以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[基板処理システム]
図1に示されるように、基板処理システム1(基板処理装置)は、塗布現像装置2(基板処理装置)と、コントローラCnt1(制御部)とを備える。基板処理システム1には、露光装置100が併設されている。
塗布現像装置2は、露光装置100による露光処理の前に、感光性レジスト膜を含む種々の塗布膜をウエハW(基板)の表面Wa(図4等参照)に形成する処理を行う。塗布現像装置2は、露光装置100による感光性レジスト膜の露光処理後に、当該感光性レジスト膜の現像処理を行う。
ウエハWは、円板状を呈してもよいし、多角形など円形以外の板状を呈していてもよい。ウエハWは、一部が切り欠かれた切り欠き部を有していてもよい。切り欠き部は、例えば、ノッチ(U字形、V字形等の溝)であってもよいし、直線状に延びる直線部(いわゆる、オリエンテーション・フラット)であってもよい。ウエハWは、例えば、半導体基板、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。ウエハWの直径は、例えば200mm〜450mm程度であってもよい。
図1〜図3に示されるように、塗布現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インターフェースブロック6とを備える。キャリアブロック4、処理ブロック5及びインターフェースブロック6は、水平方向に並んでいる。
キャリアブロック4は、図1及び図3に示されるように、キャリアステーション12と、搬入搬出部13とを有する。キャリアステーション12は複数のキャリア11を支持する。キャリア11は、少なくとも一つのウエハWを密封状態で収容する。図3に示されるように、キャリア11の側面11aには、ウエハWを出し入れするための開閉扉(図示せず)が設けられている。キャリア11は、側面11aが搬入搬出部13側に面するように、キャリアステーション12上に着脱自在に設置される。
搬入搬出部13は、キャリアステーション12及び処理ブロック5の間に位置している。搬入搬出部13は、複数の開閉扉13aを有する。キャリアステーション12上にキャリア11が載置される際には、キャリア11の開閉扉が開閉扉13aに面した状態とされる。開閉扉13a及び側面11aの開閉扉を同時に開放することで、キャリア11内と搬入搬出部13内とが連通する。搬入搬出部13は、受け渡しアームA1を内蔵している。受け渡しアームA1は、キャリア11からウエハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウエハWを受け取ってキャリア11内に戻す。
処理ブロック5は、図1及び図2に示されるように、単位処理ブロック14〜17を有する。単位処理ブロック14〜17は、床面側から単位処理ブロック17、単位処理ブロック14、単位処理ブロック15、単位処理ブロック16の順に並んでいる。単位処理ブロック14〜17は、図3に示されるように、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2とを有する。
液処理ユニットU1は、各種の処理液又はガスをウエハWの表面Wa又は裏面Wb(図4等参照)に供給するように構成されている。熱処理ユニットU2は、例えば熱板によりウエハWを加熱し、加熱後のウエハWを例えば冷却板により冷却して熱処理を行うように構成されている。
単位処理ブロック14は、ウエハWの表面Wa上に下層膜を形成するように構成された下層膜形成ブロック(BCTブロック)である。単位処理ブロック14は、各ユニットU1,U2にウエハWを搬送する搬送アームA2を内蔵している(図2参照)。単位処理ブロック14の液処理ユニットU1は、下層膜形成用の塗布液をウエハWの表面Waに塗布して塗布膜を形成する。単位処理ブロック14の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、塗布膜を硬化させて下層膜とするための加熱処理が挙げられる。下層膜としては、例えば、反射防止(SiARC)膜が挙げられる。
単位処理ブロック15は、下層膜上に中間膜を形成するように構成された中間膜(ハードマスク)形成ブロック(HMCTブロック)である。単位処理ブロック15は、各ユニットU1,U2にウエハWを搬送する搬送アームA3を内蔵している(図2参照)。単位処理ブロック15の液処理ユニットU1は、中間膜形成用の塗布液を下層膜上に塗布して塗布膜を形成する。単位処理ブロック15の熱処理ユニットU2は、中間膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、塗布膜を硬化させて中間膜とするための加熱処理が挙げられる。中間膜としては、例えば、SOC(Spin On Carbon)膜、アモルファスカーボン膜が挙げられる。
