(車両用自動開閉制御装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る自動開閉制御装置14の概略を示す平面図である。図1に示すように、車両11(車体)の側部には、被駆動体としてのスライドドア12(開閉体)が装着されている。このスライドドア12は、車両11に固定されるガイドレール13に案内され、図中実線で示す全開位置と鎖線で示す全閉位置との間で車両前後方向に移動自在つまり開閉自在となっている。
車両11には自動開閉制御装置14が設けられている。自動開閉制御装置14は、スライドドア12を自動的に開閉する。この自動開閉制御装置14は、車両11に固定される駆動ユニット15を有する。駆動ユニット15には、駆動用のケーブル16(索条体)が設けられている。ケーブル16は、ガイドレール13の両端に配置された反転プーリ17、および反転ブーリ18に掛け渡されて、車両11の前方側と後方側とからスライドドア12に接続されている。スライドドア12は、駆動ユニット15によりケーブル16のいずれか一方側が引かれると、ケーブル16に引かれながら開方向または閉方向に移動する。
図2は、図1に示す自動開閉制御装置14の制御体系を示す説明図である。図2に示すように、駆動ユニット15には電動モータであるPSD(パワースライドドア)モータ21(駆動源)が設けられている。このPSDモータ21として、本実施形態においては、3相(U相、V相、およびW相)のブラシレスモータが用いられる。ただし、PSDモータ21は、3相のブラシレスモータに限らず、例えば直流モータ等であってもよい。PSDモータ21は、制御部41から、所定の通電パターンに従って、3相の各相へ、それぞれ印加電圧Vu、印加電圧Vv、および印加電圧Vwが供給されると作動する。PSDモータ21は、供給される印加電圧の正負に応じて、その回転方向が正転または逆転に切り替えられる。
また、PSDモータ21の回転軸21aには、回転子47(永久磁石)が固定される。この回転子47の回転軌道近傍には、回転子47の回転位置を検出する位置センサとしての3つのホールIC(集積回路)48u、ホールIC48v、およびホールIC48wが、回転軸21aを中心として互いに120度の位相差を有する位置に設けられている。これらの3つのホールIC48u、ホールIC48v、およびホールIC48wは、例えば、PSDモータ21の回転軸21a(駆動軸)とともに回転する多極着磁磁石と対向している。これにより、PSDモータ21が作動して回転軸21aが回転すると、ホールIC48u、ホールIC48v、およびホールIC48wからは回転軸21aつまり多極着磁磁石の回転に応じた周期のパルス信号が出力される。この場合、ホールIC48u、ホールIC48v、およびホールIC48wは、PSDモータ21の回転軸21aが回転すると、それぞれ互いに120度位相のずれたパルス信号Su、パルス信号Sv、およびパルス信号Swを制御部41に対して出力する。なお、ホールIC48u、ホールIC48v、およびホールIC48wを総称する場合、回転位置センサ290と呼ぶ(図5参照)。
また、PSDモータ21の回転軸21aには、駆動ギヤ24が固定される。駆動ギヤ24には大径スパーギヤ25が噛み合わされている。大径スパーギヤ25と一体に回転する小径スパーギヤ26には、出力軸27に固定される従動ギヤ28が噛み合わされている。これにより、PSDモータ21の回転は所定の減速比で減速されて出力軸27に伝達される。
出力軸27には外周面に図示しない螺旋状の案内溝が形成された円筒形状のドラム31が固定されている。駆動ユニット15に案内されたケーブル16は、案内溝に沿ってドラム31に複数回巻き付けられている。PSDモータ21が作動すると、ドラム31はPSDモータ21に駆動されて回転し、これによりケーブル16が作動してスライドドア12は開閉動作する。つまり、PSDモータ21により、図2中で反時計回り方向にドラム31を回転させることにより、車両後方側のケーブル16がドラム31に巻き取られて、スライドドア12はケーブル16に引かれながら開方向に移動する。反対に、PSDモータ21により、図2中で時計回り方向にドラム31を回転させることにより、車両前方側のケーブル16がドラム31に巻き取られてスライドドア12はケーブル16に引かれながら閉方向に移動する。このように、スライドドア12は、ケーブル16、ドラム31、出力軸27等を介してPSDモータ21に接続され、PSDモータ21により開閉駆動される。
