JP2018148035A - 積鉄心を備える変圧器 - Google Patents
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Description
そのため、積鉄心を用いた変圧器では、特許文献1に記載された巻鉄心を用いた変圧器のようにバンドの張力を調整するだけでは、充分に、騒音を低減することができなかった。
なお、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」、「直角」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
以上の理由から、巻鉄心よりも固定箇所の多い積み鉄心では、磁歪が原因である振動が発生しやすい。
損失係数(tanδ)が特定の範囲内にある粘弾性樹脂を素材として使用する固定カバーを用いて、積鉄心を被覆することによって、均一かつ充分な拘束圧をかけて積鉄心を固定することができること、騒音の原因となる振動エネルギーを粘性減衰により熱エネルギーに変換すること、及び、騒音源である積鉄心と音を伝える媒体となる空気との接触を遮断すること、が可能となるため、充分に変圧器の騒音を低減することが可能となる。
1−1.構造
本発明の変圧器は積鉄心を備える。以下、本発明の変圧器が備える積鉄心の例について図を参照しながら説明する。
図1の(A)は、単相積鉄心10の模式図である。図1の(A)に示される単相積鉄心10は、二つの脚部2と二つのヨーク部3から構成される。単相積鉄心10では、二つの脚部2と二つのヨーク部3により閉磁路が形成される。
ここで、脚部とは、後述する変圧器の巻線が巻回される部材であり、ヨーク部とは、複数の脚部を並列して固定する部材である。
図3の(A)は、三相積鉄心20の模式図である。図3の(A)に示される三相積鉄心11は、三つ脚部2と二つのヨーク部3からなる。三相積鉄心11では、当該三つの脚部2と二つのヨーク部3により閉磁路が形成される。
本開示の変圧器の使用用途や目的によって、脚部の数を決定するため、脚部は2以上であればよい。
脚部2とヨーク部3は、曲げ加工されていない平らな方向性電磁鋼板1が積み重ねられた積層体である。上述のように、従来技術では、積層された鋼板にずれが生じないように、スチールバンド等によって結束されていた。
脚部2とヨーク部3の接合部4では、例えば、図5の(A)に示すバットラップ接合や図5の(B)に示すステップラップ接合により、脚部2を構成する鋼板とヨーク部3を構成する鋼板とを交互に重ねるように積層する。
本発明において用いられる方向性電磁鋼板1に特に制限はないが、当該鋼板中の結晶粒の方位が{110}<001>方位に高度に集積された鋼板であり、圧延方向に優れた磁気特性を有することが好ましい。方向性電磁鋼板として公知のものの中から、求める性能に従って、適宜選択して用いることができる。上述のように、本発明に用いる方向性電磁鋼板は、曲げ加工が施されていない平らな鋼板である。
本発明において鋼板の厚みは特に限定されないが、0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましく、0.15mm以上0.40mm以下であることがより好ましい。
本発明において方向性電磁鋼板は、表面に被膜を有していてもよい。このような被膜としては、例えば、鋼板上に形成されるグラス被膜などが挙げられる。グラス被膜としては、例えば、フォルステライト(Mg2SiO4)、スピネル(MgAl2O4)、及びコーディエライト(Mg2Al4Si5O16)より選択される1種以上の酸化物を有する被膜が挙げられる。
本発明においてグラス被膜の厚みは特に限定されないが、0.5μm以上3μm以下であることが好ましい。
図2の模式図に示すように本発明の変圧器は巻線5を備える。巻線とは、回路に接続され、前記積鉄心の脚部に回巻されて用いられるものをいう。例えば、図2(A)の模式図に示すように、巻線を備える単相積鉄心30では、電源を含む一次回路に接続され一方の脚部に回巻された一次コイルと、取出し用二次回路に接続され他方の脚部に回巻された二次コイルとを有する。
