本発明の実施形態の一例を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、ビル等の地下階を構築する場合を例示するが、本発明の適用対象を限定する趣旨ではない。
まず、逆打ち工法について説明する。逆打ち工法によって地中構造物を構築するに際しては、プレキャスト構真柱設置工程(図1の(a)参照)と、トップスラブ構築工程(図1の(b)参照)と、地下中間階構築工程(図1の(c)参照)と、基礎躯体構築工程(図2の(a)および(b)参照)を順次施工する。
地下階柱設置工程は、図1の(a)に示すように、地下階柱となるプレキャスト構真柱Pを地盤中に設置する工程である。本実施形態の地下階柱設置工程には、支持地盤(図示略)に達する掘削穴1を形成する工程(削孔工程)、基礎杭2用の鉄筋籠(図示略)を掘削穴1に建て込む工程(鉄筋籠挿入工程)、プレキャスト構真柱Pを掘削穴1に建て込む工程(建込み工程)、基礎杭2用のコンクリートを打設する工程(杭用コンクリート打設工程)、プレキャスト構真柱Pの下部の周囲に硬質粒状材料(砕石、高炉スラグ、ゴミ溶融スラグ、コンクリート片等)3を投入する工程(下部埋戻し工程)、掘削土などの埋戻材4を硬質粒状材料3の上側に投入する工程(上部埋戻し工程)などが含まれている。
なお、プレキャスト構真柱Pは、プレキャスト化された複数の柱材を上下方向に連設して構成したものである。プレキャスト構真柱Pの構成および建込み工程(本実施形態に係るプレキャスト構真柱の構築方法)の詳細は、後述する。
トップスラブ構築工程は、図1の(b)に示すように、建物一階の床スラブとなるトップスラブS1を構築し、このトップスラブS1をプレキャスト構真柱P,Pに支持させる工程である。本実施形態のトップスラブ構築工程には、土留壁W,Wの内側において地盤を所定深さまで掘削する工程(一次掘削工程)、トップスラブS1用の型枠や鉄筋(図示略)を配置する工程、型枠内にコンクリートを打設する工程などが含まれている。なお、本実施形態のトップスラブS1は、隣り合うプレキャスト構真柱P,Pの上端部同士を繋ぐ大梁H1と一体に形成され、大梁H1を介してプレキャスト構真柱P,Pに支持される。トップスラブS1は、トップスラブ構築工程以後の工程を行う際の作業床となる。
地下中間階構築工程は、図1の(c)に示すように、地下中間階の床スラブとなる中間スラブS2やプレキャスト構真柱P,Pの中間部同士を繋ぐ大梁H2などを構築する工程である。本実施形態の地下中間階構築工程には、トップスラブS1の下側の地盤を中間スラブS2や大梁H2の構築予定位置の下側まで掘削する工程(二次掘削工程)、中間スラブS2用の型枠や鉄筋(図示略)を配置する工程、型枠内にコンクリートを打設する工程などが含まれている。
なお、地下中間階を構築しない場合には、地下中間階構築工程を省略し、複数の地下中間階を構築する場合には、地下中間階構築工程を繰り返せばよい。また、中間スラブS2や大梁H2は、基礎躯体B(図2の(b)参照)を構築した後に構築してもよい。
基礎躯体構築工程は、図2の(a)および(b)に示すように、トップスラブS1の下方に基礎躯体Bを構築する工程である。本実施形態の基礎躯体構築工程には、中間スラブS2の下側の地盤を基礎躯体Bの構築予定位置の下側まで掘削する工程(三次掘削工程)、プレキャスト構真柱Pの下部の周囲に投入されていた硬質粒状材料3(図1の(a)参照)を床付面上に敷き均して下地層5を形成する工程、下地層5上に均しコンクリート6を打設する工程、均しコンクリート6上に基礎躯体B用の型枠や鉄筋を配置する工程、均しコンクリート6上や型枠内に基礎躯体B用のコンクリートを打設する工程などが含まれている。なお、図示は省略するが、本実施形態の基礎躯体Bは、隣り合う基礎杭2,2の上端部同士を繋ぐ基礎梁と、最下階の床スラブと、を具備している。
逆打ち工法による地中構造物の構築方法は、以上のような工程を含むものであり、上記各工程を経ることで、地中構造物(地下階)を構築することができる。
