JP4716363B2 - プロトン伝導性膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ素系高分子にプロトン伝導性基を導入するためのプロトン伝導性膜の製造方法、並びにそれを用いて得られる燃料電池用電解質膜に関する。
固体高分子型燃料電池は、エネルギー密度が高いことから、家庭用コージェネ電源や携帯機器用電源、電気自動車の電源、簡易補助電源等の広い分野での使用が期待されている。固体高分子型燃料電池においては、電解質膜はプロトンを伝導する為の電解質として機能し、同時に燃料である水素やメタノールと酸素を直接混合させない為の隔膜としての役割も有する。この様な電解質膜としては、電解質としてイオン交換容量が高い事、電流を長時間流す為電気的化学的な安定性、電気抵抗が低い事、膜の力学的強度が強い事、燃料である水素ガスやメタノールおよび酸素ガスについてガス透過性の低い事等が要求される。
このような燃料電池の電解質膜としては、デュポン社から開発されたパーフルオロスルホン酸膜「ナフィオン(デュポン社登録商標)」等が一般に用いられていた。しかしながら、「ナフィオン」を始めとする従来のフッ素系高分子イオン交換膜は、化学的な安定性には優れるもののイオン交換容量が低く、また保水性が不充分な為イオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下する問題が見られた。この対策としてスルホン酸基を多く導入すると、保水により膜強度が極端に低下し、容易に破損してしまい、プロトン伝導性と膜強度を両立するのが難しいという問題を有していた。また、ナフィオンなどのフッ素系高分子電解質膜は、原料となるフッ素系モノマーの合成が複雑な為、非常に高価であり、固体高分子型燃料電池の実用化に対し大きな障害となっている。
その為、ナフィオンを始めとするフッ素系電解質膜に替わる低コストで高性能な電解質膜の開発が進められている。例えば、炭化水素構造を含むエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜にスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより合成した電解質膜等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらを始めとする従来のクロロスルホン酸や硫酸等の反応性が非常に高いスルホン化剤を使用した場合、副反応が多く起こり、更に高分子膜基材へのダメージを考慮してマイルドな反応条件で行わざるを得ないため、反応時間も長くなってしまう。その結果、副反応等によるプロトン伝導性基の導入や均一性が阻害され、更に反応時間が長くなることにより、生産性は不十分であった。
なお、下記の特許文献2には、トリメチルベンゼンスルホン酸によりスルホン化した芳香族系高分子を、プロトン伝導性膜の構成材料として使用することが開示されているが、芳香族系高分子の溶液をスルホン化剤と反応させているため、グラフトフィルムに対する反応とは各種条件などが大きく異なるものである。
特開平9−102322号公報 特開2001−307752号公報
そこで、本発明の目的は、副反応が生じにくく短時間でスルホン化が行え、しかも均一にスルホン酸基を導入できるため、同じイオン交換容量でも高いプロトン伝導性を得ることができるプロトン伝導性膜の製造方法、並びにそれを用いて得られる燃料電池用電解質膜を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、スルホン化によるプロトン伝導性基の導入方法について鋭意研究したところ、ビニル系のグラフト鎖が内部まで存在するグラフトフィルムを、アルキルベンゼンスルホン酸によりスルホン化することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のプロトン伝導性膜の製造方法は、フッ素系高分子の無孔基材フィルムの内部までビニル系モノマーがグラフト重合されたグラフト鎖が存在するグラフトフィルムを、アルキルベンゼンスルホン酸によりスルホン化して、プロトン伝導性基を導入することを特徴とする。
本発明のプロトン伝導性膜の製造方法によると、ビニル系のグラフト鎖が内部まで存在するグラフトフィルムを、アルキルベンゼンスルホン酸によりスルホン化するため、副反応が生じにくく短時間でスルホン化が行え、しかも均一にスルホン酸基(スルホン基)を導入できるため、同じイオン交換容量でも高いプロトン伝導性となるプロトン伝導性膜を得ることができる。
