以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのインクジェットプリンタについて説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの斜視図である。
図において、10はインクジェットプリンタ、Frは該インクジェットプリンタ10の本体、すなわち、装置本体を支持するフレームであり、該フレームFrは、インクジェットプリンタ10を前側(図において手前側)から見たときの左端から右端にかけて延在させて配設された受け板PB、該受け板PBの左端から立ち上げて形成された第1の主支持部としてのサイドプレートPL1、受け板PBの右端から立ち上げて形成された第2の主支持部としてのサイドプレートPR1、前記サイドプレートPL1より所定の距離だけ右方において受け板PBから立ち上げて形成された第1の副支持部としての枠体PL2、及び前記サイドプレートPR1より所定の距離だけ左方において受け板PBから立ち上げて形成された第2の副支持部としての枠体PR2を備える。
前記サイドプレートPL1、PR1間に、レール15が延在させて配設(架設)され、該レール15に沿ってキャリッジ17が走査方向に移動自在に配設され、該キャリッジ17に、一つ又は複数の、本実施の形態においては、複数の後述される記録ヘッドHdi(i=1、2、…)(図1)が、複数のノズルが開口する面、すなわち、ノズル面Sdを下方に向けて搭載される。
また、前記サイドプレートPR1に駆動側のプーリ18が、サイドプレートPL1に従動側のプーリ19が回転自在に配設され、プーリ18、19間に無端ベルト21が走行自在に張設され、該無端ベルト21の所定の箇所に前記キャリッジ17が取り付けられる。そして、前記プーリ18にキャリッジ移動用の駆動部としてのキャリッジモータ22が連結される。
したがって、該キャリッジモータ22を駆動し、無端ベルト21を走行させることによってキャリッジ17を左右方向に移動させ、キャリッジ17の移動に伴って各記録ヘッドHdiを左右方向に移動させることができる。また、このとき、記録ヘッドHdiからインク滴を吐出し、副走査方向、すなわち、キャリッジ17の移動方向に対して直交する方向に搬送される記録媒体Pに付着させることによって、記録媒体Pに文字、イメージ等の画像を形成し、印刷を行うことができる。なお、記録媒体Pとしては、用紙のほかに、塩化ビニル、PET等の樹脂製のフィルム等を使用することができる。
前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させてリニアスケール23が配設され、該リニアスケール23の目盛りが、キャリッジ17に配設された後述されるエンコーダ79(図3)によって読み取られ、該エンコーダ79のセンサ出力に基づいて、キャリッジ17の位置が検出される。キャリッジ17の位置の変化及び時間に基づいてキャリッジ17の移動速度を算出することができる。
また、前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させて、プレート状の形状を有するプラテン25が配設される。該プラテン25は、前記受け板PB上における枠体PL2、PR2間に配設され、プラテン25上を搬送される記録媒体Pを支持する。
そして、前記プラテン25の下方に、記録媒体Pを負圧によってプラテン25に引き寄せるための図示されない空気吸引装置が配設される。該空気吸引装置は吸引用のファンを備え、該ファンによって空気が吸引され、記録媒体Pはプラテン25によって平坦に支持される。
また、前記プラテン25より後方に、第1の媒体案内部としての図示されないリヤペーパガイドが配設される。該リヤペーパガイドは、図示されない繰出しロールから繰り出された記録媒体Pを前記プラテン25に案内する。そのために、記録媒体Pの搬送方向における前記リヤペーパガイドとプラテン25との間に、搬送部材としての搬送ローラ対30が回転自在に配設される。
該搬送ローラ対30は、プラテン25に隣接させて、キャリッジ17の移動方向における複数箇所に、回転自在に配設された第1のローラとしての搬送ローラ31、及び該搬送ローラ31より上方において回転自在に配設され、記録媒体Pを搬送ローラ31に押し付ける第2のローラとしてのピンチローラ32から成る。後述される搬送用の駆動部としての搬送モータ78(図3)を駆動し、搬送ローラ31を回転させると、ピンチローラ32が連れ回りで回転させられる。
