、取扱性が得られるとともに、長期間に渡って優れた溶解性を維持することが可能な塩素系薬剤包装用水溶性フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、塩素系薬剤を包装するための塩素系薬剤包装用水溶性フィルムであって、水溶性樹脂を含有し、塩素系ガスを捕捉することが可能な塩素系ガス捕捉物質をフィルム表面に有する塩素系薬剤包装用水溶性フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
本発明者らは、水溶性樹脂を含有するフィルムの表面に、塩素系ガスを捕捉することが可能な塩素系ガス捕捉物質を配置することで、塩素を含有する薬剤の包装材料として使用する場合でも、長期間に渡って優れた水溶性を維持することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムは、高いフィルム滑性、並びに、耐ブロッキング性を実現することができ、塩素系薬剤を包装する際の機械適性を向上することも可能となる。
以下、本発明の詳細を説明する。
[水溶性樹脂]
本発明に係る水溶性樹脂は、塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの主材料となる物質である。
上記水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリメチルビニルエーテル、ポリイソプロピルアクリルアミド等の非イオン性高分子、ポリアクリル酸ソーダ及びその共重合体、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリイソプレン酸ソーダ共重合物、ナフタレンスルホン酸縮合物塩、ポリエチレンイミンザンテート塩等のアニオン性高分子、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩の単独及び共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの単独及び共重合物、ポリアミジンおよびその共重合物、ポリビニルイミダゾリン、ジシアンジアミド系縮合物、エピクロルヒドリンジメチルアミン縮合物、ポリエチレンイミン等のカチオン性高分子のほか、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体や、デンプン、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、カチオンデンプン等のデンプンとその誘導体、デキストリン、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の多糖類、セルロースグアーガム、キサンタンガム、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸ソーダ、ヒアルロン酸ソーダ、キトサン、ゼラチン等の天然物由来高分子が挙げられる。
また、上記ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールを変性させた変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアセタール等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましい。
また、上記水溶性樹脂としては、水酸基を付加した樹脂を使用してもよい。このような樹脂としては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
なお、水溶性樹脂とは、23℃の水に溶解させた場合に、95重量%以上溶解する樹脂のことをいう。
上記水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(以下、PVAと記載することがある)を使用する場合、上記ポリビニルアルコールのケン化度は、好ましい下限が50モル%、好ましい上限が100モル%である。上記ケン化度下限以上とすることで、フィルムとした場合に物理強度をより効果的に発現することができる。使用するPVAのケン化度は、目的とするフィルム物性と水溶性のバランスによって適宜決定される。
上記ケン化度のより好ましい下限は70モル%、更に好ましい下限は80モル%、より好ましい上限は99.5モル%である。更に好ましい上限は99モル%である。
上記ケン化度は、JIS K6726に準拠して測定される。ケン化度は、ケン化によるビニルアルコール単位に変換される単位のうち、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を示す。
上記ケン化度の調整方法は特に限定されない。ケン化度は、ケン化条件、すなわち加水分解条件により適宜調整可能である。
上記PVAの重合度は特に限定されないが、好ましい下限は300、好ましい上限は5000である。より好ましい下限は500、より好ましい上限は3000である。上記重合度が上記下限以上及び上記上限以下であると、フィルム物性と製膜性の両方を高いレベルで両立することができる。なお、上記重合度は、JIS K6726に準拠して測定される。
上記PVAは、ケン化度、重合度等が異なる2種以上のPVAを混合したものであってもよいし、変性物と未変性物を混合しても良い。このような混合PVAを用いることで、ケン化度の低い樹脂や変性物が実質の流動開始温度を下げる効果を発現するので、製膜可能温度をより下げることができる。更には、水溶性とフィルム物性の両立がより高いレベルで実現できる。