ドラム31と2つの反転プーリ17、および反転ブーリ18との間には、それぞれテンショナー32(テンショナー機構)が設けられている。テンショナー32は、ドラム31とスライドドア12との間におけるケーブル16の弛みを取ってケーブル張力を一定範囲に維持する(ケーブル16に所定の張力を付与する)。テンショナー32は、それぞれ固定プーリ32aと可動プーリ32bとを有し、可動プーリ32bは固定プーリ32aを軸心としてばね部材32cにより回転方向に付勢されており、ケーブル16は各プーリ32a、32bの間に掛け渡されている。したがって、ケーブル16に緩みが生じると、可動プーリ32bにより付勢されてケーブル16の移動経路が増加し、これによりケーブル16の張力が維持される。
なお、駆動ユニット15はPSDモータ21と出力軸27との間にクラッチ機構が設けられないクラッチレス式となっている。つまり、PSDモータ21から出力軸27、つまりスライドドア12へは、常に動力伝達可能な状態とされている。このため、後述するようにPSDモータ21により回生ブレーキ力を発生させる際に、PSDモータ21の固定子(ステータ)と、ドラム31に接続された回転子47(マグネットロータ)との間にはエアギャップがあり機械的には直接接していないため、PSDモータ21に回生ブレーキ力を発生させる際に生じる振動は、クラッチ機構の断続制御により生じる振動(衝撃)よりも少ない。
上記駆動ユニット15内のPSDモータ21は、制御部41により駆動される。この制御部41は、スライドドア12を予め設定された目標速度で開閉移動させるようにPSDモータ21の作動を制御する。また、制御部41は、PSDモータ21の入力端子を短絡させて回生ブレーキ力を発生させる。また、制御部41は、ホールIC48u、ホールIC48v、およびホールIC48wが出力したパルス信号Su、パルス信号Sv、およびパルス信号Swをカウントする。制御部41は、これらのパルス信号の周期に基づいて回転軸21aの回転速度を認識し、また、当該パルス信号をカウント量に基づいて回転軸21aの回転量つまりスライドドア12のドア位置を認識する。そして、制御部41は、PSDモータ21の回転量に基づいてスライドドア12の位置を認識し、例えば、認識した位置に応じてPSDモータ21の駆動状態を制御する。
一方、スライドドア12には、図1に示すように、ロック機構215とアクチュエータ216を有するクローザユニット218が車両前方側端部に配置されている。
図3(a)〜図3(c)に示すように、ロック機構215はラッチ221とラチェット222とを備えており、ラッチ221は車両11の開口端部に固定されたストライカ223に係合する係合溝221aを備えたフォーク形状に形成されている。また、ラッチ221はラッチ軸224に支持されて回転自在となっており、スライドドア12が全閉位置に向けて閉じられるときには係合溝221aに侵入したストライカ223に押されて、図3(a)に示すアンラッチ位置から図3(b)に示すハーフラッチ位置を経て図3(c)に示すフルラッチ位置まで回転するようになっている。
ラチェット222はラッチ221に向けて突出する係止爪部222aを備えており、ラッチ221と同一面上においてラチェット軸225に回転自在に支持されている。また、ラチェット222はたとえば図示しないスプリング等の付勢手段により係止爪部222aをラッチ221に接触させる方向(図3中では時計回り)に付勢されている。
図3(b)に示すように、係止爪部222aはラッチ221がハーフラッチ位置となったときにラッチ221に設けられたハーフラッチ係止溝221bに係合するようになっている。これにより、ハーフラッチ位置まで回転したラッチ221はラチェット222によりアンラッチ位置側への回転が規制され、スライドドア12は半ドア位置に保持されることになる。なお、係止爪部222aがハーフラッチ係止溝221bに係合した状態のときであっても、ラッチ221は係止爪部222aを押し上げてフルラッチ位置に向けて回転可能となっており、これにより、ハーフラッチ位置となったラッチ221はアンラッチ位置方向への回転は規制されるがフルラッチ位置方向への回転は許容されている。つまり、ラッチ221がハーフラッチ位置とフルラッチ位置との間にあるときには、スライドドア12は全閉位置には保持されていないが開くこともできない仮連結状態つまり半ドア状態に保持される。
図3(c)に示すように、ラッチ221がフルラッチ位置まで回転したときには係止爪部222aがラッチ221の係合溝221aに係合してラッチ221はアンラッチ位置方向への回転が規制されてフルラッチ位置に保持されるようになっている。これにより、スライドドア12は全閉位置に保持される。
つまり、このロック機構215は、ラッチ221がハーフラッチ位置とフルラッチ位置とになったときにラチェット222がラッチ221に係合し、これにより、ラッチ221をハーフラッチ位置とフルラッチ位置つまりスライドドア12を半ドア位置と全閉位置に保持するようになっている。
