JP6743556B2 - 錫めっき付銅端子材の製造方法 - Google Patents

錫めっき付銅端子材の製造方法 Download PDF

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本発明は、アルミニウム線材からなる電線の端末に圧着される端子として用いられ、銅又は銅合金基材の表面に錫又は錫合金からなるめっきを施した錫めっき付銅端子材の製造方法に関する。
従来、銅又は銅合金で構成されている電線の端末部に、銅又は銅合金で構成された端子を圧着し、この端子を別の機器の端子に接続することにより、その電線を上記別の機器に接続することが行われている。また、電線の軽量化等のために、電線を、銅又は銅合金に代えて、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成している場合がある。
例えば、特許文献1には、アルミニウム合金からなる自動車ワイヤーハーネス用アルミ電線が開示されている。
ところで、電線(導線)をアルミニウム又はアルミニウム合金で構成し、端子を銅又は銅合金で構成すると、水が圧着部(端子と電線との係合部)に入ったときに、異金属の電位差によるガルバニック電食が発生することがある。そして、その電線の腐食に伴い、圧着部での電気抵抗値の上昇や固着力(端子と電線との結合力)の低下が生ずるおそれがある。
この腐食の防止法としては、例えば特許文献2や特許文献3記載のものがある。
特許文献2には、鉄または鉄合金からなる基材層と、最も外側に形成された錫層との間に、基材層に対して犠牲防食作用を有する金属からなる防食層が形成された端子が開示されている。防食層としては亜鉛または亜鉛合金からなる層が記載されている。
特許文献3には、コネクタ用電気接点材料として、金属材料よりなる基材と、基材上に形成された合金層と、合金層の表面に形成された導電性皮膜層とを有しており、その合金層が、Snを必須に含有し、さらにCu、Zn、Co、Ni及びPdから選択される1種または2種以上の添加元素Mを含んでおり、導電性皮膜層4は、Sn32(OH)2の水酸化酸化物を含んでいるものが開示されている。
また、SnにZnを添加した例としては、特許文献4に、銅又は銅合金の表面に下地Niめっき層、中間Sn−Cuめっき層及び表面Snめっき層を順に有するSnめっき材であって、下地Niめっき層はNi又はNi合金で構成され、中間Sn−Cuめっき層は少なくとも表面Snめっき層に接する側にSn−Cu−Zn合金層が形成されたSn−Cu系合金で構成され、表面Snめっき層はZnを5〜1000質量ppm含有するSn合金で構成され、最表面にZn濃度が0.1質量%を超えて10質量%までのZn高濃度層をさらに有するSnめっき材が開示されている。
特開2004−134212号公報 特開2013−218866号公報 特開2015−133306号公報 特開2008−285729号公報
しかしながら、特許文献2のように下地に亜鉛または亜鉛合金からなる防食層を設けた場合、防食層上にSnめっきを実施する際にSn置換が生じて防食層とSnめっきの密着性が悪くなるという問題があった。特許文献3のようにSnSn(OH)2の水酸化酸化物層を設けた場合も、腐食環境や加熱環境にさらされた際に速やかに水酸化酸化物層に欠損が生じるため持続性が低いという問題があった。さらに特許文献4のようにSn−Cu合金層上にZn−Sn合金を積層し、再表層にZn高濃度層をもつものはSn−Zn合金めっきの生産性が悪く、Sn−Cu合金層のCuが表層に露出した場合にアルミニウム線に対する防食効果がなくなるという問題があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、アルミニウム線材からなる電線の端末に圧着される端子として銅又は銅合金基材を用いて電食の生じない錫めっき付端子材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、アルミニウム線材からなる電線の端末に圧着される端子用の錫めっき付銅端子材の製造方法であって、銅又は銅合金からなる基材の上に、亜鉛含有率が3質量%以上35質量%以下の錫亜鉛合金層を0.1μm以上5.0μm以下の厚さで形成する錫亜鉛合金層形成工程と、前記錫亜鉛合金層の上に錫めっきを施して錫層を形成する錫めっき工程と、前記錫めっき工程の後に、40℃以上160℃以下に30分以上保持して、前記錫亜鉛合金層の亜鉛を前記錫層に拡散させる拡散処理工程と、を有する。
