以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係るインクは、水;沸点が250℃以下の水溶性有機溶剤;光輝性顔料、及びビニルポリマーを含む第一の樹脂粒子;並びに第二の樹脂粒子を含有する。
上記のインクは、光輝性顔料として、銀を含むことが好ましい。
上記のインクは、水溶性有機溶剤として、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、及び2,3−ブタンジオールからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記のインクにおける第二の樹脂粒子は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を含むことが好ましい。
本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、上記のインクに、熱エネルギー又は力学的エネルギーを付与して、インクを記録媒体に吐出して、画像を形成する。
上記の画像形成方法は、記録媒体を加熱する工程を有することが好ましい。
上記の画像形成方法は、記録媒体が、非多孔質基材であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置は、上記のインクに、熱エネルギー又は力学的エネルギーを付与してインクを記録媒体に吐出する吐出手段と、上記のインクが吐出された記録媒体を加熱する加熱手段と、を有する。
本発明の一実施形態に係る画像形成物は、上記のインクにより形成される画像を有する。
<<<インク>>>
以下、インクにおける水;沸点が250℃以下の水溶性有機溶剤;光輝性顔料、及びビニルポリマーを含む第一の樹脂粒子;並びに第二の樹脂粒子などの各成分について詳細に説明する。
<<第一の樹脂粒子>>
第一の樹脂粒子は、光輝性顔料、及びビニルポリマーを含有する。
<光輝性顔料>
本実施形態において光輝性顔料は、光沢を有する顔料であり、例えば、パール顔料や金属粒子などが挙げられる。パール顔料としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗薄、酸塩化ビスマスなどの真珠光沢や干渉光沢を有する顔料などが挙げられる。一方、金属粒子としては、アルミニウム、クロム、インジウム、銅、金、銀の粒子などが挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、金、銀は、安全性の点で好ましく、銀は、各種金属の中でも白色度が高く、他色の着色剤と組み合わせることで、様々な金属色のインクが得られる点でより好ましい。また、銀は水との反応性が低いため水中でも安定である。このため、銀を光輝性顔料として用いた金属色の水系のインクは、環境負荷が低減される点で優れている。
(銀粒子)
光輝性顔料としての銀は、粒子であることが好ましい。以下、銀の粒子を、銀粒子と表す。銀粒子を含むインクを用いることで、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。
銀粒子の平均粒子径は、3nm以上100nm以下が好ましく、15nm以上60nm以下がより好ましい。平均粒子径が3nm以上であると、記録媒体のインク受容層に銀粒子が入り込みやすくなる。これにより、インク受容層にナノスケールの銀粒子が数多く存在することで、画像形成物において金属光沢が弱まることなく、良好に金属光沢が発現される。平均粒子径が15nm以上であると、金属光沢がより発現しやすく、好ましい。平均粒子径が、100nm以下であると、保存時の銀粒子の沈降が生じ難くなるので、吐出が安定して好ましい。なお、本実施形態では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均一次粒子径を指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社)を用いることができる。
インクにおける銀粒子の含有率は、インクの保存安定性、吐出安定性、金属光沢の点で、1.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、2.5質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。
また、銀粒子は、その表面に保護コロイドが付着した銀コロイドとして、水系分散媒に分散していることが好ましい。これにより、銀粒子の水系分散媒への分散性が特に向上し、インクの保存安定性が著しく向上する。銀コロイドは、いかなる方法で調製されてもよい。調製方法としては、例えば、銀イオンを含む溶液において、銀イオンを保護コロイドの存在下で還元剤により還元する方法が挙げられる(特開2006−299329号公報参照)。この方法によって銀コロイドを製造する際に、還元反応の前後の任意の時点で水系分散媒に界面活性剤などを加えると、銀粒子の分散安定性は更に向上する。また、銀粒子の粒子径は、還元反応によって制御することができる。すなわち、還元剤の添加速度や反応温度を調整することで銀粒子の粒子径を制御することができる。例えば還元剤の添加速度を遅くしたり、液温を低くしたりすることで、より小さい粒子径の銀粒子が得られる。
保護コロイドとしては、銀粒子の表面を保護する役割を果たす有機物であれば特に限定されないが、カルボキシル基を有する有機化合物、及び高分子分散剤が好ましい。カルボキシル基を有する有機化合物、及び高分子分散剤は、いずれかを単独で使用しても、併用しても構わないが、併用したほうが銀粒子の分散性と経時安定性とを高めることが可能となるため、より好ましい。
−カルボキシル基を有する有機化合物−
保護コロイドとしてのカルボキシル基を有する有機化合物におけるカルボキシル基の数は、1分子あたり、1以上であれば特に限定されず、例えば、1乃至10、好ましくは1乃至5、さらに好ましくは1乃至3である。
代表的なカルボキシル基を有する有機化合物には、カルボン酸が含まれる。カルボン酸は、例えば、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びオキシカルボン酸などを含む。
モノカルボン酸は、例えば、脂肪族モノカルボン酸、及び芳香族モノカルボン酸などを含む。脂肪族モノカルボン酸は、飽和脂肪族モノカルボン酸、及び不飽和脂肪族モノカルボン酸を含む。飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、シクロヘキサンカルボン酸、デヒドロコール酸、及びコラン酸などのC1−34脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC1−30脂肪族モノカルボン酸を含む。なお、Cは炭素数を表す。不飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、及びアビエチン酸などのC4−34不飽和脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC10−30不飽和脂肪族モノカルボン酸を含む。芳香族モノカルボン酸は、安息香酸、及びナフトエ酸などのC7−12芳香族モノカルボン酸を含む。
