JP3283023B2 - リードフレーム材のアウターリード部、それを用いた半導体装置 - Google Patents

リードフレーム材のアウターリード部、それを用いた半導体装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリードフレーム材の
アウターリード部、それを用いた半導体装置に関し、更
に詳しくは、導電性基体の表面をPbを含まないSn系
めっき層で被覆したリードフレーム材のアウターリード
部であって、Pbを含まないので環境を害することがな
く、半田付け性(半田濡れ性)が優れ、半田との接合強
度が高く、またリフロー処理時にも偏肉を生ずることの
ないリードフレーム材のアウターリード部に関する。
【0002】
【従来の技術】Cu単体またはCu合金のような導電性
基体の表面を、Sn単体または半田に代表されるSn合
金のめっき層で被覆したリード材は、前記Cu単体また
はCu合金が備えている優れた導電性と機械的強度を有
し、かつ、Sn単体またはSn合金が備えている耐食性
と良好な半田付け性をも併有する高性能導体であって、
各種の端子,コネクタ,リードのような電気・電子機器
分野や電力ケーブルの分野などで多用されている。
【0003】また、半導体チップを回路基板に搭載する
場合には、半導体チップのアウターリード部に半田の溶
融めっきや電気めっきを行うことにより、当該アウター
リード部の半田付け性を向上せしめることが行われてい
る。ところで、上記したアウターリード部において、導
電性基体を被覆するめっき層がSn単体から成る場合に
は次のような問題がある。
【0004】まず、形成されたSnめっき層にはSnの
ウイスカー(針状単結晶)が発生し、これが短絡事故の
原因になることがあるということである。このような問
題は、Snめっき層にリフロー処理を行うことにより解
消することができる。しかしながら、Sn単体の融点
は、232℃と比較的高温であり、またSnめっき層が
例えば、半田組み立て工程で加わる熱などで酸化されや
すいため、Snめっき層はその半田付け性が劣化すると
いう問題がある。
【0005】また、コンデンサー用リード線の場合は、
溶接対象の例えばアルミ線との溶接部の肉盛りを行うた
め、めっき層の厚みを厚肉化しているが、そのようなリ
ード線に前記リフロー処理を行うと、処理後のSnめっ
き層の偏肉が大きくなるという問題がある。一方、めっ
き層をSn合金で形成すれば、Snめっき層の場合のよ
うなウイスカーは発生しない。このようなSn合金の代
表例は半田(Sn−Pb合金)であり、従来から広く用
いられている。
【0006】しかしながら、半田に含まれているPbは
人体に悪影響を与える虞があるとのことから、最近で
は、その優れた性質を備えているにもかかわらず使用が
敬遠されている。そして、Pbを含有しないSn合金、
具体的には、Sn−Ag系,Sn−Bi系,Sn−In
系,Sn−Zn系のものに代替されつつある。しかしな
がら、これらのSn合金でめっき層を形成したアウター
リード部には次のような問題がある。
【0007】まず、これら合金の融点は比較的低温であ
り、そのため、半田組み立て工程の熱で、導電性基体の
構成材料であるCuなどがこのSn合金めっき層の表面
に熱拡散してきて、当該Sn合金めっき層の半田付け性
が劣化するという問題である。更には、例えばアルミ線
と溶接する際に、溶接部の温度は瞬間的には2000℃
近辺の温度になるため、当該溶接部の近傍では、Sn合
金めっき層内のZn,Bi,Inなどの元素が瞬時にし
て気化し、その結果、溶接部にはブローホールが発生
し、その溶接強度が低下するという問題も発生する。し
かも、溶接部では、導電性基体からCuなどが熱拡散し
てリード材の表面にCu−Sn系化合物層などが形成さ
れることにより、表面の変色と半田付け性の劣化も起こ
り得る。
【0008】なお、Pbを含まないSn合金として例示
した前記した合金のうち、Sn−Ag系,Sn−In系
のものは上記の問題に加えて高価であるという問題があ
る。またSn−Bi系のものは、耐熱性が劣り導電性基
体の熱拡散が起こりやすく、曲げ加工性に劣るのでめっ
き層にクラックが発生しやすく、更には半田付け後に形
成された接合部ではその接合強度が経時的に劣化すると