上記ポリビニルアルコールは、従来公知の方法に従って、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、ポリマーをケン化、すなわち加水分解することにより得られる。ケン化には、一般に、アルカリ又は酸が用いられる。ケン化には、アルカリを用いることが好ましい。上記ポリビニルアルコールとしては、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニル等が挙げられる。ケン化度を好適な範囲に制御しやすいので、上記ビニルエステルを重合して得られるポリマーは、ポリビニルエステルであることが好ましい。
上記ビニルエステルの重合方法は特に限定されない。この重合方法として、溶液重合法、塊状重合法及び懸濁重合法等が挙げられる。
上記ビニルエステルを重合する際に用いる重合触媒としては、例えば、2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(Tianjin McEIT社製「TrigonoxEHP」)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−セチルペルオキシジカーボネート及びジ−s−ブチルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。上記重合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリビニルアルコールには、変性ポリビニルアルコール(変性PVA)が含まれる。
上記変性PVAは、上記ビニルエステルと他のモノマーとの共重合体であってもよく、ポリビニルアルコールを変性させたものであってもよい。
上記変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコールやケイ素原子を含む変性ポリビニルアルコール、或いはポリビニルアルコールと(アクリルアミド、ビニルピロリドン、アクリロニトリル)の共重合物とのグラフト重合体等が挙げられる。
なかでも、ピロリドン変性ポリビニルアルコールが好ましい。
上記他のモノマー、すなわち共重合されるコモノマーとしては、例えば、オレフィン類、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド誘導体、N−ビニルアミド類、ビニルエーテル類、ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、アリル化合物、マレイン酸及びその塩、マレイン酸エステル、イタコン酸及びその塩、イタコン酸エステル、ビニルシリル化合物、ポリビニルピロリドン、並びに酢酸イソプロペニル等が挙げられる。上記他のモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン及びイソブテン等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記(メタ)アクリルアミド誘導体としては、アクリルアミド、n−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。上記N−ビニルアミド類としては、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。上記ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル及びn−ブチルビニルエーテル等が挙げられる。上記ニトリル類としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等が挙げられる。上記アリル化合物としては、酢酸アリル及び塩化アリル等が挙げられる。上記ビニルシリル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記変性ポリビニルアルコールにおける変性量(変性した構成単位の割合)の好ましい上限は25モル%、より好ましい上限は20モル%である。更に好ましい上限は15モル%である。また、変性量の好ましい下限は2モル%である。上記範囲内とすることで、包装資材としてのフィルム物性と、水溶性を高いレベルで両立することができる。
本発明で用いられる水溶性樹脂の含有量は、60〜99.8重量%であることが好ましい。上記含有量を60重量%以上とすることで、塩素含有薬剤の包装材料として使用する場合でも、十分なフィルム物性を得ることができ、99.8重量%以下とし、後述の金属塩類を添加することによって、高い耐薬品性、とりわけ高い耐塩素剤性を付与することが出来る。水溶性樹脂は、単一の樹脂を用いても良いし、数種の樹脂を混合しても良いが、水溶性樹脂の総量が、この範囲内にあるように調整すべきである。尚、上記含有量のより好ましい下限は70重量%、より好ましい上限は95重量%である。更に好ましい下限は80重量%、更に好ましい上限は92重量%である。
[塩素系ガス捕捉物質]
本発明で用いられる塩素系ガス捕捉物質としては、塩素系ガスを捕捉可能な物質であれば特に限定されないが無機系吸着剤もしくは無機系吸収剤が好ましい。それらの物質としては、例えば、層状複水酸化物、ケイ酸塩等が挙げられる。上記層状複水酸化物としては、ハイドロタルサイト類等の炭酸塩が挙げられる。上記炭酸塩としては、無水炭酸ナトリウム等も挙げられる。上記ケイ酸塩としては、ゼオライト類等のアルミノケイ酸塩、無水ケイ酸(シリカ)が挙げられる。これらは特に限定されるものではないがゼオライトの場合、シリカ/アルミナ比が小さい方がより好ましい傾向にあり、その比は5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下である。
上記ハイドロタルサイト類は、ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイトと同じ結晶構造を有する化合物である。
上記ハイドロタルサイト類としては、下記式(1)に示す物質であることが好ましい。