これにより、記録媒体Pは、搬送ローラ31とピンチローラ32とによって挟まれた状態で繰出しロールから繰り出され、リヤペーパガイドに沿って搬送され、プラテン25上に送られる。そして、記録媒体Pと記録ヘッドHdiのノズル面Sdとが対向させられ、記録ヘッドHdiからインク滴が吐出され、記録媒体Pに付着させられる。
この場合、前記搬送モータ78を駆動して記録媒体Pを所定の距離搬送した後、搬送モータ78を停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインク滴を吐出することによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。1走査が終了すると、前記搬送モータ78を再び駆動して記録媒体Pを所定の距離搬送した後、搬送モータ78を停止させ、その状態でキャリッジ17を所定の方向、本実施の形態においては、反対の方向に移動させ、記録ヘッドHdiからインク滴を吐出することによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。この動作を繰り返すことによって、記録媒体Pに画像が形成され、印刷が行われる。
なお、本実施の形態においては、シングルパス方式によって印刷が行われるようになっているが、マルチパス方式によって印刷を行う場合は、前記記録媒体Pを搬送する距離が記録ヘッドHdiの図示されないノズル列より短くされ、複数の走査を行うことによって1ライン分の画像が形成される。
また、前記プラテン25より前方に、印刷が行われた後の記録媒体Pを媒体排出口Eqに案内するための第2の媒体案内部としてのフロントペーパガイド33が配設される。該フロントペーパガイド33は、前記プラテン25から水平方向に排出された記録媒体Pを下方に向けて案内するために、湾曲した形状を有する。
したがって、図示されない媒体導入口から供給された記録媒体Pは、リヤペーパガイドによって案内されてプラテン25に送られ、プラテン25上において、記録ヘッドHdiから吐出されたインク滴が付着させられて印刷が行われ、印刷が行われた後、フロントペーパガイド33によって媒体排出口Eqに案内され、図示されない巻取装置に送られて巻き取られる。
ところで、印刷が行われた記録媒体Pにはインク滴が付着しており、インク滴が付着した記録媒体Pを、そのままインクジェットプリンタ10から排出し、その後、巻取装置によって巻き取ると、記録媒体Pがインク滴で汚れてしまう。
そこで、本実施の形態においては、記録媒体P上のインク滴を乾燥させ、記録媒体Pに定着させるために、前記リヤペーパガイド、プラテン25及びフロントペーパガイド33の裏面に加熱体としての図示されないヒータが配設され、該ヒータによって、リヤペーパガイド、プラテン25及びフロントペーパガイド33上を搬送される記録媒体Pが加熱されるようになっている。
本実施の形態においては、前記レール15がサイドプレートPL1、PR1間に配設され、プラテン25が枠体PL2、PR2間に配設されるので、キャリッジ17がプラテン25上を移動させられる間は各記録ヘッドHdiによる印刷が行われ、キャリッジ17が、サイドプレートPL1と枠体PL2との間に置かれているとき、及びサイドプレートPR1と枠体PR2との間に置かれているときは、各記録ヘッドHdiによる印刷が行われない。
そして、本実施の形態においては、キャリッジ17の移動方向における一端側、すなわち、サイドプレートPL1と枠体PL2との間が、キャリッジ17の位置の原点合わせを行うための第1のポジションとしてのホームポジションにされ、キャリッジ17の移動方向における他端側、すなわち、サイドプレートPR1と枠体PR2との間が、キャリッジ17をプラテン25上から退避させるとともに、折り返すための第2のポジションとしての退避ポジションにされる。
前記ホームポジションに、記録ヘッドHdiと対向させてキャップユニット43が配設される。該キャップユニット43は、インクジェットプリンタ10を長時間使用しない場合に、記録ヘッドHdiのノズル面Sdを覆い、ノズル内のインクの粘度が高くなってノズルが詰まったり、ノズルにごみ等が付着したりするのを防止する。
