JP2018153813A - 鋼の連続鋳造用モールドパウダー - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、鋳片表面割れの発生し易い中炭素鋼の鋳造において、鋳片縦割れと、拘束性ブレイクアウトやブレイクアウト予知といった操業上の不具合を回避することができる、低Li2O組成の経済的な鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供することにある。【解決手段】本発明鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、1300℃に加熱、溶融時のパウダースラグのCaO/SiO2質量比が1.4〜4.0、Li2Oが2.0質量%以下(ゼロを含む)、B2O3が2.0〜9.0質量%、Fが10.0〜20.0質量%、Na2Oが10.0質量%以下(ゼロを含む)、MgOが2.0質量%以下(ゼロを含む)、Al2O3が5.0質量%未満(ゼロを含む)であることを特徴とするである【選択図】図2
Description
本発明は、鋼の連続鋳造において、水冷モールド内の溶鋼表面に添加されるモールドパウダーに関し、さらに詳細には、鋳込み中に鋳片表面割れを起こし易い中炭素鋼の鋳込みの際に鋳片表面割れの起こり難い鋼の連続鋳造用モールドパウダーに関するものである。
鋼の連続鋳造において、モールドパウダーは、水冷モールド(以下、「モールド」という)内の溶鋼表面に投入され、溶鋼の熱により溶融したモールドパウダー(以下、「パウダースラグ」という)がモールドと凝固シェルの間隙に流れ込み、以下に示す役割を果たしながら消費される:(1)モールドと凝固シェルの潤滑;(2)凝固シェルの冷却速度のコントロール;(3)溶鋼から浮上する介在物の溶解及び吸収;(4)溶鋼の保温;(5)溶鋼の再酸化防止。上記5つがモールドパウダーの主要な役割である。
C含有量が0.08〜0.16質量%の亜包晶中炭素鋼では、その凝固過程でδ相からγ相への包晶変態を伴う凝固収縮が大きく、鋳片表面割れが発生し易い。鋳片表面割れを防止するため、(2)の働きによって凝固シェルからモールドへの抜熱を制御し、均一な凝固シェルを形成する必要がある。具体的には、モールド内の溶鋼表面近傍の凝固シェルを緩やかに冷却すること(以下、「緩冷却」という)で、凝固シェルの厚みを均一にすることが有効である。
モールドパウダーによる凝固シェルの緩冷却は、モールドと凝固シェルの間隙に流れ込んだパウダースラグがモールド壁で冷却され、凝固することで形成したスラグフィルム中の結晶による伝熱抵抗の増大によってもたらされる。モールドパウダーの構成成分は、主成分となるSiO2、CaOと、モールドパウダーの粘度と結晶の析出の調整のために添加されるLi2O、Na2O、F、MgO、Al2O3等(以下、「フラックス成分」という)であり、スラグフィルム中に析出する一般的な結晶種はカスピダイン(Cuspidine:3CaO・2SiO2・CaF2)である。
また、溶鋼表面近傍での初期凝固シェルの緩冷却が鋳片表面縦割れ抑制に有効であることから、モールドパウダーに縦割れを抑制する機能を付与するためには、パウダースラグがモールドと凝固シェルの隙間に流れ込んだ後、瞬時に結晶を析出し、凝固シェルを緩冷却する必要がある。緩冷却のためには結晶の析出速さを早くすることが好ましく、緩冷却による鋳片表面縦割れを抑制できる。
結晶の析出速さの評価としては、1300℃のパウダースラグ(1)を図1に示す水冷銅樋(1)に流す実験方法が適切である。水冷銅樋(2)はV字形状をしており、V字の先端(水冷銅樋下端)部分は急速に冷却されるが、V字の上方(水冷銅樋の上方)の冷却速度は遅くなる。このため、水冷銅樋下端では急冷されてガラスとなるが、上端ではゆっくり冷却されることで結晶化し易くなる。そこで、図2のように凝固したパウダースラグ断面の厚さをBとし、結晶(4)となった層の厚さをAとし、A/Bを結晶化率と定義する。このため、結晶の析出速さが遅く結晶化し難ければ全体がガラス状となって結晶化率が低くなり、逆に、結晶の析出が速いと、流れたパウダースラグ断面の全体の厚みに対する結晶厚みの割合(すなわち結晶化率)が高くなる。
