JP2018153763A - バイポーラ膜及びその製造方法、電気透析装置並びに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
膜、陰イオン交換膜を組み合わせた電気透析法は、中性塩からの酸・アルカリ生成工程で実用化されている。また最近では、水解離の逆反応、すなわち両交換層界面における水の自動生成反応(H++OH-→H2O)を利用し、バイポーラ膜を電解質として用いた自己加湿型燃
料電池が提案されている。このバイポーラ膜燃料電池は、無加湿下での稼働も可能であることが期待されている。
<1>
下記工程を含む、バイポーラ膜の製造方法。
(A)下記工程(1)に続いて下記工程(2)を実施すること、又は、下記工程(1)と同時に下記工程(2)を実施することにより高分子基材膜の高分子にビニルモノマーをグラフト重合する工程
(1)高分子基材膜に対して放射線を照射する工程、
(2)高分子基材膜の片面側に第1のビニルモノマーを接触させ、反対面側に第2のビニルモノマーを接触させる工程であって、第1のビニルモノマーは、陽イオン交換基含有ビニルモノマーと陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方であり、第2のビニルモノマーは、陰イオン交換基含有ビニルモノマーと陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方である工程、(B)工程(A)で陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーを用いた場合に、陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を、陽イオン交換基及び/又は陰イオン交換基に変換する工程。
<2>
工程(A)が、前記工程(1)に続いて前記工程(2)を実施することにより実施される請求項1記載の製造方法。
<3>
前記陽イオン交換基含有ビニルモノマーが、スルホ基、カルボキシ基、ホスホン基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物であり、前記陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、フェニル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、イミダゾール基、ピリジル基、第1〜3級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物である、<1>又は<2>の製造方法。
<4>
前記陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、フェニル基、エポキシ基、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物であり、前記陰イオン交換基含有ビニルモノマーが、4級アンモニウム塩基、4級イミダゾリウム塩基、4級ピリジニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物である、<1>又は<2>の製造方法。
<5>
前記陽イオン交換基含有ビニルモノマー又は前記陰イオン交換基含有ビニルモノマーが、それを含有する第1の液体として重合に供され、前記陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマー又は前記陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、それを含有する第2の液体として重合に供され、第1の液体と第2の液体は非混和性である<1>〜<4>のいずれかの製造方法。
<6>
前記放射線がγ線又は電子線である、<1>〜<5>のいずれかの製造方法。
<7>
膜の法線方向に連接した陽イオン交換層と陰イオン交換層を一体の高分子基材膜に有するバイポーラ膜。
<8>
バイポーラ膜を備える電気透析装置であって、バイポーラ膜が<7>のバイポーラ膜である電気透析装置。
<9>
バイポーラ膜を備える燃料電池であって、バイポーラ膜が<7>のバイポーラ膜である燃料電池。
本発明の製造方法は、バイポーラ膜の製造方法であり、下記工程(A)および(B)を含む。
(A)下記工程(1)に続いて下記工程(2)を実施すること、又は、下記工程(1)と同時に下記工程(2)を実施することにより高分子基材膜の高分子にビニルモノマーをグラフト重合する工程
(1)高分子基材膜に対して放射線を照射する工程(放射線照射工程)、
(2)高分子基材膜の片面側に第1のビニルモノマーを接触させ、反対面側に第2のビニルモノマーを接触させる工程であって、第1のビニルモノマーは、陽イオン交換基含有ビニルモノマーと陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方であり、第2のビニルモノマーは、陰イオン交換基含有ビニルモノマーと陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方である工程(ビニルモノマー接触工程)、