いう問題がある。そして、Sn−Zn系のものは、耐熱
性に劣っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、半田めっき
層を用いない従来のリードフレーム材のアウターリード
部における上記した問題を解決し、Pbの悪影響が排除
されていることは勿論のこと、半田付け性に優れ、アル
ミ線などとの溶接部の溶接強度が高く、まためっき層の
全体を厚肉化してリフロー処理を行っても偏肉の発生を
抑制することができるリードフレーム材のアウターリー
ド部と、それを用いた半導体装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、導電性基体の表面に、Sn
単体から成る厚みt1の第1めっき層と、Ag,Bi,
Cu,In,Znの群から選ばれる少なくとも1種を含
有し、前記Sn単体よりも低融点のSn合金から成る厚
みt2の第2めっき層とがこの順序で積層されていて、
かつ、t1,t2は、6μm≦t1≦10μm,1μm≦
2≦3μm,0.1≦t2/t1≦0.5の関係を満足す
る値であることを特徴とするリードフレーム材のアウタ
ーリード部が提供される。
【0011】また、本発明においては、上記リードフレ
ーム材のアウターリード部を用いた半導体装置が提供さ
れる。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明のアウターリード部
Aの基本構成を示す断面図である。図において、導電性
基体1の表面には、後述する第1めっき層2と第2めっ
き層3がこの順序で積層されためっき層の2層構造が形
成されている。そして、このアウターリード部Aにおい
ては、最上層の第2めっき層3はその溶融温度(これを
2とする)がその下に位置する第1めっき層2の溶融
温度(これをT1とする)よりも低くなっていることを
最大の特徴とする。
【0013】まず、このアウターリード部Aにおける導
電性基体1としては、少なくともその表面が導電性を有
する材料であれば何であってもよく、例えば、Cu系,
Fe系,Ni系、Al系などをあげることができ、アウ
ターリード部の目的用途に応じて適宜に選定される。そ
れらのうち、少なくとも表面の構成材料はCu単体やC
u合金などであるものが好適である。とくにアウターリ
ード部に大きな機械的強度が要求される場合には、例え
ば鋼材を芯部とし、その表面をCuまたはCu合金の層
で被覆したものであることが好ましく、またアウターリ
ード部に優れた導電性が要求される場合にはCu単体で
基体を構成することが好ましい。また、導電性基体の形
状は限定されるものではなく、条,板状など、いずれで
あってもよい。
【0014】このアウターリード部Aは次のような効果
を発揮する。まず、最上層への半田付けを行うときに、
仮に半田付け温度TがT2≦T<T1の関係を満足してい
る場合、最上層の第2めっき層3は溶融してもその下に
位置する第1めっき層2の溶融は起こっていないので、
この第1めっき層2が半田付け時の熱で導電性基体1か
ら熱拡散してくるCuなどに対しバリアとして機能する
ことになる。したがって、アウターリード部Aにおける
半田付け性の劣化は抑制され、半田との間で良好な接合
強度を実現することができる。
【0015】また、第1めっき層2の厚みをt1、第2
めっき層3の厚みをt2とした場合、厚み:t1+t2
厚くても、厚みt2を薄くした状態でめっき層を全体と
して厚肉化し、それにリフロー処理を行ったとすると、
リフロー処理時には、薄い第2めっき層3だけは溶融し
ても厚い第1めっき層2の溶融を抑制することができ
る。その結果、リフロー処理終了後における偏肉の発生
を抑制することができるようになる。
【0016】本発明のアウターリード部の場合、具体的
には、次のような態様のものが提案される。第1めっき
層2がSn単体(融点:231.9℃)から成り、かつ
第2めっき層3がAg,Bi,Cu,In,Znの群か
ら選ばれる少なくとも1種を含有するSn合金(I)か
ら成るものである。
【0017】すなわち、上記アウターリード部において
は、2層構造のめっき層のうち、1つはSn単体で構成
し、他のめっき層はSn合金(I)で構成するものであ
