JP2018115550A - トイレ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水垢の生成を抑制することができる、あるいは水垢を容易に除去することができるトイレ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便器と、前記便器のボウルの表面を洗浄する洗浄手段と、前記洗浄手段に洗浄水を供給する給水手段と、前記ボウルの洗浄の後に前記ボウルの表面に残った洗浄水中のケイ酸成分の重合を抑制するケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に残った洗浄水に添加するケイ酸成分重合抑制手段と、前記洗浄手段による前記ボウルの表面の洗浄が終了してから、上面視において前記ボウルの水引が開始する前に前記ケイ酸成分重合抑制手段の動作を開始する制御を実行する制御部と、を備え、前記ケイ酸成分重合抑制手段は、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に噴霧することで、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に添加し、前記ケイ酸成分重合抑制剤は、金属イオンを含む酸性水であることを特徴とするトイレ装置が提供される。
【選択図】図3

Description

本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関する。
大便器あるいは小便器のボウル面を洗浄水で洗浄した後にボウル面に残った残水が蒸発してボウル面が乾燥すると、水垢がボウル面に付着することがある。水垢がボウル面に付着すると、ボウル面が汚れてしまう。また、水垢はボウル面に強固に付着しているため、水垢を取り除くことは難しい。そのため、水垢の生成を抑制する技術、あるいは、水垢がボウル面に付着した場合でもその水垢を容易に除去できる技術が求められている。さらに、ケイ酸成分の水垢は、カルシウム成分やマグネシウム成分などの水垢よりも強固に便器の釉薬表面に固着する。そのため、ケイ酸成分の水垢を容易に除去できる技術が切望されている。
ここで、水垢成分となるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを予め除く衛生洗浄装置がある(特許文献1)。しかし、特許文献1に記載された衛生洗浄装置では、装置が大掛かりになるという問題がある。
また、pH4〜6の水素イオン濃度を有する殺菌生上水を生成し、殺菌生上水を被洗浄物体に供給する殺菌生上水供給式洗浄用住設機器がある(特許文献2)。また、洗浄操作がなされ所定時間が経過した後に、機能水をボウル部へ吐水する水洗式大便器がある(特許文献3)。しかし、特許文献2および特許文献3には、ケイ酸成分の水垢に関する記載はなく、水垢の生成を抑制する点、あるいは水垢を容易に除去する点においては改善の余地がある。
特開2004−270185号公報 特開平7−136660号公報 特開2004−92278号公報
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、水垢の生成を抑制することができる、あるいは水垢を容易に除去することができるトイレ装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、便器と、前記便器のボウルの表面を洗浄する洗浄手段と、前記洗浄手段に洗浄水を供給する給水手段と、前記ボウルの洗浄の後に前記ボウルの表面に残った洗浄水中のケイ酸成分の重合を抑制するケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に残った洗浄水に添加するケイ酸成分重合抑制手段と、前記洗浄手段による前記ボウルの表面の洗浄が終了してから、上面視において前記ボウルの水引が開始する前に前記ケイ酸成分重合抑制手段の動作を開始する制御を実行する制御部と、を備え、前記ケイ酸成分重合抑制手段は、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に噴霧することで、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に添加し、前記ケイ酸成分重合抑制剤は、金属イオンを含む酸性水であることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ボウルの表面に強固に付着する水垢は、ボウルの表面に残った残水中のケイ酸成分が重合することで形成される。この発明によれば、上面視においてボウルの水引が開始する前に、ボウルの表面に残った洗浄水にケイ酸成分重合抑制剤を添加することができる。これにより、ケイ酸成分の重合を抑制し、水垢の生成を抑制することができる。また、これにより、簡単な清掃で水垢を剥離(除去)できる。
また、上面視においてボウルの表面の水引が開始する前に、ボウルに残った残水にケイ酸成分重合抑制剤を添加するため、添加したケイ酸成分重合抑制剤は、ボウルの表面の比較的広範囲に広がる。そのため、ボウルの表面の略全体において、より確実に、水垢をより容易に剥離(除去)することができる。
また、このトイレ装置によれば、残水中のケイ酸成分の重合の進行を抑制することができる。すなわち、ケイ酸が重合しない状態で残水が蒸発しボウルの表面が乾燥すると、中性領域では、コーヒーステイン現象が起きる。その過程で、ケイ酸の重合化が進行する。一方、酸性領域では、コーヒーステイン現象は起きない。すると、溶媒が中央方向に流動し、且つケイ酸が重合しない状態となる。これにより、残水中のケイ酸成分の重合の進行を抑制し、水垢の生成を抑制できる。また、生成した水垢を容易に除去できる。
また、このトイレ装置によれば、金属イオンは、酸性水に添加されると、生成した水垢においてケイ酸(SiO)分子の間に介在する。そして、洗浄等により水が供給されると金属イオンが溶出する。すると、ケイ酸凝集体をより脆弱化させ、水垢を容易に除去できるようになる。
第2の発明は、第1の発明において、前記ケイ酸成分重合抑制手段は、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に噴霧する噴霧ノズルであり、前記制御部は、前記噴霧ノズルから噴霧される前記ケイ酸成分重合抑制剤の前記ボウルの表面における水滴占有率が20%以上の領域において前記ボウルの水引が開始する前に前記ケイ酸成分重合抑制手段の動作を開始する制御を実行するトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、噴霧ノズルから噴霧されるケイ酸成分重合抑制剤のボウルの表面における水滴占有率が20%以上の領域においてボウルの表面の水引が開始する前に、ボウルの表面に残った洗浄水にケイ酸成分重合抑制剤を噴霧することができる。このトイレ装置によれば、上面視において、水滴占有率が20%以上の領域においてボウルの表面の水引きが開始する前に、ボウルに残った残水にケイ酸成分重合抑制剤を噴霧するため、噴霧したケイ酸成分重合抑制剤は、ボウルの表面の比較的広範囲に広がる。そのため、ボウルの表面の略全体において、より確実に、水垢をより容易に剥離(除去)することができる。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記酸性水の酸性度は、pH2.5〜5.0であることを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、酸性水の酸性度がpH2.5〜5.0であるため、水を電解する電解槽により酸性水の生成が可能である。そのため、例えば薬剤の補充等のメンテナンスが不要となる。また、酸性度がpH2.5〜5.0の酸性水は、ボウルの表面に残った残水の酸性度を例えば約pH2.5〜5.0程度に調整することができる。
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記ボウルの表面に光触媒層が形成されたことを特徴とするトイレ装置である。