単位処理ブロック16は、熱硬化性を有するレジスト膜を中間膜上に形成するように構成されたレジスト膜形成ブロック(COTブロック)である。単位処理ブロック16は、各ユニットU1,U2にウエハWを搬送する搬送アームA4を内蔵している(図2参照)。単位処理ブロック16の液処理ユニットU1は、レジスト膜形成用の塗布液を中間膜上に塗布して塗布膜を形成する。単位処理ブロック16の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、塗布膜を硬化させてレジスト膜とするための加熱処理(PAB:Pre Applied Bake)が挙げられる。なお、レジスト膜としては、感光性レジスト膜及び非感光性レジスト膜が含まれる。
単位処理ブロック17は、露光されたレジスト膜の現像処理を行うように構成された現像処理ブロック(DEVブロック)である。単位処理ブロック17は、各ユニットU1,U2にウエハWを搬送する搬送アームA5と、これらのユニットを経ずにウエハWを搬送する直接搬送アームA6とを内蔵している(図2参照)。単位処理ブロック17の液処理ユニットU1は、露光後のレジスト膜に現像液を供給してレジスト膜を現像する。単位処理ブロック17の液処理ユニットU1は、現像後のレジスト膜に洗浄液(リンス液)を供給して、レジスト膜の溶解成分を現像液と共に洗い流す。洗浄液としては、例えば純水(DIW:deionized water)が挙げられる。これにより、レジスト膜が部分的に除去され、レジストパターンが形成される。単位処理ブロック17の熱処理ユニットU2は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には、図2及び図3に示されるように、棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、床面から単位処理ブロック15にわたって設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウエハWを昇降させる。
処理ブロック5内におけるインターフェースブロック6側には、棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は床面から単位処理ブロック17の上部にわたって設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
インターフェースブロック6は、受け渡しアームA8及び研磨ユニットU12を内蔵しており、露光装置100に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11のウエハWを取り出して研磨ユニットU12に渡すように構成されている。受け渡しアームA8は、研磨ユニットU12での研磨処理が完了した後のウエハWを受け取って露光装置100に渡すように構成されている。受け渡しアームA8は、露光装置100での露光処理が完了した後のウエハWを受け取って棚ユニットU11に戻すように構成されている。
コントローラCnt1は、基板処理システム1を部分的又は全体的に制御する。コントローラCnt1は、露光装置100のコントローラCnt2(後述する)との間で信号の送受信が可能であり、各コントローラCnt1,Cnt2の連携により基板処理システム1及び露光装置100が制御される。コントローラCnt1の詳細については後述する。
[露光装置]
続いて、図4及び図5を参照して、露光装置100の構成について説明する。露光装置100は、塗布現像装置2との間でウエハWを授受して、ウエハWの表面Waに形成された感光性レジスト膜の露光処理(パターン露光)を行うように構成されている。例えば、露光装置100は、液浸露光等の方法により感光性レジスト膜(感光性被膜)の露光対象部分に選択的にエネルギー線を照射する。エネルギー線としては、例えばArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、g線、i線、又は極端紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)が挙げられる。
露光装置100は、ステージ101と、駆動機構102と、3つの昇降ピン103と、ポンプ104と、コントローラCnt2とを備える。露光装置100は、図示していないが、光源、レチクル等も備える。
