以下、複数の実施形態によるコンプレッサの防振装置を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態として洗濯乾燥機に適用したコンプレッサの防振装置について、図1〜図8を参照して説明する。まず、図3に示す洗濯乾燥機1の概略構成につき説明すると、主要な構成として外郭を形成する箱状の本体2内に、横軸周りに回転する回転槽としての多孔状のドラム3、該ドラム3を回転駆動するモータ4、及びヒートポンプユニット5を備えている。
前記本体2は、大略的に矩形箱状の主体をなす外箱6と、その上面側を覆うように被着されたトップカバー7と、同下面側に被着されたベース部材8とから構成されている。前記ドラム3は、その外周囲に配置され実質的に無孔状の水槽9内に回転可能に支持されている。これら水槽9及びドラム3は、洗濯物の出し入れができるようにいずれも前方(図示左方)が開口した円筒状に形成され、該水槽9の開口と対向する本体2の前面側にドア10が開閉可能に設けられている。なお、閉鎖状態のドア10の内面側と水槽9の開口端部との間には可撓性のベローズ11が水密に接続されている。
また、本体2上面のトップカバー7の内側には、水源たる水道の蛇口に接続される給水弁12が設けられ、洗濯用の水として給水ケース13などの給水経路を経て水槽9内に供給され、ドラム3内に供給可能としている。上記給水ケース13は、詳細な説明は省略するが内部に洗剤や仕上剤などを収納可能とし、給水と共に投入可能としている。なお、水槽9の底部には排水口14が設けられ、これに接続され排水弁15を有する排水管路16を経て水を外部に排出可能としている。またドラム3の胴部内側面には、複数のバッフル17を突設していて、洗濯物を持ち上げるなどして撹拌するに有効としている。
前記モータ4は、水槽9の背面側に設けられアウターロータ形のDCブラシレスモータにより構成され、回転軸18が水槽9を貫通してドラム3の背面側に連結され、もってドラム3はモータ4の駆動と直結して回転駆動される。
そして、前記ヒートポンプユニット5の構成及び機能について、図3〜図5を参照して説明する。このヒートポンプユニット5は、図3に示すように本体2の底部を形成するベース部材8上に設置されており、乾燥運転時にドラム3内の洗濯物を乾燥するための乾燥風たる温風を生成する熱交換機能を備えたものである。そこで、まず図5を参照してヒートポンプユニット5が有する一般的な冷凍サイクル19とその機能について説明すると、この冷凍サイクル19は、コンプレッサ20、熱交換用のコンデンサ21、流量制御弁22、熱交換用のエバポレータ23、及びアキュームレータ24を有し、これらを冷媒を封入した冷媒管25(図中太実線で示す)で連結した構成にあって、斯かるヒートポンプユニット5は後述するケーシング34(図4参照)によって覆われた構成としている。
なお、冷媒管25に封入された冷媒の流通経路は、図5中の破線矢印で示す方向に沿いコンプレッサ20→コンデンサ21→流量制御弁22→エバポレータ23→アキュームレータ24→コンプレッサ20の順に流通する循環経路としている。
斯かる構成のヒートポンプユニット5は、洗濯乾燥機1において図3及び図5中に示す循環通路26内を流れる空気との間で熱交換できるよう設置されている。すなわち、循環通路26は、具体的には図3に示すようにドラム3を内蔵する水槽9を介して外周側で連通した通路であって、水槽9の前方上部に開口し下方に延びる排気ダクト27と、水槽9の背面側において開口し下方に延びる給気ダクト28と、前記排気ダクト27の下端部と連結された熱交換ダクト29と、この熱交換ダクト29の他端に吸気側を連接したファンケーシング30と、このファンケーシング30の吐出側に前記給気ダクト28の下端部を連接し、もって水槽9を介した循環通路26が形成される。
なお、上記ファンケーシング30は、循環ファン31を内蔵し外部のファンモータ32により回転駆動される構成にあって、所謂ファンユニット33として、上記ヒートポンプユニット5とともに前記ベース部材8に固定された一体的な構成とし、且つ循環通路26の一部を構成している。従って、循環ファン31の回転により、循環通路26内には図3中に実線矢印で示す方向に(及び図5では白抜き矢印方向に)循環風が生じ、つまり後述する乾燥運転時には温風化された乾燥風が、途中の水槽9及びドラム3を循環して流れる。
