以下、本発明に係る印刷機の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように印刷機は、給紙部1と、給紙部1からの枚葉紙Pを受け取って枚葉紙Pに印刷を施す印刷部2と、印刷部2で印刷された枚葉紙Pを印刷部2から排紙するための排紙部3とを備えている。
給紙部1は、枚葉紙Pをストックしておくための印刷前貯留部11と、印刷前貯留部11に貯留された枚葉紙Pを1枚ずつ印刷部2へ給紙する給紙装置としてのフィーダー12と、フィーダー12で送られる枚葉紙Pを受け取って下流側へ搬送する径の小さな渡し胴である給紙胴13と、給紙胴13からの枚葉紙Pを受け取って下流側の印刷部2へ搬送する、給紙胴13の2倍の径を有する給紙側渡し胴14とを備えている。給紙胴13及び給紙側渡し胴14は、爪台と爪とで枚葉紙Pをくわえて保持するくわえクランプ(図示せず)、及びくわえクランプを収容するための凹部を備えており、くわえクランプにより枚葉紙Pの端をくわえて、枚葉紙Pが受け渡される。また、フィーダー12は、フィーダークラッチ(図示せず)を備えており、駆動制御手段からの信号によりフィーダークラッチを介してフィーダー12の駆動を停止することによって、給紙が停止される。
排紙部3は、印刷部2で一方の面又は両面に印刷がなされた枚葉紙Pをストックする印刷後貯留部(図示せず)と、印刷部2で前記のように印刷された枚葉紙Pを印刷後貯留部へ搬送する搬送部(ここではチェーン式の搬送部)31とを備えている。
印刷部2は、給紙側渡し胴14からの枚葉紙Pを受け取って搬送する印刷側渡し胴21と、印刷側渡し胴21からの枚葉紙Pを受け取って図示してしないインキ供給装置からのインキが供給されて一方の面に印刷を行う処理胴22とを備えている。
印刷部2は、印刷側渡し胴21及び処理胴22の下方に、反転機構4を備えている。反転機構4は、処理胴22により印刷された枚葉紙Pが受け渡されて枚葉紙Pの他方の面に印刷をすべく枚葉紙Pを表裏反転させて処理胴22に受け渡すための複数の胴を有する。反転機構4は、処理胴22の下方に配置される反転渡し胴41と、印刷側渡し胴21の下方にあって、反転渡し胴41及び印刷側渡し胴21の間に配置された反転胴42とを備えている。反転胴42は、反転渡し胴41からの枚葉紙Pを受け取って反転させるよう構成されており、第二胴に相当し、印刷側渡し胴21が第一胴に相当する。
図7に示すように、印刷側渡し胴21は、給紙胴13の略2倍の径を有し、枚葉紙Pの端をくわえて保持すべく、2つの爪台と爪とからなるくわえクランプ21Gが、略180度間隔を置いて印刷側渡し胴21に形成された2つの凹部21Rに収容されている。また、処理胴22は、給紙胴13の略3倍の径を有し、枚葉紙Pの端をくわえて保持すべく、3つの爪台と爪とからなるくわえクランプ22Gが、略120度の間隔を置いて処理胴22に形成された3つの凹部22Rに収容されている。
反転渡し胴41は、給紙胴13の略2倍の径に設定されている。反転渡し胴41は、固定セグメント(以下「前セグメント」と称する)41Aと、反転渡し胴41の回転中心を中心に回動可能な回動セグメント(以下「後セグメント」と称する)41Bとを有する伸縮部5,6を、周方向において180度の間隔を置いて備えている。各伸縮部5,6における前セグメント41A及び後セグメント41Bの外周面は、円弧状に形成されているとともに、同一曲面上に配置されている。そして、前セグメント41A及び後セグメント41Bは、互いに周方向で噛み合うことができる櫛歯状に構成されている。
各伸縮部5,6において、後セグメント41Bが反転渡し胴41の回転中心を中心に、前セグメント41Aに対して回動することで、両セグメント41A,41Bどうしが深く噛み合った状態と、噛み合いが略解消された状態とに切り替えることができる。後セグメント41Bを前セグメント41Aから離間する側へ最大角度回動させて両者の噛み合いを略解消することによって、前セグメント41Aの外周面の周方向長さに後セグメント41Bの外周面の周方向長さを加えた周方向長さが、印刷機で扱われる枚葉紙Pのうちの搬送方向長さが最も長い最大枚葉紙に対応する最長長さに略等しく設定されている。後セグメント41Bを前セグメント41Aに深く噛み合うように回動させることによって、前セグメント41Aの外周面に後セグメント41Bの後側の外周面を加えた周方向長さが、印刷機で扱われる枚葉紙Pのうちの搬送方向長さが最も短い最小枚葉紙に対応する最短長さに略等しく設定されている。
