JP2018123559A - 不同沈下した建物の傾斜修復方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、従来にない非常に実用的な不同沈下した建物の傾斜修復方法を提供することを目的とする。【解決手段】建物Hが不同沈下により傾斜した場合の傾斜修復方法であって、ジャッキ装置3を下基礎部2に貫通させた状態で該ジャッキ装置3の下端部を地盤Eに設けると共に、ジャッキ装置3の上端部を上基礎部1に設け、続いて、ジャッキ装置3を伸長させて地盤Eに対し上基礎部1及び下基礎部2を上昇させ、続いて、下基礎部2と地盤Eとの間に形成された空隙Sに充填材Mを配する不同沈下した建物の傾斜修復方法である。【選択図】図1
Description
本発明は、不同沈下した建物の傾斜修復方法に関するものである。
従来から、地盤の一部が沈下することで(不同沈下)、傾斜した建物を修復する方法として、特開2002−295027に開示されるような傾斜修復方法(以下、従来法)が提案されている。
この従来法は、傾斜した基礎構造周辺の地盤を掘削し、基礎構造と地盤との間にジャッキ(鋼管杭)を入れて建物及び基礎構造を持上げ、ジャッキをそのままとして基礎構造の水平状態を保持する工法であり、建物を建て替えずに建物の傾斜を修復することができる。
しかしながら、従来法は、以下の問題点がある。
(1) 基礎構造周辺に大きな作業空間を掘削しなければならず、ジャッキで持ち上げた
後の作業空間の埋戻しも大変である(作業の難易度及び危険度が高く、それに伴う
コストアップの問題などがある。)。
後の作業空間の埋戻しも大変である(作業の難易度及び危険度が高く、それに伴う
コストアップの問題などがある。)。
(2) 施工期間が長い(作業の難易度だけでなく、気象条件に大きく左右される。)。
(3) その他、施工に伴う建物の養生、隣地への承諾、補償など、厄介な問題点が多々
ある。
ある。
本発明は、前述した問題点を解消するもので、従来にない非常に実用的な不同沈下した建物の傾斜修復方法を提供するものである。
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
下記1の基礎構造を有する前記建物Hが不同沈下により傾斜した場合の傾斜修復方法であって、ジャッキ装置3を前記下基礎部2に貫通させた状態で該ジャッキ装置3の下端部を前記地盤Eに設けると共に、前記ジャッキ装置3の上端部を前記上基礎部1に設け、続いて、前記ジャッキ装置3を伸長させて前記地盤Eに対し前記上基礎部1及び前記下基礎部2を上昇させ、続いて、前記下基礎部2と前記地盤Eとの間に形成された空隙Sに充填材Mを配することを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
記1
地盤Eに設けられる下基礎部2と、この下基礎部2の上に設けられ、更に、建物Hが構築される上基礎部1とから成る基礎構造。
記1
地盤Eに設けられる下基礎部2と、この下基礎部2の上に設けられ、更に、建物Hが構築される上基礎部1とから成る基礎構造。
また、請求項1記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記下基礎部2には前記ジャッキ装置3を貫通させる貫通孔部4が設けられていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
また、請求項1,2いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記ジャッキ装置3は、前記地盤Eに設けられる基部5と、この基部5の上部に設けられ上端部が前記上基礎部1に設けられる伸縮部6とで構成され、前記基部5は継ぎ足し連結可能な複数の連結体5’で構成されていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記上基礎部1と前記下基礎部2とは下記2の連結構造X1を介して連結されていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
記2
前記上基礎部1と前記下基礎部2同士間に架設状態に設けられ前記上基礎部1と前記下基礎部2との水平方向への相対移動を阻止する連結体7を有し、この連結体7は、前記上基礎部1と前記下基礎部2とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上のとき、分断するように構成されている連結構造。
記2
前記上基礎部1と前記下基礎部2同士間に架設状態に設けられ前記上基礎部1と前記下基礎部2との水平方向への相対移動を阻止する連結体7を有し、この連結体7は、前記上基礎部1と前記下基礎部2とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上のとき、分断するように構成されている連結構造。
