以下、図面を参照して、実施形態に係るX線CT(Computed Tomography)装置及び再構成処理装置を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
以下の実施形態で説明するX線CT装置は、フォトンカウンティングCTを実行可能な装置である。すなわち、以下の実施形態で説明するX線CT装置は、従来の積分型(電流モード計測方式)の検出器ではなく、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて被検体を透過したX線を計数することで、SN比の高いX線CT画像データを再構成可能な装置である。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台10と、寝台装置20と、コンソール30とを有する。
架台10は、被検体P(患者)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、検出したX線に対応するデータをコンソール30に出力する装置である。架台10は、X線照射制御回路11と、X線発生装置12と、検出器13と、データ収集回路14と、回転フレーム15と、架台駆動回路16とを有する。
X線照射制御回路11は、高電圧発生部として、X線管12aに高電圧を供給する装置である。X線管12aは、X線照射制御回路11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御回路11は、後述するスキャン制御回路33の制御により、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
また、X線照射制御回路11は、ウェッジ12bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路11は、コリメータ12cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。なお、本実施形態は、複数種類のウェッジを、操作者が手動で切り替える場合であっても良い。
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置である。X線発生装置12は、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
X線管12aは、X線照射制御回路11により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。例えば、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、フル再構成用に被検体Pの全周囲でX線を連続曝射したり、ハーフ再構成用にハーフ再構成可能な曝射範囲(180度+ファン角)でX線を連続曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11の制御により、X線管12aは、予め設定された位置(管球位置)でX線(パルスX線)を間欠曝射したりすることが可能である。また、X線照射制御回路11は、X線管12aから曝射されるX線の強度を変調させることも可能である。例えば、X線照射制御回路11は、特定の管球位置では、X線管12aから曝射されるX線の強度を強くし、特定の管球位置以外の範囲では、X線管12aから曝射されるX線の強度を弱くする。
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ12cは、鉛板等によって構成され、一部にスリットを有する。例えば、コリメータ12cは、後述するX線照射制御回路11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲をスリットにより絞り込む。
検出器13は、被検体Pを透過したX線の入射に応じて信号を出力する複数の検出素子を有する光子計数型検出器である。各検出素子は、X線フォトンが入射するごとに、当該X線フォトンのエネルギー値を計測可能な信号を出力する。X線フォトンは、例えば、X線管12aから照射され被検体Pを透過したX線の光子である。各検出素子は、X線フォトンが入射するごとに、1パルスの電気信号(アナログ信号)を出力する。
上記の検出素子は、例えば、シンチレータと光電子増倍管等の光センサとにより構成される。かかる場合、図1に示す検出器13は、入射したX線フォトンをシンチレータによりシンチレータ光に変換し、シンチレータ光を光電子増倍管等の光センサにより電気信号に変換する間接変換型の検出器となる。また、上記の検出素子は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)や、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)などの半導体素子の場合であってもよい。かかる場合、図1に示す検出器13は、入射したX線フォトンを、直接、電気信号に変換する直接変換型の検出器となる。
例えば、図1に示す検出器13は、検出素子が、チャンネル方向(検出器13の回転方向に沿った方向)にN列、架台10が非チルト時の状態における回転フレーム15の回転中心軸方向(図1中のZ軸方向)にM列配置された面検出器である。検出素子は、光子が入射すると、1パルスの電気信号を出力する。X線CT装置1は、検出素子が出力した個々のパルスを弁別することで、検出素子に入射したX線フォトンの数を計数することができる。また、X線CT装置1は、パルスの強度に基づく演算処理を行うことで、計数したX線フォトンのエネルギー値を計測することができる。
データ収集回路14は、検出器13の出力信号を用いた計数処理の結果である計数結果を収集する機能を有し、検出素子が出力した電気信号を増幅する増幅器や電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器等から構成される電気回路である。データ収集回路14は、X線管12aから照射されて被検体Pを透過したX線に由来する光子(X線フォトン)を計数し、当該計数した光子のエネルギーを弁別した結果を計数結果として収集する。例えば、回転フレーム15の回転中に、X線管12aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路14は、全周囲分(360度分)の計数結果を収集する。そして、データ収集回路14は、計数結果をコンソール30に送信する。なお、データ収集回路14は、DAS(Data Acquisition System)とも呼ばれる。
