以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る車両用窓ガラスについて、図1〜図7を参照して説明する。以下では、車両用窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリヤガラスである場合を例に説明する。しかしながら、本実施形態に係る車両用窓ガラスは、車両の前部に取り付けられるフロントガラスであってもよいし、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってもよい。
まず、本実施形態に係る車両用窓ガラスの構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両用窓ガラスの一例を示す車内視の正面図である。以下では、図の上下方向を垂直方向(第2方向)、左右方向を水平方向(第1方向)と称する。垂直方向は、車高方向に相当し、水平方向は車幅方向に相当する。また、以下の説明において、平行、垂直、直線などといった場合、効果を損なわない程度のずれを許容するものとする。
図1の車両用窓ガラスは、窓ガラス1と、遮光膜2と、デフォッガ3と、複数の無給電線条4と、ガラスアンテナ5と、無給電素子9と、を備える。
窓ガラス1は、水平方向に長い略矩形のガラス板であり、車体の後部に取り付けられる。窓ガラス1は、透明な透明部11と、遮光された遮光部12と、を有する。図1に示すように、遮光部12は、透明部11の周囲に設けられる。なお、窓ガラス1の形状は、図1の例に限られない。
遮光膜2は、遮光のために窓ガラス1の面上に設けられた膜である。遮光膜2は、例えば、黒色セラミックスなどのセラミックスにより形成される。図1に示すように、遮光膜2は、窓ガラス1の外周部に設けられる。後述するデフォッガ電極31a,31bや給電点61,71,81及び無給電素子9は、遮光膜2上に設けることにより、車外から見えなくすることができる。これにより、車両用窓ガラスのデザイン性を向上させることができる。
窓ガラス1のうち、遮光膜2が設けられていない部分が透明部11に相当し、遮光膜2が設けられた部分が遮光部12に相当する。以下では、適宜、車両用窓ガラスの構成を窓ガラス1における遮光膜2の内側に設ける(配置する)ことを、透明部11に設ける(配置する)と称する。また、車両用窓ガラスの構成を遮光膜2上に設ける(配置する)ことを、遮光部12に設ける(配置する)と称する。
デフォッガ3は、窓ガラス1の結露や凍結を抑制する装置である。デフォッガ3は、デフォッガ電極31a,31bと、複数の水平線条32(第1線条)と、複数の垂直線条33と、エレメント34(デフォッガエレメント)と、を有する。
デフォッガ電極31a,31bは、水平線条32及び垂直線条33に通電するための、垂直方向に長い電極であり、遮光部12に設けられる。デフォッガ電極31aは、電源に接続され、デフォッガ電極31bは、グラウンド(車体)に接続される。
水平線条32は、水平方向に延びた線条であり、一端がデフォッガ電極31aに接続され、他端がデフォッガ電極31bに接続される。複数の水平線条32は、それぞれ垂直方向に第1間隔で等間隔に、平行に配置される。第1間隔は、例えば、25mmである。デフォッガ3が備える水平線条32の数は任意に設計可能である。
垂直線条33は、垂直方向に延びた線条であり、一端が最上部に配置された水平線条32に接続され、他端が最下部に配置された水平線条32に接続される。また、水平線条32は、交差した複数の水平線条32をそれぞれ接続する。複数の垂直線条33は、それぞれ水平方向に所定の間隔で、平行に配置される。デフォッガ3が備える垂直線条33の数は任意に設計可能である。
デフォッガ3は、デフォッガ電極31a,31bを介して、水平線条32及び垂直線条33に通電し、水平線条32及び垂直線条33を加熱することにより、窓ガラス1の結露や凍結を抑制する。また、水平線条32及び垂直線条33により、透明部11の一部に格子状のパターンが形成される。
エレメント34は、ガラスアンテナ5のアンテナ感度を高めるためのエレメントであり、複数の線条により形成される。エレメント34は、一端がデフォッガ3の最上部に配置された水平線条32に配置される。エレメント34について、詳しくは後述する。
なお、本明細書において、線条とは、直線状の導電線のことである。線条は、例えば、銀ペースト等の金属を含有するペーストを、窓ガラス1の表面にプリントし、焼付けることにより形成できる。また、線条は、銅などの導電性物質からなる線状体や箔状体を、窓ガラス1の表面に接着剤などで貼付することによって形成されてもよいし、合わせガラスを構成する2枚のガラス板の間に挟み込むことによって形成されてもよい。また、エレメントとは、電波の受信に利用される、1つ又は接続された複数の線条のことをいう。
無給電線条4は、車両用窓ガラスのデザイン性を向上させるために設けられた、垂直方向又は水平方向に延びる線条である。無給電線条4は、いずれの電極にも接続されず、通電されない。各無給電線条4は、デフォッガ3及びガラスアンテナ5が備える線条の隙間を埋めるように配置される。例えば、図1の例では、水平方向に延びる無給電線条4aは、ガラスアンテナ5を構成する各水平線条の延長線上に配置されている。また、垂直方向に延びる無給電線条4bは、デフォッガ3の垂直線条33の延長線上に配置されている。無給電線条4をこのように配置することにより、図1に示すように、窓ガラス1に略格子状のパターン(以下、「格子パターン」という)を形成することができる。これにより、車両用窓ガラスのデザイン性を向上させることができる。
また、図1の例では、ガラスアンテナ5の近傍には、1本の長い無給電線条4の代わりに、複数の短い無給電線条4c,4dが配置されている。このように、ガラスアンテナ5の近傍に配置する無給電線条4を短くすることにより、無給電線条4によるガラスアンテナ5への影響を抑制することができる。
ガラスアンテナ5は、窓ガラス1の面上に形成されたアンテナであり、複数の線条を備える。ガラスアンテナ5の線条の一部は、デフォッガ3の水平線条32及び垂直線条33並びに無給電線条4とともに、窓ガラス1に格子パターンを形成する。
図2は、図1のガラスアンテナ5の拡大図である。図2に示すように、ガラスアンテナ5は、FM/DABアンテナ6(第1アンテナ)と、RKEアンテナ7(第2アンテナ)と、AMアンテナ8(第3アンテナ)と、を備える。
