以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る圧縮機1の概略構成について、図1、図2を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る圧縮機1の概略構成を示す側面図であり、図2は、当該圧縮機1の正面図である。
そして、第1実施形態に係る圧縮機1は、例えば、車両用空調装置ACにおける冷凍サイクル装置20の構成機器として用いられており、冷凍サイクル装置20の冷媒回路を流れる冷媒を吸入し、圧縮して吐出するように構成されている。
図1、図2に示すように、圧縮機1は、いわゆる電動圧縮機として構成されており、冷凍サイクル装置20における気相冷媒を圧縮する圧縮機構部2と、当該圧縮機1を作動させる為の駆動部3とを、略円柱状に形成されたハウジング5の内部に収容している。
当該圧縮機1は、車両前方側の車両ボンネット内に配置されており、車両ボンネットにおける床面を構成するボデーに対して、複数(例えば、4つ)の支持部材10を介して支持・固定されている。即ち、第1実施形態においては、車両ボンネット内におけるボデーが、本発明における取付対象物Mとして機能している。
ハウジング5は、熱伝導性の良いアルミ合金によって略円柱状に形成されており、耐圧容器を構成している。当該ハウジング5の下部には、平板状のベース板6が一体的に配置されている。このベース板6には、取付対象物Mに取り付けられた各支持部材10の上部側がナット等を用いて固定される。各支持部材10の構成等については後述する。
尚、第1実施形態における取付対象物Mとしてのボデーは平面状に形成されている。従って、ハウジング5のベース板6は、取付対象物Mの上方において、所定の間隔を隔てて平行に伸びている。
そして、ハウジング5の一方側(即ち、図1における右側)には、吸入口部7が配置されており、ハウジング5内部と冷凍サイクル装置20の冷媒回路とを接続している。従って、冷媒回路を流れる冷媒は、吸入口部7を介して、ハウジング5の内部に吸入され、圧縮機構部2に供給される。
又、ハウジング5の他方側(即ち、図1における左側)には、吐出口部8が配置されており、ハウジング5の内部と冷凍サイクル装置20の冷媒回路とを接続している。これにより、圧縮機構部2で圧縮された気相冷媒は、ハウジング5の内部から吐出口部8を介して、冷凍サイクル装置20の冷媒回路に吐出される。
上述したように、当該ハウジング5の内部には、圧縮機構部2と駆動部3が収容されている。圧縮機構部2は、ハウジング5の内部における所定位置に固定されており、駆動部3の作動によって、吸入口部7から吸入した気相冷媒を圧縮して吐出口部8から吐出するように構成されている。
尚、圧縮機構部2の詳細な構成は本発明に影響を与えないので、詳しい構造等の説明は省略する。この圧縮機構部2としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
そして、駆動部3は、ハウジング5内部に配置されており、電動モータを有している。当該電動モータは、ハウジング5に固定されたステータと、その内部に複数個の永久磁石により構成されたロータとを有している。当該ロータは、その内側で中心を通る回転軸に固定支持されており、回転軸は軸受けを介してハウジング5に対して回転可能に支持される。そして、回転軸の端部は、圧縮機構部2に接続され、駆動部3の駆動力を圧縮機構部2に伝達している。
この為、当該圧縮機1は、冷媒を圧縮して吐出する際に、駆動部3における回転軸周りの回転変動を伴う為、圧縮機1におけるハウジング5の振動及び騒音の原因となる。そして、この駆動部3における回転変動に伴って、取付対象物Mと平行方向および垂直方向の振動荷重が、各支持部材10を介して取付対象物Mに伝わる。
そして、第1実施形態において、駆動部3を構成する電動モータは、図4に示す空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御される。この電動モータとしては、交流モータ、直流モータの何れの形式を採用してもよい。そして、空調制御装置50が電動モータの回転数を制御することによって、圧縮機1の冷媒吐出能力を変更することができる。
従って、第1実施形態における冷媒は、吸入口部7からハウジング5内に流れ込み、冷媒通路(図示せず)を通り圧縮機構部2へ流れる。当該冷媒は、圧縮機構部2において圧縮され、ハウジング5に設けられた吐出口部8を介して冷凍サイクル装置20の冷媒回路へ吐出される。吐出された冷媒は、冷凍サイクル装置20の各構成機器を経由して、冷媒回路を流れた後、再び吸入口部7から流れ込む。冷媒の流れは上記のようなものであり、圧縮機1の耐圧容器であるハウジング5内の駆動部3は低圧の冷媒ガスで充満される。
図1、図2に示すように、当該圧縮機1のハウジング5は、吸入口部7側の二カ所と吐出口部8側の二カ所に配置された支持部材10によって、取付対象物Mに対して支持・固定されている。各支持部材10における下端の一部が取付対象物Mに埋め込まれることによって、各支持部材10は、取付対象物Mに対して固定される。その状態の各支持部材10上部のボルトに対してハウジング5のベース板6を据え付け、ナットによってそれぞれ締結することで、取付対象物Mに対して各支持部材10及び圧縮機1は固定される。
そして、当該支持部材10は、第1支持部材10aと、第2支持部材10bを有して構成されている。第1支持部材10aは、4つの支持部材10の内、吸入口部7側に配置されているものであり、ゴム製の第1防振部材13aを有して構成されている。第1支持部材10aにおける第1防振部材13aは、後述するように、予め定められた標準温度において所定のバネ定数Kaを示すように形成されており、ハウジング5のベース板6と取付対象物Mとの間に配置される。
この為、第1防振部材13aは、駆動部3の作動による圧縮機1の変位に伴って弾性変形する。即ち、第1支持部材10aは、圧縮機1の吸入口部7側にて、圧縮機1の作動に伴う騒音及び振動を抑制する機能を果たす。第1支持部材10a及び第1防振部材13aの具体的構成については後に詳細に説明する。
第2支持部材10bは、4つの支持部材10の内、吐出口部8側に配置されているものであり、ゴム製の第2防振部材13bを有して構成されている。第2支持部材10bにおける第2防振部材13bは、標準温度におけるバネ定数Kbが第1防振部材と異なるように形成されており、ハウジング5のベース板6と取付対象物Mとの間に配置される。
この為、第2防振部材13bは、駆動部3の作動による圧縮機1の変位に伴って弾性変形する。即ち、第2防振部材13bは、圧縮機1の吐出口部8側にて、圧縮機1の作動に伴う騒音及び振動を抑制する機能を果たす。第2支持部材10b及び第2防振部材13bの具体的構成については後に詳細に説明する。
次に、上述したように構成された圧縮機1を含む冷凍サイクル装置20及び車両用空調装置ACの概略構成について、図3を参照しつつ説明する。
第1実施形態に係る冷凍サイクル装置20は、自動車に搭載される車両用空調装置ACに適用されている。この冷凍サイクル装置20は、車両用空調装置ACにおいて、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却或いは加熱する機能を果たす。従って、第1実施形態における熱交換対象流体は、送風空気である。
更に、冷凍サイクル装置20は、少なくとも、暖房モードの冷媒回路、冷房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。ここで、車両用空調装置ACにおいて、暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。又、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。尚、図3では、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示し、冷房モードの冷媒回路における冷媒の流れを白抜き矢印で示している。
この冷凍サイクル装置20では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力Pcが冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)や自然冷媒(例えば、R744)等を採用してもよい。更に、冷媒には圧縮機1を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
図3に示すように、冷凍サイクル装置20は、上述した圧縮機1と、第1膨張弁25aと、第2膨張弁25bと、室外熱交換器26と、逆止弁27と、室内蒸発器28と、蒸発圧力調整弁29と、アキュムレータ30と、第1開閉弁31と、第2開閉弁32とを有している。
上述したように、圧縮機1は、冷凍サイクル装置20の冷媒回路において、吸入口部7側から冷媒を吸入して圧縮し、圧縮した気相冷媒を吐出口部8側から冷媒回路に吐出するように構成されている。
圧縮機1の吐出口部8には、室内凝縮器22の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器22は、暖房モード時に、加熱用熱交換器として機能する。即ち、室内凝縮器22は、暖房モード時に、圧縮機1から吐出された高温高圧の吐出冷媒と後述する室内蒸発器28を通過した送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する。室内凝縮器22は、後述する室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。