(B)工程(A)で陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーを用いた場合に、陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を、陽イオン交換基及び/又は陰イオン交換基に変換する工程。
接触したビニルモノマーのビニル基とを反応させてグラフト重合を開始する。グラフト重合の生じる領域は、時間とともに、膜表面から膜内部へと拡張する。したがってグラフト重合が生じる限り、工程(1)の後に工程(2)を実施してもよいし、工程(1)と工程(2)を同時に実施してもよい。図1にフローチャートを示す。放射線照射工程(S10)を先に行った場合、ビニルモノマー接触工程(S20)は、グラフト重合工程(S200)となる。
(1)高分子基材膜に対して放射線を照射し、ラジカルを生成させる工程、
(2)照射した膜の片面側から第1のビニルモノマーを重合し、反対面側から第2のビニルモノマーを重合する工程であって、第1のビニルモノマーは、陽イオン交換基含有ビニルモノマーと陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方であり、第2のビニルモノマーは、陰イオン交換基含有ビニルモノマーと陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方である工程、
(3)前記グラフト重合工程において、陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーを用いた場合に、陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を、陽イオン交換基及び/又は陰イオン交換基に変換する工程。
ッ素系高分子、オレフィン系高分子、芳香族炭化水素系高分子が好ましい。これらの例を以下に挙げる。
ン、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブテン、ナイロン及びポリメチル
ペンテンが含まれる。また、これらの2種以上の混合物や、これらの合成に用いられるモノマーを複数種用いた共重合体を用いてもよい。
、カルボキシ基、ホスホン基等が挙げられる。
、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウムが含まれる。
チル、メタクリル酸メチル、グリシジルメタクリレートが含まれる。
ことができる。
ビニルオクタフルオロブタン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ジビニルアセチレン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフォキシド、ジビニルエーテル、イソプレン、1,5-ヘキサジエン、ブタジエンが含まれる。
フト重合するビニルモノマー液は疎水性であることが好ましい。ビニルモノマー液をかかる組み合わせとすることで、陽イオン交換層と陰イオン交換層とが明確に分離した(陽イオン交換層と陰イオン交換層との界面が明確な)バイポーラ膜の作成を実現することができる。ここで、親水性と疎水性とは用いる2種の溶媒の相対的な性質の相違を示すものである。好ましくは、第1のビニルモノマー液の溶媒と第2のビニルモノマー液の溶媒は非混和性である。ここで、非混和性とは、混合しても両液が分離して明瞭な界面を形成することを意味する。非混和性の溶媒の組み合わせを検討するとき、オクタノール/水分配係
数POWが有用である。これは、オクタノールと水の混合物に物質を溶解させたとき、POW =
(オクタノール中の物質濃度) / (水中の物質濃度)として定義される。POWの対数のlog(POW)は、物質の親水性・疎水性を表す指標である。下記表1に本グラフト重合に利用でき
る溶媒のlog(POW)を表に示す。2種の溶媒を混ぜるとき、例えば水とTHF(log(POW)の差=0.46−(−1.06)=1.52)は混和するのに対し、水と1−ペンタノール
(log(POW)の差=1.16−(−1.06)=2.22)は二層に分離することが知られ
ている。このことから、非混和性の溶媒の組み合わせとして、log(POW)の差が2以上ある2種の溶媒を選択することが好ましい。
X)装置を用いて、膜断面の形態を観察し元素分布を調べたときに、陽イオン交換層を構成するグラフト重合鎖由来の元素が存在する領域と、陰イオン交換層を構成するグラフト重合鎖由来の元素が存在する領域とを、区別して把握可能であることをいう。典型的には、陽イオン交換層を構成するグラフト重合鎖由来の元素と陰イオン交換層を構成するグラフト重合鎖由来の元素とが混和して存在する領域が小さいことをいう。なお、陽イオン交換層と陰イオン交換層との界面において、陽イオン交換層を構成するグラフト重合鎖由来の元素と陰イオン交換層を構成するグラフト重合鎖由来の元素とが混和して存在することを妨げるものではない。このような混和層の厚みは、バイポーラ膜全体の厚みの30%以下であることが好ましい。