FM/DABアンテナ6は、FM放送信号及びDAB信号の少なくとも一方の受信用アンテナである。FM放送信号の周波数帯域は76MHz〜108MHzであり、ガラス面上における中心波長は2087mmである。DAB信号の周波数帯域は170MHz〜240MHzであり、ガラス面上における中心波長は937mmである。FM/DABアンテナ6は、これらの周波数帯域が受信可能なように形成される。FM/DABアンテナ6は、給電点61(第1給電点)と、エレメント62(第1エレメント)と、を備える。
給電点61は、エレメント62と、アンプ等の信号処理回路(図示省略)と、を接続するための電極であり、車外から見えないように遮光部12に設けられる。給電点61は、線条と同様の形成方法により、窓ガラス1の面上に平面的なパターンとして形成される。図2の例では、給電点61は、四角形であるが、その形状は円形や矩形など、任意に設計可能である。
エレメント62は、FM放送信号及びDAB信号の少なくとも一方を受信する部分である。エレメント62は、給電点61に接続され、受信した信号(電波)に応じた電流を信号処理回路に入力する。エレメント62は、水平線条63と、垂直線条64と、水平線条65と、垂直線条66と、水平線条67と、を有する。以下、ガラスアンテナ5が有する各線条の端部のうち、給電点に近い端部を始点、給電点から遠い端部を終点と称する。
水平線条63は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が給電点61に接続され、終点が垂直線条64の始点に接続される。
垂直線条64は、始点から垂直方向上向きに延びる線条であり、始点が水平線条63の終点に接続され、終点が水平線条65の始点に接続される。
水平線条65は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条64の終点に接続される。水平線条65の終点は、エレメント62の1つの経路の終点に相当する。水平線条63、垂直線条64及び水平線条65により形成される経路の長さは、例えば、110mmである。
垂直線条66は、始点から垂直方向下向きに延びる線条であり、始点が給電点61に接続され、終点が水平線条67の始点に接続される。垂直線条66は、水平線条63と共に、屈曲部(第1屈曲部)を形成する。
水平線条67は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条66の終点に接続される。水平線条67の終点は、エレメント62の1つの経路の終点に相当する。水平線条67は、垂直線条66と共に、エレメント62の最長経路及び屈曲部(第1屈曲部)を形成する。水平線条67は、デフォッガ3の最上部の水平線条32と、後述する水平線条36と、の間に第1間隔で配置される。垂直線条66及び水平線条67により形成される経路の長さは、例えば、180mmである。
図1に示すように、水平線条63と、垂直線条64と、水平線条65の一部と、は遮光部12に配置される。水平線条65の他の部分は、透明部11に配置され、格子パターンの一部を形成する。水平線条63及び垂直線条64は、水平線条65の他の部分が格子パターンを形成可能な位置に、水平線条65を配置するための接続線の役割を果たす。
これと同様に、垂直線条66(第4部分)と、水平線条67の一部と、は遮光部12に配置される。水平線条67の他の部分は、透明部11に配置され、格子パターンの一部を形成する。垂直線条66は、水平線条67の他の部分が格子パターンを形成可能な位置に、水平線条67を配置するための接続線の役割を果たす。
なお、本実施形態において、エレメント62の形状は、図2の例に限られない。エレメント62は、後述するエレメント62,72,82の配置を満たす範囲で、FM放送信号及びDAB信号の少なくとも一方を受信可能な任意の形状及び長さであり得る。
RKEアンテナ7は、RKE信号の受信用アンテナである。RKE信号の周波数は314MHz、434MHz、及び868MHzなどである。RKEアンテナ7は、これらの周波数が受信可能なように形成される。図2に示すように、RKEアンテナ7は、給電点71(第2給電点)と、エレメント72(第2エレメント)と、を備える。
給電点71は、エレメント72と、アンプ等の信号処理回路(図示省略)と、を接続するための電極であり、車外から見えないように遮光膜2上に設けられる。給電点71は、線条と同様の形成方法により、窓ガラス1の面上に平面的なパターンとして形成される。図2の例では、給電点71は、四角形であるが、その形状は円形や矩形など、任意に設計可能である。図2に示すように、給電点71は、給電点61に隣接して配置される。なお、本明細書において「隣接」とは、2つの対象部材が接しているのではなく、当該対象部材間に隙間があることを意味する。例えば、図2に示すように、給電点71と給電点61との間に隙間がある。
エレメント72は、RKE信号を受信する部分である。エレメント72は、給電点71に接続され、受信した信号(電波)に応じた電流を信号処理回路に入力する。図2のエレメント72は、水平線条73と、垂直線条74と、水平線条75と、水平線条76と、水平線条77と、を有する。
水平線条73は、始点から水平方向左向きに延びる線条であり、始点が給電点71に接続され、終点が垂直線条74の始点に接続される。
垂直線条74は、始点から垂直方向上向きに延びる線条であり、始点が水平線条73の終点に接続され、終点が水平線条75の始点に接続される。垂直線条74の長さは、例えば、72mmである。
水平線条75は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条74の終点に接続される。水平線条75の終点は、エレメント72の1つの経路の終点に相当する。水平線条75は、水平線条73及び垂直線条74と共に、エレメント72の最長経路を形成する。水平線条75の長さは、例えば、328mmである。
水平線条76は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条74の第1中間点に接続される。水平線条76の終点は、エレメント72の1つの経路の終点に相当する。第1中間点は、水平線条76の長さに応じて任意に設計できる。水平線条76の長さは、例えば、18mmである。
水平線条77は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条74の第1中間点に接続される。水平線条77の終点は、エレメント72の1つの経路の終点に相当する。第2中間点は、水平線条76の長さに応じて任意に設計できる。水平線条77の長さは、例えば、18mmである。
図1に示すように、水平線条73と、垂直線条74と、水平線条76,77と、水平線条75は遮光部12に配置される。