他方、上述の通りモールドパウダーには、(1)のモールドと凝固シェルの潤滑性が要求される。そのため、粘度を下げ、結晶の析出温度(以下、「結晶化温度」という)を低下させることで、パウダースラグの流入量を増やし潤滑を確保する必要がある。モールドパウダーの粘度、結晶化温度の低下は、Na2O、F、Li2O等のフラックス成分を調整することによって行われるが、その中でもLi2Oの効果が高く、多用されている。しかし、近年のリチウム価格高騰は著しく、Li2Oを添加したモールドパウダーは経済的ではないため添加量を減らすことが求められている。
Li2O添加量を減少させる一つの手法として、Li2Oの代替としてB2O3を添加することが考えられ、下記のような先行技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、Bを0.1質量%以上含有する溶鋼の連続鋳造用モールドパウダーであって、CaOとSiO2の質量%の比が1.2以上3.0以下であり、質量%で、B2O3を1%以上10%以下及びFを3%以上20%以下含有し、1300℃における粘度が0.3Pa・s未満であることを特徴とするB含有鋼の連続鋳造用モールドパウダが開示されている。また、特許文献1の表2には、B2O3を5〜12質量%含有し、Li2O不含のモールドパウダーが例示されており、B含有鋼の連続鋳造において、鋳片表面の縦割れ、ディプレッションの発生を防止し、手入れ歩留まりを向上できるとしている。ここで、ガラスを形成する成分であるB2O3の含有量が多くなりすぎると、カスピダインの生成が抑制されるため、結晶化率が低くなり、鋳片表面縦割れを抑制する効果が低くなる。表2に記載されているモールドパウダーは、B2O3を添加している上に、カスピダインの生成を抑制する成分であるMgOをかなり多量に添加しているため、カスピダインの生成が過剰に抑制され、緩冷却効果を得ることはできない。
例えば、特許文献1には、Bを0.1質量%以上含有する溶鋼の連続鋳造用モールドパウダーであって、CaOとSiO2の質量%の比が1.2以上3.0以下であり、質量%で、B2O3を1%以上10%以下及びFを3%以上20%以下含有し、1300℃における粘度が0.3Pa・s未満であることを特徴とするB含有鋼の連続鋳造用モールドパウダが開示されている。また、特許文献1の表2には、B2O3を5〜12質量%含有し、Li2O不含のモールドパウダーが例示されており、B含有鋼の連続鋳造において、鋳片表面の縦割れ、ディプレッションの発生を防止し、手入れ歩留まりを向上できるとしている。ここで、ガラスを形成する成分であるB2O3の含有量が多くなりすぎると、カスピダインの生成が抑制されるため、結晶化率が低くなり、鋳片表面縦割れを抑制する効果が低くなる。表2に記載されているモールドパウダーは、B2O3を添加している上に、カスピダインの生成を抑制する成分であるMgOをかなり多量に添加しているため、カスピダインの生成が過剰に抑制され、緩冷却効果を得ることはできない。
また、特許文献2には、CaO20〜50質量%、SiO220〜50質量%、Al2O320質量%以下、Na210質量%以下、Li2O10質量%以下、B2O320質量%以下及びMgO10質量%以下を含むことを特徴とする連続鋳造用モールドフラックスが開示されている。また、特許文献2の表1及び3には、CaO/SiO2質量比が0.6〜1.3で、F含有量がゼロまたは7.7質量%のモールドパウダーが例示されている。ここで、F不含のモールドパウダーは、カスピダインが析出しないため、緩冷却効果が得られない。また、F含有量が7.7質量%配合されたモールドパウダーも例示されているが、CaO/SiO2質量比が低いため、カスピダインが生成し難く、結晶化率が低く、鋳片表面割れを抑制することはできなかった。
さらに、特許文献3には、化学成分として、SiO2、CaO、Al2O3、Na2O、B2O3、FおよびCを含有する鋼の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、質量%で、SiO2が20〜32%、Al2O3が5〜15%、Na2Oが1〜8%、B2O3が1〜10%、Fが3〜11%であることを特徴とする鋼の連続鋳造用パウダーが開示されている。しかしながら、Al2O3含有量が5質量%以上となると、カスピダインの生成が抑制され、結晶化率が小さくなり緩冷却効果が得られず、鋳片表面縦割れを抑制することはできない。