ステージ101は、図4及び図5に示されるように、ウエハWよりも一回り大きい円形状を呈している。ステージ101には、厚さ方向に貫通する複数の吸引孔105と、厚さ方向に貫通する3つの貫通孔106とが設けられている。複数の吸引孔105は、図5に示されるように、ステージ101の中心から径方向において所定間隔を有すると共に放射状に拡がるように配置されている。各吸引孔105は、図4に示されるように、ポンプ104に接続されている。3つの貫通孔106は、略同一円周上に位置すると共に周方向において略等しい間隔を有するように位置している。
ステージ101の上面には、図4及び図5に示されるように、ウエハWを支持するように構成された複数の支持ピン107が立設されている。複数の支持ピン107は、図5に示されるように、吸引孔105及び貫通孔106とは異なる位置であって、ステージ101の中心から径方向において所定間隔を有すると共に放射状に拡がるように配置されている。
駆動機構102は、ステージ101の下方に配置されている。駆動機構102は、コントローラCnt2からの動作信号に基づいて動作し、昇降ピン103を上下動させるように構成されている。駆動機構102は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。昇降ピン103はそれぞれ、駆動機構102による昇降に応じて、対応する貫通孔106内に挿通可能である。昇降ピン103の先端が支持ピン107の先端よりも上方に突出している場合、昇降ピン103の先端上にウエハWを載置可能である。昇降ピン103の先端上に載置されたウエハWは、昇降ピン103の上下動に伴い昇降する。昇降ピン103の先端が支持ピン107の先端よりも下方に位置するように降下すると、ウエハWが昇降ピン103の先端から支持ピン107の先端へと受け渡され、支持ピン107の先端上においてウエハWが支持される。
ポンプ104は、コントローラCnt2からの動作信号に基づいて動作し、各吸引孔105を通じてエアを吸引するように構成されている。支持ピン107の先端上にウエハWが載置されている状態でポンプ104が動作すると、ウエハWが支持ピン107の先端に対して吸着され、ウエハWの裏面Wbが支持ピン107の先端に密着する。
コントローラCnt2は、露光装置100を部分的又は全体的に制御する。コントローラCnt2の構成は、下記に詳述するコントローラCnt1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
[研磨ユニット]
続いて、図6〜図9を参照して、研磨ユニットU12の構成について説明する。研磨ユニットU12は、図6に示されるように、回転保持部200と、研磨装置300とを備える。
回転保持部200は、回転部201と、シャフト202と、保持部203とを有する。回転部201は、コントローラCnt1からの動作信号に基づいて動作し、シャフト202を回転させるように構成されている。回転部201は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。保持部203は、円板状を呈するベース部材203aと、ベース部材203aの周縁から立設する爪部材203bとを含む。ベース部材203aの中心部は、シャフト202の先端部が接続されている。爪部材203bは、ウエハWの周縁と係合可能に構成されている。ウエハWが爪部材203bに係合すると、ウエハWの姿勢が略水平の状態でウエハWが保持部203に保持される。
すなわち、回転保持部200は、ウエハWの姿勢が略水平で且つ裏面Wb(被研磨面)が上方(研磨装置300側)を向いた状態で、ウエハWの表面Waに対して垂直な軸(回転軸)周りでウエハWを回転させる。本実施形態では、回転軸は、円形状を呈するウエハWの中心を通っているので、中心軸でもある。回転保持部20は、上方から見て時計回りにウエハWを所定の回転数で回転させてもよいし、上方から見て反時計回りにウエハWを所定の回転数で回転させてもよい。回転保持部200によるウエハWの回転数は、例えば、10rpm〜2000rpm程度であってもよい。
研磨装置300は、図6〜図8に示されるように、本体部310と、駆動部320と、液供給部330と、ポンプ340(吸引部)と、付勢部350と、気圧センサ360とを有する。
