JP2011249093A - 架橋芳香族高分子電解質膜とその製造方法、および架橋芳香族高分子電解質膜を用いた高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族高分子フィルム基材に対して、放射線照射による架橋構造の付与、および、グラフト重合工程によるグラフト鎖の形成を行った後、グラフト重合により形成されたグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換することによりグラフト鎖にスルホン酸基を導入する。
【選択図】なし
Description
そのため、前記「ナフィオン(登録商標)」等に替わる低コストの電解質膜を開発する努力が行われてきた。本発明と密接関連する放射線グラフト重合法により、フッ素系高分子フィルムにスルホン酸基を導入して高分子電解質膜を作製する方法が、特許文献1、特許文献2、特許文献3に提案されている。フッ素系高分子フィルムは、耐溶媒性が高いため、グラフト溶液又はスルホン化溶液中にフィルムの形状が維持でき、厚みが一様に均一な高分子電解質膜が得られる。また、ポリオレフィン高分子(ポリエチレン又はポリプロピレン)フィルムも耐溶媒性が高いため、放射線グラフト重合法により高分子電解質膜を合成できる(非特許文献1)。これらの放射線グラフト重合高分子電解質膜は、高いイオン導電性を有し、且つ製造コストが低いことから注目されている。
(芳香族高分子フィルム基材)
本発明において使用する「芳香族高分子フィルム基材」は、芳香族高分子電解質膜の基材となるフィルム形態を有する高分子材料である。本発明において使用することができる芳香族高分子フィルム基材の例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、芳香族ポリアミド(PAMDX6)、ポリフェニルエーテル(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのうち1種、又は2種以上の共重合体若しくは混合物から構成されるフィルムが挙げられる。なかでも、機械強度又は熱安定性が高い、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリスルホンのいずれかの構造を持つ芳香族高分子フィルム基材が好ましく用いられる。これら芳香族高分子フィルム基材は市販されており、安価、且つ容易に入手することができる。この芳香族高分子フィルム基材に対して、予め放射線照射して架橋構造を付与することで、芳香族高分子フィルム基材の耐溶媒性が高くなる。そのため、化学改質として、放射線グラフト重合、スルホン化反応等の処理を施しても芳香族高分子フィルム基材のフィルム形状が維持できることから、簡便なフィルム・ツ・フィルム製造プロセスによる高分子電解質膜の製造が可能になる。
(放射線照射による架橋構造の付与)
本発明において、放射線照射による架橋構造の付与とは、芳香族高分子フィルム基材に電離性放射線照射し、芳香族高分子フィルム基材の芳香族高分子鎖同士に架橋を導入することである。放射線照射で架橋構造を付与する芳香族高分子フィルム基材は、後述する第2グラフト重合によりビニルモノマーがグラフト重合された芳香族高分子フィルム基材も含む。ビニルモノマーがグラフト重合された芳香族高分子フィルム基材に電離性放射線照射した場合には、芳香族高分子フィルム基材の芳香族高分子鎖同士、グラフト鎖と芳香族高分子鎖、又はグラフト鎖同士に架橋が導入される。
(グラフト重合するビニルモノマー)
本発明において、芳香族高分子フィルム基材にグラフト重合するビニルモノマーは、下記A群の、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環(芳香族環)を有するビニルモノマー(1)、下記B群の加水分解でスルホン酸基に変換可能なハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)、下記C群のアルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマー(3)、下記D群のアルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマー(4)が挙げられる。芳香族高分子電解質膜にイオン導電性基としてスルホン酸基を導入するためには、A群およびB群のビニルモノマーからなる群から1種又は2種以上のビニルモノマーをグラフト重合する。芳香族高分子電解質膜をハイブリット化するためには、A群およびB群のビニルモノマーからなる群から1種又は2種以上のビニルモノマーと、C群およびD群のビニルモノマーからなる群から1種又は2種以上のビニルモノマーをグラフト重合する。
(1)A群:
スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマーとしては、スチレン、およびα−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン類、ジメチルスチレン類、トリメチルスチレン類、ペンタメチルスチレン類、ジエチルスチレン類、イソプロピルスチレン類、ブチルスチレン類(3-tert-ブチルスチレン、4-tert-ブチルスチレンなど)のアルキルスチレン、クロロスチレン類、フルオロスチレン類などのスチレン誘導体などが挙げられる。
(2)B群:
