JP2018145083A - 放射線量測定方法 - Google Patents

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Hikari Ikeda
光 池田
克 岩尾
Katsu Iwao
克 岩尾
慎護 中根
Shingo Nakane
慎護 中根
高山 佳久
Yoshihisa Takayama
佳久 高山
良憲 山▲崎▼
Yoshinori Yamazaki
良憲 山▲崎▼
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Abstract

【課題】高い再現性を有する放射線量測定方法及び放射線検出用ガラスの提供。【解決手段】モル%で、SiO2+B2O3:0.1〜30%、SiO2:0〜20%、B2O3:0〜10%、P2O5:40〜80%、Al2O3:1〜30%、Na2O:5〜40%、Ag2O:0.01〜2%を含有する放射線検出用ガラスを、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)の温度範囲で熱処理して蛍光強度を安定化した後に蛍光強度を測定する。更に、MgO:0〜10%、ZnO:0〜10%を含有し、モル比でP2O5/(SiO2+B2O3+Al2O3)1.2以上を含有することが好ましい放射線検出用ガラス。【選択図】なし

Description

本発明は、放射線検出用ガラスを用いて放射線の線量当量を測定する方法に関する。
放射線検出用ガラスは、放射線被ばく線量を測定するための検出物質として、医療分野、原子力分野等の放射線を取り扱う分野において広く用いられている。なお、ここで放射線とはベータ線、ガンマ線、エックス線等を指す。一般に放射線検出用ガラスには、例えば、銀イオンを含有したリン酸塩ガラスが用いられている。このガラスに放射線を照射すると、ガラス中に正孔と電子が生成し、生成した正孔と電子がガラス中のAgイオンに捕捉されてAg2+、Agとなる。ガラス中のAg2+、Agを、波長300〜400nmの紫外光により励起すると蛍光を発する(ラジオフォトルミネッセンス現象、以下「RPL現象」と示す。)。
RPL現象による蛍光強度は照射された放射線の線量当量(以下、「放射線量」と記す。)に比例するので、蛍光強度を測定する事により放射線量を計測する事が出来る。RPL現象によってガラス中に生成した蛍光中心は近接配位原子との相互作用により安定化し、室温下では蛍光中心の消失が起こらないため、長期間にわたり放射線量の計測が可能である。また、ガラス中に生成した蛍光中心は加熱処理により消失するため、繰り返して使用することが可能である。
また、放射線検出用ガラスを長期間保管する場合があり、保管前と保管後の放射線量の測定値が変化しないこと、つまり放射線量の測定値の再現性が求められる。しかし、RPL現象による蛍光強度は時間の経過とともに増加するため、放射線量の測定値の再現性が低下する問題があった。
そこで、RPL現象による蛍光強度を安定化させ、放射線量の測定値の再現性を向上するために、例えば特許文献1には、ガラスに放射線を照射した後にガラスを熱処理し、熱処理後のガラスの放射線量を測定する技術が開示されている。
特開2016−145145号公報
しかし、特許文献1に記載されている放射線量の測定方法では、測定値の再現性が十分に確保できないという問題があった。
以上に鑑み、本発明は、高い再現性を有する放射線量測定方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、種々の実験を繰り返した結果、ガラス組成を厳密に規制し、且つ、蛍光強度を測定する前に下記の温度範囲でガラスを熱処理することにより上記技術的課題を解決しえることを見出した。
即ち、本発明の放射線量測定方法は、モル%で、SiO+B 0.1〜30%、SiO 0〜20%、B 0〜10%、P 40〜80%、Al 1〜30%、NaO 5〜40%、AgO 0.01〜2%を含有する放射線検出用ガラスを、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)の温度範囲で熱処理して蛍光強度を安定化した後に蛍光強度を測定することを特徴とする。ここで、「ガラス転移点/4」とは、ガラス転移点を4で除した値であり、「ガラス転移点/2.5」とは、ガラス転移点を2.5で除した値である。
放射線検出用ガラスを、上記温度範囲で熱処理することにより、蛍光強度を十分に安定化させることが可能になる。そのため、本発明の放射線量測定方法は、放射線量測定値の再現性が高くなる。