また、特許文献4には、CaO/SiO2比が1.0〜2.0であり、P2O5が1.0〜8.0質量%、B2O3が0.5〜5.0質量%のうちの1種または2種を含有し、かつ、凝固温度が1050〜1200℃、1300℃における粘度が0.5〜2.5dPa・sであり、一旦溶融させたフラックスを毎分10℃の速度で冷却した常温試料中の主な結晶相がカスピダインである高Al鋼の連続鋳造用モールドフラックスが開示されている。また、特許文献4の表2には、Li2Oを含有せず、B2O3を含有するモールドフラックスが例示されているが、B2O3とP2O5を併用しており、更に、CaO/SiO2質量比が0.93〜1.35と低く、CaO/SiO2質量比が1.4〜4.0の範囲内で、B2O3のみを使用した場合の作用・効果を開示するものではない。
また、特許文献5には、CaOおよびSiO2を主成分として含み、CaO/SiO2比が1.3〜2.0であり、B2O3を5〜15質量%含み、Fを2〜15質量%含み、特定の式により定義される光学塩基度が0.66〜0.80である鋼の連続鋳造用モールドフラックスが開示されている。また、特許文献5の表1には、Li2Oを含有せず、B2O3を含有するモールドフラックスが例示されているが、いずれもF含有量が低く、F含有量が10〜20質量%の範囲内で、B2O3のみを使用した場合の作用・効果を開示するものではない。
上述のような特許文献に開示されているLi2Oを含まず、B2O3を含むモールドパウダーは、いずれも緩冷却特性が不十分であり、鋳片縦割れを十分に抑制できないものであった。
従って、本発明の目的は、鋳片表面割れの発生し易い中炭素鋼の鋳造において、鋳片縦割れと、拘束性ブレイクアウトやブレイクアウト予知といった操業上の不具合を回避することができる、低Li2O組成の経済的な鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供することにある。
すなわち、本発明は、1300℃に加熱、溶融時のパウダースラグのCaO/SiO2質量比が1.4〜4.0、Li2Oが2.0質量%以下(ゼロを含む)、B2O3が2.0〜9.0質量%、Fが10.0〜20.0質量%、Na2Oが10.0質量%以下(ゼロを含む)、MgOが2.0質量%以下(ゼロを含む)、Al2O3が5.0質量%未満(ゼロを含む)であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダーである。
本発明の鋼の連続鋳造用モールドパウダーによれば、鋳片表面割れの発生し易い中炭素鋼の連続鋳造において、鋳片縦割れと、拘束性ブレイクアウトやブレイクアウト予知といった操業上の不具合を回避することができ、低Li2O組成の経済的な鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供することが可能となる。
本発明の鋼の連続鋳造用モールドパウダー(以下、単に「モールドパウダー」と記載する)において、CaO/SiO2質量比は、1.4〜4.0の範囲内であり、好ましくは1.7〜3.0の範囲内である。モールドパウダーのCaO/SiO2質量比が1.4未満であると、スラグフィルム中に析出するカスピダインの生成量が不十分となり、結晶化率が低くなりすぎるために好ましくない。また、CaO/SiO2質量比が4.0を超えると、カスピダインに代わりCa2SiO4等異なる結晶が生成し、結晶化温度が過度に高くなるため好ましくない。なお、本明細書で説明する各成分の含有量は、モールドパウダーを1300℃に加熱することにより得られるパウダースラグにおける各成分の含有量を言うものとする。また、本明細書に使用する「CaO」は、モールドパウダー中の全Caの分析値(質量%)をCaO(質量%)に換算した値を表すものとする。
本発明のモールドパウダー中のLi2O含有量は、原料コストの面から少なければ少ないほど好ましく、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、ゼロであることが最も好ましい。
また、本発明のモールドパウダー中のB2O3含有量は、2.0〜9.0質量%の範囲内であり、好ましくは3.0〜8.0質量%の範囲内である。B2O3含有量が2.0質量%未満であると、結晶化温度が過剰に高くなり、また、9.0質量%を超えると、結晶化温度、結晶化率が共に著しく低くなるため好ましくない。
