JP2018146813A - 液晶滴下工法用液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルの製造方法 - Google Patents

液晶滴下工法用液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルの製造方法 Download PDF

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正弘 内藤
Masahiro Naito
正弘 内藤
落 直之
Naoyuki Ochi
直之 落
堅太 菅原
Kenta Sugawara
堅太 菅原
常俊 坂野
Tsunetoshi Sakano
常俊 坂野
隆行 遠島
Takayuki Toshima
隆行 遠島
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Abstract

【課題】
製造工程において、液晶の液晶滴下工法用液晶シール剤への差し込みが発生しない液晶表示セルの製造方法、及びその製造方法に使用される液晶滴下工法用液晶シール剤を提案する。この液晶滴下工法用液晶シール剤、または製造方法を用いることによって、極めて安定に液晶表示セルを製造することができ、さらには、生産タクトの短縮も可能となるため、より一層の量産性向上を実現できる。
【解決手段】
(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤であって、前記増粘剤の平均粒子径をx(μm)、液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に下記式(1)を満たす液晶滴下工法用液晶シール剤。

0.3 ≦ y/x ≦3.0 ・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶滴下工法に使用され、液晶の差込耐性に優れる液晶シール剤、及びその液晶シール剤を用いた液晶表示セルの製造方法に関する。より詳細には、液晶の液晶シール剤への差込耐性に優れ。より詳細には、製造工程中に液晶が液晶シール剤へ差し込まず、安定に液晶表示セルを製造することができる液晶シール剤、及び液晶表示セルの製造方法に関する。
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造方法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。この液晶滴下工法は、具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後液晶シール剤を硬化する製造方法である。
しかし、液晶滴下工法では、液晶シール剤が硬化する前に液晶と液晶シール剤とが接触するため、液晶による圧力によって液晶シール剤に差込現象が発生し、最悪の場合には、液晶シール剤からなる堰が決壊し、液晶が漏れ出してしまうこともあり、問題とされている。この問題は、光及び熱を併用する液晶滴下工法においても、配線等の影になって十分な紫外線が照射されない部分が存在する場合には発生する。また、紫外線照射を行わず、熱のみで液晶シール剤を硬化する場合には特に大きな問題である。この解決のためには、液晶の滴下量の精度を高めることが必要であるが、それでも液晶シール剤の硬化工程である加熱時に液晶が膨脹するため、上記差込現象を完全に抑えるのは困難である。
この課題を解決するため、液晶シール剤に関して様々な技術が提案されている。
特許文献3では、有機ベントナイトを用いて上記課題の解決を図っている。この方法は、液晶の差し込みに対して一定の成果は有するものの、十分であるとは言いがたい。
特許文献4には、ヒュームドシリカ、ポリチオールを用いた液晶シール剤を用い、液晶シール剤のBステージ化処理を行う方法が記載されている。しかし、この方法には、工程が長くなってしまう、その工程のための装置が必要となってしまうという欠点がある。
特許文献5には、熱ラジカル重合開始剤を用いて、硬化速度を上げることにより差し込みを防止する液晶滴下工法用液晶シール剤が開示されている。
このように、上記課題は、液晶シール剤の改良のみによって解決が図られているが、現実的には達成が困難である。このため、液晶表示セルの設計及びそれに合わせた液晶シール剤の設計という2つの側面からの改良が必要となっている。しかし、上記課題を解決するための方法は未だ提案されておらず、液晶の液晶シール剤への差し込みを十分に抑えた液晶表示セルの製造方法は確立されていない。
特開昭63−179323号公報 特開平10−239694号公報 特開2010−14771号公報 特開2011−150181号公報 国際公開第2011/061910号
本発明は、液晶滴下工法に使用され、液晶の差込耐性に優れる液晶シール剤、及びその液晶シール剤を用いた液晶表示セルの製造方法に関する。より詳細には、液晶の液晶シール剤への差込耐性に優れ。より詳細には、製造工程中に液晶が液晶シール剤へ差し込まず、安定に液晶表示セルを製造することができる液晶シール剤、及び液晶表示セルの製造方法を提案するものである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、2枚の基板により構成される液晶表示セルのセルギャップと液晶シール剤中に含有される増粘剤の平均粒径とが一定の関係にある場合に、液晶の液晶シール剤への差し込みのない液晶表示セルの製造方法を実現できることを発見し、本発明に至った。
即ち本発明は、次の[1]〜[16]に関するものである。
なお本明細書において、「(メタ)アクリル」と記載した場合には、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味するものとする。また「液晶滴下工法用液晶シール剤」は、単に「液晶シール剤」と記載する場合もある。また、本明細書中、平均粒子径は数平均粒子径を意味し、単に平均粒径と記載する場合もあるが、両者は同じ意味を表すものとする。
また、液晶表示セルのセルギャップとは液晶シール剤部分のギャップを意味し、液晶シール剤中に混合するギャップ剤で制御する為、当該ギャップ剤の径を意味するものとする。
本明細書において上付きのRTMは登録商標を意味する。
[1]
(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤であって、前記増粘剤の平均粒子径をx(μm)、液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に下記式(1)を満たす液晶滴下工法用液晶シール剤。