この場合、前セグメント41Aの周方向長さが、最小枚葉紙の長さに略等しく設定されている。一方の伸縮部5において、前セグメント41Aは、その回動方向先端に爪台と爪とからなるくわえクランプ41Gを備え、処理胴22からの枚葉紙Pの先端P1をくわえて保持することができるように構成されている。一方の伸縮部5において、前セグメント41Aと対をなす後セグメント41Bは、その回動方向後端に前セグメント41Aのくわえクランプ41Gにより先端P1がくわえられている枚葉紙Pの後端P2を吸着するサッカ41Sを備えている。
反転渡し胴41の外周面部には、反転胴42が備えたグリッパ42G(後に詳述する)を入り込むことを可能とした第一凹部7、第二凹部8を備えている。この第一凹部7、第二凹部8について述べる。伸縮部5,6において、前述したように後セグメント41Bが前セグメント41Aに対して最大角度となるよう回動した場合でも、反転渡し胴41の外周面部は一周に至らず、伸縮部5,6どうしの後セグメント41Bの回動方向後端と前セグメント41Aの前端との間には、外周面部が存在しない。
この場合では、特に、サッカ41Sを備えた後セグメント41Bの回動方向後端のすぐ後ろ部分、およびくわえクランプ41Gを備えた前セグメント41Aの回動方向前端のすぐ後ろ部分が第一凹部7、第二凹部8として特定される。これら第一凹部7、第二凹部8の周方向長さは、後セグメント41Bを前セグメント41Aに対して移動させることで変更される。
給紙胴13、給紙側渡し胴14、印刷側渡し胴21、処理胴22、反転胴42は、図示していないギヤにより機械的に連動連結され、1つの第一駆動源としての本機モータにより同期運転するように構成されている。これら同期運転される胴のうち、給紙胴13、給紙側渡し胴14、印刷側渡し胴21、処理胴22から本機が構成されている。反転渡し胴41は、前述したように、反転胴42とで反転機構4を構成しており、本機とは別駆動される。すなわち反転渡し胴41は、本機モータとは異なる第二駆動源としてのサーボモータにより駆動される。このサーボモータは、反転渡し胴41の回転位置情報である回転角度を検出する反転機構側検出手段としてのエンコーダを備えている。
ここで、反転胴42について詳述する。前述したように、反転胴42は、反転渡し胴41からの枚葉紙Pを受け取って反転させるよう構成されている。反転胴42は、その回転軸心を反転渡し胴41の回転軸心と平行に配置するよう設けられている。反転胴42は、反転渡し胴41の回転方向と反対の方向(図1では反時計方向)に回転する。
図2に示すように、反転胴42は、胴軸体420と、胴本体421と、前記グリッパ42Gと、グリッパ42Gの稼働のための稼働手段10とを備える。胴軸体420は、反転胴42の軸心方向に離間して配置されたフレーム部材Fに、軸受を介して軸心回りに回転可能に支持されている。胴軸体420の端部に胴ギヤ422が取付けられており、胴ギヤ422は本機側駆動ギヤHとともに回転するように、本機側駆動ギヤHと組付けられている。この場合、本機側駆動ギヤHは、本機側小径ギヤH1と、この本機側小径ギヤH1に噛合する本機側大径ギヤH2とを備え、胴ギヤ422は、本機側大径ギヤH2に取付けられている。
本機側大径ギヤH2と本機側小径ギヤH1とのギヤ比は、2:1である。また、本機側駆動ギヤHは、本機側大径ギヤH2に噛合する、印刷側渡し胴21側の本機側最大径ギヤH3を備えている。本機側最大径ギヤH3と本機側大径ギヤH2とのギヤ比は、2:1である。すなわち、印刷側渡し胴21がその軸心回りに1回転すると、反転胴42はその軸心回りに2回転する。