室内凝縮器22の冷媒出口には、第1三方継手23aの1つの流入出口側が接続されている。第1三方継手23aのような三方継手は、冷凍サイクル装置20において、分岐部或いは合流部としての機能を果たす。
例えば、第1三方継手23aでは、3つの流入出口のうち1つが、室内凝縮器22から流出した冷媒の流入口として用いられ、残りの2つが第1冷媒通路24a、第2冷媒通路24bへと流出させる為の流出口として用いられる。従って、第1三方継手23aは、1つの流入口から流入した冷媒の流れを分岐して2つの流出口から流出させる分岐部としての機能を果たす。これらの三方継手は、複数の配管を接合して形成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて形成してもよい。
更に、冷凍サイクル装置20は、後述するように、第2三方継手23b〜第4三方継手23dを備えている。第2三方継手23b〜第4三方継手23dの基本的構成は、第1三方継手23aと同様である。例えば、第4三方継手23dでは、3つの流入出口のうち2つが流入口として用いられ、残りの1つが流出口として用いられる。従って、2つの流入口から流入した冷媒を合流させて1つの流出口から流出させる合流部として、第4三方継手23dを機能させることができる。
そして、第1三方継手23aの別の流入出口には、第1冷媒通路24aが接続されている。第1冷媒通路24aは、室内凝縮器22から流出した冷媒を、室外熱交換器26の冷媒入口側へ導く。
又、第1三方継手23aのさらに別の流入出口には、第2冷媒通路24bが接続されている。第2冷媒通路24bは、室内凝縮器22から流出した冷媒を、後述する第3冷媒通路24cに配置された第2膨張弁25bの入口側(具体的には、第3三方継手23cの1つの流入出口)へ導く。
第1冷媒通路24aには、第1膨張弁25aが配置されている。第1膨張弁25aは、暖房モード時に、室内凝縮器22から流出した冷媒を減圧させる。第1膨張弁25aは、本発明における減圧装置として機能する。第1膨張弁25aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有する可変絞り機構である。
更に、第1膨張弁25aは、絞り開度を全開にすることによって、冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能付きの可変絞り機構として構成されている。第1膨張弁25aは、空調制御装置50から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁25aの出口側には、室外熱交換器26の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器26は、第1膨張弁25aから流出した冷媒と図示しない送風ファンから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものであり、車両ボンネット内の車両前方側に配置されている。送風ファンは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動送風機である。
具体的には、室外熱交換器26は、暖房モード時においては、外気から吸熱する吸熱器として機能する。冷房モード時においては、室外熱交換器26は、外気へ放熱する放熱器として機能する。
室外熱交換器26の冷媒出口側には、第2三方継手23bの1つの流入出口が接続されている。そして、第2三方継手23bの別の流入出口には、第3冷媒通路24cが接続されている。第3冷媒通路24cは、室外熱交換器26から流出した冷媒を、室内蒸発器28の冷媒入口側へ導く。
又、第2三方継手23bのさらに別の流入出口には、第4冷媒通路24dが接続されている。第4冷媒通路24dは、室外熱交換器26から流出した冷媒を、後述するアキュムレータ30の入口側(具体的には、第4三方継手23dの1つの流入出口)へ導く。
第3冷媒通路24cには、逆止弁27、第3三方継手23c、第2膨張弁25bが、冷媒流れに対してこの順に配置されている。逆止弁27は、冷媒が第2三方継手23b側から室内蒸発器28側へ流れることのみを許容するものである。第3三方継手23cには、上述した第2冷媒通路24bが接続されている。
第2膨張弁25bは、室外熱交換器26から流出して室内蒸発器28へ流入する冷媒を減圧させる。第2膨張弁25bは、本発明における減圧装置として機能する。第2膨張弁25bの基本的構成は、第1膨張弁25aと同様である。更に、第2膨張弁25bは、絞り開度を全閉した際にこの冷媒通路を閉塞する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。
従って、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置20では、第2膨張弁25bを全閉として第3冷媒通路24cを閉じることによって、冷媒回路を切り替えることができる。換言すると、第2膨張弁25bは、冷媒減圧装置としての機能を果たすと共に、サイクルを循環する冷媒の冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。
室内蒸発器28は、冷房モード時に冷却用熱交換器として機能する熱交換器である。即ち、室内蒸発器28は、冷房モード時に、第2膨張弁25bから流出した冷媒と室内凝縮器22通過前の送風空気とを熱交換させる。室内蒸発器28では、第2膨張弁25bにて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する。室内蒸発器28は、室内空調ユニット40のケーシング41内のうち、室内凝縮器22の送風空気流れ上流側に配置されている。
室内蒸発器28の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁29の流入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁29は、室内蒸発器28の着霜(フロスト)を抑制するために、室内蒸発器28における冷媒蒸発圧力を着霜抑制圧力以上に調整する機能を果たす。換言すると、蒸発圧力調整弁29は、室内蒸発器28における冷媒蒸発温度を予め定められた着霜抑制温度以上に調整する機能を果たす。
図3に示すように、蒸発圧力調整弁29の出口側には、第4三方継手23dが接続されている。又、上述したように、第4三方継手23dにおける他の流入出口には、第4冷媒通路24dが接続されている。そして、第4三方継手23dのさらに別の流入出口には、アキュムレータ30の入口側が接続されている。
アキュムレータ30は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ30の気相冷媒出口には、圧縮機1の吸入口部7側が接続されている。従って、アキュムレータ30は、圧縮機1に液相冷媒が吸入されることを抑制し、圧縮機1における液圧縮を防止する機能を果たす。
又、第2三方継手23bと第4三方継手23dとを接続する第4冷媒通路24dには、第1開閉弁31が配置されている。第1開閉弁31は、電磁弁によって構成されており、第4冷媒通路24dを開閉することによって冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置として機能する。第1開閉弁31は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
同様に、第1三方継手23aと第3三方継手23cとを接続する第2冷媒通路24bには、第2開閉弁32が配置されている。第2開閉弁32は、第1開閉弁31と同様に、電磁弁によって構成されており、第2冷媒通路24bを開閉することによって冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置として機能する。
次に、車両用空調装置ACを構成する室内空調ユニット40の概略構成について説明する。室内空調ユニット40は、冷凍サイクル装置20によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。この室内空調ユニット40は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
図3に示すように、室内空調ユニット40は、その外殻を形成するケーシング41の内部に、室内凝縮器22と、室内蒸発器28と、送風機42等を収容することによって構成されている。ケーシング41は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するものである。ケーシング41は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
ケーシング41における送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置43が配置されている。内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
具体的には、内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整することで、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させることができる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
