JP6930327B2 - 防食端子材とその製造方法、及び防食端子並びに電線端末部構造 - Google Patents

防食端子材とその製造方法、及び防食端子並びに電線端末部構造 Download PDF

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Description

本発明は、腐食防止効果の高い防食端子材とその製造方法、及びその端子材からなる防食端子、並びにその端子を用いた電線端末部構造に関する。
従来、銅又は銅合金で構成されている電線の端末部に、銅又は銅合金で構成された端子を圧着し、この端子を機器に設けられた端子に接続することにより、その電線を機器に接続することが行われている。また、電線の軽量化等のために、電線の心線を、銅又は銅合金に代えて、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成している場合がある。
例えば、特許文献1には、アルミニウム合金からなる自動車ワイヤーハーネス用アルミ電線が開示されている。
ところで、電線(導線)をアルミニウム又はアルミニウム合金で構成し、端子を銅又は銅合金で構成すると、水が端子と電線との圧着部に入ったときに、異金属の電位差による電食が発生することがある。そして、その電線の腐食に伴い、圧着部での電気抵抗値の上昇や圧着力の低下が生ずるおそれがある。
この腐食の防止法としては、例えば特許文献2や特許文献3記載のものがある。
特許文献2には、第1の金属材料で構成された地金部と、第1の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第2の金属材料で構成され、地金部の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた中間層と、第2の金属材料よりも標準電極電位の値が小さい第3の金属材料で構成され、中間層の表面の少なくとも一部にめっきで薄く設けられた表面層とを有する端子が開示されている。第1の金属材料として銅又はこの合金、第2の金属材料として鉛又はこの合金、あるいは錫又はこの合金、ニッケル又はこの合金、亜鉛又はこの合金が記載されており、第3の金属材料としてはアルミニウム又はこの合金が記載されている。
特許文献3には、被覆電線の端末領域において、端子金具の一方端に形成されるかしめ部が被覆電線の被覆部分の外周に沿ってかしめられ、少なくともかしめ部の端部露出領域及びその近傍領域の全外周をモールド樹脂により完全に覆ってなるワイヤーハーネスの端末構造が開示されている。
特開2004−134212号公報 特開2013−33656号公報 特開2011−222243号公報
しかしながら、特許文献3記載の構造では腐食は防げるものの、樹脂モールド工程の追加により製造コストが増大し、さらに、樹脂による端子断面積増加によりワイヤーハーネスの小型化が妨げられるという問題があり、特許文献2記載の第3の金属材料であるアルミニウム系めっきを実施するためにはイオン性液体などを用いるため、非常にコストがかかるという問題があった。
また、コネクタ等の接点材料として接触抵抗の低減が求められるため、表面に錫層を形成すると良いが、錫ウィスカーの発生も防止する必要がある。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、腐食防止効果が高く、接触抵抗が低く、ウィスカーの発生を抑えた防食端子材とその製造方法、及びその端子材からなる防食端子、並びにその端子を用いた電線端末部構造を提供することを目的とする。
本発明の防食端子材は、
銅又は銅合金からなる基材と、該基材の上に形成された接点特性皮膜と、該接点特性皮膜の一部の上に形成された防食皮膜とを有し、
前記接点特性皮膜は、表面にリフロー処理された錫又は錫合金からなる第一錫層が形成されており、
前記防食皮膜は、前記接点特性皮膜の上に、亜鉛及びニッケルを含有する亜鉛ニッケル合金層と、該亜鉛ニッケル合金層の上に形成された錫又は錫合金からなる第二錫層と、該第二錫層の上に形成された金属亜鉛層とがこの順に積層されており、前記第一錫層と前記防食皮膜との間にニッケル錫合金が介在している。
この防食端子材は、防食皮膜が形成されている部分を心線接触部として用い、防食皮膜が形成されずに接点特性皮膜が露出している部分を接点部として用いることができる。
防食皮膜においては、金属亜鉛層が形成されており、この金属亜鉛の腐食電位がアルミニウムと近いので、アルミニウム製心線と接触した場合の電食の発生を抑えることができる。しかも、第二錫層の下に亜鉛ニッケル合金層を有しており、その亜鉛が第二錫層の表面に拡散してくるので、金属亜鉛層が高濃度に維持される。万一、摩耗等により金属亜鉛層や第二錫層の全部又は一部が消失した場合でも、その下の亜鉛ニッケル合金層により電食の発生を抑えることができる。
一方で、金属亜鉛層が錫層の表面に存在すると、高温高湿や腐食性ガスなどの腐食環境下において接続信頼性が損なわれることがある。このため、防食皮膜が形成されていない部分については、リフロー処理された第一錫層を表面に有する接点特性皮膜とし、腐食環境に曝された際も接触抵抗の上昇を抑えることが可能となった。
また、リフロー処理を施さない錫層を接点予定部の表面に用いると、腐食環境下および摺動時に錫ウィスカーが生じ、接続信頼性を損ねることがある。このため、接点特性皮膜の最表面は無光沢錫でなく、無光沢錫をリフロー処理したリフロー錫層(第一錫層)とした。
本発明の防食端子材の好ましい形態においては、以下の構成とするとよい。
まず、前記金属亜鉛層は端子として成形された後の表面に対する被覆率が30%以上80%以下であるとよい。
金属亜鉛層は、防食皮膜を有しない接点特性皮膜上には存在せず、防食皮膜には存在している必要がある。この金属亜鉛層が存在している部位の比率が高い方が望ましく、端子として形成された際の表面全体の30%以上80%以下の被覆率で存在すると良い。