上記において、前記アルキルベンゼンスルホン酸が、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3−スルホン酸、及び1,2,3,4,5−ペンタメチルベンゼン−6−スルホン酸からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸のなかでも、これらの化合物は、特に反応の選択性が高く、反応性が適度であるため、本発明のスルホン化剤として好ましい。
また、前記スルホン化を100〜160℃の温度で行うことが好ましい。このような反応温度であると、短い時間で実用上十分な量のプロトン伝導性基を導入することができる。
一方、本発明の燃料電池用電解質膜は、上記いずれかに記載の製造方法により得られるプロトン伝導性膜からなる燃料電池用電解質膜である。従って、燃料電池用電解質膜として用いた場合に、均一にスルホン酸基を導入できるため、同じイオン交換容量でも高いプロトン伝導性を得ることができ、メタノールのクロスオーバーの抑制や機械的強度の維持、水透過の抑制、化学的耐久性の向上などに有利になる。
本発明のプロトン伝導性膜の製造方法では、フッ素系高分子の基材の内部までビニル系モノマーがグラフト重合されたグラフト鎖が存在するグラフトフィルムを用いる。このようなグラフトフィルムは、フッ素系高分子製の基材フィルムに、高エネルギー線を照射した後、ビニル系モノマーをグラフト重合することで得ることができる。
基材ポリマーとしては、電池内での電気化学反応等に対し耐久性の高いフッ素系高分子膜を用いることが好ましい。フッ素系高分子膜について、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(以下FEPと略す)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下PFAと略す)、ポリフッ化ビニリデン(以下PVdFと略す)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(以下ETFEと略す)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等を使用する事ができる。本発明では、膜/電極接合体(MEA)作製の際の電極との接着性の観点から、PVdFを用いるのが好ましい。
基材フィルムとしては、無孔フィルムを用いる。基材フィルムの厚みは、機械的強度などを維持しつつ、十分なプロトン伝導性を得る観点から、10〜200μmが好ましい。
また、これらのフッ素系高分子製の基材フィルムについて、あらかじめ架橋をしておくと、保液に伴う寸法変化率を小さくすることができるため好ましい。例えばPTFEの架橋方法については特開平6−116423号公報に、FEPやPFAの架橋方法については特開2001−348439号公報に開示されている方法を採用することができる。
グラフト鎖に関しては、例えば放射線や電子線を使用し、モノマーをグラフト反応させる事により得る事が可能である。このモノマーとしてはビニル基を有するものもしくはビニル基に結合している一部の水素が異なる官能基等に置換されたものを用いる事ができる(これを本発明では「ビニル系モノマー」という)。
またこのモノマーについては、単一はもとより複数の成分を混合したものも使用する事が出来る。具体的には下記の化学式(1)で示されるものを用いる事ができる。
Figure 0004716363
スルホン化処理に関しては、芳香族系のビニル系モノマーが処理を行い易いため、化学式(1)のR1がアリール基の場合が好ましく、ビニル系モノマーがスチレンの場合がより好ましい。
また、ビニル系モノマーとして、分子中にグラフト反応性のある不飽和結合を複数有する架橋剤を用いる事も可能であり、具体的には1,2−ビス(p−ビニルフェニル)、ジビニルスルホン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、フェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン、2,3−ジフェニルアセチレン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、ジアリルエーテル、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシレート、トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ブタジエン、イソブテン、エチレンなどを挙げることが出来る。
基材ポリマーへの上記モノマーのグラフト重合は、基材フィルムを放射線等の照射後モノマーと反応させる、いわゆる前照射法によって重合させる場合、および基材とモノマーを同時に放射線照射し重合させるいわゆる同時照射法のいずれによっても可能であるが、ホモポリマーの生成量の少ない前照射法が使いやすい。
また前照射法については、2つの方法あり、基材フィルムを不活性ガス中で照射するポリマーラジカル法と、基材フィルムを酸素の存在する雰囲気下で照射するパーオキサイド法があり、いずれも使用可能である。