そして、内外気切替装置43の送風空気流れ下流側には、送風機(ブロワ)42が配置されている。この送風機42は、内外気切替装置43を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機42は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機42における遠心多翼ファンの回転数(送風量)は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
送風機42の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器28及び室内凝縮器22が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器28は、室内凝縮器22よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
又、ケーシング41内には、冷風バイパス通路45が形成されている。冷風バイパス通路45は、室内蒸発器28を通過した送風空気を、室内凝縮器22を迂回させて下流側へ流す為の通路である。
室内蒸発器28の送風空気流れ下流側であって、且つ、室内凝縮器22の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア44が配置されている。エアミックスドア44は、室内蒸発器28通過後の送風空気のうち室内凝縮器22を通過させる風量割合を調整する際に用いられる。従って、車両用空調装置ACは、冷風バイパス通路45を全開開度とし、エアミックスドア44により室内凝縮器22へ向かう送風空気の流路を全閉することで、室内凝縮器22における熱交換量を最小値にすることができる。
又、室内凝縮器22の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、室内凝縮器22にて加熱された送風空気と、冷風バイパス通路45を通過して室内凝縮器22にて加熱されていない送風空気とが混合される。
更に、ケーシング41の送風空気流れ最下流部には、複数の開口穴が配置されている。混合空間にて混合された送風空気(空調風)は、これらの開口穴を介して、空調対象空間である車室内へ吹き出される。
これらの開口穴としては、具体的に、フェイス開口穴、フット開口穴、デフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。
更に、フェイス開口穴、フット開口穴及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口及びデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。従って、エアミックスドア44が、室内凝縮器22を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整されて、各吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度が調整される。
つまり、エアミックスドア44は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。エアミックスドア44は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替ドアを構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、それぞれリンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されており、連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替ドアによって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開にしてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開にしてフット吹出口から車室内乗員の足元に向けて送風空気を吹き出す吹出口モードである。
更に、乗員が、操作パネル65に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードとすることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
次に、車両用空調装置ACの制御系について、図4を参照しつつ説明する。車両用空調装置ACは、冷凍サイクル装置20の構成機器や室内空調ユニット40を制御する為の空調制御装置50を有している。従って、冷凍サイクル装置20の構成機器の一つである圧縮機1は、空調制御装置50によって制御される。
空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、空調制御装置50は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行うことで、出力側に接続された圧縮機1、第1膨張弁25a、第2膨張弁25b、第1開閉弁31、第2開閉弁32、送風機42、エアミックスドア44等の空調制御機器の作動を制御する。
即ち、第1実施形態に係る車両用空調装置ACにおいて、空調制御装置50は、図8に示す制御プログラムをROMから読み出して実行することによって、冷凍サイクル装置20における圧縮機1の作動態様を制御することができる。この制御態様については、後に図面を参照しつつ説明する。
そして、空調制御装置50の入力側には、空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。図4に示すように、空調制御用のセンサ群には、内気センサ51、外気センサ52、日射センサ53、吐出温度センサ54、高圧側圧力センサ55、蒸発器温度センサ56、低圧側圧力センサ57等が含まれる。
内気センサ51は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気センサ52は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ53は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。吐出温度センサ54は、圧縮機1吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度検出部である。高圧側圧力センサ55は、室内凝縮器22の出口側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pcを検出する高圧側圧力検出部である。
蒸発器温度センサ56は、室内蒸発器28における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度検出部である。蒸発器温度センサ56は、室内蒸発器28の熱交換フィン温度を検出している。ここで、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器28のその他の部位の温度を検出する温度検出部を採用してもよいし、室内蒸発器28を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出部を採用してもよい。
低圧側圧力センサ57は、冷凍サイクルの低圧側における冷媒圧力を検出する低圧側圧力検出部であり、圧縮機1の吸入口部7側における冷媒圧力を低圧側冷媒圧力Psとして検出する。
そして、当該空調制御装置50の入力側には、圧縮機1の作動を制御する為のセンサ群が接続されている。このセンサ群は、第1温度センサ58と、第2温度センサ59と、環境温度センサ60を含んで構成されている。
第1温度センサ58は、圧縮機1の吸入口部7側を支持する第1支持部材10aにおいて、第1防振部材13aに対して取り付けられており、第1防振部材13aの温度である第1温度(即ち、第1物理量)を検出して空調制御装置50へ出力する。従って、当該第1温度センサ58は、本発明における第1物理量取得部として機能する。
そして、第2温度センサ59は、圧縮機1の吐出口部8側を支持する第2支持部材10bにおいて、第2防振部材13bに対して取り付けられており、当該第2防振部材13bの温度である第2温度(即ち、第2物理量)を検出して空調制御装置50へ出力する。当該第2温度センサ59は、本発明における第2物理量取得部として機能する。
環境温度センサ60は、車両ボンネット内における圧縮機1の周囲に配置されており、当該圧縮機1周辺の外気温を環境温度として検出して空調制御装置50へ出力する。当該環境温度センサ60は、本発明における環境温度取得部として機能する。
更に、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル65が接続されている。従って、空調制御装置50には、操作パネル65に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル65に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、冷房スイッチ(A/Cスイッチ)、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等が含まれる。