また、以上の説明からわかるとおり、エレメント72は、AMアンテナ8を迂回するように配置される。すなわち、エレメント72は、その最長経路の一部(垂直線条74の一部及び水平線条75)が、後述するAMアンテナ8の給電点81を通る水平方向の直線に対して、給電点71と反対側に配置される。
なお、本実施形態において、エレメント72の形状は、図2の例に限られない。エレメント72は、後述するエレメント62,72,82の配置を満たす範囲で、RKE信号を受信可能な任意の形状及び長さであり得る。
AMアンテナ8は、AM放送信号の受信用アンテナである。AM放送信号の周波数帯域は531KHz〜1720KHzである。AMアンテナ8は、これらの周波数帯域が受信可能なように形成される。図2に示すように、AMアンテナ8は、給電点81(第3給電点)と、エレメント82(第3エレメント)と、を備える。
給電点81は、エレメント82と、アンプ等の信号処理回路(図示省略)と、を接続するための電極であり、車外から見えないように遮光部12に設けられる。給電点81は、線条と同様の形成方法により、窓ガラス1の面上に平面的なパターンとして形成される。図2の例では、給電点81は、四角形であるが、その形状は円形や矩形など、任意に設計可能である。図2に示すように、給電点81は、給電点71に隣接して配置される。すなわち、給電点81は、給電点71を挟んで、給電点61と反対側に配置される。
なお、給電点71及び給電点81の間隔と、給電点71及び給電点61の間隔と、は同一であってもよいし、異なってもよい。また、図2の例では、給電点61,71,81は、垂直方向に一列に配置されているが、水平方向に一列に配置されてもよいし、互いに垂直方向又は水平方向にずらして配置されてもよい。いずれの場合も、給電点61,71,81は、給電点71が給電点61に隣接し、給電点81が給電点71に隣接するように配置される。
エレメント82は、AM放送信号を受信する部分である。エレメント82は、給電点81に接続され、受信した信号(電波)に応じた電流を信号処理回路に入力する。AMアンテナ8の受信周波数は、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の受信周波数の約1/100倍以下であるため、図2に示すように、エレメント82は、エレメント62,72の最長経路より、長い最長経路を有する。図2のエレメント82は、水平線条83と、垂直線条84と、水平線条85〜89と、垂直線条90と、を有する。
水平線条83は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が給電点81に接続され、終点が垂直線条84の始点に接続される。
垂直線条84は、始点から垂直方向上向きに延びる線条であり、始点が水平線条83の終点に接続され、終点が水平線条85の始点に接続される。
水平線条85は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条84の終点に接続され、終点が水平線条88の始点(垂直線条90の第2中間点)に接続される。
水平線条86は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条90の終点に接続される。水平線条86の終点は、エレメント82の1つの経路の終点に相当する。水平線条86は、水平線条75と同一直線上に配置されている。水平線条86の長さは、例えば、700mmである。
水平線条87は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条90の第1中間点に接続される。水平線条87の終点は、エレメント82の1つの経路の終点に相当する。水平線条87の長さは、例えば、378mmである。
水平線条88は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条90の第2中間点(水平線条85の終点)に接続される。水平線条88の終点は、エレメント82の1つの経路の終点に相当する。水平線条88の長さは、例えば、378mmである。
水平線条89は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条90の第3中間点に接続される。水平線条89の終点は、エレメント82の1つの経路の終点に相当する。水平線条89の長さは、例えば、378mmである。
垂直線条90は、始点から垂直方向上向きに延びる線条であり、終点が水平線条86の始点に接続される。垂直線条90の始点は、エレメント82の1つの経路の終点に相当する。垂直線条90の一部(第2中間点から終点まで)は、水平線条83、垂直線条84、水平線条85及び水平線条86と共に、エレメント82の最長経路を形成する。垂直線条90の長さは、例えば、104mmである。
図1に示すように、水平線条83と、垂直線条84と、水平線条85の一部と、は遮光部12に配置される。水平線条85の他の部分と、水平線条86〜89と、垂直線条90と、は透明部11に配置され、格子パターンの一部を形成する。水平線条83及び垂直線条84は、水平線条85の他の部分、水平線条86〜89及び垂直線条90が格子パターンを形成可能な位置に、水平線条85、水平線条86〜89及び垂直線条90を配置するための接続線の役割を果たす。また、水平線条86〜89(垂直線条90の第1〜第3中間点及び終点)は、水平線条86〜89が格子パターンを形成可能なように、垂直方向に等間隔に、平行に配置される。
なお、本実施形態において、エレメント82の形状は、図2の例に限られない。エレメント82は、後述するエレメント62,72,82の配置を満たす範囲で、AM放送信号を受信可能な任意の形状及び長さであり得る。例えば、図2の例では、エレメント82の最長経路の一部がエレメント62,72の間に配置されているが、エレメント82の最長経路の全部がエレメント62,72の間に配置されてもよい。
無給電素子9は、RKEアンテナ7の受信周波数を調整するために設けられた素子である。無給電素子9は、遮光膜2上に設けられ、いずれの電極にも接続されず、通電されない。図2の例では、無給電素子9は、1本の線条により形成されている。無給電素子9の長さは、例えば、1030mmである。無給電素子9は、第1オーバラップ部分91と、第2オーバラップ部分92と、を備える。無給電素子9について、詳しくは後述する。
次に、本実施形態に係る車両用窓ガラスの効果について説明する。
図2の例のように、各アンテナの給電点が、給電点61,71,81の順で一列に配置されている場合、従来の車両用窓ガラスでは、各アンテナのエレメントは、エレメント62,72,82の順で配置される。この結果、エレメント62とエレメント72とが隣接して配置され、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の受信感度が低下する。これは、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の受信周波数が近いため、両アンテナの間で干渉が生じるためである。