また、前記金属亜鉛層は、亜鉛濃度が5at%以上40at%以下で厚みがSiO換算で1nm以上10nm以下であるとよい。
金属亜鉛層の亜鉛濃度が5at%未満では腐食電位を卑化する効果に乏しく、40at%を超えると接触抵抗が悪化するおそれがある。金属亜鉛層のSiO換算厚みが1nm未満では腐食電位を卑化する効果に乏しく、10nmを超えると接触抵抗が悪化するおそれがある。
さらに、前記亜鉛ニッケル合金層は、ニッケル含有率が5質量%以上35質量%以下であるとよい。
亜鉛ニッケル合金層中のニッケル含有率は、5質量%未満では、第二錫層形成のための錫めっき時に置換反応が発生し、錫めっきの密着性が低下するおそれがある。35質量%を超えると表面の腐食電位を卑化させる効果が乏しくなる。
前記第二錫層は亜鉛を0.4質量%以上15質量%以下含有する錫合金からなるとよい。
第二錫層が亜鉛を含有していると、腐食電位を卑化してアルミニウム製心線を防食する効果があるとともに、第二錫層表面の金属亜鉛層に亜鉛を供給できるため、防食効果が長時間継続する。その亜鉛濃度が0.4質量%未満では防食効果に乏しく、15質量%を超えると第二錫層の耐食性が低下し、腐食環境に曝されると第二錫層が腐食され接触抵抗が悪化するおそれがある。
前記基材と前記第一錫層との間、又は前記第一錫層と前記亜鉛ニッケル合金層との間の少なくともいずれかに、ニッケル又はニッケル合金からなる下地層が形成されているとよい。
また、本発明の防食端子材において、帯板状に形成されるとともに、その長さ方向に沿うキャリア部に、前記防食皮膜及び前記接点特性皮膜を有する端子用部材が前記キャリア部の長さ方向に間隔をおいて複数連結されているものとすることができる。
そして、本発明の防食端子は、上記の防食端子材からなる端子であり、本発明の電線端末部構造としては、その防食端子がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる電線の端末に圧着されている場合に好適である。
本発明の防食端子材の製造方法は、前記基材の上に錫めっきを施した後に加熱して急冷するリフロー処理することにより、前記第一錫層を表面に有する前記接点特性皮膜を形成し、該接点特性皮膜の前記第一錫層の表面を脱脂及び活性化処理し、その後、該第一錫層の上にニッケルストライクめっきを施した後、前記防食皮膜を形成する。
接点特性皮膜と防食皮膜の間に、錫酸化膜が存在すると、防食皮膜が剥がれやすくなるおそれがあるため、脱脂及び活性化処理することにより錫酸化膜を除去し、その後ニッケルストライクめっきを施すことによりめっきの密着性を上げている。また一般的にめっきの密着性は隣り合う異種金属が相互拡散することで得られるため、第一錫層の錫とニッケルストライクめっきのニッケルとが相互拡散し、さらに錫ニッケル合金として存在することで強固な密着性が得られる。
本発明によれば、防食皮膜の表面に腐食電位がアルミニウムと近い金属亜鉛層が形成されているので、アルミニウム製心線と接触した場合の電食の発生を抑えることができ、しかも、第二錫層の下の亜鉛ニッケル合金層から亜鉛が第二錫層の表面部分に拡散してくるので、金属亜鉛層を高濃度に維持することができ、長期的に耐食性に優れており、さらに、万一、摩耗等により第二錫層の全部又は一部が消失した場合でも、その下の亜鉛ニッケル合金層により電食の発生を抑えることができ、電気抵抗値の上昇や心線への圧着力の低下を抑制することができる。一方、接点特性皮膜においては、金属亜鉛層を含んだ防食皮膜がなく、接点として多用されているリフロー錫からなる第一錫層が表面に形成されているため、腐食環境に曝された際も接触抵抗の上昇を抑えることができる。さらに、リフロー錫からなる第一錫層であるため歪みが解放されており、ウィスカーが生じにくい。
本発明の防食端子材の実施形態を模式的に示す断面図である。 実施形態の防食端子材の平面図である。 実施形態の防食端子材が適用される端子の例を示す斜視図である。 図3の端子を圧着した電線の端末部を示す正面図である。 ニッケルストライクめっきを施した後にニッケルめっきをした試料の断面の顕微鏡写真である。 ニッケルめっきが異常析出した試料の表面の顕微鏡写真である。 試料10の断面の顕微鏡写真である。 試料13の断面の顕微鏡写真である。
本発明の実施形態の防食端子材とその製造方法、防食端子及び電線端末部構造を説明する。
本実施形態の防食端子材1は、図2に全体を示したように、複数の端子を成形するための帯板状に形成されたフープ材であり、その両側部に長さ方向に沿って形成されたキャリア部21の間に、端子として成形すべき複数の端子用部材22がキャリア部21の長さ方向に間隔をおいて配置され、各端子用部材22が細幅の連結部23を介してキャリア部21に連結されている。各端子用部材22は例えば図3に示すような端子の形状に成形され、連結部23から切断されることにより、防食端子10として完成する。
この防食端子10は、図3の例ではメス端子を示しており、先端から、オス端子15(図4参照)が嵌合される接続部11、電線12の露出した心線(アルミニウム製心線)12aがかしめられる心線圧着部13、電線12の被覆部12bがかしめられる被覆圧着部14がこの順で一体に形成されている。接続部11は角筒状に形成され、その先端から連続するばね片11aが折り込まれるように挿入されている(図4参照)。
図4は電線12に防食端子10をかしめた端末部構造を示しており、心線圧着部13の付近が電線12の心線12aに直接接触することになる。
前述したフープ材において、防食端子10に成形されたときに接続部11となる部分においてオス端子15に接触して接点となる部分を接点予定部25、心線圧着部13付近において心線12aが接触する部分の表面を心線接触予定部26とする。
この場合、接点予定部25は、実施形態のメス端子においては、角筒状に形成される接続部11の内面と、その接続部11内に折り込まれているばね片11aとの対向面に形成される。接続部11を展開した状態においては、接続部11の両側部の表面、ばね片11aの裏面が接点予定部25となる。