オートスイッチは、車両用空調装置ACの自動制御運転を設定或いは解除する為の入力部である。冷房スイッチは、車室内の冷房を行うことを要求する為の入力部である。風量設定スイッチは、送風機42の風量をマニュアル設定する為の入力部である。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度である車室内設定温度Tsetを設定する為の入力部である。吹出モード切替スイッチは、吹出モードをマニュアル設定する為の入力部である。
尚、空調制御装置50は、その出力側に接続された各種空調制御機器を制御する制御部(換言すると、制御装置)が一体に構成されたものであるが、それぞれの空調制御機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの空調制御機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機1の作動を制御する構成が吐出能力制御部50aを構成している。又、空調制御装置50のうち、減圧装置である第1膨張弁25a及び第2膨張弁25bの作動を制御する構成が減圧制御部50bを構成している。そして、空調制御装置50のうち、冷媒回路切替装置である第1開閉弁31、第2開閉弁32等の作動を制御する構成が冷媒回路制御部50cを構成している。もちろん、吐出能力制御部50a、減圧制御部50b、冷媒回路制御部50c等を空調制御装置50に対して別体の制御部で構成してもよい。
車両用空調装置ACにおける各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。この空調制御プログラムは、操作パネル65のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。
空調制御プログラムのメインルーチンでは、空調制御用のセンサ群の検出信号及び各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Asは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
さらに、操作パネル65の冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度よりも低くなっている場合には、冷房モードでの運転を実行する。また、冷房スイッチが投入されていない場合には、暖房モードでの運転を実行する。この空調制御プログラムにより、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。そして、暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行される。
続いて、第1実施形態に係る圧縮機1を支持する支持部材10の構成について、図面を参照しつつ説明する。先ず、圧縮機1における吸入口部7側に配置される第1支持部材10aの構成について、図5を参照しつつ説明する。
上述したように、第1支持部材10aは、圧縮機1の吸入口部7側の二カ所において、ハウジング5のベース板6と取付対象物Mとの間に配置されている。図5に示すように、各第1支持部材10aは、略円柱状に形成されたゴム製の第1防振部材13aを有しており、一対のボルト部11a及び一対の支持板12aを備えて構成されている。
一対のボルト部11aは、第1防振部材13aの上面及び下面において、略円柱状に形成された第1防振部材13aの中心軸に沿って伸びている。第1防振部材13aの下端側のボルト部11aは、取付対象物Mに対して埋め込まれる。一方、第1防振部材13aの上端側のボルト部11aは、圧縮機1におけるハウジング5のベース板6を据え付ける際に用いられ、ナットが締結される部分である。
一対の支持板12aは、第1防振部材13aの上面及び下面に沿って配置された円板状の部材である。上側の支持板12aは、第1防振部材13aの上面とハウジング5のベース板6下面との間に介在する。下側の支持板12aは、第1防振部材13aの下面と取付対象物M表面との間に介在する。
図5に示すように、第1防振部材13aは、ゴムによって円柱状に形成されており、その中心軸に沿った軸長寸法が軸長寸法Laとなるように構成されている。そして、第1防振部材13aの構成材料としては、シリコーンが用いられている。シリコーンのゴム硬度は50度を示す。
略円柱状に形成された第1防振部材13aの上面及び下面は、受圧部14aを構成している。当該受圧部14aは、圧縮機1のベース板6と取付対象物Mの間で、第1防振部材13aに作用する圧力荷重を受ける部分である。
第1防振部材13aの中心軸を囲むように側面部15aが形成されている。この側面部15aは、第1防振部材13aにおける上側の受圧部14aと下側の受圧部14aを接続するように構成されている。そして、側面部15aは、一対の受圧部14aの周縁に沿って伸びる曲面を為しており、中心軸方向への凹凸のない滑面として形成されている。
このように構成された第1防振部材13aにおいて、予め定められた標準温度でのバネ定数Kaは、シリコーンという構成材料及び、第1防振部材13aの形状によって、所定の基準値よりも小さい値を示す。
次に、圧縮機1の吐出口部8側に配置される第2支持部材10bの構成について、図6を参照しつつ説明する。第2支持部材10bは、圧縮機1の吐出口部8側の二カ所において、ハウジング5のベース板6と取付対象物Mとの間に配置されている。図6に示すように、各第2支持部材10bは、略円柱状に形成されたゴム製の第2防振部材13bを有しており、第1支持部材10aと同様に、一対のボルト部11b及び一対の支持板12bを備えて構成されている。
一対のボルト部11bは、第2防振部材13bの上面及び下面において、略円柱状に形成された第2防振部材13bの中心軸に沿って伸びている。第2防振部材13bの下端側のボルト部11bは、取付対象物Mに対して埋め込まれる。一方、第2防振部材13bの上端側のボルト部11bは、圧縮機1におけるハウジング5のベース板6を据え付ける際に用いられ、ナットが締結される部分である。
一対の支持板12bは、第2防振部材13bの上面及び下面に沿って配置された円板状の部材である。上側の支持板12bは、第2防振部材13bの上面とハウジング5のベース板6下面との間に介在する。下側の支持板12bは、第2防振部材13bの下面と取付対象物M表面との間に介在する。
図6に示すように、第2防振部材13bは、ゴムによって円柱状に形成されており、その中心軸に沿った軸長寸法が軸長寸法Lbとなるように構成されている。第2防振部材13bの軸長寸法Lbは、第1防振部材13aの軸長寸法Laに等しい。そして、第2防振部材13bの構成材料としては、EPDM(即ち、エチレンプロピレンジエンゴム)が用いられている。当該EPDMのゴム硬度は60度を示す。従って、当該第2防振部材13bは、第1防振部材13aよりも硬いゴム材料を用いて形成されている。
略円柱状に形成された第2防振部材13bの上面及び下面は、受圧部14bを構成している。当該受圧部14bは、圧縮機1のベース板6と取付対象物Mの間で、第2防振部材13bに作用する圧力荷重を受ける部分である。図5、図6からわかるように、第2防振部材13bにおける受圧部14bの受圧面積は、第1防振部材13aにおける受圧部14aの受圧面積よりも大きき形成されている。
第2防振部材13bの中心軸を囲むように側面部15bが形成されている。この側面部15bは、第2防振部材13bにおける上側の受圧部14bと下側の受圧部14bを接続するように構成されている。そして、側面部15bは、一対の受圧部14bの周縁に沿って伸びる曲面を為しており、中心軸方向への凹凸のない滑面として形成されている。
このように構成された第2防振部材13bにおいて、予め定められた標準温度でのバネ定数Kbは、EPDMという構成材料及び第2防振部材13bの形状によって、所定の基準値よりも大きい値を示す。即ち、標準温度において、第2防振部材13bのバネ定数Kbは、シリコーンとEPDMという構成材料の差や、受圧部14aと受圧部14aの受圧面積の差に基づいて、第1防振部材13aのバネ定数Kaよりも大きな値を示す。
このように構成された第1支持部材10a及び第2支持部材10bは、車両用空調装置ACの空調運転を行うと、圧縮機1の作動に伴う振動や騒音を抑制する。この圧縮機1の駆動部3の作動と、第1支持部材10aの第1防振部材13a、及び第2支持部材10bの第2防振部材13bとの関係性について図面を参照しつつ説明する。
上述したように、第1実施形態に係る車両用空調装置ACにおいては、圧縮機1は、冷凍サイクル装置20の構成機器として用いられている。圧縮機1は、駆動部3の作動に伴って、冷凍サイクル装置20の冷媒回路を循環する冷媒を、吸入口部7からハウジング5内部に吸入し、圧縮機構部2によって高温高圧の気相冷媒に圧縮する。そして、圧縮機1は、吐出口部8から高温高圧の気相冷媒を、冷凍サイクル装置20の冷媒回路上に吐出する。
この圧縮機構部2による冷媒圧縮の前後において冷媒の温度が変化する為、圧縮機1の吸入口部7周辺と吐出口部8周辺は、冷媒温度の影響を受けてそれぞれ異なる温度変化を示す。即ち、吸入口部7の周辺温度は、低温低圧の気相冷媒の影響を受け低下していき、吐出口部8の周辺温度は、高温高圧の気相冷媒の影響を受けて上昇していく。
上述したように、各第1支持部材10aは、圧縮機1の吸入口部7側においてハウジング5と取付対象物Mの間に配置されている為、ゴム製の第1防振部材13aも、吸入口部7周辺の温度変化の影響を受ける。即ち、第1防振部材13aのバネ定数は、吸入口部7の周辺温度の低下に伴って、標準温度におけるバネ定数Kaよりも大きくなっていき、圧縮機1の作動が安定し、吸入口部7周辺の温度が安定した時点でバネ定数Kalを示す。