陽イオン交換基含有ビニルモノマーが、スルホ基、カルボキシ基、ホスホン基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物であり、陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、フェニル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、イミダゾール基、ピリジル基、第1〜3級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物である組み合わせ。
陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、フェニル基、エポキシ基、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物であり、陰イオン交換基含有ビニルモノマーが、4級アンモニウム塩基、4級イミダゾリウム塩基、4級ピリジニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物である組み合わせ。
オン交換層の厚み)を調整できる。
は、下記計算式を用いて算出することができる。
いる状態で当該高分子基材膜に対して放射線を照射する工程を含む態様が例示される。このとき、高分子基材膜の片面側には上述した第1のビニルモノマーを接触させ、反対面側には上述した第2のビニルモノマーを接触させる。なお、上記高分子基材膜に対する放射線照射は、高分子基材膜の少なくとも一方の面にビニルモノマーが接触している状態で行えばよく、好ましくは高分子基材膜の両面に第1のビニルモノマーおよび第2のビニルモノマーが各々接触している状態で放射線照射を行う。放射線が照射されると、接触しているビニルモノマーが放射線照射した膜に浸透し、グラフト重合が起こる。かかる製造方法(他の実施態様)によっても、高分子基材膜に対する放射線照射により生じたラジカルとビニルモノマーのビニル基とが重合し、一体の高分子基材膜中に、その法線方向に連接した陽イオン交換層と陰イオン交換層を有するバイポーラ膜を得ることができる。
なお、本発明の製造方法の他の実施態様において、放射線照射工程とビニルモノマー接触工程とを同時に実施する以外は、上述した実施態様と同様の構成とすればよいため、詳細な説明は割愛する。
本発明のバイポーラ膜は、膜の法線方向に連接した陽イオン交換層と陰イオン交換層を一体の高分子基材膜に有する。模式図を図2に示す。膜の法線方向(図2中の矢印の方向に連接した陽イオン交換層(10)と陰イオン交換層(20)によりバイポーラ膜(100)が構成される。本発明のバイポーラ膜は、上述の本発明の製造方法で製造することができ、本発明の製造方法について説明した事項が本発明のバイポーラ膜にも当てはまる。
本発明の電気透析装置は、本発明のバイポーラ膜を備える。バイポーラ膜が本発明のバイポーラ膜である他の構成は、従来のバイポーラ膜を備える電気透析装置と同様でよい。
バイポーラ膜を備える電気透析装置は、通常には、陰極と陽極との間に、空間を開けて陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜が交互に配置され、そのうち、少なくとも一部の陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜の対をバイポーラ膜で置き換えた構造を有する。
本発明の燃料電池装置は、本発明のバイポーラ膜を備える。バイポーラ膜が本発明のバイポーラ膜である他の構成は、従来のバイポーラ膜を備える燃料電池と同様でよい。バイポーラ膜を備える燃料電池は、通常には、燃料を酸化させるアノード(燃料極)、酸素を還元するカソード(空気極)及びアノードとカソードの間の電解質としてのバイポーラ膜を備える。
膜厚50μmのETFE膜(旭硝子製)に対して、アルゴン雰囲気下、室温で15kGyのγ線を照射した。次いで、γ線を照射した後のETFE膜を2室型セルの中央に配置した。あらかじめアルゴンでバブリングしておいたスチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)とアクリル酸の混合水溶液(SSS:1mol/L、アクリル酸:1 mol/L)をセルの片側に注入した。その後すぐに、あらかじめアルゴンでバブリングしておいたクロロメチルスチレン(CMS)のキシレン溶液(CMS濃度:50vol%)をセルの逆側に注入した。2室型セルを60℃に保持された恒温槽内に6時間保置し、グラフト重合反応を行った。膜中の未反応モノマー及びホモポリマーを除去するため、得られたグラフト膜は室温のトルエン中に6時間、室温の水中に6時間浸漬された。得られたグラフト膜のグラフト率を(1)式から算出したところ50.7%であった。
まず、SSS/アクリル酸とCMSがグラフト重合されたグラフト膜を所定の大きさに
切り出し、試験片を得た。かかる試験片(グラフト重合膜)を1mol/Lの塩酸に室温で2