そして、この防食端子材1は、図1に断面(図2のA−A線に沿う断面に相当する)を模式的に示したように、銅又は銅合金からなる基材2上に皮膜が形成されており、その皮膜は、基材2の全面を覆う接点特性皮膜30と、その接点特性皮膜30の上の一部に形成された防食皮膜40とからなる。防食皮膜40が形成された部分が心線接触予定部26として用いられ、接点特性皮膜30が露出している部分が接点予定部25として用いられる。
接点特性皮膜30は、表面にリフロー処理された第一錫層33が形成されている。具体的には、(1)基材2の上に、銅と錫との金属間化合物層からなる中間合金層が形成され、その中間合金層の上に第一錫層が形成されたもの、(2)基材2の上に、ニッケル又はニッケル合金層からなる接点特性皮膜用下地層31を介して、ニッケルと錫との金属間化合物を有するニッケル層の上に銅と錫との金属間化合物層が積層した構造の中間合金層が形成され、その中間合金層の上に第一錫層が形成されたもの、(3)基材2の上に、ニッケル又はニッケル合金層からなる接点特性皮膜用下地層31を介して、ニッケルと錫との金属間化合物を有するニッケル層からなる中間合金層が形成され、その中間合金層の上に第一錫層33が形成されたもの、の3種類がある。以下では、これらの中間合金層を符号32として共通の符号を付して説明する。また、(1)の場合も、基材2と中間合金層32との間にニッケル又はニッケル合金層からなる接点特性皮膜用下地層31を設けてもよい。図1は、基材2の上に接点特性皮膜用下地層31、中間合金層32、第一錫層33が順に形成された構造を示す。
なお、(3)の場合、中間合金層32がFIB等による観察では層としてまでは認識できず、接点特性皮膜用下地層31の上に直接第一錫層33が形成されているように認識される場合がある。
また、第一錫層33の表面には薄く酸化物層34が形成される。
一方、防食皮膜40は、接点特性皮膜30の上に形成されたニッケル又はニッケル合金からなる防食皮膜用下地層41と、防食皮膜用下地層41の上に形成された亜鉛とニッケルの金属間化合物が層状に形成された亜鉛ニッケル合金層42と、亜鉛ニッケル合金層42の上に形成された錫又は錫合金からなる第二錫層43とがこの順に積層されるとともに、第二錫層43の上に金属亜鉛層44が形成され、金属亜鉛層44の上に薄く酸化物層45が形成されている。
この金属亜鉛層44は、防食端子10として成形された後の表面(端子用部材22の表面)の30%以上80%以下の被覆率で存在するのが望ましい。
なお、接点特性皮膜30と防食皮膜40との間には、層とまでは認識できないが、ニッケルと錫との合金がわずかに存在している。そのニッケルと錫との合金は、NiSnを主成分とした金属間化合物、又は/およびニッケルが固溶した錫から成り立っている。
基材2は、銅又は銅合金からなるものであれば、特に、その組成が限定されるものではない。
以下、接点特性皮膜30及び防食皮膜40のそれぞれについて、層ごとに説明する。
(接点特性皮膜30)
接点特性皮膜用下地層31を設ける場合は、基材2から中間合金層32や第一錫層33への銅の拡散を防止する機能があり、耐熱性の向上に寄与する。例えば、平均厚みが0.1μm以上5.0μm以下で、ニッケル含有率は80質量%以上が好ましい。その平均厚みが0.1μm未満では銅の拡散防止効果に乏しく、5.0μmを超えるとプレス加工時に割れが生じ易い。この接点特性皮膜用下地層31の平均厚みは、0.3μm以上2.0μm以下の厚さとするのがより好ましい。
また、そのニッケル含有率が80質量%未満では銅の拡散防止効果が小さい。このニッケル含有率は90質量%以上とするのがより好ましい。
中間合金層32については、前述の(1)〜(3)に分けて説明する。
(1)の場合は、基材2の上に、銅めっき層、錫めっき層を順に形成して、リフロー処理することにより得られた層であり、CuSnやCuSn等を主成分とする銅錫(Cu−Sn)金属間化合物層からなる。(2)の場合は、基材2の上にニッケルめっき層を形成し、その上に銅めっき層、錫めっき層を順に形成して、リフロー処理することにより得られた層であり、NiSnを主成分とするニッケル錫(Ni−Sn)金属間化合物を有するニッケル層と、CuSnやCuSn等を主成分とする銅錫(Cu−Sn)金属間化合物層との積層構造からなる。(3)の場合は、基材2の上にニッケルめっき層を形成し、その上に錫めっき層を形成して、リフロー処理することにより得られた層であり、NiSnを主成分とするニッケル錫(Ni−Sn)金属間化合物を有するニッケル層からなる。
この中間合金層32は、(1)又は(2)の場合の平均厚みは0.1μm以上3.0μm以下が好ましい。この場合、リフロー処理により第一錫層33の内部歪みが解放されることで、均一な中間合金層32が形成されるため、錫ウィスカーが発生し難くなる。なお、リフロー処理が不足して中間合金層32の平均厚みが薄くなりすぎると、第一錫層33の内部歪みが解放しきれず、錫ウィスカーが発生し易くなる。一方、中間合金層32の平均厚みが厚過ぎると、加工時に割れが発生しやすくなる。
中間合金層32が(3)の場合は、錫ウィスカーの原因である経時変化によって生成する不均一な錫銅合金が生成しないため、錫ウィスカーが発生し難い。またその平均厚みは0.01μm以上2.0μm以下が好ましい。リフロー処理が不足して平均厚みが薄くなりすぎると、第一錫層33の内部歪みが解放しきれず、錫ウィスカーが発生し易くなる。一方、平均厚みが厚過ぎると、加工時に割れが発生しやすくなる。
第一錫層33も、リフロー処理されることにより形成されており、その平均厚みは0.1μm以上5.0μm以下が好ましい。第一錫層33の平均厚みが薄過ぎると、はんだ濡れ性の低下、接触抵抗の低下を招くおそれがあり、さらに、中間合金層32を前述の(1)又は(2)とした場合、銅錫合金層の一部が表面に露出するおそれがある。銅錫合金層32の一部が第一錫層33の表面から露出した場合には、後述のニッケルストライクめっきや防食皮膜40の防食皮膜用下地層41を形成する場合にニッケルの異常析出を招き易い。反対に、第一錫層33が厚過ぎると、表面の動摩擦係数の増大を招き、コネクタ等での使用時の着脱抵抗が大きくなる傾向にある。
