JP2009123436A - 固体高分子型燃料電池用の電解質膜 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用の電解質膜 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池用の電解質膜に要求される種々の特性を改善する。
【解決手段】本発明の固体高分子型燃料電池用の電解質膜は、オレフィン系高分子またはフッ素系高分子によって構成された高分子基材と、陽イオン交換基を有し、かつ高分子基材に付加されたグラフト鎖と、高分子基材に分散された窒化ホウ素または酸化ジルコニウムとを含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池用の電解質膜に関する。
固体高分子型燃料電池は、エネルギー密度が高いことから、家庭用コージェネ電源や携帯機器用電源、電気自動車の電源、簡易補助電源等の広い分野での使用が期待されている。特に、メタノール溶液を燃料として使用する直接メタノール燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、入手しやすく持ち運びにも便利な液体燃料を使うことができ、小型化にも向いていることから、マイクロ燃料電池として開発が進められている。
固体高分子型燃料電池において、電解質膜はプロトンを伝導するための電解質として機能する。同時に、燃料である水素(またはメタノール)と酸素とを直接混合させないための隔膜としての役割も有する。したがって、電解質膜には、イオン交換容量が高いこと、化学的に安定であること、電気抵抗が低いこと、機械強度が高いこと、ガス透過性が低いこと等の特性が要求される。
従来、固体高分子型燃料電池の電解質膜として、デュポン社で開発された「ナフィオン(デュポン社の登録商標)」等のパーフルオロスルホン酸膜が一般に用いられていた。しかしながら、「ナフィオン」をはじめとする従来のフッ素系高分子電解質膜は、化学的な安定性には優れるもののイオン交換容量が低い、保水性が不十分であるため電解質膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下するといった問題があった。この対策としてスルホン酸基を多く導入すると、保水により強度が極端に低下し、膜が破損しやすくなる。つまり、プロトン伝導性と強度とを両立させることが難しかった。
また、「ナフィオン」等の従来のフッ素系高分子電解質膜は、原料となるフッ素系モノマーの合成が複雑であるため非常に高価である。このことは、固体高分子型燃料電池の実用化において大きな障害となっている。
こうした背景のもと、低コストで高性能な電解質膜の開発が進められている。その例として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:Poly Vinyliden Fluoride)膜にスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより合成した電解質膜(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
一方、DMFCでは、燃料として使用するメタノール水溶液のメタノール濃度に応じて、膜の膨潤現象が起きることが知られている。この膨潤現象は、いわゆるメタノールクロスオーバー現象をもたす。メタノールクロスオーバー現象とは、電気化学反応によって酸化されない燃料が電解質膜を通じて陽極から陰極に透過し、燃料が浪費されたり陰極での混合電位によって起電力が低下したりする現象のことをいう。
特開2006−172858号公報
本発明は、フッ素系電解質膜をはじめとする高分子電解質膜の問題点を克服するためになされたものであり、燃料電池用の電解質膜に要求される種々の特性を改善することを目的とする。特に、メタノールクロスオーバーの低減に有効な電解質膜を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
オレフィン系高分子またはフッ素系高分子によって構成された高分子基材と、
陽イオン交換基を有し、かつ前記高分子基材に付加されたグラフト鎖と、
前記高分子基材に分散された窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムと、
を含む、固体高分子型燃料電池用の電解質膜を提供する。
本発明の電解質膜は、膨潤も少なく、メタノールクロスオーバーの低減に有効である。
本発明の固体高分子型燃料電池用の電解質膜は、窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムが分散された高分子基材を膜状に成形し、膜状の高分子基材に陽イオン交換基を含むグラフト鎖を付加することにより、製造することができる。