ポリカルボン酸は、例えば、脂肪族ポリカルボン酸、及び芳香族ポリカルボン酸を含む。脂肪族ポリカルボン酸は、例えば、脂肪族飽和ポリカルボン酸、及び脂肪族不飽和ポリカルボン酸を含む。脂肪族飽和ポリカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などのC2−14脂肪族飽和ポリカルボン酸、好ましくはC2−10脂肪族飽和ポリカルボン酸を含む。脂肪族不飽和ポリカルボン酸は、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、及びテトラヒドロフタル酸などのC4−14脂肪族不飽和ポリカルボン酸、好ましくはC4−10脂肪族不飽和ポリカルボン酸を含む。芳香族ポリカルボン酸は、例えば、フタル酸、及びトリメリット酸などのC8−12芳香族ポリカルボン酸を含む。
ヒドロキシカルボン酸は、ヒドロキシモノカルボン酸、及びヒドロキシポリカルボン酸などを含む。ヒドロキシモノカルボン酸は、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、及び芳香族ヒドロキシモノカルボン酸を含む。脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸は、例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリコール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、及びタウロコール酸などのC2−50脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、好ましくはC2−34脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、より好ましくはC2−30脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸を含む。芳香族ヒドロキシモノカルボン酸は、サリチル酸、オキシ安息香酸、及び没食子酸などのC7−12芳香族ヒドロキシモノカルボン酸などを含む。ヒドロキシポリカルボン酸は、例えば、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、及びリンゴ酸などのC2−10脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸を含む。
これらのカルボキシル基を有する有機化合物のうち、脂肪族ヒドロキシカルボン酸などのヒドロキシカルボン酸が好ましく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の中でも、脂環族ヒドロキシカルボン酸、又は脂環族骨格を有するヒドロキシカルボン酸がより好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、及び脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸を含む。脂環族ヒドロキシカルボン酸、又は脂環族骨格を有するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、C6−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC10−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、より好ましくはC16−30脂環族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
脂環族ヒドロキシカルボン酸のうち、コール酸などの多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸;デヒドロコール酸、及びコラン酸などの多環式脂肪族カルボン酸は、嵩高い構造を有しており、銀粒子の凝集を抑制する効果が大きいためか好ましい。
多環式脂肪族カルボン酸は、例えば、C10−50縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC12−40縮合多環式脂肪族カルボン酸、より好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸を含む。
多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、例えば、C10−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、より好ましくはC18−30縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸を含む。
カルボキシル基を有する有機化合物において、カルボキシル基は、無水物、水和物などを形成していてもよい。カルボキシル基を有する有機化合物において、一部又は全部のカルボキシル基は、例えば、アミンとの塩、金属塩などの塩を形成してもよい。本実施形態では、分子中のすべてのカルボキシル基が、例えば、アミン塩などの塩基性化合物との塩などの塩を形成していない有機化合物、すなわち、遊離のカルボキシル基を有する有機化合物を好適に使用できる。
また、カルボキシル基を有する有機化合物は、カルボキシル基の他に、更に、カルボキシル基以外の官能基、若しくは、金属化合物、又は金属粒子に対する配位基などを有してもよい。カルボキシル基以外の官能基、若しくは配位基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子などのハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する官能基、若しくは配位基が挙げられる。
窒素原子を有する官能基は、アミノ基、ジアルキルアミノ基などの置換アミノ基、イミノ基(−NH−)、窒素環基、アミド基(−CON<)、シアノ基、及びニトロ基などを含む。窒素環基は、ピリジル基などの5乃至8員窒素環基、カルバゾール基、及びモルホリニル基などを含む。
酸素原子を有する官能基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ホルミル基、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、及び酸素環基などを含む。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基などのC1−6アルコキシ基などを含む。酸素環基は、テトラヒドロピラニル基などの5乃至8員酸素環基などを含む。
硫黄原子を有する官能基は、例えば、チオ基、チオール基、チオカルボニル基(−SO−)、アルキルチオ基、スルホ基、スルファモイル基、及びスルフィニル基(−SO2−)などを含む。アルキルチオ基は、メチルチオ基、及びエチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基などを含む。
窒素原子を有する官能基、酸素原子を有する官能基、硫黄原子を有する官能基は、例えば、アンモニウム塩など塩を形成してもよい。カルボキシル基を有する有機化合物は、カルボキシル基の他に、一種以上の上記のカルボキシル基以外の官能基、若しくは配位基を有していてもよい。