(防食皮膜40)
防食皮膜用下地層41は、接点特性皮膜30からの成分(特に基材2からの銅成分)拡散を防止するバリアとして機能し、耐熱性向上に寄与する。接点特性皮膜用下地層31と同じ組成のものを用いることができるが、接点特性皮膜用下地層31を設け、かつ中間合金層32に銅が存在しない(3)の場合、表面側に銅が存在しなくなるため、防食皮膜40への銅の拡散が防止できている。よって銅の拡散防止効果はすでに得られているため、防食皮膜用下地層41を形成してもしなくなくてもよい。なお、使用環境等によっては防食皮膜用下地層41は必ずしも必要ではない。
亜鉛ニッケル合金層42は、平均厚みが0.1μm以上5.0μm以下であり、亜鉛、ニッケルが含有されるとともに、第二錫層43に接しているので錫も含有している。この亜鉛ニッケル合金層42のニッケル含有率は5質量%以上35質量%以下である。
この亜鉛ニッケル合金層42の平均厚みが0.1μm未満では表面の腐食電位を卑化させる効果が乏しく、5.0μmを超えると防食端子10へのプレス加工時に割れが発生するおそれがある。亜鉛ニッケル合金層42の平均厚みは、0.3μm以上2.0μm以下がより好ましい。
亜鉛ニッケル合金層42のニッケル含有率が5質量%未満では、第二錫層43を形成するための後述する錫めっき時に置換反応が発生し、錫めっき(第二錫層43)の密着性が低下する。亜鉛ニッケル合金層42中のニッケル含有率が35質量%を超えると表面の腐食電位を卑化させる効果が少ない。このニッケル含有率は7質量%以上20質量%以下とするのがより好ましい。亜鉛ニッケル合金層42は少なくとも心線接触予定部26に形成され、表面への亜鉛拡散による接点不良を防ぐために、接点予定部25には存在しない。
第二錫層43は、亜鉛濃度が0.4質量%以上15質量%以下である。この第二錫層43の亜鉛濃度が0.4質量%未満では腐食電位を卑化してアルミニウム製心線を防食する効果が乏しく、15質量%を超えると第二錫層43の耐食性が著しく低下するため腐食環境に曝されると第二錫層43が腐食され接触抵抗が悪化するおそれがある。この第二錫層43の亜鉛濃度は、1.5質量%以上6.0質量%以下がより好ましい。 また、第二錫層43の平均厚みは0.1μm以上10μm以下が好ましく、薄過ぎるとはんだ濡れ性の低下、接触抵抗の低下を招くおそれがあり、厚過ぎると、表層へ亜鉛が拡散しにくくなるため、防食性能が低下する。
金属亜鉛層44は、亜鉛濃度が5at%以上40at%以下で厚みがSiO換算で1nm以上10nm以下である。この金属亜鉛層44の亜鉛濃度は5at%未満では腐食電位を卑化する効果がなく、40at%を超えると接触抵抗が悪化する。この金属亜鉛層44の亜鉛濃度は、10at%以上25at%以下がより好ましい。
一方、金属亜鉛層44のSiO換算厚みが1nm未満では腐食電位を卑化する効果が乏しく、10nmを超えると接触抵抗が悪化するおそれがある。このSiO換算厚みは1.25nm以上3nm以下がより好ましい。
なお、金属亜鉛層44の表面には、亜鉛や錫の酸化物層45が薄く形成される。
以上の層構成を有する皮膜は、全体が接点特性皮膜30により構成され、その表面の一部が防食皮膜40である。そして、その防食皮膜40が、前述したように、接点予定部25を除く部分の表面に存在している。この防食皮膜40は、防食端子10として成形されたときの表面の30%以上80%以下の被覆率で存在するのが望ましい。一方、接点予定部25においては、接点特性用皮膜30のみが存在する。
次に、この防食端子材1の製造方法について説明する。
基材2として、銅又は銅合金からなる板材を用意し、この板材に脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にする。
接点特性皮膜30については、前述した各めっき層を形成した後、リフロー処理する。リフロー処理は、基材2の表面温度が240℃以上360℃以下になるまで昇温後、当該温度に1秒以上12秒以下の時間保持した後、急冷することにより行われる。
この接点特性皮膜30を形成した基材2に裁断、穴明け等の加工を施すことにより、図2に示すような、キャリア部21に複数の端子用部材22を連結部23を介して連結されてなるフープ材に成形する。そして、このフープ材に脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にした後、接点予定部25をマスク(図示略)によって覆う。その状態で、脱脂処理、活性化処理、ニッケルストライクめっきの処理をすることによって表面を清浄にして、防食皮膜40への密着性を高めた後、必要に応じて防食皮膜用下地層41を形成するためのニッケル又はニッケル合金めっきを施し、ニッケルめっき層を形成する。次いで、亜鉛ニッケル合金層42を形成するための亜鉛ニッケル合金めっきを施して亜鉛ニッケル合金めっき層を形成し、第二錫層43を形成するための錫又は錫合金めっきを施して錫めっき層を形成し、その後マスクを外す。
なお、接点特性被膜30を形成した基材2を裁断、加工することなく、脱脂、酸洗等の表面清浄化処理をした後に、マスクして部分的に防食皮膜40を形成し、その後に裁断、加工してフープ材に成形してもよい。
防食皮膜用下地層41を形成するためのニッケル又はニッケル合金めっきからなるニッケルめっき層は緻密なニッケル主体の膜が得られるものであれば特に限定されず、公知のワット浴やスルファミン酸浴、クエン酸浴などを用いて電気めっきにより形成することができる。ニッケル合金めっきとしてはニッケルタングステン(Ni−W)合金、ニッケルリン(Ni−P)合金、ニッケルコバルト(Ni−Co)合金、ニッケルクロム(Ni−Cr)合金、ニッケル鉄(Ni−Fe)合金、ニッケル亜鉛(Ni−Zn)合金、ニッケルボロン(Ni−B)合金などを利用することができる。
