以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのインクジェットプリンタについて説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの斜視図である。
図において、10はインクジェットプリンタ、Frは該インクジェットプリンタ10の本体、すなわち、装置本体を支持するフレームであり、該フレームFrは、インクジェットプリンタ10を前側(図において手前側)から見たときの左端から右端にかけて延在させて配設された受け板PB、該受け板PBの左端から立ち上げて形成された第1の主支持部としてのサイドプレートPL1、受け板PBの右端から立ち上げて形成された第2の主支持部としてのサイドプレートPR1、前記サイドプレートPL1より所定の距離だけ右方において受け板PBから立ち上げて形成された第1の副支持部としての枠体PL2、及び前記サイドプレートPR1より所定の距離だけ左方において受け板PBから立ち上げて形成された第2の副支持部としての枠体PR2を備える。
前記サイドプレートPL1、PR1間にレール15が延在させて配設(架設)され、該レール15に沿ってキャリッジ17が主走査方向に移動自在に配設される。該キャリッジ17に、一つ又は複数の、本実施の形態においては、複数の後述される記録ヘッドHdi(i=1、2、…)(図1)が、複数のノズルが開口する面、すなわち、後述されるノズル面Saを下方に向けて搭載される。
また、前記サイドプレートPR1に駆動側のプーリ18が、サイドプレートPL1に従動側のプーリ19が、それぞれ回転自在に配設され、プーリ18、19間に無端ベルト21が走行自在に張設され、該無端ベルト21の所定の箇所に前記キャリッジ17が取り付けられる。そして、前記プーリ18に、キャリッジ移動用の駆動部としてのキャリッジモータ22が連結される。
したがって、該キャリッジモータ22を駆動し、無端ベルト21を走行させることによってキャリッジ17を左右方向に移動させ、キャリッジ17の移動に伴って各記録ヘッドHdiを左右方向に移動させることができる。また、このとき、記録ヘッドHdi(の各ノズル)からインクを吐出させ、副走査方向、すなわち、キャリッジ17の移動方向に対して直交する方向に搬送される記録媒体Pに付着させることによって、記録媒体Pに文字、イメージ等の画像を形成し、印刷を行うことができる。なお、記録媒体Pとしては、用紙のほかに、塩化ビニル、PET等の樹脂製のフィルム等を使用することができる。
前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させてリニアスケール23が配設され、該リニアスケール23の目盛りが、キャリッジ17に配設された後述されるエンコーダ35(図5)によって読み取られ、該エンコーダ35のセンサ出力に基づいて、キャリッジ17の位置が検出される。また、キャリッジ17の位置の変化及び時間に基づいてキャリッジ17の移動速度を算出することができる。
そして、前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させて、プレート状の形状を有するプラテン25が配設される。該プラテン25は、前記受け板PB上における枠体PL2、PR2間に配設され、プラテン25上を搬送される記録媒体Pを支持する。
また、前記プラテン25の下方に、記録媒体Pを負圧によってプラテン25に引き寄せるための図示されない空気吸引装置が配設される。該空気吸引装置は吸引用のファンを備え、該ファンによって空気が吸引されることにより、記録媒体Pがプラテン25によって平坦に支持される。
そして、前記プラテン25より後方に、第1の媒体案内部としての図示されないリヤペーパガイドが配設される。該リヤペーパガイドは、図示されない繰出ロールから繰り出された記録媒体Pを前記プラテン25に案内する。そのために、記録媒体Pの搬送方向における前記リヤペーパガイドとプラテン25との間に、搬送部材としての搬送ローラ対30が回転自在に配設される。
該搬送ローラ対30は、プラテン25に隣接させて、キャリッジ17の主走査方向における複数箇所に回転自在に配設された第1のローラとしての搬送ローラ31、及び該搬送ローラ31より上方において回転自在に配設され、記録媒体Pを搬送ローラ31に押し付ける第2のローラとしてのピンチローラ32から成る。搬送用の駆動部としての後述される搬送モータ34を駆動し、搬送ローラ31を回転させると、ピンチローラ32が連れ回りで回転させられる。
