以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのインクジェットプリンタについて説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの斜視図である。
図において、10はインクジェットプリンタ、Frは該インクジェットプリンタ10の本体、すなわち、装置本体を支持するフレームであり、該フレームFrは、インクジェットプリンタ10を前側(図において手前側)から見たときの左端から右端にかけて延在させて配設された受け板PB、該受け板PBの左端から立ち上げて形成された第1の主支持部としてのサイドプレートPL1、受け板PBの右端から立ち上げて形成された第2の主支持部としてのサイドプレートPR1、前記サイドプレートPL1より所定の距離だけ右方において受け板PBから立ち上げて形成された第1の副支持部としての枠体PL2、及び前記サイドプレートPR1より所定の距離だけ左方において受け板PBから立ち上げて形成された第2の副支持部としての枠体PR2を備える。
前記サイドプレートPL1、PR1間に、レール15が延在させて配設(架設)され、該レール15に沿ってキャリッジ17が走査方向に移動自在に配設され、該キャリッジ17に、一つ又は複数の、本実施の形態においては、複数の後述される記録ヘッドHdi(i=1、2、…)(図1)が、図示されない複数のノズルが開口する面、すなわち、ノズル面を下方に向けて搭載される。
また、前記サイドプレートPR1に駆動側のプーリ18が、サイドプレートPL1に従動側のプーリ19が回転自在に配設され、プーリ18、19間に無端ベルト21が走行自在に張設され、該無端ベルト21の所定の箇所に前記キャリッジ17が取り付けられる。そして、前記プーリ18にキャリッジ移動用の駆動部としてのキャリッジモータ22が連結される。
したがって、該キャリッジモータ22を駆動し、無端ベルト21を走行させることによって、キャリッジ17を左右方向に移動させ、キャリッジ17の移動に伴って各記録ヘッドHdiを左右方向に移動させることができる。また、このとき、記録ヘッドHdiからインク滴を吐出し、キャリッジ17の移動方向に対して直交する方向、すなわち、副走査方向に搬送される記録媒体Pに付着させることによって、記録媒体Pに文字、イメージ等の画像を形成し、印刷を行うことができる。なお、記録媒体Pとしては、用紙のほかに、塩化ビニル、PET等の樹脂製のフィルム等を使用することができる。
前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させてリニアスケール23が配設され、該リニアスケール23の目盛りがキャリッジ17に配設された後述されるエンコーダ79(図4)によって読み取られ、該エンコーダ79のセンサ出力に基づいて、キャリッジ17の位置が検出される。また、キャリッジ17の位置の変化及び時間に基づいてキャリッジ17の移動速度が算出される。
そして、前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させて、プレート状の形状を有するプラテン25が配設される。該プラテン25は、前記受け板PB上における枠体PL2、PR2間に配設され、プラテン25上を搬送される記録媒体Pを支持する。
また、前記プラテン25の下方に、記録媒体Pを負圧によってプラテン25に引き寄せるための図示されない空気吸引装置が配設される。該空気吸引装置は吸引用のファンを備え、該ファンによって空気が吸引され、記録媒体Pはプラテン25によって平坦に支持される。
そして、前記プラテン25より後方に、媒体案内部としての図示されないリヤペーパガイドが配設される。該リヤペーパガイドは、図示されない繰出しロールから繰り出された記録媒体Pを前記プラテン25に案内する。そのために、記録媒体Pの搬送方向における前記リヤペーパガイドとプラテン25との間に、搬送部材としての搬送ローラ対30が回転自在に配設される。
該搬送ローラ対30は、プラテン25に隣接させて、キャリッジ17の移動方向における複数箇所に、回転自在に配設された第1のローラとしての搬送ローラ31、及び該搬送ローラ31より上方において回転自在に配設され、記録媒体Pを搬送ローラ31に押し付ける第2のローラとしてのピンチローラ32から成る。後述される搬送用の駆動部としての搬送モータ78(図4)を駆動し、搬送ローラ31を回転させると、ピンチローラ32が連れ回りで回転させられる。