例えば、データ収集回路14は、検出素子が出力した各パルスを弁別して計数したX線フォトンの入射位置(検出位置)と、当該X線フォトンのエネルギー値とを計数結果として、X線管12aの位置(管球位置)ごとに収集する。入射位置は、例えば、計数に用いたパルスが出力された際の検出素子の位置である。また、データ収集回路14は、例えば、パルスのピーク値とシステム固有の応答関数とからエネルギー値を演算する。或いは、データ収集回路14は、例えば、パルスの強度を積分することで、エネルギー値を演算する。データ収集回路14は、演算したエネルギー値を、例えば、比較器(コンパレータ)を用いて、複数のエネルギー弁別域(エネルギービン)に振り分ける。複数のエネルギー弁別域(エネルギービン)に振り分けられた計数結果は、エネルギーに応じた光子数の分布を示すエネルギースペクトルとなる。
回転フレーム15は、X線発生装置12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持する円環状のフレームである。回転フレーム15は、後述する架台駆動回路16によって被検体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する。
架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置12と検出器13とを旋回させる。例えば、架台駆動回路16は、回転フレーム15を回転駆動させるためのモータ等の動力伝達機構と、動力伝達機構の動作を制御するプロセッサから構成される。
寝台装置20は、被検体Pを載せる装置であり、図1に示すように、寝台駆動装置21と、天板22とを有する。寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。天板22は、被検体Pが載置される板である。なお、本実施形態では、架台10と天板22との相対位置の変化が天板22を制御することによって実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台10が自走式である場合、架台10の走行を制御することによって架台10と天板22との相対位置の変化が実現されてもよい。
なお、架台10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台10は、天板22の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行うステップアンドシュート方式を実行する。
コンソール30は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台10によって収集された投影データを用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール30は、図1に示すように、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、スキャン制御回路33と、前処理回路34と、記憶回路35と、画像再構成回路36と、処理回路37とを有する。
入力インターフェース31は、X線CT装置1の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路37に転送する。例えば、入力インターフェース31は、操作者から、X線CT画像データの撮影条件や、X線CT画像データを再構成する際の再構成条件、X線CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。
ディスプレイ32は、操作者によって参照されるモニタである。ディスプレイ32は、処理回路37による制御のもと、X線CT画像データから生成された画像データを操作者に表示したり、入力インターフェース31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
スキャン制御回路33は、処理回路37による制御のもと、X線照射制御回路11、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10におけるデータの収集処理を制御する機能を実現するプロセッサである。
前処理回路34は、データ収集回路14によって生成された計数結果に対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成する機能を実現するプロセッサである。
記憶回路35は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、前処理回路34により生成された投影データを記憶する。また、記憶回路35は、後述する画像再構成回路36によって生成された画像データなどを記憶する。また、記憶回路35は、後述する処理回路37による処理結果を適宜記憶する。
画像再構成回路36は、検出器13が出力した信号に基づいてX線CT画像データを生成する機能を実現するプロセッサである。画像再構成回路36は、記憶回路35が記憶する投影データを、例えば、逆投影処理することで、X線CT画像データを再構成する。逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。なお、画像再構成回路36は、例えば、逐次近似法により、再構成処理を行なっても良い。また、画像再構成回路36は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行うことで、画像データを生成する。画像再構成回路36は、再構成したX線CT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを記憶回路35に格納する。なお、画像再構成回路36は、再構成部の一例である。また、画像再構成回路36は、画像生成部の一例である。
ここで、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果から生成された投影データには、被検体Pを透過することで減弱されたX線のエネルギースペクトルの情報が含まれている。このため、画像再構成回路36は、例えば、特定のエネルギー成分を画像化したX線CT画像データ(エネルギー弁別画像データ)を再構成することができる。また、画像再構成回路36は、例えば、複数のエネルギー成分それぞれのX線CT画像データを再構成することができる。