さらに、本発明のモールドパウダー中のF含有量は、10.0〜20.0質量%の範囲内であり、好ましくは12.0〜18.0質量%の範囲内である。F含有量が10.0質量%未満であると、カスピダインが析出しにくく、Ca2SiO4等が析出しやすくなり、結晶化温度が過剰に高くなるため好ましくない。また、F含有量が20.0質量%を超えると、モールドパウダー中のCaとFの構成比がCaF2の組成に近づくため、結晶化温度が過剰に高くなり好ましくない。
また、本発明のモールドパウダー中のNa2O含有量は、10.0質量%以下(ゼロを含む)であり、好ましくは8質量%以下(ゼロを含む)である。Na2O含有量が10質量%を超えると、結晶化温度が過剰に低下するため好ましくない。
次に、本発明のモールドパウダー中のMgO含有量は、2.0質量%以下(ゼロを含む)であり、好ましくは1.0質量%以下(ゼロを含む)である。MgO含有量が2.0質量%を超えると、カスピダインの生成が阻害され、カスピダイン以外の結晶の析出し、また、結晶化率が著しく低くなるため好ましくない。
また、本発明のモールドパウダー中のAl2O3含有量は、5.0質量%未満(ゼロを含む)であり、好ましくは4質量%以下(ゼロを含む)である。Al2O3含有量が5.0質量%以上となると、カスピダインの生成が阻害され、カスピダイン以外の結晶の析出し、また、結晶化率が著しく低くなるため好ましくない。
なお、本発明のモールドパウダーにおいて、結晶化率は、20%を超え、好ましくは30%以上である。結晶化率が20%を超えると、パウダースラグがモールドと凝固シェル隙間に流入すると、瞬時に結晶化するため緩冷却能が高く、鋳片縦割れを抑制することができる。
また、本発明のモールドパウダーにおいて、潤滑性と鋳片縦割れ抑制効果を両立させることができる結晶化温度は、1050〜1230℃の範囲内であり、好ましくは1100〜1200℃の範囲内である。結晶化温度が1230℃を超えると、モールドと凝固シェルの潤滑性が不足し、拘束性ブレイクアウトのリスクが高まるため好ましくない。また、結晶化温度が1050℃未満であると、モールドと凝固シェル隙間に流入した後のカスピダインの析出が少なく、鋳片縦割れ抑制効果が低いため好ましくない。
さらに、本発明のモールドパウダーにおいて、1300℃での粘度は、1.5ポイズ以下、好ましくは1.3ポイズ以下である。ここで、1300℃での粘度が1.5ポイズを超えると、モールドと凝固シェルの潤滑性が不足し、拘束性ブレイクアウトのリスクが高まるため好ましくない。
なお、本発明のモールドパウダーを調製するに際して、CaO原料としては、例えばセメント、石灰石、生石灰、珪灰石、溶融処理を行ったプリメルト原料等を、また、SiO2原料としては、例えば、珪石、珪藻土等を、F原料としては、例えば蛍石等を、Li2O原料としては、例えば炭酸リチウム等を、B2O3原料としては、例えば硼砂、コレマナイト等を、Na2O原料としては、例えば炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、氷晶石等の一般的なモールドパウダーに使用される原料を用いることができる。
また、モールドパウダーの溶融速度の調整のために炭素原料を必要に応じて添加することができる。炭素原料としてはカーボンブラック、黒鉛などを用いることができる。炭素原料の配合量は、外掛けで1〜15質量%であることが好ましい。
なお、本発明のモールドパウダーの性状は特に限定されるものではなく、粉末、押し出し成形顆粒、中空スプレー顆粒、撹拌造粒など様々な形状のものを使用することができる。
以下、実施例により本発明のモールドパウダーをさらに説明する。
本発明品のモールドパウダーの組成を表1および2に、比較品のモールドパウダーの組成を表3にそれぞれ示す。なお、各種原料を配合してモールドパウダーを調製する際に、外掛けで5質量%の炭素原料を配合した。ここで、表中の「化学組成(質量%)」は、モールドパウダーを1300℃に加熱することにより得られたパウダースラグの組成を酸化物換算量で表示したものであり、各成分の合計は100質量%を超える。これは弗化物、例えばCaF2を原料に用いた場合、CaF2中のCaをその分析値からCaO(質量%)と換算し、Fを別に分析するためである。また、炭素原料は、パウダースラグとなった時点では消失しているため、表中の化学組成には表示しないものとする。
