JP2018150345A - イリジウム錯体化合物の製造方法、及びその製造方法で得られたイリジウム錯体化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
イリジウム錯体化合物の発光量子収率と該化合物を用いて作製した有機EL素子の発光効率には高い相関があることが分かっている。したがって、発光効率の高い有機EL素子を得るためには、発光量子収率の高いイリジウム錯体化合物を開発することが必要である。
そこで、本発明においては、イリジウム二核錯体化合物を合成する際の反応時間の短縮、純度向上、ならびに該化合物を利用した際の合成収率の向上を課題とする。
即ち、本発明の趣旨は、水及び有機溶媒の存在下、ハロゲン化イリジウムと下記式(2)で表される配位子とを反応させ、下記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物を製造する方法において、水及び有機溶媒の存在下、ハロゲン化イリジウムと下記式(2)で表される配位子とを反応させる際に、蒸留工程を有することを特徴とするイリジウム錯体化合物の製造方法に存する。
環A及び環B上の水素原子は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜40の(ヘテロ)アラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキルシリル基、アリール基の炭素数が6〜20であるアリールシリル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、炭素数7〜20のアリールカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基、または炭素数3〜20の(ヘテロ)アリール基で置換されていてもよい。また、環A及び環Bにそれぞれ結合する隣り合う置換基どうしが結合してさらに環を形成していてもよい。]
本発明の前記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物の製造方法は、水及び有機溶媒の存在下、ハロゲン化イリジウムと前記式(2)で表される配位子とを反応させ、前記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物を製造する方法において、水及び有機溶媒の存在下、ハロゲン化イリジウムと前記式(2)で表される配位子とを反応させる際に、蒸留工程を有することを特徴とする。より好ましくは、水および沸点が120℃以上の有機溶媒を共存させた存在下にて、ハロゲン化イリジウムと前記式(2)で表される配位子とを反応させ、前記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物を合成する工程において、蒸留により水及び有機溶媒を反応系外に除去する際に、少なくとも10℃以上高く、内温を上昇させる。その蒸留を行う際の反応系中の内温が蒸留開始前の内温よりも少なくとも10℃上昇させることにより、ハロゲン化イリジウムと配位子との反応が促進し、また、水及び有機溶媒が反応系外に除去されることにより未反応の化合物の濃度の増大とそれに伴う反応の促進が起こることで、本発明の課題を解決することができる。
本発明において、内温とは反応系中の溶液の温度のことを指し、オイルバス等の熱媒体の温度のことは外温と呼ぶこととする。内温の測定方法は、具体的には、温度計や熱電対等を反応溶液中に差し込んでおこなうことができるが、このとき、鞘管などを用いて反応溶媒に直接触れないようにすることも好ましい。
即ち、蒸留を行う際の反応系中の内温は、有機溶媒の沸点よりも少なくとも10℃以上高い内温であることが好ましく、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上である。内温の測定方法ならびに蒸留により溶媒を反応系外に除去する方法については、既知の方法を用いて測定することができる。
蒸留については、特に限定されないが、例えば、「第5版 実験化学講座:基礎編I 実験・情報の基礎」に掲載されている公知技術を用いておこなうことができるが、具体的には、枝管付きジムロート冷却管やリービッヒ冷却管等を組み合わせた実験装置を組み立て、反応液をオイルバス等の熱媒体を用いて蒸留開始前の内温以上に加熱することによりおこなうことができる。好ましくは蒸留を行う際の反応系中の内温が蒸留開始前の内温よりも少なくとも10℃以上高いことが好ましいが、内温よりも10℃以上高くする手段としては、外温で加熱することが好ましいが、蒸留効率等の観点から20℃以上高い外温で加熱することがより好ましく、30℃以上高いことがさらに好ましい。蒸留により溶媒を反応系外に除去しはじめるタイミングについては、還流が始まって以降であれば任意である。このとき、常圧でおこなってもよいし、減圧下おこなってもよいが、反応液の温度を高くするために常圧でおこなうことがより好ましい。
蒸留により一部除去する溶媒量については、蒸留によって溶媒が少なくとも一部でも除去されれば問題はないが、具体的には仕込み時の全溶媒量のうち5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、80%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
本発明の製造方法に用いることのできる溶媒としては、水及び有機溶媒が少なくとも含有されていれば特に制限はないが、好ましくは有機溶媒中に沸点が120℃以上の有機化合物が含有されていることが好ましく、有機溶媒が120℃以上の有機化合物であることがより好ましい。具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール誘導体(エチレングリコール モノアルキルエーテル類、エチレングリコール モノアリールエーテル類、エチレングリコール ジアルキルエーテル類等)が挙げられ、中でも、溶解性の観点および反応後の後処理の簡便さの観点から、エチレングリコール、エチレングリコール誘導体が好ましく、さらに、エチレングリコール誘導体がより好ましく、エチレングリコール誘導体の中でも、エチレングリコール モノアルキルエーテル類が特に好ましい。
ハロゲン化イリジウムとしては、塩化イリジウム、臭化イリジウム、及び、これらの化合物の塩(例えば、塩化イリジウム酸ナトリウム、塩化イリジウム酸カリウム等)並びに前述の化合物の水和物を用いることができる。Ir(acac)3錯体やIrシクロオクタジエニル錯体などの化合物を塩酸などで処理することにより系中でハロゲン化イリジウムを合成し、用いてもよい。
本発明の製造方法において用いる下記式(2)で表される配位子について説明する。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、4−メチルフェニルオキシ基等が挙げられる。中でも、フェノキシ基が好ましい。
