JP2018125121A - 固体電解質及びこれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶欠陥によるリチウムイオン伝導性の低下を防止した、ラムスデライト型結晶構造を有する固体電解質を得る。【解決手段】ラムスデライト型の結晶構造を有する固体電解質であって、化学式LiyAzSn4−xO8(式中、Aは二価のカチオンである。)で表され、錫サイトを占有するLiの数が、リチウムイオン伝導路を占有するAの数より多いものを用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解質及びリチウムイオン二次電池に関する。
全固体型リチウムイオン二次電池(全固体電池)は、不燃性ないし難燃性の固体電解質を採用している点で安全性が高い。さらに、全固体型リチウムイオン二次電池は、温度管理を行う保安機構を簡略化でき、低コスト化に繋がる他、バイポーラ方式による高密度化も可能な利点がある。
全固体型リチウムイオン二次電池は、一般に、高い内部抵抗を有する。内部抵抗は、固体電解質と電極活物質との間、固体電解質の粒子の間、固体電解質のバルク抵抗等である。これらを低減し、より充放電特性を高めた電池の開発が期待されている。
固体電解質として用いられる物質は、主に、硫化物固体電解質と酸化物固体電解質とに分けられる。硫化物固体電解質は、高いリチウムイオン伝導性を示す傾向があるが、大気中の水分と反応するため、安定性が低い。一方、酸化物固体電解質は、安定性が高いが、リチウムイオン伝導性は低い傾向がある。
従来のリチウムイオン伝導性を有する酸化物系材料としては、ラムスデライト(Ramsdellite)型の結晶構造を有するリチウム錫複合酸化物が知られている。例えば、特許文献1には、Li2+2xMg1−xSn(0≦x≦1)で表されるラムスデライト型構造を有するリチウム電池用負極活物質が記載されている。
また、非特許文献1には、ラムスデライト型のLi2+x(LiMg1−xSn)O(0≦x≦0.5)や、LiMg1−xFe2xSn3−x(0≦x≦1)が記載されている。
特開平10−270020号公報
J. Grins and A. R. West, J. Solid State Chem., 65, p.265-271 (1986)
特許文献1に記載されているラムスデライト型酸化物は、リチウム電池用負極活物質であり、固体電解質として製造されたものではない。また、非特許文献1に記載されているラムスデライト型リチウム錫複合酸化物は、固体電解質として製造されたものであるが、温度573Kにおけるリチウムイオン伝導性が、最大でも5×10−4(Ω−1・cm−1)と低く、十分な伝導性を有していない。
そこで、本発明は、結晶欠陥によるリチウムイオン伝導性の低下を防止した、ラムスデライト型結晶構造を有する固体電解質を得ることを目的とする。
本発明の固体電解質は、ラムスデライト型の結晶構造を有し、化学式LiSn4−x(式中、Aは二価のカチオンである。)で表され、錫サイトを占有するLiの数が、リチウムイオン伝導路を占有するAの数より多い。
本発明によれば、リチウムイオン伝導性が高いラムスデライト型結晶構造を有する固体電解質及びこれを用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物の結晶構造を示す模式図である。 ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物において、二価イオンであるMg2+が骨格サイトを占有している状態を示す模式図である。 ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物において二価イオンであるMg2+がアンチサイト欠陥を形成した状態を示す模式図である。 ラムスデライト型のリチウム錫酸化物の生成温度とアンチサイト欠陥率との関係を示すグラフである。 ラムスデライト型のリチウム錫酸化物の粒子において、Mg2+がリチウム伝導路を塞いでいる状態を示す模式図である。 リチウムイオンの高速拡散が可能となる組成領域を示すグラフである。 リチウムイオン二次電池の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係る全固体電池の電極間構成の一例を示す模式断面図である。 本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電極間構成の一例を示す模式断面図である。 本発明の実施形態に係る全固体電池の電極構成の一例を示す模式断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る固体電解質、それを用いた全固体電池について説明する。なお、各図において共通する構成については、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
はじめに、本発明の実施形態に係る固体電解質について説明する。
本実施形態に係る固体電解質は、ラムスデライト型の結晶構造を有するリチウム複合酸化物である。ラムスデライト型のリチウム複合酸化物は、後記するとおり、結晶構造中にリチウムイオンの伝導パスとなるトンネル構造を有しており、リチウムイオン伝導性を示す。本実施形態に係る固体電解質は、特に、金属イオンとして錫イオンを含むリチウム錫複合酸化物(LiSn)に関連する。
図1は、ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物の結晶構造を模式的に示す図である。符号103で示された点線は、結晶格子を表している。結晶格子103は、a軸、b軸、c軸を有する。