本発明品のモールドパウダーの組成を表1および2に、比較品のモールドパウダーの組成を表3にそれぞれ示す。なお、各種原料を配合してモールドパウダーを調製する際に、外掛けで5質量%の炭素原料を配合した。ここで、表中の「化学組成(質量%)」は、モールドパウダーを1300℃に加熱することにより得られたパウダースラグの組成を酸化物換算量で表示したものであり、各成分の合計は100質量%を超える。これは弗化物、例えばCaF2を原料に用いた場合、CaF2中のCaをその分析値からCaO(質量%)と換算し、Fを別に分析するためである。また、炭素原料は、パウダースラグとなった時点では消失しているため、表中の化学組成には表示しないものとする。
[評価方法]
モールドパウダーの結晶化温度は、1300℃で溶融状態のパウダースラグを5℃/分の速度で降温しながら温度を記録し、結晶化に伴うパウダースラグの発熱開始温度を結晶化温度と定義することで測定したものである;
モールドパウダーの粘度は、白金球引き上げ法により、1300℃で溶融状態のパウダースラグ中に吊り下げた金球を引き上げることにより測定したものである;
モールドパウダーの結晶化率は、以下のように行った:
図1に示す水冷銅樋(2)(幅60mm、高さ30mm、長さ1200mmで、先端角度124°のV字型の溝を有する)を傾斜角0.5°に保持し、1300℃で溶融した120gのパウダースラグ(1)を流し込み、パウダースラグが冷却した後、パウダースラグの中央にて切断し、図2に示す凝固したパウダースラグ断面から、急冷によりガラス化した部分と、ガラス化せず結晶となった部分とを識別し、凝固したパウダースラグ断面の厚さ(B)に対する結晶となった層の厚さ(A)の比を測定して結晶化率とした。
モールドパウダーの結晶化温度は、1300℃で溶融状態のパウダースラグを5℃/分の速度で降温しながら温度を記録し、結晶化に伴うパウダースラグの発熱開始温度を結晶化温度と定義することで測定したものである;
モールドパウダーの粘度は、白金球引き上げ法により、1300℃で溶融状態のパウダースラグ中に吊り下げた金球を引き上げることにより測定したものである;
モールドパウダーの結晶化率は、以下のように行った:
図1に示す水冷銅樋(2)(幅60mm、高さ30mm、長さ1200mmで、先端角度124°のV字型の溝を有する)を傾斜角0.5°に保持し、1300℃で溶融した120gのパウダースラグ(1)を流し込み、パウダースラグが冷却した後、パウダースラグの中央にて切断し、図2に示す凝固したパウダースラグ断面から、急冷によりガラス化した部分と、ガラス化せず結晶となった部分とを識別し、凝固したパウダースラグ断面の厚さ(B)に対する結晶となった層の厚さ(A)の比を測定して結晶化率とした。
評価は、◎、○、×で表示することし、評価基準は以下の通りである:
結晶化率、結晶化温度、粘度全ての項目にて、「結晶化率:30%以上」、「結晶化温度:1100〜1200℃」、「粘度:1.5ポイズ以下」に該当する場合の評価を◎とした;
結晶化率、結晶化温度、粘度全ての項目にて、「結晶化率:20%以上」、「結晶化温度:1050〜1230℃」、「粘度:1.5ポイズ以下」に該当する場合の評価を○とした;
結晶化率、結晶化温度、粘度いずれかの項目にて、「結晶化率:20%以上」、「結晶化温度:1050〜1230℃」、「粘度:1.5ポイズ以下」を外れる項目が1つ以上存在する場合評価を×とした。
結晶化率、結晶化温度、粘度全ての項目にて、「結晶化率:30%以上」、「結晶化温度:1100〜1200℃」、「粘度:1.5ポイズ以下」に該当する場合の評価を◎とした;
結晶化率、結晶化温度、粘度全ての項目にて、「結晶化率:20%以上」、「結晶化温度:1050〜1230℃」、「粘度:1.5ポイズ以下」に該当する場合の評価を○とした;
結晶化率、結晶化温度、粘度いずれかの項目にて、「結晶化率:20%以上」、「結晶化温度:1050〜1230℃」、「粘度:1.5ポイズ以下」を外れる項目が1つ以上存在する場合評価を×とした。
表1および2から、本発明品は、いずれもモールドパウダーに求められる特性を満たしているため、高い鋳片縦割れ抑制効果を持ち、拘束性ブレイクアウトのリスクの低いモールドパウダーであることが判る。
一方、比較品1は、CaO/SiO2質量比が本発明範囲より低いため、結晶化温度が低く、結晶化率が低い結果となった。SiO2はガラスを形成する成分であることから、CaO/SiO2質量比が低くなると、カスピダインが生成しにくくガラス化しやすい組成となり、結晶化温度が低く、結晶化率が低くなったものと考えられる。