また、請求項4記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記上基礎部1及び前記下基礎部2を上昇させる前に、前記連結体7に代えて該連結体7よりも分断し難い高強度の高強度連結体8を用いることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記下基礎部2には、水平状態とした前記下基礎部2と前記地盤Eとの間に形成された前記空隙Sに前記充填材Mを配する貫通孔9が設けられていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記上基礎部1は、所定高さの枠部1aの内方を互いに交叉連設する第一上桟1b’及び第二上桟1b”で適宜区画した構造であり、前記ジャッキ装置3の上端部は前記第一上桟1b’及び前記第二上桟1b”の交叉部1cに設けることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
また、請求項7記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記第一上桟1b’及び前記第二上桟1b”の交叉部1cに対向する位置にして前記下基礎部2には、前記ジャッキ装置3を貫通させる貫通孔部4が設けられていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法に係るものである。
本発明は上述のようにしたから、前述した従来法に比し、不同沈下した建物の傾斜修復が簡易且つ良好に行え、しかも、施工期間を大幅に短縮できるなど、従来にない実用的な不同沈下した建物の傾斜修復方法となる。
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
不同沈下した建物Hの傾斜を修復する際、ジャッキ装置3を下基礎部2に貫通させた状態で該ジャッキ装置3の下端部を地盤Eに設けると共に、ジャッキ装置3の上端部を上基礎部1に設け、続いて、ジャッキ装置3を伸長させて地盤Eに対し上基礎部1及び下基礎部2を上昇させ、続いて、下基礎部2と地盤Eとの間に形成された空隙Sに充填材Mを配する。
従って、前述した従来法のように基礎構造周辺を掘削する必要が無く、ひいては施工期間を大幅に短縮できることになる。
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例は、不同沈下により傾斜した建物Hの傾斜修復方法である。
本実施例の建物Hは、本工法を実現する下記の基礎構造を有している。
具体的には、この基礎構造は本出願人が特願2016−160959号で提案するもので、図1,2に図示したように地盤Eに設けられる下基礎部2と、この下基礎部2の上に設けられ、更に上部に建物Hが構築される上基礎部1とからなり、下基礎部2と上基礎部1とは接離可能に構成されている。
下基礎部2は、図2,4に図示したように適宜なコンクリート製の部材で形成されたものであり、底板2c上に所定高さの枠部2aを設け、この枠部2aの内方を互いに交叉連結する所定高さの桟(第一下桟2b’及び第二下桟2b”)を格子状に適宜区画した構造である。
この下基礎部2の平面視形状は、後述する上基礎部1と同様、建物Hの形状に合わせて適宜設計され、本実施例では平面視方形状に形成されている。
また、下基礎部2の桟(第一下桟2b’及び第二下桟2b”)は、上基礎部1の桟(第一上桟1b’及び第二上桟1b”)との間で人が通行不能とならず人通行空間が形成されるように構成されている。
具体的には、本実施例に係る基礎構造は、上下の桟(第一下桟2b’と第一上桟1b’,第二下桟2b”と第二上桟1b”)の一部同士が上下方向に合致しない位置に設けられており(図5参照)、この上下の桟(第一下桟2b’と第一上桟1b’,第二下桟2b”と第二上桟1b”)同士間に人通行空間が形成されている。
また、下基礎部2は、底板2cの所定位置に蓋4a付きの貫通孔部4(VP管)が設けられており、後述するジャッキ装置3を貫通状態とするように構成されている。尚、貫通孔部4は鋼管やボイド管でも良く、本実施例では貫通孔部4を4カ所に設けているが、基礎構造に合わせて適宜変更し得るものである。
また、この貫通孔部4は、下基礎部2の上に上基礎部1を設けた状態において、第一上桟1b’及び第二上桟1b”の交叉部1cに対向する下基礎部2の下方対向位置に設けられている。
従って、上基礎部1の強度のある部位(交叉部1c)にジャッキ装置3の上端部を当てて作業が行える。
また、下基礎部2は、底板2cの所定位置に蓋9a付きの貫通孔9(VP管)が設けられており、この貫通孔9は下基礎部2と地盤Eとの間隙Sに充填材M(モルタル)を充填する際に使用される。尚、貫通孔9は鋼管やボイド管でも良く、本実施例では貫通孔9を10カ所に設けているが、基礎構造に合わせて適宜変更し得るものである。