次に、図3を参照して本実施形態に係るプレキャスト構真柱Pの構成を詳細に説明する。なお、図3においては、掘削穴1、硬質粒状材料3および埋戻材4(図1の(a)参照)の図示を省略している。
図3の(a)に示すように、プレキャスト構真柱Pは、基礎杭2の杭頭部に植設される第一柱材10と、この第一柱材10の上方に配置される第二柱材20と、を具備している。
第一柱材10は、プレキャストコンクリート製の柱部11と、この柱部11に植設された仮設柱12と、この仮設柱12の下端に接続された杭芯部材13とを具備している。なお、本実施形態では、柱部11の下側に仮設柱12と杭芯部材13が設けられているが、このような構成に限定する趣旨ではなく、第一柱材の全体がプレキャストコンクリート部材で構成されているものであってもよい。この構成は、図10を参照して後に説明する。
柱部11は、中実な断面を備えた鉄筋コンクリート部材である(図3の(c)参照)。柱部11の上端は、中間スラブS2を支える大梁H2(図2の(b)参照)の下端よりも下側に位置している。また、柱部11の下端は、基礎躯体B(図2の(b)参照)の天端よりも若干下側に位置している。つまり、柱部11の下端は、基礎躯体Bの上層部に埋め込まれることになる。
柱部11の主筋11a,11a,…は、柱部11のコンクリート部分を貫通しており、柱部11の上下に突出している。図示は省略するが、柱部11のコンクリート部分の上端面から各主筋11aを突出させる代わりに、コンクリート部分の上端部にインサート金物を埋設しておき、コンクリート部分に埋設した主筋とは別の主筋(例えば、第二柱材20の柱部21の主筋21a)をインサート金物に接続してもよい。同様に、柱部11のコンクリート部分の下端面から各主筋11aを突出させる代わりに、コンクリート部分の下端部にインサート金物を埋設しておき、コンクリート部分に埋設した主筋とは別の主筋をインサート金物に接続してもよい。柱部11を構成するコンクリートの種類に制限はないが、本実施形態では、例えば設計基準強度が60Mpa以上の高強度コンクリートを使用する。
図3の(c)に示すように、仮設柱12は、柱部11の軸心に沿って配置された鉄骨材からなる。鉄骨材は、H形鋼のウエブ両面に断面T字状のプレート材を溶接して断面略十字状を呈するように構成されている。仮設柱12の上半部は柱部11に埋設されており、仮設柱12の下半部は柱部11の下面から下方に向って延出している。また、仮設柱12の上半部の外周面には、多数のジベル(図示せず)が突設されている。仮設柱12の下半部(柱部11から突出した部分)は、地盤を掘り下げた際に一旦露出するが、最終的には基礎躯体B(図2の(b)参照)に埋設される。なお、本実施形態では、断面十字状の仮設柱12を例示したが、仮設柱12の構成を限定する趣旨ではなく、例えは、H形鋼を単体で用いたり、他の形鋼を用いたりしてもよい。
杭芯部材13は、仮設柱12と同軸に設けられた断面十字状の鉄骨材からなり、仮設柱12の下端面から下方に向って延出している。杭芯部材13の下部は、基礎杭2の杭頭部に埋設される。杭芯部材13の上部は、地盤を掘り下げた際に一旦露出するが、最終的には基礎躯体Bに埋設される。なお、本実施形態では、断面十字状の鉄骨からなる杭芯部材13を例示したが、杭芯部材13の構成を限定する趣旨ではない。
図3の(a)および(b)に示すように、第二柱材20は、プレキャストコンクリート製の柱部21によって構成されている。柱部21は、第二柱材20の全長に渡って延在する鉄筋コンクリート部材である。柱部21は、第一柱材10の柱部11の上方に、所定の隙間をあけて配置されている。
柱部21は、断面正方形を呈しており、その内部に主筋21aとフープ筋21bが設けられている。本実施形態の柱部21は、断面正方形を呈しているが、他の断面形状(例えば、断面長方形、断面円形や断面多角形)であっても差し支えない。柱部21の下端部には、第一柱材10の柱部11から延びる主筋11aを挿入するためのインサート金物22(図3の(a)参照)が埋設されており、柱部21の下端部の側面には、大梁H2から延びる梁主筋を挿入するためのインサート金物(図示せず)が埋設されている。