また、画像再構成回路36は、例えば、各エネルギー成分のX線CT画像データの各画素にエネルギー成分に応じた色調を割り当て、エネルギー成分に応じて色分けされた複数のX線CT画像データを重畳した画像データを生成することができる。また、画像再構成回路36は、物質固有のK吸収端を利用して、当該物質の同定が可能となる画像データを生成することができる。画像再構成回路36が生成する他の画像データとしては、単色X線画像データや密度画像データ、実効原子番号画像データ等が挙げられる。なお、エネルギー弁別画像データ、物質弁別画像データ、単色X線画像データ、密度画像データ、実効原子番号画像データ等のX線CT画像データを再構成する処理を、「スペクトル再構成」と表記する。
処理回路37は、架台10、寝台装置20及びコンソール30の動作を制御することによって、X線CT装置1の全体制御を行う。具体的には、処理回路37は、スキャン制御回路33を制御することで、架台10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路37は、画像再構成回路36を制御することで、コンソール30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路37は、記憶回路35が記憶する各種画像データを、ディスプレイ32に表示するように制御する。
また、処理回路37は、図1に示すように、判定機能371と、決定機能372と、表示制御機能373とを実行する。ここで、例えば、図1に示す処理回路37の構成要素である判定機能371、決定機能372、及び表示制御機能373が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路35内に記録されている。処理回路37は、例えば、プロセッサであり、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路37は、図1の処理回路37内に示された各機能を有することとなる。なお、判定機能371、決定機能372、及び表示制御機能373の詳細については、後述する。
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、フォトンカウンティングCTによりX線CT画像データを再構成する。
ところで、フォトンカウンティングCTでは、被検体Pの中心部ではX線の吸収量が多く、検出器へ入射するX線フォトンが少ない。このため、被検体Pの中心部を透過した投影データのエネルギースペクトルは正確に得られるので、高精度な再構成画像が得られる。一方、被検体Pの辺縁部やX線吸収が少ない部位では、検出器へ入射するX線フォトンが多くなるので、パイルアップ等が発生してしまう場合がある。パイルアップとは、単位時間当たりに入射するX線フォトンの数が増加した場合に、X線フォトンにより生じる波形が重なり合い、X線フォトンの数え落としが生じる現象である。このように、エネルギースペクトルが不正確になってしまう場合には、再構成画像が不正確になるばかりか、エネルギースペクトルの復元も困難になり、処理時間が膨大となる可能性がある。
そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、フォトンカウンティングCTにおける画像再構成の精度及び処理速度を向上させるために、以下に説明する各処理機能を実行する。
判定機能371は、検出素子により出力される信号に基づくエネルギースペクトルに関する出力値が閾値以上であるか否かを判定する。例えば、判定機能371は、記憶回路35に記憶された投影データを用いて、エネルギースペクトルに関する出力値をビューごとに算出する。そして、判定機能371は、算出した各ビューの出力値が閾値以上であるか否かをビューごとに判定する。そして、判定機能371は、全てのビューについて判定した判定結果を、決定機能372へ出力する。なお、判定機能371は、判定部の一例である。
図2、図3、図4A、及び図4Bを用いて、判定機能371の処理を説明する。図2、図3、図4A、及び図4Bは、第1の実施形態に係る判定機能371の処理を説明するための図である。
例えば、判定機能371は、記憶回路35から投影データを読み出す。ここで、記憶回路35に記憶された投影データには、各ビューにおいて各検出素子が出力した信号に基づくエネルギースペクトルの情報が含まれている。判定機能371は、各ビューにおけるエネルギースペクトルを用いて、出力値をビューごとに算出する。
図2の上図には、あるビューにおいて各検出位置(検出素子の位置)に入射した入射線量と、出力値との関係を例示する。ここで、図2の上図に示す入射線量がA1である場合、例えば、図2の左下図に示すX線のエネルギースペクトルS1が得られる。また、図2の上図に示す入射線量がA2である場合、例えば、図2の右下図に示すX線のエネルギースペクトルS2が得られる。判定機能371は、各検出位置におけるエネルギースペクトルを用いて、各検出位置の出力値をビューごとに算出する。つまり、判定機能371は、検出されたX線の全投影経路(パス)について、出力値を算出する。
ここで、出力値は、例えば、下記の第1〜第4の出力値のいずれかにより定義される。ここでは説明の便宜上、本スキャンの撮影条件における管電圧が120kVpであり、各エネルギービンのカウントがCiである場合を説明する。
第1の出力値は、各エネルギービンのカウントの全出力値である。かかる場合、出力値は、例えば、ΣCi(i=1〜120keV)で表される。つまり、判定機能371は、各エネルギービンのカウントの全出力値ΣCi(i=1〜120keV)を出力値として算出する。なお、120keV以下のカウントが用いられるのは、理論上、当該カウントがパイルアップした信号のカウント(パイルアップカウント)ではないと考えられるからである。
第2の出力値は、各エネルギービンのカウントのパイルアップカウント値である。かかる場合、出力値は、例えば、ΣCi(i>120keV)で表される。つまり、判定機能371は、各エネルギービンのカウントのパイルアップカウント値を出力値として算出する。なお、120keVより大きいカウントが用いられるのは、理論上、当該カウントがパイルアップカウントであると考えられるからである。