スライドドア12の車室内側と車外側には、それぞれ乗員等の操作者により操作されるドア開手段としてのドアノブ226が設けられている。ドアノブ226は、たとえば連結ロッド227等を介してラチェット222に連結されており、ドアノブ226が操作されるとその操作に連動してラチェット222がラッチ221から離れる方向に回転するようになっている。つまり、ロック機構215により全閉位置あるいは半ドア位置に保持されたスライドドア12を開く際には、ドアノブ226を操作することによりラチェット222のラッチ221に対する係合が解除され、これによりラッチ221がアンラッチ位置方向に回転自在となってスライドドア12を開放させることが可能となる。なお、図示する場合には、ラチェット222は連結ロッド227によりドアノブ226に連結されているが、これに限らず、たとえばワイヤ等を用いてドアノブ226とラチェット222とを接続したり、ドアノブ226の操作を電気的に検出し、これに連動する電動機等でラチェット222を駆動したりするなど、ドアノブ226の操作に連動してラチェット222のラッチ221に対する係合が解除される構造であればよい。
一方、図3(a)〜(c)に示すように、アクチュエータ216は駆動源としてのクローザモータ231と動力変換機構232と駆動ロッド233と元位置スイッチ263を有しており、クローザモータ231が作動すると、その出力が動力変換機構232により直線往復運動に変換されて駆動ロッド233が進退移動するようになっている。駆動ロッド233の移動方向はラッチ軸224の軸心からずれてラッチ221の移動軌跡上を通るように設定されており、駆動ロッド233が元位置から進出するとラッチ221は駆動ロッド233に押されてフルラッチ位置まで移動するようになっている。また、ラッチ221をフルラッチ位置まで移動させた後にはクローザモータ231が逆転して駆動ロッド233は元位置にまで後退移動して、ラッチ221から離れるようになっている。元位置スイッチ263は、駆動ロッド233が元位置から進出するとOFFし、駆動ロッド233が元位置に戻るとONする。
なお、動力変換機構232としては、たとえばラックアンドピニオン機構やボールねじ機構などが用いられるが、これ以外の機構を用いるようにしてもよい。
この自動開閉制御装置14にはハーフラッチ検出手段としてのハーフラッチスイッチ234と、ラチェット検出手段としてのラチェットスイッチ235と、フルラッチスイッチ236およびドアノブ操作検出スイッチ237が設けられている。これらのスイッチのうち、ハーフラッチスイッチ234と、ラチェットスイッチ235と、フルラッチスイッチ236を総称してラッチスイッチ280と呼ぶ(図5)。これらのスイッチ234〜237はリミットスイッチとなっており、スイッチ234〜237が押されてONされたときに検出信号を出力するようになっている。そして、制御部41はこれらのスイッチ234〜237からの検出信号に基づいてスライドドア12の位置つまり状態を検出し、スライドドア12が開状態から半ドア状態へ移行したときにアクチュエータ216を作動させてスライドドア12を全閉状態まで強制的に閉じるようになっている。
図4は開状態のスライドドアが閉じられるときの各スイッチの状態を示す作動チャートである。図4に示すように、ハーフラッチスイッチ234はラッチ221がアンラッチ位置からハーフラッチ位置まで回転したときにラッチ221に押されてONされるようになっており(P3)、つまり、このハーフラッチスイッチ234によりラッチ221がハーフラッチ位置となったことが検出されるようになっている。なお、ハーフラッチスイッチ234はラッチ221がハーフラッチ位置よりフルラッチ方向側に回転したときには引き続きONされた状態となる。
ラチェットスイッチ235はラチェット222がラッチ221に係合したときにラチェット222に押されてONされるようになっており(P2およびP6)、つまり、このラチェットスイッチ235によりラチェット222がラッチ221に係合したことが検出されるようになっている。この場合、ラチェット222がラッチ221の係合溝221aに係合する際には、ラチェットスイッチ235はハーフラッチスイッチ234に対して所定距離分だけ開側でONされるようになっており、これにより、ラチェット222が確実にラッチ221に係合した後にハーフラッチスイッチ234によるハーフラッチ状態の検出が行われるようになっている。なお、ハーフラッチ状態とはラッチ221がハーフラッチ位置とフルラッチ位置との間で移動自在となった状態のことであり、このとき、スライドドア12は全閉位置には保持されていないが開くこともできない仮結合状態つまり半ドア状態となる。