図1に示すように、ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物では、6個の酸素イオンと結合した錫イオンが八面体101(SnO)を形成し、この八面体同士が稜共有することによって2列の鎖状ブロックを形成し、さらに、この鎖状ブロック同士が頂点共有することによって結晶骨格構造が形成される。これにより、b軸方向に沿って、一次元的なトンネル構造が形成される。この一次元トンネルには、リチウムイオン102を導入することができる。なお、図1においては、不特定個数のリチウムイオン102が一次元トンネルにおいて採り得る状態を模式的に示している。
一次元トンネル中のリチウムイオン102は、ホッピングによって伝導することができる。ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物は、これによってリチウムイオン伝導性を示す。特に、一般式Li4xSn4−xで表されるリチウム錫複合酸化物では、リチウムイオンの比較的高い伝導性を実現することが可能である。具体的には、層状構造を示すLiSnO等の他の結晶型と比較して、1000倍程度の導電率を示す。しかしながら、リチウムイオン二次電池で用いられる固体電解質の材料としては、未だ十分な導電率には至っていない。
このようにリチウムイオン伝導性が十分ではない理由は、一次元トンネルの占有率のためである。
一次元トンネルにリチウムがそれ以上存在することができない場合の占有率を1とし、また、一次元トンネルにリチウムが全く存在しない場合の占有率を0と定義する。
なお、一次元トンネルには、リチウムが配位する酸素の数によって、八面体サイトと四面体サイトの二種類のサイトが存在する。リチウムイオンの密度が高く、一次元トンネルにおけるリチウム占有率が0.5以上のように高密度である時は、リチウムイオンは互いから受けるクーロン斥力を緩和するために、一次元トンネルにおける八面体サイトを占有する。これは八面体サイト間の距離が長く、クーロン斥力を緩和できるためである。
しかし、一方で、八面体サイト間のホッピング距離が比較的長いため、八面体サイト間のリチウムのホッピングはそれほど容易には起こらない。組成式LiSnの固体電解質においては、一次元トンネルにおけるリチウム占有率が0.75程度となっている。このためリチウムイオンはほぼ八面体サイト占有となっており、リチウムイオンの伝導性が十分ではない。
一方、一次元トンネルの占有率が0.5より低い場合には、リチウムイオンは四面体サイトを占有する。この理由は、四面体サイト間の距離が短いにもかかわらず、リチウムイオンの密度が低いことから、隣接するサイトにリチウムイオンが不在である確率が高く、四面体占有が可能であるためである。四面体サイト間のホッピング距離は、八面体サイト間のホッピング距離より短いため、リチウムは比較的容易にホッピングできる。このように、一次元トンネルの占有率に着目し、占有率を0.5以下に抑えることによってリチウムイオンを四面体サイト占有させ、導電率を向上させている。
一次元トンネルにおけるリチウム占有率を0.5以下に抑える方法としては、リチウムイオンまたは錫イオンの異種元素による置換が考えられる。具体的には、ラムスデライト型の結晶構造を有し、一般式Li4x−2a−3b−c−2dSn4−x−c―dM(II)M(III)M(V)M(VI)[式中、M(II)は二価のカチオン、M(III)は三価のカチオン、M(V)は五価のカチオン、M(VI)は六価のカチオンであり、0≦x≦1.33を満たす。]で表され、前記一般式において、0<a+b+c+d、0≦a+b≦x、0≦c+d<0.9、且つ、3x−a−2b−c−2d≦2の関係を満たす固体電解質である。
ところが、本発明者は、本物質に対する検討を進めた結果、ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物であっても、導電率が向上しない場合が存在することを発見した。そこで、導電率が向上しなかった理由を調べた。その結果、更に導電率を向上させることができる方法を着想した。それらについて以下で説明する。
ここでは、ラムスデライト型の固体電解質LiMgSnについて考える。この固体電解質は、LiSnにおけるリチウムイオンの一部をマグネシウムで置換することにより形成される。
図2は、その結晶構造を示したものである。
本図に示すように、上記の着想においては、錫によるラムスデライト型の結晶骨格(八面体101)が形成された状態で、一次元トンネルをリチウムイオン102が占有している。マグネシウムイオン104は、錫サイトの一部を占有しており、結晶骨格の形成に寄与することになる。これにより、一次元トンネルのリチウムイオン占有率は0.5となるため、リチウムイオン102が四面体サイトを占有することで、高いリチウムイオン伝導性が期待できる。
しかしながら、ラムスデライト型の固体電解質LiMgSnを合成し、電気化学インピーダンス法によって拡散活性化エネルギを測定したところ、0.6eVが得られた。十分大きい導電率を得るためには、0.3eV以下の拡散活性化エネルギが必要であるため、この測定値はLiMgSnの導電率が十分ではないことを示している。
この原因を調べるため、本発明者は、第一原理密度汎関数法を用いて結晶構造シミュレーションを実施した。もし結晶構造が期待どおりに生成されていれば、図2に示すように、マグネシウムイオン104は結晶骨格サイトを占有する。
図3は、シミュレーションの結果を示したものである。
シミュレーションの結果は、上記の着想とは異なるものであった。