これにより、記録媒体Pは、搬送ローラ31とピンチローラ32とによって挟まれた状態で前記繰出ロールから繰り出され、前記リヤペーパガイドに沿って搬送され、プラテン25上に送られる。そして、記録媒体Pと記録ヘッドHdiのノズル面Saとが対向させられ、記録ヘッドHdiからインクが吐出され、記録媒体Pに付着させられる。
この場合、前記搬送モータ34を駆動して記録媒体Pを所定の距離搬送した後、搬送モータ34を停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインクを吐出させることによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。1走査が終了すると、前記搬送モータ34を再び駆動して記録媒体Pを所定の距離搬送した後、搬送モータ34を停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインクを吐出させることによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。この動作を繰り返すことによって、記録媒体Pに画像が形成され、印刷が行われる。
なお、本実施の形態においては、シングルパス方式によって印刷が行われるようになっているが、マルチパス方式によって印刷を行う場合は、前記記録媒体Pを搬送する距離が記録ヘッドHdiの図示されないノズル列より短くされ、複数の走査を行うことによって1ライン分の画像が形成される。
また、前記プラテン25より前方に、印刷が行われた後の記録媒体Pを媒体排出口Eqに案内するための第2の媒体案内部としてのフロントペーパガイド33が配設される。該フロントペーパガイド33は、前記プラテン25から水平方向に排出された記録媒体Pを下方に向けて案内するために、湾曲した形状を有する。
したがって、図示されない媒体導入口から供給された記録媒体Pは、前記リヤペーパガイドによって案内されてプラテン25に送られ、プラテン25上において、記録ヘッドHdiから吐出されたインクが付着させられて印刷が行われ、印刷が行われた後、フロントペーパガイド33によって媒体排出口Eqに案内され、図示されない巻取装置に送られて巻き取られる。
ところで、印刷が行われた記録媒体Pにはインクが付着しており、インクが付着した記録媒体Pを、インクが乾かないうちにインクジェットプリンタ10から排出し、その後、巻取装置によって巻き取ると、記録媒体Pがインクで汚れてしまう。
そこで、記録媒体P上のインクを乾燥させ、記録媒体Pに定着させるために、前記リヤペーパガイド、プラテン25及びフロントペーパガイド33の裏面に加熱体としての図示されないヒータが配設され、該ヒータによって、リヤペーパガイド、プラテン25及びフロントペーパガイド33上を搬送される記録媒体Pが加熱されるようになっている。
なお、本実施の形態においては、前記レール15がサイドプレートPL1、PR1間に配設され、プラテン25が枠体PL2、PR2間に配設されるので、キャリッジ17がプラテン25上を移動させられる間は各記録ヘッドHdiによる記録が行われ、キャリッジ17がサイドプレートPL1と枠体PL2との間に置かれるとき、及びキャリッジ17がサイドプレートPR1と枠体PR2との間に置かれるときは、各記録ヘッドHdiによる記録が行われない。そこで、本実施の形態においては、サイドプレートPR1と枠体PR2との間が、キャリッジ17の位置の原点合わせを行うためのホームポジションにされ、サイドプレートPL1と枠体PL2との間が、キャリッジ17をプラテン25上から退避させるとともに折り返すための、かつ、各記録ヘッドHdiのメンテナンスを行うための退避ポジションにされる。
ところで、前記記録ヘッドHdiは、画像データに従ってインクを吐出して画像を形成するので、画像データによってはインクが吐出されないノズルがある。インクが吐出されないノズル内でインクの粘度が高くなってノズルが詰まったり、ノズルにごみ等が付着したりすると、ノズルからインクを円滑に吐出させることができなくなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、前記退避ポジションに、第1のメンテナンス装置としてのキャップユニット43が配設されるようになっている。該キャップユニット43は、インクジェットプリンタ10が長時間使用されない場合に、記録ヘッドHdiのノズル面Saをキャップで覆い、ノズル内のインクの粘度が高くなってノズルが詰まったり、ノズルにごみ等が付着したりするのを防止する。