本体部310は、支持体311と、回転部312と、ベアリング313と、環状ノズル314と、緩衝部材315と、研磨体316とを含む。支持体311は、円筒状を呈しており、鉛直方向に沿って延びている。回転部312は、支持体311の上端(一端)に取り付けられている。回転部312は、コントローラCnt1からの動作信号に基づいて動作し、支持体311の延在方向に延びる軸周りに支持体311を回転させるように構成されている。回転部312は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。
ベアリング313は、支持体311の下部に取り付けられている。環状ノズル314は、円環状を呈する円板部材314aを含む。円板部材314aの下面側には、全体として円環状を呈するように略等間隔に並ぶ複数のノズル口314b(図8及び図9参照)が設けられている。円板部材314aの内周縁は、ベアリング313に取り付けられている。そのため、環状ノズル314はベアリング313を介して支持体311に取り付けられているので、支持体311は環状ノズル314に対して自由に回転可能である。
緩衝部材315は、円環状を呈しており、支持体311の下端(他端)に取り付けられている。緩衝部材315は、外力が付与されたときに適宜変形可能に構成されている。緩衝部材315としては、例えば、合成樹脂等からなる多孔体(スポンジ)であってもよい。
研磨体316は、円環状を呈する台座317を介して緩衝部材315に取り付けられている。換言すれば、研磨体316は、支持体311の下端部に支持されている。そのため、研磨体316は、回転部312によって支持体311と共に回転する。研磨体316は、上方から見て時計回りに回転してもよいし、上方から見て反時計回りに回転してもよい。研磨体316の回転数は、例えば、50rpm程度であってもよい。
研磨体316は、図8及び図9に示されるように、複数の研磨部316a(第1の研磨部)と、複数の研磨部316b(第2の研磨部)とを含む。複数の研磨部316aは、台座317上において円環状を呈するように並んでおり、一つの研磨ユニット(第1の研磨ユニット)を構成している。各研磨部316aは、平面視において円弧状を呈している。複数の研磨部316aのうち隣り合う研磨部316a同士の間には、図9に示されるように、間隙G1(第1の間隙)が設けられている。複数の研磨部316bは、図8及び図9に示されるように、台座317上において円環状を呈するように並んでおり、一つの研磨ユニット(第2の研磨ユニット)を構成している。複数の研磨部316bは、複数の研磨部316aを取り囲むように配置されている。各研磨部316bは、平面視において円弧状を呈している。複数の研磨部316bのうち隣り合う研磨部316b同士の間には、図9に示されるように、間隙G2(第2の間隙)が設けられている。
間隙G1と間隙G2とは、図9に示されるように、放射方向(研磨部316a,316bの径方向)から見て互いに重なり合っていない。換言すれば、当該放射方向において、研磨部316aと研磨部316bとは、互い違いに(千鳥状に)配置されている。間隙G1の大きさは、間隙G2の大きさよりも小さく設定されている。
駆動部320は、図6及び図7に示されるように、直動機構321,322と、支持アーム323とを含む。直動機構321,322は共に、支持アーム323に接続されている。直動機構321は、コントローラCnt1からの動作信号に基づいて動作し、支持アーム323を水平方向に沿って直線状に進退させるように構成されている。具体的には、直動機構321は、研磨体316をウエハWの中心部と周縁部との間で移動させるように構成されている。直動機構322は、コントローラCnt1からの動作信号に基づいて動作し、支持アーム323を鉛直方向に沿って直線状に進退させるように構成されている。具体的には、直動機構322は、研磨体316をウエハWの裏面Wbとその上方との間で移動させるように構成されている。直動機構321,322は、例えばリニアアクチュエータ等の動力源であってもよい。支持アーム323は、揺動軸323aを介して、支持体311の上端(回転部312)を揺動可能に支持している。揺動軸323aは、水平方向に沿って延びると共に、直動機構321による支持体311の移動方向と交差する方向に延びている。換言すれば、支持体311(本体部310)は、揺動軸323aに関して揺動可能に構成されている。
液供給部330は、図6に示されるように、環状ノズル314に研磨液Lを供給するように構成されている。液供給部330は、液源331と、ポンプ332とを含む。