一方、各第2支持部材10bは、圧縮機1の吐出口部8側において、ハウジング5と取付対象物Mの間に配置されている為、ゴム製の第2支持部材10bも、吐出口部8周辺の温度変化の影響を受ける。即ち、第2防振部材13bのバネ定数は、吐出口部8の周辺温度の上昇に伴って、標準温度におけるバネ定数Kbよりも小さくなっていき、圧縮機1の作動が安定し、吐出口部8周辺の温度が安定した時点でバネ定数Kbhを示す。
標準温度時における第1防振部材13aのバネ定数Ka及び第2防振部材13bのバネ定数Kbは、圧縮機1の作動が安定した時点のバネ定数Kal及びバネ定数Kbhが略等しくなるように定められる。この時、バネ定数Kal及びバネ定数Kbhが示す数値については、圧縮機1の仕様、取付対象物Mに対する圧縮機1の取付態様、圧縮機1の使用環境等に応じて適宜決定される。尚、本実施形態においては、本発明における基準値は、標準温度時において、バネ定数Kal及びバネ定数Kbhと略等しい値を示すものとする。
圧縮機1における駆動部3の作動に伴って、第1防振部材13a及び第2防振部材13bのバネ定数が変化すると、第1支持部材10aを含む振動系における固有振動数、第2支持部材10bを含む振動系における固有振動数も変化してしまう。
ここで、振動系における固有振動数fnは、以下数式F2に基づいて算出される。
fn=1/2π×√(K/m)…(F2)
Kは当該振動系におけるバネ定数、mは振動系における圧縮機1の荷重である。
そして、第1支持部材10a、第2支持部材10b等の防振性能を表す指標として、振動伝達率Trが知られている。振動伝達率Trは、支持点(即ち、第1支持部材10a、第2支持部材10bの配設位置)における反力の大きさと、振動源(即ち、圧縮機1)から入力される力の比で定義され、第1支持部材10a、第2支持部材10bによって取付対象物Mに伝わる振動をどのくらい低減できているかを表している。防振性能を発揮させる為には、振動伝達率Trが1未満であることが必要である。
この振動伝達率Trは、以下数式F3に基づいて算出することができる。
Tr=1/(1−(f/fn)^2)
ここで、fは取付対象物Mに作用する振動数であり、fnは、振動系における固有振動数である。
数式F2、数式F3からわかるように、第1防振部材13a、第2防振部材13bのバネ定数が、吸入口部7や吐出口部8の周辺温度によって変化すると、それぞれの振動系における固有振動数fn及び振動伝達率Trに大きな影響を及ぼす。
第1防振部材13aにおける振動伝達率等に対する吸入口部7の周辺温度の影響を、図7を参照して説明する。図7におけるTaは、標準温度時における第1防振部材13aの振動伝達率を示し、Talは、圧縮機1の作動安定時における第1防振部材13aの振動伝達率を示している。
圧縮機1の作動によって吸入口部7の周辺温度が標準温度から低下していき、圧縮機1の作動が安定した状態になると、第1防振部材13aにおける振動伝達率は、TaからTalに変化する。図7のグラフにおけるTa、Talのピークは、それぞれの状況における固有振動数を示す為、第1防振部材13aに係る固有振動数は、吸入口部7の周辺温度の低下に伴う第1防振部材13aのバネ定数の上昇によって大きく上昇する。
続いて、第2防振部材13bにおける振動伝達率等に対する吐出口部8の周辺温度の影響を、図面を参照して説明する。図7におけるTbは、標準温度時における第2防振部材13bの振動伝達率を示し、Tbhは、圧縮機1の作動安定時における第2防振部材13bの振動伝達率を示している。
圧縮機1の作動によって吐出口部8の周辺温度が標準温度から上昇していき、圧縮機1の作動が安定した状態になると、第2防振部材13bにおける振動伝達率は、TbからTbhに変化する。図7のグラフにおけるTb、Tbhのピークは、それぞれの状況における固有振動数を示す為、第2防振部材13bに係る固有振動数は、吐出口部8の周辺温度の上昇に伴う第2防振部材13bのバネ定数の低下によって低下することになる。
ここで、上述したように、圧縮機1の作動が安定した状態において、第1防振部材13aのバネ定数Kalは、第2防振部材13bのバネ定数Kbhと略等しくなるように定められている。
従って、数式F2や図7からわかるように、圧縮機1の作動が安定した状態では、第1防振部材13aに係る固有振動数は、第2防振部材13bに係る固有振動数と略等しくなる。そして、これに伴って、圧縮機1の作動が安定した状態において、第1防振部材13aに係る振動伝達率Talは、第2防振部材13bに係る振動伝達率Tblと略等しい傾向を示す。
従って、第1実施形態に係る圧縮機1によれば、圧縮機1の作動に伴う吸入口部7側、吐出口部8側における周辺温度の変化を利用して、当該圧縮機1が安定して作動している状況における第1防振部材13aのバネ定数Kalと第2防振部材13bのバネ定数Kbhの差を小さくすることができる。これにより、当該圧縮機1によれば、圧縮機1の安定作動時において、各支持部材10間のバネ定数のバランスを崩すことなく、圧縮機1全体を支持することができ、圧縮機1の作動に起因する振動が増幅する虞を低減できる。
図7に示すように、圧縮機1の安定作動時において、第1防振部材13a及び第2防振部材13bのバネ定数の差が小さくなると、第1防振部材13a及び第2防振部材13bの固有振動数も近づくことになる。この為、当該圧縮機1は、圧縮機1全体を支持する各支持部材10間の固有振動数のアンバランスを抑制することができ、これに起因する振動の増加を抑制することができる。
又、この固有振動数を避ければ、車両用空調装置ACや冷凍サイクル装置20における他の構成機器の共振を回避することができ、共振による構成機器の破損を容易に防止することができる。
次に、第1実施形態において、圧縮機1の作動に際して実行される制御処理の内容について、図8を参照しつつ詳細に説明する。この制御処理は、圧縮機1における駆動部3の作動を開始する際に、空調制御装置50によって、空調制御装置50のROMから読み出されて実行される。
図8に示すように、先ず、ステップS1では、圧縮機1の作動条件である圧縮機1による吐出冷媒圧力の上限値が、予め定められた通常上限値Pn(MPa)に設定される。即ち、圧縮機1による吐出冷媒圧力の上限値である通常上限値Pnは、通常運転時における冷媒吐出能力の上限を示している。
ステップS2においては、第1温度センサ58で検出される第1温度が第1基準温度以下であるか否かが判断される。この第1基準温度は、環境温度センサ60で検出される圧縮機1周辺の環境温度を基準として、予め定められた温度分だけ低くなるように設定されており、第1防振部材13aが十分な防振性能を発揮する為の閾値に相当する。
即ち、ステップS2の判断処理は、環境温度との関係性から第1防振部材13aが防振性能を発揮できない状態か否かを判断しており、圧縮機1の作動を制限する為の制限条件の一つを満たすか否かを判定している。第1温度が第1基準温度以下である場合には、ステップS5が実行され、そうでない場合には、そのまま、通常上限値Pnを吐出冷媒圧力の上限値とする圧縮機1の通常運転が実行される。
続くステップS3においては、第2温度センサ59で検出される第2温度が第2基準温度以上であるか否かが判断される。この第2基準温度は、環境温度センサ60で検出される圧縮機1周辺の環境温度を基準として、予め定められた温度分だけ高くなるように設定されており、第2防振部材13bが十分な防振性能を発揮する為の閾値に相当する。
従って、ステップS3の判断処理は、環境温度との関係性から第2防振部材13bが防振機能を発揮できない状態か否かを判断しており、本発明における制限条件の一つを満たすか否かを判定している。第2温度が第2基準温度以上である場合には、ステップS5が実行され、そうでない場合には、圧縮機1の通常運転が実行される。
そして、ステップS4においては、第1温度と第2温度との温度差である防振部材温度差が基準温度差以下であるか否かが判断される。防振部材温度差は、第1防振部材13aの第1温度と、第2防振部材の第2温度との差であり、本発明における第1物理量と第2物理量の差に対応する。そして、基準温度差は、圧縮機1の作動が安定した状態であり、第1防振部材13a及び第2防振部材13bが防振機能を発揮する状態の温度差を意味しており、本発明における基準差に相当する。
従って、ステップS4の判断処理は、第1温度及び第2温度の関係性から、第1防振部材13a及び第2防振部材13bが防振機能を発揮できない状態か否かを判断しており、本発明における制限条件の一つを満たすか否かを判定している。防振部材温度差が基準温度差以下である場合には、ステップS5が実行され、そうでない場合には、圧縮機1の通常運転が実行される。
ステップS5に移行すると、圧縮機1の作動条件である圧縮機1による吐出冷媒圧力の上限値が制限上限値Prに変更され、圧縮機1の制限運転が実行される。制限上限値Prは、通常上限値Pnよりも低く定められた吐出冷媒圧力の上限値であり、制限運転時における圧縮機1の冷媒吐出能力の上限値を示す。即ち、制限上限値Prは、本発明における基準吐出能力を示す指標の一例である。従って、この制限運転の場合、圧縮機1の冷媒吐出能力が制限される為、通常運転時よりも騒音や振動を抑制することができる。
その後、ステップS6では、圧縮機1の制限運転を解除して、通常運転を再開する為の制限解除条件を満たすか否かが判断される。制限解除条件としては、第1温度が第1基準温度よりも更に高い第1解除基準温度以上であること、第2温度が第2基準温度よりも更に低い第2解除基準温度以下であること、防振部材温度差が基準温度差よりも大きな解除温度差以上であることが含まれる。