り、最上層の第2めっき層3がSn単体より低融点のS
n合金(I)で構成されたものである。アウターリード
部について詳細に説明する。
【0018】アウターリード部で用いるSn合金(I)
としては、Sn−Ag系,Sn−Bi系,Sn−Cu
系,Sn−In系,Sn−Zn系の2元系合金の外に、
例えば、Sn−In−Ag系,Sn−Zn−In系、S
n−Bi−Ag−Cu系などの多元系合金をあげること
ができるが、いずれの場合でも、それら合金の溶融温度
はSn単体の溶融温度よりも低くなるように合金組成が
調整されなければならない。
【0019】例えば上記した2元系合金において、Sn
−Ag系の場合はAg含有量の上限値を5重量%,Sn
−Bi系の場合はBi含有量の上限値を87重量%,S
n−Cu系の場合はCuの含有量の上限値を2重量%,
Sn−Zn系の場合はZn含有量の上限値を12重量%
にそれぞれ規制することが必要である。上記上限値を超
えると、いずれの場合も、溶融温度はSn単体より高く
なってしまい、本発明のアウターリード部における第2
めっき層3の材料としては不適切になる。
【0020】なお、Sn−In系の場合は、Inが含有
されているだけでその溶融温度はSn単体よりも低くな
るのでIn含有量の上限値に制限はない。しかしなが
ら、あまり多量に含有されていると、例えばアルミ線と
このアウターリード部とを溶接するときに、この第2め
っき層3は直接高熱に曝されるので、そのときのInの
気化により溶接部にブローホールが発生して溶接強度の
低下を招く。したがって、Sn−In系の場合には、I
n含有量は50重量%以下に規制することが好ましい。
【0021】また、Sn−Bi系の場合、融点との関係
ではBi含有量は87重量%まで許容されるが、半田と
接合したときに当該半田接合部にBiが20重量%以上
存在していると、その半田接合部の接合強度が経時的に
劣化してしまう。そして、あまり多量にBiが含有され
ている系の場合、Inの場合と同じように溶接部にブロ
ーホールが発生して溶接強度の低下が引き起こされる。
このようなことから、Sn合金(I)としてSn−Bi
系合金を用いる場合には、半田付け後の接合部における
Bi含有量が20重量%よりも少なくなるような合金組
織に調整することが好ましい。
【0022】上記したSn合金(I)のうち、Sn−A
g系とSn−In系は比較的高価であり、またSn−Z
n系やSn−In系は半田付け時に酸化変色を起こして
劣化することがあり、Sn−Cu系の場合も半田付け時
に酸化変色を起こして劣化する問題があり、Sn−Bi
系が工業的には最も有利である。このSn−Bi系は、
上記Sn合金(I)のうちで、それほど高価でもなく、
しかも耐酸化性に優れているからである。
【0023】このようなアウターリード部において、第
1めっき層2の厚みt1は、6〜10μm,第2めっき
層の厚みt2は1〜3μmに設定し、かつ、t1とt2
間では0.1≦t2/t1≦0.5の関係が成立するように
設定される。第1めっき層2の厚みt1が6μmより薄
くなると、半田付け時に導電性基体1から熱拡散してく
るCuなどに対しバリヤとしての機能が有効に発揮され
ず、また厚みt1を10μmより厚くしても無駄である
ばかりではなく、形成しためっき層に蓄積されるめっき
歪みが大きくなって基体との剥離やクラックなどが発生
しやすくなるからである。
【0024】第2めっき層の厚みt2が1μmより薄く
なると、例えばアルミ線との溶接時に溶接部の肉盛りを
行うことができず、また厚みt2を3μmより厚くする
と、例えばリフロー処理時に偏肉が起こりやすくなるか
らである。また、厚みt1の第1めっき層2と厚みt2
第2めっき層3との間では、0.1≦t2/t1≦0.5の
関係、すなわち、第2めっき層3の方を第1めっき層よ
りも薄くする。
【0025】その理由の1つは、例えば第2めっき層3
をSn−Ag系やSn−In系で形成する際に、これら
高価な合金系のめっき層を薄くすることにより、アウタ
ーリード部としての機能低下を招くことなく、コスト低
減が可能となるからである。また、第2めっき層3がS
n−Bi系である場合、第1めっき層2の厚みを厚くし
て基体からのCuなどの熱拡散を抑制して当該Sn−B
i系めっき層の半田付け性を確保したうえで、このSn