そして、前記退避ポジションに、記録ヘッドHdiと対向させてワイプユニット41が配設される。該ワイプユニット41は、ノズル面Sdを払拭し、ノズル面Sdに付着した紙粉等の異物、インク等を除去するための図示されないワイパ、及び記録ヘッドHdiから所定のインク滴分のインクが吐出されたときに、インクを受ける図示されないインク受けを備える。したがって、ワイプユニット41を動作させることによって、ノズル面Sdを良好な状態に維持することができるので、画像を形成する際に、インク滴を円滑に吐出することができる。なお、前記インク受けは、すべての記録ヘッドHdiから同時にインクが吐出されても受けることができるだけの幅を有する。
ところで、記録ヘッドHdiは、画像データに従ってインク滴を吐出して画像を形成するので、画像データによっては、インク滴が吐出されないノズルがある。その場合、インク滴が吐出されないノズル内でインクの粘度が高くなると、前記ノズルからインク滴を円滑に吐出することができなくなってしまう。
そこで、定期的に、又は所定のタイミングで、本実施の形態においては、所定のタイミングで、記録ヘッドHdiを駆動し、ノズルから所定のインク滴分のインクを吐出し、ノズル内のインクの粘度が高くなるのを防止するようにしている。
そのために、キャリッジ17の移動方向における所定の箇所、本実施の形態においては、前記ホームポジションにおけるキャップユニット43と枠体PL2との間に、プラテン25の端部と隣接させて、かつ、記録ヘッドHdiと対向させてスピットユニット45が配設される。該スピットユニット45は、ノズル面Sdと対向させて配設された後述されるインク受け部収容部48(図1)を備え、該インク受け部収容部48は、記録ヘッドHdiがホームポジションを移動しているときに、ノズルから吐出された所定のインク滴分のインクを受ける。
また、定期的に、又は所定のタイミングで、本実施の形態においては、所定のタイミングで、記録ヘッドHdi内のインクを加圧し、ノズル内で粘度が高くなったインクを強制的に排出するようにしている。
そのために、キャリッジ17の移動方向における所定の箇所、本実施の形態においては、前記退避ポジションにおけるワイプユニット41と枠体PR2との間に、プラテン25の端部と隣接させて、かつ、記録ヘッドHdiと対向させてパージユニット44が配設される。該パージユニット44は、ノズル面Sdと対向させて配設され、樹脂製の多孔質部材、例えば、合成樹脂製のスポンジによって形成された図示されないインク受け部を備える。該インク受け部は、記録ヘッドHdiが退避ポジションを移動しているときに、ノズルから強制的に排出されたインクを受けて吸収する。
次に、スピットユニット45について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるスピットユニットの概念図である。
図において、45はスピットユニット、48は、記録ヘッドHdiの下方の所定の位置に、記録ヘッドHdiと対向させて配設されたインク受け部収容部、55は該インク受け部収容部48内のインクを廃棄するインク廃棄部である。
本実施の形態においては、キャリッジ17において、複数の記録ヘッドHdiが2列に、かつ、千鳥状に配列され、インク受け部収容部48がフレームFrの前端から後端にかけて延在させられるので、キャリッジ17は、すべての記録ヘッドHdiが順にインク受け部収容部48上に置かれ、インク受け部収容部48と対向するように移動させられる。
該インク受け部収容部48は、上縁が開放された箱状体から成るケース61、及び該ケース61内に収容され、記録ヘッドHdiから吐出されるインクを受けて吸収するインク受け部60を備える。
そして、該インク受け部60は、特性の異なる複数の層、本実施の形態においては、2個の第1、第2のインク受け部材62、63をインク受け部収容部48の上方及び下方に積層させて配設することによって形成される。また、インク受け部60は、記録ヘッドHdiが駆動されてノズル内から吐出された所定のインク滴分のインクを受けて吸収する。
前記第1、第2のインク受け部材62、63は、樹脂製の多孔質部材、本実施の形態においては、合成樹脂製のスポンジによって形成され、合成樹脂材料を選択することによって、前記第1のインク受け部材62は第2のインク受け部材63よりインクに対する親水性が高くされ、第2のインク受け部材63は第1のインク受け部材62よりインクに対する保水性が高くされる。