このトイレ装置によれば、ボウルの表面に光触媒層が形成されているため、ボウルの表面に紫外線を照射すると、光触媒は、励起して酸化還元反応を生ずる。その結果、雑菌や細菌や臭気物質などの有機物を分解する分解作用と、表面が水に濡れやすい親水作用と、を得ることができる。光触媒層が形成されたボウルは、汚物の付着を抑制したり、汚物を分解したり、付着した水垢を容易に除去できるため、便器の清掃負担を軽減し、きれいな便器を維持することができる。また、ボウルの表面に残った洗浄水にケイ酸成分重合抑制剤を添加することで水垢を容易に除去できるため、紫外線が水垢の下の光触媒層に照射されなくなることを抑制できる。これにより、光触媒の活性が低下することを抑制することができる。
本発明の態様によれば、水垢の生成を抑制することができる、あるいは水垢を容易に除去することができるトイレ装置が提供される。
本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す模式的断面図である。 本実施形態にかかるトイレ装置の洗浄動作の一例を例示するグラフ図である。 本実施形態にかかるトイレ装置の要部構成を表すブロック図である。 本実施形態の酸性水生成装置および金属イオン水生成装置を例示する模式的断面図である。 本実施形態にかかるトイレ装置の動作を例示するタイミングチャートである。 本実施形態のボウルにおける水滴の面積占有率が所定以上の範囲を例示する模式図である。 本実施形態の他のボウルにおける水滴の面積占有率が所定以上の領域を例示する模式図である。 便器洗浄後の水引の状態の一例を例示する模式図である。 噴霧ノズルから噴霧された水のテストピース上での状態を表した比較表である。 水垢が形成されるプロセスを説明する比較表である。 撥水領域を例示する写真である。 親水箇所および撥水箇所を説明するグラフ図である。 アルミニウムイオン酸性水の噴霧のタイミングによる水膜維持時間の違いを比較した比較表である。 ボウルの表面における水膜維持時間を表すグラフ図である。 ボウルの表面の撥水領域の一例を例示する写真である。 アルミニウムイオン酸性水の噴霧のタイミングによる接触角の違いを表すグラフ図である。 本検討の方法を説明する模式的平面図である。 本実施形態の便器を上方から眺めた模式的平面図である。 水滴占有率と光触媒活性の回復率との関係の一例を例示するグラフ図である。 本実施形態のボウルにおける水滴占有率の一例を例示する写真である。 噴霧回数と光触媒活性との関係の一例を例示するグラフ図である。 本検討の方法を説明する模式図である。 本実施形態の第1の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。 本実施形態の第2の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。 本実施形態の第2の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。 本実施形態の第2の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。 水道水および酸性電解水の水質分析結果を表す表である。 本実験における水垢除去性の評価結果の一例を例示する表である。 本実験における水垢除去性の評価結果の一例を例示する表である。 本実験における水垢除去性の評価結果の一例を例示する表である。 本実験における水垢除去性の評価結果の一例を例示する表である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す模式的断面図である。
また、図2は、本実施形態にかかるトイレ装置の洗浄動作の一例を例示するグラフ図である。
図1に表したトイレ装置10は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800の上に設けられた衛生洗浄装置100を有する。便器800は、ボウル801を有する。便器800には、ボウル801の表面を洗浄する洗浄手段が設けられている。また、便器800には、トラップ803と、ボウル給水口811と、トラップ給水口813と、が設けられている。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。なお、便蓋300は、必ずしも設けられていなくともよい。
ケーシング400の内部には、ボウル801の表面を洗浄する洗浄水を供給する洗浄水供給装置(給水手段)401が設けられている。また、例えばケーシング400の下部には、便器800のボウル801の表面に上水やケイ酸成分重合抑制剤などを噴霧する噴霧ノズル(ケイ酸成分重合抑制手段)481と、ボウル801に紫外線(UV:ultraviolet)を照射するUV光源483と、が設けられている。噴霧ノズル481およびUV光源483は、ケーシング400の内部に設けられていてもよいし、ケーシング400の外部に付設されていてもよい。
なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。また、ケイ酸成分重合抑制剤については、後に詳述する。
ボウル801の表面には、光触媒層(「光触媒膜」ともいう)が形成されている。
本願明細書において、「光触媒」とは、光を照射すると、酸化作用および還元作用の少なくともいずれかが促進されるものをいう。その結果、菌の栄養となる臭気物質などの有機物を分解する分解作用と、表面が水に濡れやすい親水作用と、を得ることができる。光触媒層が形成されたボウル801は、汚物の付着を抑制したり、汚物を分解したり、付着した水垢を容易に除去できるため、便器800の清掃負担を軽減し、きれいな便器800を維持することができる。
このような「光触媒」の材料としては、例えば、金属の酸化物を用いることができる。そのような酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)などを挙げることができる。これらのうちでも、特に、酸化チタンは、光触媒として活性であり、また、安定性や安全性などの点でも優れる。
なお、本願明細書において、「紫外線」とは、可視光線よりも波長が短く、軟X線よりも波長が長い光をいう。具体的には、波長が10ナノメートル〜400ナノメートルの光をいう。
図2に表したように、使用者が便器洗浄の操作を行うと、あるいは使用者が便座200から立ち上がって所定時間が経過することで便器洗浄すなわち、ボウル801の表面を洗浄する動作が自動的に実行される。便器洗浄が開始されると、ボウル給水口811からボウル801へ供給される洗浄水の瞬間流量が増加する。例えば、ボウル給水口811は、ボウル801の上縁に沿って洗浄水を吐出する(リム吐水)。
続いて、所定時間が経過すると、ボウル給水口811から吐出される洗浄水の瞬間流量は減少する一方で、トラップ給水口813からトラップ803へ供給される洗浄水の瞬間流量が増加する。例えば、トラップ給水口813は、トラップ803に向けて洗浄水を吐出する(ジェット吐水)。
このようなリム吐水およびジェット吐水により、ボウル801に吐出された洗浄水は、ボウル801の洗浄を行いつつトラップ803に満たされる。これにより、サイホンが発生する。そして、トラップ803に吐出された洗浄水は、溜水805の中にある汚物などを、トラップ803を通して外へ排出する。
続いて、所定時間が経過すると、トラップ給水口813からトラップ803へ供給される洗浄水の瞬間流量が減少する一方で、ボウル給水口811からボウル801へ供給される洗浄水の瞬間流量が増加する。これにより、溜水805が確保される。このようにして、ボウル801の表面が洗浄される。
なお、前述した洗浄動作は、本実施形態にかかるトイレ装置の洗浄動作の一例であり、これだけに限定されるわけではない。
ここで、前述した洗浄動作が終了した後にボウル801に残った残水が蒸発してボウル801の表面が乾燥すると、水垢がボウル801に付着することがある。通常、残水中の水分が蒸発する過程でケイ酸濃度が増加すると、ケイ酸の重合が促進される。これにより、コーヒーステイン現象(液滴中の溶媒の蒸発によって溶質が液滴の外郭へ流動しリング状に堆積する現象)が起き、強固な水垢が形成される。水垢がボウル801に付着すると、ボウル801が汚れてしまう。また、水垢はボウル801に強固に付着しているため、水垢を取り除くことは難しい。
これに対して、本実施形態にかかるトイレ装置10は、上面視においてボウル801の表面の水引が開始する前にケイ酸成分重合抑制剤をボウル801の表面へ噴霧するケイ酸成分重合抑制手段を備える。ケイ酸成分重合抑制剤は、例えば金属イオンを含む酸性度の高い水溶液(酸性水)である。つまり、本実施形態にかかるトイレ装置10は、ボウル801に残った残水を、金属イオンを含む酸性度の高い水溶液に置き換える。あるいは、本実施形態にかかるトイレ装置10は、ボウル801に残った残水に酸性度の高い水溶液又は金属イオンを含む酸性度の高い水溶液を添加する。