本発明者は、図3のように、結晶骨格を構成するマグネシウムイオン104が存在するとともに、マグネシウムイオン105が一次元トンネル(リチウム伝導路)内へ侵入していることを発見した。さらに、リチウムイオン106が骨格サイトへ侵入していることを見出した。このようなイオン配置は、マグネシウムイオン105とリチウムイオン106の位置交換が起こっていることを示している。このような異種イオン間の位置交換は、一般に、アンチサイト欠陥と呼ばれる種類の結晶欠陥である。
本発明者は、このようなアンチサイト欠陥の形成密度を第一原理シミュレーションにより評価した。
図4は、その結果を示したものである。横軸は固体電解質LiMgSnを合成する際の温度(合成温度)であり、縦軸はその温度で合成した固体電解質のアンチサイト欠陥の密度(欠陥率)である。固体電解質中に存在するマグネシウムイオンの数をN、一次元トンネル中に位置するマグネシウムイオンの数をnとすると、アンチサイト欠陥の密度は、Nのうちに占めるnの割合のことであって、n/Nと定義できる。百分率で表す場合は、n/N×100と定義する。
シミュレーションの結果によると、合成温度が700Kより低い場合、アンチサイト欠陥の密度は5%以下に留まるが、それより高い温度では欠陥密度が大きく上昇し、1500K付近では18%程度のアンチサイト欠陥が存在することが分かる。
以上から、合成温度が高くなると、アンチサイト欠陥密度が増加することが見出された。
アンチサイト欠陥がリチウムイオン伝導に及ぼす影響は大きい。この理由は、マグネシウムイオンは、一般に、リチウムイオンよりもホッピングしにくく、拡散係数が低いためである。
図5は、ラムスデライト型のリチウム錫酸化物の粒子において、Mg2+がリチウム伝導路を塞いでいる状態を模式的に示したものである。
図5に示すように、リチウム錫酸化物の粒子501には、マグネシウムイオン502が存在する一次元トンネル504(リチウム伝導路)と、マグネシウムイオンが存在しない一次元トンネル505(リチウム伝導路)と、があると考えられる。
一次元トンネル504中に位置するマグネシウムイオン502は、一次元トンネル504の太さを狭めることにより、リチウムイオン503のホッピングを阻害する。したがって、マグネシウムイオン502が侵入した一次元トンネル504においては、リチウムイオン503が一次元トンネルの端から端までを通り抜けることが困難となり、リチウムイオン伝導率が大きく低下する。一方、LiMgSnのような組成式であれば、マグネシウムイオンの数は、一次元トンネルの本数よりずっと多い。もし18%ものn/Nであった場合、一次元トンネルのほとんどが閉塞した一次元トンネル504になってしまうと予想される。このことは、固体電解質に多数ある一次元トンネルのうち、有効に利用できる一次元トンネル505の割合が低いことを意味する。
以上のように、本発明者は、ラムスデライト型の固体電解質では、アンチサイト欠陥によってリチウムイオン伝導率が大きく低下することを発見した。
そこで、本発明者は、もしアンチサイト欠陥が存在していたとしても、リチウムイオン伝導率が低下しないような結晶構造を検討した。それについて、以下で説明する。
まず、アンチサイト欠陥がリチウムイオン伝導率に与える影響について、図3を用いて説明する。
図3では、アンチサイト欠陥のため、マグネシウムイオン105が一次元トンネルに侵入している。一方、前記のマグネシウムイオン105が本来位置するべき錫サイトには、リチウムイオン106が存在している。このリチウムイオン106は可動性であり、隣接する一次元トンネルへ侵入することが可能である。リチウムイオン106が、隣接する一次元トンネルへ移動した後、リチウムイオン106があった場所には空孔が形成される。このサイトは、本来錫が位置すべきサイトであるため、この空孔を「錫空孔」と呼ぶ。一次元トンネルに存在するリチウムイオンは、この錫空孔へ移動することが可能である。したがって、一次元トンネルに存在するリチウムイオンは、この錫空孔を介して、一次元トンネル間を行き来できる。よって、たとえ一次元トンネルがマグネシウムイオン105により塞がれていたとしても、リチウムイオンはこの錫空孔を介してマグネシウムイオン105が作るバリアを迂回できるため、固体電解質の伝導度は向上する。ただし、この錫空孔は、リチウムイオン伝導のためには、径が小さく、また数が少ない。したがって、錫空孔の数が少ない場合、錫空孔に起因するリチウムイオン伝導度の増加率は小さいため、固体電解質のリチウムイオン伝導度は低い。
以上から、錫サイトのリチウムイオン106の割合を増やすと、錫空孔同士が結合した広い伝導路が形成され、その結果、固体電解質のリチウムイオン伝導度は大きく増加すると考えられる。よって、リチウムイオン伝導度を向上させるためには、錫サイトのリチウムイオン106の割合を増やすとよい。
錫サイトのリチウムイオン106の割合がどの程度存在するとよいかについて定量的に知るため、以下で組成式を検討する。イオン伝導体の組成式をLiSn4−xとする。Aは、アルカリ土類金属など、二価イオンとなる元素である。
まず、電気的中性の条件から、次の関係式(1)が成り立つ。
z=2x−y/2 …(1)
よって、Aの量は、2x−y/2となる。一次元トンネルサイトと錫サイトに分離する。アンチサイト欠陥が存在しなければ、AおよびSnは錫サイトに位置し、それぞれの量は2x−y/2および4−xとなる。錫サイトの残り−x+y/2をリチウムイオンが占めるため、一次元トンネル中におけるリチウムイオンの量はx+y/2となる。
一方、一次元トンネルサイトにおけるリチウムイオン空孔サイトの量は、4−x−y/2である。一次元トンネルサイトにおいて、リチウムイオンの隣接サイトが空孔となる場合に、リチウムイオンのホッピングが高速になると考えられるため、リチウムイオン空孔サイトの数がリチウムイオンの数より多い条件を表す式として、次の不等式(2)が得られる。