まず、高分子基材に窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムを分散させる工程を行う。
高分子基材(基質)は、オレフィン系高分子またはフッ素系高分子によって構成されているとよい。フッ素系高分子として、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略す)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデン共重合体等を使用できる。オレフィン系高分子として、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を使用できる。
電池内部での電気化学反応に対する耐久性が高いことから、高分子基材がフッ素系高分子によって構成されていると好ましく、実質的にPVDFからなっているとより好ましい。「実質的に」とは、特性に大きな影響を与えない範囲内であれば、微量の不可避不純物や副生成物の混入は許容されるという趣旨である。PVDFは、溶融粘度が5000Pa・s(ASTM D3835)程度の高分子量タイプのものを使用してもよいし、1000Pa・s程度の低分子量タイプのものを使用してもよいし、溶融粘度が高いに異なる複数種類を混合して使用してもよい。
なお、放射線の照射によって高分子基材に予め架橋処理を施しておくと、保液に伴う電解質膜の寸法変化率をいっそう小さくすることができる。この架橋処理は、後述するグラフト重合時の放射線照射とは別途行われる処理であり、窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムを高分子基材に分散させる前に行ってもよいし、分散後に行ってもよい。
高分子基材に分散させる窒化ホウ素の形態は、特に限定されないが、通常は粒子である。高分子基材への分散性および高分子基材との反応性を考慮し、窒化ホウ素粒子の平均粒径は、例えば0.01〜10μm(または0.1〜10μm)の範囲にあるとよい。窒化ホウ素の結晶型も特に限定されず、六方晶系グラファイト構造に類似したh−BN、立方晶系閃亜鉛鉱型構造のc−BN、六方晶系ウルツ鉱型構造のw−BNのいずれも使用できる。なお。本明細書において、平均粒径は、レーザー回折式粒度計によって測定される50%粒径によって定められる。
窒化ホウ素の場合と同様に、酸化ジルコニウムとして、平均粒径が0.01〜10μm(または0.1〜10μm)の範囲の粒子状のものを使用することができる。酸化ジルコニウムには、安定化ジルコニアや部分安定化ジルコニアが含まれていてもよい。MgO、CaO、希土類酸化物などを数%含む安定化ジルコニアには酸素を拡散させる効果があり、固体電解質に好適に用いることができる。
窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムの添加量は、高分子基材の成形が困難にならない範囲内で、高分子基材の種類や各種製造条件に応じて調整するとよい。例えば、高分子基材としてPVDFを用いる場合、PVDFに対して0.1〜30重量%の窒化ホウ素または酸化ジルコニウムを添加することができる。このような範囲の量の窒化ホウ素を添加することにより、電解質膜の柔軟性を損なうことなく、電解質膜の膨潤率およびメタノールクロスオーバーに対して十分な効果が得られる。窒化ホウ素および酸化ジルコニウムの両者を添加する場合には合計量を上記範囲とすればよい。
高分子基材に粒子を分散させる方法としては、溶融混練法やキャスト法がある。溶融混練法とは、高分子基材(例えばPVDF)と、分散させるべき粒子(窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウム)との混合物を高分子の融点以上、分解温度以下の範囲の温度に加熱し、混練する方法である。キャスト法とは、高分子基材の溶液に粒子を分散させ、その溶液を基板上に塗布し、乾燥させることによってフィルムを得る方法である。高分子基材と粒子との混合物に十分なせん断力を作用させることにより、粒子を高分子基材に均一に分散させることができる。より均一に分散させる観点から、溶融混練法が適している。
上記の溶融混練法は、ニーダや2軸混練機を用いて実施することができる。溶融混練法を実施する際の上記混合物の温度は、上述したように、高分子の融点以上、分解温度以下の範囲であるとよい。例えば、高分子基材としてPVDFを用いる場合には、上記混合物の温度が200〜280℃の範囲となるように加熱を行うとよい。このような範囲とすることにより、混合物の粘度を適切に管理できるので、加工の容易性が高まるとともに、十分なせん断力を作用させることが可能となる。