これによれば、ケイ酸の重合を抑制し水垢の生成を抑制することができる。また、生成した水垢を容易に除去することができる。
また、上面視においてボウル801の表面の水引が開始する前に、ボウル801に残った残水に金属イオンを含む酸性度の高い水溶液を添加するため、添加したケイ酸成分重合抑制剤は、ボウル801の表面の比較的広範囲に広がる。そのため、ボウル801の表面の略全体において、より確実に、水垢をより容易に剥離(除去)することができる。
なお、本願明細書においては、便座200に座った使用者からみて上方を「上方」とし、便座200に座った使用者からみて下方を「下方」とする。また、便座200に座った使用者からみて前方を「前方」とし、便座200に座った使用者からみて後方を「後方」とする。あるいは、便器800の方向を向いて便器800の前に立った使用者からみて手前側を「前方」とし、便器800の方向を向いて便器800の前に立った使用者からみて奥側を「後方」とする。また、便器800の方向を向いて便器800の前に立った使用者からみて右側を「右側方」とし、便器800の方向を向いて便器800の前に立った使用者からみて左側を「左側方」とする。
また、水垢を容易に除去することができるため、紫外線が水垢の下の光触媒層に照射されなくなることを抑制できる。これにより、光触媒の活性が低下することを抑制することができる。
すなわち、本発明者らの得た知見によれば、光触媒層の表面に水垢が形成されると、紫外線が水垢の下の光触媒層に照射されない。そのため、光触媒の活性が著しく低下する場合がある。これにより、その部位の光触媒の活性が著しく低下し、復元不能な場合がある。これに対して、水垢を容易に除去することができるため、紫外線が水垢の下の光触媒層に照射されなくなることを抑制できる。
前述した効果が得られる理由は、以下の如くである。但し、これは、本発明者が得た知見に基づく仮定あるいは仮説であり、本実施形態においてはこれに限定されるわけではない。
残水の酸性度を高くすると、残水中のケイ酸の重合の進行を抑制することができる。すると、水分が蒸発する過程で溶質濃度が増加してもコーヒーステイン現象が起こらず、溶媒が中央方向に流動する現象が観察された。そして、生成した水垢と基材との密着力は小さく、水垢を剥離し易いことが確認された。また、水垢の生成が抑制され、さらに生成した水垢を容易に除去できるという効果は、ケイ酸成分の水垢だけではなく、カルシウムイオン成分またはマグネシウムイオン成分の水垢に対しても得られる。
酸性水の酸性度は、例えば約pH2.5〜5.0程度である。この範囲の酸性度を有する酸性水であれば、水を電解する酸性水生成装置(ケイ酸成分重合抑制手段:例えば図3参照)により酸性水の生成が可能である。そのため、例えば薬剤の補充等のメンテナンスが不要となる。また、酸性度が約pH2.5〜5.0程度の金属イオンを含む酸性水は、残水の酸性度を例えば約pH2.5〜5.0(好ましくはpH2.0〜5.0)程度に調整することができる。なお、酸性度としては、pH1.5〜5.5の範囲で調整できればよい。
これによれば、ケイ酸の重合が抑制され、その結果、水垢の生成を抑制でき、さらに生成した水垢を容易に除去することができる。高い酸性度の水中に溶存するSiOは、モノマーまたはダイマーのような重合度の低い状態で主に存在するため、水分が蒸発しても重合が抑制されるものと考えられる。一方、酸性度がpH1.5よりも小さい水溶液および酸性度がpH5.5よりも大きい水溶液の中では、モノマーまたはダイマーの存在率は低い。つまり、ケイ酸は高分子化しているものと考えられる。
また、酸性水に金属イオンを添加する場合において、酸性水に含まれる金属イオンは、例えば、アルミニウムイオン(Al3+)や銅イオン(Cu2+)などである。このような金属イオンは、酸性水に添加されると、生成した水垢においてケイ酸(SiO)分子の間に介在する。そして、洗浄等により水が供給されると金属イオンが溶出する。すると、ケイ酸凝集体をより脆弱化させ、水垢を容易に除去できるようになると考えられる。金属イオンの添加量は、残水に対し0.1ppm(parts per million)程度とされ、好ましくは1.0〜5.0ppm程度である。
次に、本実施形態にかかるトイレ装置10について、図面を参照しつつさらに説明する。
図3は、本実施形態にかかるトイレ装置の要部構成を表すブロック図である。
また、図4は、本実施形態の酸性水生成装置および金属イオン水生成装置を例示する模式的断面図である。
なお、図3は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。また、図4(a)は、本実施形態の酸性水生成装置を例示する。図4(b)は、本実施形態の金属イオン水生成装置を例示する。
図3に表したように、本実施形態にかかるトイレ装置10が備える衛生洗浄装置100は、給水手段401から供給された水をおしり洗浄ノズル439に導く第1の流路23を有する。第1の流路23の上流側には、バルブ413および熱交換器ユニット415が設けられている。バルブ413は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御装置180からの指令に基づいて水の供給を制御する。熱交換器ユニット415は、図示しない温水ヒータを有し、供給された水を加熱して所定の温水にする。
バルブ413および熱交換器ユニット415の下流には、殺菌水生成装置417が設けられている。殺菌水生成装置417は、例えば次亜塩素酸などを含む殺菌水を生成する。なお、殺菌水生成装置417は、酸性水生成装置120が酸性水を生成する際には通電されず殺菌水を生成しない。殺菌水生成装置417の下流には、VB(バキュームブレーカ)付きストレーナ419が設けられている。VB付きストレーナ419を通過した洗浄水は、電磁ポンプ435および流量調整弁437を介しておしり洗浄ノズル439へ導かれる。そして、洗浄水は、おしり洗浄ノズル439に設けられた図示しない吐水口から便座200に着座した使用者の「おしり」などへ向かって噴射される。
流量調整弁437は、おしり洗浄ノズル439や噴霧ノズル481への給水の開閉や切替を行う。第1の流路23は、流量調整弁437により、おしり洗浄ノズル439へ洗浄水などを導く流路(第1の流路23)と、噴霧ノズル481へ洗浄水や酸性水などを導く第2の流路25と、に分岐される。
第2の流路25の上流側には、酸性水生成装置120が設けられている。酸性水生成装置120の下流側には、流路切替弁431が設けられている。ここで、酸性水生成装置120について、図面を参照しつつさらに説明する。
図4(a)に表したように、本実施形態の酸性水生成装置120は、その内部に陽極板124および陰極板125を有し、制御装置180からの通電の制御によって、陽極板124と、陰極板125と、の間の空間(流路)を流れる水道水を電気分解できる。この際、陰極板125においては酸(H)が消費され、陰極板125の近傍ではpHが上昇する。すなわち、陰極板125の近傍では、アルカリ水が生成される。一方、陽極板124においてはアルカリ(OH)が消費され、陽極板124の近傍ではpHが下降する。すなわち、陽極板124の近傍では、酸性水が生成される。
図3に戻って説明すると、本実施形態では、流路切替弁431は、酸性水生成装置120から供給されたアルカリ性水を便器800の排水管880(図1参照)に直接排出する。これによれば、アルカリ性水が便器800のボウル801の表面に接触することがない。そのため、アルカリ性水が酸性水の殺菌作用を低減させることを抑制することができる。
あるいは、流路切替弁431は、本実施形態の水垢抑制効果を阻害しない範囲内において酸性水生成装置120から供給されたアルカリ性水を便器800へ流してもよい。
また、流路切替弁431は、酸性水生成装置120から供給された酸性水を金属イオン水生成装置(ケイ酸成分重合抑制手段)130へ導く。続いて、金属イオン水生成装置130は、酸性水生成装置120により生成された酸性水を使用し金属イオン酸性水を生成する。
ここで、金属イオン水生成装置130について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、金属イオン水生成装置130において溶解する金属イオンがアルミニウムイオン(Al3+)である場合を例に挙げて説明する。