なお、ケース61の上縁に、上方に向けて突出させて、分離促進部としての環状の縁部65が形成される。該縁部65には、インクに対して撥水性を有するように、表面処理が施され、縁部65に付着したインク、インクのミスト等をケース61内に誘導する。
前記第1のインク受け部材62は、ノズル面Sdの直下に配設され、ノズルから排出されたインクを受けて吸収し、第2のインク受け部材63は、第1のインク受け部材62の下方に配設され、第1のインク受け部材62によって吸収されたインクを更に吸収する。
この場合、第1のインク受け部材62がインクに対する親水性が高くされるので、ノズルから吐出されたインクが第1のインク受け部材62の表面上で滴となって留まることはない。
また、第2のインク受け部材63が、インクに対する保水性が高くされ、第1のインク受け部材62より下方に配設されるので、第1のインク受け部材62に吸収されたインクが第2のインク受け部材63の方向に流れやすい。
さらに、第1のインク受け部材62が第2のインク受け部材63より薄く形成されるので、第2のインク受け部材63は、第1のインク受け部材62によって吸収されたインクを容易に吸収することができる。
また、前記インク廃棄部55は、前記インク受け部60によって吸収されたインクを廃棄インクとして溜めるインク溜めとしての廃インクタンク71、前記インク受け部収容部48のケース61と廃インクタンク71とを連結し、インク受け部60によって吸収されたインクを廃インクタンク71に送るためのインク流路としてのチューブ72、及び該チューブ72に配設され、インク受け部収容部48内のインクを吸引する吸引用のポンプ、すなわち、吸引ポンプPsを備える。
該吸引ポンプPsを駆動すると、インク受け部収容部48内のインクが吸引され、チューブ72を流れ、廃インクタンク71に排出されるとともに、ケース61の上縁から空気が吸引され、インク受け部収容部48内を矢印方向に流れ、インクと共にチューブ72を流れ、廃インクタンク71に排出される。
したがって、ノズルから吐出されたインクを廃インクタンク71に円滑に排出することができる。
なお、本実施の形態においては、吸引ポンプPsが配設されるようになっているが、吸引ポンプPsを配設することなく、重力によって、インク受け部収容部48内のインクを廃インクタンク71に排出することができる。
また、保水性の高い材料はインクを撥水する傾向があるので、仮に、インク受け部収容部48内において、第2のインク受け部材63をノズル面Sdと対向させて配設すると、第2のインク受け部材63の表面においてインクが撥水してしまう。したがって、ノズルから吐出されたインクを十分に吸収することができない。
本実施の形態においては、親水性が高い第1のインク受け部材62がノズル面Sdと対向させて配設されるので、ノズルから吐出されたインクを十分に吸収することができる。
ところで、第1、第2のインク受け部材62、63は、樹脂製の多孔質部材、本実施の形態においては、合成樹脂製のスポンジによって形成されているので、インクを吸収するのに伴ってインク受け部60が膨張する。この場合、インク受け部60を包囲するケース61によって膨張が規制されると、インクを吸収するのに伴って、インク受け部60が反ったり、上方に向けて膨出したりして変形し、ノズル面Sdを損傷させてしまう。
そこで、本実施の形態においては、インク受け部60がインクを吸収して膨張して、変形することがないように、インクを吸収していない状態で、インク受け部60の寸法がケース61の寸法より小さくされ、インク受け部60の外周面とケース61の内周面との間に所定の隙間が形成され、該隙間によって、インク受け部60がインクを吸収したときの膨張を吸収するようになっている。
また、第1、第2のインク受け部材62、63を、樹脂材料を選択することによって、平面方向の膨張率が厚さ方向の膨張率より高い材料で形成し、インクを吸収したときに、インク受け部60が主として平面方向に膨張し、厚さ方向には膨張しないようにしている。
さらに、ノズル内のインクを吐出し、廃インクタンク71に排出した後に、インク受け部収容部48内にインクが残っていると、インク受け部60が膨張したままの状態になるので、本実施の形態においては、吸引ポンプPsを継続して駆動し、インク受け部収容部48内のインクを十分に排出するようにしている。