そして、上記熱交換ダクト29では、循環通路26内を流れる空気を熱交換により加熱し、上記乾燥風を得る機能を主としていて、具体的には上記ヒートポンプユニット5を構成するうちの上記エバポレータ23及びコンデンサ21が該熱交換ダクト29の通路中に矢視方向の順に配設され、該通路を流れる空気との間で熱交換が行われるようにしている(詳細は後述する)。なお、エバポレータ23及びコンデンサ21では、流れる空気と効率よく熱交換するために冷媒管25は、銅管などの金属管製としたものを湾曲形成するとともに、これに多数のフィン(図示せず)を形成して熱交換面積を増大した形状としている。
そこで上記熱交換作用について、主に図5に示す冷凍サイクル19に基づき説明すると、コンプレッサ20は冷媒を圧縮して冷媒管25を介して図中に示す破線矢視方向に吐出する。よって、コンデンサ21には圧縮されて温度が上昇した冷媒が通過し放熱されることにより、熱交換ダクト29(図3参照)に配設されたコンデンサ21を通過する空気は加熱される。この加熱された空気は、ファンユニット33の循環ファン31により温風化され、つまり乾燥風として循環通路26を形成する給気ダクト28を経て水槽9及びドラム3内に供給される。
一方、冷媒は下流の流量制御弁22に至り、ここでは圧縮された冷媒の圧力を開放し、この開放された冷媒がエバポレータ23に流入する。このように、流量制御弁22において圧力が開放されて冷媒が気化することにより、当該エバポレータ23には気化する際の蒸発熱によって温度が低下した冷媒が流入することになる。
その結果、冷媒がエバポレータ23を通過することにより、熱交換ダクト29を流通する空気は熱交換され、ここでは該空気は冷却される。つまり、該空気は水槽9から排出され排気ダクト27(図3参照)から熱交換ダクト29に流入した乾燥風たる排気風にあって、湿気成分を多量に含んでいる。従って、この排気風が冷却されることで湿気成分が結露して流出し、所謂除湿作用を受ける。この除湿後の乾いた空気は、上記したコンデンサ21を介して再び熱交換により加熱され乾燥風として再生され、ドラム3内に循環供給され衣類の乾燥に寄与する。
そして、冷媒はアキュムレータ24に至る。アキュームレータ24は、コンプレッサ20と隣接して一体的に構成されており、上記エバポレータ23を通過した冷媒に含まれる気体と液体とを分離する。すなわち、エバポレータ23を通過した冷媒は、気体と液体とが混合した状態となっている。液体の冷媒が次のコンプレッサ20へ流入するとコンプレッサ20の能力の低下を招くため、アキュムレータ24はコンプレッサ20の入口側において冷媒に含まれる気体と液体とを分離する。
このような冷凍サイクル19を有するヒートポンプユニット5は、図3及び図5等において概略構成を示したが、図4では一部分解した斜視図にて具体的構成を示していて、特にはヒートポンプユニット5を本体2の底部たるベース部材8に設置した構成を示している。以下詳述すると、ヒートポンプユニット5の基本的構成は、図5にて開示したように、コンプレッサ20、コンデンサ21、流量制御弁22、エバポレータ23、及びアキュームレータ24を具備し、これらを冷媒を封入した冷媒管25で連結した構成からなるが、実態的には斯かる構成を覆うケーシング34を備えた構成としている。ケーシング34は、図4に示す本実施形態では、ヒートポンプユニット5の機構部分を覆うようにしてケーシング34に取付固定し、更にこのケーシング34はベース部材8に取付固定された構成を示している。
ここで、図4に基づき上記ケーシング34の具体構成につき説明すると、該ケーシング34は合成樹脂製で下部ケーシング34aと上部ケーシング34bとから構成されている。そのうち、下部ケーシング34aの平坦部にはコンプレッサ20、コンデンサ21、エバポレータ23等のヒートポンプユニット5の機構部やファンユニット33等を取付固定しており、因みにコンプレッサ20は、その外周囲の3箇所(2箇所のみ図示)を後述する取付手段35を介して下部ケーシング34aに取り付けられている。このような下部ケーシング34aは、本体2の底部たるベース部材8に、例えば複数箇所においてゴムワッシャやねじなどの締結部材36により取付固定される。
一方、上部ケーシング34bは、ヒートポンプユニット5の機構部を上方から覆うように下部ケーシング34aに結合して被着されることで、内部に上記エバポレータ23及びコンデンサ21を通過する通風路を形成する。つまり、ケーシング34の一部は熱交換ダクト29を兼ねた構造としており、因みに、本実施形態では上部ケーシング34bは、図4に示すように排気ダクト27(図3参照)と接続するための筒状の接続口39を、エバポレータ23の吸気側(上流側)に連通して設けており、またエバポレータ23の上流側及びコンデンサ21の下流側(ファンケーシング30の吸入側)の上面を閉鎖するなど、もって図4中に示す矢視方向への空気が流通する通風路を形成し、つまり熱交換ダクト29の一部を兼ねた構成としている。