液源331は、研磨液Lの供給源として機能する。研磨液Lは、粘性を有する液体であってもよい。より詳しくは、研磨液Lは、粘度が1000cP〜5000cPの粘性液体であってもよい。当該粘性液体としては、例えば、水に粘性調整剤(添加剤)が添加されたものが挙げられる。研磨液Lの粘度が1000cP以上であると、各ノズル口314bから吐出された研磨液Lが切れ目なく連続的に流れやすくなるので、研磨液Lの内側の空間における密封性が高まる傾向にある。研磨液Lの粘度が5000cP以下であると、研磨液Lが十分な流動性を有しているので、研磨体316による裏面Wb(被研磨面)の研磨によって生ずる研磨カスが研磨液Lにより効果的に洗い流される傾向にある。
ポンプ332は、コントローラCnt1からの動作信号に基づいて動作し、液源331から研磨液Lを吸引し、環状ノズル314の各ノズル口314bに送り出す。各ノズル口314bに達した研磨液Lは、各ノズル口314bから下方に向けて吐出される。各ノズル口314bは環状に配列されているので、各ノズル口314bから吐出された研磨液Lは、図10に示されるように、円筒状又は逆円錐台状を呈する液膜をなす。各ノズル口314bから吐出された研磨液Lは、ウエハWの裏面Wbに向けて供給されてもよいし、研磨体316(研磨部316b)の外周面に向けて供給されてもよい。
ポンプ340は、支持体311に接続されている。ポンプ340は、コントローラCnt1からの動作信号に基づいて動作し、支持体311内のエアを吸引するように構成されている。そのため、ポンプ340が動作すると、支持体311、円環状の緩衝部材315、円環状の台座317及び研磨体316(研磨部316a)の中央の吸引空間V(図8及び図9参照)を通じて、エアが吸引される。そのため、研磨体316がウエハWの裏面Wbに当接しているときにポンプ340が動作すると、裏面Wbが研磨体316に対して吸着される。ポンプ340において吸引されたエアは、研磨ユニットU12の外部に排気される。
付勢部350は、補助柱351と、弾性体352とを含む。補助柱351は、支持アーム323から下方に向けて鉛直方向に沿って延びている。補助柱351は、支持体311(本体部310)に関して、直動機構321による支持体311(本体部310)の進行方向とは逆側に位置している。補助柱351の下端部は、環状ノズル314の外周縁と対向している。弾性体352は、補助柱351の下端部と環状ノズル314の外周縁との間に配置されている。弾性体352は、環状ノズル314を介して本体部310に弾性力を付与するように構成されている。そのため、弾性体352は、直動機構321による支持体311(本体部310)の進行方向に向けて、支持体311を介して研磨体316に弾性力を付与している。弾性体352は、例えばコイルスプリングであってもよい。
気圧センサ360は、支持体311を通じて吸引空間V内の気圧を測定するように構成されている。気圧センサ360によって測定された気圧データは、コントローラCnt1に送信される。
[コントローラの構成]
コントローラCnt1は、図11に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCnt1の機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCnt1を構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取る。記録媒体RMは、基板処理システム1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMとしては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。
記憶部M2は、種々のデータを記憶する。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、ウエハWを処理する際の各種データ(いわゆる処理レシピ)、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データ等を記憶する。
処理部M3は、各種データを処理する。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、液処理ユニットU1、熱処理ユニットU2、及び研磨ユニットU12(例えば、回転部201,312、直動機構321,322、ポンプ332,340等)を動作させるための動作信号を生成する。処理部M3は、研磨ユニットU12の気圧センサ360から入力された気圧データに基づいて、吸引空間V内の気密が保持されているか否かを判断する。
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を各種装置に送信する。