前照射法の一例として、基材フィルムをガラス容器中に挿入後、この容器を真空脱気、次いで不活性ガス雰囲気に置換する。その後、基材フィルムを含む容器に、電子線やγ線を−10〜80℃好ましくは室温付近で、1〜500kGy照射した後、酸素の存在しない不活性ガスのバブリングや凍結脱気などで、酸素ガスを除いたモノマーおよびその混合液、溶媒で溶解もしくは希釈したモノマー溶液を、この照射した基材フィルムを含む容器内に充填する。
架橋又は未架橋のフッ素高分子フィルムに、ポリマーのグラフト鎖を導入するためのグラフト重合は、通常30〜150℃、好ましくは40〜80℃で実施する。これにより得られたポリマーのグラフト率は、重合前の高分子基材に対し、8〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、このグラフト率については、照射線量、重合温度、重合時間等により変化させることが出来る。
本発明では、上記のようなグラフトフィルムを、アルキルベンゼンスルホン酸によりスルホン化して、プロトン伝導性基を導入する。
グラフト鎖を導入した高分子基材に、スルホン酸基をイオン交換基として導入する公知の方法としては、特開2001−348439号公報に開示されている。この公報では、1,2−ジクロロエタンを溶媒として用い、0.2〜0.5モル/Lの濃度のクロロスルホン酸溶液にグラフト処理フィルムを室温〜60℃で、2〜24時間浸漬して反応させている。また、高分子化合物フィルムのスルホン化に関する例としては、特開2005−89608号公報に開示されており、10〜30℃、2〜100時間で反応を行うと好ましいとされている。
上記の従来法のように、クロロスルホン酸のような反応性の強いスルホン化剤を用いた場合、副反応が多く、更に均一な膜を得ることが難しい。また、これらの例のように2時間以上の反応時間がかかると、生産性が大変低くなってしまう。
本発明では、原料フィルムをスルホン化するスルホン化剤として、アルキルベンゼンスルホン酸を使用することで、上記のような副反応等による問題を回避することができる。アルキルベンゼンスルホン酸のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、アルキル基の置換基数としては、1〜5が挙げられる。好ましいアルキルベンゼンスルホン酸の具体例としては、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3−スルホン酸、1,2,3,4,5−ペンタメチルベンゼン−6−スルホン酸が好ましい。
ポリスチレンのグラフト鎖に対して、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸でスルホン化する場合の反応の例を下記の化学式(2)に示す。
Figure 0004716363
スルホン化に使用される溶剤としては、スルホン化剤を溶解し、原料フィルム及びスルホン化反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されず各種のものを使用することができる。具体的には、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類、トリメチルベンゼン、トリブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン等のアルキルベンゼン類、スルホラン等の複素環化合物類、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の直鎖、分枝鎖又は環状の脂肪族飽和炭化水素類を例示できる。
これら溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用され、その使用量は、スルホン化対象化合物により異なり適宜選択されるが、通常0.05〜2.0モル/L、好ましくは0.1〜1.0モル/Lの濃度の範囲内で使用される。
また、スルホン化反応の反応温度及び反応時間もスルホン化されるべき芳香族化合物により異なり適宜選択され得るが、通常20〜200℃程度、好ましくは100〜160℃で、通常1〜120分程度、好ましくは5〜60分の範囲内で行うのが望ましい。
本発明では、原料フィルムのグラフト鎖にスルホン化剤のスルホン酸基が直接導入され、非常に穏やかな反応であるため、クロロスルホン酸や発煙硫酸のようなスルホン化力が強く酸化性も強いため、スルホン等の副生物が生成したり、得られるスルホン化物が着色したりすることが少ない。このため、反応温度を高くすることができ、反応時間を短くすることができる。