4−(x+y/2)>x+y/2 …(2)
上記の関係式(1)及び不等式(2)から、次の不等式(3)が得られる。
z<−3y/2+4 …(3)
この不等式(3)が、アンチサイト欠陥がない場合に高速でリチウムイオンが拡散できる条件である。
アンチサイト欠陥の形成率(欠陥率)をδとし、0≦δ≦1であるとする。すると、欠陥の量は、δzとなる。なお、一次元トンネル中に侵入したAの量も、δzである。錫サイトのリチウムイオンの量がδzより多ければ、アンチサイト数より多い迂回路が形成されると考えられる。この条件は、次の不等式(4)となる。
z<y/(4δ+2) …(4)
この式から、δ=0のときは、z<y/2であることがわかる。
図6は、リチウムイオンの高速拡散が可能となる組成領域を示すグラフである。横軸にはLiSn4−xのy、縦軸にはLiSn4−xのzをとっている。
本図において、組成領域は、上記不等式(3)の境界線を表すz=−3y/2+4と、上記不等式(4)の境界線を表すz=y/(4δ+2)と、直線z=0と、で囲まれた領域である。
本図においては、δが0.02、0.05及び0.1の場合について、破線又は点線で示している。
なお、本図には、後述の実施例及び比較例についてもプロットし、実施例が適切な組成領域にあることを示している。
以上から、アンチサイト欠陥が存在していたとしても、リチウムイオンの伝導率が低下しない結晶構造とは、一次元トンネル中におけるAの量より、錫サイトにおけるLiの量が多い結晶構造であると結論できる。
二価イオンAとしては、アルカリ土類金属であるBe、Mg、Ca、Sr、Baや、遷移金属Znが適切であり、これらの元素が2種類以上含まれていてもよい。このうち、好ましい元素は、Mgである。
また、本実施形態に係る固体電解質は、粒子同士が他の酸化物によって結着された成形体の形態としてもよい。他の酸化物としては、具体的には、固体電解質の粒子同士の焼結性を高める酸化物系焼結助材や、リチウムイオンの伝導性を有すると共に、前記固体電解質よりも低いガラス転移温度を有し、より低い温度で軟化流動して粒子同士を結着させるガラス系焼結助材を用いることができる。このような焼結助材で固体電解質の粒子を焼結ないし結着させると、固体電解質の粒子同士の間の抵抗が低減し、リチウムイオンの伝導性が高い成形体を得ることができる。
言い換えると、本実施形態に係る固体電解質は、その粒子同士が酸化物により結着された構成であり、その酸化物は、リチウムイオンの伝導性を有し、かつ、固体電解質よりも低いガラス転移温度を有する。
酸化物系焼結助材としては、例えば、Al、B、MgO等を用いることができる。また、ガラス系焼結助材としては、例えば、ホウ酸リチウム(LiBO)、一般式Li1−y1−y[式中、0<y<1を満たす。]で表されるホウ酸リチウム−炭酸リチウム固溶体、バナジン酸リチウム(LiVO)、一般式Li1+pAlTi2−p(POで表されるNASICON型結晶性酸化物、一般式Li1+pAlTi2−p(POで表されるNASICON型非晶質酸化物、一般式Li1+qGeTi(POで表されるNASICON型結晶性酸化物、一般式Li1+qGeTi(POで表されるNASICON型非晶質酸化物等を用いることができる。
ホウ酸リチウムやホウ酸リチウム−炭酸リチウム固溶体は、700℃程度の比較的低温で軟化流動し、固体電解質の粒子間に侵入してリチウムイオンの伝導性を向上させることができる点で有利である。また、バナジン酸リチウムは、水溶媒に対して可溶性であるため、固体電解質との混合後に低温で水溶媒を除去できる点で有利である。すなわち、これらの焼結助材によると、低温で固体電解質の粒子同士を結着させることができるため、ラムスデライト型の結晶構造の熱による損傷を避けることが可能になる。
本実施形態に係る固体電解質の製造方法は、ラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物に異種元素置換を施した前記の固体電解質を製造する方法として公知の方法を用いるとよい。これにより、一般式LiSn4−xで表され、Li及びSnと、任意に含まれる二価カチオン(A)によって組成されるラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物を製造できる。具体的な製造方法は、主に、混合工程と、仮焼工程と、成形工程と、焼成工程とを含む。
製造された固体電解質の性状は、従来知られている分析方法を用いて確認することができる。例えば、化学組成については、誘導結合プラズマ分光法(Inductively−Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry:ICP−AES)、光電子分光分析法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)、蛍光X線分析法(X−ray Fluorescence Spectrometry:XRF)等によって確認することが可能である。また、結晶構造については、X線解析(X−ray Diffractometry:XRD)、透過型電子顕微鏡−制限視野電子回折法(Transmission Electron Microscopy with Selected Area Electron Diffraction:TEM−SAED)等によって確認することが可能である。
次に、本実施形態に係る全固体電池について説明する。