また、本実施の形態においては、定期的に、又は所定のタイミングで、退避ポジションに置かれた記録ヘッドHdiを駆動し、ノズルから所定のインク滴分のインクを吐出させることによって、ノズル内のインクの粘度が高くなるのが防止される。
そして、前記退避ポジションにおけるキャップユニット43と枠体PL2との間に、ノズルからインクが吐出されたときにインクを受け、廃棄するための、第2のメンテナンス装置としてのスピットユニット45が配設される。
また、前記記録ヘッドHdiによって印刷が行われている間、すなわち、記録ヘッドHdiによる記録中に記録ヘッドHdiの周辺に浮遊するインクミストがノズル面Saに付着し、固化すると、ノズルからインクが円滑に吐出されなくなるだけでなく、前記キャップユニット43によってノズル面Saがキャップで覆われたときにキャップと記録ヘッドとの間に隙間が生じ、キャップ内を密閉することができなくなってしまう。その場合、ノズル内のインクの粘度が高くなり、固化すると、インクの吐出不良が発生してしまう。
そこで、キャリッジ17の主走査方向における所定の箇所、本実施の形態においては、前記ホームポジションに、枠体PR2と隣接させて、第3のメンテナンス装置としてのバキュームユニット44がノズル面Saと対向させて配設される。バキュームユニット44は、記録ヘッドHdiがホームポジションに置かれたときに、負圧によって、ノズル面Saに付着したインクミストのインクを空気と共に吸引し、除去する。したがって、バキュームユニット44を動作させることによってノズル面Saを良好な状態に維持することができるので、画像を形成する際に記録ヘッドHdiからインクを円滑に吐出させることができる。
また、前記ホームポジションにおけるバキュームユニット44とサイドプレートPR1との間に、第4のメンテナンス装置としてのワイプユニット41が配設され、前記バキュームユニット44によってノズル面Saに付着したインクが吸引された後に、ワイプユニット41によってノズル面Saが定期的に掃除され、バキュームユニット44においてインクが吸引された後のノズル面Saに残留したインク、ノズル面Saに固着した異物等が払拭される。
なお、前記バキュームユニット44はプラテン25とワイプユニット41との間に配設されるので、記録ヘッドHdiは、キャリッジ17の移動に伴ってプラテン25上からバキュームユニット44の上方に移動し、続いて、ワイプユニット41の上方に移動することになる。
次に、前記バキュームユニット44について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるバキュームユニットの概念図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるバキュームユニットの斜視図である。
図において、44はバキュームユニット、46はバキュームユニット44の外装体としてのハウジング、47は、上縁が開口させられた箱状の形状を有し、前記ハウジング46に対して上下方向に移動自在に配設された複数の、本実施の形態においては、2個のトレイ、50は、該トレイ47を支持し、トレイ47と共にハウジング46に対して上下方向に移動自在に配設された昇降ベース、51は該昇降ベース50を上下方向に移動させるための昇降機構、61は、前記トレイ47内に収容され、前記昇降機構51によって各記録ヘッドHdiと対向させて上下方向に移動自在に配設された吸引装置、Psは、前記昇降ベース50より下方において前記吸引装置61と連通させて配設され、駆動されて負圧を発生させる駆動部としての、かつ、負圧発生装置としての吸引ポンプ、p1は吸引装置61と吸引ポンプPsとを連結するパイプである。
前記吸引装置61は、前記ハウジング46内において、上方に設定された吸引位置及び下方に設定された退避位置に置かれ、吸引位置において、ノズル面Saに付着したインクを空気と共に吸引する。
前記ハウジング46は、底板Hb、及び該底板Hbの両縁から立ち上げて形成された側板Hs1、Hs2を備え、底板Hb上に前記トレイ47及び昇降ベース50が配設される。
前記昇降機構51は、前記トレイ47及び昇降ベース50を上下方向に移動させるための昇降用の駆動部としての昇降モータ70、該昇降モータ70を駆動することによって発生した昇降モータ70の回転が伝達される回転伝達系としてのギヤトレインGc、該ギヤトレインGcの最終段のギヤgr1の軸sh1に連結され、前記昇降ベース50の下面にカム面を当接させて配設された運動方向変換機構としての図示されないカム等を備え、該カムによって軸sh1の回転運動が昇降ベース50の直進運動に変換される。前記昇降モータ70を駆動し、軸sh1を回転させると、カムが回転させられ、昇降ベース50が上下方向に移動させられる。