この錫めっき付銅端子材の製造方法においては、錫めっき工程の前に錫亜鉛合金層を形成することにより、錫めっき時の置換反応を抑制し、錫層の密着性を向上させることができる。そして、錫層の下に形成される錫亜鉛合金層中の金属亜鉛が錫層中に拡散するため、表面の錫層に、錫よりも腐食電位がアルミニウムと近い金属亜鉛が含有され、アルミニウム製電線との接触による電食の発生を抑えることができる。
前述した錫亜鉛合金層中の金属亜鉛の拡散は、常温においても生じるが、この温度条件で拡散処理を施すことにより、亜鉛の拡散を速やかに生じさせることができる。40℃未満では亜鉛を短時間で拡散させる効果に乏しい。40℃以上の温度に30分以上曝せば、錫層の表面に金属亜鉛の濃縮層を確実に形成することができる。160℃を超えると、逆に錫が錫亜鉛合金層側に拡散し、亜鉛の拡散を阻害する。さらに190℃を超えると錫層が溶融し、錫亜鉛合金層が溶融錫をはじいて、錫はじき箇所が発生するため好ましくない。
この場合、錫亜鉛合金層中の亜鉛含有率が35質量%を超えると、錫めっき時に置換反応が発生し、錫層の密着性が著しく低下するとともに、亜鉛が過剰に拡散して接触抵抗が悪化する。亜鉛含有率が3質量%未満では亜鉛が十分に拡散せず、表面の腐食電位を卑化させる効果が得られない。
また、錫亜鉛合金層の厚みが0.1μm未満では、錫層表面の腐食電位を卑化させる効果がなく、5.0μmを超えると端子へのとプレス加工時に割れが発生するおそれがある。
なお、基材と表面の錫層との間に、アルミニウムと腐食電位が比較的近い錫亜鉛合金層が形成されているので、錫層が消失して錫亜鉛合金層が露出したとしても、電食の発生を抑えることができる。
本発明の錫めっき付銅端子材の製造方法において、前記錫亜鉛合金層形成工程の前に、前記基材の表面にニッケル含有率が80質量%以上のニッケル又はニッケル合金からなる下地層を0.1μm以上5.0μm以下の厚さで形成する下地層形成工程を有するとよい。
基材にニッケル又はニッケル合金からなる下地層を設けた上で錫亜鉛合金層を形成することにより、錫亜鉛合金層の密着性が高められる。下地層の厚みが0.1μm未満では錫亜鉛合金層の密着性を高める効果に乏しく、5.0μmを超える厚さで成膜しても効果は飽和する。その下地層中のニッケル含有率は80質量%未満では密着性を高める効果に乏しい。
また、この下地層を設けることにより、銅又は銅合金からなる基材から錫亜鉛合金層や錫層への銅の拡散を防止する効果もある。
本発明の錫めっき付き銅端子材の製造方法において、前記基材は、予めプレス加工によりフープ材に形成されており、前記フープ材は、帯板状に形成されるとともに、その長さ方向に沿うキャリア部に、端子に成形されるべき複数の端子用部材が前記キャリア部の長さ方向に間隔をおいて連結されているとよい。
予め端子用部材を加工しておくことにより、基材の端面も錫亜鉛合金層及び錫層が形成され、端面も含めて優れた防食効果を発揮することができる。
本発明の錫めっき付き銅端子材の製造方法によれば、錫めっき工程の前に、錫亜鉛合金層を形成することにより、錫めっき時の置換反応を抑制し、錫層の密着性を向上させることができる。さらに、錫層中に金属亜鉛が拡散することにより、アルミニウム製電線と接触による電食の発生を抑えることができる。しかも、錫層の下の錫亜鉛合金層からの拡散により錫層中の金属亜鉛を高濃度に維持することができ、長期的に耐食性に優れた端子を形成することができる。