本実施形態に係る全固体電池は、正極活物質を含んでなる正極層と、負極活物質を含んでなる負極層と、正極層と負極層との間に介在する固体電解質層と、を有している。この全固体電池は、異種元素置換が施されたラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物である固体電解質が、正極層、負極層及び固体電解質層のうちの少なくとも一以上の層に含まれていることを特徴とするものである。
図7は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例を示す断面図である。なお、リチウムイオン二次電池には、全固体電池が含まれる。
図7に示すように、リチウムイオン二次電池(全固体電池)は、正極層10と、固体電解質層11と、負極層12と、電池缶13と、正極集電タブ14と、負極集電タブ15と、内蓋16と、内圧開放弁17と、ガスケット18と、正温度係数抵抗素子19(PTC抵抗素子。PTCは、Positive Temperature Coefficientの略である。)と、電池蓋20と、軸心21と、を有している。正極層10と固体電解質層11と負極層12とは、軸心21に捲回されており、正極層10は、正極集電タブ14を介して内蓋16と、負極層12は、負極集電タブ15を介して電池缶13と、それぞれ電気的に接続されている。正極層10と固体電解質層11と負極層12とが収容された電池缶13の上部の開口は、重ねられた内蓋16、内圧開放弁17、正温度係数抵抗素子19及び電池蓋20と、ガスケット18とによって気密に封止されている。
電池缶13、正極集電タブ14、負極集電タブ15等は、耐食性に優れた金属が好ましい。具体的には、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、銅等とすることが好ましい。なお、図7に示すリチウムイオン二次電池(全固体電池)は、円筒形とされているが、これに代えて、扁平長円形、扁平楕円形、角形、ラミネート形等としてもよい。
図8Aは、本発明の実施形態に係る全固体電池の電極間構成の一例を模式的に示す断面図である。
図8Aに示すように、全固体電池は、電極間構成として、正極活物質10aを含む正極層10と、負極活物質12aを含む負極層12と、正極層10と負極層12との間に配置された固体電解質層11と、を有している。固体電解質層11は、固体電解質1の粒子の集合によって構成されている。また、正極層10は、正極活物質10aの粒子と共に、固体電解質1の粒子と導電材110の粒子とを含むように構成されている。また、負極層12は、負極活物質12aの粒子と共に、固体電解質1の粒子と導電材110の粒子とを含むように構成されている。
このように、本実施形態に係る全固体電池では、異種元素置換が施されたラムスデライト型のリチウム錫複合酸化物である固体電解質1を正極層10や負極層12に含有させ、固体電解質層11と正極層10との間、及び、固体電解質層11と負極層12との間を、固体電解質1を介してそれぞれバルク状に接合させることも可能である。このような電池構成とすることによって、電極層(10,12)や固体電解質層11の各層内のみならず、電極層(10,12)と固体電解質層11との間の界面抵抗も低減することができる。なお、この全固体電池では、図8Aに示すように、正極層10及び負極層12の間には必ずしもセパレータを設ける必要はない。
図9は、本発明の実施形態に係る全固体電池の電極構成の一例を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、全固体電池の各電極層(10,12)は、集電体22に接するように設けられている。このような構造を形成する方法としては、固体電解質層11の両面に正極層10と負極層12とをそれぞれ積層し、正極層10及び負極層12のそれぞれの外側に集電体22を圧着させる方法や、集電体22の表面上に正極層10、固体電解質層11及び負極層12を、この順に若しくはこれと反対順に積層していく方法等を用いることができる。
また、グリーンシート法を用いることもできる。グリーンシート法は、活物質(10a,10b)や導電材110や固体電解質1の粒子をバインダ樹脂と混合してペースト状の電極合材とし、この電極合材を基板上に塗布して乾燥させた後、得られたシート状の電極合材を焼成して粒子の焼結とバインダ樹脂の除去とを行う製造方法である。このようなグリーンシート法によれば、シート状の電極合材を複数層積層した上で焼成して電極間構成を形成することも可能になる。
全固体電池に備えられる正極活物質10aとしては、従来知られているリチウムイオンの吸蔵及び放出を行うことが可能な一般的な正極活物質を用いることができる。このような正極活物質の具体例としては、例えば、LiMO(Mは、Ni、Co、Mn等の元素である。)や、LiMOのMをFe、Ti、Zr、Al、Mg、Cr、V等で置換した化合物や、LiMのように表されるスピネル型正極活物質や、LiFePO等のオリビン型正極活物質や、LiMnO−LiMO等の層状固溶体系正極活物質や、LiMSiO等のケイ酸塩系正極活物質や、LiV(PO、LiV−V等のバナジウム系正極活物質等が挙げられる。
また、全固体電池に備えられる負極活物質12aとしては、従来知られているリチウムイオンの吸蔵及び放出を行うことが可能な一般的な負極活物質を用いることができる。このような負極活物質の具体例としては、例えば、黒鉛等の炭素材料や、TiSn、TiSi等の合金材料や、LiCoN等の窒化物や、LiTi12、LiTiO等の酸化物等が挙げられる。また、負極をリチウム金属として電池を構成することもできる。