加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマーとしては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸メチルエステル、スチレンスルホン酸エチルエステル、ビニルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸リチウム、ビニルスルホン酸エチルエステルなどが挙げられる。
(3)C群:
アルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマーとしては、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
(4)D群:
アルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマーとしては、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルアリルシラン、アリルトリメトキシシランなどが挙げられる。
(5)E群:
多官能性ビニルモノマーとしては、ジビニルベンゼン、ビス(ビニルフェニル)エタン、2,4,6-トリアリロキシ-1,3,5-トリアジン(トリアリルシアヌレート)、トリアリル-1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート(トリアリルトリメリテート)、ジアリルエーテル、トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリワン、1,4-ジビニルオクタフルオロブタン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ジビニルアセチレン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン、ジビニルスルホキシドなどが挙げられる。
(第1グラフト重合)
第1グラフト重合は、架橋構造が付与された芳香族高分子フィルム基材に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、および、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーをグラフト重合する。あるいは、芳香族高分子フィルム基材または架橋構造が付与された芳香族高分子フィルム基材に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環もしくはカルボニル基を有するビニルモノマー(1)、および、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、アルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマー(3)、および、アルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマー(4)から選ばれる少なくとも1種のビニルンモノマーとを共グラフト重合する。
(熱グラフト重合)
熱グラフト重合は、芳香族高分子フィルム基材をビニルモノマー溶液中に浸漬させ、空気中または窒素等の不活性雰囲気下、40〜100℃、なかでも50〜80℃で1〜48時間、なかでも5〜20時間重合反応を行うことが好ましい。芳香族高分子の芳香環は高いラジカル捕捉能があるため、熱によって生成したラジカルが基材の芳香環に捕捉され、グラフト重合の出発点として基材の高分子鎖に枝のようなグラフト鎖が形成される。
(放射線グラフト重合)
放射線グラフト重合は、放射線を照射することで、芳香族高分子フィルム基材にラジカルが生成し、そのラジカルとビニルモノマーが接触することでグラフト鎖が形成される。ラジカル量は照射量によってコントロールできるため、高いグラフト率が得られる。このため、第1グラフト重合は放射線グラフト重合によって行われることが好ましい。
(グラフト重合温度・時間)
適度なグラフト重合速度を得るために、グラフト重合温度は40℃以上であることが好ましい。また、ホモポリマーの形成およびラジカルの失活を防ぐため、グラフト重合温度は100℃以下が好ましい。第1グラフト重合時間は、0.1〜40時間、特に0.5〜10時間が好ましい。
(グラフト重合溶媒)
また、ホモポリマーの生成を抑制するために、ビニルモノマーを溶媒で希釈して使用することが好ましい。ビニルモノマーを希釈するための溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、ヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、イソプロピルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物等の溶媒が挙げられる。これらのなかから適宜選択して使用することができる。なお、溶媒を用いる場合、ビニルモノマー濃度は、特に限定されないが、20〜80vol%であることが好ましい。
(スルホン化工程)
第1グラフト重合において(1)のビニルモノマーを使用した場合には、第1グラフト重合の後、スルホン化反応によりグラフト鎖の一部を化学変換してスルホン酸基を導入する。このスルホン化反応のためのスルホン化工程は公知の方法によって行うことができる。例えば、クロロスルホン酸のジクロロエタン溶液やクロロホルム溶液等のスルホン化溶液中に浸漬することによってクロロスルホン酸基等のスルホン酸基を導入し、その後純水中に浸漬して加水分解することによりスルホン化する等の方法が採用できる。