0.3 ≦ y/x ≦3.0 ・・・(1)

[2]
(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤であって、前記増粘剤の平均粒子径をx(μm)、液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に下記式(2)を満たす液晶滴下工法用液晶シール剤。

−0.8 ≦ x−y ≦9.0 ・・・(2)

[3]
前記成分(B)の平均粒子径x(μm)が、3.0μm以上10μm以下である前項[1]又は[2]に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[4]
前記成分(B)のガラス転位温度が10℃以上100℃以下である前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[5]
前記成分(B)が、アクリルゴム微粒子である前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[6]
前記成分(A)がエポキシ(メタ)アクリレート化合物及び/又はエポキシ化合物である前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[7]
前記成分(A)がエポキシ(メタ)アクリレート化合物とエポキシ化合物の混合物である前項[1]に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[8]
前記成分(A)100質量部に対し、前記成分(B)が5〜60質量部含有する前項[1]及至[7]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[9]
更に、(C)熱ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[10]
更に、(D)無機フィラーを含有する前項[1]及至[9]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[11]
更に、(E)熱硬化剤を含有する前項[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[12] 前記成分(E)が有機酸ヒドラジドである前項[1]乃至[11]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[13]
更に、(F)光ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]及至[12]のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
[14]
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された液晶滴下工法用液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで紫外線及び/又は熱で前記液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化する液晶表示セルの製造方法において、
前記液晶滴下工法用液晶シール剤(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有し、該(B)増粘剤の平均粒子径をx(μm)、前記液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に、下記式(3)を満たす液晶表示セルの製造方法。

0.3 ≦ y/x ≦3.0 ・・・(3)

[15]
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された液晶滴下工法用液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで紫外線及び/又は熱で前記液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化する液晶表示セルの製造方法において、
前記液晶滴下工法用液晶シール剤(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有し、該(B)増粘剤の平均粒子径をx(μm)、前記液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に、下記式(4)を満たす液晶表示セルの製造方法。

−0.8 ≦ x−y ≦9.0 ・・・(4)