第3の出力値は、エネルギービンの代表値のエネルギー積分値である。かかる場合、出力値は、例えば、Σ(Ci×Ei)(i=1〜120keV)で表される。つまり、判定機能371は、エネルギービンの代表値のエネルギー積分値を出力値として算出する。なお、Eiは、エネルギービンの中央値(代表値)を示す。
第4の出力値は、エネルギービンの代表値のパイルアップエネルギー積分値である。かかる場合、出力値は、例えば、Σ(Ci×Ei)(i>120keV)で表される。つまり、判定機能371は、エネルギービンの代表値のパイルアップエネルギー積分値を出力値として算出する。なお、Eiは、エネルギービンの中央値(代表値)を示す。
このように、判定機能371は、第1〜第4の出力値のいずれかを、エネルギースペクトルに関する出力値として算出する。なお、上記の第1〜第4の出力値の説明で例示した内容はあくまで一例であり、上記の説明に限定されるものではない。例えば、第1の出力値は、ΣCi(i=1〜115keV)と定義されてもよいし、ΣCi(i=1〜125keV)と定義されてもよい。つまり、カウントの対象となるX線フォトンのエネルギーの強度は、必ずしも管電圧に一致していなくてもよい。ただし、カウントの対象となるX線フォトンのエネルギーの強度は、管電圧に基づいて設定されるのが好適である。
そして、判定機能371は、算出した出力値が閾値以上であるか否かをビューごとに判定する。例えば、判定機能371は、各ビューにおいて、各検出素子におけるそれぞれの出力値が閾値以上であるか否かを判定する。
図3、図4A、及び図4Bを用いて、判定機能371による判定処理の一例を説明する。図3には、0°の位置でX線管12aにより照射されたX線が、検出器13の検出素子131,132によって検出される場合を例示する。また、図4Aには、検出素子131におけるX線のエネルギースペクトルS11を例示し、図4Bには、検出素子132におけるX線のエネルギースペクトルS21を例示する。なお、R0は、再構成領域を示す。
図3に示すように、検出素子131は、検出素子132と比較して、被検体Pの中心部に近い位置(投影経路)を通過したX線を検出する。被検体Pの中心部ほどX線の吸収が多くなるため、検出素子131におけるエネルギースペクトルS11は、120keV以上のエネルギーを含まない(図4A参照)。一方、検出素子132におけるエネルギースペクトルS21は、120keV以上のエネルギーを含む(図4B参照)。
そして、判定機能371は、エネルギースペクトルS11,S21について、それぞれの出力値が閾値以上であるか否かを判定する。例えば、第2の出力値(パイルアップカウント)が算出される場合、ここで、エネルギースペクトルS11の出力値X1は「0」であるので、エネルギースペクトルS21の出力値X2より小さい値となる。ここで、「X1<Th<X2」を満たす閾値Thが設定されている場合には、判定機能371は、エネルギースペクトルS11の出力値X1が閾値Th未満であると判定し、エネルギースペクトルS21の出力値X2が閾値Th以上であると判定する。なお、ここでは説明の便宜上、あるビューにおける検出素子131,132からの出力値について判定を行う場合を説明したが、判定機能371は、全てのビューにおける全ての検出素子からの出力値について判定を行う。つまり、判定機能371は、検出されたX線の全投影経路(パス)について、算出される出力値が閾値以上であるか否かを判定する。
このように、判定機能371は、各ビューにおいて、各検出素子におけるそれぞれの出力値が閾値以上であるか否かを判定する。なお、図3、図4A、及び図4Bにて例示した内容はあくまで一例であり、上記の説明に限定されるものではない。例えば、上記の閾値Thは、任意に設定可能である。例えば、閾値Th=0である場合には、パイルアップカウントの有無に基づいて判定処理を実行可能である。また、再構成にかかる処理時間に影響しないパイルアップカウント値を測定し、測定したパイルアップカウント値まで許容することとして判定処理を実行することも可能である。また、閾値Thは、回路の時定数等から、あるカウントレート以上として設定することも可能である。つまり、閾値Thは、画像再構成の精度及び処理速度を向上させるために設定される値である。また、上記の説明では、第2の出力値が用いられる場合を説明したが、これに限らず、判定機能371は、第1、第3、及び第4の出力値のいずれかの値を用いて判定処理を実行可能である。
なお、概ね、再構成領域R0の中心ほどカウントレートが低く、外縁ほどカウントレートが高い。このため、判定機能371は、例えば、スキャノ画像や撮像部位の情報に基づいて再構成領域R0を中心領域と外縁領域とに分け、パイルアップ等のエネルギースペクトルが不正確な外縁領域(若しくは中心領域と外縁領域との境界付近)を重点的に判定してもよい。
決定機能372は、判定機能371による判定結果に基づいて、再構成領域のうちスペクトル再構成を行うスペクトル再構成領域(第1領域)と、エネルギー積分再構成を行うエネルギー積分再構成領域(第2領域)とを決定する。なお、決定機能372は、決定部の一例である。言い換えると、決定機能372は、検出素子により出力される信号に基づくエネルギースペクトルに関する出力値に基づいて、再構成領域のうちスペクトル再構成を行う第1領域と、エネルギー積分再構成を行う第2領域とを決定する。
ここで、スペクトル再構成とは、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果を用いて、エネルギー弁別画像データ、物質弁別画像データ、単色X線画像データ、密度画像データ、実効原子番号画像データ等のX線CT画像データを再構成する処理である。また、エネルギー積分再構成とは、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果を用いて、エネルギー積分再構成画像を再構成する処理である。具体的には、第1の実施形態に係るエネルギー積分再構成では、画像再構成回路36は、各エネルギービンのカウントの総和(合計値)、若しくはエネルギービンの代表値とカウントの積の総和によって、エネルギー積分データを算出する。そして、画像再構成回路36は、算出したエネルギー積分データを用いて、エネルギー積分再構成画像を再構成する。