なお、コンプレッサ20はケーシング34(特には上部ケーシング34b)で覆われる
前に、コンプレッサ20及び隣接して一体的に設けられたアキュームレータ24は、図4に示すように防音部材37により覆われるとともに、更にカバー38によって上方から覆われる。これにより、カバー38は、防音部材37とともに、コンプレッサ20及びアキュムレータ24からの騒音、特にコンプレッサ20で発生する音を遮蔽し、外部への音の漏れを低減している。加えて、ヒートポンプユニット5の機構部全体をケーシング34で覆っているので、一層外部への音の漏れを低減することができる。
次いで、図1及び図2に基づき、上記したコンプレッサ20の取付手段35の具体構成等について説明する。この取付手段35は、コンプレッサ20をケーシング34の所定位置に設置するため、その下部ケーシング34aに取り付けるための具体的手段を示すもので、そのうち図1は、1箇所における取付手段35の具体構成をコンプレッサ20を支える支持台41(後述する)とともに拡大して示す断面図、図2はコンプレッサ20に対する支持台41の配置構成を模式的に示す図で、同図(a)は側面図、同図(b)は平面図である。なお、図2ではコンプレッサ20と隣接し冷媒管25を介して一体的な組立構成にあるアキュムレータ24を含めたコンプレッサ20の設置状態を示している。
上記取付手段35は、詳細は後述するがゴム材料からなる筒状の支持台41によりコンプレッサ20を所定位置に固定的に防振支持する手段にあり、従って、図2では上記支持台41を介した基本的な配置構成を示しており、例えば同図(a)では支持台41をコンプレッサ20の下部に設け、該コンプレッサ20を支持する構成を示しており、一方、同図(b)では支持台41をコンプレッサ20の外周囲に等配分された例えば3箇所に配置した概略構成を示している。なお、本実施形態では支持台41はコンプレッサ20側に固定された取付腕40(詳細は後述)を介して取付保持される。
次いで、図1に基づき上記支持台41及び取付手段35の具体構成について説明すると、コンプレッサ20の円筒状外周壁の下部領域に、外方に向けて水平状態に突出する金属製の取付腕40を一体的に設けている。この取付腕40は、ほぼ中央部に貫通した穴部40aを設けるとともに、外周囲には下方に垂下した突縁部40bを一体に形成して強度を高めている。
上記取付腕40と、その直下のケーシング34(下部ケーシング34b)との間にゴム材料にて形成され縦方向に円筒状をなす支持台41が挟持されるように配置されている。すなわち、支持台41は取付腕40を介してコンプレッサ20の重量を弾性的に支えるように下部ケーシング34bの所定部位に配置される。このような支持台41は、単一のゴム材料にて構成されたものではなく、後述する損失係数(tanδ)の温度特性が異なる2種類のゴム材料からなる第1のゴム部材42と第2のゴム部材43との組み合わせ構成としている。
これら第1のゴム部材42及び第2のゴム部材43は、具体形状において若干異なるが、共に中空円筒状をなし、本実施形態では第1のゴム部材42を下段側に配し、第2のゴム部材43を上段側に配して上下方向(縦方向)に積み重ねて円筒状をなす組み合わせ構成、つまり支持台41を形成している。この場合、第1のゴム部材42と第2のゴム部材43とを重ね合わせる手段としては、容易に位置ずれしない構成が望ましいが、もともとゴム質による接合面は滑り難いので、そのコンプレッサ20の重量による圧接状態のもとに接合した状態に構成することも可能であるし、或は接合面に僅かの接着剤を塗布して結合するようにしてもよい。
このような支持台41は、上記取付腕40の穴部40aに嵌め込まれて支持されるように、支持台41の上端面に係合溝41a及び鉤状部41bを突設している。具体的には、上段側の第2のゴム部材43の上端面に、外側面に開放する環状の係合溝41aと鉤状部41bを突設している。従って、鉤状部41bを弾性変形させて係合溝41aに取付腕40の穴部40aが挿入され係合することで、支持台41は取付腕40に抜け止め状態に係合保持される。なお、取付腕40と係合溝41aとは所謂遊び(隙間)を有する係合状態の中で、コンプレッサ20の重量が取付腕40を介して支持台41を押圧した状態にあり、つまり支持台41によりコンプレッサ20の重量を支えている。