なお、本実施の形態においては、運動方向変換機構としてカムが使用されるが、例えば、軸sh1と連結されたピニオン、及び該ピニオンと噛合させられ、昇降ベース50に取り付けられラックによって運動方向変換機構を構成することができる。
また、前記吸引装置61は、箱状の形状を有するケースCe、及び該ケースCe内を貫通させて形成された吸引流路64を備える。前記ケースCeの上端には、ノズル面Saと対向させて吸引面としての偏平なバキューム面Sbが形成され、前記ケースCeの下端には、前記吸引ポンプPsと対向させて排出面Scが形成される。したがって、バキューム面Sbにおいて吸引されたインク及び空気が吸引流路64を介して吸引ポンプPsに送られる。
前記バキューム面Sbはノズル面Saより大きい面積を有し、前記キャリッジ17(図2)が移動させられ、記録ヘッドHdiがバキュームユニット44上に置かれた状態で、バキューム面Sbとノズル面Saとを重ね、上方から透視したときのバキューム面Sbの周縁内にノズル面Saが置かれる。
そして、バキューム面Sbに、記録ヘッドHdiのノズル列と平行に、すなわち、副走査方向に延在させて、吸引開口としてのバキュームスリット63が形成される。該バキュームスリット63はノズル面Saの長手方向の長さより長く形成される。
また、前記排出面Scに、円形の形状を有する排出口h1が形成され、該排出口h1と前記パイプp1とが連通させられる。なお、パイプp1は、トレイ47及び昇降ベース50を貫通して延在させられる。
そして、前記吸引流路64は、前記バキュームスリット63を上端に備え、上下方向に延在させて形成された第1の流路部f1、前記排出口h1を下端に備え、上下方向に延在させて形成された第2の流路部f2、及び第1、第2の流路部f1、f2間に形成された圧力調整室Rmを備える。該圧力調整室Rmは、第1、第2の流路部f1、f2の流路断面より大きい流路断面を有し、吸引ポンプPsが駆動され、バキュームスリット63を介して空気が吸引されたときに、空気の圧力を調整し、バキュームスリット63の長手方向において空気の圧力に差が生じるのを抑制する。
前記圧力調整室Rmの上端部には、第1の流路部f1にかけて徐々に断面積が小さくなるようにテーパ部tp1が、前記圧力調整室Rmの下端部には、第2の流路部f2にかけて徐々に断面積が小さくなるようにテーパ部tp2が形成される。
前記吸引ポンプPsは、吸引流路64を介して、ノズル面Saに付着したインク、及び記録ヘッドHdiの周辺の空気を吸引し、吸引ポンプPsの吐出口h2から排出する。
本実施の形態においては、キャリッジ17に、複数の記録ヘッドHdiが2列に、かつ、千鳥状に配列され、トレイ47が千鳥状に配設されるので、キャリッジ17は、各記録ヘッドHdiが2個ずつ順に、トレイ47の上方において吸引装置61と対向するように移動させられる。
キャリッジ17が主走査方向における後述されるバキューム開始位置に置かれると、昇降モータ70が駆動され、昇降ベース50が上方に移動させられ、吸引装置61が前記吸引位置に置かれ、続いて、キャリッジ17がホームポジションに置かれると、吸引装置61のバキューム面Sbとノズル面Saとの間に所定の隙間が形成される。
なお、トレイ47の上縁における2箇所に、上方に向けて突出させてスペーサとしての凸部65が形成されるので、トレイ47が過剰に移動させられても、凸部65が、記録ヘッドHdiのノズル面Saの枠部、又はキャリッジ17の底面、本実施の形態においては、ノズル面Saの枠部に当接させられ、トレイ47を停止させる。
したがって、バキュームスリット63をノズル面Saに近づけ、吸引装置61のバキューム面Sbとノズル面Saとの間に所定の隙間が形成された状態で吸引ポンプPsを駆動すると、ノズル面Saに負圧が及ぼされ、ノズル面Saに付着したインクが吸引装置61によって吸引される。
また、このとき、記録ヘッドHdiの周辺の空気が、バキューム面Sbとノズル面Saとの隙間を流れ、吸引流路64内に吸引される。
この間、キャリッジ17を主走査方向に、記録ヘッドHdiによる記録時の移動速度より低い所定の移動速度で移動させると、バキュームスリット63は、記録ヘッドHdiのノズル列の列方向に対して直交する方向に、記録ヘッドHdiと相対的に移動させられる。しかも、前述されたように、前記バキュームスリット63がノズル面Saの長手方向の長さより長く形成されるので、ノズル面Saの全域にわたって負圧が及ぼされ、ノズル面Saに付着したインクを確実に吸引することができる。なお、前記所定の移動速度が記録ヘッドHdiによる記録時の移動速度より低く設定されない場合には、ノズル面Saに付着したインクを確実に吸引することができない。