例えば、決定機能372は、判定機能371による判定結果に基づいて、再構成領域R0内の各位置(画素位置)がスペクトル再構成領域及びエネルギー積分再構成領域のいずれであるかを決定する。具体的には、決定機能372は、ある位置を通る全ビュー(パス)の出力値が閾値未満である場合には、当該位置をスペクトル再構成領域として決定する。一方、決定機能372は、再構成領域R0のうち、スペクトル再構成領域以外の領域をエネルギー積分再構成領域として決定する。つまり、決定機能372は、ある位置を通る全ビューのうち、1つでも出力値が閾値以上であるビューが存在する場合には、当該位置をエネルギー積分再構成領域として決定する。なお、決定機能372による決定処理は、これに限定されるものではない。決定処理の他の例については、後述する。
図5、図6、図7A、及び図7Bを用いて、決定機能372による決定処理の一例を説明する。図5では、一例として、再構成領域R0における位置P1及び位置P2について、決定処理が行われる場合を説明する。なお、位置P1は、図5における検出素子131にて検出されたX線の投影経路上に存在する。また、位置P2は、図5における検出素子132にて検出されたX線の投影経路上に存在する。
図5に示すように、例えば、決定機能372は、位置P1を通る全てのビューについて、判定機能371により判定された判定結果を参照する。また、決定機能372は、位置P2についても同様に、位置P2を通る全てのビューについて、判定機能371により判定された判定結果を参照する。
図6には、位置P1及び位置P2を通る全ビューにおける判定結果を例示する。図6において、縦軸は出力値を示し、横軸はビュー方向を示す。また、閾値Thは、判定機能371による判定処理において用いられた閾値である。ここで、位置P1では、全てのビューにおける出力値は閾値未満である。このため、決定機能372は、位置P1をスペクトル再構成領域として決定する。一方、位置P2では、一部のビューにおける出力値が閾値以上である。このため、決定機能372は、位置P2をエネルギー積分再構成領域として決定する。そして、決定機能372は、再構成領域R0内の他の位置についても同様に、スペクトル再構成領域及びエネルギー積分再構成領域のいずれであるかを決定する。
このように、決定機能372は、再構成領域R0に含まれる各位置について、各位置を通る各ビューの判定結果に基づいて、スペクトル再構成領域及びエネルギー積分再構成領域を決定する。この結果、決定機能372は、図7Aに示すように、例えば、再構成領域R0に含まれるスペクトル再構成領域R1及びエネルギー積分再構成領域R2を決定する。また、決定機能372は、全ての位置を通る全ビューの出力値が閾値未満である場合には、図7Bに示すように、再構成領域R0全体をスペクトル再構成領域R1として決定する。
そして、決定機能372は、決定したスペクトル再構成領域R1及びエネルギー積分再構成領域R2を示す情報を、画像再構成回路36へ出力する。これにより、画像再構成回路36は、スペクトル再構成領域R1についてはスペクトル再構成によりスペクトル再構成画像を生成する。また、画像再構成回路36は、エネルギー積分再構成領域R2についてはエネルギー積分再構成によりエネルギー積分再構成画像を生成する。言い換えると、画像再構成回路36は、決定機能372による決定に基づいて画像を生成する。つまり、画像再構成回路36は、第1領域と第2領域とに基づいて、画像を生成する。
なお、図5、図6、図7A、及び図7Bにて例示した内容はあくまで一例であり、上記の説明に限定されるものではない。例えば、図6では、全てのビューに対して一定の閾値が設定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ビュー(X線管12aの位置)に応じて異なる閾値が設定されても良い。この場合、図6に示した閾値Thは、直線ではなく曲線で表されることとなる。
また、例えば、上記の説明では、再構成領域R0のうちスペクトル再構成領域R1以外の領域をエネルギー積分再構成領域R2として決定する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、表示制御機能373は、スペクトル再構成領域R1の形状や大きさにかかわらず、常に再構成領域R0全体をエネルギー積分再構成領域R2としてもよい。スペクトル再構成領域R1の画像は、エネルギー積分再構成領域R2上の対応する領域を隠蔽するように重畳させてもよいし、スペクトル再構成領域R1の画像を所定の透過度(半透明等)で重畳させてもよい。
また、例えば、図7Aでは、円形のスペクトル再構成領域R1が決定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、全ビューの出力値が閾値未満である画素の集合が円形ではなく、歪んだ形状、若しくは輪郭が不連続な線で結ばれた形状であったとしても、決定機能372は、スペクトル再構成領域R1として決定することができる。例えば、輪郭が不連続な線で結ばれた形状は、最小二乗法などにより連続的な線(滑らかな線)で結ばれた形状に変換可能である。ただし、閲覧性を向上させるためには、決定機能372は、スペクトル再構成領域R1の形状を円形若しくは楕円形として決定するのが好適である。この場合、スペクトル再構成領域R1の形状は、当該形状の内接円、当該形状の外接円、内接円と外接円の中間の円など、任意の形状に変換可能である。この変換処理は、予め決められた形状に自動変換してもよいし、形状の指定を操作者から受け付けてもよい。
表示制御機能373は、スペクトル再構成画像と、エネルギー積分再構成画像とを同時に表示させる。例えば、表示制御機能373は、エネルギー積分再構成画像上にスペクトル再構成画像を重畳表示させる。具体的には、表示制御機能373は、エネルギー積分再構成画像上の対応する位置にスペクトル再構成画像を重畳させ、ディスプレイ32に表示させる。なお、表示制御機能373は、表示制御部の一例である。
また、表示制御機能373は、スペクトル再構成画像及びエネルギー積分再構成画像を識別可能に表示させる。例えば、表示制御機能373は、スペクトル再構成画像とエネルギー積分再構成画像との間の境界に境界線を表示させることにより、両画像を識別可能に表示させる。また、例えば、表示制御機能373は、スペクトル再構成画像及びエネルギー積分再構成画像の表示態様を異ならせることで、両画像を識別可能に表示させる。具体的には、表示制御機能373は、スペクトル再構成画像をカラーで表示させ、エネルギー積分再構成画像を白黒で表示させることにより、両画像を識別可能に表示させる。