次に、インクジェットプリンタ10の制御装置について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
図において、80はインクジェットプリンタ10の全体の制御を行う制御部、81は第1の記憶装置としてのROM、82は第2の記憶装置としてのRAM、83は第3の記憶装置としての設定値メモリである。
前記制御部80は、演算装置としてのCPUを備え、ROM81に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。ROM81には前記プログラムのほかに各種の初期値等が記録され、RAM82には各種のデータが一時的に記録される。また、RAM82はCPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。そして、前記設定値メモリ83には、制御部80が各種の処理を行う際に使用される設定値、該各設定値の初期値等が記録される。
そして、前記制御部80は、第1のヘッド駆動処理部としての印刷処理部Pr1、第2のヘッド駆動処理部としての保守処理部Pr2、搬送処理部Pr3、キャリッジ駆動処理部Pr4、吸引ポンプ駆動処理部Pr5等を備える。
前記印刷処理部Pr1は前記記録ヘッドHdiに画像データを送り、記録ヘッドHdiは、画像データに基づいて、所定のタイミングでインク滴を吐出し、印刷を行う。前述されたように、エンコーダ79のセンサ出力に基づいてキャリッジ17の位置が検出されるので、所望の位置にインク滴を吐出し、所望の画像を形成することができる。
前記保守処理部Pr2は、前記記録ヘッドHdiに、画像データとは異なる、保守用のインク吐出用データを送り、記録ヘッドHdiはインク吐出用データに基づいて、所定のタイミングで所定のインク滴分のインクを吐出する。
前記搬送処理部Pr3は、前記搬送モータ78を駆動し、搬送ローラ対30(図2)を回転させ、記録媒体Pを搬送する。
前記キャリッジ駆動処理部Pr4は、PWM制御によって前記キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17を移動させる。そのために、キャリッジ駆動処理部Pr4は、ROM81からキャリッジ17の目標位置及び目標速度を読み出し、前記エンコーダ79のセンサ出力を受け、キャリッジ17の位置を検出し、制御値としてのPWM制御信号を発生させてキャリッジモータ22に送る。該キャリッジモータ22は、PWM制御信号を受けて、PWM制御信号のデューティに比例して回転速度を変化させ、キャリッジ17を加速したり減速したりして目標速度で目標位置に移動させる。
前記吸引ポンプ駆動処理部Pr5は、吸引ポンプPsを駆動する。該吸引ポンプPsが駆動されると、インク受け部収容部48からインク及び空気が吸引され、廃インクタンク71に排出される。
次に、スピットユニット45の動作について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態におけるスピットの動作を説明するための図である。なお、横軸にキャリッジ17の位置を、縦軸にキャリッジ17の速度Vを採ってある。
図において、位置Saと位置Sdとの間がホームポジションであり、位置Sdと位置Sgとの間がプラテン25が配設された印刷可能領域であり、位置Sgと位置Skとの間が退避ポジションである。そして、ホームポジションにおける位置Saと位置Sbとの間にキャップユニット43が、位置Sbと位置Scとの間にスピットユニット45が配設され、退避ポジションにおける位置Sgと位置Siとの間にパージユニット44が、位置Siと位置Skとの間にワイプユニット41が配設される。
そして、プラテン25上の所定の位置、例えば、位置Seと位置Sfとの間に記録媒体Pを送り、記録媒体Pに画像を形成する場合、キャリッジ駆動処理部Pr4は、位置Scをホームポジション側の折返し点とし、位置Shを退避ポジション側の折返し点として、キャリッジ17を移動させる。また、印刷処理部Pr1は、位置Se、Sfで、画像データを記録ヘッドHdiに送り、記録ヘッドHdiからインク滴を記録媒体Pに吐出させ、画像を形成する。したがって、位置Seと位置Sfとの間が、実際に画像が形成される印刷領域になる。