柱部21の主筋21aは、柱部21の上側に突出していて、大梁H1(図1の(b)参照)の主筋に接続されている。図示は省略するが、柱部21の上端面から各主筋21aを突出させる代わりに、上端部にインサート金物を埋設しておき、主筋とは別の主筋(例えば、大梁H1の主筋)をインサート金物に接続してもよい。柱部21を構成するコンクリートの種類に制限はないが、本実施形態では、例えば、設計基準強度が60Mpa以上の高強度コンクリートを使用する。
第一柱材10と第二柱材20は、機械式継手24によって連結されている。具体的には、第二柱材20内に埋設されたスリーブ状のインサート金物22内に、第一柱材10の主筋11aの上端部を挿入して、インサート金物22内にグラウト材23を充填することでインサート金物22と主筋11aとが固定されている。インサート金物22の上部には、第二柱材20の主筋21aの下端部が挿入されており、グラウト材23の充填によってインサート金物22と主筋21aとが固定されている。つまり、機械式継手24は、インサート金物22内に各主筋11a,21aを挿入してグラウト材23を充填することで構成されている。
また、第一柱材10と第二柱材20とは、所定の隙間をあけて配置されており、グラウト材23が、その隙間にインサート金物22の内部と一体的に充填され、前記隙間を埋める。柱部21の上端はトップスラブS1を支える大梁H1(図2の(b)参照)の下端と一致しており、柱部21の下端は中間スラブS2を支える大梁H2(図2の(b)参照)の下端と一致している。
なお、図3では、プレキャスト構真柱Pが、第一柱材10と第二柱材20とを具備した構成を例に挙げて説明したが、本発明の構成を限定する趣旨ではなく、第二柱材20の上方に別途の柱材をさらに配置してもよい(図4〜図9参照)。
次に、図4〜図9を参照して地下階柱設置工程の一工程であるプレキャスト構真柱Pの建込工程(本発明のプレキャスト構真柱の構築方法)を詳細に説明する。この図4〜図9では、プレキャスト構真柱Pが、基礎杭2の杭頭部に植設される第一柱材10と、この第一柱材10の上方に配置される第二柱材20と、この第二柱材20の上方に配置される第三柱材30と、を具備している形態を例に挙げて説明する。
プレキャスト構真柱Pの建込み工程は、地下階柱設置工程の一工程である鉄筋籠挿入工程の後に行われる工程であって、架台設置ステップ(図4の(a)参照)と、第一柱材配置ステップ(図4の(a)および(b)参照)と、架台増設ステップ(図5の(a)参照)と、第二柱材配置ステップ(図5の(a)および(b)参照)と、治具取付ステップ(図5の(b)および図6参照)と、連結ステップ(図5の(b)参照)と、下降ステップ(図7参照)と、第三柱材配置ステップ(図8の(a)および(b)参照)と、治具取付ステップ(図8の(b)参照)と、連結ステップ(図8の(b)参照)と、下降ステップ(図9の(a)および(b)参照)とを含むものである。
架台設置ステップは、図4の(a)に示すように、地盤に形成した掘削穴1の開口部近傍に保持架台40を設置する工程である。掘削穴1は、泥水(図示せず)を注入しながら掘削されており、周辺土砂の崩落を防止している。なお、掘削穴1は、泥水の注入に代えて、金属製のケーシングを挿入することで、土砂の崩落を防止するようにしてもよい。本実施形態の保持架台40は、第一柱材10を保持する基台部41と、第二柱材20および第三柱材30を保持する架構部42(図5参照)とを備えて構成されているが、本実施形態の架台設置ステップでは、保持架台40の一部(基台部41)のみを設置する。基台部41の構成に制限はないが、本実施形態のものは、掘削穴1の開口縁部に載置されるリング状の鋼材からなる。なお、図示は省略するが、例えば、複数の鉄骨等を井桁状に組み合わせたものを基台部としてもよい。
