JP2018118865A - 精製シリカの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
高純度シリコンの製造方法として、例えば、金属シリコンから製造された高純度のシリコン塩化物(トリクロロシラン)を原料として用いる方法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の方法によると、非常に高純度のシリコンを得ることができる。しかし、この方法は、工程が煩雑でかつ高コストであるという問題がある。このような事情下において、高純度のシリコンを、低コストかつ大量に製造することのできる技術が望まれている。
これを解決すべく、二酸化ケイ素を含有しかつ多孔質で微細構造を有する原料を精製して高純度シリカを製造し、次いで、この高純度シリカを原料としてシリコンを生成し、得られたシリコンにレーザを照射することなどによって、高純度シリコンを製造する方法が提案されている(特許文献2)。
また、シリコンの原料となる高純度シリカを製造する方法として、(B)液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分を得るシリカ回収工程、を含み、前記工程(B)において、ケイ酸アルカリ水溶液、及び鉱酸の少なくともいずれか一方と過酸化水素を混合することを特徴とする高純度シリカの製造方法が提案されている(特許文献3)。
そこで、本発明の目的は、不純物(Al、Fe、Ti)の含有率の小さい精製シリカを、低コストでかつ簡易に製造することのできる方法を提供することである。
[1] (B)液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分を得るシリカ析出工程と、(C)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と鉱酸と過酸化水素とアンモニウム塩を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記酸性スラリーに対して固液分離を行い、SiO2を含む固形分である精製シリカと、不純物を含む液分を得る酸洗浄工程、を含むことを特徴とする精製シリカの製造方法。
[2] 工程(B)において、上記ケイ酸アルカリ水溶液と上記鉱酸の混合前、混合中及び混合後のいずれか1つ以上の時点において、上記ケイ酸アルカリ水溶液及び上記鉱酸の少なくともいずれか一方と、アンモニウム塩を混合する前記[1]に記載の精製シリカの製造方法。
[3] 工程(B)において、上記ケイ酸アルカリ水溶液と上記鉱酸の混合前、混合中及び混合後のいずれか1つ以上の時点において、上記ケイ酸アルカリ水溶液及び上記鉱酸の少なくともいずれか一方と、サリチル酸もしくはその塩、及び、スルホサリチル酸もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種を混合する前記[1]又は[2]に記載の精製シリカの製造方法。
[4] (D)工程(C)で得られた精製シリカと水を混合して、該精製シリカに残存する不純物を溶解させた後、固液分離を行い、精製シリカと、不純物を含む液分を得る水洗浄工程、を含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の精製シリカの製造方法。
[5] 工程(D)で得られた精製シリカ中、Al、Fe、及びTiの含有率(質量換算)がそれぞれ0.5ppm以下である前記[4]に記載の精製シリカの製造方法。
また、本発明の精製シリカの製造方法によれば、操作が簡易であり、処理効率が高いことなどに起因して、低い製造コストで精製シリカを得ることができる。
なお、以下の工程(A1)〜工程(D)中、工程(B)及び(C)は、本発明において必須の工程である。工程(A)は、シリカ含有鉱物を原料としてケイ酸アルカリ水溶液を調製する場合に追加される工程である。工程(A1)、(A2)、(B1)、及び(D)は、本発明において必須ではなく、任意で追加可能な工程である。
工程(A1)は、シリカ含有鉱物(岩石状又は粉末状)を水洗して、粘土分及び有機物を除去する工程である。水洗後のシリカ含有鉱物は、通常、フィルタープレス等を用いて、さらに脱水させる。
シリカ含有鉱物としては、珪藻土、珪質頁岩等が挙げられる。シリカ含有鉱物は、アルカリに対する溶解性が高いことが望ましい。
ここで、珪藻土とは、珪藻が海底や湖底に沈積し、長い年月の間に体内の原形質その他の有機物が分解し、非晶質シリカを主体とした珪藻殻が集積して堆積したものである。
珪質頁岩とは、珪質の生物遺骸等に由来する頁岩である。すなわち、海域には、珪質の殻を有する珪藻などのプランクトンが生息するが、このプランクトンの死骸が海底中に堆積すると、死骸中の有機物の部分は徐々に分解され、珪質(シリカ:SiO2)の殻のみが残る。この珪質の殻(珪質堆積物)が、時間の経過や温度・圧力の変化などに伴い、続成作用により変質して、硬岩化することにより珪質頁岩となる。なお、珪質堆積物中のシリカは、続成作用によって、非晶質シリカから、結晶化してクリストバライト、トリデイマイトへ、さらに石英へと変化する。