次に、窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムが分散された高分子基材を膜状に成形する工程を行う。
高分子基材を膜状に成形する方法は特に限定されない。例えば、冷却された金属板に高分子基材を挟み込んで冷却しつつ、膜状に成形する方法を採用できる。Tダイを取り付けた押出機を用いて成形してもよい。膜状の高分子基材の冷却は、公知の冷却ロール等の冷却装置を用いて行うとよい。さらに、厚み精度を向上させる目的で、膜状の高分子基材を冷却後に圧延してもよい。
次に、膜状の高分子基材にグラフト鎖を付加する工程(グラフト重合工程)を行う。
高分子基材にグラフト鎖を付加する方法としては、放射線を使用し、グラフト鎖となるべきモノマーを高分子基材に重合させる技術を使用することができる。そのようなモノマーは、ビニル基を有するモノマー、または、ビニル基に結合している一部の水素が水素以外の元素または官能基に置換されたモノマー(以下、これらを「ビニル系モノマー」と称する)であってよい。ビニル系モノマーには、単一種類を使用してもよいし、複数種類のモノマーを混合して使用してもよい。ビニル系モノマーとして、具体的には化学式(1)で示されるものを用いることができる。なお、下記化学式(1)においてフェニル基に結合した−R2は、フェニル基の複数の水素がハロゲンまたは他の官能基で置換されていてもよいことを意味する。−Cn2n+1で表される飽和炭化水素基は、直鎖であってもよいし、そうでなくてもよい。
Figure 2009123436
化学式(1)で示されるモノマーの中でも、後述するスルホン化処理を行い易いという観点から、R1がベンゼン環を含んでいる芳香族系のモノマーがより好ましい。また、ビニル系モノマーとして、分子中にグラフト反応性のある不飽和結合を複数有する架橋剤を用いることも可能であり、具体的には1,2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、ジビニルスルホン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、フェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、ジアリルエーテル、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシレート、トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ブタジエン等を挙げることができる。このような架橋剤を用いることにより、グラフト鎖を架橋することができる。グラフト鎖に架橋構造を形成することにより、電解質膜の膨潤が抑制されるとともに、電解質膜の熱安定性や耐薬品性を向上させることができる。なお、三重結合は不飽和結合が複数あるものとして取り扱うことができる。
高分子基材へのモノマーのグラフト重合は、高分子基材に放射線(電子線でもよい)を照射したあとモノマーと反応させる、いわゆる前照射法によって行ってもよいし、高分子基材とモノマーに同時に放射線を照射して重合させる、いわゆる同時照射法によって行ってもよい。高分子基材にグラフトしないホモポリマーの生成量が少ないことから、前照射法を使用するのが好ましい。
前照射法には、2つの方法がある。1つは、高分子基材への放射線の照射を不活性ガス中で行うポリマーラジカル法である。他の1つは、酸素の存在する雰囲気下で放射線の照射を行うパーオキサイド法である。これらの方法のどちらを採用してもよい。前照射法の一例を以下に説明する。
まず、高分子基材をガラス容器中に投入する。次に、ガラス容器を真空脱気し、不活性ガス雰囲気を充填する。次に、このガラス容器に電子線やγ線を、−10〜80℃、好ましくは室温付近で、1〜500kGy照射する。そして、モノマーをガラス容器に素早く投入し、高分子基材と反応させる。モノマーは、単一種類のモノマー液、複数種類のモノマーの混合液であるモノマー混合液、または、溶媒に溶解もしくは溶媒で希釈したモノマー溶液の形で使用することができる。また、モノマーは、不活性ガスでバブリングを行ったり、凍結脱気を行ったりすることによって、酸素ガスが除去されているとよい。モノマーと高分子基材とのグラフト重合反応は、予め架橋した高分子基材を使用する場合、30〜150℃、好ましくは40〜80℃で実施するとよい。
グラフト重合後の高分子基材のグラフト率は、例えば6〜150重量%であり、10〜100重量%であってもよい。グラフト率は、照射線量、重合温度、重合時間等の重合条件によって調整することができる。