カルボキシル基を有する有機化合物は、カルボキシル基以外の官能基、若しくは配位基として、カルボキシル基と塩を形成可能な塩基性基を有していないことが好ましい。カルボキシル基と塩を形成可能な塩基性基としては、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アンモニウム塩基などが挙げられる。
カルボキシル基を有する有機化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、カルボキシル基を有する有機化合物の分子量は、好ましくは1000以下、例えば46乃至900の範囲、より好ましくは800以下、例えば50乃至700の範囲、更に好ましくは600以下、例えば100乃至500の範囲である。また、カルボキシル基を有する有機化合物のpKa値は、好ましくは、1以上、例えば、1乃至10程度、より好ましくは2以上、例えば、2乃至8程度である。
−高分子分散剤−
本実施形態では、保護コロイドとして、カルボキシル基を有する有機化合物を単独で使用してもよいが、カルボキシル基を有する有機化合物と高分子分散剤とを組み合わせて使用してもよい。このような組み合わせで保護コロイドを構成することにより、粗大粒子が著しく少ない銀粒子を含む銀コロイドが得られる。特に、本実施形態では、特定の保護コロイドを組み合わせることで、粗大粒子が減少し、銀粒子の割合が大きい銀コロイドにおいても、分散液の保存安定性が向上する。
高分子分散剤としては、銀粒子を被覆可能であれば特に限定されないが、両親媒性の高分子分散剤、又はオリゴマー分散剤が好適である。
高分子分散剤としては、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている公知の高分子分散剤が例示できる。このような分散剤は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、天然高分子、ポリエチレンスルホン酸塩、及びナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などを含む。
スチレン系樹脂は、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、及びスチレン−無水マレイン酸共重合体などを含む。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体などを含む。セルロース誘導体は、ニトロセルロース;エチルセルロースなどのアルキルセルロース;エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;及びカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;などのセルロースエーテル類などを含む。ポリアルキレングリコールは、液状のポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどを含む。天然高分子は、ゼラチン、及びデキストリンなどを含む。
高分子分散剤としては、例えば、親水性モノマーで構成された親水性ユニットを含む樹脂が含まれる。高分子分散剤は、両親媒性の高分子分散剤であってもよい。親水性ユニットは、親水性ブロックであってもよい。樹脂は、水溶性樹脂、又は水分散性樹脂であってもよい。
親水性モノマーとしては、カルボキシル基、又は酸無水物基含有単量体、若しくは調製例含有単量体などの付加重合系モノマー;アルキレンオキシドなどの縮合系モノマーなどが例示される。縮合系モノマーは、例えば、ヒドロキシ基含有単量体のヒドロキシ基などの官能基との反応により、親水性ユニットを形成してもよい。親水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて親水性ユニットを形成していてもよい。
カルボキシル基、又は酸無水物基含有単量体は、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル系単量体、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、及び無水マレイン酸などを含む。ヒドロキシ基含有単量体は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びビニルフェノールなどを含む。アルキレンオキシドは、エチレンオキシドなどを含む。
高分子分散剤は、少なくとも親水性ユニット又は親水性ブロックを含んでいればよく、親水性モノマーの単独重合体、又は共重合体であってもよく、上記のスチレン系樹脂やアクリル系樹脂などのように、親水性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体であってもよい。親水性モノマーの共重合体は、例えば、ポリアクリル酸又はその塩などを含む。
疎水性モノマーは、非イオン性モノマーであってもよい。疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;α−C2−20オレフィンなどのオレフィン系モノマー;及び酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどを含む。疎水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて疎水性ユニットを構成していてもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;及び(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルなどを含む。α−C2−20オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−ドデセンなどを含む。
高分子分散剤は、例えば、親水性モノマー、及び疎水性モノマーなどのコポリマーである場合、ランダムコポリマー、交互共重合体、ブロックコポリマー、又はくし型コポリマーなどであってもよい。ブロックコポリマーは、例えば、親水性モノマーを有する親水性ブロックと、疎水性モノマーを有する疎水性ブロックとで構成されたコポリマーを含む。くし型コポリマーは、くし型グラフトコポリマーを含む。ブロックコポリマーの構造は、特に限定されず、ジブロック構造、トリブロック構造(ABA型、BAB型)などであってもよい。また、くし型コポリマーにおいて、主鎖は、親水性ブロックで構成しても、疎水性ブロックで構成してもよく、親水性ブロックおよび疎水性ブロックで構成してもよい。
なお、親水性ユニットは、例えば、エチレンオキシドのアルキレンオキシドで構成された親水性ブロックなどの縮合系ブロックを含んでもよい。親水性ブロックは、例えば、ポリエチレンオキシド、及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシドを含む。親水性ブロックとポリオレフィンブロックなどの疎水性ブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などの連結基を介して結合していてもよい。これらの結合は、例えば、疎水性ブロックを変性剤で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成してもよい。変性剤は、(無水)マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物、ラクタム又はアミノカルボン酸、ヒドロキシルアミン、ジアミンなどを含む。