これらの制限解除条件は、第1防振部材13a、第2防振部材13bが十分な防振性能を発揮できる状態を示している。制限解除条件の何れかを満たす場合、ステップS1に戻り、圧縮機1の通常運転が開始される。そうでない場合には、ステップS5に戻り、圧縮機1の制限運転が継続される。
従って、第1実施形態においては、第1防振部材13a、第2防振部材13bの防振性能が十分に発揮できない場合、圧縮機1の制限運転を行うことで、圧縮機1の作動に伴う振動や騒音を抑制することができる。
又、第1防振部材13a、第2防振部材13bの防振性能が発揮できる状況になった場合(即ち、制限解除条件を満たした場合)、圧縮機1の通常運転が行われる。この場合には、圧縮機1本来の冷媒吐出能力を充分に発揮させると同時に、第1防振部材13a、第2防振部材13bの防振性能をひきだして、振動や騒音を抑制することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る圧縮機1及び冷凍サイクル装置20においては、当該圧縮機1は、駆動部3を作動させることで、吸入口部7からハウジング5内に供給された冷媒を圧縮機構部2で圧縮して、吐出口部8からハウジング5外へ吐出させることができる。
図1、図2に示すように、当該圧縮機1は、ハウジング5における複数個所に配置された支持部材10によって、取付対象物Mに対して支持される。吸入口部7側に配置された第1支持部材10aは、ゴム製の第1防振部材13aを取付対象物Mとハウジング5の間に有し、吐出口部8側に配置された第2支持部材10bは、ゴム製の第2防振部材13bを取付対象物Mとハウジング5の間に有している。第1防振部材13aは、標準温度におけるバネ定数が基準値よりも小さくなるように構成されており、第2防振部材13bは、標準温度におけるバネ定数が基準値よりも大きくなるように構成されている。
ここで、第1防振部材13aは圧縮機1の吸入口部7側に配置されている為、当該第1防振部材13aの温度は、圧縮機1の作動に伴って低下する。これにより、第1防振部材13aのバネ定数は、圧縮機1の作動による温度変化によって、標準温度時よりも大きな値を示す。一方、第2防振部材13bは圧縮機1の吐出口部8側に配置されている為、当該第2防振部材13bの温度は、圧縮機1の作動に伴い上昇する。これにより、第2防振部材13bのバネ定数は、圧縮機1の作動による温度変化によって、標準温度時よりも小さくなる。
従って、当該圧縮機1によれば、図7に示すように、圧縮機1の作動に伴う各支持部材10における温度変化を利用して、当該圧縮機1が安定して作動している状況における第1防振部材13aのバネ定数と第2防振部材13bのバネ定数の差を小さくすることができる。当該圧縮機1によれば、圧縮機1の安定作動時において、各支持部材10間のバネ定数のバランスを崩すことなく、圧縮機1全体を支持することができ、圧縮機の作動に起因する振動が増幅する虞を低減できる。
又、第1防振部材13a及び第2防振部材13bのバネ定数の差が小さくなると、第1防振部材13a及び第2防振部材13bの固有振動数も近づくことになる為、当該圧縮機1は、圧縮機1全体を支持する各支持部材10間の固有振動数のアンバランスを抑制することができ、これに起因する振動の増加を抑制することができる。又、この固有振動数を避ければ、他の構成機器の共振を回避することができ、共振による構成機器の破損を容易に防止することができる。
図5、図6に示すように、第2防振部材13bにおける受圧部14bの受圧面積は、第1防振部材13aにおける受圧部14aの受圧面積よりも大きく形成されている。当該第1防振部材13a、第2防振部材13bにおいては、この受圧部の受圧面積の差によってそれぞれのバネ定数の差を実現することができる。
又、第1防振部材13aは、ゴム硬度が50度を示すシリコーンを用いて構成されており、第2防振部材13bは、ゴム硬度が60度を示すEPDM(即ち、エチレンプロピレンジエンゴム)を用いて構成されている。従って、第1防振部材13a、第2防振部材13bにおけるバネ定数の差を、形状的な特徴のみならず、構成材料の側面から実現することができる。
図8に示すように、第1実施形態において、圧縮機1の作動は、第1温度センサ58で検出される第1防振部材13aの第1温度、第2温度センサ59で検出される第2防振部材13bの第2温度、環境温度センサ60で検出される圧縮機1周辺の環境温度に基づいて、圧縮機1に係る温度環境に応じて、その冷媒吐出能力が基準吐出能力以下となるように制御される。
ステップS2においては、第1防振部材13aの第1温度と環境温度との関係性に基づいて、第1防振部材13aが十分な防振性能を発揮できない状態であるか否かが判断されており、発揮できない状態であれば、圧縮機1の作動が制限運転に変更される。
これにより、当該冷凍サイクル装置20によれば、第1防振部材13aがその防振性能を十分に発揮できない状態である場合には、圧縮機1の冷媒吐出能力を基準吐出能力以下に制限することで、圧縮機1の作動に伴う騒音や振動を抑制することができる。
ステップS3では、第2防振部材13bの第2温度と環境温度との関係性に基づいて、第2防振部材13bが十分な防振性能を発揮できない状態であるか否かが判断され、発揮できない状態であれば、圧縮機1の作動が制限運転に変更される。
これにより、当該冷凍サイクル装置20によれば、第2防振部材13bがその防振性能を充分に発揮できない状態である場合には、圧縮機1の冷媒吐出能力を基準吐出能力以下に制限することで、圧縮機1の作動に伴う騒音や振動を抑制することができる。
そして、ステップS4では、第1防振部材13aの第1温度と第2防振部材の温度差から、第1防振部材13a、第2防振部材13bがその防振性能を充分に発揮できない状態であるか否かが判断され、発揮できない状態であれば、圧縮機の作動が制限運転に変更される。
これにより、当該冷凍サイクル装置20によれば、第1防振部材13a、第2防振部材13bがその防振性能を充分に発揮できない状態である場合には、圧縮機1の冷媒吐出能力を基準吐出能力以下に制限することで、圧縮機1の作動に伴う騒音や振動を抑制することができる。
又、ステップS6においては、制限解除条件を満たすか否かが判断され、制限解除条件を満たす場合には、圧縮機1の作動が通常運転に変更される。これにより、当該冷凍サイクル装置20は、第1防振部材13a、第2防振部材13bがその防振性能を充分に発揮できる状態であれば、第1防振部材13a、第2防振部材13bの防振性能を適切に利用することで、圧縮機1の作動による騒音や振動を抑制しつつ、圧縮機1の冷媒吐出能力を充分に発揮させることができる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図9〜図12を参照しつつ説明する。第2実施形態に係る圧縮機1は、第1実施形態と同様に、車両用空調装置ACを構成する冷凍サイクル装置20の構成機器に適用されている。そして、以下の説明において、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
先ず、第2実施形態に係る圧縮機1の概略構成について、図9、図10を参照しつつ説明する。第2実施形態における圧縮機1は、冷凍サイクル装置20の冷媒回路を流れる冷媒を吸入し、圧縮して吐出するように構成されている。
図9、図10に示すように、圧縮機1は、圧縮機構部2と、駆動部3とを、略円柱状に形成されたハウジング5の内部に収容しており、複数の支持部材10を介して、取付対象物Mとしての車両ボンネットの床面を構成するボデーに対して支持・固定されている。
第2実施形態に係る圧縮機1の構成は、取付対象物Mの構成と、第1支持部材10a及び第2支持部材10bの構成を除いて、第1実施形態と基本的に同様である。従って、第2実施形態における圧縮機構部2、駆動部3、ハウジング5等に関する説明は省略する。
第2実施形態における取付対象物Mは、上述した第1実施形態と異なり、段差部Mdを有して構成されている。図9、図10に示すように、当該取付対象物Mは、上段取付部Muと、下段取付部Mlを含んで構成されている。
第2実施形態において、当該上段取付部Muは、段差部Mdを介して、下段取付部Mlよりも上方に位置する車両ボンネットの床面を構成するボデー表面である。図9に示すように、第2実施形態に係る圧縮機1は、下段取付部Ml側に吸入口部7が位置し、上段取付部Mu側に吐出口部8が位置するように配置される。
即ち、吸入口部7側が位置する下段取付部Mlには、各第1支持部材10aの下端部が埋め込まれ、吐出口部8側が位置する上段取付部Muには、各第2支持部材10bの下端部が埋め込まれる。そして、第2実施形態においては、ハウジング5のベース板6下面と取付対象物M表面との間の距離は、上段取付部Mu側と下段取付部Ml側とで異なるように構成されている。
次に、第2実施形態における第1支持部材10a及び第2支持部材10bの構成について、図11、図12を参照しつつ説明する。
第2実施形態に係る各第1支持部材10aは、圧縮機1の吸入口部7側の二カ所において、ハウジング5のベース板6と、取付対象物Mの下段取付部Mlとの間に配置されている。図11に示すように、第2実施形態における各第1支持部材10aは、一対のボルト部11aと、一対の支持板12aと、略円柱状に形成されたゴム製の第1防振部材13aを有している。ボルト部11a、支持板12aに関しては、第1実施形態と基本的に同様である為、その説明を省略する。
図11に示すように、第2実施形態に係る第1防振部材13aは、ゴムによって円柱状に形成されており、その中心軸に沿った軸長寸法が軸長寸法Laとなるように構成されている。第2実施形態における軸長寸法Laは、ハウジング5のベース板6下面と下段取付部Ml表面との距離によって設定される。第2実施形態に係る第1防振部材13aの受圧部14aは、第1防振部材13aの上面及び下面において、ベース板6と取付対象物Mの間で圧力荷重を受ける部分である。