第一柱材配置ステップは、図4の(b)に示すように、第一柱材10の下部を掘削穴1に挿入するとともに、第一柱材10を保持架台40に保持させる工程である。本実施形態では、第一柱材10のうち、柱部11の下半部、仮設柱12および杭芯部材13を掘削穴1に挿入し、柱部11の上端部を地上に露出させている。第一柱材10を建て込む際には、例えば、仮置きスペース等に横たえていた第一柱材10を図示せぬクレーン等で立ち上げつつ吊り上げ、立てた状態の第一柱材10を掘削穴1の上方に移動させた後(図4の(a)参照)、掘削穴1の底部に向けて第一柱材10を吊り下ろし、第一柱材10の側面に付設したブラケット15を基台部41の上面に載置すればよい。図示は省略するが、基台部41とブラケット15との間にジャッキ等の高さ調整手段を介設しておき、この高さ調整手段を利用して第一柱材10の高さ位置を調整してもよい。
架台増設ステップは、図5の(a)に示すように、基台部41に架構部42を増設するステップである。架構部42の構成に制限はないが、本実施形態のものは、基台部41の上面に立設される支柱42a,42a,…と、支柱42a,42a,…の高さ方向の中間部に設けられた連結部材42bと、支柱42a,42a,…の上端部に設けられた支持部材42cと、を備えている。支柱42aは、鋼管や鉄骨からなり、連結部材42bおよび支持部材42cは、リング状の鋼材からなる。
第二柱材配置ステップは、図5の(a)および(b)に示すように、第二柱材20を柱部11の上側に配置するとともに、第二柱材20を保持架台40に保持させるステップである。第二柱材20を建て込む際には、例えば、仮置きスペース等に横たえていた第二柱材20を図示せぬクレーン等で立ち上げつつ吊り上げ、立てた状態の第二柱材20を第一柱材10の上方に移動させた後(図5の(a)参照)、第一柱材10に向けて第二柱材20を吊り下ろし(図5の(b)参照)、第二柱材20の側面に付設したブラケット25を支持部材42cの上面に載置すればよい。この状態で、第二柱材20は、第一柱材10の上方で所定の隙間をあけて配置される。このとき、第一柱材10の上端面から突出している主筋11a,11aは、第二柱材20に埋設されたインサート金物22に下側から挿入される。
第二柱材20の水平位置は、保持架台40に取り付けたジャッキ43を利用して調整する。具体的には、例えば、第二柱材20の前後左右の四箇所にジャッキ43を配置し、第二柱材20を挟んで対向する一対のジャッキ43,43を適宜伸縮させることで、第二柱材20の水平位置を調整するとよい。図示の形態においては、ジャッキ43のヘッドをブラケット25に押し付けているが、柱部21の側面に直接押し付けてもよい。なお、図示は省略するが、支持部材42cとブラケット25との間にジャッキ等の高さ調整手段を介設しておき、この高さ調整手段を利用して第二柱材20の高さ位置を調整してもよい。
治具取付ステップは、図5の(b)および図6に示すように、第一柱材10と第二柱材20との接続部に、接続吊下げ治具50を取り付けるステップである。接続吊下げ治具50は、第一柱材10および第二柱材20の外周の四面にそれぞれ取り付けられている。接続吊下げ治具50は、図6に示すように、上下に配置された第一柱材10および第二柱材20間に架け渡されて取り付けられるスプライスプレート51と、このスプライスプレート51に固定された吊ピース52とを備えて構成されている。
スプライスプレート51は、第一柱材10の一側面と、この一側面と面一の第二柱材20の一側面に当接する。第一柱材10に当接する部分と、第二柱材20に当接する部分には、ボルト貫通孔51aがそれぞれ形成されており、ボルト53を各ボルト貫通孔51aに挿通させて、第一柱材10または第二柱材20に埋設されためねじ部(インサート金物)54に螺合させることで、スプライスプレート51が第一柱材10および第二柱材20に接合される。