図4(b)に表したように、本実施形態の金属イオン水生成装置130は、タンク131と、タンク131内に設置されたアルミニウム133と、を有する。酸性水生成装置120から流路切替弁431を介して供給された酸性水は、タンク131内に貯留される。そして、タンク131内に設置されたアルミニウム133は、タンク131内に貯留された酸性水により浸漬された状態となっている。
すると、酸性水に浸漬されたアルミニウム133は、例えば約1〜2分間かけて溶解(徐溶)する。これにより、タンク131内の酸性水は、アルミニウムイオンを含む酸性水(アルミニウムイオン酸性水)となる。つまり、金属イオン水生成装置130において、金属イオン(本実施形態ではAl3+)を含む酸性度の高い水溶液が生成される。
図3に戻って説明すると、金属イオン水生成装置130により生成された金属イオン酸性水は、噴霧ノズル481へ導かれる。噴霧ノズル481は、金属イオン水生成装置130から供給された金属イオン酸性水をボウル801へ噴霧する。
また、本実施形態の衛生洗浄装置100は、入室検知センサ451と、人体検知センサ453と、着座検知センサ455と、を有する。
入室検知センサ451は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ451は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ451としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
人体検知センサ453は、便器800の前方にいる使用者、すなわち便座200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ453は、トイレ室に入室して便座200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサ453としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
着座検知センサ455は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ455は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ455としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサなどを用いることができる。
次に、本実施形態にかかるトイレ装置10の動作について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作を例示するタイミングチャートである。 図6は、本実施形態のボウルにおける水滴の面積占有率が所定以上の範囲を例示する模式図である。
図7は、本実施形態の他のボウルにおける水滴の面積占有率が所定以上の領域を例示する模式図である。
図6(a)および図7(a)は、ボウルを上方から眺めた模式的平面図である。図6(b)および図7(b)は、ボウルを左側方から眺めた模式的断面図である。図6(c)および図6(c)は、ボウルを前方から眺めた模式的断面図である。
入室検知センサ451がトイレ室に入室した使用者を検知すると、バルブ413が開き、上水がボウル801の表面に噴霧される(プレミスト:タイミングt1)。上水が噴霧される時間は、例えば約4秒間程度である(タイミングt1〜t2)。このように、使用者が便器800を使用する前に、ボウル801の表面を濡らすことで、ボウル801の表面に付着する汚物を軽減させることができる。
続いて、着座検知センサ455が便座200に着座した使用者を検知し(タイミングt3)、使用者が所定の操作を行うと、「おしり洗浄」が実行される(タイミングt4〜tt5)。続いて、着座検知センサ455が使用者の便座200からの離座を検知して(タイミングt6)から所定時間が経過すると、便器洗浄が実行される(タイミングt7〜t8)。便器洗浄の動作は、例えば図2に関して前述した如くである。なお、便器洗浄は、使用者が所定の操作(例えばリモコン操作やレバー操作など)を行うことで実行されてもよい。
便器洗浄の終了と略同時に、酸性水生成装置120が動作を開始する(タイミングt8)。すなわち、酸性水生成装置120は、酸性水およびアルカリ性水を生成する。酸性水生成装置120の動作時間は、例えば約1分間程度である(タイミングt8〜t10)。酸性水生成装置120により生成された酸性水は、金属イオン水生成装置130へ導かれる。酸性水生成装置120により生成されたアルカリ性水は、排水管880へ排出される。なお、例えば、入室検知センサ451は、酸性水生成装置120の動作中に、使用者のトイレ室からの退室を検知する(タイミングt9)。
続いて、金属イオン水生成装置130は、金属イオン酸性水を生成する(タイミングt10)。図4(b)に関して前述したように、金属イオン水生成装置130がタンク131とアルミニウム133とを有する場合には、アルミニウムの徐溶時間は、例えば約1分間程度である(タイミングt10〜t11)。
続いて、上面視においてボウル801の表面の水引が開始する前に、噴霧ノズル481が金属イオン酸性水をボウル801の表面へ噴霧する(アフターミスト:タイミングt12)。金属イオン酸性水の噴霧時間は、例えば約7秒間程度である(タイミングt12〜t13)。
ここで、例えば図6(a)〜図6(c)に表したように、第1の例の便器800aにおいて噴霧ノズル481からボウル801aの表面に噴霧される金属イオン酸性水の噴霧領域は、図6(a)〜図6(c)に表した噴霧領域A1に表した通りである。あるいは、例えば図7(a)〜図7(c)に表したように、第2の例の便器800bにおいて噴霧ノズル481からボウル801bの表面に噴霧される金属イオン酸性水の噴霧領域は、図7(a)〜図7(c)に表した噴霧領域A2に表した通りである。
噴霧領域A1は、ボウル801aの表面に付着した金属イオン酸性水面積占有率(以下、「水滴占有率」という)が20パーセント(%)以上の領域である。噴霧領域A2は、噴霧領域A1と同様に、水滴占有率が20%以上の領域である。本発明者が得た知見によれば、20%以上の水滴占有率が確保される領域においてボウルの表面の水引きが開始する前に、ボウルに残った残水に金属イオン酸性水を噴霧するため、ボウルの表面の略全体において、より確実に、水垢をより容易に剥離(除去)することができる。
ここで、本願明細書において「水滴占有率」とは、次の条件式を用いて算出される数値をいうものとする。

水滴の面積÷撮影面積×100=水滴占有率(%)
本実施形態において、水滴占有率を測定する方法は、以下の通りである。
すなわち、ボウル801の表面にテストピースを載置する。テストピースの表面の性状は、ボウル801の表面の性状と同様である。続いて、食用緑(小倉食品加工株式会社製)を用いて着色させた水を噴霧ノズル481から噴霧する。
続いて、テストピースを載置台の上に載置し、「KEYENCE社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−100F」を用いて、「KEYENCE社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−100F」のユーザーズマニュアルの1−4、7−26に基づいて水滴が付着したテストピースの表面を撮影する。続いて、撮影した水滴の画像において、輝度を活用した面積測定機能を使って水滴の面積を測定する。そのために、まず、設定した輝度の部分を抽出する(二値化処理)。輝度の部分の抽出は、「KEYENCE社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−100F」のユーザーズマニュアルの7−27、7−28に基づいて行う。
続いて、輝度抽出画像について、「KEYENCE社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−100F」のユーザーズマニュアルの7−31、7−32、7−33に基づいて、小粒除去処理および穴埋めの処理を行う。小粒除去処理は、二値化された画像内において、面積が小さいものを除去する機能である。穴埋めの処理は、二値化された画像内において、測定領域に測定できていない穴が生じている場合、穴を埋めて二値化処理できるようにする機能である。続いて、前述した条件式を用いて、テストピースに付着した水滴占有率を算出する。