フルラッチスイッチ236はラッチ221がフルラッチ位置となったときにラッチ221に押されてONされるようになっており(P5)、つまり、このフルラッチスイッチ236によりラッチ221がフルラッチ位置となったことが検出されるようになっている。
なお、スライドドア12が開状態の場合、ハーフラッチスイッチ234と、ラチェットスイッチ235と、フルラッチスイッチ236は、いずれもOFFである(P1)。また、ラチェットスイッチ235は、開状態から半ドア状態に移行する段階でONになった後(P2)、半ドア状態から全閉状態に移行する段階で一旦OFFになり(P4)、全閉状態に移行した後、再びONになる(P6)。
ドアノブ操作検出スイッチ237はドアノブ226が操作されたときにONされるようになっており、つまり、このドアノブ操作検出スイッチ237によりドアノブ226が操作されたことが検出されるようになっている。
一方、制御手段としての制御部41は、マイクロコンピュータと、マイクロコンピュータの周辺回路と、PSDモータ21を駆動する3相インバータ回路等を有して構成されている。制御部41が有するマイクロプロセッサは、制御信号を演算する図示しないマイクロプロセッサ(CPU(中央処理装置))、制御プログラム、演算式およびマップデータなどが格納される図示しないROM(リードオンリメモリ、ただしフラッシュメモリ等を含む)、一時的にデータを格納する図示しないRAM(ランダムアクセスメモリ)などを備えて制御回路からなっており、マイクロコンピュータとしての機能を有している。
図5は、制御部41と制御部41に接続される主な装置との接続関係を示すブロック図である。図5において、図1〜図3を参照して説明したものと同一の構成には同一の符号を用いている。制御部41へは、ラッチスイッチ280に含まれるハーフラッチスイッチ234と、ラチェットスイッチ235と、フルラッチスイッチ236の各出力信号が入力される。また、制御部41へは、元位置スイッチ263の出力信号が入力される。また、制御部41は、クローザモータ231に対して、正転、逆転または停止させる駆動信号を出力する。また、制御部41へは、メインスイッチ270の出力信号が入力される。メインスイッチ270は、スライドドア12を自動で作動させるか(ON)、手動で作動させるか(OFF)を切り替えるスイッチであり、操作者によって操作される。
クローズスイッチ45(開閉スイッチ)は、スライドドア12の自動で開いたり閉じたりする指示を入力するためのスイッチであり、操作者によって操作される。操作者がクローズスイッチ45を操作し、制御部41にドアの開閉開始を指令する信号が入力されると、制御部41は、回転位置センサ290(ホールIC48u、ホールIC48v、およびホールIC48w)の出力信号に応じてPWM(パルス幅変調)指令信号を生成し、3相インバータ回路を駆動する。ここで、PWM指令信号は、所定の制御周期にて3相インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子を、オンもしくはオフ、または所定のデューティ比でオンおよびオフする信号である。制御部41は、例えば、スライドドア12のドア位置とPSDモータ21の回転速度を対応づける速度マップを参照し、スライドドア12のドア位置に応じてPSDモータ21の回転速度を制御する。
また、制御部41は、リリースモータ264の駆動回路を内部に有し、リリースモータ264を駆動制御する。リリースモータ264は、スライドドア12の全開状態をロックする図示していないロック機構におけるロックを解除するための駆動源である。また、制御部41は、全開センサ265の出力信号を入力する。全開センサ265は、例えば、スライドドア12の図示していない全開状態のロック機構の動作に応じてONまたはOFFするスイッチであり、スライドドア12が全開状態であることを検出し、検出結果を表す信号を出力する。
次に、図6〜図9を参照して、本実施形態の自動開閉制御装置14の動作例について説明する。図6〜図9は、自動開閉制御装置14によるスライドドア12の閉動作を説明するための図である。本実施形態の自動開閉制御装置14は、次の3種類のスライドドア12の閉め方に対応している。1つめが、操作者によるクローズスイッチ45に対する操作に応じてスライドドア12を開状態から全閉状態まで自動で閉める閉め方(オートクローズ作動という)である。2つめが、操作者の手動の操作によってスライドドア12が開状態から半ドア状態まで閉められた場合に半ドア状態から全閉状態まで自動で閉める閉め方(イージークローザ作動という)である。3つめが、操作者が開状態から(半ドア状態を短時間で通過させた後)全閉状態まで手動の操作によってスライドドア12を閉める閉め方(ドア強閉作動という)である。図6はオートクローズ作動の際の動作例を示すフローチャートであり、図7はオートクローズ作動の際の動作例のタイミングチャートである。図8はイージークローザ作動の際の動作例を示すフローチャートである。図9はドア強閉作動の際の動作例を示すタイミングチャートである。図7は、クローズスイッチ45、リリースモータ264、PSDモータ21、クローザモータ231、ラチェットスイッチ235、ハーフラッチスイッチ234、フルラッチスイッチ236および元位置スイッチ263の各動作の時間変化を示す。