吊ピース52は、スプライスプレート51の中心部にこれと直交して取り付けられたプレート材にて構成されている。吊ピース52は、スプライスプレート51に溶接等にて取り付けられている。吊ピース52には、ワイヤーやフックを係止するための係止孔52aが形成されている。
接続吊下げ治具50は、第一柱材10および第二柱材20を仮固定するとともに、第一柱材10および第二柱材20を吊下げるための強度を有していればよい。
治具取付ステップを行いながら、もしくは、治具取付ステップの行う前または行った後に、連結ステップを行う。連結ステップは、第一柱材10と第二柱材20とを、機械式継手24によって連結するステップである。まず、第一柱材10と第二柱材20の接続部の隙間を囲むように型枠(図示せず)を設置し、インサート金物22内と前記隙間にグラウト材23を一体的に充填する(図5の(b)参照)。その後、所定の養生期間を経て必要な接合強度が発現した後、型枠を除去する。
下降ステップは、連結された第一柱材10および第二柱材20を掘削穴1内に下降させるステップである。下降ステップは、治具取付ステップと、連結ステップのグラウト材23の充填の両方が完了した後、順次行う工程である。下降ステップは、図7に示すように、第一柱材10および第二柱材20を、接続吊下げ治具50を支点(吊り点)として支持して下降させる。具体的には、各接続吊下げ治具50の吊ピース52の係止孔52a(図6参照)にワイヤー55をそれぞれ係止して、スプライスプレート51(図6参照)で、第一柱材10と第二柱材20とを仮固定した状態で吊り下げる。このとき、第一柱材10と第二柱材20間のグラウト材23は十分固化しておらず所望の連結強度を発現していないが、第一柱材10と第二柱材20は、接続吊下げ治具50で仮固定された状態で吊り下げているので、第一柱材10と第二柱材20がずれることはない。
なお、第二柱材20の側面に図示しない傾斜計を設けて、第二柱材20の垂直度を計測しながら第一柱材10および第二柱材20を下降させると、さらに位置精度を高くすることができる。
第三柱材配置ステップは、図8の(a)および(b)に示すように、プレキャストコンクリート製の柱部31によって構成される第三柱材30を、第二柱材20の柱部21の上側に配置するステップである。柱部31は、図8の(a)に示すように、第二柱材20の柱部21と略同等の構成をしている。柱部31は、内部にインサート金物32が埋設されており、インサート金物32の内部には上端部から主筋31aが挿入されている。柱部31は、第二柱材20の柱部21の上方に、所定の隙間をあけて配置される。
第三柱材配置ステップでは、第二柱材配置ステップにおける「第二柱材20」を「第三柱材30」に置き換えて、第二柱材配置ステップにおける「第一柱材10」を「第二柱材20」に置き換えて、同等の作業を行う。
その後の治具取付ステップ(図8の(b)参照)および連結ステップ(図8の(b)参照)においても、前記の治具取付ステップ(図5の(b)および図6参照)および連結ステップ(図5の(b)参照)と同等の作業を行う。
なお、治具取付ステップにおいて取り付けられる接続吊下げ治具50’は、第二柱材20および第三柱材30を仮固定するとともに、第一柱材10、第二柱材20、第三柱材30およびヤットコ(延長治具)60を吊下げるための強度を有するものとする。
その後の下降ステップは、図9の(a)および(b)に示すように、連結された第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30(本実施形態ではプレキャスト構真柱P)を下降させるステップである。この下降ステップも、前記の治具取付ステップ(図8の(b)参照)と、連結ステップ(図8の(b)参照)における機械式継手34のグラウト材33(図8の(b)参照)の充填の両方が完了した後、順次行う工程であって、グラウト材33の養生期間が完了する前に行う。本実施形態では、第三柱材30の上端にヤットコ(延長治具)60を取り付ける。この状態で、各接続吊下げ治具50’にワイヤー55をそれぞれ係止して、これを支点(吊り点)として吊り下げる。これによって、プレキャスト構真柱Pが、掘削穴1の深部(底部)へ向かって移動する。