グラフト鎖を導入した高分子基材には、次の段階として、陽イオン交換基を導入する。陽イオン交換基は、グラフト重合によって高分子基材にモノマーを付加した後でグラフト鎖に導入してもよいし、陽イオン交換基を有するモノマーを用いてグラフト重合を行うことにより、高分子基材にグラフト鎖と陽イオン交換基とを同時に導入してもよい。また、陽イオン交換基の誘導体(前駆体)を有するビニル系モノマーを使用してグラフト重合を行い、グラフト鎖の形成後に、誘導体を陽イオン交換基に転換させてもよい。陽イオン交換基の種類は特に限定されないが、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基を使用することができる。
グラフト鎖への陽イオン交換基の導入は、既知の方法により行うことができる。例えば、スルホン酸基の導入について、その条件は特開2001−348439号公報に開示されている。具体的には、1,2−ジクロロエタンを溶媒として用いた0.2〜0.5モル/リットルの濃度のクロロスルホン酸溶液に、グラフト重合の終了した高分子基材を室温〜80℃で1〜48時間浸漬する。置換反応(例えば芳香族求電子置換反応)により、グラフト鎖にスルホン酸基が導入され、目的とする電解質膜が得られる。スルホン化反応に必要なスルホン化剤としては、濃硫酸、三酸化硫黄、チオ硫酸ナトリウム等も使用することができ、スルホン酸基を導入できるものであれば種類を問わない。カルボキシル基等についても各々を導入できるものであれば特に限定されない。
イオン交換基を有するビニル系モノマーを用いてグラフト重合を行う場合、グラフト反応の終了した時点でイオン交換基が導入されていることから、上記の処理を省略できる。また、陽イオン交換基の誘導体を有するモノマーについては、グラフト反応終了後に適切な処理を施し、誘導体を陽イオン交換基に転換させればよい。例えば、エステル基を有するモノマーを使用する場合は、加水分解を行うことにより、陽イオン交換基であるカルボキシル基を得ることができる。
このように各種のイオン交換基を用いることができるが、プロトン伝導性に優れることから、強酸基であるスルホン酸基を導入することが好ましい。
以上のプロセスによって電解質膜を製造することができるが、高分子基材粉末に陽イオン交換基を有するグラフト鎖を付加した後、窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムを分散し、膜状に成形することでも製造することができる。
また、本発明による電解質膜のイオン交換容量は、例えば0.3〜6.0meq/gであり、0.5〜2.0meq/gであってもよい。ここでイオン交換容量とは、乾燥電解質膜1gあたりのイオン交換量(meq/g)である。イオン交換容量がこのような範囲内にあると、膜抵抗、寸法変化率、電極との密着性等の諸特性にも優れる。
本発明による電解質膜は、25℃における電気伝導度が例えば0.03Ω-1・cm-1以上または0.05Ω-1・cm-1以上である。この程度の電気伝導度があると、電池の出力を十分に得ることができる。
膜抵抗に関連するパラメータとして、電解質膜の厚さを挙げることができる。膜抵抗を低くするには、膜厚を薄くすればよい。ただし、薄すぎる場合には強度が不足し、破損しやすくなる。また、ピンホール等の欠陥も発生しやすくなる。こうした問題を考慮して、電解質膜の厚さは、例えば5〜300μmの範囲に設定するとよく、20〜150μmの範囲に設定してもよい。
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
PVDF(呉羽化学工業社製:#1000)100重量部と、窒化ホウ素(三井化学社製:MBN−010T、平均粒径1μm)5重量部との混合物を、ラボプラストミル混練機(東洋精機社製:100C100)を用い、220℃、50回転/分の条件で30分間混練した。次に、混合物を210℃、150kg/cm2の条件で熱間プレス成形し、さらに、25℃、150kg/cm2の条件で冷間プレス成形した。このようにして、窒化ホウ素粒子が分散されたPVDFフィルムを得た。
次に、PVDFフィルムを10cm角に裁断し、大気中で線量30kGy、加速電圧250kVの条件で電子線を照射した。その後、PVDFフィルムをドライアイス温度まで冷却した。
その一方で、スチレン200g、ジビニルベンゼン6.94g、メタノール60gおよびエチルベンゼン140gをセパラブルフラスコに入れて混合し、グラフト重合に用いる重合液を準備した。90℃に調節したオイルバスでセパラブルフラスコを加熱し、大気雰囲気下で重合液を沸騰させた。沸点は66℃であった。