胴本体421は円筒状に形成されて、胴軸体420の間に配置されており、胴軸体420とともに回転するよう構成されている。そして、本機側大径ギヤH2が1回転すると、本機側小径ギヤH1は2回転するから、胴本体421が1回転すると、本機側小径ギヤH1は2回転する。この胴本体421は、給紙胴13と略同じ径に設定されている。反転渡し胴41は反転胴42の略2倍の径に設定され、胴本体421は、給紙胴13と略同じ径に設定されている。このため、反転胴42(胴本体421)は、反転渡し胴41が1回転する間に2回転するよう構成されている。
胴本体421の周方向1箇所に凹部42Rが形成されており、グリッパ42Gは、凹部42Rに、爪台と称される取付部材(符合省略)を介して設けられている。グリッパ42Gは、枚葉紙Pの後端P2をグリップする一対の摘爪(くわえ爪に相当する)50,51を備える。摘爪50,51は、反転胴42の軸心と平行な1本の摘爪軸体52に取付けられている。摘爪軸体52は、胴本体421の長手方向に亘る長さを有し、胴本体421に支持されている。摘爪軸体52は、凹部42Rに対して、胴本体421の径方向外方に外れた位置に配置されている。
摘爪軸体52は、軸部520と、軸部520を外側に遊嵌する管体521とを備えて、胴本体421の長手方向に亘る長さを有する。一対の摘爪50,51のうちの一方は、軸部520に固定され、他方は管体521の外周部に固定されている。管体521が軸部520に遊嵌していることで、軸部520と管体521とは周方向に相対回動可能に構成され、軸部520と管体521とが相対回動することで、一対の摘爪50,51が接近離間する。このようなグリッパ42Gは、摘爪軸体52に、間欠的に複数個設けられている。そして、軸部520と管体521とを周方向に相対回動可能とする、図示しないカム機構が設けられ、一対の摘爪50,51は、枚葉紙Pの後端P2をグリップする際には最も接近するよう制御される。
稼働手段10は、枚葉紙Pに対する片面印刷時と両面印刷時のうち、両面印刷時にのみグリッパ42Gを稼働させるよう構成されている。すなわち稼働手段10は、両面印刷における反転渡し胴41から反転胴42への枚葉紙Pの受け渡しの際に、摘爪軸体52回りに回動させて、グリッパ42Gが第一凹部7に入り込むよう稼働させ、枚葉紙Pの受け渡しの際以外には、グリッパ42Gを摘爪軸体52回りに回動させて、グリッパ42Gが第一凹部7、第二凹部8に入り込まないよう稼働させる。
稼働手段10は、グリッパ42Gを摘爪軸体52回りに往復回動させ得る往復回動機構100と、本機側駆動ギヤHの駆動をグリッパ42G側の駆動とするよう繋断するクラッチ機構110と、クラッチ機構110と往復回動機構100とを連結する連結機構120とを備える。
往復回動機構100は、胴軸体420ごとに(胴本体421の両側に)設けられている。すなわち往復回動機構100は、胴本体421の軸心方向両外側に配置されている。往復回動機構100は、図2ないし図4に示すように、環状のカム部材111と、カム部材111の外周カム面112に案内されるカムフォロア113を有する環状の被案内部材114と、被案内部材114に取付けられたラック状の帯状ギヤ115と、爪用ギヤ116とを備える。
カム部材111は、カムギヤ117と、カムギヤ117に一体的に組付けられた環状のカム本体118とを同心に組付けた組品とされている。カム部材111は、胴軸体420に軸受を介して、カム本体118を軸心方向内側に配して回転可能に組付けられている。カムギヤ117と本機側大径ギヤH2とのギヤ比は1:1に設定されている。カム本体118は一定厚みを有した板状に形成され、その外周面が外周カム面112とされている。外周カム面112は軸心方向に平行な面であり、連続した曲面の組合わせにより形成されている。
外周カム面112は、胴軸体420の軸心を中心として、最も径方向外側への突出量が大きい最大突出部112aと、最も径方向外側への突出量が小さい最小突出部112bと、最大突出部112aと最小突出部112bとの間の突出量とされた中間突出部112cとを連続的に備える。外周カム面112が突出量の異なる面を備えることで、グリッパ42Gが反転渡し胴41の第一凹部7に入り込むタイミングを特定する構成となっている。