また、全固体電池に備えられる導電材110としては、電池反応に対して化学的に安定であって、電子伝導性が高い材料であれば適宜の材料を用いることができる。このような導電材の具体例としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックや、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属粉や、Sb等がドープされたSnO、TiO、TiN等が挙げられる。
また、集電体22としては、各電極に応じて、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の箔、板状体等を用いることができる。中でも、アルミニウムを正極側集電体として、また、銅を負極側集電体として用いるのが好ましい。
以上のような構成を有する本実施形態に係る全固体電池は、各電極層(10,12)又は固体電解質層11に用いられている固体電解質1が高いリチウムイオン伝導性を有しているため、内部抵抗が低減された電池となる。そのため、リチウムイオン伝導性が高く、高レート特性に優れ、高出力化にも適した全固体電池を提供することができる。
図8Bは、電解液を含むリチウムイオン二次電池の電極間構成の一例を示す模式断面図である。
本図に示すリチウムイオン二次電池は、図8Aと同様の負極層12と、電解液を含む正極層810と、負極層12と正極層810との間に配置されたセパレータ811と、を有している。言い換えると、このリチウムイオン二次電池は、負極層12だけが全固体電池の構成を有している。なお、セパレータ811は、従来のものを適用することができる。
正極層810には、正極活物質810aのほか、バインダ820及び導電材821が含まれる。また、正極層810においては、これらの固体の構成要素の隙間に電解液がしみ込んでいる。セパレータ811にも、電解液がしみ込んでいる。
このような構成であっても、電池としての機能を有する。
なお、図8Bにおいては、負極層12だけが全固体電池の構成を有する場合を示しているが、正極層だけが全固体電池の構成を有し、かつ、負極層に電解液がしみ込んだ構成を有するものも、リチウムイオン二次電池としての機能を有する。
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
はじめに、異種元素置換が施されたリチウム錫複合酸化物として、実施例1〜実施例4に係る固体電解質及び比較例1〜比較例3に係る固体電解質を製造し、それらの結晶構造を確認した。
以下では、組成式LiSn4−xのx、y、zをパラメータとして、固体電解質を実験的に作製した。
(比較例1)
比較例1としては、LiMgSnで表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=1、y=2、z=1である。
比較例1の固体電解質は、次の手順に従って製造した。
はじめに、LiCOを1.22g、SnOを7.40g、MgCOを1.39g秤量し、流星型ボールミル(FRITSCH製、Planetary micro mill pulverisette 7)を用いて1時間粉砕することにより乾式混合した。その後、ふるいにより50μm以上の粗粒を除去した。
得られた混合粉末10gをアルミナ製坩堝に投入し、800℃で6時間にわたって仮焼成を行うことにより、仮焼成粉末を得た。得られた仮焼成粉末についてXRDによる結晶解析を行ったところ、主相がLiSnO、SnO及びMgOからなることが確認された。
続いて、得られた仮焼成粉末について、再度流星型ボールミルによる乾式混合を行い、メカニカルミリング処理を行った。次いで、得られた混合粉末0.5gを内径10mmのペレット型に投入し、荷重250MPaで一軸加圧成型して、固体電解質の仮成形体を得た。その後、内径16mmの石英ガラス管の底部にアルミナ発泡体を取り付け、この石英ガラス管に得られた仮成形体を計5枚積層して充填した。なお、積層した仮成形体の周囲には、焼成時における化学成分の揮発を防止するために、原料の混合粉末を充填した。
続いて、仮成形体を充填した石英ガラス管を、断熱材で覆って、マイクロ波照射装置に設置し、マイクロ波加熱による焼成を行った。マイクロ波加熱では、仮成形体の表面温度を1200℃まで昇温させ、5分間にわたって保持した後、マイクロ波照射を停止し、大気雰囲気下において急冷させた。そして、焼成された仮成形体5枚のうち、中央側の3枚を比較例1の固体電解質として回収した。
比較例1の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、ラムスデライト型の結晶構造が確認された。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、LiMgSnの組成が確認された。
実施例1としては、LiMg0.6Sn3.2で表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=0.8、y=2、z=0.6である。
実施例1の固体電解質の作製には、LiCOを3.283g、SnOを16.100g、MgCOを0.822g秤量し、混合して混合粉末を得た点を除いて、比較例1と同様にして製造した。
実施例1の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、ラムスデライト型の結晶構造が確認された。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、LiMg0.6Sn3.2の組成が確認された。
実施例2としては、Li2.4Mg0.2Sn3.3で表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=0.7、y=2.4、z=0.2である。