これにより、記録媒体Pは、搬送ローラ31とピンチローラ32とによって挟まれた状態で繰出しロールから繰り出され、リヤペーパガイドに沿って搬送され、プラテン25上に送られる。そして、記録媒体Pと記録ヘッドHdiのノズル面とが対向させられ、記録ヘッドHdiからインク滴が吐出され、記録媒体Pに付着させられる。
また、前記プラテン25より前方に、印刷が行われた後の記録媒体Pを排出するための媒体排出部としてのフロントペーパガイド33が配設される。該フロントペーパガイド33は、前記プラテン25から水平方向に排出された記録媒体Pを下方に向けて排出するために、湾曲した形状を有する。
したがって、リヤペーパガイドによって案内された記録媒体Pは、プラテン25に送られ、プラテン25上において、記録ヘッドHdiから吐出されたインク滴が付着させられて印刷が行われ、印刷が行われた後、フロントペーパガイド33によって排出され、図示されない巻取装置に送られて巻き取られる。
なお、本実施の形態においては、前記レール15がサイドプレートPL1、PR1間に配設され、プラテン25が枠体PL2、PR2間に配設されるので、キャリッジ17がプラテン25上を移動させられる間は各記録ヘッドHdiによる印刷が行われ、キャリッジ17が、サイドプレートPL1と枠体PL2との間に置かれているとき、及びサイドプレートPR1と枠体PR2との間に置かれているときは、各記録ヘッドHdiによる印刷が行われない。
また、本実施の形態においては、サイドプレートPL1と枠体PL2との間が、キャリッジ17の位置の原点合わせを行うためのホームポジションにされ、サイドプレートPR1と枠体PR2との間が、キャリッジ17をプラテン25上から退避させるための退避ポジションにされる。
そして、前記ホームポジションに、記録ヘッドHdiと対向させてキャップユニット43が配設される。該キャップユニット43は、インクジェットプリンタ10を長時間使用しない場合に、記録ヘッドHdiのノズル面を覆い、ノズル内のインクの粘度が高くなってノズルが詰まったり、ノズルにごみ等が付着したりするのを防止する。
また、前記退避ポジションに、記録ヘッドHdiと対向させてワイプユニット41が配設される。該ワイプユニット41は、ノズル面を払拭し、ノズル面に付着したインク等を除去するとともに、記録ヘッドHdiから吐出されたインクを受けるための図示されないワイパを備える。したがって、ワイプユニット41を動作させることによって、ノズル面を良好な状態に維持することができるので、画像を形成する際にインク滴を円滑に吐出することができる。
ところで、記録ヘッドHdiは、画像データに従ってインク滴を吐出して画像を形成するので、画像データによっては、キャリッジ17の複数のスキャンにわたってインク滴が吐出されないノズルがある。その場合、インク滴が吐出されないノズル内でインクの粘度が高くなると、前記ノズルからインク滴を円滑に吐出することができなくなってしまう。
そこで、定期的に、又は所定のタイミングで、本実施の形態においては、所定のタイミングで、記録ヘッドHdiを駆動し、ノズルから所定の数のインク滴のインクを吐出し、ノズル内のインクの粘度が高くなるのを防止するようにしている。
そのために、前記ホームポジションにおけるキャップユニット43と枠体PL2との間に、記録ヘッドHdiと対向させてスピットユニット45が配設される。該スピットユニット45は、記録ヘッドHdiがホームポジションに置かれ、ノズルからインクが吐出されたときに、インクを受け、廃棄する。
また、定期的に、又は所定のタイミングで、本実施の形態においては、所定のタイミングで、記録ヘッドHdi内のインクを加圧し、ノズル内で粘度が高くなったインクを強制的に排出するようにしている。
そのために、キャリッジ17の移動方向における所定の箇所、本実施の形態においては、前記退避ポジションにおけるワイプユニット41と枠体PR2との間に、記録ヘッドHdiと対向させてパージユニット44が配設される。該パージユニット44は、記録ヘッドHdiが退避ポジションに置かれ、ノズルからインクが排出されたときに、インクを受けて吸収し、図示されない廃インクタンクに廃棄する。