防食端子10へのプレス曲げ性と銅に対するバリア性を勘案すると、スルファミン酸浴から得られる純ニッケルめっきが望ましい。
なお、防食皮膜40を形成する前の脱脂および錫酸化膜除去処理は、第一錫層33表面の酸化物層34や有機汚れを除去する処理であり、例えばアルカリ電解脱脂を30秒間実施するのが好ましい。活性化処理は、例えば5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いて表面を洗浄して活性化する処理である。
また、ニッケルストライクめっきは、次工程の防食皮膜40の下地層41を形成するためのニッケル又はニッケル合金めっきあるいは亜鉛ニッケル合金層42を形成するための亜鉛ニッケル合金めっきの密着性を上げることができるのであれば特に限定されず、公知のウッド浴などを用いて電気めっきにより形成することができる。なお、このニッケルストライクめっきは水素を多く含むため、長時間とならないように薄く形成するのが好ましい。
亜鉛ニッケル合金層42を形成するための亜鉛ニッケル合金めっきは、緻密な膜を所望の組成で得られるものであれば特に限定されず、公知の硫酸塩浴や塩化物塩浴、中性浴などを用いることができる。
第二錫層43を形成するための錫又は錫合金めっきからなる錫めっきは、公知の方法により行うことができるが、例えば有機酸浴(例えばフェノールスルホン酸浴、アルカンスルホン酸浴又はアルカノールスルホン酸浴)、硼フッ酸浴、ハロゲン浴、硫酸浴、ピロリン酸浴等の酸性浴、或いはカリウム浴やナトリウム浴等のアルカリ浴を用いて電気めっきすることができる。
このようにして、基材2の接点特性皮膜30の上にマスクをしてめっきをした後、マスクを外して熱処理を施す。
この熱処理は、素材の表面温度が30℃以上190℃以下となる温度で加熱する。この熱処理により、接点予定部25以外の部分では、亜鉛ニッケル合金めっき層中の亜鉛が錫めっき層内および錫めっき層上に拡散し、表面に薄く金属亜鉛層44を形成する。亜鉛の拡散は速やかに起こるため、30℃以上の温度に24時間以上晒すことで金属亜鉛層44を短時間で確実に形成することができる。ただし、亜鉛ニッケル合金は溶融錫をはじき、第二錫層43に錫はじき箇所を形成するため、190℃を超える温度には加熱しない。
ただし、時間経過によって、接点予定部25以外の部分では、亜鉛ニッケル合金めっき層中の亜鉛が錫めっき層内に拡散して第二錫層43を形成し、さらに第二錫層43上に拡散し、表面に薄く金属亜鉛層44を形成する。そのため、めっき処理直後に本端子を使用する場合を除いて、本熱処理工程は必須ではない。
このようにして製造された防食端子材1は、基材2の上に、必要に応じてニッケル又はニッケル合金からなる接点特性皮膜用下地層31が形成され、その上に中間合金層32、第一錫層33が順に形成され、マスクにより覆っておいた接点予定部25においては、第一錫層33の上に酸化物層34が薄く形成されている。接点予定部25以外の部分では、第一錫層33の上に、必要に応じて防食皮膜用下地層41が形成され、その上に亜鉛ニッケル合金層42、第二錫層43、金属亜鉛層44が順に形成され、その金属亜鉛層44の表面に酸化物層45が薄く形成されている。なお、第一錫層33と防食皮膜40との間に、層とまでは認められないが、第一錫層33上に設けたニッケルストライクめっきによりニッケル錫合金が介在している。
そして、プレス加工等によりフープ材のまま図3に示す端子の形状に加工され、連結部23が切断されることにより、防食端子10に形成される。
図4は電線12に防食端子10をかしめた端末部構造を示しており、心線かしめ部13付近が電線12の心線12aに直接接触することになる。
この防食端子10は、心線接触予定部26においては、第二錫層43に亜鉛を含み、第二錫層43の最表面の酸化物層45の下に金属亜鉛層44が形成されているので、アルミニウム製心線12aに圧着された状態であっても、金属亜鉛の腐食電位がアルミニウムと非常に近いことから、電食の発生を防止することができる。
しかも、第二錫層43の下に亜鉛ニッケル合金層42が形成されており、その亜鉛が第二錫層43の表面部分に拡散してくるので、摩耗等による金属亜鉛層44の消失を抑制し、金属亜鉛層44が高濃度に維持される。また、万一、摩耗等により第二錫層43の全部又は一部が消失した場合でも、その下の亜鉛ニッケル合金層42はアルミニウムと腐食電位が近いので、電食の発生を抑えることができる。
一方で、金属亜鉛層44が表面に存在すると、腐食環境下において接点としての接続信頼性が損なわれることがあるが、この実施形態においては、接点予定部25には金属亜鉛層44が存在しない構造としたことにより、高温高湿、ガス腐食環境に曝された際も接触抵抗の上昇を抑えることができ、さらに第一錫層33がリフロー錫によって構成されているため、腐食環境時やコネクタとしての摺動時にも錫ウィスカーの発生を抑制することができる。
また、錫ウィスカーの原因の大きな要因として、錫めっきの粒界に沿って発生する銅錫合金による内部応力があるが、リフロー処理によって、銅錫合金が初期から均一に生成しているため、錫ウィスカーが生じにくい。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、接点予定部25以外の部分において、表面の金属亜鉛層44を亜鉛ニッケル合金層42からの拡散によって形成したが、第二錫層43の表面に亜鉛めっきにより金属亜鉛層44を直接形成してもよい。この亜鉛めっきは公知の方法により行うことができるが、例えばジンケート浴、硫酸塩浴、塩化亜鉛浴、シアン浴を用いて電気めっきすることができる。
基材2の銅板をアルカリ電解脱脂、酸洗した後、その上に以下の条件でニッケルめっき、銅めっき、錫めっきを順に施し、リフロー処理することで、下地層31、銅錫合金層(中間合金層)32、第一錫層33を形成した。