珪質頁岩は、オパールAより結晶化が進んだオパールCTまたはオパールCを主に含む。オパールCTとは、クリストバライト構造とトリディマイト構造からなるシリカ鉱物である。オパールCとは、クリストバライト構造からなるシリカ鉱物である。このうち、本発明では、オパールCTを主とする珪質頁岩が好ましく用いられる。
本発明で用いるシリカ含有鉱物(珪藻土、珪質頁岩等)のシリカ(SiO2)の含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。該含有率が70質量%以上であると、より高純度のシリカを低コストで製造することができる。
珪質頁岩等のシリカ含有鉱物は、粉砕装置(例えば、ジョークラッシャー、トップグラインダーミル、クロスビーターミル、ボールミル等)を用いて、適宜粉砕して用いてもよい。
工程(A2)は、シリカ含有鉱物を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成し、シリカ含有鉱物に含まれる有機物を除去する工程である。
なお、工程(A1)と工程(A2)の双方を実施する場合、その順序は特に限定されないが、有機物の除去効率の観点から工程(A1)を先に行うことが好ましい。
工程(A)は、シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が10.0質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーに対して固液分離を行い、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る工程である。
ここで、ケイ酸アルカリ水溶液とは、化学式中にケイ酸を含む物質を含有するアルカリ性の水溶液をいい、例えば、一般式:M2O・nSiO2・xH2O(一般式中、Mはアルカリ金属原子であり、好ましくはナトリウム又はカリウムである。n及びxは、通常1〜20の数である。)で表されるものである。
シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合してなるアルカリ性スラリーのpHは、11.5以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上である。該pHが11.5未満であると、液分中にシリカを十分に溶解させることができず、シリカがシリカ含有鉱物中に残存してしまうため、最終的に得られる精製シリカ(工程(C)または工程(D)で得られる精製シリカ)の量が少なくなる。
pHを上記数値範囲内に調整するためのアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられる。
スラリーの固液比(アルカリ水溶液1リットルに対するシリカ含有鉱物の質量)は、好ましくは100〜500g/リットル、より好ましくは200〜400g/リットルである。該固液比が100g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が400g/リットルを超えると、液分中にシリカを十分に溶解させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、30〜90分間)攪拌される。
なお、本工程においてアルカリ性スラリーを得る際の液温は、エネルギーコストの観点から、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃、特に好ましくは10〜40℃である。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
本工程は、工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満に調整し、液分中のSi以外の不純物(例えば、Al、Fe)を析出させた後、固液分離を行い、Siを含むケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る工程である。
なお、本工程で回収されずに液分中に残存する不純物は、工程(B)以降の工程で回収される。
本工程において、酸との混合後の液分のpHは、10.3を超え、11.5未満、好ましくは10.4〜11.0、特に好ましくは10.5〜10.8である。該pHが10.3以下であると、不純物と共にSiも析出してしまう。一方、該pHが11.5以上では、不純物が十分に析出せず、液分中に残存する不純物の量が多くなる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
このうち、固形分(ケーキ)は、不純物(例えば、Al、及びFe)を含むものである。
液分は、Siを含むものであり、次の工程(B)で処理される。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃、特に好ましくは10〜40℃である。液温を上記範囲内にすることにより、処理効率を高めることができる。