本実施形態において、具体的には、噴霧ノズル481から噴霧される金属イオン酸性水のボウル801の表面における水滴占有率が20%以上の領域においてボウル801の表面の水引が開始する前に、噴霧ノズル481が金属イオン酸性水をボウル801の表面へ噴霧する(アフターミスト:タイミングt12)。噴霧ノズル481が金属イオン酸性水の噴霧を開始するタイミングは、便器洗浄が終了してから例えば2分30秒間以内である。つまり、上面視においてボウル801の表面の水引が開始する前、あるいは、水滴占有率が20%以上の領域においてボウル801の表面の水引が開始する前とは、便器洗浄が終了してから例えば2分30秒間以内である。
以下、本発明者が実施したボウル801の表面の水引およびボウル801の表面の撥水の検討について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、便器洗浄後の水引の状態の一例を例示する模式図である。
本発明者は、便器洗浄が終了してから2分後、4分後、6分後、8分後および10分後の水引の状態を検討した。本検討において使用した便器800のボウル801の表面には、光触媒層が形成されている。本発明者は、室温が約23℃程度、湿度が約28%RH程度の条件下で本検討を実施した。便器洗浄が終了してから前述した各時間が経過したときの水引の状態は、図8に表した通りである。
すなわち、便器洗浄が終了してから2分後および4分後では、上面視においてボウル801の表面の水引は、開始されていない。つまり、便器洗浄のときにボウル801に流れた洗浄水により形成された水膜が維持されている(水膜維持)。図1、図2および図5に関して前述したように、本実施形態では、この状態(上面視においてボウル801の表面の水引が開始する前の状態)で、噴霧ノズル481が金属イオン酸性水をボウル801の表面へ噴霧する。
続いて、便器洗浄が終了してから6分後では、上面視においてボウル801の表面の水引が開始された。水引領域A11については、目視で確認することができる。続いて、便器洗浄が終了してから8分後では、水引領域A11が拡大した。便器洗浄が終了してから6分後および8分後では、水引領域A11以外の領域は、湿潤な状態が維持されている。
続いて、便器洗浄が終了してから10分後では、水引領域A11がさらに拡大した。水引領域A11以外の領域は、湿潤な状態ではなく、水が蒸発しボウル801の表面が乾燥した状態となっていた。このような状態が繰り返されると、強固な水垢がボウル801の表面に形成されるおそれがある。
図9は、噴霧ノズルから噴霧された水のテストピース上での状態を表した比較表である。
図9(a)は、水引開始前に噴霧した試験水のテストピース上での状態の一例を例示する写真である。図9(b)は、水引開始前に噴霧した試験水のテストピース上での状態を表す模式的断面図である。図9(c)は、水引開始後に噴霧した試験水のテストピース上での状態の一例を例示する写真である。図9(d)は、水引開始後に噴霧した試験水のテストピース上での状態を表す模式的断面図である。
本発明者は、水引開始の前後において、ボウル801の表面に載置したテストピース820に第1の試験水485aを噴霧した。テストピース820の表面の性状は、ボウル801の表面の性状と同様である。第1の試験水485aは、食紅により染色された水道水である。本発明者は、水滴占有率が約35%程度に相当する第1の試験水485aを噴霧した。
第1の試験水485aのテストピース820上での状態は、図9(a)〜図9(b)に表した通りである。
すなわち、図9(a)および図9(b)に表したように、水引開始前に噴霧された第1の試験水485a(水膜825がテストピース820の上に維持された状態で噴霧された第1の試験水485a)は、水引開始後に噴霧された第1の試験水485aと比較すると、テストピース820の上で濡れ広がっている。
これに対して、図9(c)および図9(d)に表したように、水引開始後に噴霧された第1の試験水485a(水膜825がテストピース820の上に維持されていない状態で噴霧された第1の試験水485a)は、水引開始前に噴霧された第1の試験水485aと比較すると、テストピース820の上で濡れ広がらない。つまり、水引開始後のテストピース820の表面は、水滴が部分的に残る状態となる。
図10は、水垢が形成されるプロセスを説明する比較表である。
図10(a)は、水引開始前に試験水の噴霧を繰り返したときのテストピースの表面状態の一例を例示する写真である。図10(b)は、水引開始前に噴霧した試験水のテストピース上での状態を表す模式的断面図である。図10(c)は、水引開始前に噴霧した試験水が乾燥した後における水垢の形成状態を表す模式的断面図である。
図10(d)は、水引開始後に試験水の噴霧を繰り返したときのテストピースの表面状態の一例を例示する写真である。図10(e)は、水引開始後に噴霧した試験水のテストピース上での状態を表す模式的断面図である。図10(f)は、水引開始後に噴霧した試験水が乾燥した後における水垢の形成状態を表す模式的断面図である。
本発明者は、水引開始前に第2の試験水485bを噴霧する動作を100回繰り返した。また、本発明者は、水引開始後に第2の試験水485bを噴霧する動作を100回繰り返した。第2の試験水485bは、アルミニウムイオン酸性水である。第2の試験水485b中のアルミニウムイオンの濃度は、3ppmである。第2の試験水485b中の溶性ケイ酸の濃度は、14ppmである。第2の試験水485bの酸性度は、pH4.2である。本発明者は、鉛筆により第2の試験水485bを着色した。テストピース820の表面の乾燥時間は、25分間である。
図10(a)に表したように、水引開始前に試験水を噴霧する動作を100回繰り返すと、水垢は、ほとんど形成されていないか、あるいは薄く分散して形成された。つまり、図10(b)に表したように、水引開始前に噴霧された第2の試験水485bは、水引開始後に噴霧された第2の試験水485bと比較すると、テストピース820の上で濡れ広がる。そして、図10(c)に表したように、第2の試験水485bが乾燥すると、水垢487が局所的に形成される。
これに対して、図10(d)に表したように、水引開始後に試験水を噴霧する動作を100回繰り返すと、水垢がテストピース820上に形成された。つまり、図10(e)に表したように、水引開始後に噴霧された第2の試験水485bは、水引開始前に噴霧された第2の試験水485bと比較すると、テストピース820の上で濡れ広がらない。そして、図10(f)に表したように、第2の試験水485bが乾燥すると、水垢487が形成される。
図11は、撥水領域を例示する写真である。
図12は、親水箇所および撥水箇所を説明するグラフ図である。
図11(a)は、水引開始前にアルミニウムイオン酸性水を噴霧したときの撥水領域を表す模式的平面図である。図11(b)は、水引開始後にアルミニウムイオン酸性水を噴霧したときの撥水領域を表す模式的平面図である。
図12(a)は、親水箇所および撥水箇所のそれぞれにおける栄養残存率の一例を例示するグラフ図である。図12(b)は、親水箇所および撥水箇所のそれぞれにおける吸光度を表すグラフ図である。
図11(a)に表した便器800では、便器洗浄が終了してから2.5分後(2分30秒後)にアルミニウムイオン酸性水を噴霧した。アルミニウムイオンの濃度は、2.2ppmである。アルミニウムイオン酸性水の噴霧量は、280cc(cubic centimetre)/分である。また、ボウル801の表面には光触媒層が形成され、紫外線の照射強度は、200マイクロワット/平方センチメートル(μW/cm)である。便器800の使用頻度は、4回/日である。
一方、図11(b)に表した便器800では、便器洗浄が終了してから5.5分後(5分30秒後)にアルミニウムイオン酸性水を噴霧した。アルミニウムイオンの濃度は、2.0ppmである。アルミニウムイオン酸性水の噴霧量は、240cc/分である。また、ボウル801の表面には光触媒層が形成され、紫外線の照射強度は、200μW/cmである。便器800の使用頻度は、6回/日である。
親水領域および撥水領域は、図11(a)および図11(b)に表した通りである。図11(a)は、検討開始から6週間が経過した状態を表している。この状態では、上面視においてボウル801の表面には、撥水領域A12は存在しない。これに対して、図11(b)は、検討開始から6日が経過した状態を表している。この状態で、上面視においてボウル801の表面の周辺部には、撥水領域A12が存在する。