これに対して、本実施形態では、AMアンテナ8を迂回するようにエレメント72を配置したことにより、各アンテナのエレメントは、エレメント62,82,72の順で配置される。すなわち、エレメント62とエレメント72との間に、エレメント82の少なくとも一部が配置される。この結果、エレメント62とエレメント82とが隣接して配置され、エレメント82とエレメント72とが隣接して配置される。
上述の通り、AMアンテナ8の受信周波数は、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の受信周波数の約1/100倍以下である。このため、エレメント62とエレメント82とが隣接して配置されても、FM/DABアンテナ6とAMアンテナ8との間で干渉は生じにくい。同様に、エレメント62とエレメント72とが隣接して配置されても、RKEアンテナ7とAMアンテナ8との間で干渉は生じにくい。そして、エレメント62とエレメント72との間にAMアンテナ8が配置されたことにより、FM/DABアンテナ6とRKEアンテナ7との間の干渉が抑制される。
この結果、本実施形態によれば、従来の車両用窓ガラスに比べて、FM/DABアンテナ6とRKEアンテナ7との間の干渉を抑制し、両アンテナの受信感度を向上させることができる。
ここで、図3は、ガラスアンテナの比較例1を示す図である。比較例1は、本実施形態に係るガラスアンテナ5に、従来のエレメントの配置を適用したガラスアンテナである。すなわち、比較例1は、FM/DABアンテナ6、RKEアンテナ7及びAMアンテナ8を備え、各アンテナの給電点は、給電点61,71,81の順で配置され、各アンテナのエレメントは、エレメント62,72,82の順で配置されている。
図4は、ガラスアンテナの比較例2を示す図である。比較例2は、比較例1からFM/DABアンテナ6を除いたガラスアンテナである。すなわち、比較例2は、RKEアンテナ7及びAMアンテナ8を備え、各アンテナの給電点は、給電点71,81の順で配置され、各アンテナのエレメントは、エレメント72,82の順で配置されている。
図5は、図2のガラスアンテナ5(以下、「実施例」という)及び比較例1のDAB信号のアンテナ感度の実験結果を示すグラフである。図5の実線は、実施例のアンテナ感度を示し、破線は比較例1のアンテナ感度を示す。比較例2は、FM/DABアンテナ6を備えないため、図5には実験結果が含まれない。
図5に示すように、実施例のアンテナ感度は、比較例1のアンテナ感度より全体的に高くなっている。このことから、実施例の構成により、RKEアンテナ7によるFM/DABアンテナ6への干渉が、比較例1より抑制されていることがわかる。
図6は、実施例、比較例1及び比較例2のRKE信号のリターンロスの実験結果を示すグラフである。図6の実線は、実施例のリターンロスを示し、点線は比較例1のリターンロスを示し、破線は比較例2のリターンロスを示す。リターンロスが小さいほど、RKEアンテナ7の性能は高い。
図6に示すように、比較例1のリターンロスは、比較例2のリターンロスに比べて全体的に大きくなっている。このことから、比較例1のRKEアンテナ7の性能は、RKEアンテナ7に隣接して配置されたFM/DABアンテナ6による干渉により、低下していることがわかる。
また、実施例のリターンロスは、比較例1のリターンロスに比べて全体的に小さくなっている。このことから、実施例の構成により、FM/DABアンテナ6によるRKEアンテナ7への干渉が、比較例1より抑制されていることがわかる。
以上説明した通り、本実施形態によれば、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7のエレメント62,72の間に、AMアンテナ8のエレメント82の少なくとも一部が配置される。このような構成により、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の間の干渉を抑制し、干渉によるFM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の受信感度の低下を抑制することができる。この結果、FM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7の受信感度を向上させることができる。
なお、本実施形態に係るガラスアンテナの構成は、図2の例に限られない。本実施形態は、受信周波数が近いアンテナH1,H2と、アンテナH1,H2に比べて受信周波数が十分に低いアンテナLと、を備え、各アンテナの給電点がアンテナH1,H2,Lの順で隣接して配置された任意のガラスアンテナに適用できる。
アンテナH1,H2は、図2の例ではFM/DABアンテナ6及びRKEアンテナ7に相当するが、これに限られない。アンテナH1,H2の受信周波数が近いとは、例えば、アンテナH1の受信周波数が、アンテナH2の受信周波数の1/10倍以上10倍以下であることをいう。
また、アンテナLは、図2の例ではAMアンテナ8に相当するが、これに限られない。アンテナLの受信周波数が、アンテナH1,H2の受信周波数より十分に低いとは、例えば、アンテナLの受信周波数が、アンテナH1,H2の受信周波数の1/10倍以下であることをいう。
ここで、図7は、本実施形態に係るガラスアンテナのバリエーションを模式的に示す図である。
図7(A)の例では、アンテナH1のエレメントが、アンテナLを迂回するように配置されている。すなわち、アンテナH1のエレメント(第1エレメント)の一部が、アンテナLの給電点(第3給電点)を通る水平方向の直線に対して、アンテナH1の給電点(第1給電点)と反対側に配置されている。
アンテナH1のエレメント(第1エレメント)は、アンテナLのエレメント(第3エレメント)と容量結合してもよい。これにより、アンテナH1の受信感度が向上する。例えば、図7(A)において、アンテナH1のエレメントのうち第3エレメントの上側で延在するエレメント部分は、第3エレメントと容量結合してもよい。また、アンテナH1のエレメント(第1エレメント)とアンテナLのエレメント(第3エレメント)との容量結合部分が、遮光部12に設けられていると、当該容量結合部分が遮光部12により隠れるため、車両用窓ガラスのデザイン性が向上する。