画像データに従って画像を形成する場合、キャリッジ17は、実線L1で表されるように挙動する。すなわち、キャリッジ17は、位置Scで加速を開始し、位置Seで目標速度である速度Vcになると、位置Seから位置Sfまでの間を速度Vcで移動させられ、記録ヘッドHdiは、画像データに従って所定のノズルからインク滴を吐出し、記録媒体Pに画像を形成する。そして、位置Sfに到達すると、キャリッジ17は、減速を開始し、位置Shで停止させられる。続いて、キャリッジ17は、位置Shで折り返して加速を開始し、位置Sfで速度Vcになると、位置Sfから位置Seまでの間を速度Vcで移動させられ、位置Seに到達すると、減速を開始し、位置Scで停止させられる。そして、位置Scで折り返して再び加速し、この動作を繰り返す。これにより、位置Seと位置Sfとの間を搬送される記録媒体Pに対して印刷を行うことができる。
ところで、本実施の形態においては、前述されたように、記録ヘッドHdiを駆動し、ノズルから所定のインク滴分のインクをスピットユニット45に対して吐出し、ノズル内のインクの粘度が高くなるのを防止するようにしている。その場合、キャリッジ17は、破線L2で示されるように挙動し、位置Sbと位置Scとの間に配設されたスピットユニット45の上方を移動させられる。
すなわち、キャリッジ17は、位置Sfから位置Seに向けて速度Vcで移動させられ、位置Seに到達しても減速することなく、位置Seから位置Sbまでの間を同じ速度Vcで移動させられる。そして、キャリッジ17が位置Sdに到達すると、記録ヘッドHdiは、インク吐出用データに従って、各ノズルのうちの、位置Sdに到達したノズルから順にインクを吐出する。
このとき、記録ヘッドHdiがインク吐出用データに従って駆動される間のキャリッジ17の速度Vcは、前記記録ヘッドHdiが画像データに従って駆動される間のキャリッジ17の速度Vcと等しくされる。したがって、記録媒体Pに画像を形成するときのように、キャリッジ17が移動させられている間に、記録ヘッドHdiからインクがスピットユニット45に対して吐出される。
続いて、キャリッジ17は、位置Sbに到達すると減速を開始し、位置Saで停止させられる。そして、キャリッジ17は、位置Saで折り返して加速し、位置Sbで速度Vcになると、位置Sbから位置Sfまでの間を速度Vcで移動させられ、位置Seと位置Sfとの間で、記録ヘッドHdiが画像データに従って記録媒体Pにインク滴を吐出し、画像を形成する。
また、本実施の形態においては、前述されたように、記録ヘッドHdi内のインクが加圧され、ノズル内で粘度が高くなったインクが強制的にパージユニット44に排出されるようになっている。その場合、キャリッジ17は、破線L3で示されるように挙動し、位置Sgと位置Siとの間に配設されたパージユニット44の上方で停止させられる。
すなわち、キャリッジ17は、位置Seから位置Sfに向けて速度Vcで移動させられ、位置Sfに到達しても減速することなく、位置Sfから位置Sgまでの間を同じ速度Vcで移動させられる。そして、キャリッジ17は位置Sgと位置Siとの間のパージユニット44の上方に到達すると停止させられ、記録ヘッドHdi内のインクが加圧され、ノズル内で粘度が高くなったインクが強制的にパージユニット44に排出される。そして、キャリッジ17は、位置Sjに到達すると、減速を開始し、位置Skで停止させられる。続いて、キャリッジ17は、位置Skで折り返して加速させられ、位置Sjで速度Vcになると、位置Sjから位置Seまでの間を速度Vcで移動させられ、位置Sfから位置Seまでの間で、記録ヘッドHdiが画像データに従って記録媒体Pにインク滴を吐出し、画像を形成する。
なお、ノズル内で粘度が高くなったインクを強制的にパージユニット44に排出する必要がない場合、キャリッジ17が、パージユニット44を通過した後、位置Siに到達すると、記録ヘッドHdiを駆動し、ノズルから所定のインク滴分のインクをワイプユニット41対して吐出することができる。
その場合、キャリッジ17は、位置Seから位置Sfに向けて速度Vcで移動させられ、位置Sfに到達しても減速することなく、位置Sfから位置Sjまでの間を同じ速度Vcで移動させられる。そして、キャリッジ17が位置Siに到達すると、記録ヘッドHdiは、インク吐出用データに従って、各記録ヘッドHdiのすべてのノズルからインクを吐出する。