斯くして、コンプレッサ20に取付腕40を介して支持された支持台41は、下部ケーシング34aの所定の3箇所に設けられた円柱状のボス44に挿入された後、該ボス44の上方に突出した上端部にワッシャ45を介してねじ46が緊締される。このワッシャ45及びねじ46の径大な頭部は、支持台41の鉤状部41bの外径より径大にあって、且つその上下方向に若干の隙間S1を有して緊締されている。よって、ボス44に挿入した支持台41の上方への抜け止めの作用をなすもので、もってコンプレッサ20は3箇所の取付手段35に基づき所定位置に設置固定される。なお、ボス44は下部ケーシング34aと一体形成しても良いし、或はカシメにより圧着するなど、少なくとも下部ケーシング34aと一体的に立設固定した構成としている。
更に、上記支持台41の中空部41dの内周面は、ボス44に対して若干の隙間S2を有して挿入されている。ただ、具体的には下段側の第1のゴム部材42の中空側に位置して内方に突出した環状の突部41cを有し、該突部41cはボス44の外周面と近接、若しくは接触状態にある。また、支持台41の外周囲には取付腕40の突縁部40bが近接した位置にあり、このため該支持台41は内外から大きな動きは規制され、例えば水平方向(横方向)の大きな揺れによる位置ずれや座屈などの大きな変形を抑制でき、また軸方向(上下方向)の振動に対しては突部41cがボス44に摺接して減衰作用が期待できる。
なお、前記したようにボス44にワッシャ45を介してねじ46を緊締したことにより、この径大なワッシャ45が支持台41の上方への抜け止めとして機能するが、洗濯乾燥機1或はコンプレッサ20の運転による通常状態では、該支持台41が上方に抜け出すほどの大きな移動(振動)はない。ところが、図1の如くコンプレッサ20が下部ケーシング34aに設置され、これを搭載した洗濯乾燥機1において、例えば輸送時に落下などにより衝撃を受けた場合、コンプレッサ20を支える支持台41が弾性を有することの反動も加わって該コンプレッサ20と共に支持台41が瞬間的に上方向に大きく移動しようとする。しかしながら、第2のゴム部材43がワッシャ45の下面側で受け止められ、支持台41がボス44から抜け出すことを阻止され、所定位置に維持される。
ここで、支持台41を構成する温度特性の異なる第1のゴム部材42と第2のゴム部材43とについて、図5〜図8を参照して詳述する。まず、図8は支持台41をはじめ、参考までに他の部位における温度変化について測定した結果を示している。すなわち、ヒートポンプユニット5を搭載した洗濯乾燥機1において、乾燥運転中(予熱乾燥から恒率乾燥に至る)における温度の測定結果を示したもので、図8中に符号A,B,C,Dを付して示す特性曲線は、図5中に同一符号で指し示す測定部位における温度特性を示しており、すなわち符号Aは支持台41の温度、符号Bはコンプレッサ20の出口温度、符号Cはコンデンサ21を構成する冷媒管25の中間温度、及び符号Dはエバポレータ23の入口温度を表している。
結果的に最も温度上昇が大きかった部位は、図8に示すように圧縮された冷媒が吐出されるコンプレッサ20の出口温度Bにあって、次いで支持台41の温度Aが高温度に達することが分る。そして、エバポレータ23の入口温度Dを除いて、符号A,B,Cで示す測定部位は、いずれも低温領域から高温領域にと大きく温度上昇する傾向にあり、支持台41はコンプレッサ20からの熱伝達や設置環境下の雰囲気温度などの影響を受けて温度上昇し大きく温度変化することを示している。なお、エバポレータ23の入口温度Dは、当初は気化した低温度の冷媒が流通するため低下した後、冷媒や周り全体の温度上昇に沿って上昇するが、常に低温度の領域内における変化であった。
このような支持台41の温度変化を踏まえて、本実施形態では支持台41を構成する第1のゴム部材42と第2のゴム部材43のゴム材料を特定し、その温度特性を示したのが図6である。この図6は、温度(℃)に応じた損失係数(tanδ)の特性を示したもので、図中細実線(符号aで示す)で示す特性曲線は第1のゴム部材42を形成するゴム材料単一の特性を示し、一方破線で示す特性曲線(符号bで示す)は第2のゴム部材43を形成するゴム材料単一の特性を示したものである。
この図6から明らかなように、第1のゴム部材42のゴム材料aは、ほぼ温度25℃まで昇温したとき、最も損失係数(tanδ)が突出した高い値(ピーク値)を示しており、且つこのようなピーク特性を有するように組成されたゴム材料からなるもので、これに対し、第2のゴム部材43のゴム材料bは、ほぼ70℃まで昇温したとき、最も損失係数(tanδ)が高い値を示すピーク特性を有するゴム材料からなるものである。