図7(B)の例では、アンテナH2のエレメントが、アンテナLを迂回するように配置されている。すなわち、アンテナH2のエレメント(第2エレメント)の一部が、アンテナLの給電点(第3給電点)を通る水平方向の直線に対して、アンテナH2の給電点(第2給電点)と反対側に配置されている。図7(B)の例は、図2のガラスアンテナ5を模式化したものに相当する。
アンテナH2のエレメント(第2エレメント)は、アンテナLのエレメント(第3エレメント)と容量結合してもよい。これにより、アンテナH2の受信感度が向上する。例えば、図7(B)において、アンテナH2のエレメントのうち第3エレメントの上側で延在するエレメント部分は、第3エレメントと容量結合してもよい。また、アンテナH2のエレメント(第1エレメント)とアンテナLのエレメント(第3エレメント)との容量結合部分が、遮光部12に設けられていると、当該容量結合部分が遮光部12により隠れるため、車両用窓ガラスのデザイン性が向上する。
図7(C)の例では、アンテナLのエレメントがアンテナH1,H2の間に配置されている。すなわち、アンテナLのエレメント(第3エレメント)が、アンテナH1の給電点(第1給電点)と、アンテナH2の給電点(第2給電点)と、の間を通過するように配置されている。
アンテナH1のエレメント(第1エレメント)とアンテナH2のエレメント(第2エレメント)とのうちいずれか一方のみが、アンテナLのエレメント(第3エレメント)と容量結合してもよい。これにより、エレメントが第3エレメントと容量結合している方のアンテナの受信感度が向上する。例えば、図7(C)において、アンテナH1のエレメントのうち第3エレメントの下側で延在するエレメント部分は、第3エレメントと容量結合してもよい。或いは、アンテナH2のエレメントのうち第3エレメントの上側で延在するエレメント部分は、第3エレメントと容量結合してもよい。また、アンテナH1のエレメント(第1エレメント)とアンテナH2のエレメント(第2エレメント)とのうちいずれか一方のみと、アンテナLのエレメント(第3エレメント)との容量結合部分が、遮光部12に設けられていると、当該容量結合部分が遮光部12により隠れるため、車両用窓ガラスのデザイン性が向上する。
図7(A)〜(C)のいずれの場合も、アンテナH1,H2のエレメントの間に、アンテナLのエレメントの少なくとも一部が配置されるため、干渉によるアンテナH1,H2の受信感度の低下を抑制する、という上記の効果を得ることができる。したがって、アンテナH1,H2の受信感度を向上させることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る車両用窓ガラスについて、図8〜図14を参照して説明する。本実施形態では、デフォッガ3のエレメント34について詳細に説明する。図8は、図1におけるFM/DABアンテナ6の周辺を拡大した部分拡大図である。図8では、説明の便宜のため、無給電線条4、RKEアンテナ7及びAMアンテナ8は、省略されている。図8のエレメント34は、垂直線条35(第2線条)と、水平線条36と、垂直線条37と、水平線条38と、を備える。エレメント34が有する各線条の端部のうち、デフォッガ電極31a,31bから近い方を始点、デフォッガ電極31a,31bから遠い方を終点と称する。
垂直線条35は、始点から垂直方向上向きに延びる線条であり、終点が水平線条32の始点に接続される。垂直線条35の始点は、最上部に配置された水平線条32及び垂直線条33の交点に接続される。すなわち、垂直線条35は、最上部に配置された水平線条32と、水平線条36と、を接続する。以下、垂直線条35が接続された水平線条32を水平線条32Tと称し、垂直線条35が接続された垂直線条33を垂直線条33Lと称する。
図8からわかるように、垂直線条35は、垂直線条33Lを上方向に延長した部分に相当する。言い換えると、垂直線条33L及び垂直線条35は、1つの線条により形成される。垂直線条35の長さは、例えば、50mmである。また、垂直線条33L及び垂直線条35の長さの合計は、例えば、380mmである。
水平線条36は、始点から水平方向左向きに延びる線条であり、始点が垂直線条35の終点に接続され、終点が垂直線条37の始点に接続される。水平線条36は、水平線条33Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置される。これにより、水平線条36のうち、透明部11に配置された部分(第1部分)により、格子パターンの一部を形成することができる。水平線条36の長さは、例えば、320mmである。
垂直線条37は、始点から垂直方向下向きに延びる線条であり、始点が水平線条36の終点に接続され、終点が水平線条38の始点に接続される。垂直線条37の長さは、例えば、20mmである。
水平線条38は、始点から水平方向右向きに延びる線条であり、始点が垂直線条37の終点に接続される。水平線条38の終点は、エレメント34の終点に相当する。水平線条38の長さは、例えば、20mmである。
図8に示すように、水平線条36の一部、垂直線条37及び水平線条38(第2部分)は、遮光部12に設けられ、それぞれエレメント62の一部と、第1間隔より狭い第2間隔で配置される。具体的には、水平線条36の一部は、水平線条63と第2間隔で配置される。垂直線条37は、垂直線条66と第2間隔で配置される。水平線条38は、水平線条67の一部と第2間隔で配置される。第2間隔は、5mm以下の任意の間隔であり、例えば、2mmである。各線条の第2間隔は、それぞれ同一であってもよいし、異なってもよい。
また、水平線条36及び垂直線条37は、屈曲部(第2屈曲部)を形成する。この屈曲部は、水平線条63及び垂直線条66により形成される屈曲部に沿って配置される。同様に、垂直線条37及び水平線条38は、屈曲部(第2屈曲部)を形成する。この屈曲部は、垂直線条66及び水平線条67により形成される屈曲部に沿って配置される。
次に、本実施形態に係る車両用窓ガラスの効果について説明する。
上述の通り、エレメント34(第4エレメント)のうち透明部11に配置された部分(第1部分)は、エレメント62(第1エレメント)のうち透明部11に配置された部分(第3部分)と、第1間隔で並行して配置されている。これに対して、エレメント34(第4エレメント)のうち遮光部12に配置された部分(第2部分)の一部は、エレメント62(第1エレメント)のうち遮光部12に配置された部分(第4部分)の一部と、第1間隔より狭い第2間隔で並行して配置されている。この結果、透明部11におけるエレメント34とエレメント62との容量結合より、遮光部12におけるエレメント34とエレメント62との容量結合の方が強くなっている。