まず、図6および図7を参照してオートクローズ作動における動作例について説明する。制御部41は、クローズスイッチ45(所定の操作子)が操作者によってスライドドア12を閉めるよう操作された場合に(図7の時刻t1)、図6に示す処理を開始する。制御部41は、まず、作動条件が成立するか否かを判定する(ステップS101)。作動条件は、例えば、メインスイッチ270がON(自動)に設定されていること、ドアノブ226が解錠されていること、スライドドア12側にある給油口の蓋が閉じていること等である。作動条件が成立しない場合(ステップS101でNOの場合)、制御部41はスライドドア12を作動させず(ステップS102)、処理を終了する。
作動条件が成立している場合(ステップS101でYESの場合)、制御部41はスライドドア12のドア位置が全開であるか否かを判定する(ステップS103)。スライドドア12のドア位置が全開である場合(ステップS103でYESの場合)、制御部41はリリースモータ264を作動させる(ステップS104;時刻t2)。一方、スライドドア12のドア位置が全開でない場合(ステップS103でNOの場合)、あるいは制御部41がリリースモータ264を作動させた場合(ステップS104)、制御部41はPSDモータ21をスライドドア12が閉じる方向に作動させる(以下、クローズ作動)(ステップS105;時刻t3)。
次に制御部41はスライドドア12のドア位置が全開以外か否かを判定する(ステップS106)。ドア位置が全開以外の場合(ステップS106でYESの場合)、制御部41はリリースモータ264を停止する(ステップS107;時刻t4)。ドア位置が全開以外でない場合(ステップS106でNOの場合)あるいは、リリースモータ264を停止した場合(ステップS107)、制御部41は、ラッチスイッチ280が半ドアを認識しているか否かを判定する(ステップS108)。ラッチスイッチ280が半ドアを認識するまで(ステップS108でYESとなるまで)、制御部41は、ステップS106〜S108の処理を繰り返し実行する。
ラッチスイッチ280が半ドアを認識した場合(ステップS108でYESの場合;時刻t6)、制御部41は、元位置スイッチ263がONしているか否かを判定する(ステップS109)。なお、図7では時刻t5でラチェットスイッチ235がOFFからONに変化している。元位置スイッチ263がONしていない場合(ステップS109でNOの場合)、制御部41は、元位置スイッチ263がONするまで(ステップS111でYESとなるまで)、クローザモータ231を逆転作動させる(ステップS110〜S112)。
元位置スイッチ263がONしている場合(ステップS109でYESの場合)あるいは元位置に戻るまでクローザモータ231を逆転作動させた後(ステップS110)、クローザモータ231を停止させた場合(ステップS112)、制御部41は、クローザモータ231を引き込み作動させる(ステップS113;時刻t7)。引き込み作動は、クローザモータ231を正転作動させ、スライドドア12を全閉位置まで引き込む作動である。なお、図7に示す例では、元位置スイッチ263が時刻t1からONの状態であり、ステップS109はYESとなって、時刻t7でステップS113の処理が実行される。
次に、制御部41は、ラッチスイッチ280がスライドドア12の全閉を認識したか否かを判定する(ステップS114)。この場合、ステップS114において制御部41は、ハーフラッチスイッチ234、フルラッチスイッチ236およびラチェットスイッチ235のすべてがONした場合に、ラッチスイッチ280がスライドドア12の全閉を認識したと判定する。図7に示す例では、時刻t7でクローザモータ231が正転作動を開始した後、元位置スイッチ263がOFFし(時刻t8)、ラチェットスイッチ235が一旦OFFし(時刻t9)、フルラッチスイッチ236がONし(時刻t10)、そして、ラチェットスイッチ235がONしたところで(時刻t11)、制御部41は、ラッチスイッチ280がスライドドア12の全閉を認識したと判定する(ステップS114でYES)。ラッチスイッチ280がスライドドア12の全閉を認識したと判定した場合(ステップS114でYESの場合)、制御部41はクローザモータ231の引き込み作動を停止するとともに、PSDモータ21のクローズ作動を停止する(ステップS115;時刻t12)。