<ニッケルめっき条件>
・めっき浴組成
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:5g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm
<銅めっき条件>
・めっき浴組成
硫酸銅五水和物:200g/L
硫酸:50g/L
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm
<錫めっき条件>
・めっき浴組成
メタンスルホン酸錫:200g/L
メタンスルホン酸:100g/L
光沢剤
・浴温:25℃
・電流密度:5A/dm
このようにして接点特性皮膜30を形成した素材を図2に示すフープ材に打抜いて、脱脂してプレス油を除去した後、図2の接点予定部25をマスクし、防食皮膜を形成するための前処理として脱脂処理、活性化処理、ニッケルストライクめっきの3工程の処理を順に行った。
脱脂処理としては、ユケン工業株式会社製のパクナエレクターF-166を用いて標準条件にて建浴した脱脂液により30秒間電解脱脂を行った。
活性化処理としては、5%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いて試料を20秒間洗浄した。
ニッケルストライクめっきは、後述のめっき条件で40秒間めっきした。
これら三つの処理の間には水洗処理を施した。
また、比較のため、アルカリ電解脱脂処理、活性化処理の後、ニッケルストライクめっきを施さなかったものも作製した。
得られた試料について、電解めっき処理にて平均厚み1μmのニッケルめっきを施し、目視による外観観察及びクロスカット試験を行ったところ、ニッケルストライクめっきを施さなかった試料は、クロスカット試験により、めっきの剥がれが生じた。ニッケルストライクめっきを施したものはめっきの剥がれやニッケルめっきの異常析出は認められなかった。
図5は、このようにしてニッケルストライクめっきを施して作製された試料の断面の電子顕微鏡像である。
なお、ニッケルストライクめっきの前処理である脱脂処理及び活性化処理を過剰に行った場合、表層の錫が溶解して中間合金層の一部が露出し、そこにニッケルが異常析出して密着性を悪化させる場合がある。そのため、脱脂処理及び活性化処理は中間合金層を露出させない条件で行う必要がある。図6は、中間合金層を露出させた上でニッケルストライクめっきを施したことにより、ニッケルめっきが異常析出した例であり、その異常析出部の電子顕微鏡像である。
以上の結果を踏まえ、中間合金層32として銅錫合金層、第一錫層33を形成した試料(前述の(1))について、マスクをして、アルカリ電解脱脂、アルカリ活性化処理して、ニッケルストライクめっきを施した。その後、ニッケルめっき、亜鉛ニッケル合金めっき、錫めっきを順に実施し、マスクを剥離した後、30℃〜190℃の温度で1時間〜36時間の範囲で熱処理をして亜鉛ニッケル合金めっき層から亜鉛を表面へ拡散させ、金属亜鉛層44を形成することにより、接点予定部25を除く部分に、防食皮膜用下地層41、亜鉛ニッケル合金層42、第二錫層43、金属亜鉛層44を有する防食皮膜40を形成した端子材を得た(試料1〜9)。
比較例として、第一錫層33上の酸化膜除去処理である、アルカリ電解脱脂、ニッケルストライクめっきをそれぞれ行わずに防食皮膜40を形成したものを作製した(試料17,18)。
また、接点特性皮膜30として、接点特性皮膜用下地層31を介して、ニッケルと錫との金属間化合物を有するニッケル層の上に銅と錫との金属間化合物層が積層した構造の中間合金層32を形成したもの(前述の(2))とし、その接点特性皮膜30に、同様にアルカリ電解脱脂、アルカリ活性化処理して、ニッケルストライクめっきを施した後、防食皮膜40を形成した端子材も作製した(試料10,11)
接点特性皮膜30として、接点特性皮膜用下地層31を介して、ニッケルと錫との金属間化合物を有するニッケル層からなる中間合金層32を形成したもの(前述の(3))とし、その接点特性皮膜30に、同様にアルカリ電解脱脂、アルカリ活性化処理して、ニッケルストライクめっきを施した後、防食皮膜40を形成した端子材も作製した(試料12)。
基材2の上に、全面に防食皮膜40のみを形成したもの(試料22)、防食皮膜40を形成せずに、基材2の上の全面が接点特性皮膜30の第一錫層33となっているもの(試料19〜21)も作製した。
また、試料1〜9は防食皮膜用下地層としてのニッケルめっきを施したが、試料13,14は、試料1〜9と同じ接点特性用皮膜30の上に防食皮膜用下地層を形成しないで、亜鉛ニッケル合金層42、第二錫層43、金属亜鉛層44からなる防食皮膜40を形成した。
試料15は、試料10,11と同じ接点特性用皮膜30の上に防食皮膜用下地層を形成しないで、亜鉛ニッケル合金層42、第二錫層43、金属亜鉛層44からなる防食皮膜40を形成した。また、試料16は、試料12と同じ接点特性用皮膜30の上に防食皮膜用下地層を形成しないで、亜鉛ニッケル合金層42、第二錫層43、金属亜鉛層44からなる防食皮膜40を形成した。
各めっきの条件は以下のとおりとし、亜鉛ニッケル合金めっき層のニッケル含有率は硫酸ニッケル六水和物と硫酸亜鉛七水和物の比率を変量して調整した。下記の亜鉛ニッケル合金めっき条件は、ニッケル含有率が15質量%となる例である。また、第一錫層33と第二錫層43とは共に、下記の錫めっき条件により形成した。
<ストライクニッケルめっき条件>
・めっき浴組成
塩化ニッケル:300g/L
塩酸:100ml/L
・浴温:25℃
・電流密度:5A/dm
<ニッケルめっき条件>
・めっき浴組成
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:5g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm
<亜鉛ニッケル合金めっき条件>
・めっき浴組成