−Bi系めっき層を薄くすることにより、曲げ加工性を
良好にすることができる。
【0026】更には、例えば半田付け時やリフロー処理
時、またアルミ線などとの溶接時に2層構造のめっき層
が溶融した場合には、溶融後の再凝固時に形成された新
たなめっき層ではSn合金に含有されていたBi,Ag
などの成分がSnで希釈された状態になる。例えば第2
めっき層がSn−Bi系で形成されている場合には、新
たなめっき層におけるBi含有量が低下することにな
る。このように、この第2めっき層の厚み(t2)を薄
くすることにより、新たなめっき層におけるBi含有量
を低下させて、半田付け後の接合部における接合強度の
経時的な低下を抑制することができる。
【0027】とくに、第2めっき層3の厚みは2層構造
のめっき層全体の厚みの40%以下の厚みになっている
ことが好ましい。すなわち、t2/t1≦0.67になって
いることが好ましい。コストの面でも、半田付け性、耐
熱性の点でも、また半田の接合強度やアルミ線などとの
溶接部の溶接強度の点でも良好な特性が得られるからで
ある。
【0028】本発明のアウターリード部は、導電性基体
1の表面に例えば電気めっきや溶融めっきを行って製造
することができる。そのとき、Snや前記Sn合金
(I)のめっきに先立ち、導電性基体1の表面に予めN
iやCoを下地めっきしておくと、これらの下地めっき
層が導電性基体のCuなどの熱拡散を抑制するためのバ
リアとして有効に機能し、この上に形成された2層構造
のめっき層の耐熱性が向上し、得られたアウターリード
部は優れた半田付け性を具備するようになるので好適で
ある。とくに、第2めっき層3が低融点のSn−Bi系
で形成される場合には有効である。
【0029】本発明のアウターリード部の場合、基体表
面にめっき層を形成したのち、一旦、リフロー処理を行
って、少なくとも第2めっき3を溶融し、再凝固させる
ことが好ましい。なお、このとき、温度制御を行うこと
により第2めっき層3の下に位置する第1めっき層2の
少なくとも一部は溶融しないようにすると、厚みをより
均一にすることができるので好適である。
【0030】
【実施例】実施例1〜12,比較例1〜3 直径0.5mmの銅被服鋼線を、電解脱脂槽,酸洗槽,Sn
めっき槽,Sn合金めっき槽に順次走行せしめて表1で
示した第1めっき層,第2めっき層を形成し、本発明の
第1のリード材であるリード線を製造した。
【0031】各リード線を、155℃のエアバス内に2
4時間保持したのち、下記の仕様で半田付け性(半田濡
れ性)およびアルミ線との溶接強度を評価した。 半田付け性:リード線を温度230℃の溶融共晶半田の
中に2秒間浸漬したのち引き上げて半田の濡れ面積を測
定し、リード線の浸漬面積に対する測定面積の百分率で
表示。この値が大きいほど半田付け性は優れていること
を表す。
【0032】アルミ線との溶接強度:JIS C 005
1に準拠して測定。すなわち、リード線とアルミ線を溶
接したのち下側に配したリード線に1kgの荷重をぶら下
げ、アルミ線をチャックでつかみ、溶接部の両側にロー
ラを接触させ、この状態で、チャックを左右交互に振っ
てアルミ線の首振り運動を行うことにより溶接部に90
°の曲げを反復して付与した。チャックを左に振り元に
戻して1回、ついで右に振り元に戻して2回という態様
で回数を数え、溶接部が破断するまでの回数を計測。 以上の結果を表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】表1から次のことが明らかである。 (1)本発明のリード材は半田付け性と溶接強度のいず
れもが良好である。とくに、実施例4,実施例5,実施
例6,実施例7を対比して明らかなように、それぞれの
第2めっき層の厚みは異なっているとはいえ、用いたS
n合金(I)におけるSn以外の成分の含有量はいずれ
も10重量%と同じであるにもかかわらず、第2めっき
層がSn−Bi系で構成されている実施例4のリード材
は半田付け性が他の実施例よりも良好な値を示してい
る。このようなことから、第1のリード材における第2
めっき層はSn−Bi系で構成することの有用性が明ら
かである。
【0035】しかし、第2めっき層がSn−Bi系の場