第2実施形態に係る第1防振部材13aの側面部15aは、第1実施形態と同様に構成されており、一対の受圧部14aの周縁に沿って伸びる曲面を為している。そして、当該側面部15aは、第1防振部材13aの中心軸方向への凹凸のない滑面として形成されている。
このように構成された第2実施形態に係る第1防振部材13aにおいては、第1実施形態と同様に、予め定められた標準温度でのバネ定数Kaが、その構成材料及び、第1防振部材13aの形状的特徴によって基準値よりも小さい値を示す。
続いて、第2実施形態に係る第2支持部材10bの構成について、図12を参照しつつ説明する。
第2実施形態に係る各第2支持部材10bは、圧縮機1の吐出口部8側の二カ所において、ハウジング5のベース板6と、取付対象物Mの上段取付部Muとの間に配置されている。図12に示すように、第2実施形態における各第2支持部材10bは、一対のボルト部11bと、一対の支持板12bと、ゴム製の第2防振部材13bを有している。ボルト部11a、支持板12aに関しては、第1実施形態と基本的に同様である為、その説明を省略する。
図12に示すように、第2実施形態に係る第2防振部材13bは、ゴムによって略円柱状に形成されており、その中心軸に沿った軸長寸法が軸長寸法Lbとなるように構成されている。第2実施形態に係る第2防振部材13bは、第1防振部材13aと同一の構成材料(例えば、シリコーン)によって形成されている。
そして、第2実施形態における軸長寸法Lbは、ハウジング5のベース板6下面と上段取付部Mu表面との距離によって設定され、第2実施形態における軸長寸法Laよりも段差部Mdに対応する分だけ短く設定されている。
そして、第2実施形態に係る第2防振部材13bの受圧部14bは、第2防振部材13bの上面及び下面において、ベース板6と取付対象物Mの間で圧力荷重を受ける部分である。第2実施形態において、第2防振部材13bにおける受圧部14bの受圧面積は、第1防振部材13aにおける受圧部14aの受圧面積と等しくなるように構成されている。
第2実施形態に係る第2防振部材13bの側面部15bには、第2実施形態に係る第1防振部材13aと異なり、凹部16bが形成されている。第2実施形態における凹部16bは、第2防振部材13bの側面部15bにおいて、中心軸方向中央部分に形成されている。当該凹部16bは、側面部15b表面よりも中心軸方向に窪んだ溝状に形成されており、中心軸を周回するように配置されている。
このように構成された第2実施形態に係る第2防振部材13bにおいては、第1実施形態と同様に、予め定められた標準温度でのバネ定数Kbが、その構成材料及び、第2防振部材13bの形状的特徴によって基準値よりも大きい値を示す。つまり、標準温度において、第2防振部材13bのバネ定数Kbは、軸長寸法La及び軸長寸法Lbの差や、側面部における凹部の有無に基づいて、第1防振部材13aのバネ定数Kaよりも大きな値を示す。
第2実施形態においては、第1防振部材13a、第2防振部材13bの構成材料を相違させることなく、その形状的特徴を相違させることによって、第1実施形態と同様のバネ定数の関係性をつくりだすことができる。ゴム製の第1防振部材13a、第2防振部材13bにおいて、第1実施形態と同様のバネ定数の関係を有している為、第1実施形態に係る圧縮機1と同様の効果を発揮することができる。
又、第2実施形態においても、圧縮機1の作動を図8に示す制御内容で制御することによって、第1防振部材13a、第2防振部材13bの防振性能が十分に発揮できない場合には、圧縮機1の作動を制限運転に変更することができる。この制限運転時には、圧縮機1の冷媒吐出能力が基準吐出能力以下になるように制御される為、防振性能を充分に発揮できない状態における圧縮機1の騒音や振動を抑制することができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る圧縮機1及び冷凍サイクル装置20においては、取付対象物Mに段差部Mdがあり、吸入口部7側と吐出口部8側で圧縮機1と取付対象物Mとの距離が異なる場合であっても、第1実施形態と同様の効果を発揮させることができる。
第2実施形態においては、第2防振部材13bの軸長寸法Lbは、第1防振部材13aの軸長寸法Laよりも短く形成されている。第1防振部材13a、第2防振部材13bにおいて、この軸長寸法が短い程、バネ定数が大きくなる。即ち、第1防振部材13a、第2防振部材13bの軸長寸法を調整することで、第1防振部材13a、第2防振部材13bのバネ定数を所望の値に調整することができる。
又、第2実施形態に係る第1防振部材13aの側面部15aは、凹凸のない滑面として構成されており、第2防振部材13bの側面部15bには、中心軸方向に窪んだ溝状の凹部16bが形成されている。第2防振部材13bのバネ定数は、この凹部16bの存在によって小さくなる。即ち、第1防振部材13a、第2防振部材13bの側面部における凹部の有無によって、第1防振部材13a、第2防振部材13bのバネ定数を所望の値に調整することができる。
(第3実施形態)
続いて、上述した実施形態とは異なる第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第3実施形態に係る圧縮機1は、上述した実施形態と同様に、車両用空調装置ACを構成する冷凍サイクル装置20の構成機器に適用されている。そして、以下の説明において、上述した実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
第3実施形態における圧縮機1は、冷凍サイクル装置20の冷媒回路を流れる冷媒を吸入し、圧縮して吐出するように構成されており、第1実施形態と同様に、複数の支持部材10を介して、平面上の取付対象物Mに対して支持・固定されている。
即ち、第3実施形態に係る圧縮機1の構成は、第1支持部材10a及び第2支持部材10bの構成を除いて、第1実施形態と同様である。従って、第3実施形態における圧縮機構部2、駆動部3、ハウジング5等に関する説明は省略する。
第3実施形態における第1支持部材10a及び第2支持部材10bの構成について、図13、図14を参照しつつ説明する。
第3実施形態に係る各第1支持部材10aは、圧縮機1の吸入口部7側の二カ所において、ハウジング5のベース板6と、取付対象物Mとの間に配置されている。図13に示すように、第3実施形態における各第1支持部材10aは、一対のボルト部11aと、一対の支持板12aと、略円柱状に形成されたゴム製の第1防振部材13aを有している。ボルト部11a、支持板12aに関しては、上述した実施形態と基本的に同様である為、その説明を省略する。
図13に示すように、第3実施形態に係る第1防振部材13aは、ゴムによって円柱状に形成されており、その中心軸に沿った軸長寸法が軸長寸法Laとなるように構成されている。第3実施形態における軸長寸法Laは、ハウジング5のベース板6下面と取付対象物M表面との距離によって設定される。
第3実施形態に係る第1防振部材13aの受圧部14aは、第1防振部材13aの上面及び下面において、ベース板6と取付対象物Mの間で圧力荷重を受ける部分である。第3実施形態に係る第1防振部材13aの側面部15aは、一対の受圧部14aの周縁に沿って伸びる曲面を為している。
図13に示すように、第3実施形態における側面部15aには、複数の凹部16aが形成されている。当該凹部16aは、第1防振部材13aの周方向に所定の間隔を隔てて配置されており、第1防振部材13aの中心軸方向へ窪んでいる。
このように構成された第3実施形態に係る第1防振部材13aにおいては、上述した実施形態と同様に、予め定められた標準温度でのバネ定数Kaが、その構成材料及び、第1防振部材13aの形状的特徴によって基準値よりも小さい値を示す。
続いて、第3実施形態に係る第2支持部材10bの構成について、図14を参照しつつ説明する。
第3実施形態に係る各第2支持部材10bは、圧縮機1の吐出口部8側の二カ所において、ハウジング5のベース板6と、取付対象物Mとの間に配置されている。図14に示すように、第3実施形態における各第2支持部材10bは、一対のボルト部11bと、一対の支持板12bと、ゴム製の第2防振部材13bを有している。ボルト部11a、支持板12aに関しては、第1実施形態と基本的に同様である為、その説明を省略する。
図14に示すように、第3実施形態に係る第2防振部材13bは、ゴムによって略円柱状に形成されており、その中心軸に沿った軸長寸法が軸長寸法Lbとなるように構成されている。第3実施形態に係る第2防振部材13bは、第1防振部材13aと同一の構成材料(例えば、シリコーン)によって形成されており、その軸長寸法Lbも第1防振部材13aの軸長寸法Laと等しく形成されている。
そして、第3実施形態に係る第2防振部材13bの受圧部14bは、第2防振部材13bの上面及び下面において、ベース板6と取付対象物Mの間で圧力荷重を受ける部分である。第3実施形態においても、受圧部14bの受圧面積は、受圧部14aの受圧面積と等しくなるように構成されている。
第3実施形態に係る第2防振部材13bの側面部15bにおいては、第1防振部材13aと同様に、複数の凹部16bが形成されている。第3実施形態における凹部16bは、第2防振部材13bの周方向に所定の間隔を隔てて配置されており、第2防振部材13bの中心軸方向へ窪んでいる。この点、第2防振部材に係る凹部16bは、第1防振部材13aの凹部16aよりも大きく且つ深く窪んでいる。