Figure 2018154714
式(1)中、M2+は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+はAl、Cr、Fe、Co及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属イオンを表し、An−は、NO 、Cl及びCO 2−からなる群から選ばれる少なくとも1種のn価陰イオンを表す。xは0超過1未満の数を表し、nは陰イオンの価数を表し、yは水和水の数を表す。
上記ハイドロタルサイト類は、プラスに荷電した、ブルーサイト型基本層([M2+ 1−x3+ (OH)])と、アニオン及び層間水からなるマイナスに荷電した中間層([An− x/n・yHO])とからなる層状構造化合物であり、結晶全体では電気的中性を保っている。上述のような構造を有することで、塩素系ガスを好適に捕捉することが可能となる。
上記ハイドロタルサイト類としては、例えば、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO等が挙げられる。
上記ゼオライトは、結晶性のアルミノケイ酸塩であり、下記式(2)に示す物質である。
Figure 2018154714
式(2)中、Mは1価カチオン、MIIは2価カチオンを表す。m及びnは整数を表し、xは1以上の数を表す。
上記ゼオライトとしては、親水性ゼオライト、疎水性ゼオライトの何れを用いても良い。
上記ゼオライトは、Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、さらに好ましくは0.8〜1.0である。
上記ゼオライトとしては、Al/Si比率が安定していることから、合成ゼオライトが好ましく、例えば、ゼオライトA:Na12(Al12Si1248)・27HO;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106384)・264HO;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136384)・250HO;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
上記塩素系ガス捕捉物質は、粒子形状であることが好ましい。この場合、上記塩素系ガス捕捉物質がフィルム表面から脱落せずに十分な効果を発揮するための平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。
また、上記塩素系ガス捕捉物質は、多孔質形状であることが好ましい。
上記塩素系ガス捕捉物質は、蛍光X線により測定されるNaCl換算塩素系ガス捕捉能が炭酸ナトリウム対比で0.15〜3.0であることが好ましい。これにより、塩素系ガスを適正に補足することが可能になる。NaCl換算塩素系ガス捕捉能を0.15以上とすることで、必要な塩素系ガス補足能を確保することが可能となり、NaCl換算塩素系ガス捕捉能を3.0以下とすることで、アルカリ性が非常に強くなることなく、吸湿等の作用によりフィルムに悪影響を与えることを防止することができる。上記NaCl換算塩素系ガス捕捉能のより好ましい下限は0.2である。
なお、上記塩素系ガス捕捉能は、予め検量線を作成した後、試料に吸着した塩素量を蛍光X線にて測定し、検量線を用いて塩化ナトリウム換算塩素濃度に計算する。その後、塩化ナトリウム換算塩素濃度を、炭酸ナトリウムについて求められた塩化ナトリウム換算塩素濃度で割ることで、NaCl換算塩素系ガス捕捉能(炭酸ナトリウム対比)を得ることができる。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムは、塩素系ガス捕捉物質をフィルム表面に有するものであれば、特に限定されない。フィルム表面に有するとは、フィルム表面において塩素系ガス捕捉物質の一部又は全部が露出した状態にあることをいい、具体的には例えば、塩素系ガス捕捉物質を含有する表面層をフィルム表面に有する状態、物理的吸着によってフィルム表面に付着している状態、化学的結合によってフィルム表面に結合している状態等が挙げられる。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムにおいて、塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量は、0.05〜3g/mであることが好ましい。0.05g/m以上であることで、充分な塩素系ガス捕捉能を得ることができ、3g/m以下であることで、塩素系ガス捕捉物質が塩素系薬剤包装用水溶性フィルムのヒートシール等を阻害することを防止できる。なお、上記塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量とは、塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの主面の面積に対する塩素系ガス捕捉物質の付着量を意味する。
このような塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量は、付着前後の重量を計測することによって単位面積当たりの付着量を算出することができる。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムでは、塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量(A)に対する、ヘキサンを用いて洗浄した後に残存する塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量(B)を示すB/Aが、0.5以下であることが好ましい。尚、Aについては、塩素系ガス捕捉物質を付与する前後のフィルム重量の差から算出する。