また、下基礎部2は、上面部所定位置(4隅部とその他の複数箇所(合計9カ所))に上基礎部1と重合当接する重合部2dが設けられ、この重合部2dには免震装置(連結構造X1及び移動制御構造X2)を設ける凹部2d’が設けられている。
上基礎部1は、図2,3に図示したように適宜なコンクリート製の部材で形成されたものであり、所定高さの枠部1aの内方を互いに交叉連結する所定高さの桟(第一上桟1b’及び第二上桟1b”)で格子状に適宜区画した構造である。
この上基礎部1の平面視形状は、前述した下基礎部2と同様、建物Hの形状に合わせて平面視方形状に形成されており、上面部位には建物Hが構築される。
また、前述したように、上基礎部1の桟(第一上桟1b’及び第二上桟1b”)は、下基礎部2の桟(第一下桟2b’及び第二下桟2b”)との間で人が通行不能とならず人通行空間が形成されるように構成されている。
また、上基礎部1は、下面部所定位置(4隅部とその間の合計9カ所)に下基礎部2と重合当接する重合部1dが設けられ、この重合部1dには免震装置を設ける凹部1d’が設けられている。
また、本実施例は、基礎構造に設けられる免震装置(連結構造X1及び移動制御構造X2)を設けている。
連結構造X1は、上基礎部1と下基礎部2同士間に架設状態に連結され上基礎部1と下基礎部2との水平方向への相対移動を阻止する連結体7を有し、この連結体7は、上基礎部1と下基礎部2とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上のとき、分断するように構成されている。
具体的には、図7,8に図示したように下基礎部2に設けられる下体12、この下体12の上部に水平方向に相対移動自在に重合され上基礎部1に設けられる上体11と、下体12と上体11同士間に架設され、下体12と上体11との水平方向への相対移動を阻止する連結体7とを有するものである。
下体12は、図7に図示したように適宜な金属製の部材で形成した有天筒状体であり、筒部12’と、この筒部12’の上端部に設けられる天壁部12”とで構成されている。
筒部12’の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片部は下基礎部2に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部12cとして構成されている。
天壁部12”の中央には貫通孔が設けられており、この貫通孔は、後述する連結体7における上方への抜けを阻止した状態で貫挿し得る下孔部12aとして構成され、この下孔部12aは後述する上体1の上孔部11aと合致する。
また、下体12は、天壁部12”の下孔部12aから周方向に複数の補強リブ12bが放射状に延設され、この各補強リブ12bは天壁部12”の内面と筒部12’の内面との間に架設状態に設けられている。
上体11は、図7に図示したように適宜な金属製の部材で形成した有底筒状体であり、筒部11’と、この筒部11’の下端部に設けられる底壁部11”とで構成されている。
筒部11’の周面には周方向に間隔を介して突片が設けられ、この突片部は上基礎部1に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部11cとして構成されている。
底壁部11”の中央には貫通孔が設けられており、この貫通孔は、後述する連結体7における下方への抜けを阻止した状態で貫挿し得る上孔部11aとして構成されている。
この上孔部11aは、上体11と下体12とを上下に重合状態とした際、下孔部12aと合致孔を形成するように構成されている。
また、上体11は、底壁部11”の上孔部11aから周方向に複数の補強リブ11bが放射状に設延設され、この各補強リブ11bは底壁部11”の内面と筒部11’の内面との間に架設状態に設けられている。
連結体7は、図7,8に図示したように適宜な金属製の部材で形成されたネジ棒体であり、上孔部11aと下孔部12aから成る合致孔に貫挿し得る径に設定されている。
また、連結体7は、その上端部に上孔部11aに係止するボルト頭部から成る上係止部7aが設けられ、この上係止部7aの対向位置には下孔部12aに係止するナット部材から成る下係止部7bが設けられている。
従って、上基礎部1に設けられた上体11と下基礎部2に設けられた下体12とを上下に重合させ、この状態で上孔部11aと下孔部12aから成る合致孔に連結体7を上方から貫挿させた後に該連結体7に下係止部7bを螺着すると、上基礎部1(上体11)と下基礎部2(下体12)とは上下方向及び水平方向への相対移動が防止された状態で固定される。