本工程は、液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と、10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分を得る工程である。
なお、沈降性シリカは、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸との混合と同時に生成する。
本工程において用いられるケイ酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、具体的には前工程(工程(A)または工程(B1))で得られたケイ酸アルカリ水溶液、及び水ガラス等が挙げられる。
本発明で用いられる水ガラスは、市販のものを使用することができ、JIS規格により規定される1号、2号、3号の他に、各水ガラスメーカーで製造販売されているJIS規格外の製品も使用することができる。
ケイ酸アルカリ水溶液中に含まれるSiの濃度は、10.0質量%以上、好ましくは
10.0〜20.0質量%、より好ましくは12.0〜18.0質量%、特に好ましくは13.0〜16.0質量%である。Siの濃度が10.0質量%未満であると、シリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、最終的に得られる精製シリカ(工程(C)または工程(D)で得られる精製シリカ)の量が低下する。
Siの濃度が20質量%を超えると、ケイ酸アルカリ水溶液のハンドリング(輸送等)が悪化するとともに、不純物の除去が不十分となる場合がある。
鉱酸の濃度は、10.0体積%以上、より好ましくは10.0〜20.0体積%、特に好ましくは10.0〜15.0体積%である。該濃度が、10.0体積%未満の場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。このゲル状シリカが生成すると、最終的に得られる精製シリカ中の不純物の含有率が大きくなる。該濃度が20.0体積%を超えると、コストの面から好ましくない。
本工程において用いられるケイ酸アルカリ水溶液及び鉱酸の各量は、ケイ酸アルカリ水溶液のSiの濃度や、鉱酸の濃度によっても異なるが、析出した非ゲル状の沈降性シリカが、不純物を含む液分に十分に浸漬された状態を維持することができる量であればよい。例えば、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の質量比(ケイ酸アルカリ水溶液/鉱酸)は、好ましくは0.1〜2.0、より好ましくは0.2〜1.0である。該比が0.1以上であれば、薬剤コストの過度の上昇を防ぐことができる。該比が2.0以下であれば、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成することを防ぐことができる。
また、混合する際のpHは、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下である。pHが1.0を超えると、シリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、最終的に得られる精製シリカの量が低下する。
また、鉱酸中へのケイ酸アルカリ水溶液の流出速度は限定されないが、混合する際にpHが1.0を超え、かつ流出速度が大きい場合には、沈降性シリカが生成しない、あるいは沈降性シリカとゲル状シリカの両方が生成するおそれがある。
本工程において、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合する際の沈降性シリカの析出温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。80℃を超えると、エネルギーコストが上昇するとともに、設備の腐食が生じ易くなる。
上記ケイ酸アルカリ水溶液中のSiを沈降性シリカとして析出させた後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分に分離する。得られた沈降性シリカはゲル状ではなく、粒子状であるため、固液分離に要する時間を短くすることができる。
本工程において用いられるアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩や、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム等の有機アンモニウム塩が挙げられる。