また、スルホン化剤の極性がクロロスルホン酸や発煙硫酸と比べて低いため、原料フィルムにすばやく均一に拡散することができ、速くて均一な反応を行うことができる。更にこのように均一に分散したスルホン酸基を導入することができるため、クロロスルホン酸によるスルホン化のものと比べ、低いイオン交換容量で高いプロトン伝導度が得られた。
本発明の電解質膜のイオン交換容量は、好ましくは0.2meq/g以上であり、さらには0.5meq/g以上であることがより好ましい。イオン交換容量が、0.2meq/gよりも低い場合には、プロトン伝導度を発現しない恐れがあり、好ましくない。
本発明の電解質膜のプロトン伝導度(室温)は、好ましくは0.01S/cm以上であり、さらには0.035S/cm以上であることがより好ましい。プロトン伝導度が0.01S/cmよりも低い場合には、本発明の電解質膜を固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質膜として使用した場合に、充分な発電特性を発揮しない恐れがある。電解質膜のプロトン伝導度を前記範囲に設定するには、本発明の原料フィルムのグラフト率やスルホン化率を制御し、プロトン伝導性置換基であるスルホン酸基の導入量を制御すればよい。
以上のような本発明の製造方法で得られた本発明の電解質膜は、実施例に記載の測定方法によるS含有イオンの相対強度において、芳香環に付加したスルホン酸基の比率が、全スルホン酸基に対して、好ましくは0.5以上となり、より好ましくは0.6〜0.8となる。本発明では、このようにスルホン酸基が選択的に導入されることによって、同じイオン交換容量でも高いプロトン伝導性を得ることができる。
本発明の電解質膜は、実用上充分なプロトン伝導性、化学的・熱的安定性、機械的特性があり、固体高分子形燃料電池やメタノールなどのアルコール類を使用する直接アルコール形燃料電池に使用可能な燃料電池用膜として好ましい。燃料としては、純水素、メタノール・天然ガス・ガソリンなどの改質水素ガス、メタノールなどのアルコール類、ジメチルエーテルなどが使用可能である。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
(a)グラフト率(Xds)
下式により算出した。
Xds=(W2−W1)×100/W1
ここで、W1:グラフト前の高分子基材の重量(g)、W2:グラフト後の高分子基材の重量(g)である。
(b)プロトン伝導度(K)
電解質膜の電気伝導度は、交流法による測定(新実験化学講座19,高分子化学<II>、p992、丸善)で、通常の膜抵抗測定セルとLCRメーター(E−4925A;ヒューレットパッカード製)を使用し、膜抵抗(Rm)の測定を行った。1M硫酸水溶液をセルに満たして膜の有無による白金電極間(距離5mm)の抵抗を測定し、膜の電気伝導度(比伝導度)は下式を用いて算出した。
K=1/Rm・d/S (S/cm)
(c)イオン交換容量(IEC)
プロトン伝導性膜(約12cm)を3モル/Lの塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、ウオーターバス中で60℃、3時間以上反応させる。室温まで冷却した後、サンプルをイオン交換水で充分に洗浄し、電位差自動滴定装置(AT−500N−1;京都電子工業株式会社製)を使用し、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、イオン交換容量を算出した。
(d)飛行時間型二次イオン質量(TOF−SIMS)分析
電解質膜のスルホン化反応によるS結合状態を観察するため、TOF−SIMS(ULVAC−PHI製TRIFT2)を用いて分析を行った。各試料をトリミングナイフで薄く切削し(約10μm)、切削面にメッシュを当ててサンプルホルダーに固定して、以下の条件で測定を行い、S含有イオンの相対強度(SO 比)を算出した。即ち、照射一次イオン:Au、一次イオン加速電圧:22kV、測定面積:120μm角(0.0144mm)とした。
(e)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
電解質膜のスルホン酸基を観察するため、TEMによる電解質膜の断面観察を行った。各試料を硝酸銀で染色し、50万倍の倍率で観察を行った。
実施例1
(グラフト重合)
基材フィルムとしてPVdFフィルム(呉羽化学製P20、厚さ50μm、無孔フィルム)を10cm角に切断し、大気中にて電子線を線量8Mradで照射した。引き続いてこの容器中に、あらかじめアルゴンバブリングで溶存酸素を除去しておいた、スチレン・トルエン混合液(スチレン50体積%とトルエン50体積%の混合液)約100gをアルゴン雰囲気下で投入した。ここでフィルムは完全に混合液に浸漬した状態にあった。混合液投入後、60℃で15分加熱し、グラフト反応を行い、反応後トルエンで十分洗浄し、乾燥させグラフト膜を得た。