また、ヒドロキシ基、又はカルボキシル基などの親水性基を有するモノマーから得られるポリマーと、エチレンオキシドなどの縮合系の親水性モノマーとを反応、又は結合させることにより、主鎖が疎水性ブロックで構成されたくし型コポリマーを形成してもよい。ヒドロキシ基、又はカルボキシル基などの親水性基を有するモノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどを含む。
さらに、共重合成分として、親水性の非イオン性モノマーを使用することにより、親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。親水性の非イオン性モノマーとしては、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、数平均分子量200乃至1000程度のポリエチレングリコールモノメタクリレートなどのアルキレンオキシユニット、好ましくはエチレンオキシユニットを有するモノマー又はオリゴマーなどを例示できる。また、カルボキシル基などの親水性基を、例えば、エステル化などで変性することにより親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。
高分子分散剤は、官能基を有してもよい。このような官能基としては、例えば、酸基、又は酸性基、若しくはヒドロキシ基などが挙げられる。酸基、又は酸性基は、例えば、カルボキシル基、又は酸無水物基、若しくはスルホ基などを含む。高分子分散剤は、これらの官能基を、単独で又は2種以上組み合わせて有してもよい。高分子分散剤は、これらの官能基のうち、好ましくは、酸基を有し、より好ましくは、カルボキシル基を有する。
また、高分子分散剤におけるカルボキシル基など酸基は、アミン、又は金属などと塩を形成してもよいが、アミン、又は塩基性化合物と塩を形成する場合、一部の酸基が塩を形成していること、すなわち、遊離の酸基を有することが好ましい。
カルボキシル基などの酸基を有する高分子分散剤において、酸価は、好ましくは、1mgKOH/g以上、例えば、2乃至100mgKOH/g、より好ましくは、3mgKOH/g以上、例えば、4乃至90mgKOH/g、より好ましくは、5mgKOH/g以上、例えば、6乃至80mgKOH/g、さらに好ましくは、7mgKOH/g以上、例えば、8乃至70mgKOH/gである。なお、酸基を有する高分子分散剤において、アミン価は0mgKOH/gであってもよい。なお、実施形態において、0は、測定により検出できない量も含む。
なお、高分子分散剤において、官能基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖であってもよい。このような官能基は、例えば、ヒドロキシ基などの親水性モノマー又は親水性ユニット由来の官能基であってもよく、また、無水マレイン酸などの官能基を有するモノマーを用いて共重合することでポリマー中に導入されてもよい。
高分子分散剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、高分子分散剤として、特開2004−207558号公報の記載の高分子量顔料分散剤を使用してもよい。
また、高分子分散剤は、市販品を用いてもよい。高分子分散剤又は少なくとも両親媒性の分散剤で構成された分散剤のうち、市販品としては、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース32550、ソルスパース31845、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090などのソルスパースシリーズ[アビシア(株)製];ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック193、ディスパービック194、ディスパービック2001、ディスパービック2050などのディスパービックシリーズ[ビックケミー(株)製];EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453[EFKAケミカル(株)製];アジスパーPB711、アジスパーPAl11、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911などのアジスパーシリーズ[味の素(株)製];フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745Wなどのフローレンシリーズ[共栄社化学(株)製];ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62などのジョンクリルシリーズ[ジョンソンポリマー(株)製]などが挙げられる。これらのうち、酸基を有する高分子分散剤には、ディスパービック190、ディスパービック194などが含まれる。
高分子分散剤の数平均分子量は、例えば、1500乃至100000、好ましくは2000乃至80000、より好ましくは、2000乃至60000、より好ましくは3000乃至50000、より好ましくは、5000乃至30000、さらに好ましくは7000乃至20000である。
(銀コロイド及びビニルポリマーを含む粒子)
本実施形態において、第一の樹脂粒子は、光輝性顔料、及びビニルポリマーを有していれば制限はないが、銀コロイド及びビニルポリマーを含むことが好ましい。「銀コロイド及びビニルポリマーを含む粒子」は、ビニルポリマー粒子中に銀コロイド粒子を封入した状態、及びビニルポリマー粒子の表面に銀コロイド粒子を吸着させた状態の何れか又は双方を含む。この場合、インクに配合される銀コロイド粒子は、すべてポリマー粒子に封入又は吸着されていなくてもよい。また、本発明の効果が損なわれない範囲において、銀コロイド粒子が単独でインクの水系分散媒中に分散していてもよい。銀コロイド粒子としては、ビニルポリマーによって吸着され得る銀コロイド粒子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記のビニルポリマーは、例えば、アリールアルキル基又はアリール基を含むアクリレート由来の構成単位を有するものが挙げられるが、これに限定されない。例えば、ビニルポリマーは、塩生成基含有モノマー、スチレン系マクロマー、疎水性モノマー、(メタ)アクリロニトリル、スチレン以外の芳香環含有モノマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、又はアルキルメタクリレート系マクロマーに由来する構成単位を含んでもよい。また、ビニルポリマーは、上記の他にも、ヒドロキシ基を有してもよく、炭素数1乃至22、好ましくは炭素数1乃至18のアルキル基を有する(メタ)アクリレート類に由来する構成単位を含んでもよい。
スチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成社製のAS−6、AS−6S、AN−6、AN−6S、HS−6S、HS−6等が挙げられる。
ビニルポリマーは、アリールアルキル基又はアリール基を含むアクリレート、スチレン系マクロマー及びアルキルメタクリレート系マクロマーに由来する構成要素を含有する群から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
インクにおける銀コロイド粒子及びビニルポリマーを含む粒子の体積平均粒子径は、250乃至900nmが好ましい。この範囲であることにより粒子の沈降を抑止され、粒子の記録媒体への定着性が向上する。
ビニルポリマーは、式(1)で表される親水性モノマー由来の構成単位を含有することが好ましい。
(1)式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、又は水素原子が炭素数1以上9以下のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示し、mは平均付加モル数を示し、7以上100以下の数である。
<<第二の樹脂粒子>>
光輝性顔料、及びビニルポリマーを含有する第一の樹脂粒子と、更に、その他の第二の樹脂粒子を含有することで、インクは、塗膜の金属光沢と耐擦性を良好に両立することができる。なお、本項目では、特に説明がない場合に、第二の樹脂粒子を「樹脂粒子」と表す。
樹脂粒子は、インク中の粒子の分散性を向上させ、またインク塗膜の硬度を高め耐擦性を向上させる。インクに含まれる樹脂粒子の最低造膜温度(以下、MFT(Minimum Film-Forming Temperature)と称することもある)は、金属光沢が得られ、インクの塗膜と記録媒体との密着性が得られること、かつ良好に耐擦性が得られることから、50乃至80℃であることが好ましい。最低造膜温度が50乃至80℃の樹脂粒子をインクに添加することで、最低造膜温度が50乃至80℃のインクを容易に製造することができる。
本実施形態においてMFTとは樹脂粒子をアルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていったときに透明な連続フィルムが形成される最低温度のことを指し、最低造膜温度未満の温度領域では、水不溶性樹脂は白色粉末状となることを指している。具体的には、MFTは、「造膜温度試験装置」(井元製作所製)、「TP−801 MFTテスター」(テスター産業製)などの市販のMFT測定装置で測定される値のことを指す。本実施形態において、MFTは、樹脂固形分30質量%の樹脂粒子を用いて測定した値のことである。
インクに含まれる樹脂粒子の平均粒子径は10乃至30nmである。平均粒子径がこの範囲において、塗膜の金属光沢と耐擦性とを最もよく両立することができる。
樹脂粒子における樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、及びアクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、記録物の堅牢性をより高いものにする点から、ウレタン樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、カーボネート基の高い凝集力により耐水性、耐熱性、耐摩耗性、耐候性、及び画像の耐擦過性が優れる点で好ましい。
インクにおける樹脂粒子の含有率は、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。この範囲内であると、インクの保存安定性、吐出安定性、金属光沢は向上する。
樹脂粒子は、分散剤とともに用いる強制乳化型であってもよいが、塗膜に分散剤が残り強度を下げることを防止する点から、分子構造中にアニオン基を有する、いわゆる自己乳化型が好適である。自己乳化型の樹脂粒子のアニオン基の酸価としては、水分散性、耐擦性、及び耐薬品性の点から、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/mg以上50mgKOH/mg以下がより好ましい。
自己乳化型の樹脂粒子におけるアニオン基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。これらの中でも、良好な水分散安定性を維持する点から、一部又は全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基が好ましい。このようなアニオン基を樹脂中に導入するには、アニオン基を有するモノマーを重合して樹脂を生成すればよい。
アニオン基を有する樹脂粒子の水分散体を製造する方法としては、水、及びアニオン基を有する樹脂粒子の混合物に、アニオン基を中和するための塩基性化合物を添加することが挙げられる。
アニオン基を中和するための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリンなどの有機アミン;モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン;Na、K、Li、Caなどを含む金属塩基化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
強制乳化型の樹脂粒子を用いて水分散体を製造する場合に利用する分散剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性の点から、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
上記のノニオン系界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、及びポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどを含む。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
上記のアニオン系界面活性剤は、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、及びアルキルアミンオキシドなどを含む。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩が好ましい。
これらの界面活性剤の含有量としては、樹脂全量に対して、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。界面活性剤の含有量が、0.1質量%以上30質量%以下であると、好適に樹脂が造膜し、付着性や耐水性に優れたインクが得られ、記録物がブロッキングすることがない点で有利である。
<<有機溶剤>>
インクに使用する有機溶剤としては特に制限されないが、有機溶剤として水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られる点で、本実施形態のインクには、沸点が250℃以下の有機溶剤が含まれていることが好ましい。本実施形態のインクに含まれる有機溶剤は、沸点250℃以下の水溶性有機溶剤のみからなることが好ましく、沸点220℃未満の水溶性有機溶剤のみからなることがより好ましい。インクは、沸点が250℃以下の水溶性有機溶剤を含有することにより、良好な乾燥性が得られ、また高光沢が得られる。