また、本実施の形態においては、キャリッジ17が移動させられている間、バキューム面Sbとノズル面Saとが平行な状態に維持されるとともに、バキューム面Sbの面積がノズル面Saの面積より大きくされているので、吸引ポンプPsが駆動されるのに伴って、ノズル面Saとバキューム面Sbとの隙間を空気が安定して流れ、その空気が吸引流路64内に吸引される。
したがって、ノズル面Saに付着したインクを安定させて吸引することができる。
なお、バキューム面Sbの面積がノズル面Saの面積より小さい場合、吸引ポンプPsが駆動されるのに伴って、空気が下方からノズル面Saに向けて流れ、ノズル面Saに当たり、状況によっては渦を形成して吸引流路64内に吸引される。その場合、ノズル面Saとバキューム面Sbとの間で予期せぬ空気の流れが生じやすくなり、ノズル面Saに付着したインクを安定させて吸引することができなくなる。
次に、ワイプユニット41について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態におけるワイプユニットの概念図である。
図において、41はワイプユニット、Hdiは記録ヘッド、Saはノズル面、Mkは図示されない基台上を副走査方向に移動自在に配設されたワイプ機構である。後述される機構移動用の駆動部としてのワイプ機構モータ71(図5)を駆動することによって前記ワイプ機構Mkを移動させると、記録ヘッドHdiがワイプ機構Mkと相対的に矢印方向に移動させられる。
なお、図において実線で示されるワイプ機構Mkはノズル面Saに付着したインクを払拭している位置にあり、破線で示されるワイプ機構Mkはノズル面Saに付着したインクを払拭する前の位置にある。
ワイプ機構Mkは、不織布のシート等から成るワイパ67、該ワイパ67を繰り出す供給ロールRs、ワイパ67を巻き取る巻取ロールRw、ワイパ67をノズル面Saに押し付ける押付部68、ワイパ67にテンション(張力)を付与する張力付与部材としてのテンションローラ69等を備える。巻取ロールRwには後述されるワイパ搬送用の駆動部としてのワイパモータ72(図5)が連結される。前記押付部68は、付勢部材としての図示されないスプリングによって所定の付勢力でワイパ67の払拭部位Pt1をノズル面Saに押し付ける。
ワイパ67を押付部68によってノズル面Saに押し付けた状態でワイプ機構モータ71を駆動し、ワイプ機構Mkを移動させると、払拭部位Pt1はノズル面Saに付着したインクを払拭する。
なお、前記押付部68の先端は、ワイパ67を傷付けることかないように弧状の形状を有する。また、ノズル面Saに残留したインク、ノズル面Saに固着した異物等を除去しやすくするために、ワイパ67にワイプ液が浸透させられる。
ノズル面Saに付着したインクを払拭した後のワイパ67には汚れが付着するが、汚れが付着したワイパ67によってノズル面Saに付着したインクを払拭すると、ノズル面Saを傷付けてしまうことがある。
そこで、本実施の形態においては、前記ワイプ機構Mkを移動させ、ワイパ67によってノズル面Saに付着したインクを払拭すると、続いて、前記ワイパモータ72が駆動され、ワイパ67が所定の巻取量だけ巻取ロールRwに巻き取られ、ワイパ67の汚れが付着した部分が巻取ロールRw側に搬送されるようになっている。そして、巻取ロールRwに巻き取られた分だけワイパ67が搬送され、供給ロールRsから新たにワイパ67が繰り出される。
なお、本実施の形態においては、前記押付部68がスプリングによってワイパ67を所定の付勢力でノズル面Saに押し付けるにようになっているが、前記押付部を、ゴム等の弾性を有する材料によって形成し、押付部自体が有する付勢力でワイパ67をノズル面Saに押し付けるようにすることができる。
次に、前記インクジェットプリンタ10の制御装置について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの制御ブロック図である。
図において、80はインクジェットプリンタ10の全体の制御を行う制御部、81は第1の記憶装置としてのROM、82は第2の記憶装置としてのRAM、83は第3の記憶装置としての設定値メモリである。