このように、ホームポジション及び退避ポジションにおいてキャリッジ17が折り返すときに、ノズルからインクが吐出又は排出されるので、ノズル内でインクの粘度が高くなって、ノズルからインク滴が円滑に吐出されなくなるのを防止することができる。
次に、インクジェットプリンタ10の制御装置について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
図において、91は操作・表示部としての操作パネル、80はインクジェットプリンタ10の全体の制御を行う制御部、81は第1の記憶装置としてのROM、82は第2の記憶装置としてのRAM、83は第3の記憶装置としての画像メモリ、84は通信部としての通信インタフェース(I/F)である。
前記操作パネル91は、操作要素としての操作ボタン等から成る図示されない操作部、及び表示ランプ、表示画面等から成る図示されない表示部を備える。
また、前記制御部80は、演算装置としての図示されないCPUを備え、ROM81に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。ROM81には前記プログラムのほかに、後述されるプリントマスク関数に基づいてあらかじめ作成されたマスクパターン、各種の初期値等が記録され、RAM82には、各種のデータが一時的に記録される。また、RAM82はCPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。
前記画像メモリ83には、上位装置としての図示されないホストコンピュータから受信した印刷データを編集することによって生成された画像データが記録される。
そして、前記制御部80は、ヘッド駆動処理部としての印刷処理部Pr1、搬送処理部Pr2、キャリッジ駆動処理部Pr3等を備える。
前記印刷処理部Pr1は、前記画像データにマスクパターンを適用することによって画データを生成し、該画データを前記記録ヘッドHdiに送り、画データに基づいて記録ヘッドHdiを駆動し、画像を形成し、印刷を行う。前述されたように、エンコーダ79のセンサ出力に基づいてキャリッジ17の位置が検出されるので、記録媒体Pの所望の位置にインク滴を吐出し、所望の画像を形成することができる。
前記搬送処理部Pr2は、前記搬送モータ78を駆動し、搬送ローラ対30(図3)を回転させ、記録媒体Pを搬送する。
前記キャリッジ駆動処理部Pr3は、PWM制御によって前記キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17を移動させる。そのために、キャリッジ駆動処理部Pr3は、ROM81からキャリッジ17の目標位置及び目標速度を読み出し、前記エンコーダ79のセンサ出力を受け、キャリッジ17の位置を検出し、制御値としてのPWM制御信号を発生させてキャリッジモータ22に送る。キャリッジモータ22は、PWM制御信号を受けて、PWM制御信号のデューティに比例して回転速度を変化させ、キャリッジ17を加速したり減速したりして目標速度で目標位置に移動させる。
なお、本実施の形態においては、記録ヘッドHdiのノズル列が複数のブロックに分けられ、キャリッジ駆動処理部Pr3によって、前記キャリッジ17が複数回スキャンされてパスされ、前記キャリッジ17がパスされるたびに、印刷処理部Pr1によって、ブロックごとにノズルからインク滴が吐出され、前記記録媒体Pに画像が形成される。
前記通信インタフェース84は、前記ホストコンピュータとインクジェットプリンタ10とを接続し、ホストコンピュータから印刷データを受信したり、印刷モードの指示等のコマンドを受信したり、インクジェットプリンタ10からホストコンピュータに、図示されないインクカートリッジ内のインクの残量、インクジェットプリンタ10の状態を表すステータス情報等を送信したりする。
ところで、インクジェットプリンタ10の記録ヘッドHdiのノズルの偏向、欠落等によるインク滴の吐出不良が生じて、各色のインク滴が記録媒体P上に付着させられる位置がずれると、色相の変化、すなわち、画像に色ズレが発生する。
そこで、本実施の形態においては、画像に色ズレが発生するのを抑制するために、双方向印刷が行われ、キャリッジ17が往復移動させられ、往路及び復路でスキャンが行われて画像が形成される。