また、連結体7は、下体12と上体11とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上のとき、分断するように構成されている。
具体的には、連結体7には他の部位よりも径小の分断誘発部7cが設けられており、この分断誘発部7cは、連結体7の上係止部7a近傍に設けられた非螺子部にして前述した上孔部11aと下孔部12aから成る合致孔の近傍に配される位置に凹溝を設けて構成されている。
本実施例では、気象庁震度階級5弱以上の力が加わった際に連結体7が分断するように構成されており、これは、建物H及び上基礎部1を合わせた重量と連結体7の本数(強度)とが考慮され、気象庁震度階級5弱未満までは連結体7が分断しないように構造物全体の耐震性能として適宜設定される。また、連結構造X1及び移動制御構造X2の配置も重要となる。
移動制御構造X2は、図9,10に図示したように下基礎部2に設けられる下筒体14と、この下筒体14の上部に水平方向に相対移動自在に重合され上基礎部1に設けられる上筒体13と、下筒体14の下筒孔14aに下方部位が相対移動自在に内装されるとともに、上筒体13の上筒孔13aに上方部位が相対移動自在に内装される軸状体15とからなり、連結構造X1の連結体7が分断したことに起因して生じる下基礎部2と上基礎部1との相対移動が、軸状体15の周面(緩衝材15b)が下筒孔14a及び上筒孔13aの内面に当接して阻止されるように構成されている。
下筒体14は、図9,10に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、上端部には下鍔部14bが設けられている。
また、下筒体14の周面には周方向に間隔を介して複数の突片部が設けられ、この突片部は下基礎部2に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部14dとして構成されている。
また、下筒体14には、下筒孔14a内に円筒状の螺着体14’が螺着され、この螺着体14’内には後述する軸状体15の下端部を後述する上筒体13の上支承部13cとともに倒れないように支承する下支承部14cが架設されている。符号14”は螺着体12’を螺動させる際に工具や手の指を掛ける掛け部、14c’は後述する軸状体15の底板材15dに設けられる孔15d’と合致させることで該軸状体15の位置合わせ機能及び水抜き機能を発揮する孔である。
上筒体13は、図9,10に図示したように適宜な金属製の部材で形成した円筒形状体であり、下端部には上鍔部13bが設けられている。
また、上筒体13の周面には周方向に間隔を介して複数の突片部が設けられ、この突片部は上基礎部1に設けられた際に抜け止め状態とする係止突部13dとして構成されている。
また、上筒体13には、上筒孔13a内に円筒状の螺着体13’が螺着され、この螺着体13’内には後述する軸状体15の上端部を前述した下筒体14の下支承部14cとともに倒れないように支承する上支承部13cが架設されている。符号13”は螺着体13’を螺動させる際に工具や手の指を掛ける掛け部、13c’は後述する軸状体15の天板材15cに設けられる孔15c’と合致させることで該軸状体15の位置合わせ機能及び水抜き機能を発揮する孔である。
軸状体15は、図9,10に図示したように適宜な金属製部材(鋼材)で形成された円筒状の基材15aと、この基材15aの周面に被嵌されるゴム製の緩衝材15bとで構成されたものであり、基材15aの上部開口部には上支承部13cに当接する天板材15cが配され、基材15aの下部開口部には下支承部14cに当接する底板材15dが配されている。尚、天板材15c及び底板材15dにはいずれも孔15c’,15d’が設けられている。
また、この軸状体15の径は、上筒体13及び下筒体14の相対移動量を考慮して設定される。
また、軸状体15は、下端部が下支承部14cに支承された状態で下筒孔14aに配され、上端部が上支承部13cに支承された状態で上筒孔13aに配されるように構成されている。
従って、上筒体13と下筒体14とが水平方向に相対移動した際、上筒体13の上筒孔13a及び下筒体14の下筒孔14a夫々の内面が軸状体15(緩衝材15b)に当接することでその相対移動(移動巾)は制御される。この際、軸状体15の周面は緩衝材15bがあり、且つ、上筒体13の上筒孔13aと下筒体14の下筒孔14aと軸状体15の周面とはいずれも円弧面での衝突となる為、衝突した際の衝撃は良好に緩和される。また、軸状体15は、天板材15c及び底板材15dの存在により強度があり、しかも、上筒体13と下筒体14との相対移動の際には上支承部13c及び下支承部14cに対する天板材15c及び底板材15dの円滑な摺動が行われ良好な相対移動が可能となる(図11参照)。
以上の構成から成る免震装置に係る連結構造X1は四隅及び中心部の合計五箇所配設され、移動制御構造X2は端部中央位置の合計四箇所配設されている(図2参照)。