次に、制御部41は、クローザモータ231を逆転作動させる(ステップS116;時刻t13)。次に、制御部41は、PSDモータ21をクローズ作動させる(ステップS117;時刻t14)。また、ステップS117において制御部41は所定のタイマーを用いてPSDモータ21のクローズ作動を開始してからの経過時間の計測を開始する。
次に、制御部41は、元位置スイッチ263がOFFからONになるまで待機する(ステップS118でNOの繰り返し)。制御部41は、元位置スイッチ263がOFFからONになったと判定した場合(ステップS118でYESの場合;時刻t15)、クローザモータ231の逆転作動を停止する(ステップS119;時刻t16)。また、制御部41は、ステップS117でPSDモータ21のクローズ作動を開始してからの経過時間が所定の時間に到達した場合に、PSDモータ21のクローズ作動を停止する(ステップS120;時刻t17)。なお、ステップS120の処理は、ステップS119の処理等より前に実行されてもよい。
以上のように、本実施形態の自動開閉制御装置14は、制御部41が、スライドドア12(開閉体)が非全閉状態から全閉状態に移行した後(ステップS114でYESとなった後;時刻t11の後)、停止状態のPSDモータ21(駆動源)を閉側に所定量作動させる(ステップS117およびS120)。この構成によれば、停止状態のPSDモータ21(駆動源)を閉側に所定量作動させない場合と比較して、スライドドア12を全閉する際のテンショナー32の状態を容易に安定化することができる。すなわち、本実施形態によれば、駆動源を全閉後、所定時間(あるいは所定距離)閉側に作動させることでテンショナー32の状態を一律にすることができ、作動状態によってテンショナー32の停止位置が変わってしまうことを防止することができる。
なお、停止状態のPSDモータ21を閉側に所定量作動させる場合の所定量とは、上述したように作動させる時間で定義してもよいし、回転数の量や回転角度の大きさ、スライドドア12等の移動距離等で定義してもよい。
また、上記動作例では、ラッチスイッチ280が全閉状態を認識した後にPSDモータ21のクローズ作動を停止しているが、ラッチスイッチ280が半ドア状態を認識した後にPSDモータ21のクローズ作動を停止してもよい。
次に、図8を参照して、イージークローザ作動の際の動作例について説明する。制御部41は、メインスイッチ270(所定の操作子)がOFFされた場合、図8に示す処理を例えば一定の周期で繰り返し実行する。制御部41は、ラッチスイッチ280が半ドアを認識するまで待機する(ステップS201でNOの繰り返し)。次に、制御部41は、ラッチスイッチ280がOFFからONとなり、半ドアを認識したと判定した場合(ステップS201でYESの場合)、制御部41は、元位置スイッチ263がONしているか否かを判定する(ステップS202)。元位置スイッチ263がONしていない場合(ステップS202でNOの場合)、制御部41は、元位置スイッチ263がONするまで(ステップS204でYESとなるまで)、クローザモータ231を逆転作動させる(ステップS203〜S205)。
元位置スイッチ263がONしている場合(ステップS202でYESの場合)あるいは元位置に戻るまでクローザモータ231を逆転作動させた後(ステップS203)、クローザモータ231を停止させた場合(ステップS205)、制御部41は、クローザモータ231を引き込み作動させる(ステップS206)。
次に、制御部41は、ラッチスイッチ280が全てONか否かすなわちスライドドア12の全閉を認識したか否かを判定する(ステップS207)。ラッチスイッチ280がスライドドア12の全閉を認識したと判定した場合(ステップS207でYESの場合)、制御部41はクローザモータ231の引き込み作動を停止する(ステップS208)。
次に、制御部41は、クローザモータ231を逆転作動させる(ステップS209)。次に、制御部41は、PSDモータ21をクローズ作動させる(ステップS210)。また、ステップS210において制御部41は所定のタイマーを用いてPSDモータ21のクローズ作動を開始してからの経過時間の計測を開始する。