ケイ酸アルカリ水溶液または鉱酸と、アンモニウム塩の混合方法は、特に限定されるものではなく、(1)ケイ酸アルカリ水溶液とアンモニウム塩を混合し、次いで得られた混合物と鉱酸を混合する方法、(2)鉱酸とアンモニウム塩を混合し、次いで得られた混合物とケイ酸アルカリ水溶液を混合する方法、(3)ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合し、次いで得られた混合物とアンモニウム塩を混合する方法、(4)ケイ酸アルカリ水溶液と、鉱酸と、アンモニウム塩を同時に混合する方法、(5)ケイ酸アルカリ水溶液とアンモニウム塩の混合と、鉱酸とアンモニウム塩の混合を別々に行い、次いで、ケイ酸アルカリ水溶液とアンモニウム塩の混合物と、鉱酸とアンモニウム塩の混合物を混合する方法等が挙げられる。中でも、工程(B)の初期に不純物(特にTi)の低減を図るという観点から(1)が好ましい。
なお、アンモニウム塩の混合量は、ケイ酸アルカリ水溶液及び鉱酸の両方に混合する場合、その合計量である。
中でも、得られる精製シリカの不純物(例えば、Al、Fe、Ti)の含有率をより小さくする観点から、スルホサリチル酸を混合することが好ましい。
ケイ酸アルカリ水溶液または鉱酸と、サリチル酸等の混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、アンモニウム塩に代えてサリチル酸等を用いる以外は上述したケイ酸アルカリ水溶液または鉱酸と、アンモニウム塩の混合方法と同様の方法で混合することができる。
なお、サリチル酸等の混合量は、ケイ酸アルカリ水溶液及び鉱酸の両方に混合する場合、その合計量である。
ケイ酸アルカリ水溶液または鉱酸と、過酸化水素の混合方法は特に限定されるものではなく、例えば、アンモニウム塩に代えて過酸化水素を用いる以外は上述したケイ酸アルカリ水溶液または鉱酸と、アンモニウム塩の混合方法と同様の方法で混合することができる。
なお、過酸化水素の混合量は、ケイ酸アルカリ水溶液及び鉱酸の両方に混合する場合、その合計量である。
また、工程(B)において、上述したサリチル酸等、アンモニウム塩及び過酸化水素は、1種を単独で混合してもよく、2種以上を組み合わせて混合してもよい。また、2種以上を組み合わせて混合する場合において、その混合方法は、特に限定されるものではない。
本工程は、工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と鉱酸と過酸化水素とアンモニウム塩を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe、Ti、B、P)を溶解させた後、上記酸性スラリーに対して固液分離を行い、SiO2を高い含有率で含む固形分である精製シリカと、不純物を含む液分を得る工程である。
工程(B)で得られたSiO2を含む固形分は、Al、Fe、Ti、B、P等の不純物が低減された精製シリカである。
本工程における酸性スラリーのpHは、3.0未満、好ましくは2.0以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(B)で得られた固形分にわずかに残存するAl、Fe、Ti等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のシリカ含有率を上昇させることができるため、さらに高純度の精製シリカを得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための鉱酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、酸性スラリーを固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、特に限定されるものではないが、エネルギーコストの観点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20℃〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
また、酸洗浄工程後の液分を回収し、工程(B)に用いられる鉱酸、または工程(C)に用いられる鉱酸として再利用してもよい。
本工程において用いられるアンモニウム塩としては、工程(B)において用いられるアンモニウム塩と同様のものが挙げられる。
これらの混合方法は特に限定されるものではなく、(1)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と過酸化水素とアンモニウム塩を混合し、次いで得られた混合物と鉱酸を混合する方法、(2)鉱酸と過酸化水素とアンモニウム塩を混合し、次いで得られた混合物と工程(B)で得られたSiO2を含む固形分を混合する方法、(3)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と鉱酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素とアンモニウム塩を混合する方法、(4)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と鉱酸と過酸化水素とアンモニウム塩を同時に混合する方法等が挙げられる。中でも、工程(C)の初期に不純物(特にTi)の低減を図るという観点から、(1)が好ましい。
