JP2018147777A - 防食端子材及び防食端子並びに電線端末部構造 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、アルミニウム合金からなる自動車ワイヤーハーネス用アルミ電線が開示されている。
特許文献2には、第1の金属材料で構成された地金部と、第1の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第2の金属材料で構成され、地金部の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた中間層と、第2の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第3の金属材料で構成され、中間層の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた表面層とを有する端子が開示されている。第1の金属材料として銅又はこの合金、第2の金属材料として鉛又はこの合金、あるいは錫又はこの合金、ニッケル又はこの合金、亜鉛又はこの合金が記載されており、第3の金属材料としてはアルミニウム又はこの合金が記載されている。
一方で、金属亜鉛層が錫層の表面に存在すると、高温高湿環境下において接続信頼性が損なわれることがある。このため、接点予定部のみ金属亜鉛層がない構造とし、高温高湿環境に曝された際も接触抵抗の上昇を抑えることが可能となった。接点予定部においては、下地からの亜鉛の拡散による接続信頼性の低下を抑えるために錫層の下に亜鉛ニッケル合金層が存在しない方が望ましい。
そして、本発明の防食端子は、上記の防食端子材からなる端子であり、本発明の電線端末部構造は、その防食端子がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる電線の端末に圧着されている。
本実施形態の防食端子材1は、図2に全体を示したように、複数の端子を成形するための帯板状に形成されたフープ材であり、その両側部に長さ方向に沿って形成されたキャリア部21の間に、端子として成形すべき複数の端子用部材22がキャリア部21の長さ方向に間隔をおいて配置され、各端子用部材22が細幅の連結部23を介してキャリア部21に連結されている。各端子用部材22は例えば図3に示すような端子の形状に成形され、連結部23から切断されることにより、防食端子10として完成する。
図4は電線12に防食端子10をかしめた端末部構造を示しており、心線圧着部13の付近が電線12の心線12aに直接接触することになる。
前述したフープ材において、防食端子10に成形されたときに接続部11となる部分においてオス端子15に接触して接点となる部分を接点予定部25、心線圧着部13付近において心線12aが接触する部分の表面を心線接触予定部26とする。
この場合、接点予定部25は、実施形態のメス端子においては、角筒状に形成される接続部11の内面と、その接続部11内に折り込まれているばね片11aとの対向面に形成される。接続部11を展開した状態においては、接続部11の両側部の表面、ばね片11aの裏面が接点予定部25となる。
以下、皮膜8については、まず、接点予定部25を除く部分(心線接触予定部26を含む)について、層ごとに説明する。
下地層3は、厚さが0.1μm以上5.0μm以下で、ニッケル含有率は80質量%以上である。この下地層3は、基材2から亜鉛ニッケル合金層4や錫層5への銅の拡散を防止する機能があり、その厚みが0.1μm未満では銅の拡散を防止する効果に乏しく、5.0μmを超えるとプレス加工時に割れが生じ易い。下地層3の厚さは、0.3μm以上2.0μm以下がより好ましい。
また、そのニッケル含有率は80質量%未満では銅が亜鉛ニッケル合金層4や錫層5へ拡散することを防止する効果が小さい。このニッケル含有率は90質量%以上とするのがより好ましい。
この亜鉛ニッケル合金層4の厚みが0.1μm未満では表面の腐食電位を卑化させる効果が乏しく、5.0μmを超えると端子10へのプレス加工時に割れが発生するおそれがある。亜鉛ニッケル合金層4の厚さは、0.3μm以上2.0μm以下がより好ましい。
亜鉛ニッケル合金層4のニッケル含有率が5質量%未満では、錫層5を形成するための後述する錫めっき時に置換反応が発生し、錫めっき(錫層5)の密着性が低下する。亜鉛ニッケル合金層4中のニッケル含有率が35質量%を超えると表面の腐食電位を卑化させる効果が少ない。このニッケル含有率は7質量%以上20質量%以下とするのがより好ましい。亜鉛ニッケル合金層は少なくとも心線接触予定部に形成され、下地からの亜鉛拡散による接点不良を防ぐために、接点予定部には存在しないことが好ましい。
また、錫層5の厚みは0.1μm以上10μm以下が好ましく、薄過ぎるとはんだ濡れ性の低下、接触抵抗の低下を招くおそれがあり、厚過ぎると、表面の動摩擦係数の増大を招き、コネクタ等での使用時の着脱抵抗が大きくなる傾向にある。
一方、金属亜鉛層7のSiO2換算厚みが1nm未満では腐食電位を卑化する効果が乏しく、10nmを超えると接触抵抗が悪化するおそれがある。このSiO2換算厚みは1.25nm以上3nm以下がより好ましい。