本発明の放射線量測定方法において、放射線検出用ガラスが、モル%で、さらにMgO 0〜10%、ZnO 0〜10%を含有することが好ましい。
本発明の放射線量測定方法において、放射線検出用ガラスが、モル比で、P/(SiO+B+Al)が1.2以上であることが好ましい。
本発明の蛍光強度安定化方法は、モル%で、SiO+B 0.1〜30%、SiO 0〜20%、B 0〜10%、P 40〜80%、Al 1〜30%、NaO 5〜40%、AgO 0.01〜2%を含有する放射線検出用ガラスを、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)の温度範囲で熱処理することを特徴とする。
本発明によれば、高い再現性を有する放射線量測定方法を提供することができる。
本発明の放射線量測定方法は、モル%で、SiO+B 0.1〜30%、SiO 0〜20%、B 0〜10%、P 40〜80%、Al 1〜30%、NaO 5〜40%、AgO 0.01〜2%を含有する放射線検出用ガラスを、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)の温度範囲で熱処理して蛍光強度を安定化した後に蛍光強度を測定する。
まず、ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に示す。なお、各成分の含有量の説明において、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味する。
SiO及びBは、ガラスの耐候性を高めるために重要な成分であり、また蛍光検出感度を高める成分である。SiO+Bの含有量は0.1〜30%であり、0.3〜25%、0.5〜19%、0.7〜17%、1〜15%、特に1.5〜10%であることが好ましい。SiO+Bの含有量が少なすぎると、耐候性が著しく低下し易い。SiO+Bの含有量が多すぎると、ガラス化し難くなることに加えて、逆に耐候性が低下し易くなる。なお、「SiO+B」は、SiO及びBの各含有量の合量を意味する。
SiO及びBの好ましい範囲は以下の通りである。
SiOは、ガラスの耐候性を高める成分であり、また蛍光検出感度を高める成分である。SiOの含有量は0〜20%であり、0.1〜19%、0.1〜18%、0.5〜17%、0.7〜16%、1〜15%、特に1.5〜10%であることが好ましい。SiOの含有量が多過ぎると、溶融性が低下しガラス化し難くなることに加えて、クリストバライト等の失透結晶が析出し易くなる。
は、ガラスの耐候性を高めるために重要な成分であり、また蛍光検出感度を高める成分である。Bの含有量は0〜10%であり、0.1〜9%、0.5〜8%、0.7〜7%、1〜6%、特に1.5〜5%であることが好ましい。Bの含有量が多過ぎると、分相によってガラス化し難くなることに加えて、逆に耐候性が低下し易くなる。
は、ガラスの骨格を形成する主成分である。Pの含有量は40〜80%であり、45〜75%、47〜70%、特に55〜63%であることが好ましい。Pの含有量が少な過ぎると、蛍光検出感度の低下が起こり易く、またガラスが分相、失透し易くなる。一方、Pの含有量が多過ぎると、溶融性が低下しガラス化し難くなる。
Alは、ガラスの耐候性を高める成分であると共に、分相、失透を抑制する成分である。Alの含有量は1〜30%であり、3〜25%、5〜20%、特に7〜16%であることが好ましい。Alの含有量が少な過ぎると、耐候性が低下し易くなる。一方、Alの含有量が多過ぎると、溶融性が低下しガラス化し難くなる。
/(SiO+B+Al)は1.2以上、特に1.5以上であることが好ましい。P/(SiO+B+Al)が小さ過ぎると分相や失透が起り易くなって、ガラス化し難くなる。また、P/(SiO+B+Al)の上限は特に限定されないが、P/(SiO+B+Al)が大き過ぎるとガラス化し難くなったり、耐候性が低下し易くなるため、5以下、4.5以下、特に4以下であることが好ましい。なお、「P/(SiO+B+Al)」はPの含有量をSiO、B及びAlの合量で除した値を指す。
なお、P/(SiO+Al)は1.2以上、特に1.5以上であることが好ましい。P/(SiO+Al)が小さ過ぎると分相や失透が起り易くなって、ガラス化し難くなる。また、P/(SiO+Al)の上限は特に限定されないが、P/(SiO+Al)が大き過ぎるとガラス化し難くなったり、耐候性が低下し易くなるため、5以下、4.5以下、特に4以下であることが好ましい。なお、「P/(SiO+Al)」はPの含有量をSiO及びAlの合量で除した値を指す。