また、本実施の形態においては、マルチパス方式の印刷が行われ、記録ヘッドHdiのノズル列が複数個、すなわち、n個のブロックBLj(j=1、2、…、n)に分けられ、1回のスキャンが行われるごとの、前記記録媒体Pが搬送される距離、すなわち、搬送ピッチρが、記録ヘッドHdiのノズル列の長さのほぼ1/nにされる。
そして、1回のスキャンが行われるたびに、ブロックBLjのノズルからインク滴が吐出され、1個のブロックのノズルによる画像の形成が行われて、記録媒体Pにおける一定の領域の画像、すなわち、1ライン分の画像の1/nが形成され、続いて、記録媒体Pが搬送ピッチρ搬送される。
したがって、n回のスキャンが行われ、記録媒体Pが搬送ピッチρずつ搬送され、各ブロックBLjのノズルによる画像の形成が行われて、1ライン分の画像が形成される。
なお、各ブロックBLjのノズルによる画像の形成が行われるのに伴って形成されるドット数の合計は、1ライン分の画像を構成する総ドット数になる。
次に、インクジェットプリンタ10の印刷方法について説明する。なお、説明の便宜上、一つの記録ヘッドHd1を駆動することによって、双方向の4パス印字方式で1色の画像を形成する場合について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの印刷方法を説明するための図である。なお、横軸にスキャンの回数を、縦軸に記録媒体Pの搬送方向Qを採ってある。
図において、Hd1は記録ヘッド、BL1〜BL4はブロックである。
この場合、1回目のスキャンでブロックBL1のノズルから前記一定の領域にインク滴が吐出され、ドットが形成され、1パス目の記録が行われる。この状態では、1ライン分の画像は形成されていない。そして、記録媒体Pが搬送ピッチρ搬送される。
次に、2回目のスキャンでブロックBL2のノズルから前記一定の領域、すなわち、1回目のスキャンでドットが形成された領域にインク滴が吐出され、ドットが形成され、2パス目の記録が行われる。この状態でも、1ライン分の画像は形成されていない。そして、記録媒体Pが搬送ピッチρ搬送される。
続いて、3回目のスキャンでブロックBL3のノズルから、1回目及び2回目のスキャンでドットが形成された領域にインク滴が吐出され、ドットが形成され、3パス目の記録が行われる。この状態でも、1ライン分の画像は形成されていない。そして、記録媒体Pが搬送ピッチρ搬送される。
次に、4回目のスキャンでブロックBL4のノズルから、1回目〜3回目のスキャンでドットが形成された領域にインク滴が吐出され、ドットが形成され、最後のパスの記録、すなわち、4パス目の記録が行われる。この状態で、1ライン分の画像が形成される。
ところで、1パス目の記録は、記録媒体Pにおける何も記録されていない部分に対して行われるので、記録媒体Pに良好にドットを形成することができる。
これに対して、2〜4パス目の記録は、1〜3パス目の記録でドットが形成された部分に対して行われるので、記録ヘッドHd1から吐出されたインク滴が何らかの影響で本来の飛翔軌道から逸れると、1〜3パス目の記録で既に形成されたドットに接触したり、重なったりしてドットが形成される。したがって、2〜4パス目の記録においては、記録媒体Pに良好にドットを形成することができない。
そこで、本実施の形態においては、次のパスの記録においてドットを形成するときに、前のパスの記録において既に形成されたドットへの接触又は重なりが目立たないように、各ブロックBL1〜BL4のノズルからインク滴を吐出するに当たり、ブロックBL1〜BL4ごとに異なるマスクパターンが画像データに適用されるようになっている。
そのために、本実施の形態においては、不均一なプリントマスク関数が設定され、該プリントマスク関数に基づいてマスクパターンが作成され、画像データに前記マスクパターンを適用することによって、プリントマスク関数で表されるノズルの使用確率に基づいて、ノズルごとにインク滴を吐出するかどうかが決定される。
なお、マスクパターンは、あらかじめ、プリントマスク関数に基づいて作成され、ROM81又はRAM82、本実施の形態においては、ROM81に記録される。