図8は、第1の実施形態に係るX線CT装置1による処理手順を示すフローチャートである。図8には、スペクトル再構成画像とエネルギー積分再構成画像とを同時に表示させる場合の処理手順を例示する。なお、図8には、本スキャン(本撮影)の処理手順を例示する。つまり、図8の処理手順が開始する前に、スキャノ(位置決め画像)の撮影や撮影条件の設定等は必要に応じて実行済みである。
図8に示すように、ステップS101において、処理回路37は、撮影が開始されたか否かを判定する。例えば、操作者は、撮影条件の設定が完了すると、撮影を開始する旨の指示を入力する。当該指示が操作者によって入力されると、処理回路37は、撮影を開始し、ステップS102以降の処理を実行する。なお、ステップS101が否定される場合には、処理回路37は、撮影を開始せず、待機状態である。
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、スキャン制御回路33は、投影データを収集する。例えば、スキャン制御回路33は、操作者により設定された撮影条件にしたがってX線照射制御回路11、架台駆動回路16、データ収集回路14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台10におけるデータの収集処理を実行する。そして、スキャン制御回路33は、データ収集回路14により収集された計数結果をコンソール30へ送信させる。コンソール30にて受信された計数結果は、前処理回路34により各種の前処理が行われ、投影データとして記憶回路35に格納される。
ステップS103において、判定機能371は、エネルギースペクトルに関する出力値を算出する。例えば、判定機能371は、各検出位置におけるエネルギースペクトルを用いて、各検出位置の出力値をビューごとに算出する。
ステップS104において、判定機能371は、出力値が閾値以上か否かを判定する。例えば、判定機能371は、各ビューにおいて、各検出位置におけるそれぞれの出力値が閾値以上であるか否かを判定する。
ステップS105において、決定機能372は、スペクトル再構成領域及びエネルギー積分再構成領域を決定する。例えば、決定機能372は、判定機能371による判定結果に基づいて、再構成領域R0内の各位置(画素位置)がスペクトル再構成領域R1及びエネルギー積分再構成領域R2のいずれであるかを決定する。具体的には、決定機能372は、ある位置を通る全ビュー(パス)の出力値が閾値未満である場合には、当該位置をスペクトル再構成領域R1として決定する。一方、決定機能372は、ある位置を通る全ビューのうち、1つでも出力値が閾値以上であるビューが存在する場合には、当該位置をエネルギー積分再構成領域R2として決定する。
ステップS106において、画像再構成回路36は、スペクトル再構成画像及びエネルギー積分再構成画像を生成する。例えば、画像再構成回路36は、計数結果を用いたスペクトル再構成により、エネルギー弁別画像データ、物質弁別画像データ、単色X線画像データ、密度画像データ、実効原子番号画像データ等のX線CT画像データを再構成する。また、例えば、画像再構成回路36は、フォトンカウンティングCTで得られる計数結果を用いたエネルギー積分再構成により、各エネルギービンのカウントの総和、若しくはエネルギービンの代表値とカウントの積の総和であるエネルギー積分データを算出する。そして、画像再構成回路36は、算出したエネルギー積分データを用いて、エネルギー積分再構成画像を再構成する。
ステップS107において、表示制御機能373は、スペクトル再構成画像及びエネルギー積分再構成画像を合成する。例えば、表示制御機能373は、エネルギー積分再構成画像上にスペクトル再構成画像を重畳させた合成画像を生成する。
ステップS108において、表示制御機能373は、合成画像を表示させる。例えば、表示制御機能373は、エネルギー積分再構成画像上にスペクトル再構成画像を重畳させた合成画像をディスプレイ32に表示させる。そして、処理回路37は、図8に示す処理手順を終了する。
なお、図8にて説明した処理手順はあくまで一例であり、上述した説明に限定されるものではない。例えば、図8では、ステップS102において全ビューの投影データの収集が完了してから、ステップS103〜S105の各処理が行われる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ステップS102において全ビューの投影データの収集が完了していなくとも、各ビューの投影データが収集されるごとに、ステップS103〜S105の処理が順次実行されてもよい。この場合、リアルタイムに処理が行われ、投影データの収集に伴ってスペクトル再構成領域が徐々に決定されることとなる。
上述したように、第1の実施形態に係るX線CT装置1において、判定機能371は、検出素子により出力される信号に基づくエネルギースペクトルに関する出力値が閾値以上であるか否かを判定する。また、決定機能372は、判定機能371による判定結果に基づいて、再構成領域のうちスペクトル再構成を行う第1領域と、エネルギー積分再構成を行う第2領域とを決定する。また、画像再構成回路36は、スペクトル再構成により第1領域に対応する第1画像を生成し、エネルギー積分再構成により第2領域に対応する第2画像を生成する。これによれば、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、フォトンカウンティングCTにおける画像再構成の精度及び処理速度を向上させることができる。
例えば、X線CT装置1は、全ビューの出力値が閾値未満である領域に対して、スペクトル再構成を行う。この領域ではパイルアップ等の影響が少ないため、X線CT装置1は、正確なエネルギースペクトルを用いてスペクトル再構成を行うことができる。この結果、X線CT装置1は、画像再構成の精度を向上させることができる。また、この場合、エネルギースペクトルの復元も容易(若しくは不要)であるため、X線CT装置1は、画像再構成の処理速度も向上させることができる。
(第1の実施形態の変形例1)