本発明に係る錫めっき付銅合金端子材の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。 本発明の製造方法により製造される錫めっき付銅合金端子材の実施形態を模式的に示す断面図である。 実施形態の端子材の平面図である。 実施形態の端子材が適用される端子の例を示す斜視図である。 図4の端子を圧着した電線の端末部を示す正面図である。 試料8について錫層を形成する前の断面の顕微鏡写真である。 試料8について錫層を形成し、拡散処理をした後の断面の顕微鏡写真である。
本発明の実施形態の錫めっき付銅端子材の製造方法を説明する。
本実施形態の製造方法により形成される錫めっき付銅端子材1について説明しておくと、この錫めっき付銅端子材1は、図3に全体を示したように、複数の端子を成形するための帯板状のフープ材であり、長さ方向に沿うキャリア部21に、端子として成形すべき複数の端子用部材22がキャリア部21の長さ方向に間隔をおいて配置され、各端子用部材22が細幅の連結部23を介してキャリア部21に連結されている。各端子用部材22は例えば図4に示すような端子10の形状に成形され、連結部23から切断されることにより、端子10として完成する。
この端子10は、図4の例ではメス端子を示しており、先端から、オス端子(図示略)が嵌合される接続部11、電線12の露出した心線12aがかしめられる心線かしめ部13、電線12の被覆部12bがかしめられる被覆かしめ部14がこの順で一体に形成されている。
図5は電線12に端子10をかしめた端末部構造を示しており、心線かしめ部13が電線12の心線12aに直接接触することになる。
そして、この錫めっき付銅端子材1は、図2に模式的に示したように、銅又は銅合金からなる基材2上にニッケル又はニッケル合金からなる下地層3、錫亜鉛合金層4、錫層5がこの順に積層されている。
次に、この錫めっき付銅端子材1の製造方法について説明する。
基材2は、銅又は銅合金からなるものであれば、特に、その組成が限定されるものではない。
そして、この基材2をプレス加工等によって図3に示す形状のフープ材に加工し(基材加工工程)、このフープ材にニッケル又はニッケル合金からなる下地層3を形成するための下地層形成工程、錫亜鉛合金層4を形成するための錫亜鉛合金層形成工程、錫又は錫合金からなる錫層5を形成する錫めっき工程、錫層5を形成した後、所定の温度に一定時間保持することにより錫亜鉛合金層4の亜鉛を錫層5に拡散させる拡散処理工程をこの順序で施す。
以下、図1のフローチャートにしたがって個々に説明する。
<基材加工工程>
この板材に裁断、穴明け等の加工を施すことにより、図3に示すような、キャリア部21に複数の端子用部材22を連結部23を介して連結されてなるフープ材に成形する。プレス加工後、脱脂、酸洗等の処理をすることによって表面を清浄にする。
<下地層形成工程>
基材加工工程後のフープ材に下地層3を形成する。
この下地層3を形成するためのニッケル又はニッケル合金めっきは緻密なニッケル主体の膜が得られるものであれば特に限定されず、公知のワット浴やスルファミン酸浴、クエン酸浴などを用いて電気めっきにより形成することができる。ニッケル合金めっきとしてはニッケルタングステン(Ni−W)合金、ニッケルリン(Ni−P)合金、ニッケルコバルト(Ni−Co)合金、ニッケルクロム(Ni−Cr)合金、ニッケル鉄(Ni−Fe)合金、ニッケル亜鉛(Ni−Zn)合金、ニッケルボロン(Ni−B)合金などを利用することができる。
端子10へのプレス曲げ性と銅に対するバリア性を勘案すると、スルファミン酸浴から得られる純ニッケルめっきが望ましい。
このようにして形成される下地層3は、厚さが0.1μm以上5.0μm以下で、ニッケル含有率は80質量%以上である。この下地層3は、基材2から亜鉛ニッケル合金層4や錫層5への銅の拡散を防止する機能があり、その厚みが0.1μm未満では銅の拡散を防止する効果に乏しく、5.0μmを超えるとプレス加工時に割れが生じ易い。下地層3の厚さは、0.3μm以上2.0μm以下がより好ましい。