沸点が250℃以下の有機溶剤の中でも、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、及び2,3−ブタンジオールを含有する群から選ばれた少なくとも一種を含有することが好ましい。これらを用いた場合、ポリカーボネート系ウレタン樹脂との相性がよく、より造膜性に優れたインクを得ることができ、また高い光沢が得られやすい。
インク全体に含まれる水溶性有機溶剤の総量は20乃至70質量%の範囲が好ましく、30乃至60質量%の範囲がより好ましい。総量が20質量%以上であれば、インクが乾燥しにくくなるため、十分な吐出安定性が得られ、70質量%以下であると、粘度が高くなりすぎず、吐出安定性が得られる。
<<水>>
水は、インクの主な溶媒又は分散媒である。水としては、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射、または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合に、カビやバクテリアの発生を防止することができるので好ましい。インクにおける水の含有量は、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができるが25質量%以上75質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい。この範囲内であると、インクの環境負荷が低減する。
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S−1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
一般式(S−1)
(但し、一般式(S−1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
一般式(F−1)
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
一般式(F−2)
CnF2n+1−CH2CH(OH)CH2−O−(CH2CH2O)a−Y
上記一般式(F−2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1〜6の整数、又はCH2CH(OH)CH2−CmF2m+1でmは4〜6の整数、又はCpH2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN−403Nが特に好ましい。
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
<インクの製造方法>
インクの製造方法としては、例えば、上記の水、有機溶剤、第1の樹脂粒子、第2の樹脂粒子、及び必要に応じて、その他の成分を、撹拌混合する方法が挙げられる。撹拌混合としては、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いることができる。
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
<記録媒体>
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。前記非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
なお、記録媒体は、浸透性記録媒体であっても、非浸透性記録媒体であってもよく、これらの中でも、浸透性記録媒体のうち塩化ビニル記録媒体が好適である。非浸透性基材としては、非多孔質基材が好適に用いられる。
<インクカートリッジ>
本実施形態で用いられるインクカートリッジは、本実施形態のインクを収容する容器を有する。インクカートリッジとしては、インクを収容する容器の他、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材などを有する。
容器としては、特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを少なくとも有するものなどが挙げられる。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本実施形態におけるインクジェット記録装置は、インク吐出手段を有し、更に必要に応じて加熱手段など、適宜選択したその他の手段を有する。本実施形態のインクジェット記録方法は、インク吐出工程を有し、更に必要に応じて加熱工程など、適宜選択したその他の工程を含む。
本実施形態のインクジェット記録方法は、本実施形態のインクジェット記録装置により好適に実施することができる。インク吐出工程はインク吐出手段により好適に実施することができる。加熱工程は加熱手段により好適に実施することができる。また、その他の工程は、その他の手段により好適に実施することができる。
<インク吐出工程及びインク吐出手段>
インク吐出工程は、インク吐出手段が、本実施形態のインクに刺激を付与し、該インクを吐出させて画像を形成する工程である。インク吐出手段としては、特に制限はなく、例えば、インクジェットヘッド、などが挙げられる。
インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のものなどいずれの場合も含まれる。
上記の刺激は、例えば、刺激発生手段により発生させることができる。刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱エネルギー(温度);圧力、及び振動などの力学的エネルギー;並びに光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好ましい。
インクの吐出の態様としては、特に制限はなく、刺激の種類等に応じて異なり、例えば、刺激が「熱」の場合、インクジェットヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーによりインクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、インクジェットヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法が挙げられる。また、刺激が「圧力」の場合、例えばインクジェットヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、インクジェットヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法が挙げられる。
吐出させるインクの液滴の大きさは、例えば、3pl以上40pl以下が好ましく、その吐出噴射の速さは5m/s以上20m/s以下が好ましく、その駆動周波数は1kHz以上が好ましく、その解像度は300dpi以上が好ましい。
<加熱工程及び加熱手段>
加熱工程は、加熱手段が、画像が記録された記録媒体を加熱する工程である。インクジェット記録方法によると、記録媒体としての非浸透性記録媒体に高画像品質な画像を記録できるが、より一層高画質で耐擦性、及び記録媒体への密着性の高い画像の形成、並びに高速の記録条件にも対応できるようにするために、記録後に非浸透性記録媒体を加熱することが好ましい。記録後に加熱工程を有すると、インクに含まれる樹脂の造膜が促進されるため、記録物の画像硬度を向上させることができる。