[16]
前記液晶滴下工法用液晶シール剤の硬化工程が、熱のみによって行われる前項[14]又は[15]に記載の液晶表示セルの製造方法。
[17]
前項[14]乃至[16]のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される液晶表示セル。
本発明の液晶シール剤、およびそれを用いた液晶表示セルの製造方法によれば、製造工程中に液晶が液晶シール剤へ差し込むことがないため、極めて安定に液晶表示セルを製造することができる。また、生産タクトの短縮も可能となるため、より一層の量産性向上を実現できる。
実施例1の液晶滴下工法用液晶シール剤と液晶の界面を示す。 実施例2の液晶滴下工法用液晶シール剤と液晶の界面を示す。 比較例1の液晶滴下工法用液晶シール剤と液晶の界面を示す。
[(A)硬化性化合物]
本発明の液晶シール剤は、(A)硬化性化合物を含有する(以下、単に成分(A)ともいう。)。
成分(A)は、光又は熱によって重合反応するものであれば特に限定されず、例えば(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物、エポキシ基を有する硬化性化合物等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、例えば(メタ)アクリルエステル、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルエステルとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フロログリシノールトリアクリレート等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、レゾルシン骨格を有するエポキシ化合物が好ましく、例えばレゾルシンジグリシジルエーテル等である。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。
したがって、好ましい(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有し、さらにレゾルシン骨格を有する硬化性化合物であり、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルのアクリル酸エステルやレゾルシンジグリシジルエーテルのメタクリル酸エステルである。
エポキシ基を有する硬化性化合物としては、エポキシ化合物が挙げられる。該エポキシ化合物としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点より好ましいのはビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物である。
(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物、エポキシ基を有する硬化性化合物は2種以上を混合して用いることもでき、(メタ)アクリル化エポキシ化合物とエポキシ化合物を混合して用いることが、本願発明の特に好ましい態様の一つである。
本発明の液晶シール剤中における成分(A)の含有量は、通常30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%である。また、特にエポキシ化合物と(メタ)アクリル化エポキシ化合物を併用する場合において、成分(A)中のエポキシ化合物の含有量は、通常3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは8〜15質量%である。
[(B)増粘剤]
本発明の液晶シール剤は、(B)増粘剤を含有する(以下、単に成分(B)ともいう。)。この増粘剤とは、例えばアクリルゴム微粒子や糖化合物で構成される微粒子である。これらの微粒子は、加熱によるプレゲル化によって増粘効果を発揮するものである。
液晶滴下工法による液晶表示セルの製造方法は、2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで紫外線及び/又は熱で上記液晶シール剤を硬化する製造方法である。
背景技術の項でも述べたとおり、液晶滴下工法では、液晶シール剤が硬化する前に液晶と液晶シール剤とが接触するため、液晶による圧力によって液晶シール剤に差込現象が発生し、また液晶シール剤からなる堰が決壊し、液晶が漏れ出してしまうこともある。
この液晶滴下工法において、液晶シール剤中に含有される(B)増粘剤の平均粒子径x(μm)と、液晶表示セルのセルギャップy(μm)とを一定の関係に保った場合に、液晶の液晶シール剤への差し込みは極めて少なくなる。これは、上下基板の圧力によって圧縮された増粘剤が堰として作用して、液晶が膨張する圧力に対抗し、また加熱硬化時にプレゲル状態になり、加熱下においても液晶の差込に対抗できるためであると考えられる。
この一定の関係とは、上記式(1)、又は(2)で表される関係である。
y/x が0.3以上3.0以下であることにより、上記液晶差込への十分な効果を得ることができる。さらに好ましい範囲としては、0.4以上1.9以下であり、より好ましくは0.5以上1.4以下である。
また、x−y が−0.8以上9.0以下である場合にも、有効な差込耐性を有する。さらに好ましい範囲としては、−0.8以上6.0であり、より好ましは1.0以上5.0以下である。
好ましい(B)増粘剤の平均粒径xとしては3.0μm以上10μm以下であり、より好ましくは、3.5μm以上7.0μm以下であり、特に好ましくは、4.0μm以上6.0μm以下である。
ここで、増粘剤の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)等により測定することができる。
また、本願発明の構成を実現する為に、増粘剤(B)に分級操作を行い、所望の平均粒子径のものを得ることができる。この操作を行うと粗大粒子の除去にも役立ちシャープな粒度分布をもつ増粘剤(B)を準備することができる。粗大粒子は液晶のセルギャップ不良を引き起こし易くする為、この分級操作を行う方が好ましい。
分級操作は例えばジェットミル粉砕機JM−0202(株式会社セイシン企業製)にて解砕後、気流式分級機クラッシールN05(株式会社セイシン企業製)を用いて行うことができる。なお、より効率的にこの操作を行う為に、分散剤等を使用しても良い。
(B)増粘剤のガラス転位温度は10℃以上100℃以下である場合が好ましい。ガラス転位温度が高すぎると上下基板の潰れ性が悪くなりギャップ不良等の問題を引き起こし、また低すぎるとハンドリング性に問題が生じる。この範囲のさらに好ましい範囲は、15℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは20℃以上80℃以下である。
この様なガラス転位温度の調製は、例えばアクリル微粒子の場合、使用するアクリルモノマーの種類や配合量によって、自由に設計することができる。従って、本用途の場合、アクリル微粒子を用いる場合が好ましい態様の一つである。
成分(B)の含有量としては、本発明の液晶シール剤の総量中、好ましくは1〜60質量%であり、更に好ましくは2〜50質量%であり、特に好ましくは5〜40質量%である。
[(C)熱ラジカル重合開始剤]
本発明の液晶シール剤は、(C)熱ラジカル重合開始剤(以下、単に「成分(C)」ともいう。)を含有して、硬化速度、硬化性を向上することができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
また、アゾ化合物としては、VA−044、V−070、VPE−0201、VSP−1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
成分(C)として好ましいものは、分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)又は窒素−窒素結合(−N=N−)を有さない熱ラジカル重合開始剤である。分子内に酸素−酸素結合(−O−O−)や窒素−窒素結合(−N=N−)を有する熱ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生時に多量の酸素や窒素を発するため、液晶シール剤中に気泡を残した状態で硬化し、接着強度等の特性を低下させる虞がある。ベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)が特に好適である。具体的には、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン等、が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化することは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化することは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤をピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)やトリエチルシリル化剤としてトリエチルクロロシラン(TECS)、t−ブチルジメチルシリル化剤としてt−ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することが出来る。シリル化剤の反応量としては対象化合物のヒドロキシ基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