硫酸亜鉛七水和物:75g/L
硫酸ニッケル六水和物:180g/L
硫酸ナトリウム:140g/L
・pH=2.0
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm
<錫めっき条件>
・めっき浴組成
メタンスルホン酸錫:200g/L
メタンスルホン酸:100g/L
光沢剤
・浴温:25℃
・電流密度:5A/dm
得られた試料について、断面を観察するとともに、接点特性用皮膜30の第一錫層33と防食皮膜40との間のニッケル錫合金の有無、亜鉛ニッケル合金層42中のニッケル含有率、第二錫層43中の亜鉛濃度、金属亜鉛層44中の厚みと亜鉛濃度、金属亜鉛層44の被覆率をそれぞれ測定した。
断面観察は、セイコーインスツル株式会社製の集束イオンビーム装置:FIB(型番:SMI3050TB)を用いてめっきの断面加工を行った後、SIM像の測定を行った。
ニッケル錫合金の有無およびその同定は、セイコーインスツル株式会社製の集束イオンビーム装置:FIB(型番:SMI3050TB)を用いて、試料を100nm以下に薄化した断面の試料を作製し、この試料をFEI社製の走査透過型電子顕微鏡:STEM(型番:Titan G2 ChemiSTEM)を用いて、加速電圧200kVで観察を行い、STEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置:EDSを用いて測定した。
第二錫層43中の亜鉛濃度は日本電子株式会社製の電子線マイクロアナライザー:EPMA(型番JXA−8530F)を用いて、加速電圧6.5V、ビーム径φ30μmとし、試料表面を測定した。
亜鉛ニッケル合金層42のニッケル含有率は、第二錫層43のみを形成せず、最表面が亜鉛ニッケル合金層42であるサンプルに日本電子株式会社製の電子線マイクロアナライザー:EPMA(型番JXA−8530F)を用いて、加速電圧6.5V、ビーム径φ30μmとし、試料表面を測定した。
金属亜鉛層44の厚みと亜鉛濃度については、各試料について、アルバック・ファイ株式会社製のXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析装置:ULVAC PHI model−5600LSを用い、試料表面をアルゴンイオンでエッチングしながらXPS分析により測定した。その分析条件は以下の通りである。
X線源:Standard MgKα 350W
パスエネルギー:187.85eV(Survey)、58.70eV(Narrow)
測定間隔:0.8eV/step(Survey)、0.125eV(Narrow

試料面に対する光電子取り出し角:45deg
分析エリア:約800μmφ
厚みについては、あらかじめ同機種で測定したSiOのエッチングレートを用いて、測定に要した時間から「SiO換算膜厚」を算出した。
SiOのエッチングレートの算出方法は、20nmの厚みであるSiO膜を2.8×3.5mmの長方形領域でアルゴンイオンでエッチングを行い20nmをエッチングするのに要した時間で割ることによって算出した。上記分析装置の場合には8分要したためエッチングレートは2.5nm/minである。XPSは深さ分解能が約0.5nmと優れるが、Arイオンビームでエッチングされる時間は各材料により異なるため、膜厚そのものの数値を得るためには、膜厚が既知かつ平坦な試料を調達し、エッチングレートを算出しなければならない。上記は容易でないため、膜厚が既知であるSiO膜にて算出したエッチングレートで規定し、エッチングに要した時間から算出される「SiO換算膜厚」を利用した。このため「SiO換算膜厚」は実際の酸化物の膜厚と異なる点に注意が必要である。SiO換算エッチングレートで膜厚を規定すると、実際の膜厚は不明であっても、一義的であるため定量的に膜厚を評価することができる。
なお、このSiO換算膜厚は金属亜鉛濃度が所定値以上となっている部分の膜厚であり、金属亜鉛の濃度を部分的に測定できる場合でも、その層が極めて薄く分散している場合にはSiO換算膜厚としては測定できない場合がある。
また、得られた試料の接点特性皮膜30と防食皮膜40との密着性を調べるため、防食皮膜40が形成されている心線接触部についてJISK5600−5−6に記載のクロスカット法にて試験を行い、皮膜が剥がれなかったものを「○」、剥がれたものを「×」とした。剥がれたものに対しては、その他測定は行わなかった。
これらの測定結果を表1に示す。表1中、金属亜鉛層44のSiO換算膜厚が「−」とされている試料1〜3は、膜厚としては測定できなかったことを示している。また、試料17,18は、クロスカット試験で剥離が生じたため、防食皮膜についての測定は実施しなかった。
試料19〜21は基材の接点特性用皮膜30の上に防食皮膜を形成していないため、また、試料22は接点特性皮膜を形成せずに防食皮膜40のみを形成したため、クロスカット試験を実施しなかった。
Figure 0006930327
接点部の耐ウィスカー性を確認するため、試料19〜22について、1cm×1cmの正方形の試料を7個ずつ切り出して、JIS C 60068‐1に準拠して55℃、85%RHの高温高湿環境に1000時間放置し、ウィスカー発生の有無を観察した。観察には走査型電子顕微鏡:SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番SU8000)を用いて加速電圧3.0kVの条件で接点予定部のエリアを観察した。ウィスカーとしては、JIS C 60068‐1より、アスペクト比(長さ/直径)が2以上かつ、長さが10μm以上のものとする。ウィスカーが認められたものはその最大長さを記載し、認められかなったものは「〇」とした。
また、JEITA RC−5241「電子機器コネクタのウィスカ試験方法」の荷重試験に準拠し、球圧子法で、荷重を2N、試験時間を120時間としてウィスカーの有無を観察した。ウィスカーが認められたものを「×」、認められなかったものを「〇」とした。