(加水分解工程)
第1グラフト重合において(2)のビニルモノマーを使用した場合には、第1グラフト重合の後、加水分解してスルホン酸基に変換することによりグラフト鎖の一部にスルホン酸基を導入する。この加水分解工程は公知の方法によって行うことができる。例えば、スチレンスルホン酸エチルエステルをグラフトした芳香族高分子フィルム基材を、95℃の熱水中で24時間処理し、加水分解すれば、スルホン酸エチルエステル基がイオン導電性基であるスルホン酸基に変換され、所期の高分子電解質膜が得られる。
(第2グラフト重合)
第2グラフト重合は第1グラフト重合に先立って行われ、その実施時期は、芳香族高分子フィルム基材に放射線照射による架橋構造を付与する前、もしくはその後である。第2グラフト重合の手法は特に限定されず、例えば、上記した熱グラフト重合、または放射線グラフト重合などを挙げられる。要求グラフト率が低いことや、グラフト重合のコストなどを考えると、熱グラフト重合が好ましい。
(架橋芳香族高分子電解質膜の製造)
図1は、架橋芳香族高分子電解質膜の製造プロセスの一例を示したフローチャートである。
<架橋芳香族高分子電解質膜>
架橋芳香族高分子電解質膜は、導入されるイオン導電性基としてのスルホン酸基の量、即ちイオン交換容量が、第1グラフト重合工程のグラフト率によって制御される。
<高分子形燃料電池>
高分子形燃料電池は、正極と負極の間に上記架橋芳香族高分子電解質膜が設けられているものである。なお、正極、負極の構成、材質、燃料電池の構成は公知のものとすることができる。
基材として、芳香族高分子であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム(Victrex(日本語:ビクトレックス)社製、Victrex APTIVTM Film 2000 Series)を使用した。基材の膜厚は50μm、幅は60mm、長さ200mmである。フィルム基材を照射台に固定させ、この状態で、PEEKフィルム基材に1MVの電圧、10mA電子線を60分間で40MGyの線量になるように照射し、架橋したPEEKフィルム基材を得た(放射線架橋工程)。
(1)グラフト率(%)
グラフト率(%)はビニルモノマーグラフト重合前後の重量変化から、次式(G[重量%])として表される。
W1:グラフト重合前の乾燥状態の重量(g)
W2:グラフト重合後の乾燥状態の重量(g)
(2)イオン交換容量(mmol/g)
架橋芳香族高分子電解質膜のイオン交換容量(Ion Exchange Capacity, IEC)は次式で表される。
n:架橋芳香族高分子電解質膜のスルホン酸基量(mmol/g)
Wm:架橋芳香族高分子電解質膜の乾燥重量(g)
nの測定は、架橋芳香族高分子電解質膜を1M硫酸溶液中に50℃で4時間浸漬し、完全にプロトン型(H型)とした後、脱イオン水でpH=6〜7まで洗い、遊離酸を完全に除去後、飽和NaCl水溶液中に24時間浸漬することでイオン交換を行い、プロトンH+を遊離し、その後、該電解質膜とその水溶液を0.02M NaOHで中和滴定することで、架橋芳香族高分子電解質膜のスルホン酸基量を、プロトンH+量n=0.02V((V:滴定した0.02M NaOHの体積(ml))として求めた。
(3)含水率(%)
80℃の熱水中で24時間保存したプロトン型の架橋芳香族高分子電解質膜を取り出し、表面の水を軽く拭き取った後、含水重量Wwを測定した。この膜を60℃にて16時間、真空乾燥後、重量測定することで高分子電解質膜の乾燥重量Wdを求め、Ww、Wdから次式により含水率を算出した。
(4)プロトン伝導度(S/cm)
室温の水中で保存したプロトン型の架橋芳香族高分子電解質膜を取り出し、その膜を両白金電極に挟み、インピーダンスより膜抵抗を測定した。架橋芳香族高分子電解質膜のプロトン伝導度は次式により算出した。
κ:架橋芳香族高分子電解質膜のプロトン伝導度(S/cm)
d:両白金電極の距離(cm)
Rm:架橋芳香族高分子電解質膜の抵抗(Ω)
S:抵抗測定における架橋芳香族高分子電解質膜の電気流れの断面積(cm2)
(5)機械強度
架橋芳香族高分子電解質膜の機械的強度として、引張強度(MPa)を、室温(約25℃)、湿度50%RHの下、JISK7127に準じ、ダンベル型の試験片を用いて測定した。
(実施例2)
基材として、芳香族高分子であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム(Victrex(日本語:ビクトレックス)社製、Victrex APTIVTM Film 2000 Series)を使用した。基材の膜厚は50μm、幅は60mm、長さ200mmである。PEEKフィルム基材に、多官能性ビニルモノマー(5)であるジビニルベンゼン(DVB)のグラフト重合を行った(第2グラフト重合工程)。第2グラフト重合は以下の条件で行った。
(実施例3)
実施例1において、放射線グラフト重合のスチレンモノマーを含む反応液に、シラン架橋構造が導入できるビニルモノマー(3)のp−スチリルトリメトキシシラン(STMS)(信越化学株式会社製)を追加して、スチレン:STMS:n−プロピルアルコール=25:25:50(容積%)の混合溶液(グラフト重合反応液)を調製し、第1グラフト重合を行った。
(実施例4)