次に、制御部41は、元位置スイッチ263がOFFからONになるまで待機する(ステップS211でNOの繰り返し)。制御部41は、元位置スイッチ263がOFFからONになったと判定した場合(ステップS211でYESの場合)、クローザモータ231の逆転作動を停止する(ステップS212)。また、制御部41は、ステップS210でPSDモータ21のクローズ作動を開始してからの経過時間が所定の時間に到達した場合に、PSDモータ21のクローズ作動を停止する(ステップS213)。なお、ステップS213の処理は、ステップS212の処理等より前に実行されてもよい。
以上のように、本実施形態の自動開閉制御装置14は、制御部41が、スライドドア12(開閉体)が開状態から半ドア状態に移行し(ステップS201でYES)、さらに、スライドドア12が半ドア状態から全閉状態に移行した後に(ステップS07でYESの後に)、停止状態のPSDモータ21(駆動源)を閉側に所定量作動させる(ステップS210およびS213)。この構成によれば、停止状態のPSDモータ21(駆動源)を閉側に所定量作動させない場合と比較して、スライドドア12を全閉する際のテンショナー32の状態を容易に安定化することができる。また、イージークローザ作動では、手動操作によってスライドドア12を半ドア状態まで作動させるため、オートクローズ作動に比べ全閉位置がずれ易い傾向があるが、本実施形態によれば、パルスずれを容易に防止することができる。
次に、図9を参照して、ドア強閉作動動の際の動作例について説明する。制御部41は、メインスイッチ270(所定の操作子)がOFFされた場合、図9に示す処理を例えば一定の周期で繰り返し実行する。制御部41は、ラッチスイッチ280がすべて所定の認識時間内にOFFからONに変化したか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301において、制御部41は、操作者がスライドドア12を開状態から(半ドア状態を短時間で通過させた後)全閉状態まで手動の操作によって閉めたか否かを判定することができる。ラッチスイッチ280がすべて所定の認識時間内にOFFからONに変化したと判定した場合(ステップS301でYESの場合)、制御部41は、PSDモータ21をクローズ作動させる(ステップS302)。また、ステップS302において制御部41は所定のタイマーを用いてPSDモータ21のクローズ作動を開始してからの経過時間の計測を開始する。次に、制御部41は、ステップS302でPSDモータ21のクローズ作動を開始してからの経過時間が所定の時間に到達した場合に、PSDモータ21のクローズ作動を停止する(ステップS303)。
以上のように、本実施形態の自動開閉制御装置14は、制御部41が、スライドドア12(開閉体)が開状態から全閉状態に所定時間内に移行した後に(ステップS301でYESの後に)、停止状態のPSDモータ21(駆動源)を閉側に所定量作動させる(ステップS302およびS303)。この構成によれば、停止状態のPSDモータ21(駆動源)を閉側に所定量作動させない場合と比較して、スライドドア12を全閉する際のテンショナー32の状態を容易に安定化することができる。また、本実施形態によれば、ドアが強閉された時でも、パルスずれを防止することができる。
以上のように本実施形態によれば、制御部41が、スライドドア12が非全閉状態から全閉状態に移行した後、停止状態のPSDモータ21を閉側に所定量作動させるので、スライドドア12を全閉する際にテンショナー32の状態を安定化することができる。例えば、オート作動で全閉した際は、PSDモータ21を駆動していることで全閉した際のテンショナー32は車両前方側がつぶれた状態となるが、本実施形態では、全閉後にPSDモータ21を閉側に所定量作動させることで、手動でクローズした際に、オート作動で全閉した場合と同様に、車両前方側のテンショナー32がつぶれた状態とすることができる。よって、手動での全閉時とオート作動での全閉時の2つの動作の差異によるパルスずれを無くすことができる。すなわち、停止状態のPSDモータ21を閉側に所定量作動させた状態で全閉を認識し、パルスカウントをリセットしカウントを0とすることで、全閉動作によってパルスずれが生じるのを防止することができる。
よって、本実施形態によれば、パルスずれによるオート作動時のフィーリング悪化や、挟み込み誤反転の抑制を図ることができる。また、パルスずれの要因があった、各種定数をより良い定数に設定できる。また、挟み込み閾値の改善により、挟み込み反転荷重の低下を図ることができる。また、挟み込みマスクエリアの改善により、挟み込み検知できない領域を減少させること等の効果を奏することができる。
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、本発明のモータ制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。