この本実施例に係る基礎構造に設けられた免震装置の作動について説明する。
地震で水平方向への揺れが生じた際、連結構造X1により下基礎部2と上基礎部1との相対移動は阻止される。
即ち、下基礎部2に設けられる下体12と上基礎部1に設けられる上体11とが水平方向に相対移動しようとしても、この水平方向への力に対し連結体7が分断するまでは当該相対移動は阻止される。
しかし、下体12と上体11とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上になると、即ち、連結体7(分断誘発部7c)が分断するほどの力が加わった際、連結体7が分断すると(図12参照)、下体2と上体1とは相対移動可能となり、建物Hの倒壊は阻止される。
また、この下基礎部2と上基礎部1との相対移動は移動制御構造X2により制御され、所定の範囲以上とならない(図11,13参照)。
即ち、下基礎部2と上基礎部1とが相対移動した際、下基礎部2に設けられる下筒体14と上基礎部1に設けられる上筒体13が相対移動することで、下筒体14の下筒孔14a内面及び上筒体13の上筒孔13a内面夫々が軸状体15(緩衝材15b)に当接し、あらゆる水平方向に揺れても下筒体14と上筒体13とは所定長さ以上に相対移動しない。
つまり、建物Hに影響の少ない小さな揺れには連結体7で耐え、影響の多い大きな揺れには敢えて耐えず、下基礎部2に対して上基礎部1を相対移動させることで揺れを吸収緩和し、更に、下基礎部2に対して上基礎部1が必要以上に相対移動しないようにして、万一、下基礎部2から上基礎部1が脱落することを防止するものである。
次に、本実施例に係る基礎構造に設けられた建物Hが不同沈下により傾斜した場合(図14,15参照)の傾斜修復方法について説明する。尚、本実施例の傾斜修復方法において公知のジャッキ装置3を使用しており、このジャッキ装置3は、地盤Eに設けられる基部5と、この基部5の上部に設けられ上端部が上基礎部1に設けられる伸縮部6とで構成され、基部5は継ぎ足し連結可能な複数の連結体5’で構成されている。
先ず、位置ズレした上基礎部1を下基礎部2に対する正しい位置に移動させて戻し、連結構造X1に連結体7の代わりに高強度連結体8を上体11と下体12との間に設ける(図16参照)。尚、下基礎部2に対して上基礎部1が位置ズレしたりせず、単に不同沈下のみ生じている場合もある。
この高強度連結体8は、連結体7と同様、適宜な金属製の部材で形成されたネジ棒体であり、上孔部11aと下孔部12aから成る合致孔に貫挿し得る径に設定されている。
また、高強度連結体8は、その上端部に上孔部11aに係止するボルト頭部から成る上係止部8aが設けられ、この上係止部8aの対向位置には下孔部12aに係止するナット部材から成る下係止部8bが設けられている。
従って、上基礎部1に設けられた上体11と下基礎部2に設けられた下体12とを上下に重合させ、この状態で上孔部11aと下孔部12aから成る合致孔に高強度連結体8を上方から貫挿させた後に該高強度連結体8に下係止部8bを螺着すると、上基礎部1(上体11)と下基礎部2(下体12)とは上下方向及び水平方向への相対移動が防止された状態で固定される。
この高強度連結体8は、連結体7のように分断誘発部7cは無く、連結体7よりも分断し難い高強度を有している。これは、上基礎部1及び下基礎部2を上昇させる際にかかる荷重に対応するためである。
続いて、ジャッキ装置3の基部5を下基礎部2に貫通させた状態で下端部を地盤Eに設けると共に、ジャッキ装置3(伸縮部6)の上端部を上基礎部1(交叉部1c)に設け、ジャッキ装置3(伸縮部6)を伸び作動させる。この際、地盤Eが柔らかい場合には基礎構造部(上基礎部1及び下基礎部2)は上昇せず基部5が沈降することになり、この沈降が止まるまで(基部5が硬い地盤若しくは摩擦の高い地盤に達するまで)連結体5’を継ぎ足すことになる。符号16は楔部材であり、基礎構造部(上基礎部1及び下基礎部2)が水平状態となるまでジャッキ装置3(伸縮部6)の上端部と上基礎部1(交叉部1c)との間に配する。
続いて、前述した基部5の沈降が止まると、地盤Eに対して基礎構造部(上基礎部1及び下基礎部2)が上昇することになり、基礎構造部(上基礎部1及び下基礎部2)が水平状態となるまで上昇させる。
続いて、下基礎部2と地盤Eとの間に形成された空隙Sに貫通孔9を介して充填材Mを配する(図18参照)。
充填材Mが硬化した後、ジャッキ装置3の伸縮部6と基部5の一部(地盤Eに埋没しなかった基部5)を除去し(図19参照)、また、連結構造X1の高強度連結体8を連結体7に取り換え(図20参照)、傾斜修復作業は完了する。