次に、上記の重合液に電子線を照射したPVDFフィルムを浸漬し、PVDFフィルムに重合液を含浸させることによってグラフト重合を行った。重合液へのPVDFフィルムの浸漬時間(重合時間)は、グラフト率が約20%となるように調節した。具体的には、予備実験によって重合時間とグラフト率との対応関係を調べ、その知見に基づいて重合時間を設定した。所定の重合時間の経過後、PVDFフィルムを重合液から引き上げ、トルエンに12時間、さらにメタノールに10分間浸漬して洗浄を行った。洗浄後、雰囲気温度が60℃の乾燥機中でPVDFフィルムを乾燥させた。このようにして、グラフト鎖が付加されたPVDFフィルム(グラフト膜)を得た。得られたPVDFフィルムの厚さは69μmであった。
次に、グラフト鎖が付加されたPVDFフィルムを1,3,5−トリメチルベンゼン−2−スルホン酸のo−ジクロロベンゼン溶液(0.2モル/リットル)に浸漬し、135℃で1時間処理を行った。この処理後、PVDFフィルムをイソプロピルアルコールで30分ずつ2回、さらに60℃の温水浴で30分洗浄した。洗浄後、雰囲気温度が60℃の乾燥機中でPVDFフィルムを乾燥させた。このようにして、スルホン酸基を有するグラフト鎖が付加されたPVDFフィルム(電解質膜)を作製した。
(実施例2)
窒化ホウ素に代えて、酸化ジルコニウム(東ソー社製:TZ−3Y、平均粒径0.04μm)を用いた点を除き、実施例1と同一条件で電解質膜を作製した。
(比較例1)
PVDFに窒化ホウ素を添加しない点を除き、実施例1と同一条件で電解質膜を作製した。
(比較例2〜4)
窒化ホウ素に代えて、アルミナ(シーアイ化成社製:Nano−Tek、平均粒径0.03μm)、シリカ(デンカ社製:SFP−20M、平均粒径0.3μm)またはチタニア(石原産業社製:FTL−110、平均粒径0.13μm)を用いた点を除き、実施例1と同一条件で電解質膜を作製した。
(比較例5〜9)
窒化ホウ素に代えて、層状珪酸塩(1重量部)を用いた点を除き、実施例1と同一条件で電解質膜を作製した。比較例5〜9で用いた層状珪酸塩は、以下のものである。
・比較例5(C18TMKpF):(クニミネ社製:KpF、平均粒径0.5〜1.0μm)
・比較例6(C12HEKpF):(クニミネ社製:KpF、平均粒径0.5〜1.0μm)
・比較例7(C12TMKpF):(クニミネ社製:KpF、平均粒径0.5〜1.0μm)
・比較例8(C12HEME100):(コープケミカル社製:HE100、平均粒径2〜5μm)
・比較例9(C12HESWN):(コープケミカル社製:SWN、平均粒径0.05〜0.07μm)
(特性評価)
実施例および比較例の電解質膜のグラフト率(G)、イオン交換容量(Iex)、電気伝導度(κ)、メタノール透過性(MCO)、面積変化率(S)、重量変化率(M)および弾性率(E)を、以下に説明する手順によって測定した。
<<グラフト率(G)>>
下式によりグラフト率Gを算出した。
G=(W2−W1)×100/W1
W1:グラフト前の高分子基材の重量(g)
W2:グラフト後の高分子基材の重量(g)
<<イオン交換容量(Iex)>>
電解質膜のイオン交換容量Iexは下式で示される。
ex=n(酸基)obs/Wd
n(酸基)obs:電解質膜の酸基のモル量(ミリモル)
Wd:電解質膜の乾燥重量(g)
ここで、n(酸基)obsは以下の手順で測定した。まず、電解質膜を50℃に保った硫酸溶液(1モル/リットル)に4時間浸漬し、完全に酸型とした。次に、イオン交換水により電解質膜を洗浄後、50℃に保ったNaCl水溶液(3モル/リットル)に4時間浸漬して−SO3Na型とし、置換されたプロトン(H+)をNaOH水溶液で滴定して、酸基のモル量を求めた。
<<電気伝導度(κ)>>
まず、電解質膜の膜抵抗(Rm)を交流法(新実験化学講座19,高分子化学<II>,p992,丸善)に従って測定した。測定には、通常の膜抵抗測定セルとLCRメーター(ヒューレットパッカード社製:E−4925A)を使用した。膜抵抗測定セルには、硫酸水溶液(1モル/リットル)を満たし、白金電極の間隔は5mmとした。電解質膜があるときの白金電極間の抵抗値から、電解質膜が無いときの白金電極間の抵抗値を減じ、真の膜抵抗とした。膜抵抗(Rm)の測定結果および下式を用い、電解質膜の電気伝導度(比伝導度)を算出した。
κ=(1/Rm)・(d/S)(Ω-1・cm-1
d:イオン交換膜の厚み(cm)
S:イオン交換膜の通電面積(cm2
さらに、膜厚で換算した数値をコンダクタンスκ*(Ω-1・cm-2)とした。
<<メタノール透過性(MCO)、選択透過パラメータ(P)>>
チャンバー拡散セルを用いた拡散実験により、25℃における電解質膜のメタノール透過性を調べた。まず、2つのT字型セルを準備し、電解質膜を間に挟む形で2つのT字型セルを全体としてH字型になるように接続した。セルの接続部における電解質膜の面積は8.04E−4m2であった。次に、一方のセルに水140g、他方のセルに水200gを入れ、電解質膜の表面に水をなじませ、撹拌しながら25℃に安定させた。次に、60gのメタノールを140gの水を入れた側のセルに素早く入れ、この時点を基準時として、一定時間おきに反対側のセルから1mlの水を採取した。採取した水にさらに1mlの水を加えて希釈し、メタノール濃度測定用の希釈液を得た。