アンモニウム塩の混合量は、鉱酸1リットルに対する質量として、好ましくは5〜400g/リットル、より好ましくは10〜300g/リットル、さらに好ましくは20〜200g/リットル、特に好ましくは30〜100gである。該量が5g/リットル以上であれば、沈降性シリカの不純物(例えばTi)の含有率をより小さくすることができる。該量が400g/リットルを超えると、沈降性シリカの不純物(例えばTi)の含有率の低減効果が頭打ちとなる。
本工程は、工程(C)で得られた精製シリカと水を混合して、該精製シリカに残存する不純物を溶解させた後、固液分離を行い、不純物がより低減された精製シリカと、不純物を含む液分を得る工程である。
精製シリカと水を混合(水洗浄)することにより、該固形分にわずかに残存する不純物(例えば、鉱酸として硫酸を使用した場合における、硫酸由来の硫黄または不純物として含まれるナトリウム等)を溶解して液分中へ移行させることができる。これにより、固形分中のシリカの含有率を上昇させることができるため、さらに高純度のシリカを得ることができる。
混合後、精製シリカと水を混合してなるスラリーを、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分(精製シリカ)と液分に分離する。
また、工程(D)(水洗浄工程)の液分を回収し、工程(A1)、工程(A)、工程(B)、工程(C)、または工程(D)に用いられる水として再利用してもよい。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理で回収される不純物は、ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、及び有機物(C)からなる群より選ばれる一種以上である。
イオン交換処理は、キレート樹脂、イオン交換樹脂等のイオン交換媒体を用いて行なうことができる。
イオン交換媒体の種類は、除去対象元素に対する選択性を考慮して、適宜定めればよい。例えば、ホウ素を除去する場合、グルカミン基を有するキレート樹脂や、N−メチルグルカミン基を有するイオン交換樹脂等を用いることができる。
イオン交換媒体の形態は、特に限定されるものではなく、ビーズ状、繊維状、クロス状等が挙げられる。イオン交換媒体への液分の通液方法もなんら限定されるものではなく、例えばカラムにキレート樹脂またはイオン交換樹脂を充填して連続的に通液する方法などを用いることができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行う際の液温は、各処理に用いる材料の耐用温度以下であれば、特に限定されない。
また、得られた精製シリカをアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム)に溶解させ、工程(B)のケイ酸アルカリ水溶液として用い、工程(B)から工程(D)の一連の操作を複数回繰り返すことによって、より高純度のシリカを得ることができる。
本発明の製造方法で得られる精製シリカ中のSiO2の含有率は、好ましくは99.0質量%以上である。また、精製シリカ中、Al、Fe、及びTiの含有率は、それぞれ、好ましくは0.5ppm以下、より好ましくは0.4ppm以下、特に好ましくは0.3ppm以下である。
なお、本明細書中、ppmは質量基準である。
[実施例1]
Si濃度13.1質量%の水ガラス溶液(富士化学社製:SiO2/Na2O(モル比)=3.20)66.2gを、硫酸濃度10.7体積%(水165.6mlに濃硫酸20mlを混合したもの)の硫酸200gに滴下し、常温(25℃)下で沈降性シリカを析出させた後、減圧下でブフナー漏斗を用いて固液分離し、SiO2を含む固形分(沈降性シリカ)38.4gと、不純物を含む液分227.8gを得た。なお、pHは滴下終了時まで1.0以下に保った(シリカ析出工程)。
常温(25℃)下で、得られたSiO2を含む固形分(沈降性シリカ)に、硫酸濃度10.7体積%の硫酸200gと、表1に示す量の過酸化水素(和光純薬工業社製、特級)と塩化アンモニウム(和光純薬工業社製、特級)を添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した(酸洗浄工程)。ついで、固液分離によって得られた固形分と蒸留水を混合した後、固液分離を行った(水洗浄工程)。固液分離によって得られた固形分を105℃で1日乾燥させ、精製シリカ(高純度シリカ)18.5gを得た。
得られた精製シリカについて、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、及びチタン(Ti)の含有率を測定した。該含有率の測定は、以下のようにして行った。まず、白金るつぼに、精製シリカ5.00gと、硝酸(和光純薬工業社製、特級)25mLと、フッ化水素酸(和光純薬工業社製、特級、35%)20mLを添加した後、ホットプレートを用いて140℃で3時間、加熱溶解した。次いで、蒸留水5mLと塩酸(和光純薬工業社製、特級、36%)2mLを加えた。5分経過後、放冷し、蒸留水を加えて100mLにメスアップして得られた溶液について、ICP発光分析装置(堀場製作所社製、商品名「Ultima2」)を用いて、精製シリカに含まれているアルミニウム(Al)等の含有率を測定した。