本発明者は、図11(b)に表した親水箇所B1および図11(b)に表した撥水箇所B2のそれぞれにおける栄養残存率を測定した。測定結果の一例は、図12(a)に表した通りである。すなわち、撥水箇所B2における「脂質」および「タンパク質」の栄養残存率は、親水箇所B1における「脂質」および「タンパク質」の栄養残存率と略同じである。これに対して、撥水箇所B2における「糖+水垢」の栄養残存率は、親水箇所B1における「糖+水垢」の栄養残存率よりも高い。
また、本発明者は、親水箇所B1および撥水箇所B2のそれぞれにおける吸光度をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR:Fourier Transforminfrared - infrared spectroscopy)により測定した。測定結果の一例は、図12(b)に表した通りである。すなわち、撥水箇所B2における「脂質」および「タンパク質」の吸光度は、親水箇所B1における「脂質」および「タンパク質」の吸光度と略同じである。これに対して、撥水箇所B2における「糖+水垢」の吸光度は、親水箇所B1における「糖+水垢」の吸光度よりも高い。
これによれば、アルミニウムの徐溶時間がより長く、アルミニウムイオン酸性水の噴霧のタイミングがより遅いと、ボウル801の表面のうちの少なくとも一部が撥水化することが分かった。また、撥水領域A12における水垢(SiO)は、親水領域における水垢よりも多いことが分かった。つまり、水垢が撥水領域A12の発生の起因の1つであることが分かった。
図13は、アルミニウムイオン酸性水の噴霧のタイミングによる水膜維持時間の違いを比較した比較表である。
図13(a)〜図13(h)に表した便器800のボウル801の表面には、光触媒層が形成されている。室温が約23℃程度、湿度が約28%RH程度の条件下で、アルミニウムイオン酸性水の噴霧動作を4000回繰り返した。具体的には、図13(a)〜図13(d)に表した便器800では、便器洗浄が終了してから2.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作を4000回繰り返した。図13(e)〜図13(h)に表した便器800では、便器洗浄が終了してから5.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作を4000回繰り返した。そして、便器洗浄後の経過時間(2分後、4分後、6分後、8分後)に応じた撥水領域A12の発生状態は、図13(a)〜図13(h)に表した通りである。
すなわち、図13(a)に表した便器(2.5分後噴霧、便器洗浄2分後)および図13(b)に表した便器(2.5分後噴霧、便器洗浄4分後)では、上面視においてボウル801の表面には、撥水領域A12は存在しない。図13(c)に表した便器(2.5分後噴霧、便器洗浄6分後)および図13(d)に表した便器(2.5分後噴霧、便器洗浄8分後)では、上面視においてボウル801の表面の周辺部には、撥水領域A12が存在する。
これに対して、図13(e)に表した便器(5.5分後噴霧、便器洗浄2分後)では、上面視においてボウル801の表面に、すでに撥水領域A12が存在する。撥水領域A12は、時間の経過とともに広がっている。図13(f)に表した便器(5.5分後噴霧、便器洗浄4分後)、図13(g)に表した便器(5.5分後噴霧、便器洗浄6分後)、および図13(h)に表した便器(5.5分後噴霧、便器洗浄8分後)では、上面視においてボウル801の表面の周辺部に撥水領域A12が存在する。
これによれば、便器洗浄が終了してから5.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作では、便器洗浄が終了してから2.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作と比較して、撥水領域A12が発生するタイミングが早い。また、アルミニウムイオン酸性水が届きにくい箇所から先に撥水領域A12が発生することが分かった。
図14は、ボウルの表面における水膜維持時間を表すグラフ図である。
図15は、ボウルの表面の撥水領域の一例を例示する写真である。
図15(a)は、アルミニウムイオン酸性水を噴霧していない初期(新品)の便器の撥水領域を表する模式的平面図である。図15(b)は、水引開始前にアルミニウムイオン酸性水を噴霧したときの撥水領域を表す模式的平面図である。図11(b)は、水引開始後にアルミニウムイオン酸性水を噴霧したときの撥水領域を表す模式的平面図である。
本検討において使用した便器800のボウル801の表面には、光触媒層が形成されている。
図15(a)に表した便器800のボウル801の状態は、図14に表したタイミングt11における状態である。つまり、図15(a)に表した便器800では、アルミニウムイオン酸性水をボウル801に噴霧していない。そして、便器洗浄が終了してから5分間が経過すると、撥水領域A12が上面視においてボウル801の表面に発生した。言い換えれば、便器洗浄が終了してから5分間が経過するまでは、ボウル801の親水性を維持(水膜を維持)することができる。
図15(b)に表した便器800のボウル801の状態は、図14に表したタイミングt12における状態である。つまり、図15(b)に表した便器800では、便器洗浄が終了してから2.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作を繰り返した。そして、便器洗浄が終了してから4分間が経過すると、上面視においてボウル801の表面に撥水領域A12が発生した。言い換えれば、便器洗浄が終了してから4分間が経過するまでは、ボウル801の親水性を維持(水膜を維持)することができる。
図15(c)に表した便器800のボウル801の状態は、図14に表したタイミングt13における状態である。つまり、図15(c)に表した便器800では、便器洗浄が終了してから5.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作を繰り返した。そして、便器洗浄が終了してから1.5分間(1分30秒間)が経過すると、上面視においてボウル801の表面に撥水領域A12が発生した。言い換えれば、便器洗浄が終了してから1.5分間が経過するまでは、ボウル801の親水性を維持(水膜を維持)することができる。
本検討によれば、水引開始前にアルミニウムイオン酸性水を噴霧することで、ボウル801の表面の親水性維持特性の長寿命化が可能となることが分かった。
図16は、アルミニウムイオン酸性水の噴霧のタイミングによる接触角の違いを表すグラフ図である。
図17は、本検討の方法を説明する模式的平面図である。
図16に表したグラフ図の横軸は、アルミニウムイオン酸性水の噴霧回数を表す。図16に表したグラフ図の縦軸は、接触角(°)を表す。
図17に表したように、本検討において本発明者は、ケイ酸の濃度が14ppmの上水を用いてテストピース820の表面を洗浄した。続いて、水引開始前に、アルミニウムイオン酸性水をテストピース820の表面に噴霧した。具体的には、上水による洗浄が終了してから30秒後に、アルミニウムイオンの濃度が3ppmのアルミニウムイオン酸性水をテストピース820の表面に噴霧した。また、他のテストピース820においては、水引開始後に、アルミニウムイオン酸性水をテストピース820の表面に噴霧した。具体的には、上水による洗浄が終了してから10分間後に、アルミニウムイオンの濃度が3ppmのアルミニウムイオン酸性水をテストピース820の表面に噴霧した。続いて、本発明者は、テストピース820上に存在するアルミニウムイオン酸性水の接触角を測定した。続いて、テストピース820を30分間放置した後に、上水を用いてテストピース820の表面を再び洗浄した。
本願明細書において「接触角」とは、所定の固体表面(本検討ではテストピース820の表面)と液体表面(本検討ではアルミニウムイオン酸性水の表面)との界面において、固体表面と液体表面とがなす角度であって液体の側で測定される角度をいうものとする(図9(b)および図9(d)参照)。また、接触角については、接触角計「協和界面化学(株)製、自動接触角計DM−500」を用いて測定した。