したがって、印刷処理部Pr1は、ROM81からマスクパターンを読み出し、制御部80に形成された記憶部としての図示されないマスクメモリにマスクパターンをコピーし、画像データにマスクパターンを適用して画データを作成し、記録ヘッドHd1に送る。そして、画データに基づいて、ブロックBL1〜BL4ごとに記録ヘッドHd1が駆動され、各ノズルからインク滴がノズルの使用確率に応じて選択的に吐出される。
この場合、あらかじめ、プリントマスク関数に基づいてマスクパターンが作成され、ROM81に記録されるので、印刷処理部Pr1においてマスクパターンを作成する必要がなく、処理時間を短くすることができる。したがって、印刷に要する時間を短くすることができる。
次に、本発明のインクジェットプリンタ10で設定されるプリントマスク関数について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプリントマスク関数の例を示す図である。
図において、Hd1は記録ヘッド、BL1〜BL4はブロック、F1はプリントマスク関数である。
インクジェットプリンタ10において印刷を行う場合、各ブロックBL1〜BL4の先頭(図において下端)のノズルから、パスを異ならせてインク滴が吐出され、記録媒体Pの同じライン上に付着させられ、4回のパスで1ラインの画像が形成される。このとき、各ノズルから、プリントマスク関数F1で表されるノズルの使用確率でインク滴が選択的に吐出される。なお、1ラインの画像を形成するための各ブロックBL1〜BL4の先頭のノズルの使用確率を加算すると100〔%〕になる。
本実施の形態において、前記プリントマスク関数F1は、すべてのブロックBL1〜BL4において不均一にされ、ブロックBL1において、先頭のノズルから末端のノズルにかけて、ノズルの使用確率がピーク値になるまで一定の傾きで高くされ、ピーク値を過ぎると、ブロックBL2〜BL4において、ブロックBL2の先頭のノズルからブロックBL4の末端のノズルにかけて、ノズルの使用確率が一定の傾きで低くされる。前記ピーク値は、ノズル列の中央より先頭側に、本実施の形態においては、1パス目と2パス目の境界部分に形成される。また、ブロックBL1におけるノズルの使用確率の変化率はブロックBL2〜BL4におけるノズルの使用確率の変化率より高くされる。
すなわち、ブロックBL1の先頭のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、10〔%〕に)され、末端(図において上端)のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、40〔%〕に)され、ブロックBL2の先頭のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、40〔%〕に)され、末端のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、30〔%〕に)され、ブロックBL3の先頭のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、30〔%〕に)され、末端のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、20〔%〕に)され、ブロックBL4の先頭のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、20〔%〕に)され、末端のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、10〔%〕に)される。
この場合、図に示されるような、端部において、各ノズルによるドットの形成割合を表す記録率が低くなる色スワスSw1が形成される。
このように、本実施の形態においては、各ブロックBL1〜BL4にわたって不均一なプリントマスク関数F1が設定されるので、不均一な部分と均一な部分とが隣接することがない。したがって、不均一な部分と均一な部分との間で記録率が変化することがないので、形成される画像に色バンディングが発生するのを抑制することができる。
ところで、前述されたように、1パス目の記録は、記録媒体Pにおける何も記録されていない部分に対して行われ、記録媒体Pに良好にドットを形成することができるのに対して、2〜4パス目の記録は、既にドットが形成された部分に対して行われるので、記録媒体Pに良好にドットを形成することができない。したがって、1パス目の記録における記録率が4パス目の記録における記録率より高くされる。