負荷が接続されていない状態で、一次コイルに電圧を印加すると、一次コイルに励磁電流が流れ、積鉄心中に交番磁束が発生する。この磁束が二次コイルに電圧を誘起させる。一次コイルと二次コイルの巻数比が、一次回路と二次回路の電圧の比となる。
なお、図4(A)の模式図に示すように巻線を備える三相積鉄心40では、3つの脚部にそれぞれ巻線5が回巻される。
巻線の材質としては特に限定されないが、銅、アルミニウム等が挙げられる。巻線の構成は、一般的にトランスに用いられる公知の構成とすることができる。
上述のように、変圧器に通電した際に、巻線と鉄心との間に電磁機械力が生じ、巻線が振動するため、騒音が発生する。この騒音も低減することが可能となるため、本発明の変圧器では、損失係数(tanδ)が特定の範囲内にある粘弾性樹脂を素材として使用する固定カバーによって、積鉄心と共に巻線も被覆することが好ましい。
本発明の変圧器は、損失係数(tanδ)が0.1〜2.0の範囲内にある粘弾性樹脂素材の固定カバーを備える。
本発明において、粘弾性樹脂とは、粘性減衰により振動を熱エネルギーに変換することができる樹脂をいう。また、本発明においては、粘弾性樹脂素材の粘性減衰により振動を熱エネルギーに変換できる度合いを、損失係数(tanδ)を用いて特定する。
損失係数(tanδ)とは、素材の貯蔵剪断弾性率(G’)と損失剪断弾性率(G”)の比(G”/G’)から求められる値であり、材料が変形する際に材料がどのくらいエネルギーを吸収する(熱に変わる)かを示す値である。tanδの値が大きい粘弾性樹脂ほど、エネルギーを吸収しやすい特性を有するといえる。
本発明では、損失係数(tanδ)が0.1〜2.0の範囲内にある粘弾性樹脂素材の固定カバーを用いて積鉄心を被覆することによって、均一かつ充分な拘束圧をかけて積鉄心を固定すること、騒音の原因となる振動エネルギーを粘性減衰により熱エネルギーに変換すること、が達成され騒音を低減することができる。
損失係数が0.1未満である場合には、騒音の原因となる振動エネルギーを粘性減衰により熱エネルギーに変換することができず、充分に騒音を低減することができない。
また、損失係数が2.0を超える場合には、均一かつ充分な拘束圧をかけて積鉄心を固定することができなくなるため、磁歪による振動が大きくなり、騒音が悪化する。
騒音の低減効果が高いことから、損失係数(tanδ)は0.35〜1.1の範囲内であることが好ましく、0.5〜1.1の範囲内であることが好ましい。
図1(C)及び図3(C)に、固定カバーで被覆された積鉄心において、固定カバーを透過図として示した模式図を示す。固定カバーを騒音源である積鉄心と音を伝える媒体となる空気との接触を遮断することが可能となるため、通常、図1(C)及び図3(C)に示すように、積鉄心全体を隙間なく被覆できるような形状とする。
図1(C)及び図3(C)に示すように、積鉄心が固定カバーで被覆されている場合には、固定カバーで被覆された脚部に対して前記巻線を設置する。
ここで、積層された方向性電磁鋼板の間に樹脂が侵入すると、占積率が低下し積鉄心の鉄損が悪化したり、変圧器の総重量が増加するというデメリットがある。
しかし、本発明の固定カバーでは、積鉄心の外側のみを被覆するため、積層された方向性電磁鋼板の間に樹脂が深く侵入することは無い。そのため、上述のような、鉄損の悪化及び必要以上の重量の増加を招くことなく、騒音を低減することができる。
本発明の変圧器は、積鉄心、巻線、及び、固定カバーを備えるものであれば、特に制限はないが、その他の構成として、外装タンク、混触防止板及び接地端子、防振ゴム、吊耳、一次端子及び二次端子、温度計、並びに、変位量抑制装置等を備えるものであってもよい。
本発明の変圧器では、特定の粘弾性樹脂を用いた固定カバーを用いて、積鉄心を被覆することにより、磁歪による振動が減衰されるため、騒音を低減することができる。
方向性電磁鋼板を用いて、三相3脚、鉄心の長さ:500mm、幅:500mm、厚み:15mm、ヨーク部および脚部の幅:100mm、重量:20kgとなるように、0.20mmの厚鋼板を80枚積層平積みしたモデルトランス積鉄心(以下、単に積鉄心と称することがある。)を作製した。