また、そのニッケル含有率は80質量%未満では銅が亜鉛ニッケル合金層4や錫層5へ拡散することを防止する効果が小さい。このニッケル含有率は90質量%以上とするのがより好ましい。
<錫亜鉛合金層形成工程>
錫亜鉛合金層4を形成するための錫亜鉛合金めっきは、緻密な膜を所望の組成で得られるものであれば特に限定されず、公知のシアン浴、スルホコハク酸浴、グルコン酸浴、クエン酸浴、ピロリン酸浴、ほうフッ化物浴を用いることが可能である。めっきに代えて、スパッタリング法や蒸着法で成膜することも可能である。
この工程により形成される錫亜鉛合金層4は、亜鉛含有率が3質量%以上35質量%以下で、厚みが0.1μm以上5.0μm以下である。
この錫亜鉛合金層4中の亜鉛含有率が35質量%を超えると、錫層5を形成するための後述する錫めっき時に置換反応が発生し、錫めっき(錫層)の密着性が著しく低下する。また、この錫亜鉛合金層4中の亜鉛は、錫層5中に拡散して、表面の腐食電位を卑化させる効果があるが、亜鉛含有率が35質量%を超えると、亜鉛が過剰に拡散して接触抵抗が悪化する。亜鉛含有率が3質量%未満では亜鉛が十分に拡散せず、表面の腐食電位を卑化させる効果が得られない。この錫亜鉛合金層4中の亜鉛含有率は、5質量%以上15質量%以下とするのがより好ましい。
なお、錫亜鉛合金層4中の亜鉛は、後述の拡散処理により大半が錫層5へ拡散するため、拡散処理後は錫亜鉛合金層4中の亜鉛濃度は大きく低下する。
また、錫亜鉛合金層4の厚みが0.1μm未満では、錫層5表面の腐食電位を卑化させる効果がなく、5.0μmを超えると端子へのとプレス加工時に割れが発生するおそれがある。
<錫めっき工程>
錫層5を形成するための錫又は錫合金めっきは、公知の方法により行うことができるが、例えば有機酸浴(例えばフェノールスルホン酸浴、アルカンスルホン酸浴又はアルカノールスルホン酸浴)、硼フッ酸浴、ハロゲン浴、硫酸浴、ピロリン酸浴等の酸性浴、或いはカリウム浴やナトリウム浴等のアルカリ浴を用いて電気めっきすることができる。
なお、高速でのめっき皮膜形成と、めっき皮膜の緻密さ及び亜鉛の拡散し易さを勘案すると、酸性の有機酸浴や硫酸浴を用いるのが好ましい。
この工程により形成される錫層5は、厚み0.1μm以上10μm以下が好ましく、薄過ぎるとはんだ濡れ性の低下および、接触抵抗の低下を招くおそれがあり、厚過ぎると、表面の動摩擦係数の増大を招き、コネクタ等での使用時の着脱抵抗が大きくなるおそれがある。
<拡散処理工程>
この拡散処理工程は、素材の表面温度が40℃以上160℃以下となる温度で30分以上保持する。この拡散処理により、錫亜鉛合金層4中の亜鉛が錫層5中に拡散する。亜鉛の拡散は速やかに起こるため、40℃以上の温度に30分以上晒すことでよい。ただし、160℃を超えると逆に錫が錫亜鉛合金層4側に拡散し亜鉛の拡散を阻害する、さらに190℃を超えると錫亜鉛合金は溶融錫をはじき、錫層5に錫はじき箇所を形成するため、190℃を超える温度には加熱しない。
このようにして製造された錫めっき付銅端子材1は、全体としては基材2の上にニッケル又はニッケル合金からなる下地層3、錫亜鉛合金層4、錫層5がこの順に積層されている。
そして、プレス加工等によりフープ材のまま図4に示す端子10の形状に加工され、連結部23が切断されることにより、端子10に形成される。
図5は電線12に端子10をかしめた端末部構造を示しており、心線かしめ部13が電線12の心線12aに直接接触することになる。
この端子10は、表面の錫層5に、錫よりもアルミニウムと腐食電位が近い亜鉛が含有されていることから、アルミニウム製心線12aに圧着された状態であっても、電食の発生を防止することができる。この場合、図3のフープ材の状態でめっき処理し、熱処理したことから、端子10の端面も基材2が露出していないので、優れた防食効果を発揮することができる。