本実施例は上述のようにしたから、不同沈下した建物の傾斜修復が簡易且つ良好に行え、しかも、施工期間を大幅に短縮できる。前述した特願2016−160959号で行われる作業(下基礎部2に対して上基礎部1を上昇離反させ、続いて、傾斜した下基礎部2を適宜な手段により水平状態とする作業)は行われない。
また、本実施例は、下基礎部2にはジャッキ装置3を貫通させる貫通孔部4が設けられているから、予め下基礎部2に貫通孔部4を形成しておくことで迅速な施工が行われる。
また、本実施例は、ジャッキ装置3は、地盤Eに設けられる基部5と、この基部5の上部に設けられ上端部が上基礎部1に設けられる伸縮部6とで構成され、基部5は継ぎ足し連結可能な複数の連結体5’で構成されているから、狭い空間でも確実に施工できる。
また、本実施例は、上基礎部1及び前記下基礎部2を上昇させる前に、連結体7に代えて該連結体7よりも分断し難い高強度の高強度連結体8を上基礎部1と前記下基礎部2同士間に架設状態に連結するから、基礎構造(上基礎部1及び下基礎部2)を安全に且つ確実に上昇させることができる。
また、本実施例は、下基礎部2には、水平状態とした下基礎部2と地盤Eとの間に形成された空隙Sに充填材Mを配する貫通孔9が設けられているから、予め下基礎部2に貫通孔9を形成しておくことで迅速な施工が行われる。
また、本実施例は、上基礎部1は、所定高さの枠部1aの内方を互いに交叉連設する第一上桟1b’及び第二上桟1b”で適宜区画した構造であり、ジャッキ装置3の上端部は、第一上桟1b’及び第二上桟1b”の交叉部1cに設けるから、ジャッキ装置3の上端部を上基礎部1の強度のある部分に設けることで上基礎部1の破損を可及的に防止し得ることになる。
また、本実施例は、下基礎部2の上に上基礎部1を設けた状態において、第一上桟1b’及び第二上桟1b”の交叉部1cに対向する下基礎部2の下方対向位置にはジャッキ装置3を貫通させる貫通孔部4が設けられているから、確実にジャッキ装置3の上端部を上基礎部1の交叉部1cに設けた状態で施工できる。
また、本実施例は、免震装置により良好に揺れを吸収でき建物Hの破損を可及的に防止することができる。
また、本実施例は、連結体7には他の部位よりも径小の分断誘発部7cが設けられているから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができる。
また、本実施例は、下体12は、中央に連結体7を貫挿し得る下孔部12aが設けられた天壁部12”を有する有天筒状体であり、この有天筒状体内には放射方向に延設された複数の補強リブ12bが設けられ、また、上体11は、中央に下孔部12aと合致し連結体7を貫挿し得る上孔部11aが設けられた底壁部11”を有する有底筒状体であり、この有底筒状体内には放射方向に延設された複数の補強リブ11bが設けられているから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができる。
また、本実施例は、下筒体14には、軸状体15の下端部を支承する下支承部14cが設けられ、上筒体13には、軸状体15の上端部を支承する上支承部13cが設けられているから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができる。
また、本実施例は、下筒体14及び上筒体13は円筒形状体であるから、前述した作用効果を簡易構造で確実に達成することができ、しかも、円弧の面で衝撃を良好に緩和することができる。
また、本実施例は、下筒体14の上端部には下鍔部14bが設けられ、この下鍔部14bに重合する上鍔部13bが上筒体13の下端部に設けられているから、下筒体14と上筒体13とが良好に水平方向に相対移動することになり、確実に軸状体15を利用した制御作動が機能することになる。
また、本実施例は、軸状体15の周面には緩衝材15bが設けられているから、この点においても弾性により衝撃を良好に緩和することができる。
また、本実施例は、上基礎部1及び下基礎部2は、枠部1a,2aの内方に桟が設けられた構造であり、上基礎部1及び下基礎部2を当接した際、この桟が上下方向において合致しない位置に設けられているから、この上下の桟同士間に人が通行できる人通行空間が形成され、この人通行空間により本実施例に係る建物Hの傾斜修復方法を良好に実現することができ、基礎構造のメンテナンスも良好に行える。
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
E 地盤
H 建物
M 充填材
S 空隙
X1 連結構造
1 上基礎部
1a 枠部
1b’ 第一上桟
1b” 第二上桟
1c 交叉部
2 下基礎部
3 ジャッキ装置
4 貫通孔部
5 基部
5’ 連結体
6 伸縮部
7 連結体
8 高強度連結体
9 貫通孔
H 建物
M 充填材
S 空隙
X1 連結構造
1 上基礎部
1a 枠部
1b’ 第一上桟
1b” 第二上桟
1c 交叉部
2 下基礎部
3 ジャッキ装置