4時間浸漬し、SSSユニットのスルホ基の対イオンをナトリウムイオンからプロトンに変換した。次いで、グラフト膜を3mol/Lの塩化ナトリウム水溶液に室温で24時間浸漬
し、スルホ基の対イオンをプロトンからナトリウムイオンに変換した。膜から遊離したプロトンを含む反応液を0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。膜内の
スルホ基の物質量は、中和に要した水酸化ナトリウムの物質量に等しいと見なして求めた。
(1)の処理を行った試験片(グラフト重合膜)を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水
溶液15mLに浸漬し、SSSユニットのスルホ基とアクリル酸ユニットのカルボキシ基の対イオンをプロトンからナトリウムイオンに変換した。このイオン交換により一部の水酸化ナトリウムが消費された反応液を、0.1mol/Lの塩酸水溶液で逆滴定した。スルホ基
とカルボキシ基の合計の物質量は、水酸化ナトリウムの消費量に等しいと見なして求めた。さらに、その合計物質量から(1)スルホ基の定量で求めたスルホ基の量を差し引くことでカルボキシ基の量を求めた。
(1)、(2)の処理を行った試験片を室温で30質量%のトリメチルアミン水溶液に8時間浸漬し、CMSユニットに4級アンモニウム塩基を導入することでバイポーラ膜を作製した。得られた膜を1mol/Lの塩酸に24時間浸漬し、膜内に残存したトリメチルア
ミンを除去した後、純水で十分に洗浄した。
(1)〜(3)の処理を行った試験片(バイポーラ膜)を室温で1mol/Lの水酸化カリ
ウム水溶液に24時間浸漬し、スルホ基及びカルボキシ基の対イオンをプロトンからカリウムイオン、4級アンモニウム塩基の対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンに変換した。バイポーラ膜を純水で十分に洗浄した後、室温で0.1mol/Lの塩酸水溶液15m
Lに24時間浸漬した。これにより、スルホ基とカルボキシ基の対イオンをカリウムイオンからプロトン、4級アンモニウム塩基の対イオンを水酸化物イオンから塩化物イオンに変換した。このイオン交換によって一部の塩酸が消費された反応液を、0.1mol/Lの水
酸化ナトリウム水溶液で逆滴定した。スルホ基、カルボキシ基、4級アンモニウム塩基の合計の物質量は、塩酸の消費量に等しいと見なして求めた。さらに、この合計量から、(1)スルホ基の定量と(2)カルボキシ基の定量で求めたスルホ基とカルボキシ基の合計量を差し引くことで4級アンモニウム塩基の物質量を求めた。
乾燥したバイポーラ膜を5mm×6mm四方程度のサイズに切り出してエポキシ樹脂中に浸漬させ、これを80℃で24時間加熱することで固化させた。この樹脂固化体の表面をスライサーで少しずつ切削していき、膜断面を露出させて電子顕微鏡観察試料を調製した。走査型電子顕微鏡(SEM)及びそれに連結されたエネルギー分散型X線分光分析(
EDX)装置を用いて、膜断面の形態を観察し元素分布を調べた。
バイポーラ膜を室温で1mol/Lの塩酸水溶液に24時間浸漬し、スルホ基とカルボキシ
基の対イオンをプロトン、4級アンモニウム塩基の対イオンを塩化物イオンに変換した。次いでバイポーラ膜を純水で十分に洗浄した。図5の模式的な俯瞰図に示すように、バイポーラ膜の両端をそれぞれ2枚の薄い白金電極板(90)で挟み、電極間に交流電圧を印加し、LCRハイテスタ(日置電機、3522−50)を用いて膜面方向の膜抵抗を測定した。膜のイオン伝導度σを以下の(2)式から算出した。
d:電極間の距離、R:膜抵抗、S:膜の断面積
バイポーラ膜を電気透析や燃料電池に適用するとき、それらの性能を左右する膜特性は、単位面積あたりの膜厚方向の膜抵抗RAである。そこで、イオン伝導度に異方性はないと仮定し、(2)式で求めたイオン伝導度σに基づき、以下の(3)式から膜抵抗RAを算出した。RA = L / σ (3)
L:膜厚
バイポーラ膜を12時間以上真空乾燥させた後、その乾燥重量Wdryを測定した。(1)スルホ基の定量、(2)カルボキシ基の定量、(4)4級アンモニウム塩基の定量でそれぞれ求めたスルホ基、カルボキシ基、4級アンモニウム塩基の物質量をバイポーラ膜
の乾燥重量(Wdry)で除すことで、それぞれのイオン交換容量(mmol/g)を算出した。結果を表1に示す。
SSSとアクリル酸の膜の片面側からのグラフト重合を60℃で開始した後、2時間経過後に逆面側からCMSのグラフト重合を開始した以外は、実施例1と同様にしてバイポーラ膜を作製し、その諸特性を測定した。実施例2の膜試料のグラフト率を(1)式から求めたところ、62.7%であった。また、実施例1と同様にイオン交換容量及びイオン伝導度を測定した結果を表1に示す。
CMSの溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた以外は、実施例1と同
様にしてバイポーラ膜を作製した。実施例3の膜試料のグラフト率を(1)式から求めたところ、49.4%であった。
