JP2018123015A - 銀リン酸系ガラス組成物及び封着材料 - Google Patents

銀リン酸系ガラス組成物及び封着材料 Download PDF

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【課題】環境に有害な鉛やハロゲンを含有させることなく、低温で封着可能な銀リン酸系ガラス組成物と、それを用いた封着材料を提供する。【解決手段】モル%で、Ag2O 38〜48%、P2O520〜30%、Nb2O50〜7%(ただし、0%を含まない)、TeO220〜35%、ZnO 1〜5%を含有することを特徴とする銀リン酸系ガラス組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、有害な鉛やハロゲンを含有することなく、400℃以下の低温で気密封着することが可能な銀リン酸系ガラスと、それを用いた封着材料に関するものである。
半導体集積回路、水晶振動子、平面表示装置やLD用ガラス端子等には、封着材料が使用される。
上記の封着材料には、化学的耐久性および耐熱性が要求されるため、樹脂系の接着剤ではなくガラス系封着材料が用いられている。ガラス系封着材料には、機械的強度、流動性、耐候性等の特性が要求されるが、熱に弱い素子を搭載する電子部品の封着には、封着温度をできる限り低くすることが要求される。具体的には、400℃以下での封着が要求される。それゆえ、上記特性を満足するガラスとして、融点を下げる効果が極めて大きいPbOを多量に含有する鉛硼酸系ガラスが広く用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
特開昭63−315536号公報 特開平6−24797号公報 特許4573204号公報
近年、鉛硼酸系ガラスに含まれるPbOに対して環境上の問題が指摘されており、鉛硼酸系ガラスからPbOを含まないガラスに置き換えることが望まれている。そのため、鉛硼酸系ガラスの代替品として、様々な低融点ガラスが開発されている。中でも特許文献2に記載されているBi−B系ガラスは、鉛硼酸系ガラスの代替候補として期待されているが、封止温度が450℃以上と高く、より低温で封止が必要な用途には用いることが出来ない。
また、特許文献3では、400℃以下の低温で封着可能なガラスとしてAgI−AgO系ガラスが開示されているが、ハロゲンも環境上の問題が指摘されており、ハロゲンを含有しないガラスが望まれている。
以上に鑑み、本発明は、環境に有害な鉛やハロゲンを含有させることなく、低温で封着可能な銀リン酸系ガラス組成物と、それを用いた封着材料を提供することを目的とする。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物は、モル%で、AgO 38〜48%、P 20〜30%、Nb 0〜7%(ただし、0%を含まない)、TeO 20〜35%、ZnO 1〜5%を含有することを特徴とする。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物は、必須成分としてZnO及びNbを含有させているため、低融点で、しかも耐水性に優れている。また、一般に、ガラスの融点を低くすると、ガラス化しなかったり、乳白化や分相が生じて均質なガラスが得られにくい傾向にあるが、Pを必須成分として20%以上含有しているため、ガラスが安定し、均質なガラスを得ることが出来る。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物は、実質的にPbO、ハロゲンを含有しないことが好ましい。ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン単体の他、ハロゲン化物を含む。ハロゲン化物とは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物のことである。ここで、本発明でいう「実質的にPbO、ハロゲンを含有しない」とは、ガラス組成中のPbO、ハロゲンの含有量が各々1000ppm以下の場合を指す。
本発明の封着材料は、上記の銀リン酸系ガラス組成物からなるガラス粉末 50〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜50体積%とを含有することを特徴とする。
環境に有害な鉛やハロゲンを含有させることなく、低温で封着可能な銀リン酸系ガラス組成物と、それを用いた封着材料を提供することができる。
マクロ型示差熱分析装置により得られる測定曲線を示す模式図である。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物は、モル%で、AgO 38〜48%、P 20〜30%、Nb 0〜7%(ただし、0%を含まない)、TeO 20〜35%、ZnO 1〜5%を含有する。ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に示す。なお、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り、「%」は「モル%」を意味する。
AgOは、軟化点を下げるための主要成分であると共に、水に溶け難いためにガラスの耐水性を高める効果があり、その含有量は38〜48%であり、好ましくは40〜46%である。AgOの含有量が少な過ぎると、ガラスの粘性(軟化点等)が高くなり、低温封着が困難になると共に耐水性が低下し易くなる。一方、AgOの含有量が多過ぎるとガラスが熱的に不安定になり、溶融時又は焼成時にガラスが失透し易くなる
は、ガラスネットワークを形成する成分であり、その含有量は20〜30%であり、好ましくは21〜28%、より好ましくは22〜27%である。Pの含有量が少な過ぎると、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時又は焼成時にガラスが失透し易くなる。一方、Pの含有量が多過ぎると、ガラスの粘性(軟化点等)が高くなり、低温封着が困難になると共に耐水性が低下し易くなる。