このとき、キャリッジ17は、位置Sjに到達するまで速度Vcで移動させられ、位置Sjに到達すると減速を開始し、位置Skで停止させられるが、ワイプユニット41においては、すべての記録ヘッドHdiに対応させてインク受けが配設されているので、各記録ヘッドHdiのすべてのノズルから同時に所定の滴数分のインクが吐出されても、前記インク受けによって受けることができる。
キャリッジ17は、位置Skで停止させられると、位置Skで折り返して加速させられ、位置Sjで速度Vcになると、位置Sjから位置Seまでの間を速度Vcで移動させられ、位置Sfから位置Seまでの間で記録媒体Pに画像が形成される。
次に、スピットユニット45に所定のインク滴分のインクを吐出する際の制御部80の動作について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
記録媒体Pに画像を形成している間、キャリッジ駆動処理部Pr4(図3)は、キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17を移動させ、搬送処理部Pr3は、搬送モータ78を駆動し、記録媒体Pを搬送し、印刷処理部Pr1は、前記記録ヘッドHdiに画像データを送り、記録ヘッドHdiはインク滴を記録媒体Pに吐出する。
本実施の形態において、スピットユニット45へのインクの吐出、及びワイプユニット41へのインクの吐出は、それぞれ、あらかじめ設定されたタイミングで行われる。
そのために、制御部80は、キャリッジ17による走査が行われるたびに走査回数をインクリメントする。そして、第1、第2の走査回数ε1、ε2が設定され、第1、第2の走査回数ε1、ε2の走査が行われたかどうかが判断される。
本実施の形態においては、前述されたように、搬送モータ78が駆動され、所定の量だけ記録媒体Pが搬送されるごとに、キャリッジ17によって1走査が行われるようになっている。
すなわち、前記保守処理部Pr2は、記録媒体Pに画像が形成され、キャリッジ17が図4に示される位置Sfから位置Seに向かっている間に、キャリッジ17によって第1の走査回数ε1の走査が行われたかどうかを判断し、第1の走査回数ε1の走査が行われた場合、キャリッジ駆動処理部Pr4は、キャリッジ17が位置Seに到達しても、キャリッジ17を減速させることなく、記録ヘッドHdiがスピットユニット45の上方に位置するように速度Vcで移動させる。
そして、キャリッジ17が位置Sdに到達すると、前記保守処理部Pr2は、スピットユニット45の上方、すなわち、位置Sdに到達した記録ヘッドHdiにインク吐出用データを送り、記録ヘッドHdiを駆動して、ノズルから所定のインク滴分、本実施の形態においては、10個のインク滴分のインクを吐出する。
続いて、吸引ポンプ駆動処理部Pr5は、吸引ポンプPsを駆動し、インク受け部収容部48内のインク、及びを空気を吸引し、チューブ72を介して廃インクタンク71に排出する。
一方、キャリッジ17によって第1の走査回数ε1の走査が行われていない場合、前記保守処理部Pr2は、記録媒体Pに画像が形成され、キャリッジ17が図4に示される位置Seから位置Sfに向かっている間に、キャリッジ17によって第2の走査回数ε2の走査が行われたかどうかを判断する。第2の走査回数ε2の走査が行われた場合、キャリッジ駆動処理部Pr4は、キャリッジ17が位置Sfに到達しても、キャリッジ17を減速させることなく、すべての記録ヘッドHdiがワイプユニット41の上方に位置するように速度Vcで移動させる。
そして、キャリッジ17が位置Siに到達すると、前記保守処理部Pr2は、すべての記録ヘッドHdiにインク吐出用データを送り、すべての記録ヘッドHdiを駆動して、すべてのノズルから所定のインク滴分、本実施の形態においては、10個のインク滴分のインクを吐出する。
このようにしてノズル内のインクが吐出されると、制御部80は走査回数をリセットする。この場合、退避ポジションでワイプユニット41にインクが吐出されたので、走査回数に1がセットされる。
なお、スピットユニット45及びワイプユニット41にインクを吐出する際のインク滴の個数の値、本実施の形態においては、「10」は、あらかじめ設定値メモリ83(図3)に記録され、保守処理部Pr2は設定値メモリ83からインク滴の個数の値を読み出す。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 保守処理部Pr2は第1の走査回数ε1の走査が行われたかどうかを判断する。第1の走査回数ε1の走査が行われた場合はステップS2に進み、第1の走査回数ε1の走査が行われていない場合はステップS4に進む。