上述した実施形態では、再構成領域のうち全ビューにおける出力値が閾値未満である領域を、スペクトル再構成領域として決定する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、決定機能372は、再構成領域に含まれる各位置について、各位置を通る全ビューのうちハーフ再構成が可能な数のビューにおける出力値が閾値未満である場合には、当該位置をスペクトル再構成領域として決定することができる。
具体的には、決定機能372は、各位置を通る全ビューのうち、半回転+ファン角に相当するビューにおける出力値が閾値未満である場合には、当該位置をスペクトル再構成領域として決定する。この場合、画像再構成回路36は、ハーフ再構成によりスペクトル再構成領域に対応するスペクトル再構成画像を生成する。これによれば、X線CT装置1は、より広範囲のスペクトル再構成画像を提供することができる。
(第1の実施形態の変形例2)
また、例えば、決定機能372は、補正によりスペクトル再構成可能な補正可能領域(第3領域)を更に決定することもできる。
例えば、決定機能372は、出力値が閾値以上であると判定されたビューのうち、出力値を補正することによりスペクトル再構成が可能なビューを含む位置を、補正可能領域として決定する。そして、画像再構成回路36は、補正可能領域における出力値を補正した上で、スペクトル再構成により補正可能領域に対応するスペクトル再構成画像を生成する。
ここで、決定機能372は、閾値Th1及び閾値Th2を用いて、スペクトル再構成領域と、エネルギー積分再構成領域と、補正可能領域とを決定する。例えば、閾値Th1及び閾値Th2は、「Th1<Th2」を満たす値である。
例えば、決定機能372は、全ビューの出力値が閾値Th1未満である領域を、スペクトル再構成領域として決定する。また、決定機能372は、全ビューの出力値が閾値Th1以上であり、閾値Th2未満である領域を、補正可能領域として決定する。また、決定機能372は、再構成領域のうち残りの領域を、エネルギー積分再構成領域として決定する。
そして、画像再構成回路36は、補正可能領域における出力値をパイルアップ補正により補正処理を施した上で、スペクトル再構成によりスペクトル再構成画像を生成する。なお、スペクトル再構成領域及びエネルギー積分再構成領域については、第1の実施形態の処理と同様であるので、説明を省略する。
このように、決定機能372は、補正によりスペクトル再構成可能な補正可能領域を更に決定する。これによれば、X線CT装置1は、より広範囲のスペクトル再構成画像を提供することができる。
(第1の実施形態の変形例3)
また、例えば、決定機能372は、出力値が閾値以上と判定されたビューの外側を、エネルギー積分再構成領域として決定しても良い。
例えば、決定機能372は、再構成領域R0のうち、出力値が閾値以上であると判定されたビューの外側の領域を、エネルギー積分再構成領域として決定する。一例として、図5に示した位置P1の出力値が閾値以上であると判定された場合には、その外側にある位置P2の出力値も閾値以上であると判定される可能性が高い。このため、決定機能372は、位置P1の出力値が閾値以上であると判定された場合には、位置P2を含む外側の領域をエネルギー積分再構成領域として決定する。
これによれば、決定機能372は、出力値が閾値以上であると判定される可能性が高い領域については、決定処理を省略することができる。この結果、X線CT装置1は、本実施形態に係る処理速度を更に向上させることが可能となる。
(第1の実施形態の変形例4)
例えば、上述した実施形態に係る処理は、ネットワーク上で動作する再構成処理装置へ適用可能である。
図9は、第1の実施形態の変形例4に係る再構成処理装置の構成例を示すブロック図である。図9に示すように、再構成処理装置100は、例えば、再構成処理を情報処理サービスとして提供するサービスセンタに設置される。再構成処理装置100は、操作端末130に接続される。また、再構成処理装置100は、ネットワーク5を介して複数のクライアント端末140A,140B,・・・,140Nに接続される。なお、再構成処理装置100及び操作端末130は、ネットワーク5を介して接続されてもよい。また、複数のクライアント端末140A,140B,・・・,140Nを区別無く総称する場合、「クライアント端末140」と記載する。
操作端末130は、再構成処理装置100を操作する者(操作者)が利用する情報処理端末である。例えば、操作端末130は、マウス、キーボード、タッチパネル等、操作者からの各種の指示や設定要求を受け付けるための入力装置を備える。また、操作端末130は、画像を表示したり、操作者が入力装置を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したりする表示装置を備える。操作者は、操作端末130を操作することで、各種の指示や設定要求を再構成処理装置100に送信したり、再構成処理装置100内部の情報を閲覧したりすることができる。また、ネットワーク5は、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等、任意の通信網である。
クライアント端末140は、再構成処理装置100により提供される情報処理サービスを利用可能なクライアント機能を有する情報処理装置である。例えば、クライアント端末140は、パーソナルコンピュータやワークステーション、又は、X線CT装置に含まれるコンソール装置等に対応する。情報処理サービスを利用する利用者は、クライアント端末140を操作することで、情報処理サービスを利用する。ここで、利用者は、例えば、医療機関に従事する医師や技師などの医療従事者である。なお、クライアント端末140が有するクライアント機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でクライアント端末140内部の記憶回路(記憶装置)に予め記録されている。
再構成処理装置100は、通信インターフェース101、記憶回路110、及び処理回路120を備える。通信インターフェース101、記憶回路110、及び処理回路120は、相互に通信可能に接続される。
通信インターフェース101は、例えば、ネットワークカードやネットワークアダプタである。通信インターフェース101は、ネットワーク5に接続することで、再構成処理装置100と外部装置との間での情報通信を行う。