製できたと言える。実施例1の膜では、陰イオン交換層の厚みは48μmであるのに対し、陽イオン交換層の厚みは19μmに過ぎない。これは、親水性であるSSS/アクリル
酸モノマーが疎水性のETFE基材膜に浸透しグラフト重合する速度が比較的遅いからである。実施例2の膜では、CMSモノマーのグラフト重合開始の2時間前から、SSS/
アクリル酸のグラフト重合を開始しており、これによって陽イオン交換層の厚みは実施例1の膜よりも増大した。このように、両モノマーのグラフト重合開始に時間差を設けることで、陽イオン/陰イオン交換層の厚みを調節できた。
ち、第1のモノマー液と第2のモノマー液として、互いに非混和性である組み合わせを選択することで、高分子基材に浸透した第1のモノマー液(ここではSSS/アクリル酸を
含むモノマー液)と第2のモノマー液(ここではCMSを含むモノマー液)とが接する界面において、これらモノマー液が明確に相分離する。これにより、陽イオン交換層と陰イオン交換層との界面が明確に区別されるバイポーラ膜を提供できることが明らかとなった。
市販のバイポーラ膜であるネオセプタ膜について、<実施例1>と同様にしてイオン交換容量及びイオン伝導度を測定した結果を表2に示す。
20 陰イオン交換層
30 高分子基材膜
40 第1のビニルモノマー
50 第2のビニルモノマー
60 2室型セル
90 白金電極板
100 バイポーラ膜
Claims (9)
- 下記工程を含む、バイポーラ膜の製造方法。
(A)下記工程(1)に続いて下記工程(2)を実施すること、又は、下記工程(1)と同時に下記工程(2)を実施することにより高分子基材膜の高分子にビニルモノマーをグラフト重合する工程
(1)高分子基材膜に対して放射線を照射する工程、
(2)高分子基材膜の片面側に第1のビニルモノマーを接触させ、反対面側に第2のビニルモノマーを接触させる工程であって、第1のビニルモノマーは、陽イオン交換基含有ビニルモノマーと陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方であり、第2のビニルモノマーは、陰イオン交換基含有ビニルモノマーと陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーの両者もしくは一方である工程、(B)工程(A)で陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーを用いた場合に、陽イオン交換基に変換可能な基及び/又は陰イオン交換基に変換可能な基を、陽イオン交換基及び/又は陰イオン交換基に変換する工程。 - 工程(A)が、前記工程(1)に続いて前記工程(2)を実施することにより実施される請求項1記載の製造方法。
- 前記陽イオン交換基含有ビニルモノマーが、スルホ基、カルボキシ基、ホスホン基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物であり、前記陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、フェニル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、イミダゾール基、ピリジル基、第1〜3級アミノ基、からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、フェニル基、エポキシ基、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物であり、前記陰イオン交換基含有ビニルモノマーが、4級アンモニウム塩基、4級イミダゾリウム塩基、4級ピリジニウム塩基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含む炭素数2〜20の化合物である、請求項1又は2記載の製造方法。
- 前記陽イオン交換基含有ビニルモノマー又は前記陰イオン交換基含有ビニルモノマーが、それを含有する第1の液体として重合に供され、前記陰イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマー又は前記陽イオン交換基に変換可能な基を有する非荷電ビニルモノマーが、それを含有する第2の液体として重合に供され、第1の液体と第2の液体は非混和性である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記放射線がγ線又は電子線である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 膜の法線方向に連接した陽イオン交換層と陰イオン交換層を一体の高分子基材膜に有するバイポーラ膜。
- バイポーラ膜を備える電気透析装置であって、バイポーラ膜が請求項7に記載のバイポーラ膜である電気透析装置。
- バイポーラ膜を備える燃料電池であって、バイポーラ膜が請求項7に記載のバイポーラ膜である燃料電池。
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