比較品2は、CaO/SiO2質量比が本発明範囲より高いため、結晶化温度が高い結果となった。CaO/SiO2質量比が高くなるとカスピダインの代わりに、Ca2SiO4等の結晶が析出する組成となるため、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品3は、B2O3含有量が本発明範囲より少ない、結晶化温度が高い結果となった。B2O3はガラスを形成する成分であるため、B2O3含有量が少ないと、カスピダインを形成しやすくなり、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品4は、B2O3含有量が本発明範囲より多いため、結晶化温度が低く結晶化率が低い結果となった。B2O3はガラスを形成する成分であるため、B2O3が過剰に存在すると、ガラス化しやすくなり、結晶化温度が低く、結晶化率が低くなったものと考えられる。
比較品5は、F含有量が本発明範囲より少ないため、結晶化温度が高い結果となった。Fはカスピダイン(3CaO・SiO2・CaF2)とCaF2を形成する成分であり、F含有量が少ないことにより、カスピダインが生成しやすい組成となり、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品6は、F含有量が本発明範囲より多いため、結晶化温度が高い結果となった。Fはカスピダイン(3CaO・SiO2・CaF2)とCaF2を形成する成分であり、F含有量が多いことにより、CaF2が生成しやすい組成となり、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品7は、Na2O含有量が本発明範囲より多いため、結晶化温度が低い結果となった。Na2Oは結晶化温度を下げる成分であるため、過剰に含有することにより結晶化温度は低くなったものと考えられる。
比較品8は、MgO含有量が本発明範囲より多いため、結晶化率が低い結果となった。MgOはカスピダインの生成を抑制するため、結晶化率が低下したものと考えられる。
比較品9は、Al2O3含有量が本発明範囲より多いため、結晶化率が低い結果となった。Al2O3はガラスを形成する成分であり、粘度も上昇させることから、カスピダインの生成を抑制したものと考えられる。
一方、比較品1は、CaO/SiO2質量比が本発明範囲より低いため、結晶化温度が低く、結晶化率が低い結果となった。SiO2はガラスを形成する成分であることから、CaO/SiO2質量比が低くなると、カスピダインが生成しにくくガラス化しやすい組成となり、結晶化温度が低く、結晶化率が低くなったものと考えられる。
比較品2は、CaO/SiO2質量比が本発明範囲より高いため、結晶化温度が高い結果となった。CaO/SiO2質量比が高くなるとカスピダインの代わりに、Ca2SiO4等の結晶が析出する組成となるため、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品3は、B2O3含有量が本発明範囲より少ない、結晶化温度が高い結果となった。B2O3はガラスを形成する成分であるため、B2O3含有量が少ないと、カスピダインを形成しやすくなり、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品4は、B2O3含有量が本発明範囲より多いため、結晶化温度が低く結晶化率が低い結果となった。B2O3はガラスを形成する成分であるため、B2O3が過剰に存在すると、ガラス化しやすくなり、結晶化温度が低く、結晶化率が低くなったものと考えられる。
比較品5は、F含有量が本発明範囲より少ないため、結晶化温度が高い結果となった。Fはカスピダイン(3CaO・SiO2・CaF2)とCaF2を形成する成分であり、F含有量が少ないことにより、カスピダインが生成しやすい組成となり、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品6は、F含有量が本発明範囲より多いため、結晶化温度が高い結果となった。Fはカスピダイン(3CaO・SiO2・CaF2)とCaF2を形成する成分であり、F含有量が多いことにより、CaF2が生成しやすい組成となり、結晶化温度が高くなったものと考えられる。
比較品7は、Na2O含有量が本発明範囲より多いため、結晶化温度が低い結果となった。Na2Oは結晶化温度を下げる成分であるため、過剰に含有することにより結晶化温度は低くなったものと考えられる。