容量結合の強さ(以下、「結合度」という)は、結合する線条の並走距離に比例し、並走間隔に反比例する。並走とは、並行して配置されることをいう。そこで、結合度を、並走距離/並走間隔で表すと、図8の例では、透明部11におけるエレメント34とエレメント62との結合度は約5.6となる。一方、遮光部12におけるエレメント34とエレメント62との結合度は約30となる。
このように、遮光部12におけるエレメント34とエレメント62との結合度を高く(容量結合を強く)することにより、FM/DABアンテナ6は、デフォッガ3を利用して電波を受信できる。これにより、FM/DABアンテナ6のアンテナ感度を向上させることができる。
ここで、図9は、車両用窓ガラスの比較例を示す図である。図9の比較例は、図8の車両用窓ガラス(以下、「実施例」という)とは異なり、エレメント34が遮光部12でエレメント62に近接して配置されていない。図9の比較例の他の構成は、図8の実施例と同様である。
図10は、図8の実施例と、図9の比較例と、のFM放送信号のアンテナ感度の測定結果を示すグラフである。図10に示すように、FM放送信号の周波数帯域の全体で、図8の実施例のアンテナ感度が、図9の比較例のアンテナ感度より高くなっていることがわかる。
以上説明した通り、本実施形態によれば、遮光部12におけるエレメント34とエレメント62との間隔を狭くし、その結合度を高めることにより、FM/DABアンテナ6のアンテナ感度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、透明部11において、エレメント34とエレメント62とは、第1間隔で等間隔に配置され、それぞれ格子パターンの一部を形成する。したがって、本実施形態によれば、透明部11でエレメント間の間隔を狭くすることによりアンテナ感度を向上させる従来の方法に比べて、車両用窓ガラスのデザイン性の低下を抑制することができる。結果として、車両用窓ガラスのデザイン性を向上させることができる。
なお、エレメント34の各線条の最適な長さは、FM/DABアンテナ6の受信周波数(受信信号の中心波長)に応じて変化する。例えば、図2の例では、垂直線条33L,35及び水平線条36の長さの合計は、700mmであるのが好ましい。理由は、以下の通りである。
一般に、アンテナのエレメントは、その長さが1/4波長、3/4波長、5/4波長などに相当する信号と共振する。
DAB信号のように中心周波数が高い信号の場合、エレメント34のうち遮光部12に配置された部分(第2部分)と、エレメント62のうち遮光部12に配置された部分(第4部分)と、の間のインピーダンスが十分小さくなる。すなわち、エレメント34(水平線条36の終点)が給電点61に接続されているのと同様の状態となる。結果として、垂直線条33L,35及び水平線条36からなるエレメント部分は、その長さがDAB信号の1/4波長、3/4波長、5/4波長などの場合に、DAB信号と共振する。
したがって、垂直線条33L,35及び水平線条36の長さの合計を、700mm(DAB信号の約3/4波長)とすることにより、エレメント34をDAB信号と共振させることができる。すなわち、FM/DABアンテナ6によりDAB信号を受信可能とすることができる。
一方、FM放送信号のように中心周波数が低い信号の場合、エレメント34のうち遮光部12に配置された部分(第2部分)と、エレメント62のうち遮光部12に配置された部分(第4部分)と、の間のインピーダンスが十分小さくならない。すなわち、第2部分と第4部分とが短縮コンデンサとして機能する。結果として、垂直線条33L,35及び水平線条36からなるエレメント部分は、その長さがFM放送信号の1/4波長、3/4波長、5/4波長などより長い場合に、FM放送信号と共振する。
したがって、垂直線条33L,35及び水平線条36の長さの合計を、700mm(FM放送信号の約1/3波長(1/4波長以上3/4波長以下))とすることにより、エレメント34をFM放送信号と共振させることができる。すなわち、FM/DABアンテナ6によりFM放送信号を受信可能とすることができる。
以上のようなエレメント34の各線条の最適な長さは、上記のように受信信号の中心周波数に基づいて算出されてもよいし、実験やシミュレーションにより求められてもよい。
また、以上では、FM/DABアンテナ6のアンテナ感度を向上させる場合について説明したが、同様の方法で、RKEアンテナ7やAMアンテナ8のアンテナ感度を向上させることも可能である。
ここで、アンテナ感度を向上させるアンテナをアンテナA、アンテナAのアンテナ感度を向上させるためにデフォッガ3の水平線条32Tに接続されたエレメントをエレメントEと称する。図8の例では、アンテナAは、FM/DABアンテナ6に相当し、エレメントEはエレメント34に相当する。
図11〜図14は、本実施形態に係る車両用窓ガラスのバリエーションを模式的に示す図である。図11〜図14は、図8と同様に、アンテナAの周辺を拡大した部分拡大図である。
図11の例では、アンテナAのエレメントは、1本の線条(水平線条)により形成されており、屈曲部を有しない。
図11(A)の例では、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。また、エレメントEは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の1倍の間隔で配置されている。すなわち、透明部11に配置されたエレメントEは、透明部11に配置されたアンテナAのエレメントと、水平線条32Tと、の間に配置されている。このように、透明部11に配置されたアンテナAのエレメントと、水平線条32Tと、の間隔は、第1間隔の2倍以上の整数倍であってもよい。また、透明部11に配置されたエレメントEと、水平線条32Tと、の間隔は、第1間隔の1倍であってもよい。
図11(B)の例では、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。また、エレメントEは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の3倍の間隔で配置されている。このように、透明部11に配置されたエレメントEと、水平線条32Tと、の間隔は、第1間隔の3倍以上の整数倍であってもよい。
図11(C)の例では、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の3倍の間隔で配置されている。また、エレメントEは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の1倍の間隔で配置されている。このように、透明部11に配置されたエレメントEと、透明部11に配置されたアンテナAのエレメントと、の間隔は、第1間隔の2倍以上の整数倍であってもよい。