基材として、芳香族高分子であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム(Victrex(日本語:ビクトレックス)社製、Victrex APTIVTM Film 2000 Series)を使用した。基材の膜厚は50μm、幅は60mm、長さ200mmである。フィルム基材を照射台に固定させ、この状態で、PEEKフィルム基材に1MVの電圧、10mA電子線を60分間で40MGyの線量になるように照射し、架橋したPEEKフィルム基材を得た(放射線架橋工程)。
(実施例5)
実施例1において得られた架橋PEEKフィルム基材に、ビニルモノマー(1)であるスチレンのグラフト重合を行った(第2グラフ重合工程)。第2グラフト重合は以下の条件で行った。
(実施例6)
実施例1において、DVBのグラフト重合工程(第2グラフト重合工程)を省略して、直接架橋したPEEKフィルムを基材に、ビニルモノマー(1)であるスチレンをグラフト重合した(第1グラフト重合工程)。スチレングラフト重合時間は、72時間まで延長した。
(比較例1)
実施例1において、放射線架橋を実施しないPEEKフィルムを基材として、DVBをグラフト重合した後、スチレンをグラフト重合した。
(参考例)
ナフィオン212(デュポン社製)の特性について実施例1と同様に測定して評価した。その結果を表1に示す。
Claims (9)
- 芳香族高分子フィルム基材に対して、放射線照射による架橋構造の付与、および、下記グラフト重合工程によるグラフト鎖の形成を行った後、グラフト重合により形成されたグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換することにより前記グラフト鎖にスルホン酸基を導入することを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。
グラフト重合工程:架橋構造が付与された芳香族高分子フィルム基材に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、および、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーをグラフト重合する工程。 - 芳香族高分子フィルム基材に対して、放射線照射による架橋構造の付与、および、下記グラフト重合工程によるグラフト鎖の形成を行った後、グラフト重合により形成されたグラフト鎖の一部をスルホン酸基に化学変換することにより前記グラフト鎖にスルホン酸基を導入するとともに、グラフト鎖のアルコキシシラン基を加水分解して前記グラフト鎖間にシラン架橋構造を付与することを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。
グラフト重合工程:架橋構造が付与された芳香族高分子フィルム基材に、スルホン化反応でスルホン酸基導入可能な芳香環を有するビニルモノマー(1)、および、加水分解でスルホン酸基に変換可能なスルホニル基、ハロゲン化スルホニル基、スルホン酸塩基もしくはスルホン酸エステル基を有するビニルモノマー(2)から選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーと、アルコキシシラン基を有し且つスルホン酸基保持可能な芳香環を有するビニルモノマー(3)、および、アルコキシシラン基を有し且つ芳香環を持たないビニルモノマー(4)から選ばれる少なくとも1種のビニルンモノマーとを共グラフト重合する工程。 - 前記ビニルモノマー(1)のグラフト重合により形成されたグラフト鎖の芳香環にスルホン酸基を導入するスルホン化反応は、濃度0.2M以下のスルホン化溶液を室温以下の温度で前記架橋芳香族高分子フィルム基材に接触させて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。
- 前記グラフト重合工程の前に、前記(1)から(4)のビニルモノマー、および、多官能性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーを、前記芳香族高分子フィルム基材にグラフト重合することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の架橋芳香族高分子電解質膜の製造方法。
- 架橋構造が付与されている芳香族高分子フィルム基材にビニルモノマーのグラフト鎖が形成されている架橋芳香族高分子電解質膜であって、前記グラフト鎖にはスルホン酸基が導入されていることを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜。
- 架橋構造が付与されている芳香族高分子フィルム基材にビニルモノマーのグラフト鎖が形成されている架橋芳香族高分子電解質膜であって、前記グラフト鎖にはスルホン酸基が導入され、且つ、前記グラフト鎖間にシラン架橋構造が付与されていることを特徴とする架橋芳香族高分子電解質膜。
- 前記グラフト鎖は、芳香環を有し、この芳香環に前記スルホン酸基が導入されていることを特徴とする請求項5または6に記載の架橋芳香族高分子電解質膜。
- 前記芳香族高分子フィルム基材は、ポリエーテルエーテルケトン構造、ポリエーテルケトン構造、ポリスルホン構造、またはポリイミド構造を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の架橋芳香族高分子電解質膜。
- 請求項5から8のいずれかの架橋芳香族高分子電解質膜を有する高分子形燃料電池。
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