被案内部材114は、胴軸体420ごとに、カム部材111に対して軸心方向内側に配置されている。被案内部材114は、楕円状で一定の厚みを有する板状の被案内部材本体114Aと、被案内部材本体114Aに取付けられた前記カムフォロア113とを備える。被案内部材本体114Aの中心部に、胴軸体420が挿通される案内穴114Bが形成されている。案内穴114Bは楕円状に形成されており、短径が胴軸体420の径に略一致し、長径が胴軸体420の径の2倍よりも小さく設定されており、案内穴114Bの壁面の長径方向途中部分に、短径方向に膨出する膨出部114bが形成されている。被案内部材本体114Aは、胴軸体420に嵌合した状態で、胴軸体420の外周面に案内されて案内穴114Bの長径方向一端側から長径方向他端側まで移動可能とされている。
カムフォロア113は、軸心回りに回転可能なローラーであり、被案内部材本体114Aの周方向途中部分に、軸心方向に沿う取付部材を介して回転可能に取付けられている。カムフォロア113の外周面がカム本体118の外周面に当接して、カムフォロア113は軸心回りに転動する。
帯状ギヤ115は、被案内部材114における被案内部材本体114Aに、カムフォロア113から周方向に離間した位置に配置されている。帯状ギヤ115は、小さな曲率を有して湾曲して形成され、径方向外側部に、湾曲方向に沿って歯部115aが形成されている。帯状ギヤ115の曲率は、被案内部材本体114Aの長径方向に亘る曲率と略等しく設定されている。帯状ギヤ115は、その外周部に形成された歯部115aを、被案内部材本体114Aに対してその径方向外側に突出した位置とするよう、また、歯部115aを被案内部材本体114Aの外周面のうち長径方向に沿うようにして、被案内部材本体114Aに形成された取付凹部に固定されている。
爪用ギヤ116は、摘爪軸体52(管体521)の途中部分において、帯状ギヤ115に対応する位置に外嵌されている。すなわち、爪用ギヤ116の歯部116aと帯状ギヤ115の歯部115aとが噛合されている。
クラッチ機構110は、クラッチ体90と、クラッチ体90を軸心方向に沿って往復案内移動可能なクラッチ軸91と、クラッチ体90に取付けられた切替用軸体92と、切替用軸体92をクラッチ軸91の軸心に沿って往復動させる切替駆動部93とを備える。
クラッチ軸91は胴軸体420に比べて顕著に小径であり、胴軸体420に対して離間して胴軸体420に平行に配置されている。クラッチ軸91の両側端部は、前記フレーム部材Fに軸受を介して回転可能支持されている。クラッチ軸91の一方の端部側に、クラッチ体90に対して回転駆動力を伝達する第一伝達ギヤ94が軸受を介して回転可能に外嵌されている。また、クラッチ軸91において、第一伝達ギヤ94に対して軸心方向外側の端部に、本機側駆動ギヤHのうちの本機側小径ギヤH1が、軸受を介して回転可能外嵌されている。
クラッチ体90は、第一伝達ギヤ94および本機側小径ギヤH1の間で、クラッチ軸91に滑り軸により外嵌されている。クラッチ体90は円板状に形成されており、クラッチ軸91と一体的に回転するようキーとキー溝が用いられ、且つクラッチ軸91の軸心方向に沿って、第一伝達ギヤ94および本機側小径ギヤH1の間を移動可能とされている。
図5(a)(b)(c)に示すように、クラッチ体90の一方面には、伝達側突出部90Aが突出して形成され、クラッチ体90の他方面には、駆動側突出部90Bが突出して形成されている。伝達側突出部90Aおよび駆動側突出部90Bはともに、クラッチ体90と同径の半環状に形成されている。伝達側突出部90Aおよび駆動側突出部90Bの周方向端部面は、クラッチ体90の一方面から軸心方向に向けて立上げられる駆動力伝達面とされている。
伝達側突出部90Aは、実質的に第一伝達ギヤ94から駆動力を伝達される部分であり、駆動側突出部90Bは、実質的に本機側小径ギヤH1から駆動力が伝達される部分である。このため、第一伝達ギヤ94および本機側小径ギヤH1には、クラッチ体90の駆動力伝達面に周方向で対向して当接する当接面が形成されている。なお、この第一伝達ギヤ94は、胴軸体420の端部に外嵌固定された胴ギヤ422に噛合されている。第一伝達ギヤ94と胴ギヤ422とのギヤ比は1:1に設定されている。