成分(C)は粒径を細かくし、均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる際のギャップ形成が上手くできない等の不良要因となるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また、際限なく細かくしても差し支えないが、通常下限は0.1μm程度である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定できる。
成分(C)の含有量としては、液晶シール剤の総量中、0.0001〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜5質量%であり、0.001〜3質量%が特に好ましい。
[(D)無機フィラー]
本発明の液晶シール剤は、成分(D)として、無機フィラーを含有しても良い(以下、単に「成分(D)」ともいう。)。本発明で含有する無機フィラーとしては、シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
無機フィラーの平均粒子径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、2000nm以下が適当であり、好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。また好ましい下限は10nm程度であり、さらに好ましくは100nm程度である。粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。
本発明の液晶シール剤において、無機フィラーを使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。無機フィラーの含有量が5質量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が50質量%より多い場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
[(E)熱硬化剤]
本発明の液晶シール剤は、(E)熱硬化剤を含有しても良い(以下、単に「成分(E)」ともいう。)。
熱硬化剤は、上記成分(C)熱ラジカル重合開始剤とは異なり、加熱によってラジカルを発生しない熱硬化剤を意味する。具体的には、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えば多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げる事ができる。ただしこれらに限定されるものではない。これらのうち有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
成分(E)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の液晶シール剤において、成分(E)を使用する場合には、液晶シール剤総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
[(F)光ラジカル重合開始剤]
本願発明の液晶シール剤は、成分(F)として光ラジカル重合開始剤を含有しても良い(以下、単に「成分(F)」ともいう。)。光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
本発明の液晶シール剤において、成分(F)を使用する場合には、液晶シール剤総量中、通常0.001〜3質量%、好ましくは0.002〜2質量%である。
[その他成分]
本発明の液晶シール剤には、さらに必要に応じて、有機フィラー、シランカップリング剤、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、ラジカル重合防止剤、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
[有機フィラー]
本発明の液晶シール剤は、有機フィラーを含有しても良い。この有機フィラーは、例えばナイロン6、ナイロン12、ナイロン66等のポリアミド微粒子、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等のフッ素系微粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系微粒子、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系微粒子、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム微粒子等が挙げられる。
上記有機フィラーは、ゴム微粒子である場合が好ましい。ゴム微粒子としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等が挙げられ、単独のゴム微粒子でも良いし、2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。また2種以上を併用しても良い。これらのうち、好ましくは、ウレタンゴム、スチレンゴム、スチレンオレフィンゴム、又はシリコーンゴムであり、特に好ましくはシリコーンゴムである。
上記シリコーンゴムとしては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等が挙げられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものが挙げられる。これらのゴム微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。
上記有機フィラーの具体例としては、シリコーンゴムとしては、KMP594、KMP597、KMP598(信越化学工業株式会社製)、EP2001(東レダウコーニング株式会社製)、ウレタンゴムとしてはJB−800T、HB−800BK(根上工業株式会社)等を挙げることができる。ただし、これらに限定されることはない。
有機フィラーを含有する場合、液晶シール剤の総量中、5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%含有する。
[シランカップリング剤]
本発明の液晶シール剤は、シランカップリング剤を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる。
シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明の液晶シール剤において、シランカップリング剤を使用する場合には、液晶シール剤総量中、0.05〜3質量%が好適である。
[硬化促進剤]
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の液晶シール剤において、硬化促進剤を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
[ラジカル重合防止剤]
上記ラジカル重合防止剤としては、光重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルをトラップし、重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の液晶シール剤総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
本発明の液晶表示セルの製造方法は、2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで紫外線及び/又は熱で上記液晶シール剤を硬化する製造方法に関する。すなわち、液晶滴下工法に関するものである。
背景技術の項でも述べたとおり、液晶滴下工法では、液晶シール剤が硬化する前に液晶と液晶シール剤とが接触するため、液晶による圧力によって液晶シール剤に差込現象が発生し、また液晶シール剤からなる堰が決壊し、液晶が漏れ出してしまうこともある。
