JP2005190970A - 燃料電池 - Google Patents

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陽太郎 山崎
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Abstract

【課題】 電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面で発生する水の適正な管理が可能な手段を提供する。
【解決手段】 電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面もしくはその近傍に、界面で発生する水を移動させて電解質外に排出する手段を設けてなる。水を移動させ電解質外に排出する手段が毛管作用に基づき、たとえば界面に沿って設けられた開口に基づく。さらに、好適には中空糸、多角断面糸もしくは異形断面糸が開口に埋設される。
【選択図】 図1

Description

本発明は燃料電池に関し、さらに詳しくは電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
燃料電池はエネルギー変換効率が高いこと、ならびに環境汚染物を全くといえるほど排出しないことに特徴を有し、その開発の重要性が広く認識されている発電システムである。中でも、固体高分子型燃料電池はプロトン伝導性の高い薄い高分子膜を電解質として用いる種類の燃料電池であり、無公害電気自動車、家庭用据え置き型電源、さらにはポータブル電源等としての用途を目指して開発が進められている。現在、固体高分子型燃料電池においては、電解質膜として、導電率が高く、ガス透過性が低く、安定性がよく、そして耐久性にも優れているために、パーフルオロスルホン酸系のイオン交換膜が最も多く使用されているが、低コストの代替膜の開発も盛んに行われている。そのなかで、電解質膜として酸性の高分子膜と塩基性の高分子膜が張合わされ一体化されたバイポーラ膜を使用することも、電極触媒やセル構成材料の選択範囲が広くできる等の利点を有するため検討されている。
固体高分子型燃料電池においては、水を介してプロトンが移動するため膜の伝導率は含水率に依存するので、運転時に電解質‐電極界面において水が生成し、その排出が不十分であると、電極においてフラッディングを起こし、ガス拡散の妨げとなり十分に反応が進まなくなり、電圧の急激な低下の原因となり得る。バイポーラ膜を用いる場合、水の生成反応は電解質膜内部において酸性膜および塩基性膜を拡散してきたH+とOHイオンの反応により界面部で起こるので、従来問題とされているアノードでの膜の乾燥が緩和され、そしてカソードで水が電極上で生成しなくなるのでフラッディングがおこりにくい構造となっている。しかしながら、本発明者らの知見によれば界面部に水の層が存在すると、界面がコンデンサのように絶縁層となって導電率が1桁以上低下してしまう恐れがある。
本発明は、電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面で発生する水の適正な管理に好適な手段を提供する。
本発明は、電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面もしくはその近傍に、界面で発生する水を移動させて電解質外に排出する手段を設けてなる燃料電池を要旨とする。
本発明によれば、電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面で発生する水の適正な管理が可能となる。
本発明の固体高分子型燃料電池においては、電解質としてバイポーラ膜が用いられ、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面もしくはその近傍に、界面で発生する水を移動させて電解質外に排出する手段を設けてなる。
本発明の固体高分子型燃料電池の構成は、触媒を含有する触媒層を有するガス拡散電極により、燃料ガス(水素)と酸化ガス(空気)を電気化学的に反応させる、一般的な構成を採用しうる。たとえば、水素イオン伝導性の電解質高分子バイポーラ膜の両面には、白金等の触媒を担持した導電性炭素粒子を主成分とする触媒層を設け、その触媒層の外面には多孔質炭素層を用いたガス拡散層が設けられる。さらにその外側には片面にガス流路を備えたセパレータ(たとえば樹脂含浸黒鉛板)を設けて燃料電池単セルを構成させ、これを1方向に積層し、両端にエンドプレートを設け締結部材で固定して燃料電池を構成し得る。