ステップS2 キャリッジ駆動処理部Pr4は記録ヘッドHdiがスピットユニット45の上方に位置するようにキャリッジ17を移動させる。
ステップS3 保守処理部Pr2はスピットユニット45の上方に到達した記録ヘッドHdiからインクを吐出し、ステップS7に進む。
ステップS4 保守処理部Pr2は第2の走査回数ε2の走査が行われたかどうかを判断する。第2の走査回数ε2の走査が行われた場合はステップS5に進み、第2の走査回数ε2の走査が行われていない場合は処理を終了する。
ステップS5 キャリッジ駆動処理部Pr4はすべての記録ヘッドHdiがワイプユニット41の上方に位置するようにキャリッジ17を移動させる。
ステップS6 保守処理部Pr2はすべての記録ヘッドHdiからインクを吐出する。
ステップS7 制御部80は走査回数をリセットし、処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、キャリッジ17の移動方向における所定の箇所に、記録ヘッドHdiと対向させて、インク受け部収容部48が配設され、インク受け部収容部48内に、特性の異なる第1、第2のインク受け部材62、63を備えたインク受け部60が収容される。
そして、記録ヘッドHdiが駆動され、ノズル内から所定のインク滴分のインクが吐出されると、前記インク受け部60において、インクに対して親水性が高くされた上方の第1のインク受け部材62によって、ノズル内から吐出されたインクが吸収される。
したがって、インク受け部60において、ノズル内から吐出されたインクがインク受け部収容部48に当たり、跳ね返り等が生じるのを防止することができるので、インク受け部収容部48内でインクのミストが飛散してノズル面Sdに付着したり、インク受け部収容部48の各所に付着したりすることがない。その結果、インクジェットプリンタ10が汚れるのを防止することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図6は本発明の第2の実施の形態におけるスピットユニットの概念図である。
図において、45はスピットユニット、148は、記録ヘッドHdi(図1)の下方の所定の位置に、記録ヘッドHdiと対向させて配設されたインク受け部収容部である。
該インク受け部収容部148は、上縁が開放された箱状体から成るケース161、及び該ケース161内に収容され、記録ヘッドHdiから吐出されるインクを受けて吸収するインク受け部160を備える。
そして、該インク受け部160は、特性の異なる複数の層、本実施の形態においては、2個の第1、第2のインク受け部材62、163をインク受け部収容部148の上方及び下方に積層させて配設することによって形成される。
第1、第2のインク受け部材62、163は、樹脂製の多孔質部材、本実施の形態においては、合成樹脂製のスポンジによって形成され、合成樹脂材料を選択することによって、前記第1のインク受け部材62は第2のインク受け部材163よりインクに対する親水性が高くされ、第2のインク受け部材163は第1のインク受け部材62よりインクに対する保水性が高くされる。
本実施の形態においては、ケース161の内周面Sinに、上縁の近傍を除いてテーパ部が形成され、ケース161内の断面積が上方ほど大きく、下方ほど小さくされる。また、第2のインク受け部材163の外周面Souに、ケース161の内周面Sinに対向させてテーパ部が形成される。
前記第1のインク受け部材62は、ノズル面Sdの直下に配設され、ノズルから吐出されたインクを受けて吸収し、第2のインク受け部材163は、第1のインク受け部材62の下方に配設され、第1のインク受け部材62によって吸収されたインクを更に吸収する。そして、ケース161内の断面積が上方ほど大きく、下方ほど小さくされているので、インク受け部160によって吸収されたインクは、下方に流れやすく、ケース161で留まることなく、インク流路としてのチューブ72に円滑に排出される。
前記各実施の形態においては、インクジェットプリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。