この液晶滴下工法において、液晶シール剤中に含有される(B)増粘剤の平均粒子径Ax(μm)と、液晶表示セルのセルギャップy(μm)とを一定の関係に保った場合に、液晶の液晶シール剤への差し込みは極めて少なくなる。これは、上下基板の圧力によって圧縮された増粘剤が堰として作用して、液晶が膨張する圧力に対抗するためであると考えられる。
この一定の関係とは、上記式(3)、又は(4)で表される関係である。y/xが0.3以上3.0以下であることにより、上記液晶差込への十分な効果を得ることができる。さらに好ましい範囲としては、0.4以上1.9以下であり、より好ましくは0.5以上1.4以下である。
また、x−y が−0.8以上9.0以下である場合にも、有効な差込耐性を有する。さらに好ましい範囲としては、−0.8以上6.0であり、より好ましは1.0以上5.0以下である。
ここで、有機フィラーの平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)等により測定することができる。
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、スクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。場合によっては、液晶シール剤を塗布していない基板に液晶を滴下することもあるが、どちらでも本発明の効果に影響はない。また、適正なセルのギャップを実現するためには、面内スペーサ(例えばナトコスペーサ等)を一方の基板に、事前に塗布しておくことが好ましい。ギャップ形成後、必要に応じて1000mJ/cm〜6000mJ/cmの紫外線を照射し、その後90〜130℃で1〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(A)を複数使用する場合には、加熱混合し、そこへ必要に応じ成分(F)を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、成分(B)を添加し、更に必要に応じ成分(C)、(D)、(E)、有機フィラー、硬化触媒、消泡剤、レベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
本発明の液晶シール剤を用いた液晶表示セルの製造方法によれば、製造工程中に、液晶が液晶シール剤へ差し込むことがないため、極めて安定に液晶表示セルを製造することができる。また、生産タクトの短縮も可能となるため、より一層の量産性向上を実現できる。
また、本発明の液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
[合成例1]
[増粘剤の合成]
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、攪拌器を取り付けたフラスコにエタノール504部、水216部、メチルメタクリレート(純正化学株式会社製)54部、n-ブチルアクリレート(純正化学株式会社製)26gを加え、これに分散安定剤としてPVP−K90(東京化成工業株式会社製)4部を溶解させ、撹拌及び窒素フローにより1時間窒素置換を行い、70℃まで昇温した。その後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)(和光純薬工業株式会社製V−601)1.8部を、エタール14部、水6部に溶解させた溶液を滴下ロートから投入し、そのまま24時間重合反応を行い、乳白色の重合微粒子分散液を得た。
重合微粒子分散液はろ別分離した後に十分に水洗、乾燥を行い、目的の重合微粒子紛体(増粘剤)76部を得た。
レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD−2200)により粒度分布を測定した結果、数平均粒子径7.9μm、CV値1.4%であった。またガラス転位温度は60℃であった。この増粘剤を増粘剤(B−1)とする。
また、上記合成例で得られた重合微粒子紛体に分級操作を施し、数平均粒子径を4.1μmとしたものを増粘剤(B−2)とする。
[参考合成例1]
[エチレンオキサイド付加ビスフェノールS型エポキシ樹脂の合成]
温度計、滴下ロート、冷却管、攪拌器を取り付けたフラスコにエチレンオキサイド付加ビスフェノールS(日華化学製;商品名SEO−2、融点183℃、純度99.5%)169g、エピクロルヒドリン370g、ジメチルスルホキシド185g、テトラメチルアンモニウムクロライド5gを加え撹拌下で溶解し、50℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム60gを100分かけて分割添加した後、更に50℃ で3時間、後反応を行った。反応終了後水400gを加えて水洗を行った。ロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、油層から過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン450部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%の水酸化ナトリウム水溶液10gを加え、1 時間反応を行った後、水洗を3回行い、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、下記式(3)で表される液状エポキシ樹脂C212gを得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は238g/eq、25℃における粘度は113400mPa・sであった( 室温に放置すると結晶化した)
[参考合成例2]
[1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンの合成]
攪拌装置、還流管、温度計をつけたフラスコ中に、市販ベンゾピナコール(東京化成工業株式会社製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させた。これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液を冷却し、攪拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物をろ別分離した後十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した結果、純度は99.0%(面積百分率)であった。
[実施例1、実施例2及び比較例1の調製]
下記表1に示す割合で硬化性化合物(成分(A))を90℃で加熱溶解した。室温まで冷却し、増粘剤(成分(B))熱ラジカル重合開始剤(成分(C))、無機フィラー(成分(D))、熱硬化剤(成分(E))、シランカップリング剤等を加え、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、液晶滴下工法用液晶シール剤(実施例1、実施例2及び比較例1)を調製した。
[液晶の差込耐性評価]
液晶シール剤の実施例1、実施例2及び比較例1で製造された液晶シール剤を用いて、セルギャップ4μmの液晶表示セルを作成し、差し込み性について観察した。試験方法を以下に示す。
液晶シール剤各100gにスペーサとして直径4μmのグラスファイバー1g(PF−40S;日本電気硝子株式会社製)を添加して混合撹拌脱泡を行い、シリンジに充填した。ITO透明電極付きガラス基板に先にシリンジに充填した液晶シール剤をディスペンサー(SHOTMASTER300:武蔵エンジニアリング株式会社製)を使って、シールパターン及びダミーシールパターンの塗布を行い、次いで液晶(MLC−3007;メルク株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。さらにもう一枚のラビング処理済みガラス基板に面内スペーサ(ナトコスペーサKSEB−410NPF;ナトコ株式会社製;貼り合せ後のギャップ幅4μm)を散布、熱固着し、貼り合せ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合わせた。大気開放してギャップ形成した後、10分間放置し、120℃オーブンに投入して1時間加熱硬化させた後に偏光顕微鏡にてシールと液晶との界面を観察し、以下の基準に従って評価を行った。図1〜図3に各液晶シール剤と液晶との界面を示す。結果を表1に示す。
○:シール剤に液晶の差し込みが観察されない。
△:シール剤にわずかに液晶の差し込みが観察される。
×:シール剤に液晶の差し込みが観察される。
Figure 2018146813
本発明の液晶シール剤、およびそれを用いた液晶表示セルの製造方法によれば、製造工程中に液晶が液晶シール剤へ差し込むことがないため、極めて安定に液晶表示セルを製造することができる。また、生産タクトの短縮も可能となるため、より一層の量産性向上を実現できる。