(スルホン化)
このグラフト重合したPVdFフィルムをo−ジクロロベンゼンで希釈した0.1Mの1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸溶液中に浸漬し、147℃で15分加熱した後に水洗、乾燥し、スルホン化したグラフト膜すなわち電解質膜1を得た。
実施例2
スルホン化反応条件を147℃で30分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜2を得た。
実施例3
スルホン化反応条件を141℃で10分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜3を得た。
実施例4
スルホン化反応条件を141℃で15分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜4を得た。
実施例5
実施例1において、スルホン化反応の条件をo−ジクロロベンゼンで希釈した0.2Mの1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸溶液を使用し、122℃で15分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜5を得た。
実施例6
スルホン化反応条件を100℃で120分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜6を得た。
比較例1
実施例1に従って作製したグラフト重合膜を使用し、下記の方法でスルホン化したこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜11を得た。即ち、スルホン化に際し、1,2−ジクロロエタンで希釈した0.2Mクロルスルホン酸溶液中に浸漬し、60℃で4時間加熱した後水洗、乾燥しスルホン化したグラフト膜すなわち電解質膜11を得た。
比較例2
実施例1に従って作製したグラフト重合膜を使用し、下記の方法でスルホン化したこと以外は、実施例1と同じ条件で電解質膜12を得た。即ち、スルホン化に際し、15%発煙硫酸中に浸漬し、60℃で24時間加熱した後水洗、乾燥しスルホン化したグラフト膜すなわち電解質膜12を得た。
(評価結果)
以上のイオン交換容量とプロトン伝導度の結果を下記の表1に示す。
Figure 0004716363
実施例1〜6では、反応温度を100℃以上にすることにより、2時間以下の反応時間で充分なプロトン伝導度が得られた。また実施例2に関しては、比較例1,2と同程度のイオン交換容量にもかかわらず、約1.4〜1.8倍の高いプロトン伝導性が得られた。
次に、TOF−SIMSの結果を図1に示す。実施例6では比較例1と比べて、スチレンスルホン酸が倍程度の相対強度(SO 比)で存在し、より副反応が少なく、ポリスチレン鎖がスルホン化されていることが分かる。
次にTEM観察結果を図2〜図4に示す。このTEM写真は何れも、フィルム断面の中央からやや表面よりの断面構造を示している。本発明の電解質膜の方が、比較例1と比較して、スルホン酸基が細かく均一に分散していることが分かる。比較例1は、スルホン酸基が集まったドメインがあり、さらに均一に分散していない。また、実施例4と6を比べると、反応温度が高い実施例4の方がより細かくスルホン酸基が分散していることが分かる。以上の内容より、本発明の有効性が確認された。
実施例6及び比較例1で得られた電解質膜のS含有イオンの相対強度を示すグラフ 実施例4で得られた電解質膜の断面のTEM写真 実施例6で得られた電解質膜の断面のTEM写真 比較例1で得られた電解質膜の断面のTEM写真

Claims (4)

  1. フッ素系高分子の無孔基材フィルムの内部までビニル系モノマーがグラフト重合されたグラフト鎖が存在するグラフトフィルムを、アルキルベンゼンスルホン酸によりスルホン化して、プロトン伝導性基を導入するプロトン伝導性膜の製造方法。
  2. 前記アルキルベンゼンスルホン酸が、1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン−3−スルホン酸、及び1,2,3,4,5−ペンタメチルベンゼン−6−スルホン酸からなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
  3. 前記スルホン化を100〜160℃の温度で行う請求項1又は2のプロトン伝導性膜の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の製造方法により得られるプロトン伝導性膜からなる燃料電池用電解質膜。
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