4 貫通孔部
5 基部
5’ 連結体
6 伸縮部
7 連結体
8 高強度連結体
9 貫通孔
Claims (8)
- 下記1の基礎構造を有する前記建物が不同沈下により傾斜した場合の傾斜修復方法であって、ジャッキ装置を前記下基礎部に貫通させた状態で該ジャッキ装置の下端部を前記地盤に設けると共に、前記ジャッキ装置の上端部を前記上基礎部に設け、続いて、前記ジャッキ装置を伸長させて前記地盤に対し前記上基礎部及び前記下基礎部を上昇させ、続いて、前記下基礎部と前記地盤との間に形成された空隙に充填材を配することを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
記1
地盤に設けられる下基礎部と、この下基礎部の上に設けられ、更に、建物が構築される上基礎部とから成る基礎構造。 - 請求項1記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記下基礎部には前記ジャッキ装置を貫通させる貫通孔部が設けられていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
- 請求項1,2いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記ジャッキ装置は、前記地盤に設けられる基部と、この基部の上部に設けられ上端部が前記上基礎部に設けられる伸縮部とで構成され、前記基部は継ぎ足し連結可能な複数の連結体で構成されていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
- 請求項1〜3いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記上基礎部と前記下基礎部とは下記2の連結構造を介して連結されていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
記2
前記上基礎部と前記下基礎部同士間に架設状態に設けられ前記上基礎部と前記下基礎部との水平方向への相対移動を阻止する連結体を有し、この連結体は、前記上基礎部と前記下基礎部とが水平方向に相対移動しようとする力が所定の大きさ以上のとき、分断するように構成されている連結構造。 - 請求項4記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記上基礎部及び前記下基礎部を上昇させる前に、前記連結体に代えて該連結体よりも分断し難い高強度の高強度連結体を用いることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
- 請求項1〜5いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記下基礎部には、水平状態とした前記下基礎部と前記地盤との間に形成された前記空隙に前記充填材を配する貫通孔が設けられていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
- 請求項1〜6いずれか1項に記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記上基礎部は、所定高さの枠部の内方を互いに交叉連設する第一上桟及び第二上桟で適宜区画した構造であり、前記ジャッキ装置の上端部は前記第一上桟及び前記第二上桟の交叉部に設けることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
- 請求項7記載の不同沈下した建物の傾斜修復方法において、前記第一上桟及び前記第二上桟の交叉部に対向する位置にして前記下基礎部には、前記ジャッキ装置を貫通させる貫通孔部が設けられていることを特徴とする不同沈下した建物の傾斜修復方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111101731A (zh) * | 2020-01-16 | 2020-05-05 | 东南大学 | 一种古建筑木结构整体同步提升方法 |
CN114855897A (zh) * | 2022-04-29 | 2022-08-05 | 江苏鸿基节能新技术股份有限公司 | 一种建筑物的限位迫降纠倾方法 |
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-
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- 2017-01-31 JP JP2017015969A patent/JP2018123559A/ja active Pending
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