Nbは、ガラスを熱的に安定化させるとともに、耐水性及び流動性の向上に効果があり、その含有量は0〜7%(ただし、0%を含まない)であり、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜4%である。Nbを含有していないとガラスが熱的に不安定になり、溶融時または焼成時にガラスが失透しやすくなると共に、耐水性が低下し易くなる。一方、Nbの含有量が多過ぎると、ガラスの粘性(軟化点等)が高くなり、低温封着が困難になり易い。
TeOは、軟化点を下げると共に、耐水性の向上に効果があり、その含有量は20〜35%であり、好ましくは22〜33%である。TeOの含有量が少な過ぎると、ガラスの粘性(軟化点等)が高くなり、低温封着が困難になると共に、耐水性が低下し易くなる。一方、TeOの含有量が多過ぎると、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時又は焼成時にガラスが失透し易くなる。また、流動性が低下しやすくなる。
ZnOは、軟化点を下げる効果があり、その含有量は1〜5%であり、好ましくは1〜4%である。ZnOの含有量が少な過ぎると、ガラスの粘性(軟化点等)が高くなり、低温封着が困難になり易くなる。一方、ZnOの含有量が多過ぎるとガラスが熱的に不安定になり溶融時または焼成時にガラスが失透し易くなる。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物は、上記成分以外にも、ガラス組成中に下記の成分を含有してもよい。
WOは、ガラスを熱的に安定化させて、失透を抑制する成分であると共に、耐水性を高める成分であり、その含有量は好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。WOの含有量が多過ぎると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、逆にガラスが熱的に不安定になる。
BaO、SrO、CaOは、ガラスを熱的に安定化させると共に、耐水性を高める成分であり、それらの含有量は合量で0〜5%が好ましい。それらの含有量が多過ぎると、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時又は焼成時にガラスが失透し易くなる。
LiO、NaO、KOは、軟化点を下げる効果があり、それらの含有量は合量で0〜5%が好ましい。それらの含有量が多過ぎると、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時又は焼成時にガラスが失透し易くなると共に、耐水性が低下し易くなる。
Gaは、ガラスを熱的に安定化させると共に、耐水性を高める成分であるが、非常に高価であることから、その含有量は0.01%未満が好ましく、含有しないことがより好ましい。
MnO、Fe、NiO、CuOはガラスを熱的に安定化させて、失透を抑制する成分であり、その含有量は各々2%未満まで添加可能である。これらの含有量が多すぎると、ガラスが熱的に不安定になり、溶融時又は焼成時にガラスが失透し易くなる。
上記成分に加えて、ガラス組成中にMgO、SiO、B、Al、Bi等の他成分を合量で10%まで添加してもよい。
本発明の封着材料は、上記の銀リン酸系ガラス組成物からなるガラス粉末に、機械的強度を向上、或いは熱膨張係数を調整するために、耐火性フィラーを含有してもよい。その混合割合は、ガラス粉末50〜100体積%、耐火性フィラー0〜50体積%であり、ガラス粉末70〜99体積%、耐火性フィラー1〜30体積%がより好ましく、ガラス粉末80〜95体積%、耐火性フィラー5〜20体積%が更に好ましい。耐火性フィラーの含有量が多過ぎると、相対的にガラス粉末の割合が少なくなるため、所望の流動性を確保し難くなる。
耐火性フィラーは、特に限定されず、種々の材料を選択することができるが、上記のガラス粉末と反応し難いものが好ましい。
具体的には、耐火性フィラーとして、NbZr(PO、ZrWO(PO,リン酸ジルコニウム、ジルコン、ジルコニア、酸化錫、チタン酸アルミニウム、石英、β−スポジュメン、ムライト、チタニア、石英ガラス、β−ユークリプタイト、β−石英、ウイレマイト、コーディエライト、Sr0.5Zr(PO等のNaZr(PO型固溶体等を使用することができる。尚、これらの耐火性フィラーは、単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。なお、耐火性フィラーの粒径は平均粒子径D50が0.2〜20μm程度のものを使用することが好ましい。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物及び封着材料の軟化点は350℃以下、特に300℃以下が好ましい。軟化点が高過ぎると、ガラスの粘性が高くなるため、焼成温度(特に封着温度等)が上昇して、焼成時に素子を傷めるおそれがある。なお、軟化点の下限は特に限定されないが、現実的には180℃以上である。ここで、「軟化点」とは、平均粒子径D50が0.5〜20μmのガラス粉末を測定試料として、マクロ型示差熱分析装置で測定した値を指す。測定条件としては、室温から測定を開始し、昇温速度は10℃/分とする。なお、マクロ型示差熱分析装置で測定した軟化点は、図1に示す測定曲線における第四屈曲点の温度(Ts)を指す。
次に本発明の銀リン酸系ガラス組成物を用いたガラス粉末の製造方法、及び本発明の銀リン酸系ガラス組成物を封着材料として使用する方法の一例について説明する。
まず、上記組成を有するように調合した原料粉末を約700〜900℃で1〜2時間程度、均質なガラスが得られるまで溶融する。次いで、溶融ガラスをフィルム状等に成形した後、粉砕し、分級することにより、本発明の銀リン酸系ガラス組成物からなるガラス粉末を作製する。なお、ガラス粉末の平均粒子径D50は2〜20μm程度であることが好ましい。必要に応じて、ガラス粉末に各種耐火性フィラー粉末を添加する。