図11(A)〜(C)のいずれの場合も、遮光部12において、アンテナAのエレメントと、エレメントEと、の間隔が狭くなっているため、アンテナAのアンテナ感度を向上させることができる。また、透明部11において、アンテナAのエレメントと、エレメントEと、が水平線条32Tから第1間隔の整数倍の間隔で配置されているため、車両用窓ガラスのデザイン性を向上させることができる。
図12の例では、アンテナAのエレメントは、図8の例と同様に、2本の線条(垂直線条及び水平線条)により形成されており、遮光部12に屈曲部を有する。アンテナAのエレメントは、3本以上の線条により形成されてもよい。
図12(A)の例では、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。また、エレメントEは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の1倍の間隔で配置されている。エレメントEは、遮光部12において、アンテナAのエレメントの屈曲部の下側に、当該屈曲部に沿って配置された屈曲部を有する。
図12(B)の例では、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。また、エレメントEは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の3倍の間隔で配置されている。エレメントEは、遮光部12において、アンテナAのエレメントの屈曲部の上側に、当該屈曲部に沿って配置された屈曲部を有する。エレメントEの屈曲部は、エレメントEの終点が、アンテナAの給電点に近づくように、時計回りに形成されている。
図12(C)の例では、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。また、エレメントEは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の3倍の間隔で配置されている。エレメントEは、遮光部12において、アンテナAのエレメントの屈曲部の上側に、当該屈曲部に沿って配置された屈曲部を有する。エレメントEの屈曲部は、エレメントEの終点が、アンテナAの給電点から離れるように、反時計回りに形成されている。
図12のような構成により、アンテナAのエレメントとエレメントEとが近接して配置される長さが、図11の例に比べて長くなる。したがって、アンテナAのアンテナ感度をさらに向上させることができる。
図13(A)の例は、図12(B)の例におけるエレメントEの屈曲部を、多重線化したものである。図13(B)の例は、図12(C)の例におけるエレメントEの屈曲部を、多重線化したものである。図13のような構成により、アンテナAのエレメントとエレメントEとが近接して配置される長さが、図12の例に比べて長くなる。したがって、アンテナAのアンテナ感度をさらに向上させることができる。
図14の例では、デフォッガ3が2つのエレメントE1,E2を有する。
図14(A)の例では、1つのアンテナAのエレメントに対して、2つのエレメントEが遮光部12において近接するように配置されている。具体的には、アンテナAのエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。エレメントE1は、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の3倍の間隔で配置され、遮光部12において、アンテナAのエレメントの上側に近接して配置されている。エレメントE2は、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の1倍の間隔で配置され、遮光部12において、アンテナAのエレメントの下側に近接して配置されている。エレメントE1,E2は、同一の垂直線条33に接続されており、一部を共有している。図14(A)のような構成により、アンテナAのエレメントとエレメントEとが近接して配置される長さが、図11の例に比べて長くなる。したがって、アンテナAのアンテナ感度をさらに向上させることができる。なお、1つのアンテナAのエレメントに、3つ以上のエレメントEが近接するように配置されてもよい。
図14(B)の例では、2つのアンテナA1,A2のエレメントに対して、2つのエレメントE1,E2が、それぞれ遮光部12において近接するように配置されている。具体的には、アンテナA1のエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の3倍の間隔で配置されている。アンテナA2のエレメントは、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の2倍の間隔で配置されている。エレメントE1は、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の4倍の間隔で配置され、遮光部12において、アンテナA1のエレメントの上側に近接して配置されている。エレメントE2は、透明部11において、水平線条32Tと、第1間隔の1倍の間隔で配置され、遮光部12において、アンテナA2のエレメントの下側に近接して配置されている。エレメントE1,E2は、同一の垂直線条33に接続されており、一部を共有している。図14(B)のような構成により、遮光部12において、アンテナA1,A2のエレメントと、エレメントE1,E2と、がそれぞれ近接して配置される。したがって、アンテナA1,A2のアンテナ感度をそれぞれ向上させることができる。なお、3つ以上のアンテナAに対して、それぞれエレメントEが近接するように配置されてもよい。
図14(C)の例は、図14(B)の例におけるエレメントE1,E2を分離したものである。具体的には、エレメントE1,E2は、それぞれ異なる垂直線条33に接続されている。図14(C)のような構成により、エレメントE1,E2をそれぞれ独立して設計することができる。
<第3実施形態>
第3実施形態に係る車両用窓ガラスについて、図15及び図16を参照して説明する。本実施形態では、無給電素子9について詳細に説明する。上述の通り、無給電素子9は、第1オーバラップ部分91と、第2オーバラップ部分92と、を備える。
第1オーバラップ部分91は、無給電素子9のうち、RKEアンテナ7の水平線条75に第3間隔を隔てて並行して配置された部分である。無給電素子9の一部(第1オーバラップ部分91)をこのように配置することにより、無給電素子9と、RKEアンテナ7と、が容量結合する。第3間隔は、無給電素子9と、RKEアンテナ7と、が容量結合可能な任意の間隔に設計可能であり、5mm以下であるのが好ましい。図2の例では、第3間隔は、2mmである。