水引開始前後の噴霧におけるアルミニウムイオン酸性水の接触角は、図16に表した通りである。すなわち、水引開始後にアルミニウムイオン酸性水を噴霧した場合の接触角は、水引開始前にアルミニウムイオン酸性水を噴霧した場合の接触角よりも大きい。また、噴霧回数が増えると、接触角が大きくなる。なお、本発明者の得た知見によれば、撥水領域が生ずるときの接触角(撥水化ライン)は30°である。
本検討によれば、水引開始後にアルミニウムイオン酸性水を噴霧すると、ボウル801(本検討ではテストピース820)の表面の親水性維持特性の寿命を縮めることが分かった。
次に、水滴占有率について、図面を参照しつつさらに説明する。
図18は、本実施形態の便器を上方から眺めた模式的平面図である。
図18に表したように、本実施形態の便器800のボウル801の下部には、溜水(封水)805が形成されている。溜水805の上面の周囲には、喫水部807が形成されている。本願明細書において「喫水部」とは、溜水805の上面(溜水面)の周囲の部分をいうものとする。
本発明者は、使用者が排泄した汚物は、ボウル801の前方部よりもボウル801の後方部において付着しやすいという知見を得た。図18に表した汚物付着領域808は、喫水部807を含む領域であってボウル801の中央部から後方部にわたる領域である。一方で、図18に表した尿付着領域809は、ボウル801の前方部の領域である。
図19は、水滴占有率と光触媒活性の回復率との関係の一例を例示するグラフ図である。
図20は、本実施形態のボウルにおける水滴占有率の一例を例示する写真である。
本発明者は、アルミニウムイオン酸性水をボウル801の表面に噴射し、光触媒活性の回復率を測定した。アルミニウムイオン酸性水中のアルミニウムイオンの濃度は、1.3ppmである。アルミニウムイオン酸性水中のケイ酸の濃度は、14ppmである。アルミニウムイオン酸性水の噴霧量は、270cc/分である。アルミニウムイオン酸性水の噴霧時間は、7秒間である。なお、図20に表した写真は、検討開始から8週間が経過した状態を表している。
水滴占有率と光触媒活性の回復率との関係は、図19に表した通りである。すなわち、水滴占有率が20%以上である場合には、光触媒活性の回復率が75%以上となる。ここで、本発明者が得た知見によれば、光触媒活性の回復率が75%以上である場合には、ボウル801の表面において光触媒層の効果を十分に得ることができる。そのため、アルミニウムイオン酸性水をボウル801の表面に噴射し、20%以上の水滴占有率を確保することが望ましい。
なお、図20に表した測定箇所B11および測定箇所B12のそれぞれにおける水滴占有率は、それぞれ100%および35%である。これに対して、図20に表した測定箇所B13における水滴占有率は、14%であり、20%未満である。但し、図20に表した測定箇所B13は、汚物付着領域808ではなく尿付着領域809(図18参照)に存在する。そのため、汚物付着領域808における光触媒活性の回復率に影響を及ぼすことはない。
図21は、噴霧回数と光触媒活性との関係の一例を例示するグラフ図である。
図22は、本検討の方法を説明する模式図である。
図21に表したグラフ図の横軸は、アルミニウムイオン酸性水あるいは上水の噴霧回数である。図21に表したグラフ図の縦軸は、光触媒活性を表す。
図22(a)は、光触媒活性の測定箇所を表す写真である。図22(b)は、本検討の方法を表す模式的斜視図である。
図22(b)に表したように、本発明者は、便器洗浄を行い、水引開始前にアルミニウムイオン酸性水をボウル801の表面に噴霧した。具体的には、便器洗浄が終了してから2.5分後に、アルミニウムイオンの濃度が0.1〜1.3ppmのアルミニウムイオン酸性水をボウル801の表面に噴霧した。あるいは、本発明者は、便器洗浄を行い、水引開始後にアルミニウムイオン酸性水をボウル801の表面に噴霧した。具体的には、便器洗浄が終了してから5.5分後に、アルミニウムイオンの濃度が0.1〜1.2ppmのアルミニウムイオン酸性水をボウル801の表面に噴霧した。続いて、本発明者は、図22に表した測定箇所B14における光触媒活性を測定した。続いて、テストピース820を30分間放置した後に、便器洗浄を再び行った。
水引開始前後の噴霧における光触媒活性は、図21に表した通りである。本検討によれば、水引開始前にアルミニウムイオン酸性水あるいは上水を噴霧すると、光触媒活性の低下速度が緩和されることが分かった。
次に、ボウルの表面における水膜維持時間について、図面を参照しつつさらに説明する。
図23は、本実施形態の第1の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。
図23(a)は、便器洗浄が終了してから2分後の状態を表す写真である。図23(b)は、便器洗浄が終了してから3分後の状態を表す写真である。図23(c)は、便器洗浄が終了してから4分後の状態を表す写真である。図23(d)は、便器洗浄が終了してから5分後の状態を表す写真である。図23(e)は、便器洗浄が終了してから6分後の状態を表す写真である。図23(f)は、便器洗浄が終了してから7分後の状態を表す写真である。
本発明者は、第1の例の便器800a(図6参照)のボウル801aの表面において、便器洗浄が終了してから2分後、3分後、4分後、5分後、6分後および7分後の水引の状態を検討した。ボウル801aの表面の光触媒活性は、約7〜11程度である。また、図23(a)〜図23(f)に表した第1の例の便器800aは、アルミニウムイオン酸性水を噴霧していない初期(新品)の便器である。本検討によれば、第1の例の便器800aのボウル801aにおいて、便器洗浄が終了してから水引領域A11が発生するまでの時間(水膜維持時間)は、5分間であることが分かった。
図24は、本実施形態の第2の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。
図24(a)は、便器洗浄が終了してから2分後の状態を表す写真である。図24(b)は、便器洗浄が終了してから3分後の状態を表す写真である。図24(c)は、便器洗浄が終了してから4分後の状態を表す写真である。図24(d)は、便器洗浄が終了してから5分後の状態を表す写真である。図24(e)は、便器洗浄が終了してから6分後の状態を表す写真である。図24(f)は、便器洗浄が終了してから7分後の状態を表す写真である。
本発明者は、第2の例の便器800b(図7参照)のボウル801bの表面において、便器洗浄が終了してから2分後、3分後、4分後、5分後、6分後および7分後の水引の状態を検討した。ボウル801bの表面の光触媒活性は、約9〜12程度である。また、図24(a)〜図24(f)に表した第2の例の便器800bは、アルミニウムイオン酸性水を噴霧していない初期(新品)の便器である。本検討によれば、第2の例の便器800bのボウル801bにおいて、水膜維持時間は、5分間であることが分かった。
図25は、本実施形態の第2の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。
図25(a)は、便器洗浄が終了してから2分後の状態を表す写真である。図25(b)は、便器洗浄が終了してから3分後の状態を表す写真である。図25(c)は、便器洗浄が終了してから4分後の状態を表す写真である。図25(d)は、便器洗浄が終了してから5分後の状態を表す写真である。図25(e)は、便器洗浄が終了してから6分後の状態を表す写真である。図24(f)は、便器洗浄が終了してから7分後の状態を表す写真である。
本発明者は、第2の例の便器800b(図7参照)のボウル801bの表面において、便器洗浄が終了してから2分後、3分後、4分後、5分後、6分後および7分後の水引の状態を検討した。ボウル801bの表面の光触媒活性は、約1〜2程度である。また、図25(a)〜図25(f)に表した第2の例の便器800bでは、便器洗浄が終了してから2.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作を繰り返した。本検討によれば、第2の例の便器800bのボウル801bにおいて、便器洗浄が終了してから2.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧すると、水膜維持時間は、4分間であることが分かった。
図26は、本実施形態の第2の例の便器のボウルの表面における水膜維持時間を検討した結果の一例を例示する写真である。