[実施例1]
1.で製造したモデルトランス積鉄心のサイズに基づいて設計した厚さ1mmの固定カバーを、損失係数tanδが0.1であるポリウレタンを粘弾性樹脂素材として使用して作製した。当該固定カバーで上記積鉄心を被覆した。
このように製造した固定カバーで被覆された積鉄心の脚部に、巻線を設置することによって、設計磁束密度が1.7Tである実施例1の変圧器を作製した。
[実施例2〜30]
実施例1において、固定カバーの厚さ、損失係数tanδ、弾性樹脂素材を表1−1〜表1−5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に実施例2〜30の変圧器を作成した。
[比較例1]
1.で製造したモデルトランス積鉄心の脚部に対して3箇所、ヨーク部に対して3箇所、幅10mm、厚さ0.3mmのスチールバンドを用いて、0.1MPaの加重で挟み込むことにより固定した。
当該スチールバンドで固定した積鉄心に、巻線を設置し、設計磁束密度が1.7Tである比較例1の変圧器を作製した。
[比較例2〜11]
実施例1において、固定カバーの厚さ、損失係数δ、弾性樹脂素材を表1−1〜表1−5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に比較例2〜11の変圧器を作成した。
[実施例31]
1.で製造したモデルトランス積鉄心の脚部に、巻線を設置した。このように作製した巻線が設置された鉄心のサイズに基づいて設計した厚さ1mmの固定カバーを、損失係数tanδが0.1であるポリウレタンを粘弾性樹脂素材として使用して作製した。当該固定カバーで上記巻線が設置された積鉄心を被覆し、設計磁束密度が1.7Tである実施例31の変圧器を作製した。
実施例31において、ポリウレタン損失係数δを表2に示すように変更したこと以外は、実施例31と同様に実施例32〜36の変圧器を作製した。
上述のように作製した変圧器に対して、50Hz、磁束密度1.7Tに励磁した状態で、ピーク値0〜12Aのサイン波形状を有し、励磁周波数1〜20kHzで変動する電流を供給し、各励磁周波数に対して発生する騒音値(Aスケール補正、dBA単位)を測定した。なお、騒音値は、固定カバーの表面(比較例1では積鉄心表面)より20cmの位置に2か所マイクを設置して測定した値の平均値を用いた。
素材がポリウレタンである固定カバーで積鉄心を被覆した変圧器の騒音測定結果を表1−1から表1−3にまとめた。
損失係数tanδが0.04であるポリウレタンを素材として用いた厚さ1mmの固定カバーで積鉄心を被覆した比較例2の変圧器では騒音が42dBと騒音低減効果は充分ではなかった。損失係数が低すぎるため、積鉄心の振動を充分に熱エネルギー非変換できないためであると考えられる。
損失係数tanδが3.0であるポリウレタンを素材として用いた固定カバーで積鉄心を被覆した比較例3の変圧器でも、騒音が41dBと騒音低減効果は充分ではなかった。損失係数が高すぎるため、積鉄心を充分に固定できないためであると考えられる。
以上より、固定カバーの厚さは、騒音低減効果に影響を与えないと考えられる。
以上より、損失係数tanδが0.1〜2.0であれば固定カバーの粘弾性樹脂の素材は、騒音低減効果に影響を与えないと考えられる。
2 脚部
3 ヨーク部
4 接合部
5 巻線
10 単相積鉄心
11 単相積鉄心用固定カバー
20 三相積鉄心
21 三相積鉄心用固定カバー
30 巻線を備える単相積鉄心
31 巻線を備える単相積鉄心用固定カバー
40 巻線を備える三相積鉄心
41 巻線を備える三相積鉄心用固定カバー
Claims (2)
- 積鉄心、巻線、及び、固定カバーを備える変圧器であって、
前記固定カバーは、前記積鉄心を被覆し、
前記固定カバーの素材は、損失係数(tanδ)が0.1〜2.0の範囲内にある粘弾性樹脂である、変圧器。 - 前記固定カバーが、前記積鉄心及び前記巻線を被覆する、請求項1に記載の変圧器。
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