上記の加熱手段としては、多くの既知の装置を使用することができ、例えば、温風発生手段を用いた強制空気加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等の装置などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
加熱温度としては、インクに含まれる水溶性有機溶剤の種類や量、及び添加する樹脂粒子の最低造膜温度に応じて変更することができ、更に印刷する記録媒体の種類に応じても変更することができる。
加熱温度としては、乾燥性、及び造膜温度の点から、非浸透性記録媒体にダメージを与えない程度に高いことが好ましく、具体的には、40℃以上120℃以下が好ましく、50℃以上90℃以下がより好ましい。加熱温度が、40℃以上120℃以下であると、非浸透性記録媒体の熱によるダメージを防止し、インクジェットヘッドが温まることにより不吐出が生じることを抑制することができる。
<その他の工程及びその他の手段>
その他の工程としては、例えば、刺激発生手段による刺激発生工程、制御手段による制御工程などが挙げられる。刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエーター、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエーター、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエーター、静電力を用いる静電アクチュエーター、などが挙げられる。制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
本実施形態のインクジェット記録方法の一例としては、本実施形態の光輝性顔料を含むインク、必要に応じて、その他のインク、例えば、顔料を含まないクリアインク、光輝性顔料以外の着色剤を含有するインクを記録媒体に付与する工程を有してもよい。この際、これらのインクは、記録媒体の全面に塗布されても、記録媒体の一部に塗布されてもよい。本実施形態の光輝性顔料を含むインクを記録媒体の一部に塗布する場合は、例えば、その他のインクを用いて記録を行う箇所と同一の箇所に塗布してもよいし、又は記録を行う箇所と一部共通する箇所に塗布してもよい。
その他のインクは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のインクを含む。本実施形態では、これらのインクに代えて、あるいは、これらのインクに加えて、上記の光輝性顔料を含むインクが用いられる。
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
なお、本発明における記録物、即ち印刷物は、記録媒体と印刷層からなる印刷物において、印刷層が、光輝性顔料、ビニルポリマーを有する、上記のインクを用いて印刷した印刷物である。
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について図1乃至図2を参照して説明する。図1は同装置の斜視説明図である。図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
図1に示すインクジェット記録装置は、加熱手段を有することが好ましい。図3は、図1及び図2に示すインクジェット記録装置の加熱手段の一例を示す概略図である。ローラ157,158の回転により、搬送ベルト151上の記録媒体142は、ローラ158側からローラ157側の方向に移動する。加熱手段としての加熱ファン201は、記録媒体142に形成された画像に温風202を吹き付けて加熱する。なお、搬送ベルト151の記録媒体142と反対側には、ヒーター群203が設けられており、画像形成された記録媒体142を加熱する。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
まず、顔料分散体の製造方法について説明する。
(銀コロイド粒子分散液の調製例1)
硝酸銀66.8g、カルボキシル基を有する高分子分散剤(ビッグケミー製、「ディスパービック190」)7.2g、及びコール酸(和光純薬製)1.8gを、イオン交換水100gに投入し、激しく撹拌し、懸濁液を得た。なお、ディスパービック190における溶媒は水であり、不揮発成分は40%であり、酸価は10mgKOH/gであり、アミン価は0mgKOH/gである。
この懸濁液に対して、ジメチルアミノエタノール(和光純薬製)100gを、水温が50℃を超えないように徐々に加えたのち、水温50℃のウォーターバス中で3時間加熱撹拌した。加熱撹拌して得られた反応液を、ガラスフィルタ(ADVANTEC製GC−90、ポアサイズ0.8マイクロメートル)でろ過し、銀を15質量%含む銀コロイド粒子分散液を得た。
得られた銀コロイド粒子分散液の粒度分布を、粒度分析装置(Nanotrac Wave−EX150、日機装株式会社製)を用いて測定したところ、50%累積体積粒径(D50)が5nm、及び90%累積体積粒径(D90)が30nmであった。
<銀コロイド粒子含有ポリマー粒子分散体の調製例2>
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレン系マクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレン系マクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。続いて、混合溶液を65℃で1時間熟成した後、フラスコ内に、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。
得られたポリマー溶液28g、調製例1の銀コロイド粒子分散液26g、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に撹拌した後、三本ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に撹拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分が20質量%の銀コロイド粒子含有ビニルポリマー粒子を得た。得られた銀コロイド粒子含有ビニルポリマー粒子について、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した平均粒子径(D50)は100nmであった。
<ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンAの調製例3>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートの反応生成物)1500g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下DMPAということがある)220g、及び、N−メチルピロリドン(以下NMPということがある)1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。