上記B/Aが0.5以下であることで、塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの表面に存在する塩素系ガス捕捉物質が多いことが重要である。その結果、高い耐塩素剤性が得られるとともに、長期間に渡って優れた水溶性を維持することが可能となる。上記B/Aが0.3以下であることがより好ましく、0.2以下とすることが更に好ましい。
(可塑剤)
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムは、可塑剤を含有することが好ましい。
上記可塑剤を含有することで、ガラス転移点を下げることが可能となり、低温での耐久性を向上させることができる。また、上記可塑剤を含有することで、塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの水に対する溶解性を向上させることもできる。
上記可塑剤としては、PVAの可塑剤として一般に用いられているものであれば特に制限はなく、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール誘導体、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物や水等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
上記可塑剤のなかでは、水溶性を向上させることができることから、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、特に水溶性向上の効果が大きいことからグリセリン、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムは、水溶性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤を3〜15重量部含有することが好ましい。上記可塑剤含有量のより好ましい下限は3.2重量部、より好ましい上限は13重量部である。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの厚さは、好ましい上限が100μm、より好ましい上限が80μm、更に好ましい上限が75μmである。本発明の水溶性包装用フィルムの厚さは好ましい下限が10μmである。本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの厚さが上記下限以上であると、薬剤を包装するフィルムの強度がより一層高くなる。本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの厚さが上記上限以下であると、水溶性包装用フィルムとしてのパッケージング性やヒートシール性がより一層高くなり、加工時間がより一層短くなって生産性がより一層高くなる。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムは、さらに必要に応じて、着色剤、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、澱粉などの通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。特に製膜装置のダイスやドラムなどの金属表面と、製膜したフィルムやフィルム原液との剥離性を向上させるために、水溶性樹脂100重量部に対して界面活性剤を0.01〜5重量部の割合で配合することが好ましい。
(塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの製造方法)
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムの製造方法としては、例えば、最初に未処理の水溶性フィルムを作製した後、塩素系ガス捕捉物質を付与する方法が挙げられる。
上記未処理の水溶性フィルムを作製する方法としては、特に限定されないが、水溶性樹脂、可塑剤及び溶媒を含有する水溶性樹脂溶液を支持部材に流延し乾燥する方法を用いることができる。具体的には、溶液流延法(キャスト法)等を挙げることが出来る。
また、押出機で溶融した後、金型により薄膜状に押し出す工程を行う方法等の成形方法を用いてもよい。具体的な成形方法としては、押出成形、インフレーション成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、圧縮成形、カレンダー成形、など公知の成形法を用いることができる。なかでも、溶液流延法もしくは押出成形法を使用することが好ましい。
上記塩素ガス捕捉物質の付与方法としては、単に振り掛ける方法、静電吸着法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法及びスプレー法が挙げられる。
上記塩素系ガス捕捉物質を付与する方法としては、例えば、塩素系ガス捕捉物質を含有する表面層を未処理の水溶性フィルムに積層する方法、塩素系ガス捕捉物質を含有する分散液をスプレーする方法、未処理の水溶性フィルムを分散液に浸漬する方法、未処理の水溶性フィルムに塩素系ガス捕捉物質を吹きつける方法、塩素系ガス捕捉物質を散布してロール等で圧着させる方法等が挙げられる。
上記塩素系ガス捕捉物質を含有する表面層を未処理の水溶性フィルムに積層する方法としては、例えば、塩素系ガス捕捉物質を含有する分散液を塗工、乾燥する方法、塩素系ガス捕捉物質を含有する表面層フィルムをラミネートする方法等が挙げられる。
本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムは、塩素系薬剤の包装に好適に用いることができる。本発明の塩素系薬剤包装用水溶性フィルムを使用することで、水溶性の経時的な低下を防止して、長期間に渡って優れた水溶性を維持することが可能となる。