この損失係数(tanδ)は、高い値を示すほど大きな減衰効果が得られることから、第1のゴム部材42にあっては、25℃付近の損失係数(tanδ)のピーク時の減衰特性をできるだけ長く維持できることが望ましく、また第2のゴム部材43にあっては、70℃付近の損失係数(tanδ)のピーク時の減衰特性を長く維持できることが望ましい。ところが、図6で開示したように減衰効果は、第1のゴム部材42では低温領域(25℃付近)の一部にとどまり、また第2のゴム部材43では高温領域(70℃付近)の一部にとどまるなど、共に温度変化に応じて損失係数(tanδ)もピーク時前後は急に大きく変化(低下)する傾向にあり、これでは安定した良好な減衰効果を長く維持することはできない。
一方、既述の如く支持台41をゴム材料で製作した場合、その弾性要素及び減衰要素と、コンプレッサ20の重量とから、ある特定の周波数(rps)において共振を生ずることが知られている。このような共振状態でコンプレッサ20の運転を継続した場合、大きな振動振幅を生じることで、冷媒管25などの冷凍サイクル19を構成する部材などに損傷とか、騒音などが発生する要因となる。
そこで図7は、コンプレッサ20の運転周波数(rps)に対する、第1のゴム部材42、及び第2のゴム部材43のゴム材料における振動振幅を測定したものである。そのうち、破線で示す振動特性曲線aは、上記した低温領域での減衰性能に優れた第1のゴム部材42に相当するゴム材料単一の特性を示し、同一点鎖線で示す振動特性曲線bは、上記した高温領域での減衰性能に優れた第2のゴム部材43に相当するゴム材料単一の特性を示している。
測定結果として、図7中に破線aで示すゴム材料(第1のゴム部材42相当)の振動特性としては、周波数20〜30rpsの間において共振点が生じ、一点鎖線bで示すゴム材料(第2のゴム部材43相当)にあっては周波数20rps付近で共振点が生じ、急激に大きな振動振幅が発生している。ただし、コンプレッサ20を支える支持台41としては、周波数に制約されることなく共振現象を緩和し振動振幅を小さく抑えることが望ましい。
そこで、本実施形態では図1及び図6に示したように損失係数(tanδ)の温度特性が異なる第1のゴム部材42を下段側に、同第2のゴム部材43を上段側に配置して、つまり縦方向に重ねて組み合わせ一体的に構成して1個の支持台41としたものである。その結果、まず損失係数(tanδ)の温度特性については、図6中に太実線cで示すように二つの異なるゴム材料の温度特性を合成した如き、その中間領域における減衰特性を得た。
すなわち、第1のゴム部材42と第2のゴム部材43の単一構成のピーク値に対して、若干低くなるが、一方損失係数(tanδ)の低い値はいずれも上昇し、その総合結果として支持台41としては全体になだらかで良好な温度特性レベルに維持でき、もって広い温度領域にわたって安定した良好な減衰性能を維持できる。
しかも、本実施形態では図1で示したようにコンプレッサ20側である取付腕40に接触する側に、高温領域での減衰作用に優れたゴム材料による第2のゴム部材43を配置したので、熱伝達を受けて高温になり易い第2のゴム部材43にて効果的な減衰作用を享受できる。これに対し、下段側に配置した第1のゴム部材42は、低温領域での減衰作用を有効に発揮するゴム材料にあって、コンプレッサ20側とは直接接触せず第2のゴム部材43を介して隔てているので熱伝達は抑制され、それだけ低温領域での減衰作用を効果的に活用できる。
このように、高低温の広い温度領域において効果的な減衰作用が得られることから、図7に示すように単一材料のもの(符号a,bで示す振動特性)に比して、本実施形態の第1のゴム部材42と第2のゴム部材43の組み合わせ構成における夫々のゴム部材の振動振幅は、夫々細実線c1(対a)と太実線c2(対b)で示すように低く抑えられ、つまり共振現象を緩和することができ、それだけコンプレッサ20の周波数の使用領域が広くなり安定した運転が期待できる。
次に、上記構成のヒートポンプユニット5を搭載した洗濯乾燥機1の作用について述べる。本実施形態の横軸周りのドラム3及び水槽9を備えた洗濯乾燥機1では、周知のように洗い、すすぎ、脱水、および乾燥の各運転行程において、図示しない制御装置が操作パネルからの操作信号等の入力に基づき、モータ4を駆動制御しドラム3を夫々適正な回転速度で行う各運転が実行される。
ここでは、上記ヒートポンプユニット5が機能する乾燥運転について述べる。乾燥運転がスタートすると、図示しない制御装置はモータ4を駆動しドラム3を低速回転制御する。同時に、図3や図5に示すようにヒートポンプユニット5のコンプレッサ20や循環ファン31等を通電駆動する。この結果、閉鎖状態のドア10により実質的に閉鎖された空間をなす水槽9を介して形成された循環通路26には、図3では実線矢印で示す方向に、図5では白抜き矢印で示す方向に空気流が生じ、つまり乾燥風が循環する。