記憶回路110は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、医用画像データやGUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。
処理回路120は、再構成処理装置100における処理全体を制御する電子機器(プロセッサ)である。処理回路120は、取得機能121と、決定機能122と、画像生成機能123とを実行する。処理回路120が実行する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路110内に記録されている。処理回路120は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。なお、取得機能121は、取得部の一例である。決定機能122は、決定部の一例である。画像生成機能123は、画像生成部の一例である。
例えば、利用者は、クライアント端末140を操作して、サービスセンタにある再構成処理装置100へ投影データを送信する(アップロードする)旨の指示を入力する。この指示が入力されると、クライアント端末140は、再構成処理装置100へ投影データを送信する。ここで、この投影データは、フォトンカウンティングCTを実行可能なX線CT装置により収集されたデータであり、図1に示した前処理回路34による各種の処理が完了した段階のデータである。なお、ここでは一例として、投影データが再構成処理装置100へ送信される場合を説明するが、これに限定されるものではない。
そして、再構成処理装置100において、取得機能121は、被検体を透過したX線の入射に応じて信号を出力する光子計数型検出器の複数の検出素子から出力される信号に基づくエネルギースペクトルに関する出力値を取得する。つまり、取得機能121は、クライアント端末140から送信された投影データを受信する。この投影データには、各ビューにおいて各検出素子が出力した信号に基づくエネルギースペクトルの情報が含まれている。取得機能121は、各ビューにおけるエネルギースペクトルを用いて、出力値をビューごとに算出する。これにより、取得機能121は、エネルギースペクトルに関する出力値を取得する。
そして、決定機能122は、出力値に基づいて、再構成領域のうちスペクトル再構成を行う第1領域と、エネルギー積分再構成を行う第2領域とを決定する。例えば、決定機能122は、図1に示した判定機能371及び決定機能372と同様の処理を実行可能である。具体的には、決定機能122は、判定機能371及び決定機能372と同様の処理により、再構成領域のうちスペクトル再構成を行うスペクトル再構成領域(第1領域)と、エネルギー積分再構成を行うエネルギー積分再構成領域(第2領域)とを決定する。
そして、画像生成機能123は、決定機能122による決定に基づいて画像を生成する。例えば、画像生成機能123は、図1に示した画像再構成回路36と同様の処理を実行可能である。具体的には、画像生成機能123は、スペクトル再構成領域R1についてはスペクトル再構成によりスペクトル再構成画像を生成する。また、画像生成機能123は、エネルギー積分再構成領域R2についてはエネルギー積分再構成によりエネルギー積分再構成画像を生成する。
そして、再構成処理装置100は、画像生成機能123により生成された画像を出力する。例えば、再構成処理装置100は、画像生成機能123により生成された画像をクライアント端末140に送信する(ダウンロードさせる)。これにより、再構成処理装置100は、フォトンカウンティングCTにおける画像再構成の精度及び処理速度を向上させることができる。このため、クライアント端末140の利用者は、例えば、画像再構成の精度が向上した画像を閲覧することができる。
また、例えば、再構成処理装置100によれば、再構成機能を備えていないX線CT装置で収集した投影データや、簡易な再構成機能しか備えていないX線CT装置で収集した投影データを用いた場合にも、フォトンカウンティングCTにおける画像再構成の精度及び処理速度を向上させることができる。言い換えると、再構成処理装置100によれば、例えば、医療機関等の施設に設置されるX線CT装置の構成を簡易な構成とすることができる。
すなわち、上述した実施形態に係る処理は、ネットワーク5上に設置された再構成処理装置100に備えることにより、再構成処理方法として提供可能である。再構成処理方法は、再構成処理装置100が、被検体を透過したX線の入射に応じて信号を出力する光子計数型検出器の複数の検出素子から出力される信号に基づくエネルギースペクトルに関する出力値を取得することを含む。また、再構成処理方法は、再構成処理装置100が、出力値に基づいて、再構成領域のうちスペクトル再構成を行う第1領域と、エネルギー積分再構成を行う第2領域とを決定することを含む。また、再構成処理方法は、再構成処理装置100が、決定に基づいて画像を生成することを含む。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
上述した実施形態において説明した判定機能371、決定機能372、及び表示制御機能373は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、判定機能371、決定機能372、及び表示制御機能373は、上記の実施形態において判定機能371、決定機能372、及び表示制御機能373が行うものとして説明した処理の手順を規定したプログラムをコンピュータに実行させることで、実現される。このプログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはプロセッサの回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサの回路内にプログラムを組み込む代わりに、コンソール30が有する記憶回路にプログラムを保存するように構成しても構わない。この場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、処理回路37は、画像再構成回路36の機能を備えていてもよい。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、フォトンカウンティングCTにおける画像再構成の精度及び処理速度を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。