切替駆動部93は、切替用軸体92をクラッチ軸91の軸心に沿って往復動させるシリンダ装置であり、該シリンダ装置を介して複数本の切替用軸体92の一端がクラッチ体90に連結されている。切替駆動部93の駆動により、クラッチ体90が、第一伝達ギヤ94に係止する第一伝達位置と、本機側小径ギヤH1に係止する第二伝達位置とに切替えられる。
連結機構120は、第二伝達ギヤ95と、第三伝達ギヤ96と、爪用ギヤ116とを備える。第二伝達ギヤ95は、第一伝達ギヤ94に一方側のフレーム部材Fを介して切替用軸体92の途中部分に外嵌固定されている。第三伝達ギヤ96は、第二伝達ギヤ95とは切替用軸体92の軸心方向反対側にあって、一方と他方のフレーム部材F間において切替用軸体92の途中部分に外嵌固定されている。第二伝達ギヤ95と第三伝達ギヤ96の、切替用軸体92の途中部分における配置位置は、往復回動機構100の位置に対応している。すなわち、第二伝達ギヤ95、第三伝達ギヤ96の歯部は、各往復回動機構100のカムギヤ117に噛合されている。
第二伝達ギヤ95と第三伝達ギヤ96のギヤ比は1:1である。第二伝達ギヤ95とカムギヤ117のギヤ比は、1:2である。したがって、第三伝達ギヤ96とカムギヤ117のギヤ比は、1:2である。また、クラッチ体90が第二伝達位置にある場合、胴本体421およびカム部材111は、ともに胴本体421の軸心回りに同位相で、1回転するよう構成されている。
上記構成の印刷機では、カムフォロア113がカム本体118の最小突出部112bと最大突出部112aとの間を転動しつつ移動することで、グリッパ42Gが、摘爪軸体52回りに往復回動するよう、カム本体118の外周カム面112が設定されている。また、一対の摘爪50,51は、枚葉紙Pの後端P2をグリップする直前には、最大限に離間するよう摘爪軸体52の軸心回りに相対的に回動して開かれるよう軸部520と管体521とが制御される。
上記構成を備えた印刷機は、その駆動を制御装置によって制御される。はじめに、枚葉紙Pに片面印刷を行う場合についての、印刷機の動作を説明する。片面印刷では、給紙部1から印刷部2に向けて給紙された枚葉紙Pは、印刷部2において印刷側渡し胴21から、続いて処理胴22に渡されて、処理胴22において枚葉紙Pの一方表面に印刷が施される。片面印刷済の枚葉紙Pは、搬送部31の駆動により、印刷後貯留部へ搬送されて貯留される。片面印刷の場合では、反転渡し胴41および反転胴42を備えた反転機構は用いられない。
ところで片面印刷の際には、クラッチ機構110では、切替駆動部93の駆動により切替用軸体92、および切替用軸体92に連結されているクラッチ体90は、クラッチ軸91の軸心方向一方側に移動して、本機側小径ギヤH1に係止した第二伝達位置にある。そして第二伝達位置では、クラッチ体90は本機側小径ギヤH1と一体化され、胴本体421およびカム部材111は、ともに胴本体421の軸心回りに1回転する。
片面印刷の場合、胴ギヤ422は本機側駆動ギヤHとともに回転することで、胴本体421がその軸心回りに回転し、胴本体421に支持されているグリッパ42Gが胴本体421とともにその軸心回りに回転する。すなわち、図6に示すように、摘爪50,51は互いに最も接近して閉じた閉姿勢となっており、しかも摘爪50,51は、胴本体421の凹部42Rに最大限入り込んだ最傾倒姿勢にあって、摘爪50,51が印刷側渡し胴21に形成された凹部21Rに入り込まない。また、最傾倒姿勢では、爪用ギヤ116は、帯状ギヤ115の長手方向一端側に位置している。このように、片面印刷の場合に、摘爪50,51は、胴本体421の凹部42Rに最大限入り込んだ最傾倒姿勢にあって、摘爪50,51が印刷側渡し胴21に形成された凹部21Rに入り込まないことで、印刷側渡し胴21にある枚葉紙Pを破らない。