コントローラCnt1のハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成される。コントローラCnt1は、ハードウェア上の構成として、例えば図12に示される回路E1を有する。回路E1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路E1は、具体的には、プロセッサE2と、メモリE3(記憶部)と、ストレージE4(記憶部)と、ドライバE5と、入出力ポートE6とを有する。プロセッサE2は、メモリE3及びストレージE4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートE6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。メモリE3及びストレージE4は、記憶部M2として機能する。ドライバE5は、基板処理システム1の各種装置をそれぞれ駆動する回路である。入出力ポートE6は、ドライバE5と基板処理システム1の各種装置(例えば、回転部201,312、直動機構321,322、ポンプ332,340、気圧センサ360等)との間で、信号の入出力を行う。
本実施形態では、基板処理システム1は、一つのコントローラCnt1を備えているが、複数のコントローラCnt1で構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。基板処理システム1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCnt1によって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCnt1の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCnt1が複数のコンピュータ(回路E1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路E1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路E1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCnt1は、複数のプロセッサE2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサE2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサE2の組み合わせによって実現されていてもよい。
[研磨方法]
続いて、図13〜図15を参照して、研磨ユニットU12によるウエハWの裏面Wb(被研磨面)の研磨方法について説明する。まず、棚ユニットU11から取り出されたウエハWが受け渡しアームA8により研磨ユニットU12に搬送されると、ウエハWは、被研磨面である裏面Wbが上方を向いた状態で、保持部203によって保持される。
次に、コントローラCnt1が直動機構321に指示して、研磨体316がウエハWの中心部の上方に位置するように支持体311(本体部310)を直動機構321により移動させる。この状態で、コントローラCnt1が直動機構322に指示して、研磨体316がウエハWの裏面Wbに当接するように支持体311(本体部310)を直動機構322により降下させる(図13(a)の矢印Ar1参照)。
次に、コントローラCnt1がポンプ340に指示して、吸引空間V内のエアをポンプ340によって吸引させる(図13(b)の矢印Ar2参照)。これにより、ウエハWの裏面Wbが研磨体316によりしっかりと接する。その後、コントローラCnt1がポンプ340に指示して、いったんポンプ340の動作を停止させる。
次に、コントローラCnt1がポンプ332に指示して、環状ノズル314のノズル口314bから研磨液LをウエハWの裏面Wb又は研磨体316の外周面に向けて吐出させる(図13(c)参照)。これにより、研磨液Lが研磨体316を取り囲むように各ノズル口314bから吐出され、研磨液Lの内側の領域が密封される。なお、このときポンプ340の動作が停止しているので、研磨液Lがポンプ340内に吸引されてポンプ340の動作に影響を与える虞がない。
次に、コントローラCnt1がポンプ340に指示して、吸引空間V内のエアをポンプ340によって吸引させる(図14(a)の矢印Ar3参照)。このとき、研磨液Lの内側の空間が外側の空間に対して密封されているので、ウエハWの裏面Wbが研磨体316に密着する。