具体的には、前記したようにドラム3内の洗濯物の乾燥作用に寄与した後の湿気を含んだ乾燥風(排気風)は、排気ダクト27から熱交換ダクト29に至り、該熱交換ダクト29に配備されたエバポレータ23にて冷却除湿され、この除湿された排気風はコンデンサ21により加熱され、循環ファン31により乾燥風として再生され、給気ダクト28を経て水槽9及びドラム3の背面側から内部に供給され、つまり乾燥風をドラム3内に循環供給し洗濯物の乾燥作用を継続実施する。そして、制御プログラムに基づき所定の乾燥運転を終了する。
この乾燥運転中、駆動するコンプレッサ20はゴム材料からなる支持台41にて防振的に弾性支持される。図8で開示したように、支持台41の温度上昇は大きく、低温領域から高温領域へと温度変化する。しかるに、本実施形態における支持台41は、低温領域で優れた減衰作用を発揮する第1のゴム部材42と、高温領域で優れた減衰作用を発揮する第2のゴム部材43とを縦方向に重ね合わせて支持台41(図1参照)を構成したので、図6中に斯かる支持台41の特性として太実線cで示すように、減衰性能を示す損失係数(tanδ)を広い温度範囲にわたり安定した良好なレベルに維持できる。
しかも、コンプレッサ20側である熱が伝わり易い取付腕40側に接触する第2のゴム部材43は、高温領域での減衰作用が大きいゴム材料としていることから(図6参照)、コンプレッサ20から熱を受けても効果的に減衰作用を発揮する。これに対し、さほど高温度にはならない下段側には、低温領域での減衰作用を有効に発揮する第1のゴム部材42を配置しているので、低温領域での減衰作用を有効に発揮する。もって、支持台41による減衰作用を一層有効化できる。
一方、コンプレッサ20から発した振動に対しては、前記した如くコンプレッサ20の重量、支持台41の弾性要素や減衰要素などに基づき、ある特定の周波数に応じて共振現象を生ずるが、支持台41は損失係数の温度特性が異なるゴム材料から構成するとともに、広い温度領域において安定した効果的な減衰作用が得られることから、図7に示すように振動振幅も夫々細実線c1と太実線c2で示すように低く抑えることができ、つまり共振現象を緩和することができ、それだけコンプレッサ20の周波数の使用領域を制限されることなく拡大できる。
以上説明した実施形態の洗濯乾燥機1のコンプレッサ20を支える支持台41を、損失係数の温度特性が異なるゴム材料から構成したので、該支持台41の温度変化に制約を受けることなく広い温度範囲にわたり、安定した良好なレベルでの減衰性能を維持できるとともに、コンプレッサ20の振動に基づき冷媒管25が破損したり冷媒が漏れるなどのおそれを解消できる。また、このように振動振幅(共振現象)を小さく抑えることができるので、振動に伴う騒音の発生も有効に軽減できるコンプレッサ20の防振装置を提供できる。
しかも、本実施形態ではコンプレッサ20に近接する側に配置した第2のゴム部材43は、高温領域での減衰作用を有効に発揮するゴム材料としているから、コンプレッサ20から高温度の熱を受けても効果的に減衰作用を発揮することができ、耐熱性に優れた支持台41を構成できる点で有利である。ただし、図6等に基づき開示したように支持台41として、図6中に太実線cによる特性曲線で示すように広い温度範囲にわたり安定した良好な減衰性能を維持できることから、上記配置構成に限定せずとも良好なコンプレッサ20の防振装置を提供できる。
なお、本実施形態では図1に示すように、下部ケーシング34aから一体的にボス44を設け、その上端部にワッシャ45を介してねじ46を緊締した構成としたが、このうちのねじ46を不要としたり、更にはボス44も不要とすることも可能である。例えば、隙間S1を有するワッシャ45やねじ46の頭部は、コンプレッサ20の通常運転では振動振幅も小さく抑えることができることも相俟って、これら部材は格別有効に機能しない。
ただし、ヒートポンプユニット5を搭載した洗濯乾燥機1を輸送時などにおいて落下して大きな衝撃を生じた場合には、その反動でコンプレッサ20や支持台41が上方に大きく移動するのを規制するのに有効であり、延いては支持台41がボス44から抜け出ることを防止できる点で有効である。また、ボス44も位置決めや支持台41の大きな倒れや座屈を防ぐには有効であるが、必ずしも必要ではない。例えば、コンプレッサ20はヒートポンプユニット5とするユニット構成にあるので、下部ケーシング34aの設置面に支持台41を介して載置し防振支持することは可能である。また、必要であれば支持台41を支持する下部ケーシング34aに浅い凹所を設けて収容し、もって位置決めと位置ずれの防止を図ることも容易に可能である。