このように構成された第3実施形態に係る第2防振部材13bにおいては、上述した実施形態と同様に、予め定められた標準温度でのバネ定数Kbが、その構成材料及び、第2防振部材13bの形状的特徴によって基準値よりも大きい値を示す。つまり、標準温度において、第2防振部材13bのバネ定数Kbは、側面部における凹部の大小によって、第1防振部材13aのバネ定数Kaよりも大きな値を示す。
第3実施形態においては、第1防振部材13a、第2防振部材13bの構成材料を相違させることなく、その形状的特徴を相違させることによって、上述した実施形態と同様のバネ定数の関係性をつくりだすことができる。ゴム製の第1防振部材13a、第2防振部材13bにおいて、上述した実施形態と同様のバネ定数の関係を有している為、第3実施形態に係る圧縮機1等も、第1実施形態に係る圧縮機1と同様の効果を発揮することができる。
又、第3実施形態においても、圧縮機1の作動を図8に示す制御内容で制御することによって、第1防振部材13a、第2防振部材13bの防振性能が十分に発揮できない場合には、圧縮機1の作動を制限運転に変更することができる。この制限運転時には、圧縮機1の冷媒吐出能力が基準吐出能力以下になるように制御される為、防振性能を充分に発揮できない状態における圧縮機1の騒音や振動を抑制することができる。
以上説明したように、第3実施形態に係る圧縮機1及び冷凍サイクル装置20においては、第1防振部材13a、第2防振部材13bにおけるバネ定数の関係を第1実施形態と同様に調整することができるので、上述した第1実施形態と同様の効果を発揮させることができる。
第3実施形態においては、第2防振部材13bにおける凹部16bと、第1防振部材13aにおける凹部16aの大きさが異なるように構成されている。即ち、第3実施形態に係る圧縮機1によれば、第1防振部材13a、第2防振部材13bの凹部の大きさや深さを調整することで、第1防振部材13a、第2防振部材13bのバネ定数を所望の値に調整することができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良い。又、上述した実施形態を、例えば、以下のように種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態では、取付対象物M上において、横置き型の圧縮機1を複数の支持部材10によって下方から支持する構成であったが、圧縮機1と取付対象物Mの位置関係はこの態様に限定されるものではない。例えば、取付対象物Mとしてのエンジンの側面から、複数の支持部材10によって圧縮機1を横支えする構成に対しても適用することができる。
(2)又、上述した実施形態においては、横置き型の圧縮機1に対して本発明を適用していたが、横置き型であることを前提とするものではなく、縦置き型の圧縮機1に適用することも可能である。ここで、縦置き型の圧縮機1に対して本発明を適用した一例を、図15を参照して説明する。尚、図15に示す圧縮機1は、上述した実施形態と同様に、冷凍サイクル装置20の構成機器として用いられているものとする。
図15に示すように、縦置きの圧縮機1は、上下方向に伸びたハウジング5を有しており、その内部には、上述した実施形態と同様に、圧縮機構部、駆動部等を収容している。このハウジング5の下部には、吸入口部7が配置されており、冷凍サイクル装置20を循環する冷媒が、圧縮機1の作動に伴って吸入される。
ハウジング5の下端部には、ベース板6がハウジング5と一体的に形成されている。当該ベース板6の下面と取付対象物Mとの間には、複数の第1支持部材10aが配置されている。複数の第1支持部材10aは、ベース板6と取付対象物Mの間で、縦置きの圧縮機1を支持しており、上述した実施形態と同様に、第1防振部材13aを有している。
取付対象物Mには、縦置き型の圧縮機1の上部を保持する為の上側保持部Mhが一体的に配置されている。上側保持部Mhは、平板状に形成されており、縦置き型の圧縮機1におけるハウジング5の上部を挿通可能な貫通穴Hを有している。図15に示すように、ハウジング5の上部は、上側保持部Mhの貫通穴H内に配置される。
そして、ハウジング5の上部には、吐出口部8が配置されており、ハウジング5内部で圧縮された冷媒が冷凍サイクル装置20の冷媒回路へ吐出される。又、ハウジング5の上部には、上側ベース板6hがハウジング5と一体的に形成されている。上側ベース板6hの下面と、上側保持部Mhの上面の間には、複数の第2支持部材10bが配置され、縦置き型の圧縮機1を支持している。各第2支持部材10bは、上述した実施形態と同様に、それぞれ第2防振部材13bを有している。
この図15に示す構成によれば、各第1防振部材13aのバネ定数は、吸入口部7側の周辺温度の影響を受けて変化することになり、各第2防振部材13bのバネ定数は、吐出口部8側の周辺温度の影響を受けて変化する。従って、図15に示すような縦置き型の圧縮機1においても、上述した実施形態と同様の効果を発揮させることができる。
(3)又、上述した実施形態における第1防振部材13a、第2防振部材13bのバネ定数の実現方法は、それぞれ例示であり、これに限定されるものではない。例えば、上述した形状的特徴(即ち、軸長寸法、受圧部の受圧面積、側面部における凹部の有無及び大小)や構成材料等を適宜組み合わせることによって、第1防振部材13a、第2防振部材13bの大小関係を所望の値に調整することも可能である。第1防振部材13a、第2防振部材13bの形状的特徴や構成材料等を適宜組み合わせることによって、これらのバネ定数を、圧縮機1が利用される用途や作動環境等に応じた適切な値に設定することができる。第1防振部材13a、第2防振部材13bを構成するゴムを、それぞれ異なる色を示すように着色してもよい。これにより、部材の取り違え等を抑制して、第1防振部材13a等の配置に関する作業効率を向上させることができる。
(4)そして、第1防振部材13a、第2防振部材13bの形状は、上述した実施形態のように円柱状を基礎においた形状に限定されるものではなく、適宜様々な形状を採用することができる。又、第1防振部材13a、第2防振部材13bにおける凹部も、第2第2実施形態、第3実施形態に示す形状に限定されるものではなく、適宜、様々な形状を採用することができる。例えば、円柱状の第1防振部材13a等の側面部において、軸方向に沿って伸びる溝状の凹部を、周方向へ所定間隔をあけて複数配置してもよい。又、円柱状の第1防振部材13a等の側面部において、当該側面部を周回するように形成された溝状の凹部を、軸方向へ所定間隔をあけて複数配置してもよい。
(5)更に、上述した実施形態においては、圧縮機1の吸入口部7側に2つの第1支持部材10aを配置し、吐出口部8側に2つの第2支持部材10bを配置していたが、この態様に限定されるものではない。第1支持部材10a、第2支持部材10bを含む支持部材10の本数は、複数本であればよく、その本数は、圧縮機1の重量や取付対象物Mの形状等に応じて適宜変更することができる。
(6)又、上述した実施形態においては、圧縮機1を、車両用空調装置ACの冷凍サイクル装置20に適用していたが、この態様に限定されるものではなく、冷凍サイクル装置20以外の構成に対しても、圧縮機1とその駆動制御装置として適用することができる。換言すれば、圧縮機1とその駆動制御装置を有する構成であれば、種々の装置に適用することができる。
(7)そして、上述した実施形態においては、第1防振部材13aの温度を第1温度センサ58によって検出して第1物理量として用いるように構成していたが、この態様に限定されるものではない。第1防振部材13aの第1温度に相関を有する第1物理量を取得することができればよく、第1物理量として、吐出温度センサ54で検出される圧縮機1における吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを用いても良いし、吐出口部8におけるハウジング5の温度を用いても良い。
同様に、第2防振部材13bの温度を第2温度センサ59で検出して第2物理量として用いる構成に限定されるものではない。第2物理量として、例えば、蒸発器温度センサ56で検出される室内蒸発器28における冷媒蒸発温度Teを用いても良いし、吸入口部7におけるハウジング5の温度を用いても良い。又、圧縮機1周辺の環境温度についても、環境温度センサ60で検出する構成に限定されるものではなく、例えば、外気センサ52で検出される外気温等を用いて推定しても良い。
(8)そして、上述した実施形態においては、図8のステップS1、ステップS5に示すように、圧縮機1における冷媒吐出能力の上限として、吐出冷媒圧力の上限値を用いていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、圧縮機1における冷媒吐出能力の上限を示すものであれば、種々のパラメータを採用することができる。例えば、上述した実施形態のステップS1、ステップS5において、圧縮機1における回転数の上限値を用いて、圧縮機1の冷媒吐出能力を制限しても良い。
(9)又、上述した実施形態においては、図8に示すようにステップS2、ステップS3、ステップS4の何れの場合であっても、ステップS5における圧縮機1の制限運転の内容は同じであったが、この態様に限定されるものではない。充足した制限条件の種類に応じて、圧縮機1の制限運転の内容を変更してもよい。
(10)そして、図8における制限条件を構成する第1基準温度、第2基準温度、基準温度差を、圧縮機1の作動態様に応じて変更しても良い。例えば、上述した実施形態のように、車両用空調装置ACの冷凍サイクル装置20においては、冷房運転における圧縮機1の作動か、暖房運転おける圧縮機1の作動か等の用途に応じて、制限条件に係る基準値を変更してもよい。