上記塩素系薬剤とは、23℃、湿度50%の条件で、塩素ガス、次亜塩素酸ガス、塩化水素等の塩素系ガスを放出する薬剤をいう。具体的には例えば、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、トリクロロニトロメタン等が挙げられる。
また、上記塩素系薬剤の態様としては、農薬、洗浄剤、殺菌剤、水処理剤、塩素化剤、脱臭剤等が挙げられる。
本発明によれば、塩素系薬剤の包装材料として使用する場合でも、高い安全性、取扱性が得られるとともに、長期間に渡って優れた溶解性を維持することが可能な塩素系薬剤包装用水溶性フィルムを提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
ピロリドン変性ポリビニルアルコール(PVP変性PVA、重合度1000、ケン化度95.8モル%、ピロリドン変性量4モル%)100重量部、可塑剤(トリメチロールプロパン)5重量部、水400重量部を混合し、ピロリドン変性PVA含有樹脂組成物を得た。得られたピロリドン変性PVA含有樹脂組成物を、ベーカー式フィルムアプリケーターを用いて、OPPフィルムの上に塗工したものを、80℃温風循環式オーブンにて30分乾燥した後、OPPフィルムを剥がすことによって、厚さ50μmの水溶性フィルムを得た。
得られた水溶性フィルムに対して、パウダースプレー装置(ニッカ社製、「K−III」)を用いて、親水性ゼオライトを単位面積当たり含有量が1.9g/mになるように、水溶性フィルムの表面及び裏面に親水性ゼオライト(表面付加物)を散布し、包装用水溶性フィルムを得た。なお、親水性ゼオライトとしては、モレキュラーシーブ5A(ユニオン昭和社製、構造:NaCa〔(AlO12(SiO12〕・27HO、平均粒子径:10μm以下、平均細孔径:0.42nm)を用いた。
使用した親水性ゼオライトのNaCl換算塩素系ガス捕捉能(炭酸ナトリウム対比)を以下の方法で測定した。
(NaCl換算塩素系ガス捕捉能測定)
親水性ゼオライトの試料100mgに粉砕した塩化ナトリウムを3%、10%、20%混合し、蛍光X線用試料容器(容量0.5mL)に入れ、得られた測定結果から、x軸に塩化ナトリウムの濃度、y軸に塩素の単位電流・単位時間当たりの蛍光X線強度(cps/μA)を設定し、検量線を作成した。検量線は粉砕した炭酸ナトリウムについても同様に作成した。
次いで、親水性ゼオライトの試料50mgを蛍光X線用試料容器(容量0.5mL)に入れ、15gのトリクロロイソシアヌル酸と共に500mLのガラス製密閉容器に封入した。上記の密閉容器を60℃の循環型オーブンで24時間加熱した後、試料容器を取り出し、再度混合し、試料に吸着した塩素量を蛍光X線にて測定した。計測された塩素の単位電流・単位時間当たりの蛍光X線強度(cps/μA)を、検量線を用いて塩化ナトリウム換算塩素濃度に計算した。
各試料で求めた塩化ナトリウム換算塩素濃度を、炭酸ナトリウムについて求められた塩化ナトリウム換算塩素濃度で割ることで、炭酸ナトリウムで規格化した塩化ナトリウム換算塩素濃度を求め、塩素系ガス捕捉能とした。
なお、蛍光X線強度は、蛍光X線分析装置(島津製作所社製、EDX−800HS、Si(Li)半導体検出器搭載)を用い、以下の条件で分析を行った。
X線管球:Rh管球(25W)
測定X線:Kα
印加電圧:20kV
フィルター:アルミニウム
測定時間:100秒
雰囲気:真空
測定径:5mm
(実施例2〜4、8)
親水性ゼオライト(モレキュラーシーブ5A)に代えて、以下の物質を使用し、単位面積当たり含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にして包装用水溶性フィルムを得た。
・実施例2:疎水性ゼオライト(ユニオン昭和社製:アブセンツ3000、平均粒子径:5μm、平均細孔径:0.6nm)
・実施例3:ハイドロタルサイト(協和化学社製:DHT−4A、構造:Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO、平均粒子径:0.45μm)
・実施例4:炭酸ナトリウム無水物(トクヤマ社製:ライト灰の粉砕物、構造:NaCO、平均粒子径:5μm)
・実施例8:破砕シリカ(龍森社製:CMC−12S、構造:SiO、平均粒子径:5μm)
(実施例5)
ピロリドン変性ポリビニルアルコール(PVP変性PVA、重合度1000、ケン化度95.8モル%、ピロリドン変性量4モル%)100重量部に代えて、部分ケン化ポリビニルアルコール(重合度1300、ケン化度88.0モル%、4重量%水溶液粘度14mPa・s)100重量部を使用した。また、親水性ゼオライトの単位面積当たり含有量を2.1g/mとした以外は実施例1と同様にして包装用水溶性フィルムを得た。
(実施例6、7)
親水性ゼオライトの単位面積当たり含有量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にして包装用水溶性フィルムを得た。
(比較例1)
実施例1で作製した厚さ50μmの水溶性フィルム(親水性ゼオライトを散布する前のもの)を比較例1のフィルムとした。
(比較例2)
実施例5で作製した厚さ50μmの水溶性フィルム(親水性ゼオライトを散布する前のもの)を比較例2のフィルムとした。
(比較例3)
ピロリドン変性ポリビニルアルコール(PVP変性PVA、重合度1000、ケン化度95.8モル%、ピロリドン変性量4モル%)100重量部、可塑剤(トリメチロールプロパン)5重量部、親水性ゼオライト(モレキュラーシーブ5A)2重量部、水400重量部を混合し、ピロリドン変性PVA含有樹脂組成物を得た。得られたピロリドン変性PVA含有樹脂組成物を、ベーカー式フィルムアプリケーターを用いて、OPPフィルムの上に塗工したものを、80℃温風循環式オーブンにて30分乾燥した後、OPPフィルムを剥がすことによって、厚さ50μmの水溶性フィルムを得た。