第2オーバラップ部分92は、無給電素子9のうち、AMアンテナ8の水平線条86に第4間隔を隔てて並行して配置された部分である。無給電素子9の一部(第2オーバラップ部分92)をこのように配置することにより、無給電素子9と、AMアンテナ8と、が容量結合する。第4間隔は、無給電素子9と、AMアンテナ8と、が容量結合可能な任意の間隔に設計可能であり、5mm以下であるのが好ましい。図2の例では、第4間隔は、2mmである。
次に、本実施形態に係る車両用窓ガラスの効果について説明する。
本実施形態によれば、無給電素子9とRKEアンテナ7とが容量結合し、無給電素子9とAMアンテナ8とが容量結合する。すなわち、RKEアンテナ7とAMアンテナ8とが、無給電素子9を介して(間接的に)電気的に結合する。
この結果、RKEアンテナ7には、RKEアンテナ7の形状、AMアンテナ8の形状、第1オーバラップ部分91の長さ、第2オーバラップ部分92の長さ、第3間隔及び第4間隔に応じた共振点が形成される。したがって、当該共振点が所定の周波数となるように、上記の各パラメータを調整することにより、RKEアンテナ7の受信周波数を所定の周波数にすることができる。所定の周波数は、例えば、314MHz、434MHz、868MHzなどであるが、これに限られない。各パラメータは、実験により調整すればよい。
図15は、図2のRKEアンテナ7のリターンロスの実験結果を示すグラフである。図15に示すように、図2のような構成により、RKEアンテナ7の受信周波数は、314MHz及び434MHzとなっていることがわかる。
以上説明した通り、本実施形態によれば、無給電素子9を設けることにより、RKEアンテナ7に複数の受信周波数を設けることができる。RKEアンテナ7が有する各受信周波数は、RKEアンテナ7の形状、AMアンテナ8の形状、第1オーバラップ部分91の長さ、第2オーバラップ部分92の長さ、第3間隔及び第4間隔を調整することにより、任意に設定可能である。
RKEアンテナ7の形状だけで、RKEアンテナ7に複数の受信周波数を設ける場合、RKEアンテナ7の各線条を長くしたり、線条を増やしたりする必要があるため、RKEアンテナ7の占有面積が大きくなる。これに対して、本実施形態では、第1オーバラップ部分91の長さ、第2オーバラップ部分92の長さ、第3間隔及び第4間隔を調整することにより、複数の受信周波数を設けることができる。したがって、本実施形態によれば、複数の受信周波数を有するRKEアンテナ7を小型化することができる。
また、本実施形態では、RKE信号の送受信に、無給電素子9を介して容量結合されたAMアンテナ8が利用されるため、RKEアンテナ7の送受信性能を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、RKEアンテナ7及びAMアンテナ8の形状を変えることなく、RKEアンテナ7の受信周波数を調整できる。したがって、RKEアンテナ7の受信周波数を容易に調整することができる。
また、本実施形態によれば、第3間隔及び第4間隔をそれぞれ調整することにより、無給電素子9とRKEアンテナ7との容量結合の強度と、無給電素子9とAMアンテナ8との容量結合の強度と、をそれぞれ独立して調整することができる。これにより、RKEアンテナ7の受信周波数を、より自由に調整することができる。
また、本実施形態において、無給電素子9を介して容量結合される2つのアンテナは、RKEアンテナ7及びAMアンテナ8に限られない。例えば、2つのアンテナは、RKEアンテナ7及びFM/DABアンテナ6であってもよい。ただし、2つのアンテナは、RKEアンテナ7及びAMアンテナ8のように、それぞれの受信周波数が(例えば、10倍以上)離れているのが好ましい。これは、2つのアンテナの受信周波数が近い場合、干渉により各アンテナの受信感度が低下する恐れがあるためである。
ここで、無給電素子9を介して容量結合される2つのアンテナのうち、受信周波数が高いアンテナをアンテナH、受信周波数が低いアンテナをアンテナLと称する。図2の例では、アンテナHはRKEアンテナ7に相当し、アンテナLはAMアンテナ8に相当する。
図16は、本実施形態に係るガラスアンテナのバリエーションを模式的に示す図である。
図16(A)の例では、アンテナH及びアンテナLのエレメントは、同一直線上に配置されており、無給電素子9は、1本の線条である。第1オーバラップ部分91は、アンテナHのエレメントの全体に第3間隔を隔てて並行して配置されている。第2オーバラップ部分92は、アンテナLのエレメントの全体に第4間隔を隔てて並行して配置されている。図16(A)の例では、第3間隔と第4間隔とが等しく、第1オーバラップ部分91の長さとアンテナHのエレメントの長さとが等しく、第2オーバラップ部分92の長さとアンテナLのエレメントの長さとが等しくなる。
図16(B)の例では、アンテナH及びアンテナLのエレメントは、同一直線上に配置されており、無給電素子9は、1本の線条である。第1オーバラップ部分91は、アンテナHのエレメントの一部に第3間隔を隔てて並行して配置されている。第2オーバラップ部分92は、アンテナLのエレメントの一部に第4間隔を隔てて並行して配置されている。図16(B)の例は、図2のガラスアンテナ5に相当する。図16(B)の例では、第3間隔と第4間隔とが等しくなる。
図16(C)の例では、アンテナH及びアンテナLのエレメントは、同一直線上に配置されている。また、無給電素子9は、垂直方向にずらして配置された2本の水平線条と、2本の水平線条を接続する垂直線条と、により形成されている。図16(C)の例では、第3間隔及び第4間隔が異なる間隔となる。
図16(D)の例では、アンテナH及びアンテナLのエレメントは、垂直方向にずらして配置されており、無給電素子9は、1本の線条である。図16(D)の例では、第3間隔及び第4間隔が異なる間隔となる。
図16(E)の例では、アンテナH及びアンテナLのエレメントは、垂直方向にずらして配置されており、無給電素子9は、1本の線条である。ただし、無給電素子9は、図16(D)と異なり、アンテナHとアンテナLとの間に配置されている。図16(E)の例では、無給電素子9の配置を調整することにより、第3間隔及び第4間隔が調整することができる。
図16(A)〜(E)のいずれの場合も、無給電素子9を介してアンテナH及びアンテナLが電気的に結合されるため、複数の受信周波数を有するアンテナH,Lを小型化する、という上記の効果を得ることができる。
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。