(変形例)
上記に対し、図9及び図10は変形例を示すもので、図9は図2(a)相当図で、図10は支持台47の拡大斜視図である。ただし、上記図9では支持台47の具体形状も併せて図示している。先に記載した実施形態では、コンプレッサ20を複数個(3個)の支持台41により支える構成であったのに対し、このものは1個の支持台47でもコンプレッサ20を支えることを可能としたものである。
図示するように、支持台47は全体に円形皿状をなして、下段側に円板状の第1のゴム部材48を配置し、その上面に皿状底部を接合した状態の第2のゴム部材49を上段側に配置した構成としている。この下段側の第1のゴム部材48は、第1実施形態で述べた下段側の第1のゴム部材42のゴム材料と共通で、すなわち図6にて開示したように温度25℃付近で最も損失係数(tanδ)が高い値(ピーク値)を示すゴム材料にあって、つまり低温領域における減衰性能に優れたゴム材料であり、また上段側の第2のゴム部材49は、第1実施形態で述べた上段側の第2のゴム部材43のゴム材料と共通で、同じく図6にて開示したように温度70℃付近で最も損失係数(tanδ)が高い値(ピーク値)を示すゴム材料にあって、つまり高温領域における減衰性能に優れたゴム材料である。
従って、この変形例にいう支持台47も第1実施形態の支持台41と同様に、損失係数の温度特性が異なるゴム材料とする第1のゴム部材48と第2のゴム部材49を、縦方向に重ねた組み合わせ構成としている点で共通としている。なお、皿状の第2のゴム部材49にはコンプレッサ20の下部を収容し、第1のゴム部材48を介して図示しない下部ケーシングの設置面に載置する。この場合、コンプレッサ20等を有する図示しないヒートポンプユニットが設置固定されることで、該コンプレッサ20も支持台47を介して所定位置に固定され防振支持される。
上記したように変形例にいう支持台47も、損失係数の温度特性が異なるゴム材料とする第1のゴム部材48と第2のゴム部材49を、縦方向に重ねた組み合わせ構成とするなど、上記第1実施形態で述べた支持台41と同様の構成及び共通のゴム材料からなるもので、作用効果においても、ゴム材料からなる支持台47が温度変化に制約を受けることなく広い温度範囲にわたり、安定した良好なレベルでの減衰性能を維持できるとともに、コンプレッサ20の振動に基づく冷媒管25の破損、或は冷媒が漏れるなどのおそれを解消できる。
しかも、振動振幅を小さく抑えることができるので、振動に伴う騒音の発生も有効に軽減できるなど、上記第1実施形態と同様の作用効果が期待できるとともに、コンプレッサ20の本体(円筒状ケース)を直接支持台47で受け止める構成なので、複雑な固定手段を要しない簡素な構成のコンプレッサ20の防振装置を提供できる。
(第2実施形態)
図11〜図13は、第2実施形態を示すもので、その図11は図1相当図、図12は図11のX−X線に沿って切断して示す断面図、及び図13は図2相当図である。上記第1実施形態では、損失係数の温度特性の異なるゴム材料とする第1のゴム部材42と第2のゴム部材43を、縦方向に重ねて組み合わせ支持台41を構成したのに対し、このものは、上記同様の2種類のゴム材料からなる各ゴム部材を径方向に並べて組み合わせ支持台50を構成した点で相違する。
具体的には、図11、図12に明示するように、第1実施形態と同様に全体に円筒状の支持台50によりコンプレッサ20を支持する構成、及びコンプレッサ20下部周りの3箇所に等配分した位置(図13参照)に支持台50を配設した構成としている。これに対し、上記した相違点は支持台50の具体構成として、円筒状の第1のゴム部材51を外側に配置し、その内側に円筒状の第2のゴム部材52を同心配置した2重筒状とし、所謂径方向に並べた組み合わせ構成としている点で相違している。
また、支持台50を構成するゴム材料も第1実施形態と同様に、第1のゴム部材51は、温度25℃付近で損失係数(tanδ)がピーク値を示すゴム材料で、低温領域での減衰性能に優れ、一方、第2のゴム部材52は、温度70℃付近で損失係数(tanδ)がピーク値を示すゴム材料で、高温領域での減衰性能に優れた特性を発揮する。