次いで、反応容器に、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを1445g、ジブチルスズジラウリレート(触媒)を2.6g加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。次いで、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加・混合したものの中から4340gを抜き出して、強撹拌しつつ水5400g及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1500gを投入し、35質量%の2−メチル−1,5−ペンタンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去して、第二の樹脂粒子としてのウレタン樹脂粒子を含むウレタン樹脂エマルジョンを得た。
(鱗片状アルミニウムコロイド粒子分散液の調製例4)
ステンレス容器内に、蒸留水41.7質量部、及び2−アミノ−2−メチルプロパノール0.8質量部を混合し、次に、水酸基含有アクリル樹脂(関西ペイント株式会社製、メタクリル酸メチル33質量%、アクリル酸ブチル27質量%、メタクリル酸ヒドロキシエチル20質量%、アクリル酸ヒドロキシブチル10質量%、アクリル酸ヒドロキシプロピル3質量%、及びアクリル酸7質量%の共重合体、平均分子量:50,000、固形分濃度:55質量%)18.2質量部を投入し、高速ディスパーにて、十分混合させ、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル10質量部、サーフィノール104A(非イオン系界面活性剤、エアプロダクツ株式会社製)0.7質量部を投入した。最後に、アルペースト7640NS(鱗片状アルミニウムペースト、東洋アルミニウム株式会社製、固形分濃度:70質量%、平均粒子径:16μm)28.6質量部を撹拌しながら投入し、均一になるまで十分混合して、鱗片状アルミニウムを20質量%含む鱗片状アルミニウムコロイド粒子分散液を得た。得られた鱗片状アルミニウムコロイド粒子分散液の粒度分布を、粒度分析装置(Nanotrac Wave−EX150、日機装株式会社製)を用いて測定したところ、50%累積体積粒径(D50)が15,845nm、及び90%累積体積粒径(D90)が19,676nmであった。
<<インクの調製>>
[実施例1]
上記で調製した材料等を以下の処方で混合撹拌後、0.2μmポリプロピレンフィルターにて濾過し銀色のインクを作製した。
調製例2の銀コロイド粒子含有ポリマー粒子分散体 15質量部
調製例3のポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンA 7.5質量部
アクリル系樹脂エマルジョン 2質量部
(DIC社製ボンコートR−3380−E)
界面活性剤 ソフタノールEP−5035
(日本触媒社製ポリオキシアルキレンアルキルエーテル) 2質量部
2,3−ブタンジオール(bp183℃) 20質量部
ジエチレングリコールnブチルエーテル(bp230℃) 15質量部
防腐防黴剤 プロキセルLV
(アビシア社製Benzisothiazolin−3−one溶液) 0.1質量部
イオン交換水 38.4質量部
(画像形成)
インクジェット用プリンタ(株式会社リコー製 IPSiO GXe5500)を用いて、25℃で、実施例1のインクを記録媒体へ吐出し、記録物として3×3cmのベタ画像を得た。記録媒体としては、IJ用光沢紙(ELECOM社製 名称:プラチナフォトペーパー EJK−QTA420)を用いた。
[実施例2〜8、比較例1〜3]
水、水溶性有機溶剤、水分散性樹脂、又は顔料分散液の量、又は種類を表1、2、又は3のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8、及び比較例1〜3のインクを調製した。実施例2〜8、及び比較例1〜3のインクを用いて、実施例1と同様に画像を形成した。なお、表中の、「銀コロイド粒子分散液」は調製例2の銀コロイド粒子含有ポリマー粒子分散体を示す。「銀コロイド粒子分散液(ビニルポリマー被覆無し)」は、調製例1の銀コロイド粒子分散液を示す。また表中の「アルミニウムコロイド粒子分散液」は、調製例4の鱗片状アルミニウムコロイド粒子分散液を示す。表中の量は質量%を示す。
<評価>
(光沢度)
各実施例、及び比較例のインクを用いて得られた乾燥後の記録物について、精密光沢度計(村上色彩技術研究所製 装置名 GM−26DS)を用いて煽り角度20度での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。光沢度の値が150以上(ランクC)であると、目視で金属光沢を確認できる。
−評価基準−
ランクA:700以上
ランクB:450以上700未満
ランクC:150以上450未満
ランクD:150未満
(色度)
各実施例、及び比較例のインクを、300dpi×300dpi、かつ1画素当たり30pLとして吐出して形成した5cm×5cmのベタ画像について、ベタ画像の乾燥後のCIEL*a*b色座標を、X−Rite 938 分光測色濃度計(X−Rite社製)を用いて測定し、下記評価基準に基づいて、「色度(色彩値(a*値)、及び色彩値(b*値))」を評価した。なお、Bランク以上であると、目視による色味が自然な銀色であり、実用できるレベルである。
−色彩値(a*値)の評価基準−
ランクA:−1.5≦a*≦1.5
ランクB:−3.5≦a*<−1.5、又は1.5<a*≦3.5
ランクC:a*<−3.5、又は3.5<a*
−色彩値(b*値)の評価基準−
ランクA:−1.5≦b*≦1.5
ランクB:−3.5≦b*<−1.5、又は1.5<b*≦3.5
ランクC:b*<−3.5、又は3.5<b*
<耐光性>
各実施例、及び各比較例のインクを、加熱手段として加熱ファンを有するインクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO GXe5500改造機)に充填し、非多孔質基材として白塩化ビニルシート(IJ5331、住友スリーエム社製)に対してベタ画像を形成した後、加熱ファンにより60℃で1,800秒間乾燥させた。
得られた各記録物をウェザオメータCi35A(アトラス社製、キセノン光源)にて外側フィルタ、内側フィルタ共にタイプSボロシリケイトガラスを使用してブラックパネル温度を89℃に設定し、50%RHで露光量が30kJ/m2になるまで暴露試験を実施した。試験前後の画像の褪色状態をX−Rite938(X−Rite社製)にて測定し、下記式から耐光性(色差ΔE*ab)を求め、下記基準により耐光性を判定した。
ΔE*ab=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)1/2
−評価基準−
A:ΔE*ab≦5
B:5<ΔE*ab≦10
C:10<ΔE*ab≦20
D:20<ΔE*ab
評価結果を表1乃至表3に示す。表から、実施例のインクにより形成される画像は、自然な銀色であり、かつ強い金属光沢、及び鏡面性(写像性)を発現し、且つ耐黄変性に優れていることがわかる。