(評価)
(1)水溶性(溶解率)
得られたフィルムを20℃、50%RHで15時間以上静置した後、3×1.5cmの試験片に切り分けた。次いで、試験片の重量(Ws)を測定し、20mlの容器に試験片と12mlの水を投入した後、180rpmで10分間振盪した。
更に、重量を測定したステンレスの200メッシュフィルター(Wm)で濾過した後、80℃で1時間メッシュフィルターを乾燥させた。その後、23℃、50%RH、15時間以上で静置した後のメッシュフィルターの重量(Wt)を測定し、以下の式から溶解率を測定した。

溶解率(%)=[Ws−(Wt−Wm)]/Ws×100(%)
(2)耐薬品性
得られたフィルムを20℃、50%RHで15時間以上静置した後、8×14cmの試験片に切り分けた。次いで、トリクロロイソシアヌル酸のタブレット(φ30mm×15mm 30g)を6×12cmの不織布(PE&PP)で包装した後、更に試験片で包装し、試験片の3辺を幅1cmでシールして測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルを500mlの密封容器に入れ、60℃で24時間静置した後、測定サンプルを取り出し、トリクロロイソシアヌル酸のタブレットを測定サンプルから出した。次いで、測定サンプル中の試験片の中央部について、「(1)水溶性(溶解率)」と同様の測定を行うことで、耐薬品性を評価した。
なお、測定サンプルを「60℃で48時間静置した」場合についても、同様に耐薬品性を評価した。
(3)有機溶剤洗浄前後の表面付加物含有比
得られたフィルムについて、ヘキサンを用いてウエスで拭き取り、拭き取り前後のフィルム重量の差から、有機溶剤を用いた洗浄後に残存する表面付加物の単位面積当たり含有量(B)を測定した。次いで、ヘキサンを用いて洗浄する前の表面付加物の単位面積当たり含有量(A)との比率(B/A)を算出した。尚、Aについては、表面付加物を散布する前後のフィルム重量の差から算出した。
Figure 2018154714
本発明によれば、塩素系薬剤の包装材料として使用する場合でも、高い安全性、取扱性が得られるとともに、長期間に渡って優れた溶解性を維持することが可能な塩素系薬剤包装用水溶性フィルムを提供することができる。

Claims (10)

  1. 塩素系薬剤を包装するための塩素系薬剤包装用水溶性フィルムであって、
    水溶性樹脂を含有し、
    塩素系ガスを捕捉することが可能な塩素系ガス捕捉物質をフィルム表面に有する
    ことを特徴とする塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  2. 塩素系ガス捕捉物質は、蛍光X線により測定されるNaCl換算塩素系ガス捕捉能が炭酸ナトリウム対比で0.15〜3.0であることを特徴とする請求項1記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  3. 塩素系ガス捕捉物質は、粒子形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  4. 塩素系ガス捕捉物質を含有する表面層をフィルム表面に有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  5. 塩素系ガス捕捉物質は、物理的吸着によってフィルム表面に付着していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  6. 塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量が、0.05〜3g/mであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  7. 塩素系ガス捕捉物質は、下記式(1)に示す物質を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
    Figure 2018154714
    式(1)中、M2+は、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価金属イオンを表し、M3+はAl、Cr、Fe、Co及びInからなる群から選ばれる少なくとも1種の3価金属イオンを表し、An−は、NO 、Cl及びCO 2−からなる群から選ばれる少なくとも1種のn価陰イオンを表す。xは0超過1未満の数を表し、nは陰イオンの価数を表し、yは水和水の数を表す。
  8. 塩素系ガス捕捉物質は、下記式(2)に示す物質を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
    Figure 2018154714
    式(2)中、Mは1価カチオン、MIIは2価カチオンを表す。m及びnは整数を表し、xは1以上の数を表す。
  9. 塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量(A)に対する、ヘキサンを用いて洗浄した後に残存する塩素系ガス捕捉物質の単位面積当たり含有量(B)を示すB/Aが、0.5以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
  10. 水溶性樹脂は、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の塩素系薬剤包装用水溶性フィルム。
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