実施例2の固体電解質の作製には、LiCOを3.993g、SnOを16.610g、MgCOを0.281g秤量し、混合して混合粉末を得た点を除いて、比較例1と同様にして製造した。
実施例2の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、ラムスデライト型の結晶構造が確認された。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、Li2.4Mg0.2Sn3.3の組成が確認された。
実施例3としては、Li1.4Mg0.3Sn3.5で表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=0.5、y=1.4、z=0.3である。
実施例3の固体電解質の作製には、LiCOを0.86g、SnOを8.56g、MgCOを0.41g秤量し、混合して混合粉末を得た点を除いて、比較例1と同様にして製造した。
実施例3の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、ラムスデライト型の結晶構造が確認されたが、一部にLiSnO及びMgOの異相が認められた。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、Li1.4Mg0.3Sn3.5の組成が確認された。
(比較例2)
比較例2としては、Li2.4Mg0.8Snで表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=1、y=2.4、z=0.8である。
比較例2の固体電解質の作製には、LiCOを1.47g、SnOを7.40g、MgCOを1.11g秤量し、混合して混合粉末を得た点を除いて、比較例1と同様にして製造した。
比較例2の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、ラムスデライト型の結晶構造が確認された。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、Li2.4Mg0.8Snの組成が確認された。
(比較例3)
比較例3としては、LiMg1.2Sn2.9で表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=1.1、y=2、z=1.2である。
比較例3の固体電解質の作製には、LiCOを0.72g、SnOを7.22g、MgCOを1.80g秤量し、混合して混合粉末を得た点を除いて、比較例1と同様にして製造した。
比較例3の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、ラムスデライト型の結晶構造が確認された。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、LiMg1.2Sn2.9で表組成が確認された。
実施例4としては、LiMg0.5Zn0.1Sn3.2で表されるラムスデライト型の固体電解質を製造した。この電解質は、x=0.8、y=2、z=0.6である。
実施例4の固体電解質の作製には、LiCOを3.23g、SnOを16.05g、MgCOを0.68g、ZnOを0.18g秤量し、混合して混合粉末を得た点を除いて、比較例1と同様にして製造した。
実施例4の固体電解質を粉末化してXRDによる結晶解析を行ったところ、一部にSnOの残存が認められたが、ラムスデライト型の結晶構造が確認された。また、ICP−AESによる化学組成成分の定量を行ったところ、LiMg0.5Zn0.1Sn3.2の組成が確認された。
次に、製造した実施例1〜4の固体電解質及び比較例1〜3の固体電解質について、リチウムイオンの伝導性を評価した。
リチウムイオンの伝導性は、交流インピーダンス法によるイオン導電率の測定に基いて評価した。製造した各固体電解質の成形体には、両面にブロッキング電極として、Au製の電極を形成した。なお、Au製のブロッキング電極は、スパッタによって100nmの厚さで形成した。そして、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内において、ブロッキング電極に集電体を取り付け、さらに電流電圧端子を接続して、交流インピーダンスの測定を行った。
交流インピーダンスは、恒温槽中において、雰囲気温度を25℃〜150℃の範囲で変化させて測定した。そして、複素インピーダンスの測定によるプロットを作製し、得られた円弧の半径を抵抗値として、電極面積と成形体厚さとに基いて算出した。また、得られた抵抗値によって、アレニウスプロットを作製し、直線の傾きから、リチウムイオンの伝導に伴う拡散障壁(活性化エネルギE)を算出した。
表1は、実施例及び比較例について、室温におけるリチウムイオンの導電率(Ω−1・cm−1)及び活性化エネルギE(eV)をまとめて示したものである。
Figure 2018125121
表1に示されるように、z<−3y/2+4及びz<y/(4δ+2)(上記不等式(3)及び(4))を満たしている実施例1〜実施例4では、10−3〜10−4(Ω−1・cm−1)程度のリチウムイオンの導電率が実現されている。それに対して、比較例1〜3では、リチウムイオン導電率は10−6〜10−7(Ω−1・cm−1)程度であり、実施例においてはリチウムイオン導電率が向上していることがわかる。
比較例1では、条件式z<y/(4δ+2)を満たしていないため、アンチサイト欠陥に対するリチウムイオンの迂回路が確保されていないことから、導電率が劣ることが分かる。