得られた試料を090型端子に成形し、純アルミニウム線をかしめた。この純アルミニウム線をかしめた端子を高温高湿環境、腐食環境、高熱環境にそれぞれ放置した後に、アルミニウム線と端子間の接触抵抗、または、端子同士を嵌合した際の端子間の接触抵抗を測定した。
<高温高湿環境試験>
純アルミニウム線をかしめた090型のメス端子を85℃、85%RHに96時間放置した。その後、アルミニウム線と端子間の接触抵抗を四端子法により測定した。電流値は10mAとした。
<腐食環境放置試験>
純アルミニウム線をかしめた090型のメス端子を23℃の5%塩化ナトリウム水溶液(塩水)に24時間浸漬後、85℃、85%RHの高温高湿環境下に24時間放置し、その後、アルミニウム線と端子間の接触抵抗を四端子法により測定した。電流値は10mAとした。
<高熱環境放置試験>
純アルミニウム線をかしめた端子を150℃に500時間放置した。その後、090型の錫めっきを実施したオス端子を嵌合し端子間の接触抵抗を四端子法により測定した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0006930327
これらの結果から、接点部となる接点特性皮膜30の部分は、リフロー錫が耐ウィスカー性および耐高熱環境に対して優れていた。耐ウィスカー性については、亜鉛がなく、リフローによって銅錫合金層が均一に形成されて、めっき内の歪みが解放されたためであり、耐高熱環境については、リフローによって錫めっき表面が平滑になり、単位面積当たりの錫酸化膜が小さくなったためである。
また、アルミニウム製心線が接触する防食皮膜40の部分には、表面に金属亜鉛層が形成されていることで、優れた防食性を有することがわかる。そのうち、金属亜鉛層の亜鉛濃度が5at%以上40at%以下でSiO換算厚みが1nm以上10nm以下である試料4〜16は、いずれも腐食環境(塩水)放置試験後の接触抵抗が試料1〜3よりも低かった。
図7は試料10の断面の顕微鏡像であり、図8は試料13の断面の顕微鏡像である。
これに対して、比較例の試料22は、防食皮膜40のみからなり、表面に金属亜鉛層を有していたため、腐食環境放置試験で接触抵抗が増大した。また、試料1〜3は、全面が接点特性皮膜のリフロー錫(第一錫層)であり、表面金属亜鉛層を有していなかったため、腐食環境放置試験で激しい腐食が認められ、接触抵抗が著しく増加した。
1 防食端子材
2 基材
10 防食端子
11 接続部
12 電線
12a 心線(アルミニウム製心線)
12b 被覆部
13 心線圧着部
14 被覆圧着部
25 接点予定部
26 心線接触予定部
30 接点特性皮膜
31 接点特性皮膜用下地層
32 中間合金層
33 第一錫層
34 酸化物層
40 防食皮膜
41 防食皮膜用下地層
42 亜鉛ニッケル合金層
43 第二錫層
44 金属亜鉛層
45 酸化物層

Claims (10)

  1. 銅又は銅合金からなる基材と、該基材の上に形成された接点特性皮膜と、該接点特性皮膜の一部の上に形成された防食皮膜とを有し、
    前記接点特性皮膜は、表面にリフロー処理された錫又は錫合金からなる第一錫層が形成されており、
    前記防食皮膜は、前記接点特性皮膜の上に、亜鉛及びニッケルを含有する亜鉛ニッケル合金層と、該亜鉛ニッケル合金層の上に形成された錫又は錫合金からなる第二錫層と、該第二錫層の上に形成された金属亜鉛層とがこの順に積層されており、
    前記第一錫層と前記防食皮膜との間にニッケル錫合金が介在していることを特徴とする防食端子材。
  2. 前記金属亜鉛層は端子として成形された後の表面に対する被覆率が30%以上80%以下であることを特徴とする請求項1記載の防食端子材。
  3. 前記金属亜鉛層は、亜鉛濃度が5at%以上40at%以下で厚みがSiO換算で1nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の防食端子材。
  4. 前記亜鉛ニッケル合金層は、ニッケル含有率が5質量%以上35質量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の防食端子材。
  5. 前記第二錫層は亜鉛を0.4質量%以上15質量%以下含有する錫合金からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の防食端子材。
  6. 前記基材と前記第一錫層との間、又は前記第一錫層と前記亜鉛ニッケル合金層との間の少なくともいずれかに、ニッケル又はニッケル合金からなる下地層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の防食端子材。
  7. 帯板状に形成されるとともに、その長さ方向に沿うキャリア部に、前記防食皮膜及び前記接点特性皮膜を有する端子用部材が前記キャリア部の長さ方向に間隔をおいて複数連結されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の防食端子材。
  8. 請求項1から7のいずれか一項記載の防食端子材からなることを特徴とする防食端子。
  9. 請求項8記載の防食端子がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる電線の端末に圧着されていることを特徴とする電線端末部構造。
  10. 請求項1から5のいずれか一項に記載の防食端子材の製造方法であって、
    前記基材の上に錫めっきを施した後に加熱して急冷するリフロー処理することにより、前記第一錫層を表面に有する前記接点特性皮膜を形成し、該接点特性皮膜の第一錫層の表面を脱脂及び活性化処理し、その後、該第一錫層の上にニッケルストライクめっきを施した後、前記防食皮膜を形成することを特徴とする防食端子材の製造方法。
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