なお、金属亜鉛層7の表面には、亜鉛や錫の酸化物層6が形成される。
基材2として、銅又は銅合金からなる板材を用意する。この板材に裁断、穴明け等の加工を施すことにより、図2に示すような、キャリア部21に複数の端子用部材22を連結部23を介して連結されてなるフープ材に成形する。そして、このフープ材に脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、その全面に下地層3を形成するためのニッケル又はニッケル合金めっきを施した後、接点予定部25をマスク(図示略)によって覆い、その状態で亜鉛ニッケル合金層4を形成するための亜鉛ニッケル合金めっきを施し、マスクを外して、全面に錫層5を形成するための錫又は錫合金めっきを施す。
防食端子10へのプレス曲げ性と銅に対するバリア性を勘案すると、スルファミン酸浴から得られる純ニッケルめっきが望ましい。
この熱処理は、素材の表面温度が30℃以上190℃以下となる温度で加熱する。この熱処理により、接点予定部25以外の部分では、亜鉛ニッケル合金めっき層中の亜鉛が錫めっき層内および錫めっき層上に拡散し、表面に薄く金属亜鉛層を形成する。亜鉛の拡散は速やかに起こるため、30℃以上の温度に24時間以上晒すことで金属亜鉛層7を形成することができる。ただし、亜鉛ニッケル合金は溶融錫をはじき、錫層5に錫はじき箇所を形成するため、190℃を超える温度には加熱しない。
そして、プレス加工等によりフープ材のまま図3に示す端子の形状に加工され、連結部23が切断されることにより、防食端子10に形成される。
図4は電線12に端子10をかしめた端末部構造を示しており、心線かしめ部13付近が電線12の心線12aに直接接触することになる。
しかも、錫層5の下に亜鉛ニッケル合金層4が形成されており、その亜鉛が錫層5の表面部分に拡散してくるので、摩耗等による金属亜鉛層7の消失を抑制し、金属亜鉛層7が高濃度に維持される。また、万一、摩耗等により錫層5の全部又は一部が消失した場合でも、その下の亜鉛ニッケル合金層4はアルミニウムと腐食電位が近いので、電食の発生を抑えることができる。
例えば、実施形態では、接点予定部25に金属亜鉛層7を形成しない方法として、実施形態では接点予定部25をマスクで覆った状態で亜鉛ニッケル合金めっき等を施したが、接点予定部25を含む全面に亜鉛ニッケル合金めっきを施し、部分エッチングにより接点予定部25の亜鉛ニッケル合金めっき層を除去する方法としてもよい。
また、接点予定部25以外の部分において、表面の金属亜鉛層7を亜鉛ニッケル合金層4からの拡散によって形成したが、錫層5の表面に亜鉛めっきにより金属亜鉛層7を形成してもよい。この亜鉛めっきは公知の方法により行うことができるが、例えばジンケート浴、硫酸塩浴、塩化亜鉛浴、シアン浴を用いて電気めっきすることができる。この場合、亜鉛ニッケル合金層4は、接点予定部25には存在しない方が好ましいが、存在していてもかまわない。
比較例として、接点予定部25をマスクで覆うことなく、全面に亜鉛ニッケル合金めっきを施して、接点予定部25にも金属亜鉛層7を形成したもの(試料11)、及び、接点予定部25以外の部分も含めて亜鉛ニッケル合金めっきを実施せず、銅板を脱脂、酸洗した後、ニッケルめっき、錫めっきの順に施したもの(試料12)も作製した。
・めっき浴組成
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:5g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm2
・めっき浴組成
硫酸亜鉛七水和物:75g/L
硫酸ニッケル六水和物:180g/L
硫酸ナトリウム:140g/L
・pH=2.0
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm2
・めっき浴組成
メタンスルホン酸錫:200g/L
メタンスルホン酸:100g/L
光沢剤
・浴温:25℃
・電流密度:5A/dm2
亜鉛ニッケル合金層4のニッケル含有率は、セイコーインスツル株式会社製の集束イオンビーム装置:FIB(型番:SMI3050TB)を用いて、試料を100nm以下に薄化した観察試料を作製し、この観察試料を日本電子株式会社製の走査透過型電子顕微鏡:STEM(型番:JEM−2010F)を用いて、加速電圧200kVで観察を行い、STEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置:EDS(Thermo社製)を用いて測定した。
錫層5中の亜鉛濃度は日本電子株式会社製の電子線マイクロアナライザー:EPMA(型番JXA−8530F)を用いて、加速電圧6.5V、ビーム径φ30μmとし、試料表面を測定した。
X線源:Standard MgKα 350W
パスエネルギー:187.85eV(Survey)、58.70eV(Narrow)
測定間隔:0.8eV/step(Survey)、0.125eV(Narrow
)
試料面に対する光電子取り出し角:45deg
分析エリア:約800μmφ