グリッパ42Gが稼働しない状態(閉姿勢且つ最傾倒姿勢)では、カムフォロア113はカム本体118の外周カム面112のうちの、最小突出部112b上にある。枚葉紙Pに片面印刷が施される間は、カムフォロア113とカム本体118との上記関係が維持される。
次に、枚葉紙Pに両面印刷を行う場合の、印刷機の動作を説明する。まず、両面印刷の場合における印刷機の動作の概要を説明する。両面印刷の場合では、処理胴22において枚葉紙Pの一方表面に印刷が施されることは、片面印刷の場合と同様である。しかしながら、両面印刷の場合では、処理胴22において一方表面に印刷が施された枚葉紙Pは、そのまま排紙部3へは搬送されず、下流側の反転機構へ搬送される。
処理胴22に載っている枚葉紙Pは、その先端P1を、反転渡し胴41において、前セグメント41Aが備えたくわえクランプ41Gに保持される。そして、本機モータの駆動による処理胴22の回転、およびサーボモータの駆動による反転渡し胴41の回転により、枚葉紙Pが次第に反転渡し胴41に渡され、後セグメント41Bが備えたサッカ41Sにより枚葉紙Pの後端P2が反転渡し胴41の外周面部に吸着されて、枚葉紙Pが処理胴22から反転渡し胴41に完全に渡される。
反転渡し胴41に載った枚葉紙Pは、続いて反転胴42に設けられたグリッパ42Gにより後端P2をグリップされ、サーボモータの駆動による反転渡し胴41の回転、および反転胴42の回転により、枚葉紙Pはその一方表面と他方表面とが反転させられるようにして、反転胴42へ受け渡される。続いて、反転胴42に渡された枚葉紙Pは、印刷側渡し胴21に渡される。
一方表面と他方表面とが反転させられて反転胴42に渡された枚葉紙Pは、反転した状態で印刷側渡し胴21へ戻された後、再び処理胴22へ渡されて、枚葉紙Pの他方表面に印刷が施され、他方表面に印刷が施された枚葉紙Pは、印刷済用紙として、搬送部31から印刷後貯留部へ搬送される。
以上が、両面印刷の場合における印刷機の動作の概要である。本実施形態では、反転渡し胴41は扱われる枚葉紙Pの搬送方向長さに対応するよう反転渡し胴41の外周面部の周方向長さ、特に、くわえクランプ41Gとサッカ41Sとの間である、反転渡し胴41の外周面部の周方向長さを変更可能としている。すなわち、前述のように、反転渡し胴41の外周面部の周方向長さは、この印刷機で扱われる搬送方向長さが最短の枚葉紙Pに対応する最短距離から、搬送方向長さが最長の枚葉紙Pに対応する最長距離の間で変更が可能である。
本実施形態では、両面印刷を行う際には、予め扱われる枚葉紙Pの搬送方向長さに対応するよう反転渡し胴41の外周面部の周方向長さを調整しておく。すなわち、前セグメント41Aに対し、後セグメント41Bを反転渡し胴41の回転中心を中心に回動させることで、反転渡し胴41の外周面部の周方向長さが調整される。
両面印刷時の反転胴42の動きについて、グリッパ42Gの稼働を主に説明する。両面印刷に際しては、本機側駆動ギヤHの駆動が、第一伝達ギヤ94、第二伝達ギヤ95、第三伝達ギヤ96を介してカムギヤ117に伝達され、カム本体118が軸心回りに回転を継続させられる。また、カム本体118が軸心回りに回転を継続することで、カムフォロア113がカム部材111の外周カム面112を転動し、カムフォロア113がカム部材111の外周カム面112を転動することで、被案内部材114の被案内部材本体114Aが、その案内穴114Bを胴軸体420に案内されて、胴軸体420の中心軸回りに揺動する。被案内部材本体114Aが胴軸体420の中心軸回りに揺動すれば、被案内部材本体114Aに取付けられている帯状ギヤ115が被案内部材本体114Aに伴って揺動し、帯状ギヤ115が揺動することで、帯状ギヤ115に噛合している爪用ギヤ116が回動する。爪用ギヤ116が回動することで、グリッパ42Gが摘爪軸体52回りに回動する。また、摘爪50,51の摘爪軸体52回りの回動(開閉)については、軸部520と管体521とが別々に制御される。