前記制御部80は、演算装置としての図示されないCPUを備え、ROM81に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。ROM81には前記プログラムのほかに各種の初期値等が記録され、RAM82には各種のデータが一時的に記録される。また、RAM82は、前記CPUが演算を行う際にワークエリアとしても機能する。そして、前記設定値メモリ83には、制御部80が各種の処理を行う際に使用される設定値、例えば、バキュームユニット44(図1)において、ノズル面Saに付着したインクの吸引を開始するための、キャリッジ17(図2)のバキューム開始位置、吸引装置61を上方に移動させたときの吸引位置、バキュームユニット44の上方でキャリッジ17を移動させるときのキャリッジ17の移動速度、ワイプユニット41(図4)の位置、ワイプユニット41によってノズル面Saに付着したインクが払拭される回数であるワイプ回数、払拭を開始する条件である払拭開始条件、払拭後のワイパ67の搬送量等が記録される。
また、前記制御部80は、ヘッド駆動処理部Pr1、搬送処理部Pr2、キャリッジ駆動処理部Pr3、昇降処理部Pr4、吸引ポンプ駆動処理部Pr5、ワイパ払拭処理部Pr6、ワイパ搬送処理部Pr7等を備える。
前記ヘッド駆動処理部Pr1は記録ヘッドHdiに画像データを送り、記録ヘッドHdiは、画像データに基づいて、所定のタイミングでインクを吐出して画像を形成する。
前記搬送処理部Pr2は、前記搬送モータ34を駆動し、搬送ローラ対30(図2)を回転させ、記録媒体Pを搬送する。
前記キャリッジ駆動処理部Pr3は、PWM制御によって前記キャリッジモータ22を駆動し、キャリッジ17を移動させる。そのために、キャリッジ駆動処理部Pr3は、ROM81からキャリッジ17の目標位置及び目標速度を読み出し、前記エンコーダ35のセンサ出力を受け、キャリッジ17の位置を検出し、制御値としてのPWM制御信号を発生させてキャリッジモータ22に送る。該キャリッジモータ22は、PWM制御信号を受けて、PWM制御信号のデューティに比例させて回転速度を変化させ、キャリッジ17を加速したり減速したりして目標速度で目標位置に移動させる。
前記昇降処理部Pr4は、前記昇降モータ70を駆動し、前記昇降ベース50(図3)を上下方向に移動させる。そのために、前記ハウジング46における前記吸引位置に、前記トレイ47と対向させて昇降用の検出部としてのトレイセンサ36が配設され、昇降処理部Pr4は、トレイセンサ36のセンサ出力を受け、トレイ47の位置を検出する。
前記吸引ポンプ駆動処理部Pr5は前記吸引ポンプPsを駆動する。該吸引ポンプPsが駆動されると、前記吸引流路64を介してノズル面Saに付着したインクが記録ヘッドHdiの周辺の空気と共に吸引される。
前記ワイパ払拭処理部Pr6は、前記ワイプ機構モータ71を駆動することによってワイプ機構Mkを副走査方向に移動させ、払拭部位Pt1をノズル面Saに沿って移動させることによって、ノズル面Saに付着したインクを払拭する。
前記ワイパ搬送処理部Pr7は、前記払拭部位Pt1によってノズル面Saに付着したインクを払拭するために、前記ワイパモータ72を駆動してワイパ67を搬送する。
次に、バキュームユニット44及びワイプユニット41の動作について説明する。
図6は本発明の第1の実施の形態におけるバキュームユニット及びワイプユニットの動作を示すフローチャートである。
まず、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジモータ22を駆動し、エンコーダ35から送られたセンサ出力を読み込み、キャリッジ17の位置を検出しながらキャリッジ17をホームポジションに向けて移動させ、バキューム開始位置に置く。該バキューム開始位置は、主走査方向における、記録ヘッドHdiのノズル面Saが吸引装置61のケースCeと対向する位置、又はケースCeと対向する位置よりわずかにプラテン25側の位置に設定される。
続いて、昇降処理部Pr4は、昇降モータ70を駆動し、吸引装置61を上方に移動させ、吸引位置に置く。該吸引位置は、ワイプユニット41の高さ方向におけるノズル面Saとバキューム面Sbとの間に、ノズル面Saに付着したインクを吸引するのに最適な距離を置いて設定される。
そして、吸引ポンプ駆動処理部Pr5は、吸引ポンプPsを駆動し、ノズル面Saに付着したインク及び空気の吸引を開始する。
吸引ポンプPsが駆動されている間、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジモータ22を駆動し、バキュームユニット44の上方で、キャリッジ17を記録時より低い所定の移動速度でワイプユニット41側に移動させる。本実施の形態においては、キャリッジ17が、ノズル面Saのプラテン25側の端部からワイプユニット41側の端部まで移動すると、インク及び空気の吸引は終了するが、キャリッジ17がノズル面Saのワイプユニット41側の端部まで移動した後、プラテン25側に移動させ、インク及び空気の吸引を繰り返すことができる。