ところが、1パス目の記録で形成される画像は、色バンディングに対して大きな影響を与えるので、1パス目の記録率を高くしすぎると、画像に色バンディングが発生し、画像品位が低下してしまう。
そこで、本実施の形態においては、1パス目の記録による影響を少なくするために、記録媒体Pにインク滴が付着する可能性が1パス目の次に高い2パス目の記録における記録率を、1パス目の記録における記録率より高くするようにしている。したがって、1パス目及び2パス目の記録における記録率を十分に高くすることができる。
すなわち、本実施の形態において、1パス目の記録は、先頭から末端にかけて記録率が10〔%〕から40〔%〕に変化するように行われ、2パス目の記録は、同じライン上に、先頭から末端にかけて記録率が40〔%〕から30〔%〕に変化するように行われる。すなわち、1パス目及び2パス目で、前記一定の領域の先頭から末端にかけて記録率が50〔%〕から70〔%〕に変化するように記録が行われる。
したがって、ドットが形成されていない記録媒体P上に、1パス目及び2パス目の記録で多くのドットが形成され、3パス目及び4パス目の記録で形成されるドットの影響を少なくすることができるので、形成される画像に色バンディングが発生するのを一層抑制することができる。
しかも、色バンディングに対して大きな影響を与える1パス目の記録率が2パス目の記録率より低いので、画像に色バンディングが発生するのを一層抑制することができる。
また、1パス目及び4パス目の記録率が低くされるので、1パス目がキャリッジ17の往路で、2パス目がキャリッジ17の復路で記録され、3パス目がキャリッジ17の往路で、4パス目がキャリッジ17の復路で記録され、キャリッジ17の往路と復路とで記録媒体Pに付着するインク滴の重なる順が変化しても、画像に双方向色バンディングが発生するのを抑制することができる。
さらに、1パス目及び4パス目の記録率が、他のパスの記録率より低くされるだけでなく、1パス目のブロックBL1において、先頭のノズルに近いほどノズルの使用確率が低くされ、4パス目のブロックBL4において、末端のノズルに近いほどノズルの使用確率が低くされるので、前述されたように、色スワスSw1の端部において記録率が低くなる。したがって、形成される画像に境界バンディングが発生するのを抑制することができる。
また、記録媒体Pを搬送する精度が低いと、パス間でインク滴が付着する位置が異なることがあり、各ブロックBL1〜BL4のノズル列の端部の近傍において形成されるドットの位置にばらつきが生じる。
そこで、少なくとも1パス目のブロックBL1の先頭のノズルの近傍の記録率を低くし、後続のパス、本実施の形態においては、2パス目のブロックBL2の先頭のノズルの近傍の記録率を最大にし、3パス目のブロックBL3の先頭のノズルの近傍の記録率をノズルの使用確率を低くし、4パス目のブロックBL4の先頭のノズルの近傍の記録率を更に低くすることによって、各ブロックBL1〜BL4のノズル列の端部の近傍において形成されるドットの位置にばらつきが生じるのを抑制するようにしている。
したがって、形成される画像に境界バンディングが発生するのを抑制することができる。
なお、一点鎖線L1は、各ブロックBLkの各ノズルから必ずインク滴が吐出されるように設定されたノズルの使用確率の下限値を表し、本実施の形態においては、10〔%〕にされる。
仮に、ノズル列の端部でノズルからインク滴がまったく吐出されないと、パス間でのノズルの使用確率の変化率が大きくなることがあり、形成される画像に境界バンディングが形成される可能性がある。
本実施の形態においては、ノズル列の端部で、少なくとも10〔%〕の使用確率でノズルからインク滴が吐出されるので、形成される画像にバンディングが発生するのを抑制することができる。
また、破線L2は、各パスにおけるノズルの使用確率の合計を100〔%〕とした場合の、各パスにおけるノズルの使用確率の平均値を表し、本実施の形態においては、25〔%〕である。例えば、2パス目では、平均値より高い使用確率でノズルからインク滴が吐出されることが分かる。
このように、本実施の形態においては、キャリッジ17を複数回パスして、ブロックBLjごとにノズルからインク滴が吐出され、1パス目の記録における記録率が、4パス目の記録における記録率より高くなるように設定されるので、形成される画像に双方向色バンディング及び色バンディングが発生するのを抑制することができる。