本発明において、バイポーラ膜としては酸性および塩基性ともに炭化水素系もしくはフッ素系のいずれも使用しうる。交換基としては、酸性基ではスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、そして塩基性では第四級アンモニウム塩、アミン、等が用いられるが、強酸性のスルホン酸基および強塩基性の第四級アンモニウム塩の組合わせが最も好適である。
このようなバイポーラ膜の界面部においては、図1に示すように、酸性高分子膜と塩基性高分子膜をそれぞれ拡散してきたH+とOHイオンが反応して、水が生成される。
アノード電極:H2→2H++2e-
カソード電極:O2+2H2O+4e-→4OH-
界面部:H++OH-→H2
本発明の1つの態様において、この生成した水を移動させ電解質外に排出する手段は毛管作用に基づく。たとえば、このような手段としては、上記界面に沿って連続して設けられた開口に基づく。開口の断面の形状は特に制限されず、スリットにすることもできるが、開口の大きさは毛管作用により水を排出するのに好適な大きさにするのが好ましい。
さらに、これらの開口の1部もしくは全部には中空、異形もしくは多角断面糸等が毛管作用により水を移動させ電解質外に排出する手段として埋め込まれうる。この場合開口の大きさは、開口のみにより毛管作用により水を移動させる場合に比して制限的でない。中空、異形もしくは多角断面糸としては、Y型、C型、星型、十字型、六角型、の毛管作用による吸水効果が大きいものが好適である。
これらの開口の水を排出する電解質出口では、毛管作用により移動された水を円滑に排出できるように、開口近傍の加温による蒸発促進等の手段を用いるのが好適である。
さらに、本発明において水を移動させ電解質外に排出する手段として圧力差に基づく手段が挙げられる。たとえば電解質出口側から開口内を吸引することができる。
以下、本発明の実施態様の一例について説明する。バイポーラ膜として酸性高分子膜と塩基性高分子膜がいずれも炭化水素系であり、イオン交換基がそれぞれスルホン酸基もしくは第四級アンモニウム塩であるバイポーラ膜(膜厚270μm)を用いた(酸性高分子膜と塩基性高分子膜のいずれも「Neosepta」(株式会社トクヤマ))。そのバイポーラ膜の両面には、白金黒触媒層を設け、その触媒層の外面にはカーボンペーパーを用いたガス拡散層が設けられる。さらにその外側には片面にガス流路を備えたセパレータ(樹脂含浸黒鉛板)を設けて燃料電池単セルを構成させ、これを1方向に積層し、両端にエンドプレートを設け締結部材で固定して燃料電池を構成する。バイポーラ膜の酸性高分子膜と塩基性高分子膜の界面部には、約5mmの間隔で約1mm×1mmの大きさの開口を設けて、界面部に生成する水を開口内に導入し、電解質表面に開口した出口から電解質外に排出する(その出口近傍は水の蒸発を容易にするために加温される。)。これにより、上記の界面部には水の層が形成されないので、導電率の低下がほとんど見られない。
電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面で発生する水の適正な管理が可能である。
バイポーラ膜を用いた燃料電池のバイポーラ膜の界面部における反応を示す。

Claims (8)

  1. 電解質としてバイポーラ膜を用いた固体高分子型燃料電池において、酸性高分子膜と塩基性高分子膜が張り合わされた界面もしくはその近傍に、界面で発生する水を移動させて電解質外に排出する手段を設けてなる燃料電池。
  2. 水を移動させ電解質外に排出する手段が毛管作用に基づく請求項1記載の燃料電池。
  3. 水を移動させ電解質外に排出する手段が、該界面に沿って設けられた開口に基づく請求項1もしくは2記載の燃料電池。
  4. 水を移動させ電解質外に排出する手段が、該界面に沿って設けられた開口に埋設された中空糸、多角断面糸もしくは異形断面糸に基づく請求項1もしくは2記載の燃料電池。
  5. 水を移動させ電解質外に排出する手段が該界面に設けられたスリットによる請求項1記載の燃料電池。
  6. 水を移動させ電解質外に排出する手段が圧力差に基づく請求項1記載の燃料電池。
  7. 水を移動させ電解質外に排出する手段が、該界面に沿って設けられた開口の吸引に基づく請求項1もしくは2記載の燃料電池。
  8. 酸性が強酸性であり、塩基性が強塩基性である請求項1記載の燃料電池。
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