次に、コントローラCnt1が回転部312に指示して、支持体311を回転させる(図14(b)の矢印Ar4参照)。これにより、支持体311と共に、緩衝部材315、台座317及び研磨体316が回転する。また、この前後において、コントローラCnt1が回転部201に指示して、回転保持部200によりウエハWを回転させる。
次に、コントローラCnt1が直動機構321に指示して、研磨体316がウエハWの中心部から周縁部に向けて移動するように支持体311(本体部310)を直動機構321により移動させる(図15の矢印Ar5参照)。このとき、ウエハWは、自重及び本体部310の荷重により、中央部が下方に向けて凸の状態に湾曲しやすい(図15参照)。そのため、ウエハWの中央部ほど曲率半径が大きくなる一方で、ウエハWの周縁部ほど曲率半径が小さくなる。従って、支持体311(本体部310)がウエハWの周縁部に向かうにつれて、弾性体352の弾性力により支持体311(本体部310)が揺動軸323a周りに揺動して傾斜し、研磨体316がウエハWの裏面Wbに倣うようになる(図15参照)。また、図示はしていないが、緩衝部材315が変形して、研磨体316が裏面Wbに倣うように研磨体316の姿勢が変化しうる。
[作用]
以上のような本実施形態では、研磨体316がウエハWの裏面Wb(被研磨面)を研磨するので、裏面Wbが粗面化される。そのため、露光時にウエハWがステージ101に保持される際、裏面Wbに対する支持ピン107の先端の接触面積が減少する。従って、各吸引孔105を通じてウエハWが吸引されるときに、裏面Wbが支持ピン107の先端に対して滑りやすくなり、ステージ101上でのウエハWの非平坦状態が抑制される。その結果、目標とする本来の露光領域に対する実際の露光位置のずれが抑制されるので、オーバーレイの精度を改善することが可能となる。加えて、本実施形態では、研磨体316の中央の吸引空間Vを通じて、研磨体316が当接している裏面Wbをポンプ340が吸引する。そのため、ウエハWが研磨体316に対して引き寄せられる。従って、研磨体316による裏面Wbの研磨に際し、ウエハWの非平坦状態が抑制され、研磨体316が裏面Wbに密接しやすくなる(図16(a)参照)。その結果、研磨体316により裏面Wbがより均一に研磨され、裏面Wbに研磨斑が生じ難くなるので、露光の際に裏面Wbが支持ピン107の先端に対して均一に滑りやすくなる。以上より、オーバーレイの精度をいっそう改善することが可能となる。
なお、裏面Wbに研磨斑が生じていると、裏面Wbに対する支持ピン107の先端の接触面積が増大し、裏面Wbと支持ピン107の先端との間に生ずる摩擦力が大きくなる(図16(b)参照)。そのため、各吸引孔105を通じてウエハWが吸引されても、ウエハWの被平坦状体が解消され難い(同参照)。従って、このような状態のウエハWに対して露光処理が行われると、本来露光されるべき領域ではなく当該領域からずれた他の領域に露光が行われてしまう。
本実施形態では、環状ノズル314の各ノズル口314bからウエハWの裏面Wbに向けて吐出された研磨液Lは、研磨体316を取り囲む。そのため、研磨体316による裏面Wbの研磨に際し、各ノズル口314bから研磨液Lが供給され続けることにより、研磨液Lの内側の吸引空間Vが外側の空間に対して密封される。従って、ポンプ340により吸引空間Vを通じて裏面Wbを吸引する際、研磨体316がより効果的に裏面Wbに吸着される。その結果、研磨体316による裏面Wbの研磨に際し、ウエハWの非平坦状態がいっそう抑制され、研磨体316による裏面Wbの研磨を促進することができる。以上により、オーバーレイの精度をさらに改善することが可能となる。また、吸引空間Vが、シリコンリング等の物理的な密封部材ではなく、研磨液Lにより密封されているので、研磨体316がウエハWの周縁に移動した場合でも、吸引空間V内を密封したままとすることが可能となる。
本実施形態では、複数の研磨部316aのうち隣り合う研磨部316a同士の間隙G1と複数の研磨部316bのうち隣り合う研磨部316b同士の間隙G2とが放射方向からみて互いに重なり合っていない。そのため、相対的に外側に位置する複数の研磨部316b同士の間に設けられている間隙G2から研磨液Lが流入しても、相対的に内側に位置する複数の研磨部316a同士の間に設けられている間隙G1に研磨液Lが流入し難くなる。そのため、ポンプ340によって吸引空間V内に生成される負圧が保たれやすくなる。
本実施形態では、間隙G1の大きさは間隙G2の大きさよりも小さく設定されている。そのため、間隙G1に研磨液Lがいっそう流入し難くなる。