なお、図示は省略するが、第三柱材30の上側にさらに別の柱材を連設する場合には、第三柱材30を基台部41に保持させ、第三柱材30を「第一柱材」とみなすとともに、追加する柱材を「第二柱材」とみなして、第三柱材配置ステップ、治具取付ステップ、連結ステップおよび下降ステップを繰り返せばよい。
プレキャスト構真柱Pを掘削穴1の所定の深度まで下降させたら、ヤットコ60の側面に付設した図示せぬブラケットを基台部41の上面に載置する。なお、グラウト材33の養生期間が終了するまでは、プレキャスト構真柱Pは、接続吊下げ治具50’を介してワイヤー55で吊り下げておく。その後、建込み工程に続く杭用コンクリート打設工程(プレキャスト構真柱設置工程の一工程)を行い、杭芯部材13の下部を基礎杭2の杭頭部に埋設する(図3の(a)参照)。プレキャスト構真柱Pの水平位置等は、基礎杭2用のコンクリートを打設する前もしくは後に図示せぬジャッキまたはパンタグラフ等を用いて調整する。基礎杭2用のコンクリートが所定の強度に達したら、下部埋戻し工程および上部埋戻し工程などを行う。
以上説明したプレキャスト構真柱Pの建込み工程(本実施形態に係るプレキャスト構真柱の構築方法)によれば、第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30それぞれの長さ寸法が構築すべきプレキャスト構真柱Pの高さ寸法よりも小さくなるので、運搬や現場での取り回しが容易になる。また、第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30を別体としたことによって、大型のクレーン等を使用せずとも第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30の建込み作業を行なうことができる。したがって、建込み作業に用いるクレーン等を小型化でき、大型化を抑制できる。また、大型のクレーンを設置できないような狭隘な施工現場や空頭制限のあるような施工現場でも逆打ち工法を実施することが可能になる。さらに、本実施形態では、第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30は、建て込んだ状態で接続するので、外部に接続作業スペースを必要としない。したがって、狭隘な施工現場でも施工可能となる。
また、第一柱材10と第二柱材20(第二柱材20と第三柱材30)は、機械式継手24(34)によって連結されるので、従来のように超高強度コンクリートを打設する必要がなく、接続作業にかかる時間は短くて済み、施工手間と時間を低減できる。さらには、第一柱材10と第二柱材20との接続部(第二柱材20と第三柱材30との接続部)には、接続吊下げ治具50(50’)を取り付けて、この接続吊下げ治具50(50’)を支点(吊り点)として支持することで、機械式継手24(34)のグラウト材23(33)がプレキャスト構真柱Pとして必要な強度を発現する前であっても、連結された第一柱材10および第二柱材20(第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30)を吊り下げて下降させることが可能となる。これによって、施工時間をより一層低減できる。
さらに、本実施形態では、掘削穴1の掘削時に泥水が注入されているので、掘削穴1内に第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30を下降するときに、各柱材10,20,30に浮力が発生する。したがって、第一柱材10、第二柱材20および第三柱材30を吊るクレーン等にかかる重量が小さくなるので、クレーン等のさらなる小型化を達成できる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、第一柱材10の脚部が鉄骨材からなる仮設柱12と杭芯部材13が露出して形成されているが、これに限定されるものではなく、第一柱材全体をプレキャストコンクリート部材で形成するようにしてもよい。