Claims (17)

  1. (A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤であって、前記増粘剤の平均粒子径をx(μm)、液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に下記式(1)を満たす液晶滴下工法用液晶シール剤。

    0.3 ≦ y/x ≦3.0 ・・・(1)
  2. (A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤であって、前記増粘剤の平均粒子径をx(μm)、液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に下記式(2)を満たす液晶滴下工法用液晶シール剤。

    −0.8 ≦ x−y ≦9.0 ・・・(2)
  3. 前記成分(B)の平均粒子径x(μm)が、3.0μm以上10μm以下である請求項1又は2に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  4. 前記成分(B)のガラス転位温度が10℃以上100℃以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  5. 前記成分(B)が、アクリルゴム微粒子である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  6. 前記成分(A)がエポキシ(メタ)アクリレート化合物及び/又はエポキシ化合物である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  7. 前記成分(A)がエポキシ(メタ)アクリレート化合物とエポキシ化合物の混合物である請求項1に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  8. 前記成分(A)100質量部に対し、前記成分(B)が5〜60質量部含有する請求項1及至7のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  9. 更に、(C)熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  10. 更に、(D)無機フィラーを含有する請求項1及至9のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  11. 更に、(E)熱硬化剤を含有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  12. 前記成分(E)が有機酸ヒドラジドである請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  13. 更に、(F)光ラジカル重合開始剤を含有する請求項1及至12のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
  14. 2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された液晶滴下工法用液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで紫外線及び/又は熱で前記液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化する液晶表示セルの製造方法において、
    前記液晶滴下工法用液晶シール剤(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有し、該(B)増粘剤の平均粒子径をx(μm)、前記液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に、下記式(3)を満たす液晶表示セルの製造方法。

    0.3 ≦ y/x ≦3.0 ・・・(3)
  15. 2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された液晶滴下工法用液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、次いで紫外線及び/又は熱で前記液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化する液晶表示セルの製造方法において、
    前記液晶滴下工法用液晶シール剤(A)硬化性化合物、及び(B)増粘剤を含有し、該(B)増粘剤の平均粒子径をx(μm)、前記液晶表示セルのセルギャップをy(μm)とした場合に、下記式(4)を満たす液晶表示セルの製造方法。

    −0.8 ≦ x−y ≦9.0 ・・・(4)
  16. 前記液晶滴下工法用液晶シール剤の硬化工程が、熱のみによって行われる請求項14又は15に記載の液晶表示セルの製造方法。
  17. 請求項14乃至16のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される液晶表示セル。
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