本実施形態では、弾性体352は、揺動軸322aに関して揺動可能な支持体311に対し、直動機構321による支持体311の進行方向に向けて弾性力を付与している。そのため、研磨体316が裏面Wbに接触しつつ移動する際、支持体311の進行方向とは逆方向の動摩擦力がウエハWから研磨体316に作用しても、弾性体352により当該動摩擦力が打ち消される。従って、研磨体316が裏面Wbに対して傾き難くなり、研磨体316が裏面Wbに密接した状態が維持される。その結果、研磨体316により裏面Wbがよりいっそう均一に研磨されるので、オーバーレイの精度をよりいっそう改善することが可能となる。
本実施形態では、気圧センサ360によって吸引空間V内の気圧を測定している。そのため、気圧センサ360によって測定された気圧に基づいて、吸引空間V内の気密が保持されているか否かを判断することが可能となり、ひいては研磨体316が裏面Wbに対して密接しているか否かを判断することが可能となる。
本実施形態では、緩衝部材315が支持体311と研磨体316との間に設けられている。そのため、非平坦状態のウエハWの裏面Wbに研磨体316が当接すると、緩衝部材315が変形して、研磨体316が裏面Wbに倣うように研磨体316の姿勢が変化する。従って、研磨体316が裏面Wbに密接しやすくなる。その結果、研磨体316により裏面Wbがよりいっそう均一に研磨されるので、オーバーレイの精度をよりいっそう改善することが可能となる。
[評価試験]
ここで、実施例として、上記の実施形態に係る研磨ユニットU12を用いて、ウエハWの裏面Wbの研磨を行った。その後、当該ウエハWを露光装置100に搬入してレジストパターンを形成した後、オーバーレイを測定した。その結果を図17に示す。このときのX方向におけるオーバーレイの平均±3σは7.37nmであり、Y方向におけるオーバーレイの平均±3σは7.60であった。
一方、比較例として、研磨ユニットU12によってウエハWの裏面Wbの研磨を行わずに、当該ウエハWを露光装置100に搬入してレジストパターンを形成した後、オーバーレイを測定した。その結果を図18に示す。このときのX方向におけるオーバーレイの平均±3σは9.80nmであり、Y方向におけるオーバーレイの平均±3σは9.94であった。
さらに、比較例に係るウエハWに対する実施例に係るウエハWのオーバーレイの改善率を算出した。オーバーレイの改善率は、{1−(実施例及び比較例に係るウエハWのXY移動合成距離)/(比較例に係るウエハWのXY移動合成距離)}×100(%)にて求められる。ここで、XY移動合成距離とは、{(X方向のオーバーレイ)2+(Y方向のオーバーレイ)2}1/2にて求められる。従って、オーバーレイ改善率が高いほど、正確な位置からの露光位置のずれが抑制されていると結論づけられる。上記の実施例及び比較例においては、オーバーレイの改善率は13%であった。
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、間隙G1,G2の大きさは、略等しくてもよいし、一方が他方に対して大きくてもよい。
間隙G1と間隙G2とは、放射方向(研磨部316a,316bの径方向)から見て互いに重なり合っていてもよい。
研磨体316は、研磨部316a,316bのうちどちらか一方で構成されていてもよい。
研磨体316は、研磨部316bをさらに外側から囲む他の研磨部を含んでいてもよい。
研磨部316aと研磨部316bとの間の領域に対して研磨液Lが吐出されてもよい。
図19に示されるように、各研磨部316aの上端側が円環状の接続部316cで一体的に接続されていてもよい。同様に、図19には示されていないが、各研磨部316bの上端側も円環状の接続部で一体的に接続されていてもよい。これらは、例えば、円筒状を呈する研磨材料の一端側に溝又は切欠きを設けることにより形成することができる。
研磨体316は、上記の実施形態の構成に限られず、ラビリンス構造であればよい。ラビリンス構造とは、本明細書において、研磨体316の外方から吸引空間V内に至る流路の態様(例えば、流路の大きさ、流路の長さ、流路の経路等)によって液体の流通を阻害する機能を有する構造をいう。当該ラビリンス構造は、上記の実施形態と同様に、当該流路を通じて気体を流通させる機能を有していてもよい。
研磨装置300は、緩衝部材315、付勢部350及び気圧センサ360のいずれかを一つ以上を備えていなくてもよい。
上記実施形態では、ポンプ340により研磨体316を介してウエハWを吸引し、研磨体316をウエハWの裏面Wbに吸着させているが、電磁吸着により研磨体316とウエハWの裏面Wbとを当接させてもよい。