得られた希釈液をガスクロマトグラフィ(Yanaco社製:G6800)を用いて評価し、希釈液のメタノール濃度を求めた。さらに、単位膜面積、単位時間あたりのメタノールの重量濃度の変化をメタノール透過流速(メタノール透過性(MCO))として算出した。前述のコンダクタンスκ*をMCO値で除した値を選択透過パラメータPとした。このP値が高いほど同一のコンダクタンスでMCO値が小さいことを意味するので、電解質膜として優れていることになる。
<<面積変化率(S)、面積変化パラメータ(Ps)>>
電解質膜を50mm×50mmに裁断し、測定用のサンプルを得た。このサンプルを乾燥機中に放置し、十分に乾燥させた後の面積をS1、このサンプルを純水中に24時間以上浸漬し、十分に含水させた時点での面積をS2とし、これらの値をもとに、下式により面積変化率Sを算出した。
S=(S2−S1)×100/S1
さらに、コンダクタンスκ*を面積変化率Sで除した値を面積変化パラメータPsとした。このPs値が高いほど同一の電気伝導度で面積変化率が小さいことを意味するので、電解質膜として優れていることになる。
<<重量変化率(M)、重量変化パラメータ(PM)>>
電解質膜を50mm×50mmに裁断し、測定用のサンプルを得た。このサンプルを乾燥機中に放置し、十分に乾燥させた後の重量をM1、このサンプルを純水中に24時間以上浸漬し、十分に含水させた時点での重量をM2とし、これらの値をもとに、下式により重量変化率Mを算出した。
M=(M2−M1)×100/M1
さらに、コンダクタンスκ*を重量変化率Mで除した値を重量変化パラメータPMとした。このPM値が高いほど同一の電気伝導度で重量変化率が小さいことを意味するので、電解質膜として優れていることになる。
<<弾性率(E)>>
熱機械分析装置(TMA)を用い、下記条件で測定を行った。同測定において、0.5%ひずみ時の応力値の接線の傾きにより、弾性率Eを算出した。
測定装置:エスエスアイ・ナノテクノロジー社製 TMA/SS6000
測定モード:引っ張り
測定温度:25℃(一定)
サンプル幅:3mm
チャック間距離:10mm
測定荷重:段階的定荷重
初期厚さ:マイクロメータ(最小目盛0.001mm)を用いて測定
以上の測定の結果を表1に示す。併せて、表2にナフィオン膜(N115、N117)の特性を示す。
Figure 2009123436
Figure 2009123436
表1に示すごとく、実施例1および実施例2の電解質膜は、比較例1の電解質膜に対し、弾性率が約2倍に向上した。さらに、面積変化パラメータ、重量変化パラメータ、選択透過パラメータの各パラメータが改善した。面積変化パラメータおよび重量変化パラメータについては、比較例2〜9の中にも改善したものがあったが、全てのパラメータが改善したのは実施例1および実施例2の電解質膜だけであった。特に、実施例1および実施例2の電解質膜は、メタノールクロスオーバーの指標である選択透過パラメータが比較例1〜9のどの電解質膜よりも秀でていた。
また、実施例1および実施例2の電解質膜の各パラメータは、ナフィオン膜の各パラメータよりも良好な値を示した。
なお、本発明者らは次のような事実も確認した。表1に記載の分散体をそれぞれ含むPVDFフィルムをNMPに1週間浸漬し、溶解残渣率(=100×(残渣の重量)/(初期重量))を算出した。その結果、窒化ホウ素または酸化ジルコニウムを含むPVDFフィルムは、残渣率が約20%であったが、他の分散体を含むPVDFフィルムは残渣率がゼロであった。このことから、窒化ホウ素とPVDFとの反応、あるいは酸化ジルコニアとPVDFとの反応が、各種パラメータの改善に関与していると考えられる。

Claims (3)

  1. オレフィン系高分子またはフッ素系高分子によって構成された高分子基材と、
    陽イオン交換基を有し、かつ前記高分子基材に付加されたグラフト鎖と、
    前記高分子基材に分散された窒化ホウ素および/または酸化ジルコニウムと、
    を含む、固体高分子型燃料電池用の電解質膜。
  2. 前記高分子基材が、実質的にポリフッ化ビニリデンからなる、請求項1記載の固体高分子型燃料電池用の電解質膜。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電解質膜を含む、直接メタノール燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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