このようにして、ノズル面Saの全体に付着したインクが空気と共に吸引されると、キャリッジ駆動処理部Pr3は、キャリッジモータ22を駆動し、記録ヘッドHdiをワイプユニット41の上方に置く。
続いて、ワイパ搬送処理部Pr7は、ワイパモータ72を駆動して、ワイパ67を、払拭部位Pt1を形成するための第1の搬送量搬送することによって、供給ロールRsからワイパ67を繰り出す。
そして、ワイパ払拭処理部Pr6は、ワイプ機構モータ71を駆動して前記ワイプ機構Mkを副走査方向に往復移動させ、ワイパ67によってノズル面Saに付着したインクを払拭し、往路と復路との切替え時に、ワイパ搬送処理部Pr7は、ワイパモータ72を駆動してワイパ67を、新たに払拭部位Pt1を形成するための第2の搬送量搬送することによって、供給ロールRsからワイパ67を繰り出す。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 キャリッジ駆動処理部Pr3はキャリッジ17をバキューム開始位置に置く。
ステップS2 昇降処理部Pr4は吸引装置61を上方に移動させ、吸引位置に置く。
ステップS3 吸引ポンプ駆動処理部Pr5は吸引ポンプPsを駆動し、ノズル面Saのインク及び空気の吸引を開始する。
ステップS4 キャリッジ駆動処理部Pr3はバキュームユニット44の上方でキャリッジ17を移動させる。
ステップS5 キャリッジ駆動処理部Pr3は記録ヘッドHdiをワイプユニット41の上方に置く。
ステップS6 ワイパ搬送処理部Pr7はワイパ67を第1の搬送量搬送する。
ステップS7 ワイパ払拭処理部Pr6はワイプ機構Mkを往復移動させ、往路と復路との切替え時に、ワイパ搬送処理部Pr7はワイパ67を第2の搬送量搬送し、処理を終了する。
このように、本実施の形態においては、キャリッジ17の主走査方向における所定の箇所にノズル面Saと対向させてバキュームユニット44が配設され、負圧によってノズル面Saに付着したインクが空気と共に吸引されるので、記録ヘッドHdiによる記録中にノズル面Saに付着したインクを除去することができる。したがって、記録ヘッドHdiからインクを円滑に吐出させることができる。
また、ワイプユニット41によって記録ヘッドHdiのノズル面Saを掃除しても、ノズル面Saに付着したインクがバキュームユニット44によって除去されているので、インク中に分散させられた顔料によってノズル面Saが擦られることがなく、ノズル面Saを傷付けることがない。
したがって、ノズル面Saに形成された膜の撥液性能を維持することができるので、ノズル面Saのインクが濡れ広がってノズルのメニスカスに影響を及ぼすことがなく、インクの吐出不良が発生するのを防止することができる。
なお、本実施の形態においては、バキュームユニット44に隣接させてワイプユニット41が配設されるようになっているが、バキュームユニット44によってノズル面Saのインクが吸引され、除去されるので、必ずしも、ワイプユニット41によってノズル面Saのインクを払拭する必要がない。
したがって、ワイプユニット41を配設しなくてもよいが、ワイプユニット41を配設することによって、ノズル面Saに強固に付着した異物を除去することができるので、ワイプユニット41を配設するのが好ましい。
ところで、本実施の形態においては、吸引装置61と吸引ポンプPsとがパイプp1によって接続されているので、吸引装置61から排出されたインク及び空気が吸引ポンプPsに送られることになる。この場合、インクの量が多いと、吸引ポンプPsを円滑に駆動することができず、ノズル面Saに付着したインクを円滑に吸引することができなくなることがある。
そこで、吸引装置61から排出されたインク及び空気を分離させることができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図7は本発明の第2の実施の形態におけるバキュームユニットの概念図、図8は本発明の第2の実施の形態におけるバキュームユニットの要部を示す図である。
この場合、吸引装置61は、箱状の形状を有するケースCe、及び該ケースCe内を貫通するように形成された吸引流路64を備える。また、前記ケースCeの上端には、記録ヘッドHdiのノズル面Saと対向させて吸引面としての偏平なバキューム面Sbが形成され、前記ケースCeの下端には、駆動されて負圧を発生させる駆動部としての、かつ、負圧発生装置としての吸引ポンプPsと対向させて排出面Scが形成される。