しかも、錫層5の下に錫亜鉛合金層4が形成されており、その亜鉛が錫層5中に拡散してくるので、錫層5中の亜鉛が高濃度に維持される。また、万一、摩耗等により錫層5の全部又は一部が消失した場合でも、その下の錫亜鉛合金層4はアルミニウムと腐食電位が近いので、電食の発生を抑えることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態では、錫めっき工程の後に拡散処理工程を設けたが、この拡散処理工程は必ずしも必要ではなく、拡散処理工程を経ないで端子に加工してもよい。前述の拡散処理工程を経ると、亜鉛が速やかに拡散して好ましいが、拡散処理工程を経ないでも、例えば10℃以上の常温に放置しておくことにより、錫亜鉛合金層4から金属亜鉛を錫層5に拡散させることができる。
また、電線12は導線が露出したままの裸電線、導線を心線として周囲を絶縁層で被覆した被覆電線のいずれにも適用することができる。本発明では、裸電線、被覆電線の心線のいずれをも含めて電線と称す。
基材の銅板を電解脱脂、酸洗した後、下地層としてのニッケルめっき、錫亜鉛合金めっき、錫めっきを順に施した。各めっきの条件は以下のとおりとした。
また、これらのめっき処理により得られる下地層、錫亜鉛合金は表1に示す厚さとした。また、試料1,2,11〜13は下地層を形成せず、試料10は、錫亜鉛合金めっきを実施しなかった。
<ニッケルめっき条件>
・めっき浴組成
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:5g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:45℃
・電流密度:5A/dm
<錫亜鉛合金めっき条件>
・めっき浴組成
硫酸錫(II):40g/L
硫酸亜鉛七水和物:5g/L
クエン酸三ナトリウム:65g/L
非イオン性界面活性剤:1g/L
・pH=5.0
・浴温:25℃
・電流密度:3A/dm
この錫亜鉛合金めっき条件は、亜鉛含有率が15質量%となる例であり、錫亜鉛合金層中の亜鉛含有率は、めっき浴中の錫と亜鉛の濃度比を調整することにより、表1に示す含有率とした。
<錫めっき条件>
・めっき浴組成
メタンスルホン酸錫:200g/L
メタンスルホン酸:100g/L
光沢剤
・浴温:25℃
・電流密度:5A/dm
なお、錫亜鉛合金層中の亜鉛含有率は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)日本電子社製JXA−8530Fを用いて、所定のめっき条件にて錫亜鉛合金めっきのみ成膜した試料を表面から加速電圧6.5kVで観察を行い、φ30μmのビーム径にて測定した。
そして、下地層、錫亜鉛合金層、錫層を順に形成しためっき層付き銅板のうち試料4〜9は表1に示す温度条件で拡散処理を施して試料とした。
得られた試料について、腐食電流、曲げ加工性、界面ボイドの有無、接触抵抗について測定、評価を行った。
<腐食電流>
腐食電流については、直径2mmの露出部を残し樹脂で被覆した純アルミニウム線と直径6mmの露出部を残し樹脂で被覆した試料とを距離1mmにて露出部を対向させて設置し、23℃の5質量%食塩水中でアルミニウム線と試料との間に流れる腐食電流を測定した。腐食電流測定には北斗電工株式会社製無抵抗電流計HA1510を用い、試料を150℃で1時間加熱した後と加熱前との腐食電流を比較した。1000分間の平均電流値を比較した。
<曲げ加工性>
曲げ加工性については、試験片を圧延方向が長手となるように切出し、JISH3110に規定されるW曲げ試験治具を用い、圧延方向に対して直角方向となるように9.8×10Nの荷重で曲げ加工を施した。その後、実体顕微鏡にて観察を行った。曲げ加工性評価は、試験後の曲げ加工部に明確なクラックが認められないレベルを「優」と評価し、発生したクラックにより銅合金母材の露出が認められないレベルを「良」と評価し、発生したクラックにより銅合金母材が露出しているレベルを「不良」と評価した。