炭素数2〜20のアルキルカルボニル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、カプロイル基、デカノイル基、シクロヘキシルカルボニル基等が挙げられ、中でもアセチル基、ピバロイル基が好ましい。
炭素数2〜20のアルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基等が挙げられ、中でもジメチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基が好ましい。
炭素数3〜20の(ヘテロ)アリール基とは、1個の遊離原子価を有する、芳香族炭化水素基および芳香族複素環基の両方を意味する。
ここで、本発明において、遊離原子価とは、有機化学・生化学命名法(上)(改定第2版、南江堂、1992年発行)に記載のとおり、他の遊離原子価と結合を形成できるものを言う。すなわち、例えば、「1個の遊離原子価を有するベンゼン環」はフェニル基のことを言い、「2個の遊離原子価を有するベンゼン環」はフェニレン基のことを言う。
以下、下記式(3)で表される置換基について説明する。
本発明の製造方法にて得られる、下記式(1)で表されるイリジウム二核錯体化合物について説明する。
前記式(1)で表されるイリジウム二核錯体化合物を合成する際の反応時間は、通常30分〜72時間、好ましくは1時間〜48時間、さらに好ましくは2時間〜24時間である。また、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下で反応をおこなうのも好ましい。
現時点で本発明の製造方法により、本発明の効果が得られるメカニズムの詳細については明らかになってはいないが、以下のとおりと推察される。前述のとおり、前記式(1)で表される化合物は、ハロゲン化イリジウムと前記式(2)で表される化合物とを反応させることにより合成する。一般に、ハロゲン化イリジウムは有機溶媒に対する溶解性が低い一方で、有機配位子は水に対する溶解性が低いため、イリジウム二核錯体化合物を合成する際には、水及び有機溶媒を混合した溶媒系を用いる。しかしながら、これらの溶媒系においては、有機溶媒の沸点以上のオイルバス等で加熱をおこなっても、水の沸点である
100℃付近で内温がストップしてしまう。このため、ハロゲン化イリジウムと配位子との反応が終了するまで長い時間がかかり、また、その長い反応時間に起因して好ましくない副生成物が多く生成する。本発明はこれらの問題点を改善する製造法を提供するものであって、本発明の製造方法を用いることによって所望の効果が得られるものと推察される。
以下に、本発明のイリジウム錯体化合物の好ましい具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、Meはメチル基を表す。
本発明の製造方法により合成されるイリジウム錯体化合物は、そのものが興味深い化学的/光化学的特性を示すほか、種々のイリジウム錯体化合物の合成中間体として有用であり、有機合成化学ならびに有機光デバイス・センサーの領域で用いることができる。
また、本発明の製造方法により合成されるイリジウム錯体化合物は、有機電界発光素子を用いることもでき、この素子を使用した有機電界発光装置、具体的には表示装置や照明装置にも適用できる。この形式や構造については特に制限はなく、本発明のイリジウム錯体化合物を用いて常法に従って組み立てることができる。
<配位子1の合成例>
(中間体1の合成例)
(配位子1の合成例)
1H−NMR(CDCl3、ppm);8.40(t,1H)、8.27−8.22(m,2H)、8.14−8.11(m,1H)、8.01−7.98(m,2H)、7.94(d,1H)、7.70−7.56(m,6H)、7.30(t,4H)、2.70−2.65(m,4H)、1.71−1.63(m,4H)、1.42−1.31(m,12H)、0.92−0.89(s,6H).
実施例1で蒸留により溶媒を反応系外に除去する操作を実施しなかった以外は、実施例1と同様に反応させたところ、化合物1の1H―NMR収率は51%であった。
Claims (7)
- 水及び有機溶媒の存在下、ハロゲン化イリジウムと下記式(2)で表される配位子とを反応させ、下記式(1)で表されるイリジウム錯体化合物を製造する方法において、水及び有機溶媒の存在下、ハロゲン化イリジウムと下記式(2)で表される配位子とを反応させる際に、蒸留工程を有することを特徴とするイリジウム錯体化合物の製造方法。
環Bは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環を表す。
環A及び環B上の水素原子は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜40の(ヘテロ)アラルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキルシリル基、アリール基の炭素数が6〜20であるアリールシリル基、炭素数2〜20のアルキルカルボニル基、炭素数7〜20のアリールカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルアミノ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基、または炭素数3〜20の(ヘテロ)アリール基で置換されていてもよい。また、環A及び環Bにそれぞれ結合する隣り合う置換基どうしが結合してさらに環を形成していてもよく、
環A及び環Bにそれぞれ結合する隣り合う置換基どうしが結合して形成された環としては、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、カルボリン環、キノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、アザトリフェニレン環、ベンズオキサゾール環、またはベンズチアゾール環である。] - 有機溶媒が120℃以上の沸点を有する有機化合物である請求項1に記載のイリジウム錯体化合物の製造方法。
- 蒸留を行う際の反応系中の内温が蒸留開始前の内温よりも10℃以上高い温度である請求項1または2に記載のイリジウム錯体化合物の製造方法。
- 有機溶媒としてエチレングリコールまたはエチレングリコール誘導体を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物の製造方法。
- 前記式(2−1)が、炭素数5〜20のアルキル基、炭素数7〜40の(ヘテロ)アラルキル基、炭素数4〜20のアルコキシ基、炭素数3〜20の(ヘテロ)アリールオキシ基、または下記式(3)で表される置換基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物の製造方法で得られたイリジウム錯体化合物。
- 請求項6に記載したイリジウム錯体化合物を用いた有機電界発光装置
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