図26(a)は、便器洗浄が終了してから1.5分後の状態を表す写真である。図26(b)は、便器洗浄が終了してから3分後の状態を表す写真である。図26(c)は、便器洗浄が終了してから4分後の状態を表す写真である。図26(d)は、便器洗浄が終了してから5分後の状態を表す写真である。図26(e)は、便器洗浄が終了してから6分後の状態を表す写真である。図26(f)は、便器洗浄が終了してから7分後の状態を表す写真である。
本発明者は、第2の例の便器800b(図7参照)のボウル801bの表面において、便器洗浄が終了してから1.5分後、3分後、4分後、5分後、6分後および7分後の水引の状態を検討した。また、図26(a)〜図26(f)に表した第2の例の便器800bでは、便器洗浄が終了してから5.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧する動作を繰り返した。本検討によれば、第2の例の便器800bのボウル801bにおいて、便器洗浄が終了してから5.5分後にアルミニウムイオン酸性水の噴霧すると、水膜維持時間は、1.5分間未満であることが分かった。
次に、本発明者が行った金属イオン水の実験について、図面を参照しつつ説明する。
図27は、水道水および酸性電解水の水質分析結果を表す表である。
また、図28〜図31は、本実験における水垢除去性の評価結果の一例を例示する表である。
以下の実施例では、表面に釉薬層を形成したタイル(5cm×5cm)、および下記に記載するpH調整水を試験液として用い、また対照として酸性電解水を用いて評価した。また、以下の実施例において行った摺動試験は以下の通りとした。
通常の水道水に硝酸(試薬特級 和光純薬工業株式会社製)を添加し、pHを1〜6に調整した溶液をpH調整水とした。用いた水道水の水質分析結果を図27に示す。また、下記の組成の酸性電解水は電解水生成装置(TEK511 TOTO株式会社製)で作製した。
硝酸アルミニウム九水和物または硝酸銅六水和物(全て試薬特級 和光純薬工業株式会社製)を水道水に溶解し、各金属イオンが1000ppmになるように調整した溶液を金属イオン原液とした。この金属イオン原液を、pH調整水(pH1〜6)で希釈し、金属イオン濃度(0.1,0.5,1,5,10ppm)とpH(pH1〜6)を各々調整した溶液を金属イオン添加pH調整水とした。
摺動試験については、ラビングテスター(太平理化工業株式会社製)を使用して、以下の方法で行う。不織布スポンジであるスコッチブライト(登録商標)(SS−72K 住友3M株式会社製)を2.24cm角に切断したものを、両面テープを用いて不織布の部分が摺動面に当たるようにヘッドに接着したあと、蒸留水で濡らした。水垢付着部をデジタルマイクロスコープ(VHX―900 株式会社キーエンス製)を用いて、倍率100倍で観察を行った。次いで、250gの錘を載せて(荷重条件:4.9kPa)10回数摺動し、上記と同じ条件でデジタルマイクロスコープを使用して観察を行い、水垢が除去されているかを判断した。なお、荷重条件:4.9kPaでの10回数の摺動は、通常の便器掃除の条件に相当する。評価は以下の通りとした。

○:10回数摺動以内で水垢が除去された
×:50回数摺動でも水垢が残った
pH調整水の水垢除去性を以下の方法で評価した。まず、表面に釉薬層を形成したタイル(5cm×5cm)にpH調整水及び酸性電解水を20μL滴下した後、48時間常温で静置して水垢を乾燥付着させた。その後、摺動試験を行った。その結果は図28に示される通りであった。
硝酸アルミニウム九水和物を使用して調製したアルミニウムイオン添加pH調整水を試験液とした以外は、図28に関して前述した実施例と同様の方法で水垢除去性を評価した。その結果は図29に示される通りであった。
硝酸銅六水和物を使用して調製した銅イオン添加pH調整水を試験液とした以外は、図28に関して前述した実施例と同様の方法で水垢除去性を評価した。その結果は図30に示される通りであった。
硝酸アルミニウム九水和物または硝酸銅六水和物(全て試薬特級 和光純薬工業株式会社製)を使用して調製した各種金属イオン原液を市販の電解水生成装置(TEK511 TOTO株式会社製)で生成した酸性電解水に適量添加し、狙いの金属イオン濃度(0.1,0.5,1,5,10ppm)に希釈したものを金属イオン添加酸性電解水とする。なお、用いた酸性電解水の水質分析結果を図27に示す。
金属イオン添加酸性電解水を試験液とした以外は、図28に関して前述した実施例と同様の方法で水垢除去性を評価した。その結果は図31に示される通りであった。
以上、図27〜図31に関して前述した実験結果によれば、pHを約2.0〜5.0程度に調整した酸性水および金属イオン(本実施では、Al3+、Cu2+)を含む酸性水が蒸発して生成された水垢については、水垢除去性が良好であることが分かった。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置10および衛生洗浄装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや噴霧ノズル481およびUV光源483の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、本実施形態では、便器が洋式腰掛便器(大便器)である場合を例に挙げて説明したが、本実施形態の便器の範囲には小便器も含まれる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
10 トイレ装置、 23 第1の流路、 25 第2の流路、 100 衛生洗浄装置、 120 酸性水生成装置、 124 陽極板、 125 陰極板、 130 金属イオン水生成装置、 131 タンク、 133 アルミニウム、 180 制御装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 ケーシング、 401 給水手段、 413 バルブ、 415 熱交換器ユニット、 417 殺菌水生成装置、 419 VB付きストレーナ、 431 流路切替弁、 435 電磁ポンプ、 437 流量調整弁、 439 おしり洗浄ノズル、 451 入室検知センサ、 453 人体検知センサ、 455 着座検知センサ、 481 噴霧ノズル、 483 UV光源、 485a 第1の試験水、 485b 第2の試験水、 487 水垢、 800、800a、800b 便器、 801、801a、801b ボウル、 803 トラップ、 805 溜水、 807 喫水部、 808 汚物付着領域、 809 尿付着領域、 811 ボウル給水口、 813 トラップ給水口、 820 テストピース、 825 水膜、 880 排水管

Claims (4)

  1. 便器と、
    前記便器のボウルの表面を洗浄する洗浄手段と、
    前記洗浄手段に洗浄水を供給する給水手段と、
    前記ボウルの洗浄の後に前記ボウルの表面に残った洗浄水中のケイ酸成分の重合を抑制するケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に残った洗浄水に添加するケイ酸成分重合抑制手段と、
    前記洗浄手段による前記ボウルの表面の洗浄が終了してから、上面視において前記ボウルの水引が開始する前に前記ケイ酸成分重合抑制手段の動作を開始する制御を実行する制御部と、
    を備え、
    前記ケイ酸成分重合抑制手段は、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に噴霧することで、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に添加し、
    前記ケイ酸成分重合抑制剤は、金属イオンを含む酸性水であることを特徴とするトイレ装置。
  2. 前記ケイ酸成分重合抑制手段は、前記ケイ酸成分重合抑制剤を前記ボウルの表面に噴霧する噴霧ノズルであり、
    前記制御部は、前記噴霧ノズルから噴霧される前記ケイ酸成分重合抑制剤の前記ボウルの表面における水滴占有率が20%以上の領域において前記ボウルの水引が開始する前に前記ケイ酸成分重合抑制手段の動作を開始する制御を実行する請求項1記載のトイレ装置。
  3. 前記酸性水の酸性度は、pH2.5〜5.0であることを特徴とする請求項1または2に記載のトイレ装置。
  4. 前記ボウルの表面に光触媒層が形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトイレ装置。
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