次いでガラス粉末(あるいはガラス粉末と耐火性フィラー粉末の混合粉末)にビークルを添加して混練することによりガラスペーストを調整する。ビークルは、主に有機溶剤と樹脂とからなり、樹脂はペーストの粘性を調整する目的で添加される。また、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤等を添加することもできる。
有機溶剤は、沸点が低く(例えば、沸点が300℃以下)、且つ焼成後の残渣が少ないことに加えて、銀リン酸系ガラスを変質させないものが好ましく、その含有量は10〜40質量%であることが好ましい。有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、トルエン、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、炭酸ジメチル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、酢酸イソアミル、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン等を使用することが好ましい。また、有機溶剤として、高級アルコールを使用することがさらに好ましい。高級アルコールは、それ自身が粘性を有しているために、ビークルに樹脂を添加しなくても、ペースト化することができる。また、ペンタンジオールとその誘導体、具体的にはジエチルペンタンジオール(C20)も粘性に優れるため、溶剤に使用することができる。
樹脂は、分解温度が低く、焼成後の残渣が少ないことに加えて、銀リン酸系ガラスを変質させ難いものが好ましく、その含有量は0.1〜20質量%であることが好ましい。樹脂として、ニトロセルロース、ポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレンカーボネート、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)等を使用することが好ましい。
次いで、ペーストを金属、セラミック、または、ガラスからなる第一の部材と、金属、セラミック、または、ガラスからなる第二の部材との封着箇所にディスペンサーやスクリーン印刷機等の塗布機を用いて塗布し、乾燥させ、200〜400℃で熱処理する。この熱処理により、ガラス粉末が軟化流動して第一及び第二の部材を封着する。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物及び封着材料は、封着以外にも被覆、充填等の目的で使用できる。また、ペースト以外の形態、具体的には粉末、グリーンシート、タブレット等の状態で使用することもできる。
実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。表1及び2は、本発明の実施例(試料No.1〜7)及び比較例(試料No.8〜10)を示している。
まず、表中に示したガラス組成となるように各種酸化物、炭酸塩等のガラス原料を調合し、ガラスバッチを準備した後、このガラスバッチを白金坩堝に入れ、700〜900℃で1〜2時間溶融した。次に、溶融ガラスの一部をTMA(押棒式熱膨張係数測定)用サンプルとしてステンレス製の金型に流し出し、その他の溶融ガラスを水冷ローラーでフィルム状に成形した。なお、TMA用サンプルは、成形後に所定の徐冷処理(アニール)を行った。最後に、フィルム状のガラスをボールミルで粉砕した後、目開き75μmの篩を通過させて、平均粒子径D50が約10μmのガラス粉末を得た。
その後、耐火性フィラーを混合するNo.3、6、9の試料については、表中に示した通りに、得られたガラス粉末と耐火性フィラー粉末を混合し、混合粉末を得た。
耐火性フィラー粉末には、NbZr(PO(表中ではNZPと表記)、ZrWO(PO(表中ではZWPと表記)を用いた。また、耐火性フィラー粉末の平均粒子径D50は約10μmであった。
得られた混合粉末を320℃にて10分間焼成し、焼成体を得た。得られた焼成体をTMA用サンプルとした。
No.1〜10の試料について、ガラス転移点、熱膨張係数、軟化点、流動性、及び、耐失透性を評価した。
ガラス転移点及び熱膨張係数(30〜150℃)は、TMA用サンプルをTMA装置により測定した。
軟化点はマクロ型示差熱分析装置により測定した。測定雰囲気は大気中、昇温速度は10℃/分とし、室温から測定を開始した。
流動性は次のようにして評価した。粉末試料1gを、直径10mmの金型に入れプレス成型した後に、ステンレス板上で320℃にて10分間焼成した。焼成体の流動径が9mm以上であるものを「◎」、8.8〜9mm未満のものを「○」、8.8mm未満のものを「×」として評価した。
耐失透性は次のようにして評価した。光学顕微鏡(倍率100倍)を用いて、焼成体の表面状態を観察した。焼成体の表面に結晶が認められなかったものを「○」、焼成体の表面に結晶が認められたものを「×」として評価した。
表1から明らかなように、本発明の実施例であるNo.1〜7の試料は、流動性、及び、耐失透性に優れていた。一方、比較例であるNo.8の試料はNbを含有していないため、No.10の試料はZnOを過剰に含有しているため、流動性、及び、耐失透性に劣っていた。また、No.9の試料はZnOを含有していないため、流動性に劣っていた。
本発明の銀リン酸系ガラス組成物及び封着材料は、半導体集積回路、水晶振動子、平面表示装置やLD用ガラス端子の封着に好適である。

Claims (3)

  1. モル%で、AgO 38〜48%、P 20〜30%、Nb 0〜7%(ただし、0%を含まない)、TeO 20〜35%、ZnO 1〜5%を含有することを特徴とする銀リン酸系ガラス組成物。
  2. 実質的にPbO、ハロゲンを含まないことを特徴とする請求項1に記載の銀リン酸系ガラス組成物。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の銀リン酸系ガラス組成物からなるガラス粉末 50〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜50体積%とを含有することを特徴とする封着材料。
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