NaOはガラス融液の粘度を下げて、溶融性を顕著に高める成分であると共に、蛍光検出感度を高める成分である。NaOの含有量は5〜40%であり、10〜37%、特に20〜30%であることが好ましい。NaOの含有量が少な過ぎると、溶融性が低下し易くなることに加えて、蛍光検出感度が低下しやすくなる。一方、NaOの含有量が多過ぎると、耐候性が低下し易くなる。
AgOはRPL現象によって蛍光中心を形成するための重要な成分である。AgOの含有量は、0.01〜2%であり、0.01〜1%、特に0.05〜0.5%であることが好ましい。AgOの含有量が少な過ぎると蛍光検出感度が低下し易くなる。一方、AgOの含有量が多過ぎると耐候性が低下し易くなる。
本発明における放射線検出用ガラスは、上記成分以外にも以下の成分を含有することができる。
MgOはガラスの耐候性を高める成分である。MgOの含有量は0〜10%、0〜7%、特に0〜4%であることが好ましい。MgOの含有量が多過ぎると、リン酸マグネシウム等の失透結晶が析出し易くなって、液相温度が上昇し易くなる。
ZnOはガラスの分相、失透を抑制する成分である。ZnOの含有量は0〜10%、0〜7%、特に0〜4%であることが好ましい。ZnOの含有量が多過ぎると、耐候性、蛍光検出感度が低下し易くなる。
CaO、SrO及びBaOはガラスの耐候性を高める成分である。CaO+SrO+BaOの含有量は0〜15%、0〜10%、特に0〜5%であることが好ましい。CaO+SrO+BaOの含有量が多過ぎると蛍光検出感度が低下し易くなり、また液相温度が低下して、リン酸塩等の失透結晶が析出し易くなる。なお、「CaO+SrO+BaO」は、CaO、SrO及びBaOの各含有量の合量を意味する。
なお、CaO、SrO及びBaOの含有量の好ましい範囲は以下の通りである。
CaOの含有量は0〜15%、0〜10%、特に0〜5%であることが好ましい。
SrOの含有量は0〜15%、0〜10%、特に0〜5%であることが好ましい。
BaOの含有量は0〜15%、0〜10%、特に0〜5%であることが好ましい。
なお、放射線検出用ガラスの形状は特に限定されないが、通常は矩形等の板状である。
次に、本発明に用いられる放射線検出用ガラスの製造方法について説明する。
まず、所望の組成になるように調合した原料粉末を、均質なガラスが得られるまで溶融する。ここで、ガラス溶融用容器としては、石英ガラス、耐火物、グラッシーカーボン、白金や金等の金属等が使用できる。次いで、溶融ガラスをカーボン板等の上に流し出し、板状に成形した後、常温まで徐冷する。徐冷条件としては、例えば、徐冷点より約20℃高い温度から約2℃/分で降温することが好ましい。このようにして、放射線検出用ガラスを得ることができる。
なお、溶融時の酸素分圧が低くなるとAg成分が還元され易くなり、ガラス中にAgが生成しやすくなる。ガラス中にAgが多く存在すると、蛍光検出感度が低下し易くなる。そこで、Ag成分の還元を抑制するために、溶融温度を1000〜1400℃と低くするか、または、原料として酸化剤である硝酸塩を使用することが望ましい。なお、硝酸塩としては、硝酸銀、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム等を用いることができる。
次に、本発明の放射線量測定方法について説明する。
得られた放射線検出用ガラスの両面を光学研磨面(鏡面)となるように研磨した後、300〜500℃で30分〜3時間熱処理し、自然放射線によって形成された蛍光中心を消失させる。その後、試料の光学研磨面の垂直方向から約1Gyのエックス線を照射した後、蛍光強度を安定化するために熱処理する。熱処理温度は、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)であり、特に(ガラス転移点/3.5)〜(ガラス転移点/2.7)であることが好ましい。熱処理温度が低すぎると、蛍光強度が安定化しにくく、放射線量測定値の再現性が低くなり易い。一方、熱処理温度が高すぎると、長期保管時に蛍光強度が低下し易く、放射線量測定値の再現性が低くなり易い。具体的には、熱処理温度は、105〜200℃、特に110〜180℃であることが好ましい。また、熱処理時間は、10〜120分、特に20〜70分であることが好ましい。熱処理時間が短過ぎると、ガラス内部にまで熱が伝わりにくいため、蛍光強度が安定化しにくく、放射線量測定値の再現性が低くなり易い。一方、熱処理時間が長過ぎると、長期保管時に蛍光強度が低下し易く、放射線量測定値の再現性が低くなり易い。
ちなみに、SiOまたはBを含有するガラスは熱処理による蛍光強度の安定化が不十分になり易い。これは、ガラスがSiOまたはBを含有すると、粘度が高くなって正孔や電子の動きを妨げるため、Ag2+、Agの発生が不十分になるためであると考えられる。そこで、SiOまたはBを含有するガラスを上記の通り比較的高い温度で熱処理することで、ガラスの粘度を低下させ、正孔や電子の動きを活性化することができる。結果として、Ag2+、Agの発生を促進し、蛍光強度を十分に安定化させることが可能になる。