グリッパ42Gは、両面印刷の際には、反転渡し胴41に載った枚葉紙Pの後端P2をグリップして反転胴42へ受け渡し、続いて印刷側渡し胴21へ戻すための構成部材である。いっぽうで、反転胴42は、反転渡し胴41の1回転中に2回転する。換言すれば、稼働手段10は、反転胴42が2回転する間に1回だけグリッパ42Gを稼働させる。すなわちグリッパ42Gは、反転胴42の2回転中の1回転のうちには、印刷側渡し胴21に形成された2つの凹部21Rには入り込まない。このため、枚葉紙Pがグリッパ42Gによって破られない。
反転胴42の1回転が終了すると、稼働手段10がグリッパ42Gを稼働させ始め、グリッパ42Gの摘爪50,51は、稼働手段10により、くわえクランプ41Gの前側において第二凹部8に一旦入り込む(図8参照)。しかしながら、グリッパ42Gの摘爪50,51はくわえクランプ41Gには干渉せず、したがって、この場合も、グリッパ42Gの摘爪50,51が枚葉紙Pの先端P1とも干渉しないため、枚葉紙Pの先端P1が破られない。
この状態では、カムフォロア113が外周カム面112に案内されて、爪用ギヤ116が帯状ギヤ115の長手方向途中位置にある。このため、グリッパ42Gは、最傾倒姿勢に対し、反転胴42の径方向に回動した姿勢にある。また、カムフォロア113は外周カム面112のうちの最小突出部112b上にある。
続いて反転渡し胴41、反転胴42は、図9および図10に示すように回転を継続し、図11に示したグリップ前の状態では、カムフォロア113は外周カム面112の最小突出部112bに当接して、摘爪50,51は互いに最も接近して閉じた閉姿勢となっており、しかも摘爪50,51は、胴本体421の凹部42Rに最大限入り込んだ最傾倒姿勢にある。
さらに反転渡し胴41、反転胴42が回転して、グリッパ42Gの摘爪50,51が第一凹部7において、枚葉紙Pの後端P2のさらに後側に入り込む(図12参照)。この際、グリッパ42Gの摘爪50,51は開かれた状態となる。つまり、グリッパ42Gが枚葉紙Pの後端P2をグリップする前には、摘爪50,51は摘爪軸体52に対して反転胴42の回転方向側にあって且つ相対的に離間した状態にある。そして、摘爪50,51の間に枚葉紙Pの後端P2が入り込んだら摘爪50,51は相対的に接近して、摘爪50,51が枚葉紙Pの後端P2をグリップする。
このように、摘爪50,51が枚葉紙Pの後端P2をグリップする際には、グリッパ42Gの摘爪50,51が第一凹部7において、枚葉紙Pの後端P2のさらに後側に入り込み、摘爪50,51が開いた状態から閉じて、摘爪50,51が枚葉紙Pの後端P2をグリップするから、この場合も枚葉紙Pを損傷させることがない。
さらに反転渡し胴41、反転胴42が回転し、反転胴42においてはグリッパ42Gが摘爪軸体52回りに、最傾倒姿勢から反転する方向に更に回動して、枚葉紙Pを表裏反転させて印刷側渡し胴21に受け渡すよう稼働される(図14、図14参照)。
反転胴42は、印刷側渡し胴21が1回転する間に2回転する構成であり、グリッパ42Gは、反転胴42が2回転する間に、1枚の枚葉紙Pの後端P2をグリップする。グリッパ42Gのこのような動作は、図7ないし図13に示した、枚葉紙Pが最小枚葉紙であっても、図15ないし図22に示した最長枚葉紙であっても同様である。すなわち、各グリッパ42Gにおいて、枚葉紙Pの長さにかかわらず、摘爪50,51は同時に同じ動作(稼働)をするよう構成され、反転渡し胴41に上流側から搬送されて載せられた枚葉紙Pの一方表面と他方表面とを反転させるべく、枚葉紙Pの後端P2を摘爪50,51でグリップした状態で、胴本体421とともにその軸心回りに回転する。
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲内で多くの変更が可能である。上記実施形態では、稼働手段10は、往復回動機構100、クラッチ機構110、および連結機構120から構成して、両面印刷の際に、反転胴から印刷側渡し胴への枚葉紙の受け渡しの際以外には、グリッパを摘爪軸体回りに回動させて印刷側渡し胴の凹部に入り込まないよう稼働させた。しかしながら、グリッパは、例えば単独のモータを用いて摘爪軸体回りに回動させることも可能である。