SiO2のエッチングレートの算出方法は、20nmの厚さであるSiO2膜を2.8×3.5mmの長方形領域でアルゴンイオンでエッチングを行い20nmをエッチングするのに要した時間で割ることによって算出した。上記分析装置の場合には8分要したためエッチングレートは2.5nm/minである。XPSは深さ分解能が約0.5nmと優れるが、Arイオンビームでエッチングされる時間は各材料により異なるため、膜厚そのものの数値を得るためには、膜厚が既知かつ平坦な試料を調達し、エッチングレートを算出しなければならない。上記は容易でないため、膜厚が既知であるSiO2膜にて算出したエッチングレートで規定し、エッチングに要した時間から算出される「SiO2換算膜厚」を利用した。このため「SiO2換算膜厚」は実際の酸化物の膜厚と異なる点に注意が必要である。SiO2換算エッチングレートで膜厚を規定すると、実際の膜厚は不明であっても、一義的であるため定量的に膜厚を評価することができる。
なお、このSiO2換算膜厚は金属亜鉛濃度が所定値以上となっている部分の膜厚であり、金属亜鉛の濃度を部分的に測定できる場合でも、その層が極めて薄く分散している場合にはSiO2換算膜厚としては測定できない場合がある。
これらの測定結果を表1に示す。表1中、試料1〜3、11の金属亜鉛層のSiO2換算膜厚は、測定できなかったことを示している。
<腐食環境放置試験>
純アルミニウム線をかしめた090型のメス端子を23℃の5%塩化ナトリウム水溶液に24時間浸漬後、85℃、85%RHの高温高湿下に24時間放置した。その後、アルミニウム線と端子間の接触抵抗を四端子法により測定した。電流値は10mAとした。
<高温高湿環境試験>
純アルミニウム線をかしめた090型のメス端子を85℃、85%RHに96時間放置した。その後、アルミニウム線と端子間の接触抵抗を四端子法により測定した。電流値は10mAとした。
<高熱環境放置試験>
純アルミニウム線をかしめた端子を150℃に500時間放置した。その後、090型の錫めっきを実施したオス端子を嵌合し端子間の接触抵抗を四端子法により測定した。
これらの結果を表2に示す。
これに対して、比較例の試料11は、接点部に金属亜鉛層を有していたため、高温高湿放置、高熱放置の試験で接触抵抗が増大した。また、試料12は、心線接触部に金属亜鉛層を有していなかったため、腐食環境放置試験で激しい腐食が認められ、接触抵抗が著しく増加した。
2 基材
3 下地層
4 亜鉛ニッケル合金層
5 錫層
6 酸化物層
7 金属亜鉛層
10 端子
11 接続部
12 電線
12a 心線
12b 被覆部
13 心線圧着部
14 被覆圧着部
25 接点予定部
26 心線接触予定部
Claims (9)
- 銅又は銅合金からなる基材の上に皮膜が積層されているとともに、端子に成形されたときに電線の心線が接触される心線接触予定部と、接点部となる接点予定部とが形成されており、前記心線接触予定部に形成される前記皮膜は、亜鉛及びニッケルを含有する亜鉛ニッケル合金層と、錫又は錫合金からなる錫層と、金属亜鉛層とがこの順に積層されており、前記接点予定部に形成される前記皮膜は、前記亜鉛ニッケル合金層、前記錫層、前記金属亜鉛層のうち、少なくとも前記錫層を有し、前記金属亜鉛層を有しないことを特徴とする防食端子材。
- 前記金属亜鉛層は端子として成形された後の表面に対する被覆率が30%以上80%以下であることを特徴とする請求項1記載の防食端子材。
- 前記金属亜鉛層は、亜鉛濃度が5at%以上40at%以下で厚みがSiO2換算で1nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の防食端子材。
- 前記亜鉛ニッケル合金層は、ニッケル含有率が5質量%以上35質量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の防食端子材。
- 前記心線接触予定部における前記錫層は亜鉛を0.4質量%以上15質量%以下含有する錫合金からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の防食端子材。
- 前記基材と前記亜鉛ニッケル合金層との間に、ニッケル又はニッケル合金からなる下地層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の防食端子材。
- 帯板状に形成されるとともに、その長さ方向に沿うキャリア部に、前記心線接触予定部及び前記接点予定部を有する端子用部材が前記キャリア部の長さ方向に間隔をおいて複数連結されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の防食端子材。
- 請求項1から7のいずれか一項記載の防食端子材からなることを特徴とする防食端子。
- 請求項8記載の防食端子がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる電線の端末に圧着されていることを特徴とする電線端末部構造。
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