図10の(a)に示すように、プレキャストコンクリート製の第一柱材110は、外周面に周囲のコンクリートとの付着性を高めるためのコッター111が形成されている。コッター111は、コンクリートが回り込み易いように、上面が、表面に向かうほど上方になる傾斜面になっている。第一柱材110の先端部(下端部)は、中央部が突出するようにテーパ状に形成されている。また、コンクリートとの付着性を高めるために、第一柱材110の下端部には、鉄筋112が外側に突出して設けられており、その先端には定着プレート113が取り付けられている。
図10の(b)に示すプレキャストコンクリート製の第一柱材120は、先端部が拡幅した構成の柱材である。この第一柱材120は、基端部材121と、この基端部材121よりも拡幅した先端部材122とを具備しており、基端部材121と先端部材122は機械式継手123にて連結されている。先端部材122の先端部(下端部)は、その中央部が突出するようにテーパ状に形成されている。機械式継手123は、基端部材121に埋設されたスリーブ状のインサート金物124に、基端部材121の主筋125と、先端部材122の主筋126がそれぞれ挿入されて、インサート金物124内にグラウト材127を充填することで構成されている。基端部材121と先端部材122の外周面にはコッター128がそれぞれ形成されている。このコッター128も、コンクリートが回り込み易いように、上面が、表面に向かうほど上方になる傾斜面になっている。基端部材121の先端部には、鉄筋129が外側に突出して設けられており、その先端には定着プレート130が取り付けられている。
さらに、プレキャスト構真柱は、図11に示すような構成であってもよい。このプレキャスト構真柱200は、基礎杭(図示せず)にプレキャスト構真柱200を直接挿入する直挿し工法に適用される構真柱である。このプレキャスト構真柱200は、全体がプレキャストコンクリート部材で形成されている。プレキャスト構真柱200には、外周面から中心に向かって所定の幅で、押出法ポリスチレンフォーム(スタイロフォーム(登録商標))からなる変形層201が埋設されている。変形層201は、基礎杭の上端面に相当する位置に設けられている。プレキャスト構真柱200の内部には、主筋202とフープ筋203からなる芯鉄筋204が設けられている。主筋202とフープ筋203は、プレキャスト構真柱200が負担する軸力を伝達可能な範囲で極限まで絞って配筋されている。この芯鉄筋204から所定の寸法をあけた位置に変形層201の内周端が位置している。つまり、変形層201の内側には、プレキャスト構真柱200が負担する軸力を伝達可能な断面が確保されている。このような構成によれば、プレキャスト構真柱200は、必要な強度を確保しつつ、基礎杭への挿入後でも位置調整を行うことが可能となる。
また、変形層201から上方に離れた位置では、プレキャスト構真柱200の表面を切り欠いて欠損させるようにしてもよい。この場合、欠損部の内側にはプレキャスト構真柱200が負担する軸力を伝達可能な断面が確保されるように切り欠く。これによれば、位置調整可能な範囲が広くなる。
また、前記実施形態では、保持架台40の上部に取り付けたジャッキ43を利用して、第二柱材20や第三柱材30の水平位置を調整するようにしているが、これに限定されるものではない。図12に示すように、掘削穴1の開口部近傍に内周壁を覆うスリーブ210を挿入しておき、保持架台40からスリーブ210の内部に水平ジャッキ211を吊下げて、第一柱材10、第二柱材20や第三柱材30の水平位置を調整するようにしてもよい。水平ジャッキ211は、スリーブ210の内周面を反力受けとして、各柱材10,20,30の側面を押圧する。このようにすれば、下降ステップにおいても各柱材10,20,30の水平位置を調整できるので、位置精度をより一層高めることができる。