また、1パス目のブロックBL1において、先頭のノズルに近いほどノズルの使用確率が低く、4パス目のブロックBL4において、末端のノズルに近いほどくノズルの使用確率が低くされるので、形成される画像に境界バンディングが発生するのを抑制することができる。
ところで、本実施の形態においては、例えば、1パス目の末端において、記録率が0〔%〕の領域に記録率が40〔%〕の記録が行われ、2パス目の先頭において、記録率が10〔%〕の領域に、記録率が40〔%〕の記録が行われるが、1パス目の末端の近傍において記録率が40〔%〕になるまで所定の変化率で高くなり、2パス目の先頭の近傍において記録率が50〔%〕から所定の変化率で低くなるので、1パス目と2パス目との境界部分でノズルの使用確率の変化率が変化してしまう。
その場合、1パス目の記録が行われた後における記録媒体Pを搬送する精度が低くなると、色スワスSw1の境界に境界バンディングが発生するのを十分に抑制することができなくなってしまう。
そこで、色スワスの境界に境界バンディングが発生するのを十分に抑制することができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図6は本発明の第2の実施の形態におけるプリントマスク関数の例を示す図である。
図において、F1は第1の実施の形態におけるプリントマスク関数、F2は本実施の形態におけるプリントマスク関数である。
該プリントマスク関数F2は、プリントマスク関数F1における各ブロックBL1〜BL4のノズルの使用確率が「S」字状に推移するように設定される。また、前記プリントマスク関数F2は、プリントマスク関数F1と同様に、すべてのブロックBL1〜BL4において不均一にされ、ブロックBL1において、先頭のノズルから末端のノズルにかけてノズルの使用確率が高くされ、ブロックBL2〜BL4において、ブロックBL2の先頭のノズルからブロックBL4の末端のノズルにかけてノズルの使用確率が低くされる。
すなわち、ブロックBL1の先頭のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、10〔%〕に)され、末端(図において上端)のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、40〔%〕に)され、ブロックBL2の先頭のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、40〔%〕に)され、末端のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、30〔%〕に)され、ブロックBL3の先頭のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、30〔%〕に)され、末端のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、20〔%〕に)され、ブロックBL4の先頭のノズルの使用確率は高く(本実施の形態においては、20〔%〕に)され、末端のノズルの使用確率は低く(本実施の形態においては、10〔%〕に)される。
これにより、端部において記録率が低くなる色スワスSw2が形成される。
また、本実施の形態においては、各ブロックBL1〜BL4のノズルの使用確率が「S」字状に推移するように、各ブロックBL1〜BL4におけるノズルの使用確率の変化率が、先頭の近傍においてほぼ0にされ、中央にかけて次第に大きくされ、末端の近傍にかけて次第に小さくされ、末端の近傍において0にされる。すなわち、各パス間の境界部分の前後で、ノズルの使用確率が所定の区間一定にされる。
このようにすることによって、各パス間の境界部分の前後において形成されるドットの数の変化が小さくなる。
例えば、1パス目の記録が行われた後、記録媒体Pが搬送され、2パス目の記録が開始される際に、ブロックBL1の末端の近傍のノズルよってドットがまったく形成されていない領域にブロックBL2の先頭の近傍のノズルよってドットが形成される。