比較例2では、条件式z<−3y/2+4を満たしていないため、リチウムイオン伝導路のリチウムイオン密度が高く、伝導の阻害が生じていることが分かる。比較例3では、z<y/(4δ+2)およびz<−3y/2+4の両方を満たしておらず、十分な伝導性が得られていないことが分かる。
次に、製造した実施例1の固体電解質及び比較例1の固体電解質を用いて全固体電池(実施例の全固体電池及び比較例の全固体電池)をそれぞれ製造し、内部抵抗を評価した。
実施例の全固体電池は、固体電解質として、平均粒子径が0.7μmに分級されている前記の実施例1の固体電解質の粉末、正極活物質として、平均粒子径が10μmのLiCoO、導電材として、アセチレンブラック、及び、焼結助材として、ホウ酸リチウム(LiBO)を用いて製造した。
はじめに、正極活物質を60質量部、固体電解質を25質量部、導電材を10質量部、焼結助材を5質量部の割合で、乳鉢を用いて混合した。次いで、得られた混合粉末70質量部に対して、結着材としてのエチルセルロース溶液を30質量部添加し、さらに混合することでスラリー状の正極合材を得た。
続いて、製造した実施例1の固体電解質の成形体(厚さ8mmの固体電解質層)の片面に、得られたスラリー状の正極合材を塗布し、400℃で30分間、次いで、700で2時間にわたって熱処理を施して正極層を形成した。なお、形成された正極層の厚さは15μmであった。
続いて、得られた正極層の固体電解質層とは反対側の面に、Au製の集電体をスパッタによって膜厚200nmとなるように形成した。そして、固体電解質層の正極層とは反対側の面に、固体高分子電解質フィルム(PEO骨格、LiTFSI塩)を挟んでLi箔を取り付けて加熱により溶着させて全固体電池とした。
また、比較例の全固体電池は、固体電解質層と正極層とを比較例1の固体電解質を用いて形成した点を除いて、前記の実施例の全固体電池と同様にして製造した。
製造した実施例の全固体電池及び比較例の全固体電池の内部抵抗は、ポテンショスタット「1480」(ソーラートロン社製)を用いて計測した。具体的には、上限電圧を4.3Vとして0.05Cで全固体電池を定電流充電した後、充電深度(State Of Charge:SOC)が50%になるまで放電し、1時間休止した後に、交流インピーダンスをそれぞれ計測した。
その結果、実施例の全固体電池では、比較例の全固体電池と比較して、内部抵抗が30%低減していることが確認された。このように本発明の固体電解質を固体電解質層や電極層に用いることによって、全固体電池の内部抵抗を改善させることが可能であり、レート特性の向上に有効であることが認められる。
本発明の固体電解質は、全固体型リチウムイオン二次電池や、リチウム−空気電池等の電池材料として利用することができる。また、リチウムイオンをキャリアとするセンサの構成材料として利用することができる。
1:固体電解質、10:正極層、11:固体電解質層、12:負極層、13:電池缶、14:正極集電タブ、15:負極集電タブ、16:内蓋、17:内圧開放弁、18:ガスケット、19:正温度係数抵抗素子、20:電池蓋、21:軸心、101:SnO八面体、102:リチウムイオン、103:結晶格子、104:結晶骨格サイトを占有するマグネシウムイオン、105:リチウム伝導路に侵入したマグネシウムイオン、106:結晶骨格サイトに侵入したリチウムイオン、501:リチウム錫酸化物の粒子、502:マグネシウムイオン、503:リチウムイオン、504:マグネシウムイオンにより閉塞された一次元トンネル、505:マグネシウムイオンのない一次元トンネル。

Claims (11)

  1. ラムスデライト型の結晶構造を有し、
    化学式LiSn4−x(式中、Aは二価のカチオンである。)で表され、
    錫サイトを占有するLiの数が、リチウムイオン伝導路を占有するAの数より多い、固体電解質。
  2. 前記Aは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される少なくとも一種以上の元素である、請求項1記載の固体電解質。
  3. 二つの不等式z<−3y/2+4及びz<y/(4δ+2)を満たす、請求項1記載の固体電解質。
    (式中、δは、アンチサイト欠陥の形成率である。)
  4. z<y/2である、請求項3記載の固体電解質。
  5. δ>0.1である、請求項3記載の固体電解質。
  6. 前記Aは、Mgである、請求項1記載の固体電解質。
  7. z<y/(4δ+2)であり、
    δ>0.1である、請求項6記載の固体電解質。
  8. 正極層と、負極層と、これらの間に配置された固体電解質層又はセパレータと、を含み、
    前記正極層及び前記負極層のうち少なくとも一方は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固体電解質を含む、リチウムイオン二次電池。
  9. 正極層と、負極層と、これらの間に配置された固体電解質層と、を含み、
    前記固体電解質層は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固体電解質を含む、リチウムイオン二次電池。
  10. 前記固体電解質は、その粒子同士が酸化物により結着された構成であり、
    前記酸化物は、リチウムイオンの伝導性を有し、かつ、前記固体電解質よりも低いガラス転移温度を有する、請求項8記載のリチウムイオン二次電池。
  11. 前記固体電解質は、その粒子同士が酸化物により結着された構成であり、
    前記酸化物は、リチウムイオンの伝導性を有し、かつ、前記固体電解質よりも低いガラス転移温度を有する、請求項9記載のリチウムイオン二次電池。
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