比較品8は、MgO含有量が本発明範囲より多いため、結晶化率が低い結果となった。MgOはカスピダインの生成を抑制するため、結晶化率が低下したものと考えられる。
比較品9は、Al2O3含有量が本発明範囲より多いため、結晶化率が低い結果となった。Al2O3はガラスを形成する成分であり、粘度も上昇させることから、カスピダインの生成を抑制したものと考えられる。
評価結果の確認として、C量0.14重量%の中炭素鋼、厚み220mm、幅2100mmのサイズのモールド、1.2/分の鋳造速度条件にて、本発明品5、9、21及び
比較品1、7、8のモールドパウダーを用いて連続鋳造を行なった。
その結果、本発明品5、9,21を用いた鋳造では、鋳片割れ及びBO予知は発生せず、中炭素鋼用モールドパウダーとして問題のないことが確認できた。
一方、比較品はいずれも鋳片表面上に縦割れが生じており、鋳片縦割れ発生率(鋳造長さに対する鋳片縦割れの長さ)は比較品1が9.3%、比較品7が5.5%、比較品8が5.1%と、中炭素鋼用モールドパウダーとして問題のあるものであった。
比較品1、7、8のモールドパウダーを用いて連続鋳造を行なった。
その結果、本発明品5、9,21を用いた鋳造では、鋳片割れ及びBO予知は発生せず、中炭素鋼用モールドパウダーとして問題のないことが確認できた。
一方、比較品はいずれも鋳片表面上に縦割れが生じており、鋳片縦割れ発生率(鋳造長さに対する鋳片縦割れの長さ)は比較品1が9.3%、比較品7が5.5%、比較品8が5.1%と、中炭素鋼用モールドパウダーとして問題のあるものであった。
1:パウダースラグ 2:水冷銅樋 3:ガラス 4:結晶 A:結晶となった層の厚さ B:凝固したパウダースラグ断面の厚さ
Claims (4)
- 鋼の連続鋳造用モールドパウダーにおいて、1300℃に加熱、溶融時のパウダースラグのCaO/SiO2質量比が1.4〜4.0、Li2Oが2.0質量%以下(ゼロを含む)、B2O3が2.0〜9.0質量%、Fが10.0〜20.0質量%、Na2Oが10.0質量%以下(ゼロを含む)、MgOが2.0質量%以下(ゼロを含む)、Al2O3が5.0質量%未満(ゼロを含む)であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
- 結晶化率が20%超である、請求項1記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
- 結晶化温度が、1050〜1230℃の範囲内である、請求項1または2記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
- 1300℃での粘度が、1.5ポイズ以下である、請求項1ないし3のいずれか1項記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017049815A JP2018153813A (ja) | 2017-03-15 | 2017-03-15 | 鋼の連続鋳造用モールドパウダー |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017049815A JP2018153813A (ja) | 2017-03-15 | 2017-03-15 | 鋼の連続鋳造用モールドパウダー |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2018153813A true JP2018153813A (ja) | 2018-10-04 |
Family
ID=63717078
Family Applications (1)
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JP2017049815A Pending JP2018153813A (ja) | 2017-03-15 | 2017-03-15 | 鋼の連続鋳造用モールドパウダー |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018153813A (ja) |
-
2017
- 2017-03-15 JP JP2017049815A patent/JP2018153813A/ja active Pending
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