したがって、1パス目の末端において、記録率が0〔%〕の領域に記録率が40〔%〕の記録が所定の区間にわたって行われ、2パス目の先頭において、記録率が10〔%〕の領域に、記録率が40〔%〕の記録が所定の区間にわたって行われることになる。
すなわち、まったく記録されていないか、又はわずかに記録されている領域に記録率が40〔%〕の記録が所定の区間にわたって行われるので、1パス目と2パス目との境界部分の前後において記録率がほとんど変化しない。したがって、1パス目と2パス目との境界部分の前後において形成される画像に差が生じるのを抑制することができる。
同様に、2パス目と3パス目との境界部分の前後、及び3パス目と4パス目との境界部分の前後においても、形成される画像に差が生じるのを抑制することができる。
したがって、色スワスSw2の境界に境界バンディングが発生するのを抑制することができる。
なお、記録媒体Pを搬送する精度が低くなるのは、副走査方向において多くとも数ドット分の距離の範囲内、例えば、パス間の境界部分の前後(プラスマイナス)15〔ドット〕以内である。したがって、本実施の形態においては、パス間の境界部分の前後15〔ドット〕以内、好ましくは、5〔ドット〕以内の区間においてノズルの使用確率の変化率がほぼ0にされる。ノズルの使用確率の変化率がほぼ0にされる区間が長すぎると、パス間の境界部分の前後以外の領域で、記録率をわずかずつ変化させることができなくなり、画像に色ムラが発生するので、不均一なプリントマスク関数F2を設定するメリットがなくなる。
ところで、前記第1、第2の実施の形態においては、各ブロックBL1〜BL4において不均一なプリントマスク関数F1、F2が設定されるようになっているので、プリントマスク関数F1、F2に基づいて作成されるマスクパターンのデータ量が多く、印刷処理部Pr1が画像データにマスクパターンを適用して画データを生成するための処理時間が長くなり、印刷に要する時間が長くなってしまう。
そこで、印刷に要する時間を短くすることができるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図7は本発明の第3の実施の形態におけるプリントマスク関数の例を示す図である。
図において、F3は基本のプリントマスク関数、F4は本実施の形態におけるプリントマスク関数である。
基本のプリントマスク関数F3は、破線で示されるように、ブロックBL1、BL4において不均一にされ、ブロックBL2、BL3において均一にされ、ブロックBL1において、先頭のノズルから末端のノズルにかけて一定の傾きでノズルの使用確率が高くされ、ブロックBL2、BL3において、ブロックBL2の先頭のノズルからブロックBL3の末端のノズルにかけてノズルの使用確率が一定にされ、ブロックBL4において、先頭のノズルから末端のノズルにかけて一定の傾きでノズルの使用確率が低くされる。ブロックBL1、BL4におけるノズルの使用確率の変化率は等しくされる。
基本のプリントマスク関数F3においては、1パス目において記録率が低く、形成されるドットの数が少なくなり、形成される画像に双方向色バンディングが発生するので、本実施の形態におけるプリントマスク関数F4においては、実線で示されるように、ブロックBL1のノズルの使用確率を全体に高くシフトさせ、ブロックBL4のノズルの使用確率を全体に低くシフトさせるようにしている。ノズルの使用確率をシフトさせる量は、ノズルの使用確率の下限値を表す一点鎖線L1と、該一点鎖線L1に隣接させて形成された一点鎖線L4とで表される使用確率の差分にされる。
これにより、色スワスSw3で示されるように端部の記録率が低くなる。
なお、プリントマスク関数F4に不均一な部分と均一な部分とが形成されるので、1パス目と2パス目との間、及び3パス目と4パス目との間に記録率の差が生じ、画像にわずかに色バンディングが発生するが、ブロックBL2、BL3においてプリントマスク関数F4が均一にされるので、プリントマスク関数F4に基づいて作成されるマスクパターンのデータ量を少なくすることができる。その結果、印刷処理部Pr1が画像データにマスクパターンを適用して画データを生成するための処理時間を短くすることができ、印刷に要する時間を短くすることができる。
前記各実施の形態においては、インクジェットプリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。