<接触抵抗>
接触抵抗の測定方法はJCBA−T323に準拠し、4端子接触抵抗試験機(山崎精機研究所製:CRS−113−AU)を用い、摺動式(1mm)で荷重0.98N時の接触抵抗を測定した。平板試料のめっき表面に対して測定を実施した。
<界面ボイド>
錫めっき時の錫置換による界面ボイドの有無は、サンプルをクロスセクションポリッシャーにて断面加工し、錫亜鉛合金層と錫層との界面付近を電解放射型走査電子顕微鏡にて観察し、直径0.3μmを超える明確なボイドが認められたものを有とし、明確なボイドがないものを無とした。
これらの結果を表2に示す。
表2の結果から、亜鉛含有率が3質量%以上35質量%以下の錫亜鉛合金層を厚み0.1μm以上5.0μm以下で形成した後に錫めっきした試料1〜9は、錫置換に起因するボイドの発生はごくわずかか、全く認められず、優れた電食防止効果を有し、曲げ加工性も良好であることがわかる。
また、基材と錫亜鉛合金層との間に、厚みが0.1μm以上5.0μm以下で、ニッケル含有率が80質量%以上の下地層を形成した試料5〜9は、下地層を有しない試料1,2より優れた電食防止効果を有しており、その中でも、拡散処理として40℃以上160℃以下の温度に30分以上保持した試料7,8,9は、曲げ加工性が良好で、接触抵抗も他より低く、特に優れた結果となっている。
これに対して、比較例の試料10は、錫亜鉛合金層を形成しなかったため、高い腐食電流であった。また、試料11は、錫亜鉛合金層の亜鉛含有率が高かったため、界面ボイドが発生して錫層の密着性が低下(曲げ加工性が悪化)し、接触抵抗が増大した。試料12は、錫亜鉛合金層の亜鉛含有率が3質量%未満であったため、亜鉛の拡散が不十分で表面の腐食電流が高く、曲げ加工性も悪化した。試料13は、錫亜鉛合金層が6μmと厚かったため、曲げ加工性が悪化した。試料14は、錫亜鉛合金層が0.07μmと薄すぎたため、亜鉛の拡散が不十分で腐食電流が高くなった。
なお、図6は、試料8について、下地層の上に錫亜鉛合金層を形成した後の断面の顕微鏡写真であり、図7は、その錫亜鉛合金層上に錫層を形成し、拡散処理を施した後の断面の顕微鏡写真である。この図7で錫層中に白く斑点状に見えるのが亜鉛であり、錫亜鉛合金層中の亜鉛が減少し、錫層の厚さ方向にわたって拡散している。
1 錫めっき付銅端子材
2 基材
3 下地層
4 錫亜鉛合金層
5 錫層
10 端子
11 接続部
12 電線
12a 心線
12b 被覆部
13 心線かしめ部
14 被覆かしめ部

Claims (3)

  1. アルミニウム線材からなる電線の端末に圧着される端子用の錫めっき付銅端子材の製造方法であって、
    銅又は銅合金からなる基材の上に、亜鉛含有率が3質量%以上35質量%以下の錫亜鉛合金層を0.1μm以上5.0μm以下の厚さで形成する錫亜鉛合金層形成工程と、
    前記錫亜鉛合金層の上に錫めっきを施して錫層を形成する錫めっき工程と、
    前記錫めっき工程の後に、40℃以上160℃以下に30分以上保持して、前記錫亜鉛合金層の亜鉛を前記錫層に拡散させる拡散処理工程と、を有することを特徴とする錫めっき付銅端子材の製造方法。
  2. 前記錫亜鉛合金層形成工程の前に、前記基材の表面にニッケル含有率が80質量%以上のニッケル又はニッケル合金からなる下地層を0.1μm以上5.0μm以下の厚さで形成する下地層形成工程を有することを特徴とする請求項1記載の錫めっき付銅端子材の製造方法。
  3. 前記基材は、予めプレス加工によりフープ材に形成されており、前記フープ材は、帯板状に形成されるとともに、その長さ方向に沿うキャリア部に、端子に成形されるべき複数の端子用部材が前記キャリア部の長さ方向に間隔をおいて連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の錫めっき付銅端子材の製造方法。
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