次に、熱処理後の放射線検出用ガラスの光学研磨面に紫外光を照射して、蛍光強度を測定し、放射線量を求める。熱処理後の放射線検出用ガラスの蛍光強度は十分に安定しているため、例えば、熱処理後の放射線検出用ガラスを温度0〜40℃、湿度0〜100%の環境下で、0超〜3000時間保管した後であっても蛍光強度を安定して測定することができる。なお、蛍光強度の測定は、熱処理後直ちに行っても差し支えないことは言うまでもない。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
表1及び2は、本発明の実施例で使用する放射線検出用ガラス(No.1〜17)及び比較例で使用する放射線検出用ガラス(No.18〜20)を示している。
まず表中のガラス組成になるように、各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の通常のガラスに使用される高純度原料を選定し、秤量して均一に混合したガラスバッチを石英ガラスるつぼに投入し、電気炉にて1000〜1300℃で1〜5時間、均質なガラスが得られるまで溶融した。なお、ガラスの均質化及び泡切れ等を目的として、溶融時に攪拌を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、板形状に成形した後、徐冷点より20℃程度高い温度から2℃/分で常温まで徐冷し、放射線検出用ガラスを得た。ここで、得られた放射線検出用ガラスのガラス転移点を熱機械分析装置(TMA)により測定した。
得られた放射線検出用ガラスの両面を光学研磨面(鏡面)となるように研磨した試料を400℃で1時間熱処理する事で、自然放射線によって形成された蛍光中心を消失させた後、試料の光学研磨面の垂直方向から約1Gyのエックス線を照射した。エックス線照射後、表に示す温度で30分間熱処理した。熱処理後の試料の蛍光検出感度の変化を評価した。
熱処理後、試料表面が30℃になるまで冷却した。冷却後直ちに、試料の光学研磨面に紫外光を照射して測定した蛍光強度を蛍光検出感度とした。なお、表1及び2に記載の蛍光検出感度の値は、No.20の試料の蛍光強度を1としたときの相対値である。
続いて、蛍光強度を測定した試料を温度25℃、湿度30%の恒温恒湿試験機内に168時間保管した。保管後の試料の光学研磨面に紫外光を照射して測定した蛍光強度を保管後の蛍光検出感度とした。なお、保管後の蛍光検出感度は、No.20の試料の保管前の蛍光強度を1としたときの相対値である。蛍光検出感度の変化を、[保管後の蛍光検出感度]/[蛍光検出感度]として算出した。なお、[保管後の蛍光検出感度]/[蛍光検出感度]が1に近いほど、蛍光検出感度の変化が小さく、放射線量測定値の再現性が高いことを示す。
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜17は、蛍光検出感度の変化が小さく、放射線量測定値の再現性が高かった。一方、比較例であるNo.18〜20は、蛍光検出感度の変化が大きく、放射線量測定値の再現性が低かった。

Claims (4)

  1. モル%で、SiO+B 0.1〜30%、SiO 0〜20%、B 0〜10%、P 40〜80%、Al 1〜30%、NaO 5〜40%、AgO 0.01〜2%を含有する放射線検出用ガラスを、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)の温度範囲で熱処理して蛍光強度を安定化した後に蛍光強度を測定することを特徴とする放射線量測定方法。
  2. 放射線検出用ガラスが、モル%で、さらにMgO 0〜10%、ZnO 0〜10%を含有することを特徴とする請求項1に記載の放射線量測定方法。
  3. 放射線検出用ガラスが、モル比で、P/(SiO+B+Al)が1.2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線量測定方法。
  4. モル%で、SiO+B 0.1〜30%、SiO 0〜20%、B 0〜10%、P 40〜80%、Al 1〜30%、NaO 5〜40%、AgO 0.01〜2%を含有する放射線検出用ガラスを、(ガラス転移点/4)〜(ガラス転移点/2.5)の温度範囲で熱処理することを特徴とする蛍光強度安定化方法。
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