そして、前記バキューム面Sbに吸引開口としてのバキュームスリット63が形成され、前記排出面Scに、円形の形状を有する排出口h1が形成される。
前記吸引流路64は、前記バキュームスリット63を上端に備えた第1の流路部f1、前記排出口h1を下端に備えた第2の流路部f2、及び第1、第2の流路部f1、f2間に形成された圧力調整室Rmを備える。
なお、図において、75は、回転伝達系としてのギヤトレインGc(図3)の前述された最終段のギヤgr1の軸sh1に連結され、昇降ベース50の下面(図においては便宜上吸引装置61の排出面Sc)にカム面を当接させて配設された運動方向変換機構としてのカムである。
前記吸引ポンプPsは、吸引流路64を介して記録ヘッドHdiの周辺の空気、及びノズル面Saに付着したインクを吸引し、吐出口h2から排出する。
前記吸引装置61の排出口h1と吸引ポンプPsとの間のインク及び空気の経路には、吸引装置61によって吸引されたインクと空気とを分離させる分離装置85が配設されるとともに、該分離装置85より吸引ポンプPs側に弁装置86が配設され、吸引装置61と分離装置85とがパイプp2によって、分離装置85と弁装置86とがパイプp3によって、弁装置86と吸引ポンプPsとがパイプp4によって接続される。
前記分離装置85内は、分離壁87及びフィルタ88によって吸入側室AR1と排気側室AR2とに区画される。吸入側室AR1には、吸引装置61から排出されたインク及び空気が送られてくるので、フィルタ88によってインクと空気とが分離させられ、空気だけが排気側室AR2に送られる。
吸入側室AR1に残留したインクは、パイプp5を介して廃液回収部としての廃液ボトル89に送られ、回収される。
前記弁装置86は、昇降モータ70(図5)が駆動され、吸引装置61が上方に移動させられて吸引位置に置かれると、吸引装置61側のパイプp3と吸引ポンプPs側のパイプp4とを接続し、吸引装置61が下方に移動させられて退避位置に置かれると、前記パイプp3とパイプp4とを分離させる。
そのために、吸引ポンプPs及びパイプp4は、第3のメンテナンス装置としてのバキュームユニット44の外装体としてのハウジング46に固定され、分離装置85、弁装置86、パイプp2、p3は吸引装置61と共に上下方向に移動させられ、吸引装置61が吸引位置に置かれると、図8の破線で示されるように、弁装置86とパイプp4とが接続され、吸引装置61が退避位置に置かれると、図8の実線で示されるように、弁装置86とパイプp4とが分離させられる。
したがって、吸引装置61が吸引位置に置かれると、吸引ポンプPsによってノズル面Saに付着したインク及び空気がバキュームスリット63を介して吸引され、インクが廃液ボトル89に送られ、空気が吐出口h2から吐出される。また、吸引装置61が退避位置に置かれると、吸引ポンプPsが駆動されていても、ノズル面Saに付着したインク及び空気は吸引されず、パイプp4の開口h3から吸引された空気が吐出口h2から吐出される。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図9は本発明の第3の実施の形態におけるワイプユニットの概念図である。
図において、41は第4のメンテナンス装置としてのワイプユニット、Hdiは記録ヘッド、Saは該記録ヘッドHdiのノズル面、R1〜R4は回転自在に配設されたローラ、78は、ローラR1〜R4によって矢印方向に走行自在に張設された走行部材としてのベルト、76は該ベルト75の所定の箇所に配設されたブレードベース、77は、該ブレードベース76に取り付けられ、前記ノズル面Saに当接させられたワイプブレードである。該ワイプブレード77の先端は、湾曲させられてノズル面Saに当接させられる。
ローラR1〜R4のうちの所定のローラは駆動ローラであり、他のローラは従動ローラであり、駆動ローラにワイプ用の駆動部としての図示されないモータが連結され、該モータを駆動することによってローラR1〜R4が回転させられ、ベルト78が走行させられ、ワイプブレード77がノズル面Saに付着したインクを払拭する。
これにより、第3のメンテナンス装置としてのバキュームユニット44(図1)によってインクが吸引された後のノズル面Saに残留したインク、ノズル面Saに固着した異物等が除去される。
前記各実施の形態においては、インクジェットプリンタ10について説明しているが、本発明を複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。