シリカ析出工程において、硫酸の代わりに、硫酸200gと表1に示す量の塩化アンモニウムを予め混合してなる混合液を用いる以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
[実施例3]
シリカ析出工程において、硫酸の代わりに、該硫酸200gと表1に示す量の5−スルホサリチル酸二水和物(和光純薬工業社製、特級)を予め混合してなる混合液を用いる以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
[実施例4]
シリカ析出工程において、水ガラス溶液の代わりに、該水ガラス溶液66.2gと表1に示す量の5−スルホサリチル酸二水和物を予め混合してなる混合液を用いる以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
シリカ析出工程において、水ガラス溶液の代わりに、該水ガラス溶液66.2gと表1に示す量の5−スルホサリチル酸二水和物を予め混合してなる混合液を用い、かつ、硫酸の代わりに、該硫酸200gと表1に示す量の塩化アンモニウムを予め混合してなる混合液を用いる以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
[実施例6]
シリカ析出工程において、水ガラス溶液の代わりに、該水ガラス溶液66.2gと表1に示す量の塩化アンモニウムを予め混合してなる混合液を用い、かつ、硫酸の代わりに、該硫酸200gと表1に示す量の塩化アンモニウムを予め混合してなる混合液を用いる以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
[実施例7]
シリカ析出工程において、水ガラス溶液の代わりに、該水ガラス溶液66.2gと表1に示す量の5−スルホサリチル酸二水和物を予め混合してなる混合液を用い、かつ、硫酸の代わりに、該硫酸200gと表1に示す量の5−スルホサリチル酸二水和物を予め混合してなる混合液を用いる以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
酸洗浄工程において、塩化アンモニウムを添加しない以外は実施例1と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
[比較例2]
酸洗浄工程において、塩化アンモニウムを添加しない以外は実施例2と同様にして、精製シリカ18.5gを得た。得られた精製シリカ中のアルミニウム(Al)等の含有率を実施例1と同様に測定した。
結果を表1に示す。
Claims (5)
- (B)液分中のSi濃度が10.0質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液と10.0体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のSiを非ゲル状の沈降性シリカとして析出させた後、固液分離を行い、SiO2を含む固形分と、不純物を含む液分を得るシリカ析出工程と、
(C)工程(B)で得られたSiO2を含む固形分と鉱酸と過酸化水素とアンモニウム塩を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記酸性スラリーに対して固液分離を行い、SiO2を含む固形分である精製シリカと、不純物を含む液分を得る酸洗浄工程、を含むことを特徴とする精製シリカの製造方法。 - 工程(B)において、上記ケイ酸アルカリ水溶液と上記鉱酸の混合前、混合中及び混合後のいずれか1つ以上の時点において、上記ケイ酸アルカリ水溶液及び上記鉱酸の少なくともいずれか一方と、アンモニウム塩を混合する請求項1に記載の精製シリカの製造方法。
- 工程(B)において、上記ケイ酸アルカリ水溶液と上記鉱酸の混合前、混合中及び混合後のいずれか1つ以上の時点において、上記ケイ酸アルカリ水溶液及び上記鉱酸の少なくともいずれか一方と、サリチル酸もしくはその塩、及び、スルホサリチル酸もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種を混合する請求項1又は2に記載の精製シリカの製造方法。
- (D)工程(C)で得られた精製シリカと水を混合して、該精製シリカに残存する不純物を溶解させた後、固液分離を行い、精製シリカと、不純物を含む液分を得る水洗浄工程、を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の精製シリカの製造方法。
- 工程(D)で得られた精製シリカ中、Al、Fe、及びTiの含有率(質量換算)がそれぞれ0.5ppm以下である請求項4に記載の精製シリカの製造方法。
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