なお、コンプレッサ20を支えるべく取付腕40に支持台50を係合する手段は、第1実施形態と同様に支持台50の上部に、外側面に開放する環状の係合溝50aと鉤状部50bを突設し、該鉤状部50bを弾性変形させて係合溝50aに取付腕40の穴部40aが挿入され係合することで、支持台50は取付腕40に抜け止め状態に係合保持される。その他、中空部50dには内方に突出する突部50cを有する。ただ、上記係合溝50aは、第1,第2のゴム部材51,52の両部材の組み合わせにより形成されている。
このように、損失係数の温度特性の異なるゴム材料を径方向に並べた組み合わせ構成からなる支持台50を用いてコンプレッサ20を支持する構成であっても、実質的に上記第1実施形態と同様に、支持台50は広い温度範囲にわたり安定した良好なレベルでの減衰性能を維持できるとともに、振動により冷媒管25の破損や冷媒が漏れるなどのおそれを解消でき、騒音の発生も軽減できるなどの作用効果が期待できる。
(第3実施形態)
図14及び図15は、第3実施形態を示すもので、その図14は図1相当図、及び図15は図2相当図である。このものは、複数の支持台のうち少なくとも2個を、夫々損失係数の温度特性の異なるゴム材料から構成したものである。つまり、ここまでの実施形態では1個の支持台を異なる(2種類の)ゴム材料を組み合わせた構成であったのに対し、このものは1種類(単一)のゴム材料で1個の支持台を構成し、他の支持台を異なる1種類(単一)のゴム材料で構成し、少なくとも2種類の支持台を含む複数の支持台でコンプレッサを支持する構成としたものである。
すなわち、具体構成としては図14に示すように、1個の支持台53の全体形状は第1実施形態の1個の支持台41の全体形状と同様で、例えば支持台53の具体形状は、上部に取付腕40と係合する係合溝53a、鉤状部53bや、他に突部53c、中空部53dを有する円筒状をなしている。そして、この支持台53とは異なるゴム材料からなる支持台54を更に備えており、図15(b)から明らかなようにコンプレッサ20の下部周りに等配分された3箇所のうち、例えば支持台53は1箇所、支持台54は2箇所に配設されている。支持台54の具体形状は、上記した支持台53と共通の形状である。
このように、上記支持台53,54は夫々異なる2種類のゴム材料から構成され、例えば支持台53は、第1実施形態の第1のゴム部材42のゴム材料に相当し、つまり温度25℃付近で損失係数(tanδ)がピーク値を示すゴム材料で構成され、低温領域での減衰性能に優れている。一方、2箇所に配設された支持台54は夫々第2のゴム部材43のゴム材料に相当し、つまり温度70℃付近で損失係数(tanδ)がピーク値を示すゴム材料で構成され、高温領域での減衰性能に優れた特性を発揮するものである。
斯かる構成によれば、温度特性が異なる各支持台53,54毎に減衰性能を発揮し、例えば図6で開示したと同様に支持台53では図中符号aで示すような温度特性を有し、他の支持台54では、図中符号bで示すような温度特性を有する。この場合、コンプレッサ20をこれら支持台53,54で同時に支持する構成なので、温度上昇する中で、支持台54のゴム材料は低温領域で優れた減衰性能を発揮し(図中符号aで示す)、そして損失係数がピーク値から大きく低下しようとする以前に、他の支持台54のゴム材料による高温領域で優れた減衰性能を発揮する側に移行し(符号bで示す)、これにより損失係数が上昇する傾向に切り替わる。
従って、本実施形態では複数(3箇所)の支持台53,54のうち、少なくとも2個の支持台53,54を夫々異なるゴム材料(2種類)にて構成しコンプレッサ20を支えるようにしたので、これら支持台53,54の温度上昇に応じて2種類の減衰性能に順次切り替わり、単一材料による支持台のみでは減衰性能が低下するのを阻止でき、それに伴い振動振幅や騒音なども小さく抑えることができる。しかも、本実施形態では高温領域で優れた減衰性能を発揮する支持台54を2個(3箇所のうち2箇所)設けたので、高温度に温度上昇する支持台に好適する。
なお、上記各実施形態では洗濯乾燥機に適用したコンプレッサの防振装置として説明したが、これに限らず、例えばエアコンなどの空調機器にも展開して実施可能である。また、第2実施形態では損失係数の温度特性の異なるゴム材料からなる支持台を径方向に並べた組み合わせ構成としたが、これを周方向に並べた組み合わせ構成としてもよく、例えば円筒状或はリング状の支持台にあって、その半周分単位に異なる温度特性のゴム材料とし、これを繋ぐようにして所謂周方向に並べた構成としてもよく、実質的に同様の作用効果が期待できる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略,置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。