合であっても、実施例11,12で明らかなように、B
i含有量が少なすぎると溶接強度は向上するものの半田
付け性は悪くなり、逆にBi含有量が多すぎると、半田
付け性と溶接強度の両方が劣化する。このようなことか
ら、第2めっき層をSn−Bi系で構成する場合には、
このめっき層におけるBi含有量は5〜30重量%にす
ることが好適であることがわかる。
【0036】(2)実施例1と比較例1を対比すると、
両者とも基体上のめっき層の厚みはいずれも10μmと
同じであるが、比較例1では実施例1に比べて溶接強度
は若干向上しているものの半田付け性は大幅に劣化して
いる。比較例1で溶接強度が実施例1に比べて若干向上
しているのは、比較例1のめっき層がSn単体から成
り、溶接時のブローホールの原因になる他の成分を含有
していないからである。しかし、そのめっき層は1層の
みであるため、半田付け時に基体から拡散してくるCu
に対するバリヤ機能がないため、半田付け性が大幅に劣
化しているのである。
【0037】(3)また、実施例4と比較例2,実施例
7と比較例3を対比して明らかなように、半田付け性を
高めるためには、Sn−10%Biめっき層の下にそれ
より融点が高いSnめっき層を配置する(実施例4と比
較例2の対比)ことや、Sn−10%Znめっき層の下
にそれより融点の高いSnめっき層を配置する(実施例
7と比較例3の対比)ことの有用性が明らかである。
【0038】なお、各リード線を大気中に長時間放置し
ておいたところ、比較例1のリード線の場合には、ウイ
スカーが発生した。しかし、表面層がSn合金で形成さ
れている他のリード線の全てにはウイスカーの発生は認
められなかった。また、各リード線に温度750℃、送
り速度50〜70m/分でリフロー処理を行ったとこ
ろ、めっき層全体の厚みが10μmを超えているもの
(実施例4,7,10)には偏肉の発生は全く認められ
なかった。しかし、比較例1は偏肉の発生が認められ
た。
【0039】なお、リフロー処理後にあっては、実施例
1〜12,比較例1〜3のリード線には、いずれも、ウ
イスカーの発生は認められなかった。
【0040】実施例13〜38,比較例4,5 表2,3で示したように直径0.6mmの純銅線に、一
旦、Niをめっきして厚み0.5μmの下地めっき層を成
膜し、その後、その上に、表2,3で示したような第1
めっき層と第2めっき層を順次形成した。ついで、各線
材を温度170℃のエアバス内で48時間加熱したの
ち、表2,3で示した条件下でリフロー処理を行い、直
ちに水冷して溶融めっき層を再凝固させた。
【0041】得られた各線材につき、下記の仕様で半田
付け性と偏肉の度合いを測定した。 半田付け性:実施例1〜12の場合と同じ。 リフロー処理後の偏肉の度合:線材を長さ10cmに切断
し、めっき層の厚みを、30点、蛍光X線で測定し、最
大厚みと最小厚みの差として表示。 以上の結果を一括して表2,3に示した。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】表2,3から次のことが明らかである。 (1)各実施例は、半田付け性が80〜95%、偏肉の
度合が0.1〜1.2μmであり、Snめっき層1層のみ
の比較例4に比べて、半田付け性がはるかに優れ、偏肉
は小さい。 (2)実施例13〜18は、第1めっき層が同一で、第
2めっき層の厚みのみが変化しているリード材の事例で
あるが、第2めっき層の厚みが厚くなってt2/t1が1
を超えるようになると、半田付け性の劣化が起こり、ま
た偏肉も大きくなり始めている。逆に、実施例13のよ
うに第2めっき層の厚みが薄くなってt2/t1が0.1
より小さくなると、偏肉の度合は小さいものの半田付け
性は悪くなりはじめている。このようなことから第2め
っき層の厚みは0.5〜5μmにすることが好ましいこ
とがわかる。
【0045】(3)実施例19〜24は、第2めっき層
が同一で第1めっき層の厚みのみが変化しているリード
材の事例であるが、この第1めっき層の厚みが薄くなる
と、半田付け性が悪くなり、バリアとしての機能低下を
招いている。また逆に、第1めっき層が厚くなりすぎて
も、半田付け性は飽和傾向を示している。このようなこ
とから、第1めっき層の厚みは1〜15μmにすること
が好ましい。
【0046】(4)実施例25〜29は、第2めっき層
を構成するSn−Bi系合金の組成が変化していること
を除いては全て同じであるリード材の事例であるが、B
i含有量が多すぎても、また少なすぎても半田付け性の
劣化が認められる。とくに、Bi含有量が3重量%の場
合(実施例25)は、偏肉が大きくなっている。このよ
うなことから、第2めっき層をSn−Bi系合金で構成
する場合には、Bi含有量を5〜30重量%にすること
が好適である。
【0047】(5)実施例30〜33は、第2めっき層
の合金組成を変化させたリード材の事例であるが、いず
れの場合も良好な半田付け性を示し、また、偏肉の度合
も良好である。 (6)実施例15と実施例14を対比すると、両者の相
違はNi下地めっき層の有無だけにあるが、Niの下地
めっき層を形成していない実施例34の方が半田付け性
は悪い。 このようなことから、Ni下地めっき層を形成すること
の有用性が明らかである。
【0048】(7)実施例15と実施例36の相違点は
リフロー処理の有無にあるが、リフロー処理を行わない
方が半田付け性は悪くなっている。このようなことか
ら、めっき層の形成後、リフロー処理を行うことの有用
性が明らかである。
【0049】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
アウターリード部は、まずめっき層がPbを含まないの
で環境に悪影響を及ぼす心配はない。その上で、めっき
層は、高融点の第1めっき層とそれよりも融点の低い第
2めっき層との2層構造になっているので、半田付け時
に第2めっき層が溶融しても、そのときの熱で基体から
拡散してくるCuなどは第1めっき層でバリアされ、そ
の結果、半田付け性は向上する。
【0050】そして、アウターリード部にあっては、第
2めっき層をSn−Ag系やSn−In系などの高価な
合金で形成する場合でも、第1めっき層(Snめっき
層)の厚みを厚くして当該第2めっき層を薄くすればよ
いのでコスト低減を実現することができる。しかも、第
2めっき層を薄くすることにより、リフロー処理後の偏
肉を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアウターリード部例を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 導電性基体 2 第1めっき層 3 第2めっき層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松田 晃 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (72)発明者 杉江 欣也 大阪府寝屋川市楠根北町2番5号 協和 電線株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−13638(JP,A) 特開 平1−259193(JP,A) 特開 平8−176883(JP,A) 特開 昭63−187654(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 23/50 C25D 5/10

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基体の表面に、Sn単体から成る
    厚みt1の第1めっき層と、Ag,Bi,Cu,In,
    Znの群から選ばれる少なくとも1種を含有し、前記S
    n単体よりも低融点のSn合金から成る厚みt2の第2
    めっき層とがこの順序で積層されていて、かつ、t1
    2は、6μm≦t1≦10μm,1μm≦t2≦3μ
    m,0.1≦t2/t1≦0.5の関係を満足する値である
    ことを特徴とするリードフレーム材のアウターリード
    部。
  2. 【請求項2】 少なくとも前記第2めっき層がリフロー
    処理されている請求項1のリードフレーム材のアウター
    リード部。
  3. 【請求項3】 請求項1または2のリードフレーム材の
    アウターリード部を用いた半導体装置。
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